(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952099
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】血圧計
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20160630BHJP
【FI】
A61B5/02 630E
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-136056(P2012-136056)
(22)【出願日】2012年6月15日
(65)【公開番号】特開2014-147(P2014-147A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000127570
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(72)【発明者】
【氏名】田村 悠
(72)【発明者】
【氏名】柴山 昭久
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 和彦
【審査官】
遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2005/074793(WO,A1)
【文献】
特開2001−120506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血圧計に一体に設けられて血圧測定に関する情報を表示する表示部を血圧計の天面で確認出来るように有する血圧計において、
前記天面及び前記天面に平行に配置される表示部を共に水平方向に対して傾斜するように形成し、
前記表示部の右側、左側、上側または下側のうちいずれかに前記表示部と並べて配置されるように前記天面の面上に設けられた、携帯用無線通信端末の載置部と、 前記載置部の少なくとも一部に設けた滑り止め用の滑止部と、
前記載置部上の携帯用通信端末に対して通信を行うように設けられた短距離無線通信手段と、
を有することを特徴とする、血圧計。
【請求項2】
前記滑止部の少なくとも一部を前記天面から突出させたことを特徴とする請求項1に記載の血圧計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用通信端末を載置して利用出来る血圧計の技術である。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、血圧計に接続した携帯電話から送信された血圧データ等をサーバで受信すると共にドクター用コンピュータで処理する、血圧データ管理システムが記載されている。特許文献1に記載された血圧計は、シリアルケーブル、データ転送装置及び通信ケーブルを介して携帯電話に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−172398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された血圧計は、携帯電話に有線で接続されており、携帯電話に接続する際に2本のケーブルとデータ転送装置を接続しなければならないため、携帯電話との接続に手間がかかる点で問題がある。
【0005】
一方、血圧計においては、無線の送信機を内部に設置して、携帯電話のような携帯用無線通信端末と無線で接続することにより、ケーブル等の有線接続を省略することも考えられる。しかし、無線による接続は、携帯用無線通信端末の配置位置が悪く、血圧計から発生した電波が携帯電話まで届かない場合、血圧計と携帯電話の接続が出来なくなる点で問題がある。
【0006】
本願の血圧計は、上記問題に鑑み、携帯用無線端末を無線によって確実に接続できる血圧計上に配置可能にすることで、携帯用無線端末と確実に無線通信可能な血圧計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1の血圧計は、血圧測定に関する情報を表示する表示部を天面に有する血圧計において、前記天面に設けられた、携帯用無線通信端末の載置部と、前記載置部上の携帯用通信端末に対して通信を行うように設けられた短距離無線通信手段と、を有するようにした。
【0008】
(作用)請求項1の血圧計においては、血圧計の天面上の載置部に携帯用無線通信端末を載置することにより、表示部の視認性を阻害せず、かつ血圧計の短距離無線通信手段による電波を確実に携帯用無線通信端末に届けることが出来る。
【0009】
また、血圧計の天面に載置された携帯用無線通信端末の表示部が血圧計の表示部と並んで配置されるため、血圧計の使用者は、血圧計の表示部と携帯用無線通信端末の表示部を同時に見ることが出来る。
【0010】
請求項2は、請求項1の血圧計において、前記天面を水平方向に対して傾斜するように形成し、前記載置部に少なくとも一部に滑り止め用の滑止部を設けるようにした。
【0011】
血圧計においては、液晶表示部を血圧計の使用者に見やすくするように血圧計の天面を水平方向に対して傾斜させているものが多い。一方、天面が傾斜する血圧計に携帯用無線通信端末の載置部を設けても、携帯用無線通信端末は、傾斜する載置部から滑り落ちてしまうため、携帯用無線端末を載置部上に載置出来ない。
【0012】
(作用)請求項2の血圧計においては、載置部に載置された携帯用無線通信端末が、滑止部に接触することにより、天面と共に傾斜する載置部から滑り落ちることなく載置部上に保持される。また、天面に載置された携帯用無線通信端末の表示部が、血圧計の表示部と共に斜めに並んで配置されることにより、血圧計の表示部と携帯用無線通信端末の表示部は、更に同時に視認されやすくなる。
