(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記規制部材の軸方向の途中に形成された被係止部(65)を係止可能な係止部(82)を有し、当該係止部で前記被係止部を係止することにより、前記規制部材の前記開弁方向または前記閉弁方向への移動を規制する係止部材(80)をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の流体制御弁装置。
前記第1付勢部材は、一端が前記係止部材に当接し、他端が前記弁部材に当接するよう設けられ、前記弁部材を閉弁方向に付勢することを特徴とする請求項4に記載の流体制御弁装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の複数の実施形態による流体制御弁装置を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による流体制御弁装置を適用した蒸発燃料処理システムを
図3に示す。
【0010】
まず、蒸発燃料処理システム10について、
図3に基づき説明する。蒸発燃料処理システム10は、流体制御弁装置11、キャニスタ12および大気フィルタ13等を備えている。
流体制御弁装置11は、流体制御弁1、および、制御部としての電子制御ユニット(以下、「ECU」という)2を備えている。
【0011】
流体制御弁1は、図示しない内燃機関の吸気管3に接続するパージ通路4に設けられている。流体制御弁1は、ECU2により作動が制御され、パージ通路4の流体の流れを許容または遮断する。
キャニスタ12は、パージ通路4の吸気管3とは反対側の端部と、燃料タンク5に接続するタンク通路6の燃料タンク5とは反対側の端部と、に接続している。これにより、燃料タンク5で発生した蒸発燃料は、タンク通路6を流れ、キャニスタ12に吸着される。
【0012】
大気フィルタ13は、キャニスタ12に接続する大気通路7に設けられている。大気フィルタ13は、大気通路7を流れる大気中の異物を捕集する。
内燃機関が運転しているとき、吸気管3内には負圧が発生する。そのため、このとき、大気通路7およびパージ通路4の流体の流れを許容するよう流体制御弁1を作動させると、キャニスタ12に吸着した蒸発燃料は、パージ通路4を経由して吸気管3内に排出、すなわちパージされる。このように、流体制御弁1は、所謂パージバルブとして機能する。
【0013】
次に、流体制御弁1について、
図1および2に基づき詳細に説明する。
流体制御弁1は、ハウジング20、弁部材30、第1電磁駆動部40、第1付勢部材51、規制部材60、第2電磁駆動部70および第2付勢部材52等を備えている。
ハウジング20は、例えば樹脂により形成されている。ハウジング20は、第1ハウジング21および第2ハウジング22からなる。
【0014】
第1ハウジング21は、略円筒状の筒部24、および、当該筒部24の一端を塞ぐ底部25を有し、有底筒状に形成されている。筒部24は、径方向外側へ突出する筒状の流入ポート241を有している。流入ポート241の内側の空間は、筒部24の内側空間26に連通している。また、筒部24は、径方向外側へ突出するコネクタ242を有している。コネクタ242の内側には、金属製の端子243が埋設されている。底部25は、中央に、筒部24とは反対側へ凹むようにして形成される凹部251を有している。
【0015】
第2ハウジング22は、板部27および流出ポート28を有している。板部27は、筒部24の底部25とは反対側の端部に、例えばレーザ溶着により接合されている。これにより、内側空間26は、第1ハウジング21の筒部24および底部25と第2ハウジング22の板部27とにより密閉された状態となる。
流出ポート28は、略円筒状に形成され、板部27の中央を貫くようにして設けられている。流出ポート28の内側の空間は、内側空間26に連通している。流出ポート28の端部のうち、内側空間26に位置する端部には、弁座281が形成されている。
【0016】
流入ポート241は、パージ通路4のキャニスタ12側に接続される。流出ポート28は、パージ通路4の吸気管3側に接続される。これにより、蒸発燃料を含む流体としての空気は、キャニスタ12からパージ通路4、および、流入ポート241の内側の空間を経由して内側空間26へ流入する。また、内側空間26に流入した空気は、流出ポート28の内側の空間、および、パージ通路4を経由して吸気管3内に流出する。ここで、ハウジング20の流入ポート241の内側の空間、内側空間26、および、流出ポート28の内側の空間は、流体通路23を形成している。
