(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記反応式(1)で示される逆シフト反応による方法では、二酸化炭素から一酸化炭素を製造する際、大量の水素が必要である。また、上記特許文献1に記載の方法では、触媒を必要とするため、触媒の劣化原因となる硫黄などの微量成分を含むガスをそのまま原料ガスとして用いることができない。したがって、二酸化炭素から一酸化炭素を製造する方法として、発電所や製鉄所、工場からの排気ガスなどの硫黄等を含む二酸化炭素含有ガスをそのまま原料ガスとして用いることができるような、さらに優れた手法の開発が望まれている。
【0010】
本発明の目的は、触媒を用いる必要が無く、原料ガスの組成や不純物の影響も少ない、一酸化炭素の製造方法および一酸化炭素の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は鋭意検討した結果、プラズマ粒子を二酸化炭素に接触させることにより、一酸化炭素が生成することを発見し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は次に示すとおりである。
[1]
プラズマ粒子発生原料ガスからプラズマ粒子を発生させる工程と、
前記工程で発生したプラズマ粒子を、二酸化炭素含有原料ガスに接触させることにより、一酸化炭素を含有するガスを生成させる工程を含む一酸化炭素の製造方法。
[2]
前記プラズマ粒子を発生させる工程が、一対の電極の対向する面の少なくとも一方を誘電体で覆った状態で、前記電極間に、プラズマ粒子発生原料ガスを存在させ、電圧を印加して放電させることにより、プラズマ粒子を発生させる工程である、[1]に記載の一酸化炭素の製造方法。
[3]
前記誘電体が強誘電体である、[2]に記載の一酸化炭素の製造方法。
[4]
前記プラズマ粒子発生原料ガスが希ガスを含有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の一酸化炭素の製造方法。
[5]
プラズマ粒子を発生させるプラズマ粒子発生装置と、
プラズマ粒子と二酸化炭素含有原料ガスとを接触させるプラズマ粒子照射部と、を備える、一酸化炭素の製造装置。
[6]
前記プラズマ粒子発生装置が、
一対の電極と、
前記一対の電極の対向する面の少なくとも一方に設けられた誘電体と、
前記一対の電極に接続され、電極間に電圧を印加させる高周波電源と、を備え、
前記一対の電極間で起こる放電によりプラズマ粒子を発生させる装置である、[5]に記載の一酸化炭素の製造装置。
[7]
前記誘電体が強誘電体である、[6]に記載の一酸化炭素の製造装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、触媒を用いずに二酸化炭素から一酸化炭素を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0016】
≪一酸化炭素の製造方法≫
本実施形態の一酸化炭素の製造方法は、プラズマ粒子発生原料ガスからプラズマ粒子を発生させる工程と、前記工程で発生したプラズマ粒子を、二酸化炭素含有原料ガスに接触させることにより、一酸化炭素を含有するガスを生成させる工程を含む。
【0017】
本実施形態において、プラズマ粒子とは、プラズマ状態に励起された粒子を意味する。プラズマ粒子が二酸化炭素に接触することで、二酸化炭素中の酸素原子が解離し、一酸化炭素となると考えられる。
【0018】
〔プラズマ粒子を発生させる工程〕
本実施形態の一酸化炭素の製造方法は、プラズマ粒子発生原料ガスからプラズマ粒子を発生させる工程を含む。該プラズマ粒子を発生させる工程としては、一対の電極の対向する面の少なくとも一方を誘電体で覆った状態で、前記電極間に、プラズマ粒子発生原料ガスを存在させ、電圧を印加して放電させることにより、プラズマ粒子を発生させる工程であることが好ましい。すなわち、誘電体バリア放電によりプラズマ粒子を発生させる工程であることが好ましい。誘電体バリア放電によりプラズマ粒子を発生させる工程は、大型のプラズマ粒子発生装置を用いることができ、大量のプラズマ粒子を効率良く発生させることができる。