【0013】
請求項3は、請求項2に記載の血圧計において、前記滑止部の少なくとも一部を前記天面から突出させた。
【0014】
(作用)請求項3の血圧計においては、滑止部の少なくとも一部を天面の前方に突出させることにより、載置部上の携帯用無線通信端末と接触しやすくなるため、傾斜する載置部上における携帯用無線通信端末の保持力が更に向上する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の血圧計によれば、血圧計の機能を阻害すること無く携帯用無線端末を血圧計の上に載置出来るため、携帯用無線端末と確実に無線接続可能な血圧計を得ることが出来る。また、請求項1の血圧計によれば、血圧計の表示部と携帯用無線通信端末の表示部を同時に見ることが出来るため、血圧計の表示部と携帯用無線通信端末の表示部を同時に見ながら行う携帯用無線通信端末の操作をしやすくなる。
【0016】
請求項2の血圧計によれば、携帯用無線端末を血圧計の傾斜する天面上に載置しやすくなるため、携帯用無線端末と確実に無線接続可能な血圧計を得ることが出来る。更に、請求項2の血圧計によれば、血圧計の表示部と携帯用無線通信端末の表示部を更に同時に視認しやすくなるため、血圧計の表示部を携帯用無線通信端末の表示部と同時に見ながら行う携帯用無線通信端末の操作を更にしやすくなる。
【0017】
請求項3の血圧計によれば、載置部上における携帯用無線通信端末の保持力が向上したことにより、水平方向に対する天面の傾斜が大きな血圧計や、携帯用無線通信端末の重量が重い場合においても傾斜する載置部上に携帯用無線端末を載置出来る。つまり、携帯用無線端末を血圧計の傾斜する天面上に更に載置しやすくなるため、携帯用無線端末と確実に無線接続可能な血圧計を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本願に係る血圧計の実施例を正面側から見た斜視図である。
【
図2】本実施例に係る血圧計を背面側から見た斜視図である。
【
図4】本実施例の血圧計の使用状態を示す斜視図である。
【
図5】通電状態における本実施例の液晶表示部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本願発明に係る血圧計の実施例を各図を用いて説明する。
【0020】
尚、各図においては、血圧計の各方向をそれぞれ、(上方向:下方向:左方向:右方向:前方向:後方向=Up:Lo:Le:Ri:Fr:Re)方向をとして説明を行なう。
【0021】
本実施例の血圧計1は、
図1に示すように上ケース3と下ケース4によって形成されたケース2、銘板5、液晶表示部6(尚、符号6の表示部には、有機EL(Electro Luminescence)パネルを利用したもの等、液晶以外の表示部を用いても良い)液晶以外の表示部を用いても良い)、電源ボタン7、携帯用無線通信端末14の滑り止めに使用される滑止部8を有する。
【0022】
下ケース4は、上面(天面)が開口する箱形に形成され、上面の開口部4aは、水平方向(底面4bの面方向)に対して後方から前方に下降するように傾斜する。上ケース3は、開口部4aを閉塞するように傾斜した状態で下ケース4に取り付けられる。
【0023】
上ケース3には、左上端部近傍に液晶表示部6の取付窓9が設けられ、取付窓9には、液晶表示部6が上ケース3の天面3aと面一になるようにはめ込まれる。液晶表示部6の下には、後述する電源スイッチ23を押し下す電源ボタン7が設けられる。電源ボタン7は、複数の可撓部3bによって円孔3cに保持され、かつ天面3aの上方に突出する。
【0024】
また、上ケース3の天面3aには、銘板5が両面テープ11等によって貼り付けられる。銘板5は、ガラス板やプラスチック板などの透明板で形成され、銘板5の天面5cは、上ケースに固定されることによって後方から前方に下降するように傾斜する平らな傾斜面となる。銘板の裏面(下面)には、液晶表示部の配置部位5dを除いて不透明の印刷処理を施す。尚、下ケース4(
図2では、ケース2)の外側前面4eと、外側後面4fは、それぞれ銘板5の面方向に対して直交するか、または下ケース4の内側に向けて鋭角となるように形成される。その結果、本実施例の血圧計1においては、銘板5の面方向に直交する方向から血圧計1を見た場合、ケース2が銘板5の内側に隠れて見えなくなり、かつ銘板5だけが見えるため、血圧計1を利用するものから見た見栄えが向上している。
【0025】
液晶表示部の配置部の周辺には、銘板5の裏面の印刷処理において、液晶表示部に表示される数値の単位等を表す周辺印刷部12が設けられる。尚、携帯用無線通信端末14の載置部13は、本実施例において、液晶表示部6と周辺印刷部12の右側の領域(周辺印刷部12の右端部12aの右側領域)に形成される。液晶表示部6と周辺印刷部12は、載置部13を確保するために、例えば銘板の左右方向の中央線L1よりも左方の領域に配置されるようにする。
【0026】
また、銘板5には、電源ボタン7と対応する位置に電源ボタン7の挿通円孔5aが設けられる。電源ボタン7は、銘板の天面5cとほぼ面一となるように挿通円孔5aに挿通される。
【0027】
また、銘板5には、滑止部8の取付用の有底溝5bが設けられる。滑止部8は、ゴム等の滑りにくい素材により、左右に延びる平板状に形成され、その両端部は、円弧状に形成される。有底溝5bは、滑止部8の外形に沿って銘板5の左下端部近傍から右下端部近傍まで左右に延びるように形成される。滑止部8は、有底溝5bに嵌めこまれ、かつ図示しない両面テープや銘板5の裏面からのネジ止め等によって有底溝5bに取り付けられ、かつ銘板5の天面5cの斜め前方に突出する。
