特許第5952068号(P5952068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952068
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】内視鏡用高周波処置具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20160630BHJP
【FI】
   A61B18/12
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-94564(P2012-94564)
(22)【出願日】2012年4月18日
(65)【公開番号】特開2013-220247(P2013-220247A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(72)【発明者】
【氏名】藤田 泰伸
【審査官】 村上 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−073378(JP,A)
【文献】 特開平04−329944(JP,A)
【文献】 特開2010−268845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性操作ワイヤが緩く挿通された電気絶縁性の可撓性の基側シースの先端部分に、電気絶縁性の可撓性の先側シースの後端寄りの部分が軸線周り方向に回転可能に且つ軸線方向に進退可能に差し込み接続され、前記先側シースには、前記導電性操作ワイヤと機械的及び電気的に連結された電極ワイヤが通過する一対の電極通過孔が形成されて、その一対の電極通過孔間において前記電極ワイヤが前記先側シース外に露出し、前記基側シースの後端側から前記導電性操作ワイヤを軸線周り方向に回転操作することにより前記先側シースが前記基側シースに対して軸線周り方向に回転し、前記導電性操作ワイヤを軸線方向に進退操作することにより前記先側シースが前記基側シースに対して軸線方向に進退するように構成されると共に、前記先側シースの途中の部分には、外径サイズが前記基側シースの先端の内径より大きくて、前記導電性操作ワイヤが後端側から牽引されると、前記基側シースの先端口元の径を押し広げながら前記基側シースの先端口元内に圧入される太径部が形成された内視鏡用高周波処置具において、
前記太径部が前記基側シースの先端口元を押し広げて前記基側シースの先端口元内に圧入されることにより、前記基側シースと前記先側シースとの間に作用する軸線周り方向の摩擦抵抗によって前記基側シースに対する前記先側シースの回転が規定された状態であって前記導電性操作ワイヤが後端側から押し込み操作されれば前記太径部が前記基側シースの先端口元内から前方に押し出される状態の時に、前記先側シースが前記基側シース内にそれ以上引き込まれるのを規制するように互いに当接する引き込み規制ストッパを、前記基側シースの内周部と前記導電性操作ワイヤの外周部とに設けた
内視鏡用高周波処置具。
【請求項2】
前記引き込み規制ストッパが、外周面に形成された尖った突起を前記基側シースの内周面に食い込ませてそこに固定された筒状体からなる固定側ストッパと、前記導電性操作ワイヤの外周部に固着されて前記導電性ワイヤと共に進退して前記固定側ストッパに対して前方から当接する筒状体からなる可動側ストッパとで構成されている
請求項1記載の内視鏡用高周波処置具。
【請求項3】
前記引き込み規制ストッパが、前記導電性操作ワイヤと前記電極ワイヤとを接続するつなぎ管である
請求項2記載の内視鏡用高周波処置具。
【請求項4】
前記先側シースが前記基側シースの先端から突出しすぎるのを規制するように前記引き込み規制ストッパの固定側ストッパに対して後方から当接する突出規制ストッパが、前記導電性操作ワイヤに併設固着されている
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の内視鏡用高周波処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内視鏡用高周波処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
粘膜の切開、剥離等を行うための内視鏡用高周波処置具として、電極ワイヤが一対の電極通過孔の間で露出する状態に取り付けられた先側シースを、内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿脱自在な基側シースの先側に軸線周り方向に回転自在且つ軸線方向に進退自在に接続したものが広く用いられている。