【0019】
(プラズマ粒子発生原料ガス)
プラズマ粒子を発生させる原料ガス(プラズマ粒子発生原料ガス)としては、特に限定されず、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の希ガス;窒素;二酸化炭素などが挙げられる。中でも、プラズマ粒子発生原料ガスとしては、希ガスを含有することが好ましい。プラズマ粒子発生原料ガスが希ガスを含有すると、放電によりプラズマ粒子を発生させる際の放電電圧を低減でき、エネルギー効率を向上させることができる。該エネルギー効率の観点から、プラズマ粒子発生原料ガス中の希ガス含有量は、好ましくは40容量%以上であり、より好ましくは60容量%以上、さらに好ましくは80容量%以上である。プラズマ粒子発生原料ガス中の希ガス含有量の上限としては、例えば、100容量%である。
【0020】
また、プラズマ粒子発生原料ガスは、酸素を含有していてもよいが、プラズマ粒子発生原料ガス中の酸素の含有量は、一酸化炭素の収率や安全性の観点から、低い方が好ましい。具体的には、プラズマ粒子発生原料ガス中の酸素含有量は、0.5容量%以下であることが好ましく、0.1容量%以下であることがより好ましい。プラズマ粒子発生原料ガス中の酸素含有量が前記範囲であると、生成した一酸化炭素が酸素由来のプラズマ粒子やオゾンと接触して二酸化炭素に再転換することを抑制でき、一酸化炭素の収率が良好となる。また、生成した一酸化炭素含有ガスの爆発を抑制でき、安全性が向上する。
【0021】
プラズマ粒子発生原料ガスは、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0022】
プラズマ粒子発生原料ガスをプラズマ粒子発生装置に連続的に供給する場合、プラズマ粒子発生原料ガスの流量は特に限定されない。例えば、誘電体バリア放電によりプラズマ粒子を発生させる装置の場合、プラズマ粒子発生原料ガスの流量は、電極間距離、放電場におけるガス流通面の断面積および長さ、印加する高周波の周波数、プラズマ粒子発生原料ガスの組成によって任意に決定できる。例えば、放電場におけるガス流通面の断面積0.5cm
2、放電場のガス流通方向の長さ2cm、周波数40kHzの場合、プラズマ粒子発生原料ガスをプラズマ状態にするのに十分な放電を行う観点から、好ましいプラズマ粒子発生原料ガスの流量は、25cc/min以上500cc/min以下である。放電場におけるガス流通面の断面積を大きくした場合や、長さを長くした場合、ラジカル寿命の長い元素や分子をプラズマ粒子発生原料ガスに用いた場合は、プラズマ粒子発生原料ガスの流量を増やすことができる。
【0023】
(プラズマ粒子発生方法)
本実施形態において、プラズマ粒子を発生させる方法は、特に限定されないが、プラズマ粒子発生原料ガスの圧力が大気圧近傍のときにプラズマ粒子を発生できる方法が好ましい。また、プラズマ粒子は、単原子まで分解された粒子でなくてもよい。さらに、プラズマ粒子の温度は室温であってもよい。そのため、プラズマ粒子としては、エネルギー効率の観点から、非熱平衡プラズマ粒子であることが好ましく、大気圧非熱平衡プラズマ粒子であることがより好ましい。このようなプラズマ粒子の発生方法としては、特に限定されないが、例えば、誘電体バリア放電、誘導結合、マイクロ波、マグネトロン、コロナ放電などによるプラズマ粒子発生方法が挙げられる。この中でも、誘電体バリア放電によるプラズマ粒子発生方法が好ましい。誘電体バリア放電とは、一対の電極の対向する面の少なくとも一方を誘電体で遮った状態で、電極間に交流電圧を印加した場合に起こる放電のことをいう。誘電体バリア放電に用いる装置の形状としては、電極表面が誘電体により覆われた形状であれば特に限定されず、例えば、平行平板型や同軸円筒型などの形状が挙げられる。これらの形状であれば、装置の大きさの自由度も高く、大量の気体を反応させる際に装置の大型化が容易である。これらの観点よりプラズマ粒子発生方法としては誘電体バリア放電によるプラズマ粒子発生方法が特に好ましい。