【0017】
弁部材30は、本体31および当接部材32を有している。
本体31は、磁性材料により形成されている。本体31は、略円筒状の筒部33、および、当該筒部33の一端を塞ぐ底部34を有し、有底筒状に形成されている。底部34は中央に、底部34を貫く穴部38を有している。
【0018】
当接部材32は、例えばゴムにより形成されている。当接部材32は、円板状の第1当接部35および第2当接部36、ならびに、接続部37を有している。第1当接部35は、外径が本体31の底部34の外径と概ね同じに形成され、底部34の筒部33とは反対側に設けられている。第2当接部36は、外径が筒部33の内径より小さく形成され、底部34の筒部33側に設けられている。接続部37は、穴部38に挿通されるとともに、第1当接部35の中央と第2当接部36の中央とを接続している。
【0019】
弁部材30は、筒部33が流出ポート28とほぼ同軸となるよう、かつ、軸方向に往復移動可能に設けられている。弁部材30は、往復移動することで第1当接部35が弁座281に当接可能である。弁部材30は、第1当接部35が弁座281から離間し開弁することで、流体通路23の流体の流れを許容する。一方、弁部材30は、第1当接部35が弁座281に当接し閉弁することで、流体通路23の流体の流れを遮断する。以下、弁部材30が開弁するときに移動する方向を「開弁方向」といい、弁部材30が閉弁するときに移動する方向を「閉弁方向」という。
【0020】
第1電磁駆動部40は、ステータ41、コイル42およびヨーク43を有している。
ステータ41は、磁性材料により形成されている。ステータ41は、略円筒状の筒部44、当該筒部44の一端を塞ぐ底部45、および、筒部44の他端から径方向外側へ板状に延びる鍔部46を有している。
【0021】
筒部44は、軸方向途中の外壁に、径方向内側へ環状に凹むよう形成される環状凹部47を有している。これにより、筒部44は、軸方向の途中(環状凹部47)の肉厚が他の部位と比べ小さくなっている。
底部45は中央に、底部45を貫く穴部48を有している。
【0022】
鍔部46は、外縁部が第1ハウジング21の筒部24の内壁に当接している。これにより、ステータ41はハウジング20内に固定されている。なお、弁部材30は、ステータ41の筒部44の内側に位置している。
コイル42は、略円環状に形成され、筒部44の径方向外側に設けられている。コイル42は、コネクタ242の端子243に電気的に接続されている。
ヨーク43は、磁性材料により筒状に形成されている。ヨーク43は、コイル42を覆うとともに両端部がステータ41に当接するよう設けられている。
【0023】
本実施形態では、ステータ41の筒部44の内側に係止部材80が設けられている。係止部材80は、例えば樹脂により略円板状に形成されている。係止部材80は、一方の面がステータ41の底部45に当接している。また、係止部材80は、外縁部が筒部44の内壁に当接している。これにより、係止部材80は、面方向、すなわち軸に対し垂直な方向への移動が規制されている。また、係止部材80は中央に、係止部材80を貫く穴部81を有している。
【0024】
第1付勢部材51は、本実施形態では、所謂コイルスプリングであり、一端側が弁部材30の筒部33の内側に収容されている。第1付勢部材51の一端は、底部34に当接している。また、第1付勢部材51の一端の内側には、当接部材32の第2当接部36が位置している。
【0025】
第1付勢部材51の底部34とは反対側の端部は、係止部材80の底部45とは反対側の面に当接している。第1付勢部材51は、軸方向に延びる力を有している。これにより、第1付勢部材51は、弁部材30を閉弁方向に付勢している。
【0026】
コイル42は、通電により、すなわち、端子243を経由して電力が供給されることにより、磁束を生じる。これにより、ステータ41、弁部材30の本体31、および、ヨーク43に磁気回路が形成される。すると、弁部材30は、第1付勢部材51の付勢力に抗して、開弁方向に吸引される。その結果、弁部材30が開弁し、流体通路23の流体の流れが許容される。
【0027】
その後、コイル42への通電が停止するとコイル42の磁束が消滅するため、弁部材30は、第1付勢部材51の付勢力により閉弁方向に移動する。その結果、弁部材30が閉弁し、流体通路23の流体の流れが遮断される。弁部材30は、コイル42への通電がオフのとき、閉弁状態である。すなわち、弁部材30は、ノーマリークローズ型の弁である。
【0028】
