(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の電解銅めっき液では、銅を電解めっきできるものであれば任意の浴液が使用可能である。例えば、硫酸銅めっき液、シアン化銅めっき液、ピロリン酸銅めっき液などが挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、電解銅めっき液は硫酸銅めっき液である。以下、電解銅めっき液の代表例として、硫酸銅めっき液について説明するが、他のめっき液の場合であっても、その組成、成分等は、本明細書における硫酸銅めっき液に関する以下の記載および公知文献等から当業者が容易に決定することができる。
【0013】
本発明の電解銅めっき液は、−X−S−Y−構造を有する化合物を含む。好ましくは、上記化合物の構造中のXおよびYはそれぞれ、水素原子、炭素原子、窒素原子、硫黄原子および酸素原子からなる群から選択される原子であり、本明細書においては、便宜上、上記化合物を硫黄含有化合物と呼ぶ。より好ましくは、XおよびYはそれぞれ、水素原子、炭素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群から選択される原子であり、さらに好ましくは、XおよびYはそれぞれ、水素原子、炭素原子および硫黄原子からなる群から選択される原子である。ただし、XおよびYは炭素原子の場合のみ同一となりうる。なお、構造式 −X−S−Y− において、Sは原子価2であることを示すが、XおよびY原子まで原子価2であることを意味するものではなく、XおよびY原子はその原子価に応じて任意の他の原子と結合し得ることを意味する。例えば、Xが水素の場合はH−S−Y−なる構造を有する。
【0014】
より好ましくは、硫黄含有化合物は、分子内にスルホン酸基またはスルホン酸のアルカリ金属塩である基を有する化合物である。スルホン酸基またはそのアルカリ金属塩は該分子内に1以上存在することができる。さらに好ましくは、硫黄含有化合物は分子内に−S−CH
2O−R−SO
3M 構造を有する化合物、または分子内に、−S−R−SO
3M 構造を有する化合物(式中、Mは水素又はアルカリ金属原子、Rは炭素原子3〜8個を含むアルキ
レン基である)である。さらに好ましくは、硫黄含有化合物は、以下の(S1)〜(S8)の構造を有する化合物である。
(S1)M−SO
3−(CH
2)
a−S−(CH
2)
b−SO
3−M;
(S2)M−SO
3−(CH
2)
a−O−CH
2−S−CH
2−O−(CH
2)
b−SO
3−M;
(S3)M−SO
3−(CH
2)
a−S−S−(CH
2)
b−SO
3−M;
(S4)M−SO
3−(CH
2)
a−O−CH
2−S−S−CH
2−O−(CH
2)
b−SO
3−M;
(S5)M−SO
3−(CH
2)
a−S−C(=S)−S−(CH
2)
b−SO
3−M;
(S6)M−SO
3−(CH
2)
a−O−CH
2−S−C(=S)−S−CH
2−O−(CH
2)
b−SO
3−M;
(S7)A−S−(CH
2)
a−SO
3−M;または
(S8)A−S−CH
2−O−(CH
2)
a−SO
3−M
上記式(S1)〜(S8)において、a,bはそれぞれ3〜8の整数であり;Mは水素またはアルカリ金属元素であり;Aは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、1〜6個の窒素原子と1〜20個の炭素原子と複数の水素原子とにより構成される鎖状または環状アミン化合物、あるいは1〜2個の硫黄原子と1〜6個の窒素原子と1〜20個の炭素原子と複数の水素原子とにより構成される複素環化合物のいずれかである。
【0015】
硫黄含有化合物は一般に光沢剤(ブライトナーとも称される)として使用するが、他の目的のために使用する場合も本発明の範囲に包含される。硫黄含有化合物を使用する場合、1種類のみを使用しても2種類以上を混合して使用してもよい。
【0016】
硫黄含有化合物が光沢剤である場合、光沢剤は、例えば、0.1〜100mg/L、好ましくは0.5〜10mg/Lの範囲で使用することができる。めっき液中の濃度が0.1mg/L以下の場合には、銅めっき皮膜の成長を助ける効果が得られないことがある。また、100mg/Lを越える場合であっても、それに見合う効果の向上はほとんど得られないので、経済的観点からは好ましくない。硫黄含有化合物を光沢剤以外の目的で使用する場合、その使用量の好適な範囲は当業者が適宜決定することができる。
【0017】
本発明者らは以前、上記硫黄含有化合物−X−S−Y−の単結合が切断されて生じた分解物である−X−S
−、または−Y−S
−化合物の増加が電解銅めっきにおけるビアの充填能およびめっき外観を悪化させることを見出した。ここで、上記硫黄含有化合物においては、XおよびYは交換可能であり、例えば、上記光沢剤(S1)M−SO