【0024】
また、誘電体バリア放電において、電極間距離とは、一対の電極の対向する面の両方に誘電体が設けられている場合、2つの誘電体の間の距離とする。あるいは、一対の電極の対向する面の一方だけに誘電体が設けられている場合、誘電体が設けられていない電極から誘電体までの距離とする。
【0025】
誘電体バリア放電において、電極間距離dは、d≦5mmを満たすことが好ましく、0mm<d≦5mmを満たすことがより好ましい。安定した放電を保ちながら、電極間の短絡を防ぐ為には0.5mm≦d≦5mmを満たすことがさらに好ましい。
【0026】
誘電体としては、絶縁体や低導電率の材料であれば特に限定されないが、例えば、ガラス、石英、ソーダガラス、石英ガラス、アルミナ、チタン酸バリウムが挙げられる。誘電体としては、強誘電体であることが好ましい。誘電体の誘電率が高いと、ある電圧を電極間に印加した場合に誘電体表面に蓄積される電荷の量が高く、放出される電子の量が多い。放電される電子の量が多いと、(1) 放電場に存在する気体分子に照射する電子が多く、同じ放電場の体積でもプラズマ粒子の発生率が高く、 (2) 絶縁破壊電圧の高い気体であってもプラズマ粒子を発生させ易く、安定したプラズマ粒子を得易い。したがって、プラズマ粒子の発生の安定性やプラズマ粒子の発生率の観点から、誘導体としては、誘電率が高い方が好ましい。強誘電体としては、チタン酸バリウム、Pb(Zr,Ti)O
3、RbHSO
4、Sr
2CeS
4、K
2SeO
4が好ましく、特に好ましいのはチタン酸バリウムである。
【0027】
誘電体バリア放電を起こすために、一対の電極の少なくとも一方は誘電体で覆われている。電極間に存在する誘電体の数は特に限定されない。一体の誘電体が両電極に挟持されていてもよいし、一方又は両方の電極の対向する面に誘電体が積層されていてもよいし、両電極間に複数の誘電体が積層されていてもよい。なお誘電体が電極を「覆う」とは、一対の電極間で電子の通過を阻害するように誘電体が存在していることを意味し、物理的に一体物の誘電体が電極を被覆している必要はなく、一対の電極間において、電子の短絡により特定の箇所のみで放電してしまう構造でなければ、面方向にも垂直方向にも誘電体の切れ目や隙間が存在してもよい。
【0028】
誘電体バリア放電において、電極間に印加する交流電圧としては、正弦波、矩形波または鋸波の交流電圧であることが好ましい。該交流電圧の周波数は1kHz以上1MHz以下であることが好ましく、3kHz以上100kHz以下がより好ましい。該周波数を前記範囲内とすることにより、エネルギー効率が高く、安定な放電が行えるため、好ましい。
【0029】
誘電体バリア放電において、電極間に印加する電圧は2kV以上20kV以下であることが好ましい。誘電体バリア放電において、より好ましい印加電圧は、プラズマ粒子発生原料ガス、電極間距離、周波数によっても異なるが、プラズマ粒子が発生する電圧であればよい。例えば電極間距離2mm、周波数40kHzの場合、プラズマ粒子を発生させるには3kV以上7kV以下の電圧を印加するのが好ましい。
【0030】
〔プラズマ粒子を二酸化炭素含有原料ガスに接触させる工程〕
本実施形態の一酸化炭素の製造方法は、上記工程で発生したプラズマ粒子を、二酸化炭素含有原料ガスに接触させることにより、一酸化炭素を含有するガスを生成させる工程を含む。
【0031】
(二酸化炭素含有原料ガス)
本実施形態に用いる二酸化炭素含有原料ガスとしては、二酸化炭素を含有していれば、特に限定されないが、エネルギー効率の観点から、二酸化炭素含有原料ガス中の二酸化炭素の含有量は高い方が好ましい。具体的には、二酸化炭素含有原料ガス中の二酸化炭素の含有量は、好ましくは50容量%以上であり、より好ましくは80容量%以上である。二酸化炭素含有原料ガス中の二酸化炭素の含有量の上限は、特に限定されないが、例えば、100容量%である。二酸化炭素含有原料ガス中の二酸化炭素の含有量が前記範囲内であると、二酸化炭素の励起に消費されるプラズマ粒子の割合が増加し、投入したエネルギーに対する二酸化炭素変換効率が向上する。
