(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸状に形成され、その内部に部品吸着用の負圧を供給するための負圧通路とこの負圧通路から分岐して側面に開口する分岐通路とを備えるヘッド本体に装着され、かつ、所定の係止部材により前記ヘッド本体に係止されることで、当該ヘッド本体および前記係止部材と共に、所定の部品供給部から部品を吸着して目標位置に搬送する部品搬送用ヘッドを構成するノズルであって、
前記ヘッド本体に対する装着用孔部を備え、この装着用孔部に前記ヘッド本体の先端部が差し込まれることで前記ヘッド本体に装着されるように形成されるとともに、この装着状態で、前記係止部材により前記ヘッド本体に係止されることが可能で、かつ前記装着用孔部の内側面が前記分岐通路の開口部分に対向して前記負圧通路に供給された前記部品吸着用の負圧の一部が作用するように形成されていることを特徴とする部品吸着用ノズル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のヘッドにおいては、ノズルの着脱が円滑に行われるようにヘッド本体に対するノズルのはめ合い寸法が設定される。そのため、ノズルの位置(特にノズル先端の位置)は、上記係止片の弾発力によってある程度位置決めされるものの、完全に安定しているとは言えず、ヘッド本体に対して不規則な傾き等が生じる。
【0006】
しかし、部品の極小化が進む近年では、このような不規則なノズルの傾き等が、部品の実装精度を確保する上で無視できなくなりつつある。なお、その対策として、例えば係止片の弾発力を強化してノズルの位置決め精度を高めることも考えられるが、この場合には、ノズルの円滑な着脱操作が阻害される可能性があり、タクトタイムへの影響が懸念される。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、ノズルの着脱性能を阻害することなく、ノズルの位置の安定化を図ることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、部品を吸着して目標位置に搬送する部品搬送用ヘッドであって、軸状のヘッド本体と、このヘッド本体の先端部に着脱可能に装着される部品吸着用のノズルと、前記先端部に装着されたノズルを前記ヘッド本体に対して係止する係止部材と、を備え、前記ノズルは、装着用孔部を備え、この装着用孔部に前記ヘッド本体の先端部が差し込まれることで当該ヘッド本体に装着され、前記ヘッド本体は、その内部に、部品吸着用の負圧を前記ノズルに供給するための負圧通路と、この負圧通路から分岐して、当該ヘッド本体の側面のうち前記装着用孔部の内側面に対向する位置に開口
し、前記負圧通路に供給された前記部品吸着用の負圧の一部を前記内側面に作用させる分岐通路と、を備えるものである。
【0009】
この部品搬送用ヘッドにおいては、部品吸着用の負圧がヘッド本体の負圧通路を通じてノズルに供給されることで、当該ノズルにより部品の吸着が行われる。その際、分岐通路を通じてヘッド本体の側面とノズルの装着用孔部の内側面との間に負圧が供給されることで、ノズルがヘッド本体側に吸い寄せられて位置決めされる。これによりノズルの位置が部品吸着時に安定することとなる。また、ノズル交換時には、通常、負圧の供給は停止されるため、当該負圧の影響を受けることなくノズルの交換を容易に行うことが可能となる。
【0010】
この部品搬送用ヘッドにおいて、前記負圧通路は、当該負圧通路のうち前記ヘッド本体の先端部の位置に、当該負圧通路の内径が上流側よりも下流側で小さくなるように形成された絞り部を有しており、前記分岐通路は、前記負圧通路のうち、前記絞り部よりも上流側の位置で当該負圧通路から分岐しているのが好適である。
【0011】
この構成によれば、負圧通路が絞り部を有することで、ノズルの種類(ノズル径の大きさ)によって分岐通路の負圧の値が変動することが抑制される。そのため、ノズルの種類(ノズル径の大きさ)に拘わらず、安定的にノズルを位置決めすることが可能となる。