3−(CH
2)
a−S−(CH
2)
b−SO
3−Mの場合、分解物として、M−SO
3−(CH
2)
a−S
−、または
−S−(CH
2)
b−SO
3−Mが生じると考えられるが、このいずれを−X−S
−または−Y−S
−としても良い。よって、本明細書においては、便宜上、硫黄含有化合物の分解物を「−X−S
−」と表す。
【0018】
理論に拘束されるものではないが、電解銅めっき液中で「−X−S
−」構造を有する化合物が生じる主たるメカニズムとしては、例えば、含リン銅のような可溶性陽極の使用により、電解停止期間中に可溶性陽極と上記硫黄含有化合物が反応し、硫黄含有化合物のS−XまたはS−Yの単結合が切断されて「−X−S
−」構造を有する化合物が生じることが考えられる。また、電解銅めっき処理では、陰極において、上記硫黄含有化合物が電子を受け取り、S−XまたはS−Yの単結合が切断されて「−X−S
−」構造を有する化合物が生じることが考えられる。陽極においては、可溶性陽極から、CuがCu
2+となるときに放出される電子を受け取り、上記硫黄含有化合物が「−X−S
−」構造になると考えられる。
【0019】
また、理論に拘束されるものではないが、「−X−S
−」構造を有する化合物が電解銅めっきにおいて悪影響を与える作用メカニズムとしては、該化合物が金属イオン、例えばCu
+、Cu
2+とイオン結合し、この結合物の存在により、析出した金属が粒塊を形成して密着性、耐熱性等に劣る金属層を形成するとともに、光沢不良などめっき外観を悪化させることが考えられる。また、フィルドビアの形成においても、上記分解物と金属イオンの結合物は、ビアの底部付近の金属析出速度をビア開口部での金属の析出速度と同程度またはそれ以下にし、それによりビアのフィリングを不十分にするか、ビアの形状等によっては、空隙を残したままビアを充填するという問題を生じさせると考えられる。
【0020】
本発明のめっき液を用いて電解銅めっきを行うことによって、−X−S
−構造を有する化合物の濃度を著しく減少させることができる。−X−S
−構造を有する化合物の濃度としては、めっき外観の光沢性を艶消しにしないという観点からは2.0μmol/L以下に維持することが好ましく、めっき外観を光沢性のあるものにするという観点からは1.0μmol/L以下に維持することが好ましく、0.5μmol/Lに維持することがより好ましい。また、ビアのフィリング性を良好にするという観点からは、−X−S
−構造を有する化合物の濃度を0.15μmol/L以下に維持することが好ましく、0.1μmol/L以下に維持することがより好ましい。
【0021】
本発明の電解銅めっき液は、下記一般式(1):
【0023】
で表される化合物を含む。ここで、R
1からR
6はそれぞれ独立して、水素原子又は官能基で置換されもしくは置換されていない炭素数1から4のアルキル基を示す。アルキル基は、直鎖又は分岐のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリルブチル基、イソブチル基が挙げられる。アルキル基の置換基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基等が挙げられる。R
1からR
6は、これらのうちの少なくとも2つが互いに結合して環を形成していてもよい。また、各R
1からR
6はヘテロ原子を含有していてもよい。これらは1種又は2種以上でめっき液中に用いることができる。
【0024】
上記一般式(1)で表される化合物は、好ましくは、下記一般式(2)又は一般式(3)で表される化合物である。
【0026】
一般式(2)中、R
1、R
3及びR
5はそれぞれ独立して、水素原子又は水酸基で置換されていてもよい炭素数1から4のアルキル基を示す。アルキル基は、直鎖又は分岐のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリルブチル基、イソブチル基が挙げられる。R
1、R
3及びR
5はこれらのうちの少なくとも2つが互いに結合して環を形成していてもよい。またR
1、R
3及びR
5はヘテロ原子を含有していてもよい。
【0027】
一般式(3)中、R
2、R
4及びR
6はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1から4のアルキル基を示す。アルキル基は、直鎖又は分岐のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリルブチル基、イソブチル基が挙げられる。
【0028】
上記一般式(2)で表される化合物には、例えば、下記のものが含まれる。
【0030】
また、上記一般式(3)で表される化合物には、例えば、下記のものが含まれる。
【0032】