【0032】
また、本実施形態に用いる二酸化炭素含有原料ガスは、工場からの二酸化炭素を含有する排気ガスなども用いることができる。この排気ガスとしては、二酸化炭素を含有していれば原料として用いることができる。この排気ガス中の二酸化炭素の含有量は、例えば、1容量%以上であればよいが、上述したとおりエネルギー効率の観点から、高い方が好ましい。
【0033】
本実施形態に用いる二酸化炭素含有原料ガスは、酸素や含酸素化合物を含有していてもよいが、安全性や一酸化炭素の収率の観点から、二酸化炭素含有ガス中の酸素や含酸素化合物の含有量は少ない方が好ましい。具体的には、二酸化炭素含有原料ガス中の酸素の含有量は、10容量%以下であるのが好ましく、より好ましくは1容量%以下である。二酸化炭素含有原料ガス中の酸素の含有量が前記範囲内であると、生成した一酸化炭素含有ガスの爆発を抑制でき、安全性が向上する。また、二酸化炭素含有原料ガス中の酸素の含有量が前記範囲であると、生成した一酸化炭素が酸素や酸素由来オゾンにより酸化され二酸化炭素に再変換することを抑制でき、一酸化炭素の収率が良好となる。
【0034】
二酸化炭素含有原料ガスとして、火力発電や製鉄所、石化原料を用いる工場などからの排気ガスを精製することなく、そのまま混合して用いることも可能である。さらに、二酸化炭素含有原料ガスとして、異なる複数の工場からの排気ガスを混合して用いることも可能である。これらの排気ガスは、通常、硫黄や硫黄化合物などの不純物を含んでいる。そのため、触媒を用いる従来の一酸化炭素の製造方法では、これらの排気ガスをそのまま原料ガスとして用いると、硫黄や硫黄化合物などの不純物により触媒の劣化を招き、効率良く一酸化炭素を製造することができない。一方、本実施形態の一酸化炭素の製造方法は、触媒を用いる必要がないため、二酸化炭素含有原料ガスとして、硫黄や硫黄化合物を含む排気ガスをそのまま用いることができ、効率良く一酸化炭素を製造することができる。二酸化炭素含有原料ガス中の硫黄及び硫黄化合物の含有量は、特に限定されないが、3容量%以下であることが好ましい。二酸化炭素含有原料ガス中の硫黄及び硫黄化合物の含有量が前記範囲内ならば、二酸化炭素とプラズマ粒子との反応効率にも特に影響しない。また、硫黄及び硫黄化合物などの不純物を除去してもよい。該不純物を除去するタイミングは反応前後で適宜選択することができる。例えば、生成した一酸化炭素含有ガスを触媒反応により他の物質に転化するプロセスを連続的に行いたいと考えるのであれば、予め二酸化炭素含有原料ガス中の不純物を除去してもよい。
【0035】
二酸化炭素含有原料ガスを後述のプラズマ粒子照射部に連続的に供給する場合、二酸化炭素含有原料ガスの流量は特に限定されず、ガス流通面の断面積および長さ、プラズマ粒子の照射条件によって任意に決定できる。例えば、プラズマ粒子照射部のガス流通面の断面積1cm
2の場合、プラズマ粒子と二酸化炭素含有原料ガスとを効率よく接触させる観点から、好ましい二酸化炭素含有原料ガスの流量は、25cc/min以上500cc/min以下である。
【0036】
〔その他の工程〕
本実施形態の一酸化炭素の製造方法は、脱硫や脱酸素の原料精製工程や二酸化炭素分離などの生成物の精製工程等の工程をさらに含んでいてもよい。
【0037】
≪一酸化炭素の製造装置≫
本実施形態の一酸化炭素の製造装置は、
プラズマ粒子を発生させるプラズマ粒子発生装置と、
プラズマ粒子と二酸化炭素含有原料ガスとを接触させるプラズマ粒子照射部と、
を備える。
【0038】
本実施形態の一酸化炭素の製造装置において、プラズマ粒子発生装置によって発生したプラズマ粒子を、二酸化炭素含有原料ガスに接触させることにより、一酸化炭素を生成させることができる。
【0039】
本実施形態の一酸化炭素の製造装置は、上述した一酸化炭素の製造方法に好適に使用することができる。
【0040】
(プラズマ粒子発生装置)
