特許第5952162号(P5952162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952162
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】カード用コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/71 20110101AFI20160630BHJP
   G06K 7/00 20060101ALI20160630BHJP
   H01R 13/64 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   H01R12/71
   G06K7/00 069
   H01R13/64
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-235049(P2012-235049)
(22)【出願日】2012年10月24日
(65)【公開番号】特開2014-86320(P2014-86320A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】山方 博文
(72)【発明者】
【氏名】船井 勇希
(72)【発明者】
【氏名】竹島 英樹
【審査官】 楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−123395(JP,A)
【文献】 特開2003−229206(JP,A)
【文献】 特開2010−212057(JP,A)
【文献】 特開2003−243092(JP,A)
【文献】 特開2004−039306(JP,A)
【文献】 特開2012−043715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00〜12/91
G06K 7/00
H01R 13/56〜13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端面に開口したスロットの内部に複数の第1接続端子を配列し、所定の外形と厚さを有する略矩形の第1カードと、露出した複数の第2接続端子を配列し、第1カードに比べて、外形が小さく厚さも薄く形成された略矩形の第2カードと、を挿入可能なカード用コネクタであって、
前記第1カード又は前記第2カードが挿抜される凹部を有する板状のハウジングと、
前記ハウジングの凹部を覆うカバー板と、
前記ハウジングの奥部に配置され、前記凹部の開口に向かって突出すると共に、前記第1カードのスロットに挿入可能なヘッダに覆われた複数のコンタクトと、
前記凹部の片翼に配置され、前記凹部に挿入された前記第1カードを排出可能なプッシュ・プッシュ形のイジェクト機構と、を備え、
前記イジェクト機構は、前記ハウジングの一方の側壁に沿って移動する帯板状のスライド部材を有し、
前記スライド部材は、前記凹部の片翼側から当該凹部の中央部に向かって突出し、前記第1カード又は前記第2カードの先端縁に当接する係合爪を有し、
前記係合爪は、前記第2カードを前記凹部に挿入すると、当該第2カードが乗り上げる傾斜面をカード当接面に有し、
前記第1カードを前記凹部に挿入すると、前記係合爪が複数の前記コンタクトの下方に移動して、前記第1接続端子が前記コンタクトに接続し、
前記第2カードを前記凹部に挿入すると、当該第2カードの先端縁が前記ヘッダの先端縁に当接して、当該第2カードの進入を阻止するカード用コネクタ。
【請求項2】
前記第1カードは、一方の側面途上に切り欠かれた方形の溝部を有し、
前記スライド部材は、基端部が当該スライド部材に固定され、前記第1カードの一方の側面に弾性をもって付勢すると共に、前記第1カードの溝部に出入り可能なV字状に屈曲された屈曲部を有する片持ち状の板ばねを備えている請求項1記載のカード用コネクタ。
【請求項3】
前記スライド部材は、ハート状のカム溝を一方の側面に有し、
前記イジェクト機構は、
前記ハウジングに保持され、前記スライド部材を前記第1カードが排出される方向に力を付勢する圧縮コイルばねと、
一端部が前記ハート状のカム溝に連結し、他端部が前記ハウジングの側面に回動自在に支持される案内棒と、を更に有する請求項1又は2記載のカード用コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード用コネクタに関する。特に、正規のカードとは外形と厚さが異なる異種類のカードをコネクタに誤挿入した場合に、異種類のカードによる不正確な接続を阻止するカード用コネクタの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