本発明における、電解銅めっき液に添加される一般式(1)で表される化合物の量は、めっき外観の向上、ビアのフィリング性の向上といった目的に応じて、また、電解銅めっき液に添加される硫黄含有化合物の量、種類に応じて、さらに、例えば、使用される電極の種類、電流の負荷方法等の電解銅めっき処理の処理条件に応じて適宜設定することができる。一般式(1)で表される化合物は、電解銅めっき液中に好ましくは1〜100000mg/L、より好ましくは5〜1000mg/Lの濃度で含まれる。
【0033】
本発明において、一般式(1)で表される化合物は、任意の時点で電解銅めっき液に添加することができる。例えば、電解銅めっき液の建浴時、電解銅めっき処理中、電解銅めっき処理後のいずれであっても良い。一般式(1)で表される化合物は、めっき液中の「−X−S
−」構造を有する化合物の量をモニターしながら、該化合物が所定の量を超えた場合に添加しても良いし、所望のめっき性能が得られなくなったことを指標として添加することも可能である。また、一般式(1)で表される化合物は、化合物をそのまま添加しても良いし、水に溶解したものを添加しても、他の添加剤と混合して添加しても良い。
【0034】
−X−S−Y−構造を有する化合物および一般式(1)で表される化合物を除く、本発明の電解銅めっき液の基本組成は、通常の電解銅めっきに使用されるものであれば特に制限はなく、本発明の目的が達成される限りにおいて、適宜、基本組成の成分の変更、濃度の変更、添加剤の添加等が可能である。例えば、硫酸銅めっきの場合、硫酸銅めっき液は、硫酸、硫酸銅、水溶性塩素化合物を基本組成として含む水性溶液であって良く、これ以外であっても、公知の硫酸銅めっきに用いられているものであれば特に制限なく使用することができる。
【0035】
硫酸銅めっき液中の硫酸濃度は、一般的なスルーホール用等のめっき浴では通常、10〜400g/Lであり、好ましくは150〜250g/Lである。また、一般的なビアフィリング用等の浴では通常、10〜400g/Lであり、好ましくは50〜100g/Lである。例えば、硫酸濃度が10g/L未満では、めっき浴の導電性が低下するため、めっき浴に通電することが困難になる場合がある。また、400g/Lを越えると、めっき浴中の硫酸銅の溶解を妨げ、硫酸銅の沈澱を招く場合がある。硫酸銅めっき液中の硫酸銅濃度は、一般的なスルーホール用等のめっき浴では通常、20〜280g/Lであり、好ましくは50〜100g/Lである。また、一般的なビアフィリング用等の浴では通常、20〜280g/Lであり、好ましくは100〜250g/Lである。例えば、硫酸銅濃度が20g/L未満になると、被めっき物である基体への銅イオンの供給が不充分となり、正常なめっき皮膜を析出させることが困難になる場合がある。また、硫酸銅を280g/Lを越えて溶解させることは一般に困難である。
【0036】
硫酸銅めっき液中に含まれる水溶性塩素化合物は、公知の硫酸銅めっきに用いられているものであれば特に制限なく使用することができる。該水溶性塩素化合物としては、例えば、塩酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。水溶性塩素化合物は1種類のみを使用しても良いし、2種類以上を混合して使用してもよい。本発明で使用する硫酸銅めっき液に含まれる該水溶性塩素化合物の濃度は、塩素イオン濃度として、通常10〜200mg/Lであり、好ましくは30〜80mg/Lである。例えば、塩素イオン濃度が10mg/L未満となると、光沢剤、界面活性剤等が正常に作用しにくくなる場合がある。また、200mg/Lを越えると、陽極からの塩素ガスの発生が多くなる。
【0037】
本発明で使用する電解銅めっき液は、さらにレベラー(平滑化剤とも称される)を含有していてもよい。レベラーはめっきに際して選択的にめっき表面に吸着し、析出速度を抑制する化合物の総称である。レベラーは、通常電解銅めっき溶液の添加剤として使用される公知の任意の界面活性剤であっても良い。レベラーとして界面活性剤が用いられる場合は、好ましくは、以下の(A1)〜(A5)の構造を有する化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(A1) HO−(CH
2−CH
2−O)
a−H(式中、a=5〜500の整数である);
(A2)HO−(CH
2−CH(CH
3)−O)
a−H(式中、a=5〜200の整数である);
(A3)HO−(CH
2−CH
2−O)
a−(CH
2−CH(CH
3)−O)
b−(CH
2−CH
2−O)
c−H(式中、aおよびcは整数であって、a+c=5〜250の整数であり,b=1〜100の整数である);
(A4)H−(NH
2CH
2CH
2)n−H (式中、n=5〜500である。);
または
【0038】
(A5)
【化6】
(式中、a,b,cはそれぞれ5〜200の整数である)
【0039】