本実施形態に用いるプラズマ粒子発生装置としては、特に限定されないが、例えば、誘電体バリア放電、誘導結合、マイクロ波、マグネトロン、コロナ放電などによるプラズマ粒子発生装置が挙げられる。
【0041】
本実施形態に用いるプラズマ粒子発生装置としては、誘電体バリア放電によるプラズマ粒子発生装置が好ましい。具体的には、プラズマ粒子発生装置は、一対の電極と、前記一対の電極の対向する面の少なくとも一方に設けられた誘電体と、前記一対の電極に接続され、電極間に電圧を印加させる高周波電源と、を備え、前記一対の電極間で起こる放電によりプラズマ粒子を発生させる装置であることが好ましい。特に、前記誘電体は強誘電体であることが好ましい。
【0042】
(プラズマ粒子照射部)
本実施形態に用いるプラズマ粒子照射部とは、上記プラズマ粒子発生装置により発生したプラズマ粒子が二酸化炭素含有原料ガスと接触する部分のことをいう。本実施形態に用いるプラズマ粒子照射部の形状は、特に限定されないが、プラズマ粒子と二酸化炭素含有原料ガスとが効率よく接触できる形状であることが好ましい。本実施形態に用いるプラズマ粒子照射部の形状の具体例としては、特に限定されないが、二酸化炭素含有原料ガスを供給する管とプラズマ粒子を供給する管とが排気管に接続されたY字型の形状や、二酸化炭素含有原料ガスの流通する管の壁面にプラズマ粒子を照射するノズルを1個以上設置した形状などが挙げられる。プラズマ粒子は、通常、寿命が短いため、発生したら直ちに二酸化炭素含有原料ガスに接触させることが好ましい。したがって、プラズマ粒子発生装置の放電電極からプラズマ粒子照射部までの距離は、近い方が好ましい。具体的には放電電極からプラズマ粒子照射部までの距離は、好ましくは3mm以下であり、より好ましくは1mm以下である。
【0043】
(その他の装置等)
本実施形態の一酸化炭素の製造装置は、上述したプラズマ粒子発生装置及びプラズマ粒子照射部以外に、必要に応じてその他の装置等を備えていてもよい。その他の装置等としては、特に限定されないが、例えば、二酸化炭素含有原料ガスの供給装置、プラズマ粒子発生原料ガスの供給装置、脱硫装置、原料精製装置、生成物精製装置などが挙げられる。
【0044】
以下、本実施形態の一酸化炭素の製造装置の具体例について、
図1及び2を参照して詳細に説明する。
【0045】
図1は、本実施形態の一酸化炭素の製造装置の一例を示す図である。
図1に示される製造装置は、プラズマ粒子発生原料ガスタンク1、マスフロー2、高周波電源3、プラズマ粒子発生装置4、内部電極5、円筒型外部電極6、プラズマ粒子照射部7、生成物用タンク8、円筒形の同軸型電極リアクター(誘電体)9、二酸化炭素含有原料ガスタンク10及びマスフロー11を備えている。
【0046】
プラズマ粒子発生装置4において、誘電体バリア放電によってプラズマ粒子が発生する。リアクター9は、誘電体も兼ねている。高周波電源3は、一対の電極5および6に接続されている。電極6はリアクター9の外表面を覆うように配置され、電極5はリアクター9内部の中央に配置される。なお、一対の電極の少なくとも一方は、リアクター内部に配置されている。
【0047】
リアクター9の一端にはマスフロー2を介してプラズマ粒子発生原料ガスタンク1が接続されている。
図1に示す例では2つのプラズマ粒子発生原料ガスタンク1がリアクター9に接続されているが、該原料ガスタンク1の数は該原料ガスの構成成分数によって変更できる。プラズマ粒子発生原料ガスタンク1から供給されるプラズマ粒子発生原料ガスの流量はマスフロー2を用いて制御される。リアクター9の他端はプラズマ粒子照射部7に接続されている。さらにプラズマ粒子照射部7は生成物用タンク8に接続されている。生成物を一時保管する必要が無ければ、生成物用タンク8は必ずしも必要ではなく、生成した一酸化炭素が他の合成反応原料として供給できるようにプラズマ粒子照射部7を他の反応器に接続してもよい。
【0048】
プラズマ粒子照射部7の一端にはマスフロー11を介して二酸化炭素含有原料ガスタンク10が接続されている。