【0003】
先側シースに対する電極ワイヤの位置や向きは一対の電極通過孔の配置によって決まるが、その処置具の使用目的によって自由に設定することができる。いずれの場合においても、基側シースに対する電極ワイヤの向きと位置を使用中に自由に制御することができるので、非常に使い勝手が優れている(例えば、特許文献1、2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−334000
【特許文献2】特開2008−73378
【特許文献3】特開2010−75578
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような内視鏡用高周波処置具において、電極ワイヤに高周波電流を通電して粘膜切開等を行っている最中に、術者の意に反して先側シースが基側シースに対し軸線周り方向に回転してしまうと、電極ワイヤによる切開方向が狂って、所望の方向に切開できなくなってしまう。
【0006】
そこで、例えば図4に示されるように、電極ワイヤ90が取り付けられている先側シース92の途中の外周部分に、外径サイズが基側シース91の先端の内径より大きくて、導電性操作ワイヤ93が後端側から牽引されると基側シース91の先端の径を押し広げながら基側シース91の先端口元内に圧入される太径部94が形成されている。
【0007】
そのような構成により、粘膜切開処置等の最中に、導電性操作ワイヤ93が後端側からある程度以上の力で牽引されると、図5に示されるように、太径部94が基側シース91の先端口元内に食い込み、そこでの摩擦抵抗により、先側シース92が基側シース91に対し回転規制された状態になる。
【0008】
その結果、電極ワイヤ90の向きが一定の向きに保たれた状態になり、安定して切開処置を行うことができる。そして、その後で導電性操作ワイヤ93を後端側から押し込み操作すれば、回転規制が解除された状態になって、先側シース92を軸線周り方向に回転させることができる状態に戻る。
【0009】
しかし、回転規制の操作をする際に、後端側から導電性操作ワイヤ93を牽引する力が強すぎると、太径部94が基側シース91の先端口元内にきつく食い込んでしまう。すると、次に導電性操作ワイヤ93を後端側から押し込み操作しても太径部94が基側シース91の先端口元内から押し出されなくなってしまい、その後の操作に支障をきたす場合があった。
【0010】
本発明はそのような事情に鑑みてなされたものであり、電極ワイヤが一対の電極通過孔の間で露出する状態に取り付けられた先側シースが、基側シースの先側に軸線周り方向に回転自在且つ軸線方向に進退自在に接続された構成を備えた内視鏡用高周波処置具において、基側シースに対する先側シースの回転規制を確実に有効/無効に切り替えることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡用高周波処置具は、導電性操作ワイヤが緩く挿通された電気絶縁性の可撓性の基側シースの先端部分に、電気絶縁性の可撓性の先側シースの後端寄りの部分が軸線周り方向に回転可能に且つ軸線方向に進退可能に差し込み接続され、先側シースには、導電性操作ワイヤと機械的及び電気的に連結された電極ワイヤが通過する一対の電極通過孔が形成されて、その一対の電極通過孔間において電極ワイヤが先側シース外に露出し、基側シースの後端側から導電性操作ワイヤを軸線周り方向に回転操作することにより先側シースが基側シースに対して軸線周り方向に回転し、導電性操作ワイヤを軸線方向に進退操作することにより先側シースが基側シースに対して軸線方向に進退するように構成されると共に、先側シースの途中の部分には、外径サイズが基側シースの先端の内径より大きくて、導電性操作ワイヤが後端側から牽引されると、基側シースの先端口元の径を押し広げながら基側シースの先端口元内に圧入される太径部が形成された内視鏡用高周波処置具において、太径部が基側シースの先端口元を押し広げて基側シースの先端口元内に圧入された状態であって導電性操作ワイヤが後端側から押し込み操作されれば太径部が基側シースの先端口元内から前方に押し出される状態の時に、先側シースが基側シース内にそれ以上引き込まれるのを規制するように互いに当接する引き込み規制ストッパを、基側シースの内周部と導電性操作ワイヤの外周部とに設けたものである。
【0012】