カード型の記憶装置であるメモリカードは、記憶媒体としてフラッシュメモリを採用している。メモリカードは、非常に小型であり、データの読み書きに殆んど電力を消費しないという利点がある。又、メモリカードは、データの読み書きにFDやMOなどのように駆動装置を必要としないというメリットがあるため、消費電力や携帯性が重要視される、例えば、デジタルカメラの記録メディアとして普及している。
【0003】
近年のデジタルカメラは、電子シャッターを用いた高速連写が可能となっている。このため、高速連写対応型のデジタルカメラは、通常の撮像用のSD(Secure Digital)カードと、高速連写用の書き込み速度の速いXQD(登録商標)カードとが別々に挿入可能な二つのカード用コネクタを備えている。例えば、これらのカード用コネクタは、プリント基板を間にして、プリント基板の両面に実装されている。
【0004】
SDカードとXQDカードとは、外形と厚さが異なっている。XQDカードに比べて、SDカードは外形が小さく、その厚さも薄く形成されている。このような外形と厚さが異なる多種類のカードを一つのカード用コネクタに装着可能なカード用コネクタが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1によるカード用コネクタは、コネクタ本体とカバー部材とによって形成されるハウジングが仕切り板によって上下に仕切られ、SDカードとメモリスティックデュオ(登録商標)カードとを選択的に装着可能になっている。このカード用コネクタに備わるイジェクト機構は、ハウジングの上段に位置し、SDカードの前端面に係合するカード押出部と、ハウジングの下段に位置し、カード押出部の下部より突出し、メモリスティックデュオカードの前端面に当接する張出部を有している。張出部は、SDカードとメモリスティックデュオカードが、カード用コネクタに装着された際に、カード用コネクタからカード後端面が突出する量を一致させるために、カード押出部より前方(カード挿入口側)に突出している。
【0006】
しかし、特許文献1によるカード用コネクタは、メモリスティックデュオカードの前端面に当接する張出部が仕切り板及びハウジング底面と干渉しないよう、張出部と仕切り板及びハウジング底面との間に所定の隙間が形成されている。そのため、張出部の高さが低くなり、張出部がカードの前端面の一部にしか当接せず、カード挿入時又は排出時にカードと張出部との当接が外れ易くなる。張出部とカードとの当接が外れてしまうと、カードの前端が張出部と仕切り板又はハウジング底面との間の隙間内に入り込んでしまい、カードの正常な挿入又は排出が妨げられ、又はカード及びイジェクト機構が損傷する心配があった。
【0007】
上述した不具合を解消するため、大きさの異なる第1及び第2のカードを装着でき、安定したカード挿入及びカード排出が可能であり、低背化が可能となるカード用コネクタが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
特許文献2によるカード用コネクタは、複数のコンタクト、第1のカードの幅を検出して第1の位置から第2の位置へ移動し得るロック金具、第2のカードが通過し得る通過開口を少なくとも含む、第1の位置から第2の位置へ回転可能なアクチュエータ、第1の位置から第2の位置へ移動可能であって、第1及び第2のカードを上下に振り分ける仕切り板、及び第1及び第2のカードに当接し得るカード当接部材を少なくとも有するイジェクト機構を備え、カード当接部材は、第1及び第2のカードそれぞれの前端面に当接し得る第1及び第2のカード押圧面を有し、第2のカード押圧面は、可動金属部材に形成されており、可動金属部材は、第2のカード押圧面が第1の位置にあるとき、第1のカード押圧面を覆い隠すように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−206963号公報