図1に示す例では2つの二酸化炭素含有ガスタンク10がプラズマ粒子照射部7に接続されているが、該原料ガスタンク10の数は該原料ガスの構成成分数によって変更できる。二酸化炭素含有原料ガスタンク10から供給される二酸化炭素含有原料ガスの流量はマスフロー11を用いて制御される。
【0049】
図2はプラズマ粒子発生装置4の横断面を示す。円筒状の電極6によって円筒状のリアクター(誘電体)9が包囲されている。棒状の電極5は露出しているが、誘電体によって包囲されていてもよい。棒状の電極5が誘電体で包囲された場合、誘電体9は無くてもよい。電極5または6の一方にのみ誘電体が設けられている場合には、誘電体が設けられている電極の対向する側の電極表面から誘電体の表面までの距離を電極間距離dとする。両電極5および6に誘電体が設けられている場合、電極間距離dは、それらの誘電体の間隙とする。
【0050】
電極間距離dは5mm以下に設定されることが好ましい。電極間距離dの下限は、プラズマの様子の観察のしやすさの観点で0.5mm以上とするのが好ましい。電極間距離dを前記範囲内とすることにより、安定した放電を保ちながら、電極間の短絡を防ぐことができる。電極5の直径は任意に決められるが、取り扱いのしやすさから1mm以上100mm以下が好ましい。誘電体9の厚さは任意に決められるが、取り扱いのしやすさから0.1mm以上2mm以下が好ましい。誘電体9は、電極6に隙間無く接触していることが好ましく、安定して設置できるのであれば電極6に固定する必要はない。
【0051】
電極5および6の素材としては、十分な電気伝導性があれば特に限定はなく、例えば、Cu、Al、Fe、W、Ag、Au、Ptなどの金属やステンレス(SUS304、SUS316等)を用いることができる。
【0052】
誘電体9の素材としては、絶縁体や低導電率の材料であれば特に限定されず、例えば、ソーダガラス、石英ガラス、アルミナなどが挙げられる。誘電体9における導電率の上限は、高電圧印加時の漏電防止の観点で6×10
-4S/m以下が好ましい。誘電体9として、チタン酸バリウム、Pb(Zr,Ti)O
3、RbHSO
4、Sr
2CeS
4、K
2SeO
4などの強誘電体を用いると、放電効率が高くなることから、エネルギー効率上好ましい。
【0053】
なお、誘電体バリア放電時に測定される分光スペクトルに基づき算出されるプラズマ発光強度が放電効率の指標となる。本明細書中、波長305nmから385nmまでの分光スペクトルのピーク面積の合計をプラズマ発光強度とする。
【0054】
プラズマ粒子発生装置として誘電体バリア放電によるプラズマ粒子発生装置を用いた場合、高周波電源により前記一対の電極間に電圧を印加させる際の周波数は、1kHz以上1MHz以下であることが好ましく、3kHz以上100kHz以下がより好ましい。前記周波数で電圧を印加することにより、エネルギー効率が高く、安定な放電が行えるため、好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、本実施形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されない。
【0056】
[実施例1]
誘電体バリア放電によるプラズマ粒子発生装置を有する装置を用いて、二酸化炭素含有原料ガスから一酸化炭素を以下のとおり製造した。該一酸化炭素を製造する装置の構成及び手順は以下のとおりとした。
【0057】
〔製造装置〕
一酸化炭素を製造する装置の構成は
図1に示すとおり、プラズマ粒子を発生させるプラズマ粒子発生装置4と、プラズマ粒子と二酸化炭素含有ガスとを接触させるプラズマ粒子照射部7と、を備える構成とした。プラズマ粒子発生装置4は、円筒形の同軸型電極リアクター9と、前記リアクター9の外表面を覆うように配置された電極6と、前記リアクター9内部の中央に配置された電極5と、前記電極5および6に接続された高周波電源3と、を備える装置とした。前記リアクター9にはプラズマ粒子発生原料ガスタンク1がマスフロー2を介して接続されている構成とした。前記プラズマ粒子照射部7には二酸化炭素含有原料ガスを供給する原料ガスタンク10がマスフロー11を介して接続されている構成とした。