【0012】
なお、上記の部品搬送用ヘッドにおいて、前記係止部材が、前記ヘッド本体に各々設けられ、前記先端部に装着されたノズルをその径方向両側から弾性的に挟持する一対の弾性係止片を含む場合には、前記分岐通路は、前記一対の弾性係止片の並び方向と異なる方向に向かって開口しているのが好適である。例えば、前記分岐通路は、前記一対の弾性係止片の並び方向に対して直交する方向に向かって開口するのが望ましい。
【0013】
これらの構成によれば、一対の弾性係止片の弾発力により、当該弾性係止片の並び方向にノズルが位置決めされるとともに、負圧による吸引力により、前記分岐通路が開口する方向にノズルが位置決めされる。このように、二方向にヘッドが位置決めされることで、ヘッド本体に対するノズルの位置決め信頼性が向上する。
【0014】
上記の部品搬送用ヘッドにおいて、当該ヘッド本体に対するノズルの装着が円滑に行われるようにするには、前記ヘッド本体の先端部にノズル誘い込み用のテーパ部が備えられているのが望ましいが、この場合、前記分岐通路は、当該ヘッド本体の側面のうち前記テーパ部の近傍であってかつ当該テーパ部よりも後端側の位置に開口するものであるのが好適である。
【0015】
つまり、ノズルの安定性を高める上では、前記装着用孔部のうち後端側(ノズル後端側)よりも先端側の位置をヘッド本体に吸い寄せる方が有利である。この点、上記構成によれば、テーパ部による負圧のリークを回避しつつヘッド本体の先端近傍の位置でノズルの装着用孔部内周面に負圧を作用させることが可能となる。
【0016】
一方、本発明の部品実装装置は、部品供給部により供給される部品を基板上に搬送して実装する部品実装装置であって、前記部品供給部から前記基板上に部品を搬送する部品搬送用ヘッドとして、上述した部品搬送用ヘッドの何れかを備えているものである。
【0017】
この部品実装装置によれば、部品搬送用ヘッドのノズルの位置を上記の通り安定化することが可能であるため、これにより部品の実装位置精度を高めることが可能となる。
【0018】
また、本発明の部品吸着用ノズルは、軸状に形成され、その内部に部品吸着用の負圧を供給するための負圧通路とこの負圧通路から分岐して側面に開口する分岐通路とを備える
ヘッド本体に装着され、かつ、所定の係止部材により前記ヘッド本体に係止されることで、当該ヘッド本体および前記係止部材と共に、所定の部品供給部から部品を吸着して目標位置に搬送する部品搬送用ヘッドを構成するノズルであって、前記ヘッド本体に対する装着用孔部を備え、この装着用孔部に前記ヘッド本体の先端部が差し込まれることで前記ヘッド本体に装着されるように形成されるとともに、この装着状態で、前記係止部材により前記ヘッド本体に係止されることが可能で、かつ前記装着用孔部の内側面が前記分岐通路の開口部分に対向
して前記負圧通路に供給された前記部品吸着用の負圧の一部が作用するように形成されているものである。
【0019】
この部品吸着用ノズルは、上述した部品搬送用ヘッドに適用されるノズルとして有用なものであり、当該ノズルとして適用されることにより、上述した部品搬送用ヘッドにおいてヘッド本体に対して安定的に位置決めされる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の部品搬送用ヘッドによれば、部品吸着用の負圧を利用してヘッド本体に対してノズルを位置決めするため、ノズルの着脱性能を阻害することなく、ノズルの位置の安定化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0023】
図1及び
図2は、本発明に係る部品実装装置M(本発明にかかる部品搬送用ヘッドおよび部品吸着用ノズルが適用された部品実装装置)を概略的に示しており、
図1は平面図で、
図2は正面図で、それぞれ部品実装装置Mを概略的に示している。なお、
図1及び
図2には、各図の方向関係を明確にするためにXYZ直角座標軸が示されている。
【0024】