規制部材60は、軸部61およびプランジャ62を有している。軸部61は、例えば樹脂により、長い円柱状に形成されている。軸部61は、大径部63、および、当該大径部63より外径が小さい小径部64からなる。プランジャ62は、磁性材料により略円柱状に形成されている。プランジャ62は、大径部66、および、当該大径部66より外径が小さい小径部67からなる。
【0029】
軸部61の小径部64とプランジャ62の小径部67とは接合している。本実施形態では、例えば小径部67に形成された穴部に小径部64の端部を溶かし込み、冷却することにより、プランジャ62と軸部61とを接合している。
規制部材60は、軸部61の小径部64が係止部材80の穴部81に挿通されるよう、軸部61の大径部63が第1付勢部材51の内側に位置するよう、かつ、プランジャ62の大径部66の小径部67とは反対側の端部が第1ハウジング21の凹部251の内側に位置するようにして設けられている。軸部61の小径部64の外径は、係止部材80の穴部81の内径よりやや小さく形成されている。
【0030】
規制部材60の軸部61の大径部63は、弁部材30の当接部材32の第2当接部36に当接可能である。規制部材60は、大径部63が第2当接部36に当接したとき、弁部材30の開弁方向への移動を規制する。
係止部材80の弁部材30側の穴部81周りには、環状の係止部82が形成されている。規制部材60の軸部61の大径部63と小径部64との間には、環状の被係止部65が形成されている。係止部材80は、係止部82で被係止部65を係止することにより、規制部材60の開弁方向への移動を規制する。
【0031】
第2電磁駆動部70は、ステータ71、コイル72およびヨーク73を有している。
ステータ71は、磁性材料により形成されている。ステータ71は、第1筒部74、第2筒部75および接続板部76からなる。第1筒部74および第2筒部75は共に略円筒状に形成され、第2筒部75は第1筒部74の径方向外側に位置している。第1筒部74は、第2筒部75よりも軸方向の長さが小さい。接続板部76は、環状に形成され、第1筒部74の一端の外壁と第2筒部75の一端の内壁とを接続している。第1筒部74の内側には、規制部材60の軸部61の小径部64が挿通されている。
【0032】
コイル72は、略円環状に形成され、第2筒部75の内側、かつ、第1筒部74の径方向外側に設けられている。コイル72の内壁は、第1筒部74の外壁に当接している。コイル72の内径は、プランジャ62の大径部66の外径よりやや大きく形成されている。コイル72は、コネクタ242の端子243に電気的に接続されている。
【0033】
ヨーク73は、磁性材料により略円板状に形成され、第2筒部75の接続板部76とは反対側の端部を塞いでいる。ヨーク73は中央に、ヨーク73を貫く穴部77を有している。穴部77の内側には、プランジャ62の大径部66が位置している。
【0034】
第2付勢部材52は、本実施形態では、所謂コイルスプリングであり、一端が規制部材60のプランジャ62の大径部66に当接している。また、第2付勢部材52の一端の内側には、プランジャ62の小径部67が位置している。
第2付勢部材52の大径部66とは反対側の端部は、第1筒部74の接続板部76とは反対側の端面に当接している。第2付勢部材52は、軸方向に延びる力を有している。これにより、第2付勢部材52は、規制部材60を開弁方向に付勢している。
上記構成により、規制部材60は、軸部61と係止部材80の穴部81とが摺動、かつ、プランジャ62の大径部66の外壁とコイル72の内壁とが摺動しつつ、軸方向に往復移動可能である。つまり、規制部材60は、軸方向の2箇所で軸受けされつつ往復移動可能に設けられている。
【0035】
プランジャ62の小径部67の外径は、第1筒部74の内径より大きく形成されている。そのため、第1筒部74は、小径部67に当接したとき、規制部材60の閉弁方向への移動を規制する。よって、規制部材60は、被係止部65と係止部82とが当接する位置から、小径部67と第1筒部74とが当接する位置までの範囲で往復移動可能である。
なお、本実施形態では、規制部材60の被係止部65と係止部材80の係止部82とが当接しているとき、プランジャ62の大径部66と第1ハウジング21の凹部251とは当接していない。すなわち、本実施形態では、大径部66と凹部251との間に常に隙間が形成されている。
【0036】
コイル72は、通電により、すなわち、端子243を経由して電力が供給されることにより、磁束を生じる。これにより、ステータ71、ヨーク73およびプランジャ62に磁気回路が形成される。すると、規制部材60は、第2付勢部材52の付勢力に抗して、閉弁方向に吸引される。規制部材60が閉弁方向に吸引されると、