【0058】
内部電極(電極5)としては直径6mmのSUS316製の棒を用いた。内部電極用の誘電体は設置しなかった。リアクター9としては内径1cm、厚さ1.5mmの石英ガラス管を用いた。該リアクター9は外部電極(電極6)用の誘電体を兼ねた。このときの電極間距離d(電極5と誘電体との距離)は2mmであった。外部電極としては幅2cmのアルミニウム箔を用いた。該アルミニウム箔(外部電極)を前記石英ガラス管(リアクター9)外表面に巻き付けた。プラズマ粒子照射部7はリアクター9と同じ素材を用いており、Y字管の形状であった。Y字管のそれぞれの管の角度は120度であり、プラズマ粒子発生装置は、Y字管の接合部から0.5mm離れた場所に設置した。
【0059】
〔原料ガス〕
プラズマ粒子発生原料ガスとしては、Arの含有量が99.9容量%、N
2の含有量が0.1容量%のガスを用いた。該原料ガスの流量は50cc/minとした。
【0060】
二酸化炭素含有原料ガスとしてはCO
2が99.9容量%、N
2の含有量が0.1容量%のガスを用いた。該原料ガスの流量は50cc/minとした。
【0061】
〔一酸化炭素の製造〕
プラズマ粒子発生原料ガスを、該原料ガスタンク1からマスフロー2を介してプラズマ粒子発生装置4に供給した。プラズマ粒子発生装置4において、高周波電源3により、電極5と電極6との間に電圧を印加して誘電体バリア放電を行うことによりプラズマ粒子を発生させた。印加した電圧は±4kVの正弦波であり、周波数は40kHzであった。
【0062】
プラズマ粒子照射部7において、前記発生したプラズマ粒子と二酸化炭素含有原料ガスとを接触させて、一酸化炭素を含有する生成ガスを得た。該一酸化炭素の製造時間は、合計1時間であった。
【0063】
生成ガスを、ガスクロマトグラフィーにより分析した。分析に用いたガスクロマトグラフィーは島津製作所社製の「GC−2010plus」(商品名)とした。カラムは信和化工株式会社製の「SHINCARBON ST」(商品名)[内径3mm、長さ6m]を用いた。サンプリングラインの温度は150℃に保持し、サンプルガス量は1mLとした。キャリアガスはHeとし、カラム流量は30mL/分とした。カラムの昇温プログラムは、分析開始から4分間は90℃に保持、その後10℃/分で200℃まで昇温した後、200℃で15分保持した。
【0064】
このようにして生成ガスの分析を行った結果、炭素含有物としては、CO選択率は100%であり、CO
2の転化率は11.2%であった。
【0065】
[実施例2]
プラズマ粒子発生原料ガスとして、N
2の含有量が99.9容量%、Arの含有量が0.1容量%のガスを用い、誘電体バリア放電における印加電圧を±6kVとした以外は、実施例1と同様にして一酸化炭素を製造した。実施例1と同様にして生成ガスの分析を行った結果、炭素含有物としては、CO選択率は100%、CO
2の転化率は11.6%であった。
【0066】
[実施例3]
二酸化炭素含有原料ガスとして、CO
2の含有量が50容量%、N
2の含有量が50容量%のガスを用いた以外は、実施例1と同様にして一酸化炭素を製造した。実施例1と同様にして生成ガスの分析を行った結果、炭素含有物としては、CO選択率は100%、CO
2の転化率は7.2%であった。
【0067】
[実施例4]
一酸化炭素の製造時間を合計50時間とした以外は、実施例1と同様の条件で一酸化炭素を製造した。実施例1と同様にして生成ガスの分析を行った結果、炭素含有物としては、CO選択率は100%、CO
2の転化率は11.2%であり、CO選択率およびCO
2の転化率の低下は見られなかった。
【0068】
[実施例5]
二酸化炭素含有原料ガスとして、CO
2の含有量が50容量%、N
2の含有量が49.5容量%、H
2Sの含有量が0.5容量%のガスを用いた以外は、実施例1と同様にして一酸化炭素を製造した。実施例1と同様にして生成ガスの分析を行った結果、炭素含有物としては、CO選択率は100%、CO
2の転化率は6.9%であった。