部品実装装置Mは、基台1と、この基台1上に配置されてプリント配線板(PWB;Printed wiring board)等の基板3をX方向に搬送する基板搬送機構2と、部品供給部4、5と、部品実装用のヘッドユニット6と、このヘッドユニット6を駆動するヘッドユニット駆動機構と、部品認識のための撮像ユニット7等とを備える。
【0025】
前記基板搬送機構2は、基台1上において基板3を搬送する一対のコンベア2a、2aを含む。これらコンベア2a、2aは、同図の右側から基板3を受け入れて所定の実装作業位置(同図に示す位置)に搬送し、図略の保持装置により当該基板3を保持する。そして、実装作業後は、この基板3を同図の左側に搬出する。
【0026】
前記部品供給部4、5は、前記基板搬送機構2の両側(Y方向両側)に配置されている。これら部品供給部4、5のうち一方側の部品供給部4には、基板搬送機構2に沿ってX方向に並ぶ複数のテープフィーダ4aが配置されている。これらテープフィーダ4aは、IC、トランジスタ、コンデンサ等の小片状のチップ部品を収納、保持したテープが巻回されたリールを備え、このリールから間欠的にテープを繰り出しながら基板搬送機構2近傍の所定の部品供給位置に部品を供給する。一方、他方側の部品供給部5には、X方向に所定の間隔を隔ててトレイ5a、5bがセットされている。各トレイ5a、5bには、後述するヘッドユニット6による取出しが可能となるように、各々、QFP(Quad Flat Package)やBGA(Ball Grid Array)等のパッケージ型の部品が整列して載置されている。
【0027】
前記ヘッドユニット6は、部品供給部4、5から部品を取り出して基板3上に実装するものであり、基板搬送機構2および部品供給部4,5等の上方に配置されている。
【0028】
前記ヘッドユニット6は、前記ヘッドユニット駆動機構により一定の領域内でX方向およびY方向に移動可能とされている。このヘッドユニット駆動機構は、基台1上に設けられる一対の高架フレームにそれぞれ固定され、Y方向に互いに平行に延びる一対の固定レール8と、これら固定レール8に支持されてX方向に延びるユニット支持部材11と、このユニット支持部材11に螺合挿入されてY軸サーボモータ10により駆動されるボールねじ軸9とを含む。また、ユニット支持部材11に固定され、ヘッドユニット6をX方向に移動可能に支持する固定レール13と、ヘッドユニット6に螺合挿入されてX軸サーボモータ15を駆動源として駆動されるボールねじ軸14とを含む。つまり、ヘッドユニット駆動機構は、X軸サーボモータ15の駆動によりボールねじ軸14を介してヘッドユニット6をX方向に移動させる共に、Y軸サーボモータ10の駆動によりボールねじ軸9を介してユニット支持部材11をY方向に移動させ、その結果、ヘッドユニット6を一定の領域内でX方向およびY方向に移動させる。
【0029】
前記ヘッドユニット6は、部品実装用の複数本(当例では6本)の軸状のヘッド16と、これらヘッド16をヘッドユニット6に対して昇降(Z方向の移動)および軸心回りに回転(
図2中のR方向に回転)させるための、サーボモータを駆動源とするヘッド駆動機構等とを備えており、各ヘッド16により部品供給部4、5から部品を吸着、保持して基板3上に搬送し、当該基板3上の所定位置に実装する。なお、当実施形態では、前記各ヘッド16が本発明の部品搬送用ヘッドに相当する。
【0030】
後に詳述するが、各ヘッド16は、先端に部品吸着用のノズル40を備えている。これらノズル40は、それぞれ電動切替弁を介して負圧発生装置、正圧発生装置および大気の何れかに連通可能とされている。つまり、前記ノズル40に負圧が供給されることで当該ノズル40による部品の吸着、保持が可能となり、その後、ノズル40に正圧が供給されることで当該部品の吸着、保持が解除されるようになっている。
【0031】
前記撮像ユニット7は、前記各ヘッド16による部品の保持状態を画像認識するために、部品供給部4、5から取り出された部品を実装に先立ち撮像するものであり、前記基台1上であって前記トレイ5a、5bの間の位置に配置されている。