また、一般式(1)で示される窒素化合物とは別の窒素含有有機化合物、例えば特許文献2に記載されているようなイミダゾール類とエポキシ化合物の反応生成物、上記(A4)、(A5)のような窒素含有界面活性剤、ポリアクリル酸アミド等の窒素含有有機化合物も用いることができる。
【0040】
本発明で使用するレベラーは、1種類のみを使用しても2種類以上を混合して使用してもよい。レベラーは、例えば0.05〜10g/L、好ましくは0.1〜5g/Lの範囲で使用することができる。めっき液中の濃度が0.05g/L以下では、湿潤効果が不充分となるため、めっき皮膜に多数のピンホールを生じ、正常なめっき皮膜の析出が困難になる場合がある。10g/Lを越えても、それに見合う効果の向上はほとんど得られないので、経済的観点からは好ましくない。
【0041】
本発明で使用する電解銅めっき液は、さらにキャリヤーを含むことができる。キャリヤーには通常界面活性剤が用いられ、めっきに際して全てのめっき表面へ均一に吸着し、析出速度を抑制するという効果を有する。
具体的には、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマーやランダムコポリマー等を例示することができるが、これらに限定されない。
本発明で使用するキャリヤーは、1種類のみを使用しても2種類以上を混合して使用してもよい。キャリヤーは、例えば0.005〜10g/L、好ましくは0.05〜2g/Lの範囲で使用することができる。
【0042】
本発明の電解銅めっき方法に供される基体は、電解銅めっき方法における条件に耐え得るものであって、めっきにより金属層が形成されるものであれば、任意の材質および形状の基体を使用することができる。材質としては、樹脂、セラミック、金属等が挙げられるがこれらに限定されない。基体の例としては、樹脂から成る基体としてプリント配線板が挙げられ、セラミックから成る基体として半導体用ウエハーが挙げられるがこれらに限定されない。また、金属としては、例えば、シリコン等が挙げられ、金属からなる基体としては、シリコンウエハーが挙げられるがこれらに限定されない。本発明の電解銅めっき方法は、特に、ビアホールを充填するのに優れることから、本発明に供される基体としては、スルーホール、ビアホール等を有する基体が好ましく、より好ましくは、スルーホールおよび/またはビアホールを有するプリント配線板またはウエハーである。
【0043】
基体に使用される樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、分岐低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン、ボリブテン樹脂、ポリブチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、テトラフルオロエチレンなどのハロゲン含有樹脂;AS樹脂;ABS樹脂;MBS樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;ポリアクリル酸メチルなどのポリアクリル酸エステル樹脂;ポリメタアクリル酸メチルなどのポリメタアクリル酸エステル樹脂;メタアクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂;無水マレイン酸−スチレン共重合体樹脂;ポリ酢酸ビニル樹脂;プロピオン酸セルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等のセルロース樹脂;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ナイロンなどのポリアミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリエチレンオキサイド樹脂;PET樹脂などの各種ポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリサルホン樹脂;ポリビニルエーテル樹脂;ポリビニルブチラール樹脂;ポリフェニレンオキサイドなどのポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリブチレンテレフタレート樹脂;ポリメチルペンテン樹脂;ポリアセタール樹脂;塩ビ−酢ビコポリマー;エチレン−酢ビコポリマー;エチレン−塩ビコポリマー等、およびこれらのコポリマー、ブレンド等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂;キシレン樹脂;グアナミン樹脂;ジアリルフタレート樹脂;ビニルエステル樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル樹脂;フラン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;マレイン酸樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂等の熱硬化性樹脂、ならびにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビニル樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂が挙げられる。