なお、引き込み規制ストッパが、外周面に形成された尖った突起を基側シースの内周面に食い込ませてそこに固定された筒状体からなる固定側ストッパと、導電性操作ワイヤの外周部に固着されて導電性ワイヤと共に進退して固定側ストッパに対して前方から当接する筒状体からなる可動側ストッパとで構成されているものであってもよく、引き込み規制ストッパが、導電性操作ワイヤと電極ワイヤとを接続するつなぎ管であってもよい。
【0013】
また、シースが基側シースの先端から突出しすぎるのを規制するように引き込み規制ストッパの固定側ストッパに対して後方から当接する突出規制ストッパが、導電性操作ワイヤに併設固着されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、導電性操作ワイヤが後端側から押し込み操作されれば先側シースの太径部が基側シースの先端口元内から前方に押し出される状態の時に、先側シースが基側シース内にそれ以上引き込まれるのを規制する引き込み規制ストッパを設けたことにより、基側シースに対する先側シースの回転規制を確実に有効/無効に切り替えて、電極ワイヤの向きを適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例に係る内視鏡用高周波処置具の回転規制状態の側面断面図である。
図2】本発明の実施例に係る内視鏡用高周波処置具の回転規制がかかっていない状態の側面断面図である。
図3】本発明の実施例に係る内視鏡用高周波処置具の先端部分の斜視図である。
図4】従来の内視鏡用高周波処置具の回転規制がかかっていない状態の側面断面図である。
図5】従来の内視鏡用高周波処置具の回転規制状態の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図2は内視鏡用高周波処置具の側面断面図、図3はその先端部分の斜視図である。
1は、図示されていない内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿脱される基側シースであり、例えば直径が2.5mm程度で長さが1〜2m程度のフッ素樹脂チューブ等のような電気絶縁性の可撓性チューブで形成されている。
【0017】
基側シース1内には、例えばステンレス鋼細線等を複数本(例えば7本)撚り合わせた撚り線からなる可撓性の導電性操作ワイヤ2が、軸線周り方向に回転自在に且つ軸線方向に進退自在に緩く挿通配置されている。
【0018】
基側シース1の先端には、先側シース3が、基側シース1の先端に対して軸線周り方向に回転可能に且つ軸線方向に進退可能に、基側シース1に対し同軸線上に接続された状態に配置されている。
【0019】
先側シース3は、電極ワイヤ4が取り付けられた電極取付シース3Aと、後半部分が基側シース1の先端内に差し込み接続された案内シース3Bとを一体に接続固着して形成されている。電極取付シース3Aと案内シース3Bは共に、例えばフッ素樹脂チューブ等のように電気絶縁性のある可撓性チューブで形成されている。
【0020】
この実施例では、電極取付シース3Aの先端面が斜めに切り削がれた形状に形成されていて、図3にも示されるように、電極取付シース3Aの側面の例えば180°対称位置等に形成された一対の電極通過孔5の間で電極ワイヤ4が露出している。なお、電極通過孔5及び電極ワイヤ4の配置はそれに限定されるものではなく、電極ワイヤ4が電極取付シース3Aの側面位置に露出するように配置されたもの等であっても差し支えない。
【0021】
図2に戻って、案内シース3Bは、基側シース1の先端口元から基側シース1内に緩く差し込まれた状態になっている。ただし、案内シース3Bの最先端部分に電極取付シース3Aの後端部分が圧入接着されて電極取付シース3Aと案内シース3Bとが一体的に連結固着され、その連結部分では、電極取付シース3Aにより押し広げられた案内シース3Bの外径が、基側シース1の先端口元内にきつく圧入される大きさにされている(太径部3C)。
【0022】
6は、導電性操作ワイヤ2と電極ワイヤ4とを機械的及び電気的に連結接続するつなぎ管であり、例えばステンレス鋼材で形成されている。つなぎ管6の後側半部には後方から導電性操作ワイヤ2の端部が差し込まれ、前側半部には前方から電極ワイヤ4の端部が2本並んで差し込まれて、それらが銀ロー付け等により互いに固着されている。
【0023】
その結果、基側シース1の後端側から導電性操作ワイヤ2を軸線周り方向に回転操作すれば、基側シース1の先端で先側シース3が軸線周り方向に回転して電極ワイヤ4の向きが変わり、導電性操作ワイヤ2を軸線方向に進退操作すれば、基側シース1の先端で先側シース3が軸線方向に進退して電極ワイヤ4の位置が変わる。