図2に示すように、小径部67と第1筒部74とが当接した状態となる。
その後、コイル72への通電が停止するとコイル72の磁束が消滅するため、規制部材60は、第2付勢部材52の付勢力により開弁方向に移動する。その結果、
図1に示すように、被係止部65と係止部82とが当接した状態となる。
【0037】
本実施形態では、第1電磁駆動部40のステータ41の鍔部46と第2ハウジング22の板部27との間にフィルタ29が設けられている。フィルタ29は、流体通路23を流れる流体に含まれる異物を捕集する。
ECU2は、CPU等の演算手段、ROMおよびRAM等の記憶手段、ならびに、入出力手段等を有する小型のコンピュータである。ECU2には、吸気管3に設けられた吸気圧センサ8(
図3参照)をはじめ、車両の各部に設けられた種々のセンサからの信号が入力される。ECU2は、これら入力された信号等に基づき、ROMに記憶されている所定の制御プログラムに従って車両の各部を制御する。
【0038】
吸気圧センサ8は、吸気管3内の圧力に応じた信号をECU2に出力する。これにより、ECU2は、吸気管3内の圧力を検出することができる。
ECU2は、流体制御弁1のコネクタ242に接続している。これにより、ECU2は、図示しないバッテリからの電力を、端子243を経由して第1電磁駆動部40または第2電磁駆動部70に供給することができる。
【0039】
本実施形態では、ECU2は、第1電磁駆動部40によって弁部材30の開弁および閉弁をデューティー制御する。そのため、コイル42には、短時間に通電のオンオフが繰り返される。これにより、弁部材30は、短時間に複数回、弁座281に当接する位置から規制部材60に当接する位置まで往復移動する。ECU2は、デューティー比を変更することによって、流体通路23を流れる流体の流量を調整可能である。なお、吸気管3内へパージする蒸発燃料の量によって、内燃機関へ供給される吸気の空燃比が変わるため、ECU2は、内燃機関へ供給される吸気の空燃比が最適となるよう前記デューティー比を変更する。
【0040】
上述のように、規制部材60は、大径部63が弁部材30の第2当接部36に当接したとき、弁部材30の開弁方向への移動を規制する。そのため、弁部材30は、弁座281に当接する位置から規制部材60に当接する位置までが、移動可能範囲となる。本実施形態では、第2電磁駆動部70のコイル72への通電が停止されているとき、すなわち通電がオフのときの弁部材30の移動可能範囲の最大値(以下、当該最大値を「最大ストローク量」という。)はd1となる(
図1参照)。一方、コイル72に通電されているとき、すなわち通電がオンのときの弁部材30の最大ストローク量はd2となる(
図2参照)。ここで、d1>d2のため、コイル72への通電がオンのときは、オフのときと比べ、弁部材30の最大ストローク量が小さくなる。つまり、本実施形態では、ECU2によって、第2電磁駆動部70のコイル72への通電をオンまたはオフに制御することにより、弁部材30の最大ストローク量を変更することができる。
【0041】
本実施形態では、ECU2は、吸気圧センサ8により検出した圧力、すなわち吸気管3内の圧力が所定の値未満(負圧大)となった場合、第2電磁駆動部70のコイル72への通電をオンすることで弁部材30の最大ストローク量を小さく(d2)する。一方、吸気管3内の圧力が所定の値以上(負圧小)となった場合、第2電磁駆動部70のコイル72への通電をオフすることで弁部材30の最大ストローク量を大きく(d1)する。
【0042】
なお、本実施形態では、ECU2は、第1電磁駆動部40のコイル42への通電がオフとなっているとき(デューティー制御をしている期間を含む)に限り、第2電磁駆動部70のコイル72への通電をオンまたはオフする。このような制御をすることにより、内燃機関へ供給される吸気の空燃比の制御性が向上する。
また、本実施形態では、第1電磁駆動部40と第2電磁駆動部70とが物理的に別体で構成されているため、互いの磁気干渉を抑制することができる。
【0043】
ECU2は、スロットルバルブ9にも接続している(
図3参照)。ECU2は、スロットルバルブ9の作動を制御することにより吸気管3を流れる吸気の量を調整可能である。
【0044】
次に、蒸発燃料処理システム10の作動の一例を説明する。