より好ましくは、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂であり、さらに好ましくは、エポキシ樹脂、およびポリイミド樹脂である。また、樹脂基体は、単独の樹脂からなるものであっても、複数の樹脂からなるものであってもよい。さらに、他の基体上に樹脂が塗布、または積層されたような複合物であっても良い。本発明で使用可能な樹脂基体は樹脂成型物に限定されず、樹脂間にガラス繊維強化材等の補強材を介在させた複合物であってもよく、或いはセラミックス、ガラス、シリコン等の金属等の各種の素材からなる基材に樹脂による皮膜を形成したものであってもよい。
【0044】
基体材料として使用可能なセラミックとしては、アルミナ(Al
2O
3)、ステアタイト(MgO・SiO
2)、フォルステライト(2MgO・SiO
2)、ムライト(3Al
2O
3・2SiO
2)、マグネシア(MgO)、スピネル(MgO・Al
2O
3)、ベリリア(BeO)をはじめとする酸化物系セラミックスや、窒化アルミニウム、炭化ケイ素などの非酸化物系セラミックス、さらにはガラスセラミックスをはじめとする低温焼成セラミックスなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0045】
本発明の電解銅めっき法に供される基体は、電解銅めっきに先立って被めっき部分を導電化処理する。例えば、本発明の方法を用いてビアを電解銅めっきにより金属銅で充填する場合には、まず、ビアの内面を導電化する。この導電化処理は、公知の、任意の導電化方法を用いて行うことができ、導電化方法としては、例えば、無電解銅めっき、ダイレクトプレーティング方法、導電性微粒子吸着処理、気相めっき法等の各種の方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本発明の電解銅めっき方法において、めっき温度(液温)はめっき浴の種類に応じて適宜設定することができるが、通常、10〜40℃であり、好ましくは20〜30℃である。めっき温度が10℃より低い場合には、めっき液の導電性が低下するため、電解時の電流密度を高くすることが出来ず、めっき皮膜の成長速度が遅くなり、生産性が低下する場合がある。また、めっき温度が40℃より高い場合には、光沢剤が分解する場合がある。本発明の電解銅めっき方法においては、例えば、直流電流、PPR(Pulse Periodic Reverse)電流など、任意の種類の電流を使用できる。適用される陽極の電流密度はめっき浴の種類に応じて適宜設定することができるが、通常、0.1〜10A/dm
2であり、好ましくは1〜3A/dm
2である。0.1A/dm
2未満では陽極面積が大きすぎて経済的でなく、また、10A/dm
2より大きい場合は陽極からの電解中の酸素発生により、光沢剤成分の酸化分解量が増加する。
【0047】
本発明の電解銅めっき方法においては、可溶性陽極、不溶性陽極など任意の種類の電極を使用できる。可溶性陽極としては含リン銅陽極が挙げられ、不溶性陽極としては、酸化イリジウム、白金張りチタン、白金、グラファイト、フェライト、二酸化鉛および白金族元素酸化物をコーティングしたチタン、ステンレススチール等の材質の陽極が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明のめっき方法では、めっき液に空気または酸素を通過させ、めっき液中の溶存酸素濃度を高めることが好ましい。理論に拘束されるものではないが、めっき液中の溶存酸素は酸化剤として機能し、該めっき液中の−X−S
−構造を有する化合物を低減させると考えられる。めっき液中の溶存酸素濃度を高める方法としては、空気または酸素によるめっき液のバブリングが好ましく、該バブリングはめっき液を撹拌する態様のものであっても良いし、撹拌とは関係なく行うものであっても良い。また、めっき液中の溶存酸素濃度を高めるバブリングは、電解めっき処理中に行っても良いし、めっき処理の休止中に行っても良い。本発明のめっき方法では、撹拌を行うことは差し支えなく、被めっき物表面への銅イオンおよび添加剤の供給を均一化するために撹拌を行なうことが好ましい。撹拌方法としては、エアー撹拌や噴流を使用できる。めっき液中の溶存酸素を増加させるという観点から、空気による撹拌が好ましい。また、噴流で撹拌を行う場合にも、空気による撹拌を併用することができる。さらに、あけ替え濾過、循環濾過を行なうこともでき、特に濾過器でめっき液を循環濾過することが好ましく、これによりめっき液の温度を均一化し、且つめっき液中のゴミ、沈澱物等を除去することができる。