【0032】
上述した部品実装装置Mでは、ヘッドユニット6が部品供給部4、5上に移動し、各ヘッド16により部品が吸着、保持される。部品吸着後、ヘッドユニット6が撮像ユニット7上を通過する、具体的には、ヘッドユニット6が撮像ユニット7上をX方向に一度通過することで、各ヘッド16に保持されている部品が撮像ユニット7により撮像され、当該画像に基づき各ヘッド16に保持された部品の吸着状態が認識される。そして、各ヘッド16に保持された部品のなかに不良部品や補正不可能な吸着状態のものがある場合には、当該部品が廃棄対象として登録された上で、ヘッドユニット6が基板3上に移動し、前記廃棄対象以外の部品が順次基板3上に実装される。このとき、上記部品認識結果に応じてヘッドユニット6の位置およびヘッド16の回転角度等が制御されることで、基板3上の各搭載点に部品が適切に実装される。
【0033】
こうして基板3上に部品が実装されると、ヘッドユニット6が図外の部品廃棄ボックス上へ移動し、上記廃棄対象の部品を廃棄する。これにより実装動作の一サイクルが終了し、必要に応じてこの動作が繰り返されることで所要部品が基板3上に実装される。
【0034】
なお、各ヘッド16のノズル40は交換が可能であり、必要に応じて形状や大きさの異なる他のノズル40と交換される。ノズル交換は、実装動作の一サイクルが終了し、次のサイクルが開始される前に、例えば、ヘッドユニット6が前記基台1上に設置される図外のノズル交換装置上に配置され、ここでヘッド16の昇降に伴い後記ヘッド本体20に対してノズル40が抜き差しされることにより行われる。
【0035】
次に、部品実装用の前記ヘッド16の構成の詳細について説明する。
【0036】
図3、
図4及び
図5は、前記ヘッド16の先端部分を示しており、
図3は正面図で、
図4及び
図5は縦断面図で各々ヘッド16を示している。
【0037】
これらの図に示すように、ヘッド16は、前記ヘッドユニット6に対して昇降駆動および回転駆動されるヘッド本体20と、このヘッド本体20の先端(下端)に着脱可能に装着される部品吸着用のノズル40と、ノズル40を前記ヘッド本体20に対して係脱可能に係止する一対の係止片32(本発明の係止部材に相当する)と、を備えている。
【0038】
前記ヘッド本体20は、円筒形状のシャフト部材21と、このシャフト部材21の先端部(
図3等では下端部)に固定されるホルダ部材22とを含む。
【0039】
ホルダ部材22は、前記ノズル40を保持するものである。ホルダ部材22は、上向きに開口する嵌合用凹部24aを有する嵌合部24と、この嵌合部24の下側に繋がって下向きに延びかつ上下方向に貫通する円筒状の軸部25と、を備えている。このホルダ部材22は、
図3〜
図5に示すように、前記嵌合用凹部24aにシャフト部材21が差し込まれた状態で当該シャフト部材21に外嵌され、この状態でボルト30により当該シャフト部材21の先端部に固定されている。
【0040】
ホルダ部材22の軸部25の内部(内部通路26という)と、前記シャフト部材21の内部(内部通路23という)とは軸方向に連通しており、これら内部通路23,
26により、ノズル40に対して部品吸着用の負圧等を供給するための負圧通路が構成されている。
【0041】
前記軸部25には、その内部通路26から直角に分岐して、当該軸部25の側面のうち、ノズル40の後記装着用孔部41aの内側面に対向する位置に開口する分岐通路27が形成されている。この分岐通路27は、後に詳述するように、内部通路26(負圧通路)に供給される部品吸着用の負圧の一部をノズル40に作用させることで、当該ノズル40を位置決めするためのものである。
【0042】
なお、前記軸部25の内部通路26は、当該内部通路26のうち軸部25の先端部の位置に、通路径が上流側よりも下流側(同図では上側より下側)で小さくなるように形成された絞り部26aを有しており、前記分岐通路27は、この絞り部26aの直ぐ上側の位置で、内部通路26から分岐している。
【0043】