内燃機関が運転を開始し所定時間が経過すると、ECU2は、流体制御弁1の弁部材30の開弁および閉弁をデューティー制御する。このとき、吸気管3内には負圧が生じているため、蒸発燃料を含むキャニスタ12内の空気がパージ通路4および流体制御弁1を経由して吸気管3内にパージされる。車両の通常走行時等、吸気管3内の負圧が小さいとき、第2電磁駆動部70への通電はオフのため、弁部材30の最大ストローク量は大きく(d1)、大流量のパージが可能である。
【0045】
内燃機関のアイドル時または車両の減速時など、スロットルバルブ9が閉じることで吸気管3内の負圧が大きくなると、ECU2は第2電磁駆動部70への通電をオンする。これにより、弁部材30の最大ストローク量が小さく(d2)なる。吸気管3内の負圧が大きいとき、弁部材30の最大ストローク量を小さくすることにより、流体通路23を流れる空気の圧力脈動を小さくすることができる。これにより、例えば流体制御弁1に接続するキャニスタ12が振動するのを抑制することができる。したがって、流体制御弁1の作動時の振動および騒音を低減することができる。
【0046】
車両の通常走行が開始され、吸気管3内の負圧が小さくなると、ECU2は第2電磁駆動部70への通電をオフする。これにより、弁部材30の最大ストローク量が大きく(d1)なる。そのため、大流量のパージを行うことができる。
ECU2は、蒸発燃料をパージする必要がなくなると、第1電磁駆動40および第2電磁駆動部70への通電をオフする。これにより、蒸発燃料の吸気管3内へのパージが完了する。
【0047】
以上説明したように、(1)本実施形態では、ハウジング20は、流体が流れる流体通路23を有し、当該流体通路23の途中に弁座281を形成している。弁部材30は、往復移動することで弁座281に当接可能に設けられ、弁座281から離間し開弁することで流体通路23の流体の流れを許容し、弁座281に当接し閉弁することで流体通路23の流体の流れを遮断する。第1電磁駆動部40は、通電により弁部材30を開弁方向に吸引する。第1付勢部材51は、弁部材30を閉弁方向に付勢する。規制部材60は、弁部材30の弁座281とは反対側に当接可能、かつ、往復移動可能に設けられ、弁部材30に当接したとき、弁部材30の開弁方向への移動を規制する。第2電磁駆動部70は、通電により規制部材60を閉弁方向に吸引する。第2付勢部材52は、規制部材60を開弁方向に付勢する。
【0048】
本実施形態では、第2電磁駆動部70により規制部材60を吸引することにより、弁部材30の最大ストローク量を変化させることができる。例えば流体通路23の一端側の負圧が大きいときに、規制部材60を吸引し弁部材30の最大ストローク量を小さくすることにより、弁部材30の作動時に流体通路23を流れる流体の圧力脈動を小さくすることができる。本実施形態では流体制御弁1をパージバルブとして適用するため、流体通路23を流れる流体の圧力脈動によりキャニスタ12が振動するのを抑制することができる。したがって、流体制御弁装置11の作動時の振動および騒音を低減することができる。
【0049】
(2)また、本実施形態では、第2付勢部材52は規制部材60を開弁方向に付勢し、第2電磁駆動部70は通電により規制部材60を閉弁方向に吸引する。この構成では、第2電磁駆動部70への通電がオフのとき、第2付勢部材52の付勢力により規制部材60が開弁方向に最も移動した状態となるため、弁部材30の最大ストローク量が最大となる。本実施形態では流体制御弁1をパージバルブとして適用するため、弁部材30の最大ストローク量を最大に保つ時間(アイドル時以外の時間)が長い。よって、第2電磁駆動部70の消費電力を低減することができる。
また、この構成では、第2電磁駆動部70が故障した場合、第2付勢部材52の付勢力により規制部材60が開弁方向に最も移動した状態となるため、弁部材30の最大ストローク量は最大に保たれる。よって、振動および騒音の低減効果は無くなるものの、大流量のパージは継続することができる。
【0050】
ところで、例えば第2付勢部材52が、プランジャ62と第1ハウジング21の凹部251との間に配置され、規制部材60を閉弁方向に付勢する構成の場合、弁部材30の作動力、すなわち、開弁時に衝突するときの力に打ち勝つために、第2付勢部材52の荷重を大きくする必要がある。この場合、第2付勢部材52および流体制御弁1の体格が大きくなるおそれがある。これに対し、第2付勢部材52が規制部材60を開弁方向に付勢する構成の本実施形態の場合、第2電磁駆動部70への通電のオフ時に規制部材60を初期位置に戻すだけの荷重を第2付勢部材52に設定すればよい。よって、第2付勢部材52および流体制御弁1の体格を小さくすることができる。