【特許文献2】特開2012−174644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1又は特許文献2によるカード用コネクタは、カードの端部に露出した金属箔からなる接続端子にカンチレバーコンタクトが接触するように構成している。しかしながら、XQDカードは、端面に開口したスロットの内部に接続端子を配列している。したがって、特許文献1又は特許文献2に開示されたカード用コネクタの構造を用いて、SDカードとXQDカードを共用することは困難であり、前述したように、SDカード用のカード用コネクタとXQDカード用のカード用コネクタをプリント基板の両面に実装することが好ましい。
【0011】
一方、前述したように、XQDカードに比べて、SDカードは外形が小さく、その厚さも薄く形成されているので、XQDカード用のカード用コネクタにSDカードを誤挿入することが可能になっている。この場合、SDカードがカード用コネクタの奥部に配置されたコンタクトを損傷させる心配がある。正規のカードとは外形と厚さが異なる異種類のカードをコネクタに誤挿入した場合に、異種類のカードによる不正確な接続を阻止するカード用コネクタが求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、正規のカードとは外形と厚さが異なる異種類のカードをコネクタに誤挿入した場合に、異種類のカードによる不正確な接続を阻止するカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、端面に開口したスロットの内部に第1接続端子を配列した第1カードが挿入される凹部を有するハウジングと、ハウジングを覆うカバー板と、ハウジングの奥部に配置され、第1カードのスロットに挿入可能なヘッダに覆われた複数のコンタクトと、挿入されたカードを排出可能なプッシュ・プッシュ形のイジェクト機構とで、カード用コネクタを構成し、イジェクト機構を構成するL字状のスライド部材の係合爪に傾斜面を形成し、第1カードに比べて、外形が小さく厚さも薄く形成された第2カードを誤挿入した場合に、第2カードが係合爪を乗り上げて、ヘッダの前面に当接することで、複数のコンタクトに接触困難に、カード用コネクタを構成することにより、この課題が解決可能なことを見出し、これに基づいて、以下のような新たなカード用コネクタを発明するに至った。
【0014】
(1) 一方の端面に開口したスロットの内部に複数の第1接続端子を配列し、所定の外形と厚さを有する略矩形の第1カードと、露出した複数の第2接続端子を配列し、第1カードに比べて、外形が小さく厚さも薄く形成された略矩形の第2カードと、を挿入可能なカード用コネクタであって、前記第1カード又は前記第2カードが挿抜される凹部を有する板状のハウジングと、前記ハウジングの凹部を覆うカバー板と、前記ハウジングの奥部に配置され、前記凹部の開口に向かって突出すると共に、前記第1カードのスロットに挿入可能なヘッダに覆われた複数のコンタクトと、前記凹部の片翼に配置され、前記凹部に挿入された前記第1カードを排出可能なプッシュ・プッシュ形のイジェクト機構と、を備え、前記イジェクト機構は、前記ハウジングの一方の側壁に沿って移動する帯板状のスライド部材を有し、前記スライド部材は、前記凹部の片翼側から当該凹部の中央部に向かって突出し、前記第1カード又は前記第2カードの先端縁に当接する係合爪を有し、前記係合爪は、前記第2カードを前記凹部に挿入すると、当該第2カードが乗り上げる傾斜面をカード当接面に有し、前記第1カードを前記凹部に挿入すると、前記係合爪が複数の前記コンタクトの下方に移動して、前記第1接続端子が前記コンタクトに接続し、前記第2カードを前記凹部に挿入すると、当該第2カードの先端縁が前記ヘッダの先端縁に当接して、当該第2カードの進入を阻止するカード用コネクタ。
【0015】
(1)の発明によるカード用コネクタは、所定の外形と厚さを有する略矩形の第1カードと、第1カードに比べて、外形が小さく厚さも薄く形成された略矩形の第2カードと、を挿入できる。そして、第1カードは、一方の端面に開口したスロットの内部に複数の第1接続端子を配列している。一方、第2カードは、露出した複数の第2接続端子を配列している。
【0016】
(1)の発明によるカード用コネクタは、板状のハウジングとカバー板を備えている。ハウジングは、第1カード又は第2カードが挿抜される凹部を有している。カバー板は、ハウジングの凹部を覆っている。
【0017】
又、(1)の発明によるカード用コネクタは、ヘッダに覆われた複数のコンタクトとプッシュ・プッシュ形のイジェクト機構を備えている。ヘッダは、ハウジングの奥部に配置され、凹部の開口に向かって突出すると共に、第1カードのスロットに挿入できる。イジェクト機構は、凹部の片翼に配置され、凹部に挿入された第1カードを排出できる。