前記ノズル40は、前記ヘッド本体20に対して装着される部分であるノズル本体部41と、部品を吸着する部分である、先端の部品吸着部42と、を含む。
【0044】
ノズル本体部41は、ヘッド本体20(ホルダ部材22)の軸部25を受け入れるための装着用孔部41aと、前記部品吸着部42を保持するための保持用孔部41bとが上下に連続した筒型の形状を成している。
【0045】
部品吸着部42は、上下方向に貫通する内部通路44を備えた略円筒状を成している。この部品吸着部42は、ノズル本体部41の前記保持用孔部41bに挿入され、ノズル本体部41に対する軸方向の変位が許容される一方で、ノズル本体部41に対する回転(軸回りの回転)が規制されるように当該ノズル本体部41に対してスプラインで結合されている。具体的には、部品吸着部42の外周面に、軸方向に延びるガイド溝42が形成され、このガイド溝42に、前記保持用孔部41bの内側面に固定された係止球48が介在することで、ノズル本体部41に対する部品吸着部42の一定範囲内の軸方向変位が許容される一方で、ノズル本体部41に対する部品吸着部42の回転(軸回りの回転)が規制されるようになっている。
【0046】
なお、ノズル本体部41および部品吸着部42は各々、外周に鍔部
41d、42aを備えており、これら鍔部
41d、42aの間に介在するように、圧縮コイルバネ46が前記部品吸着部42に装着されている。つまり、部品吸着部42は、圧縮コイルバネ46の弾発力によりノズル本体部41に対して離間する方向(同図では下側)に付勢されており、部品吸着時には、ノズル本体部41に対して部品吸着部42が弾性変位することで、部品に対する部品吸着部42の衝突加重が圧縮コイルバネ46により吸収されるようになっている。
【0047】
前記ノズル40は、
図3及び
図5に示すように、ノズル本体部41の装着用孔部41aにヘッド本体20(ホルダ部材22)の軸部25が差し込まれることにより当該軸部25に外嵌されている。そして、この状態で前記一対の係止片32によりホルダ部材22に係止されることで、ヘッド本体20(ホルダ部材22)に対して係脱可能に保持されている。
【0048】
詳細に説明すると、前記一対の係止片32は、上下方向に互いに平行に延びる短冊状(矩形)の板ばねからなり、各々先端部(下端部)に内側に屈曲した係止部32aを備えている。これら係止片32は、
図5に示すように、ホルダ部材22を挟んで向かい合わせに配置されており、各々係止部32aが軸部25の側方部分に位置する状態で、ボルト34により嵌合部24に固定されている。他方、ノズル40のノズル本体部41のうち、その後端部(上端部)には、前記一対の係止片32に各々対応する一対の被係止部41cが形成されている。これら
被係止部41cは、
装着用孔部41aを挟んで互いに外向きに膨出する断面山型の形状を有している。つまり、
図6に示すように、前記軸部25を装着用孔部41aに受け入れながら、ヘッド本体20(ホルダ部材22)にノズル40が装着されると、ノズル40の各被係止部41cに沿って各係止片32が外側に撓み変形する。そして、ノズル40が完全にヘッド本体20(軸部25)に装着されると、
図5に示すように、各係止片32が弾性復帰して係止部32aがそれぞれ被係止部41cに対してノズル先端側(下側)から係合し、これによりノズル40が各係止片32により両側から挟持された状態でヘッド本体20(ホルダ部材22)に保持される。他方、前記係止片32の弾発力よりも大きい引き抜き力(下向きの力)がノズル40に与えられると、各係止片32によるノズル40の係止状態が解除され、これによりノズル40がヘッド本体20から分離されるようになっている。
【0049】
ここで、前記ヘッド本体20のホルダ部材22の構成について補足しておくと、ホルダ部材22の分岐通路27は、前記一対の係止片32の並び方向と異なる方向、具体的には、
図4及び
図5に示すように、各係止片32の並び方向と直交する方向に向かって開口している。また、ヘッド本体20の先端部(軸部25の先端部)には、ノズル誘い込み用のテーパ部28が形成されており、前記分岐通路27は、軸部25の先端近傍であって当該テーパ部28よりも上方の位置で内部通路26から分岐している。