【0028】
尚、本実施例においては、ゴムのような弾性体からなる滑止部8を銘板5の天面5cから突出させることによって携帯用無線通信端末14を係止しているが、滑止部は、このような構成に限定されるものではない。滑止部は、例えば、天面5cにおける載置部13の形成箇所の少なくとも一部に摩擦係数を増加させる印刷を施すことで形成されても良いし、滑止部8のような一様な凸部ではなく、弾性体等からなる微小な突起を載置部13に多数設けることによって形成されてもよい。
【0029】
図1に示すように、滑止部8は、少なくとも一部が載置部13に含まれるように形成される。尚、各図に示される滑止部8は、一例として表示部6の下側領域から載置部13の下側領域まで形成されているが、滑止部8は、載置部13の下端部近傍にのみ設けられていれば良い。また、銘板5には、携帯用無線通信端末14の載置部であることを示すマーク13aを載置部13の位置に印刷しても良い。
【0030】
また、載置部13の配置は、本実施例のように液晶表示部6の右側に限られない。例えば、載置部は、液晶表示部と周辺印刷部を銘板の右側領域に配置することによって、液晶表示部の左側に設けられてもよい。また、載置部は、液晶表示部の上方または下方に設けられても良い。尚、載置部を液晶表示部の上下方向のいずれかに設ける場合には、液晶表示部と載置部を横長に形成し、かつ載置部状の携帯用無線通信端末を横向きに係止するように滑止部を形成すると良い。
【0031】
携帯用無線通信端末14は、携帯用コンピュータ機能を有する携帯機器であって、スマートフォンと呼ばれるような端末である。例えば、携帯用無線通信端末14においては、矩形の板状からなる形状を有し、片面のほぼ全面に設けられた、振れることで端末の操作を行うことの出来るタッチパネル式の液晶表示部14b(尚、符号14bの表示部には、有機ELパネルを利用したもの等、液晶以外の表示部を用いても良い)と、液晶表示部14bの下方に必要に応じて設けられた、操作ボタン14cと、を有するようにする。
【0032】
携帯用無線通信端末14は、短距離無線通信用のICチップ(図示せず)を内部に備え、かつ
図4に示すように載置部13上に載置されることにより、液晶表示部6及び周辺印刷部12を隠さないように血圧計1の上に配置される。また、滑止部8が載置部13(銘板5)の下端部近傍に配置されているため、載置部13上の携帯用無線通信端末14は、
図4に示すように天面5cから突出した滑止部8の上に配置されることによってその裏面を係止されるか、または少なくともその下端部14aを滑止部8の上端部8aによって係止されることにより、水平方向に対して傾斜する載置部13上から滑り落ちること無く保持される。
【0033】
このように、血圧計1の上において、携帯用無線通信端末14を傾斜する載置部13上に配置出来ることにより、携帯用無線通信端末14の液晶表示部14bは、血圧計の液晶表示部6の隣に並んで配置される。その結果、血圧計1の液晶表示部6を携帯用無線通信端末14の液晶表示部14bと同時に見ることが出来るため、血圧計1を操作する者においては、血圧計1の液晶表示部6を携帯用無線通信端末14の液晶表示部14bと同時に見ながら携帯用無線通信端末14を操作しやすくなる。
【0034】
一方、下ケ―ス4の内側には、エアーポンプ15、メイン基板16,ホルダー17、アンテナ18,エアソケット19、及びアクチュエータ20等が固定される。メイン基板16は、下ケース4の円孔4dから露出する給電コネクタ22に接続したACアダプタ(図示せず)か、または、電池蓋25と端子26を介して下ケース4の内側に設けた電池収納部(図示せず)内の電池から給電を受ける。また、液晶表示部6と無線送信用のアンテナ18は、ホルダー17を介して下ケース4に固定されると共に接続されるメイン基板16のCPU21によって制御される。液晶表示部6は、測定された血圧値の最高値、最低値及び脈拍数等を表示する。エアソケット19は、腕体接続用のエアケーブル(図示せず)を接続するためのコネクタ19aが下ケース4の円孔4cから露出するように下ケース4に固定され、かつエアーポンプ15とアクチュエータ20に接続される。エアーポンプ15とアクチュエータ20は、接続されるメイン基板16のCPU21によって制御され、血圧測定時には、アクチュエータ20の開閉動作に伴いエアーポンプ15がエアーケーブル(図示せず)を介して腕体に空気を送り込む。
【0035】
また、アンテナ18は、CPU21によって制御される短距離無線通信手段24を構成し、載置部13上の携帯用無線通信端末14に設けられたICチップとの間で血圧測定に関する結果データを通信する。短距離無線通信手段24には、例えば、Felica(登録商標)のような、非接触式のICカードに使用されるシステムを採用し、当該システムにおいては、一例としてその通信距離を10mm程度とすることが考えられる。血圧計1から携帯用無線通信端末14に対して行われる無線通信は、携帯用無線通信端末14が載置部13上に載置されて、端末内部のICチップが血圧計内のアンテナ18に近接することによって、確実に行われる。
【符号の説明】
【0036】
1 血圧計
5a 銘板の天面
6 液晶表示部(請求項1の表示部)
8 滑止部
13 載置部
14 携帯用無線通信端末
18 アンテナ(短距離無線通信手段)
24 短距離無線通信手段
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