【0024】
つなぎ管6は、案内シース3Bの後端部に差し込まれてそこに固着されている(ただし、必ずしも固着されていなくてもよい)。そして、つなぎ管6の後端部付近は、基側シース1内において案内シース3Bの後端から後方に突出した状態になっている。
【0025】
つなぎ管6より少し後方位置には、円筒状の剛性部材からなる固定ストッパ7が基側シース1の内周面に固定されている。固定ストッパ7の外周面には先端が尖った複数の微細突起が突出形成されていて、それが基側シース1の内周面に食い込んで強固に固定された状態になっている。固定ストッパ7の内径d1は、その内側を導電性操作ワイヤ2が抵抗なく進退動作できる径に設定されている。
【0026】
固定ストッパ7よりさらに少し後方位置には、固定ストッパ7に後方から当接する円筒状の剛性部材からなる突出規制ストッパ8が、導電性操作ワイヤ2に併設固着されて配置されている。具体的には、ステンレスパイプ材等からなる突出規制ストッパ8に導電性操作ワイヤ2が通されて、両部材が銀ロー付け等で固着されている。
【0027】
ここで、固定ストッパ7の内径をd1、突出規制ストッパ8の外径をD2とすると、d1<D2であり、突出規制ストッパ8は固定ストッパ7内に入り込むことができない。そして、突出規制ストッパ8の先端が固定ストッパ7の後端に当接すると、導電性操作ワイヤ2がそれ以上前方に移動できなくなり、先側シース3が基側シース1の先端から所定以上に突出することが規制される。
【0028】
また、図1に示されるように、つなぎ管6の後端部分の外径をD3とすると、固定ストッパ7の内径d1に対してd1<D3であり、つなぎ管6は固定ストッパ7内に入り込むことができない。
【0029】
したがって、導電性操作ワイヤ2の先端部分の外周部に固着された状態になっている筒状のつなぎ管6は、導電性操作ワイヤ2と共に進退して固定ストッパ7に前方から当接する可動側ストッパになっており、先側シース3(案内シース3B)が基側シース1内に所定以上引き込まれるのを規制するように機能する。このようにして、先側シース3が基側シース1に所定以上引き込まれるのを規制する引き込み規制ストッパが、つなぎ管6と固定ストッパ7とで構成されている。
【0030】
そのような内視鏡用高周波処置具において、導電性操作ワイヤ2が後端側から牽引されると、図1に示されるように、先側シース3の太径部3Cが基側シース1の先端口元の径を押し広げながら基側シース1の先端口元内に圧入され、その結果、基側シース1に対して先側シース3が軸線周り方向に回転しようとする動作に摩擦抵抗が作用する。
【0031】
その摩擦抵抗は導電性操作ワイヤ2を後端側から牽引する操作力が大きければ大きいほど大きくなり、先側シース3が回転して電極ワイヤ4の向きが術者の意に反して変わることがないようにすることができる。
【0032】
しかし、導電性操作ワイヤ2を牽引する力が大きすぎて先側シース3の太径部3Cが基側シース1の先端口元にあまりに強く食い込んだ状態になると、導電性操作ワイヤ2を後方から押し込み操作しても太径部3Cが基側シース1の先端口元に食い込んだ状態を解除できなくなってしまうおそれがある。
【0033】
そこで、先側シース3の太径部3Cが基側シース1の先端口元を押し広げて基側シース1の先端口元内に圧入された状態であって導電性操作ワイヤ2が後端側から押し込み操作されれば太径部3Cが基側シース1の先端口元内から前方に押し出される状態の時に、つなぎ管6と固定ストッパ7とが当接するように組み立てられている。
【0034】
そのためには、つなぎ管6と固定ストッパ7との取り付けの位置関係を正確に設定する必要があり、製品によって大きなバラツキができないように、一つ一つ現物合わせで調整するようにしてもよい。
【0035】
このようにして、本発明によれば、導電性操作ワイヤ2を後端側から牽引することにより、基側シース1に対し先側シース3の回転を規制して電極ワイヤ4の向きを安定させた状態で高周波切開処置等を行うことができ、導電性操作ワイヤ2の牽引を緩めれば、先側シース3の回転規制を無効にする状態に確実に切り替えて、電極ワイヤ4の向きを任意に調整することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 基側シース
2 導電性操作ワイヤ
3 先側シース
3A 電極取付シース
3B 案内シース
3C 太径部
4 電極ワイヤ
5 電極通過孔
6 つなぎ管(引き込み規制ストッパ)
7 固定ストッパ(引き込み規制ストッパ)
8 突出規制ストッパ
図1
図2
図3
図4
図5