【0051】
(3)また、本実施形態では、規制部材60の軸方向の途中に形成された被係止部65を係止可能な係止部82を有し、当該係止部82で被係止部65を係止することにより、規制部材60の開弁方向への移動を規制する係止部材80をさらに備えている。
ところで、例えばプランジャ62と第1ハウジング21の凹部251との当接により規制部材60の開弁方向への移動を規制する構成の場合、プランジャ62と凹部251との隙間を高精度に確保する必要がある。これに対し、規制部材60の軸方向の途中の部位で規制部材60の開弁方向への移動を規制する構成の本実施形態の場合、上述の隙間を高精度に確保する必要はない。
【0052】
(4)また、本実施形態では、第1電磁駆動部40は、内側に規制部材60が位置するよう設けられる筒状のステータ41を有している。係止部材80は、ステータ41の内壁に固定され、規制部材60が挿通される穴部81を有している。係止部82は、穴部81の開口周りに形成されている。これにより、係止部材80の穴部81で規制部材60を軸受けすることができる。その結果、規制部材60の軸方向の往復移動を安定させることができる。
【0053】
(5)また、本実施形態では、第1付勢部材51は、一端が係止部材80に当接し、他端が弁部材30に当接するよう設けられ、弁部材30を閉弁方向に付勢する。
ところで、例えば第1付勢部材51の一端が規制部材60に当接する構成の場合、規制部材60の軸方向の位置により、第1付勢部材51のスプリングセット荷重が変わるおそれがある。特に規制部材60が閉弁方向に最も移動した状態では、第1付勢部材51のスプリングセット荷重が大きくなり、流量立ち上がり特性が悪化するおそれがある。これに対し、第1付勢部材51の一端が規制部材60とは別部材である係止部材80に当接する構成の本実施形態の場合、規制部材60の軸方向の位置にかかわらず、第1付勢部材51のスプリングセット荷重は一定である。よって、流量立ち上がり特性の悪化を招くことはない。
【0054】
(6)また、本実施形態では、第1電磁駆動部40および第2電磁駆動部70への通電を制御するECU2をさらに備えている。ECU2は、第1電磁駆動部40への通電がオフのときに、第2電磁駆動部70への通電をオンまたはオフする。本実施形態では流体制御弁1をパージバルブとして適用し、第1電磁駆動部40により弁部材30の開弁および閉弁をデューティー制御する。吸気管3内へパージする蒸発燃料の量によって、内燃機関へ供給される吸気の空燃比が変わるため、ECU2は、内燃機関へ供給される吸気の空燃比が最適となるようデューティー比を変更する。本実施形態では、ECU2によって、第1電磁駆動部40への通電がオフのときに、第2電磁駆動部70への通電をオンまたはオフすることにより、内燃機関へ供給される吸気の空燃比の制御性を向上することができる。
【0055】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による流体制御装置の流体制御弁を
図4および5に示す。
第2実施形態では、第1電磁駆動部40のステータ41の筒部44の内側に係止部材80(
図1および2参照)を設けていない。また、規制部材60の軸部61は、小径部64(
図1および2参照)を有さず、大径部63のみからなる。
【0056】
また、第2実施形態では、第1ハウジング21の凹部251の深さが、第1実施形態と比べ、浅く形成されている。第2電磁駆動部70への通電がオフのとき、規制部材60は、第2付勢部材52の付勢力によりプランジャ62の大径部66が凹部251に押し付けられている。つまり、凹部251は、規制部材60に当接することで規制部材60の開弁方向への移動を規制する。
【0057】
第2実施形態では、第1実施形態と同様、規制部材60は、大径部63が弁部材30の第2当接部36に当接したとき、弁部材30の開弁方向への移動を規制する。そのため、第2電磁駆動部70のコイル72への通電がオフのときの弁部材30の最大ストローク量はd1となる(
図4参照)。一方、コイル72への通電がオンのときの弁部材30の最大ストローク量はd2となる(
図5参照)。ここで、d1>d2のため、コイル72への通電がオンのときは、オフのときと比べ、弁部材30の最大ストローク量が小さくなる。このように、第2実施形態では、第1実施形態と同様、ECU2によって、第2電磁駆動部70のコイル72への通電をオンまたはオフに制御することにより、弁部材30の最大ストローク量を変更することができる。
【0058】