【0018】
イジェクト機構は、帯板状のスライド部材を有している。スライド部材は、ハウジングの一方の側壁に沿って移動できる。スライド部材は、係合爪を有している。係合爪は、凹部の片翼側から凹部の中央部に向かって突出している。又、係合爪は、第1カード又は第2カードの先端縁に当接できる。
【0019】
係合爪は、第2カードを凹部に挿入すると、第2カードが乗り上げる傾斜面をカード当接面に有している。第1カードを凹部に挿入すると、係合爪が複数のコンタクトの下方に移動して、第1接続端子がコンタクトに接続できる。一方、第2カードを凹部に挿入すると、第2カードの先端縁がヘッダの先端縁に当接して、第2カードの進入を阻止できる。
【0020】
ハウジングは、絶縁性を有している。絶縁性のハウジングとは、非導電性の材料からなるハウジングのことであってよく、非導電性の合成樹脂を成形して、所望の形状のハウジングを得ることができる。
【0021】
ハウジングの凹部には、複数のコンタクトを並設配置してよく、このコネクタが実装されるプリント基板と第1カードとを電気的に接続できる。コンタクトは導電性を有しており、導電性の金属板を打ち抜き加工又は折り曲げ加工して、所望の形状の導電性のコンタクトを得ることができる。コンタクトは、加工の容易性や、ばね特性、導電性などを考慮すれば、例えば、銅合金が好ましく用いられるが、銅合金に限定されない。
【0022】
一般に、カードは、絶縁性のプラスチック筐体の内部にICチップが収納されている。このICチップは、例えば、筐体の表面に貼り付けられた複数の金属箔に接続されている。そして、並設配置された複数の金属箔がカードの接続端子となっている。個別のコンタクトは、個別の接続端子と一対一に接続されてよく、機械的及び電気的に接続する。
【0023】
コンタクトは、ばねの働きが片持ち梁であるカンチレバーコンタクトが好ましく用いられる。コンタクトは、弾性アームと固定アームで構成されてよく、弾性アームは、ヘッダの底面に配置され、第1カードに形成された第1接続端子に接触する接点を設けてよく、固定アームは、凹部を構成する対向壁に圧入して固定することができる。リード部を固定アームの端部に形成してもよく、このリード部をプリント基板にはんだ接合することにより、このカード用コネクタを表面実装用コネクタとすることができる。
【0024】
ハウジングは、一方の側壁と、一方の側壁と直交して第1カードの先端縁が対向する対向壁を有してよく、一方の側壁及びカバー板の他方の折り曲げ片と対向壁で囲われた薄直方体状の空間を「第1カード又は第2カードが挿抜される凹部」と規定できる。又、カード保持部とすることもできる。そして、この凹部がカバー板で覆われることにより、対向壁と対向してカードが挿入される長方形の開口が形成される。対向する一方の側壁と他方の折り曲げ片の距離は、第1カードの幅よりも僅かに広く、対向する一方の側壁と他方の折り曲げ片によりカードの姿勢(傾き)が規制され、一方の端面に開口したスロットの内部に配列された第1接続端子とコンタクトとが正しく位置合わせできる。
【0025】
カバー板は、金属薄板からなり、展開された金属薄板を成形加工することにより、所望の形状のカバー板を得ることができる。カバー板は、導電性の金属薄板からなることが好ましく、カバー板がハウジングを覆うことにより、シールド(電磁遮蔽)の効果を得ることができる。
【0026】
カバー板は、両翼が直角に折り曲げ加工されてよく、これらの折り曲げ片に略矩形穴を形成し、ハウジングの両側面に突出するランスに係止するようにしてもよい。又、プリント基板にはんだ接合されるリード片をカバー板に設けてよく、プリント基板との接合強度を補強でき、リード片をプリント基板のグラウンドに接地することもできる。
【0027】
スライド部材は、凹部の一方の片翼に配置されている。凹部の片翼には、スライド部材を移動可能に案内する案内溝部を設けている。そして、スライド部材は、案内溝部に規制されて、カードの挿抜方向と平行する方向に進退できる。スライド部材は、案内溝部の領域内では、進退する直線運動のみが許容される。
【0028】
(1)の発明によるカード用コネクタは、第1カード又は第2カードの先端縁に当接する係合爪を有し、係合爪は、第2カードを凹部に挿入すると、第2カードが乗り上げる傾斜面をカード当接面に有しているので、第2カードを凹部に挿入すると、第2カードの先端縁がヘッダの先端縁に当接して、第2カードの進入を阻止できる。そして、コンタクトを保護できる。