【0050】
次に、上述した部品実装用のヘッド16の作用効果について説明する。
【0051】
上記ヘッド16において、部品供給部4、5からの部品吸着時には、負圧発生装置で生成された負圧がヘッド本体20の負圧通路(内部通路23、26)を通じてノズル40(部品吸着部42)の先端に供給され、これにより、ヘッド16による部品吸着が行われる。その際、負圧通路に導入される負圧の一部は、分岐通路27を通じてヘッド本体20の外周面(軸部25の外周面)とノズル40の内周面(装着用孔部41aの内周面)との間に供給され、これによりノズル40がヘッド本体20側(
図4では右側)に吸い寄せられる。このようにヘッド本体20側にノズル40が吸い寄せられることで、ノズル40がヘッド16の軸方向と直交する方向に位置決めされる。詳細には、ノズル40は、上記の通り一対の係止片32により両側から挟持されており、前記分岐通路27は、これら係止片32の並び方向と直交する方向に向かって開口している。よって、ノズル40は、ヘッド本体20に対し、一対の係止片32の弾発力により当該係止片32の並び方向に位置決めされるとともに、負圧による吸引力により前記係止片32の並び方向と直交する方向に位置決めされる。
【0052】
このようなヘッド16の構成によれば、少なくとも部品吸着時には、上記のように当該ノズル40がヘッド本体20に対して位置決めされることで、ノズル40の位置が安定する。従って、ノズル40がヘッド本体20に対して着脱可能な構成でありながらも、ノズル40の位置を高度に安定させた状態で部品の実装作業を進めることが可能となり、その結果、部品実装装置Mにおける部品の実装精度が高められる。しかも、ノズル交換時には、通常、負圧の供給が停止されるため、ノズル交換装置におけるノズル交換作業については、前記負圧の影響を受けることなくノズル40の交換を容易に行うことが可能となる。
【0053】
また、このヘッド16において、ヘッド本体20の負圧通路(内部通路26)は、当該負圧通路のうちヘッド本体20(軸部25)の先端部の位置に絞り部26aを有しており、分岐通路27は、この絞り部26aの直ぐ上側の位置で負圧通路(内部通路26)から分岐している。このような構成によれば、絞り部26aが存在することで、当該絞り部26aよりも上流側の位置における負圧値に変動が生じ難くなり、分岐通路27の負圧値、つまりノズル40を吸引する力が、当該ノズル40の種類(ノズル径の大きさ)によって変動することが抑制される。従って、上記ヘッド16の構成によれば、ヘッド本体20に装着されるノズル40の種類に左右されることなく、安定的にノズル40を位置決めすることができるという利点がある。
【0054】
加えて、上記ヘッド16の構成によれば、分岐通路27が、ヘッド本体20(軸部25)の先端近傍の位置であってテーパ部28よりも上方の位置で内部通路26から分岐しているので、テーパ部28による負圧のリークを回避しつつ、ヘッド本体20の先端近接の位置でノズル40の装着用孔部41aに負圧を作用させることもできる。このようにヘッド本体20の先端(軸部25の先端)に近接する位置でノズル40を吸引する構成によれば、軸部25の基端に近接する位置でノズル40を吸引する構成に比べ、当該吸引箇所を支点としてノズル40がヘッド本体20(軸部25)に対して傾くなどの現象が生じ難くなる。そのため、より適切に、ノズル40をヘッド本体20に対して位置決めできるという利点がある。
【0055】
なお、上記ヘッド16において、上述のような作用効果を良好に奏しながら、適切に部品実装作業を進めるには、ヘッド本体20(軸部25)とノズル40(ノズル本体部41)との嵌め合い、分岐通路27および絞り部26aの径等が適切であることが必要であるが、出願人は、主に0402(0.4mm×0.2mm)サイズ〜3216(3.2mm×1.6mm)サイズ用のノズル40について以下のような実験結果を得ている。
【0056】