なお、第2電磁駆動部70への通電がオンのときは規制部材60の大径部66と第1ハウジング21の凹部251との間に隙間が形成されるが(
図5参照)、第2電磁駆動部70への通電がオフのときは規制部材60の大径部66と第1ハウジング21の凹部251との間に隙間は形成されない(
図4参照)。つまり、第2実施形態では、第2電磁駆動部70への通電がオフのときの弁部材30の最大ストローク量d1を一定とするため、第1実施形態とは異なり、第1ハウジング21の凹部251の深さ、すなわち、規制部材60の大径部66と第1ハウジング21の凹部251との間の隙間を高精度に確保する必要がある。
【0059】
しかしながら、第2実施形態では、第1実施形態のような係止部材80を必要としないため、部材コスト、および、組み付けコストを低減することができる。また、第1実施形態のように規制部材60の軸部61に被係止部65を形成する必要がないため、加工コストを低減することができる。
流体制御弁の作動等については、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
第2実施形態による流体制御弁装置であっても、流体の圧力脈動を小さくし、振動および騒音を低減できる等、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0060】
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態では、第1電磁駆動部が弁部材を閉弁方向に吸引し、第1付勢部材が弁部材を開弁方向に付勢する構成であってもよい。つまり、弁部材はノーマリーオープン型の弁であってもよい。ただし、この構成では、弁部材の閉弁状態が長く続くと、第1電磁駆動部の消費電力が増大するおそれがある。
【0061】
また、本発明の他の実施形態では、第2電磁駆動部が規制部材を開弁方向に吸引し、第2付勢部材が規制部材を閉弁方向に付勢する構成であってもよい。ただし、この構成では、弁部材の最大ストローク量を最大にする期間が長い場合、第2電磁駆動部の消費電力が増大するおそれがある。また、この構成では、第2電磁駆動部が故障した場合、弁部材の最大ストローク量が最小に固定されるおそれがある。さらに、この構成では、規制部材により弁部材の移動を規制するとき弁部材の作動力に打ち勝つために、第2付勢部材の荷重を大きくする必要がある。よって、第2付勢部材および流体制御弁の体格が大きくなるおそれがある。
【0062】
また、上述の第1実施形態では、規制部材の軸部の大径部と小径部との間に形成される環状の被係止部を、係止部材の穴部の開口周りに形成した係止部で係止することにより、規制部材の移動を規制する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、軸部から径方向外側へ突出する部位を設け、当該部位を被係止部としてもよい。
また、上述の実施形態では、第1付勢部材が、一端が係止部材に当接し、他端が弁部材に当接するよう設けられ、弁部材を閉弁方向に付勢する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、第1付勢部材は、一端が規制部材に当接し、他端が弁部材に当接するよう設けられ、弁部材を閉弁方向に付勢することとしてもよい。ただし、この構成では、規制部材の軸方向の位置により、第1付勢部材のスプリングセット荷重が変わるおそれがある。
【0063】
また、上述の実施形態では、制御部が、第1電磁駆動部への通電がオフのときに、第2電磁駆動部への通電をオンまたはオフする例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、制御部は、第1電磁駆動部への通電の状態にかかわらず、任意のタイミングで第2電磁駆動部への通電をオンまたはオフすることとしてもよい。
また、上述の実施形態では、制御部が、吸気管内の負圧が大きいときに、弁部材の最大ストローク量を小さくするよう第2電磁駆動部への通電を制御する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、吸気管内の負圧以外の別の条件、例えば吸気の流量等に基づき、弁部材の最大ストローク量を変更することとしてもよい。
【0064】
本発明は、蒸発燃料を含む空気の流れを制御するパージバルブとして適用するに限らず、他の流体の流れを制御する流体制御弁装置に適用してもよい。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態に適用可能である。