【0048】
本発明の電解銅めっき方法により、基体上に銅層を有する複合材料が得られる。本発明の電解銅めっき液を用いて電解銅めっきを行うと、得られる複合材料の銅層は粒塊を生じず、ビアを充填する場合に空隙のないビアの充填を達成することができる。以下、実施例によって本発明を詳述するが、該実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0049】
<分析方法>
1.電気化学測定 (Galvanostatic analysis)
各種添加剤を含有する電解銅めっき液の性能をスクリーニングするために、電気化学測定を行った。下記組成の電解銅めっき液を調製し、模擬老化めっき液を再現するためにめっき液にさらに3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩(MPS/東京化成工業(株)製)を50ppbとなるように添加した。得られた模擬老化めっき液に、電極(銅を被覆した、白金回転ディスク電極/PIN社製を電気をかけない状態で浸漬し、銅上の電位(自然電位)をポテンショ・ガルバノスタット((potentiostat/Galvanostat electrochemical analysis system)PGSTAT302/ECO CHEM社製))を用いて23℃、2500rpmの条件で測定した。測定によって得られる典型的な例を
図1に示す。
図1において、それぞれ横軸は時間(秒)、縦軸は電位(単位:V)を示す。
図1の曲線で上にあるものは、無添加(ベースライン)とほぼ同じであり効果の低いもの、下になる程、効果の高いものであることを示している。得られた結果を効果の高いものから順にA、B、Cランクに分類した。なお、Aランクは90秒後におおよそベースラインから40%未満の電位を示したもの、Bランクは同様におおよそ50から70%の電位を示したもの、Cランクは同様におおよそ90%以上の電位を示したものである。
【0050】
めっき液組成(MPS添加前)
硫酸銅・5水和物 200g/L
硫酸 100g/L
塩素 50mg/L
ブライトナー:ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィドジソーダ(SPS)2mg/L
レベラー:窒素含有界面活性剤 2g/L
キャリヤー:ポリエチレングリコール1g/L
各種添加剤:表1に記載の量
残部 脱イオン水
【0051】
2.ビアフィル性能評価試験
上記スクリーニングで選別された添加剤についてビアフィル性能を評価した。非めっき物(基体)として、ビアフィル(平均直径100μm、深さ60μm)を有する評価基板(CMK社製)を用い、めっき液として上記と同じ組成の電解銅めっき液にさらにMPSを100ppbとなるように添加した模擬劣化めっき液を用いて、下記工程に従いビアフィルめっきを行った。めっき後のビアを基体表面に対して垂直面で切断し、切断面を金属顕微鏡(GX51/OLMPUS製)で観察した。
【0052】
めっき工程
無電解めっき(キューポジット(商標)(CUPOSIT
TM)253/ロームアンドハース電子材料製,めっき条件: 35℃ 20分間)
酸洗浄(アシッドクリーナー(商標)(ACID CLEANER
TM) 1022−B:10%/ロームアンドハース電子材料製、40℃/3分間)
水洗浄(30−40℃、1分間)
水洗浄(室温、1分間)
酸洗浄(10%硫酸、1分間)
電解銅めっき(各組成、22℃、電流密度:2A/dm、45分間)
水洗浄(室温、1分間)
防錆剤(アンチターニッシュ(商標)(ANTITARNISH
TM)7130/ロームアンドハース電子材料製、10%、室温、30秒間)
水洗浄(室温、30秒間)
乾燥(ドライヤー乾燥:60℃、30秒間)
【0053】
実施例1〜3および比較例1〜5
表1に示す添加剤を使用して各種試験を行った。結果を表1に示す。また、実施例1においてビアフィル試験を行った際の顕微鏡写真を
図2に示し、実施例2においてビアフィル試験を行った際の顕微鏡写真を
図3に示し、実施例3においてビアフィル試験を行った際の顕微鏡写真を
図4に示し、比較例2においてビアフィル試験を行った際の顕微鏡写真を
図5に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【化7】
【0056】
上記実施例1〜3から明らかなように、一般式(1)で表される化合物を用いた実施例においては高いビアフィル性能が認められた。特に実施例1の化合物は、少ない添加量でビアフィル性能の向上が認められた。一方、添加剤を用いない例(比較例1)及び一般式(1)の化合物の類似化合物を用いた例(比較例2〜5)ではビアフィル性能の改善は見られなかった。