まず、ヘッド本体20(軸部25)とノズル40(ノズル本体部41)との嵌め合いに関しては、軸部25とノズル本体部41(装着用孔部41a)との隙間(装着用孔部41aの内径−軸部25の外径)が0.002mm以上、0.1mm以下の範囲内に入るように、軸部25とノズル本体部41(装着用孔部41a)との嵌め合い寸法が設定されているのが好適である。これは、上記隙間が0.002mm未満であると、ノズル交換作業に支障が生じ易くなるためである。また、
図7に示すように、隙間の増大に伴い分岐通路27からの吸入空気量が増加するため、隙間が0.1mmを越える場合には、所定の部品吸着力を維持することが困難になるためである。また、上記説明では言及していないが、この部品実装装置Mにおいては、ヘッド本体20内(負圧通路)の空気流量を流量センサ(又は、空気圧を圧力センサ)で検出することによりノズル先端の部品の有無を判断しており、上記隙間が0.1mmを越えると、分岐通路27からの吸入空気量が増え、負圧通路内における部品吸着時と部品未吸着時との空気流量に変化(又は、空気圧変化)が生じ難くなり、部品の有無判断に支障が生じ、適切な部品の吸着および搬送動作が阻害されるためである。
【0057】
次に、分岐通路27の径(D1)に関しては、0.2mm以上、1.0mm以下の範囲内であるのが好適である。これは、分岐通路27の径(D1)が0.2mm未満である場合には、ノズル本体部41の吸引力不足により、ノズル40の位置決め性能が阻害され、逆に、1.0mmを越えると、分岐通路27からの吸入空気量が増えて、上述と同様に、部品吸着力不足等の不都合が生じるためである。
【0058】
絞り部26aの径(D2)に関しては、0.2mm以上、1.0mm以下の範囲内であるのが好適である。これは、絞り部26aの径(D2)が0.2mm未満である場合には、負圧破壊時の応答遅れが顕著になり、実装不良の要因となるためである。つまり、基板3上への部品実装時には、上述の通り、ノズル40(負圧通路)に正圧を供給することで部品の吸着状態を解除するが、正圧の供給による負圧通路内の圧力変化は絞り部26aの径(D2)の大きさに左右される。例えば
図8は、絞り部26aの径(D2)が0.3mmと0.4mmの場合の負圧通路内の経時的な圧力変化を測定した結果を示しているが、径(D2)の小さい方(0.3mm)が圧力の上昇(負圧破壊)が緩慢で、応答遅れが生じ易いことが考察できる。絞り部26aの径(D2)が0.2mm未満であると、この負圧破壊の応答遅れが顕著になり、部品吸着状態の解除タイミングに遅れが生じて実装不良が発生し易くなる。逆に、1.0mmを越えると、絞り部26aよりも上流側の負圧値がノズル40の種類(ノズル径の大きさ)による影響を受けやすくなり、当該絞り部26aの機能が十分に発揮されなくなる。
【0059】
なお、上述した部品実装装置Mは、本発明に係る部品実装装置(本発明に係る部品実搬送用ヘッドが適用される部品実装装置)の好ましい実施形態の例示であって、部品実装装置Mや、これに適用されるヘッド16の具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0060】
例えば、上記実施形態では、ノズル40は一対の係止片32により両側から挟持された状態でヘッド本体20に保持されているが、一つの係止片により片側から係止される構成であってもよい。要するに、本発明の係止部材の具体的な構成は、ヘッド本体20に装着されたノズル40を当該ヘッド本体20に着脱可能に係止することができれば、種々の構成を適用することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、本発明に係る部品搬送用ヘッドを部品実装装置に適用した例について説明したが、本発明に係る部品搬送用ヘッドは部品実装装置以外の装置についても適用可能である。例えば、所定位置に配置された部品供給用のトレイ(部品供給部)上から部品を吸着して試験装置上に搬送して当該部品の各種電気的な検査を行う、いわゆる部品検査装置などにも適用可能である。