【0029】
(2) 前記第1カードは、一方の側面途上に切り欠かれた方形の溝部を有し、前記スライド部材は、基端部が当該スライド部材に固定され、前記第1カードの一方の側面に弾性をもって付勢すると共に、前記第1カードの溝部に出入り可能なV字状に屈曲された屈曲部を有する片持ち状の板ばねを備えている(1)記載のカード用コネクタ。
【0030】
(2)の発明によるカード用コネクタは、第1カードが方形の溝部を有している。この溝部は、第1カードの一方の側面途上に切り欠かれている。又、(2)の発明によるカード用コネクタは、スライド部材が片持ち状の板ばねを備えている。
【0031】
板ばねは、基端部がスライド部材に固定されている。板ばねは、第1カードの一方の側面に弾性をもって付勢すると共に、第1カードの溝部に出入り可能なV字状に屈曲された屈曲部を有している。
【0032】
第1カードを凹部に挿入すると、屈曲部が変形された後に復帰して、屈曲部を第1カードの溝部に進入できる。第1カードが凹部から排出される過程では、板ばねの屈曲部が第1カードの溝部に係合して、第1カードの飛び出しを防止できる。
【0033】
(3) 前記スライド部材は、ハート状のカム溝を一方の側面に有し、前記イジェクト機構は、前記ハウジングに保持され、前記スライド部材を前記第1カードが排出される方向に力を付勢する圧縮コイルばねと、一端部が前記ハート状のカム溝に連結し、他端部が前記ハウジングの側面に回動自在に支持される案内棒と、を更に有する(1)又は(2)記載のカード用コネクタ。
【0034】
(3)の発明によるカード用コネクタは、スライド部材がハート状のカム溝を一方の側面に有している。又、(3)の発明によるカード用コネクタは、イジェクト機構が圧縮コイルばねと案内棒を更に有している。
【0035】
圧縮コイルばねは、ハウジングに保持されている。又、圧縮コイルばねは、スライド部材を第1カードが排出される方向に力を付勢している。案内棒は、その一端部がハート状のカム溝に連結している。案内棒は、その他端部がハウジングの側面に回動自在に支持されている。
【0036】
(3)の発明によるカード用コネクタは、案内棒の一端部がハート状のカム溝の始点に係止しているときは、板ばねの屈曲部の先端部が凹部に僅かに突出するように配置されている。第1カードを凹部に挿入すると、第1カードの先端縁が係合爪に当接する。
【0037】
第1カードを更に挿入すると、板ばねの屈曲部が第1カードの溝部に入り込む。そして、圧縮コイルばねの付勢力に抗して、スライド部材が挿入方向に平行移動するのに連動して、案内棒の一端部がハート状のカム溝の行き行程を移動する。
【0038】
案内棒の一端部がハート状のカム溝の頂点に形成されたV字溝に係止することにより、スライド部材が位置固定される。そして、板ばねの屈曲部が第1カードの溝部に入り込んでいることにより、第1カードの装着状態が維持される。このようにして、(3)の発明によるカード用コネクタは、第1カードをロックできる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によるカード用コネクタは、第1カード又は第2カードの先端縁に当接する係合爪を有し、係合爪は、第2カードを凹部に挿入すると、第2カードが乗り上げる傾斜面をカード当接面に有しているので、第2カードを凹部に挿入すると、第2カードの先端縁がヘッダの先端縁に当接して、第2カードの進入を阻止できる。そして、コンタクトを保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の一実施形態によるカード用コネクタの構成を示す斜視図であり、図1(A)は、第1カードを挿入する前の状態図、図1(B)は、第1カードを挿入した状態図である。
図2】前記実施形態によるカード用コネクタに適合する第1カードの構成を示す図であり、図2(A)は、第1カードの平面図、図2(B)は、第1カードの左側面図である。
図3】前記実施形態によるカード用コネクタの構成を示す平面図である。
図4】前記実施形態によるカード用コネクタの構成を示す正面図である。
図5】前記実施形態によるカード用コネクタの構成を示す下面図である。
図6】前記実施形態によるカード用コネクタの構成を示す平面図であり、カバー板を取り外した状態図である。
図7】前記実施形態によるカード用コネクタの構成を示す斜視図であり、カバー板を取り外した状態図である。
図8】前記実施形態によるカード用コネクタの構成を示す斜視分解組立図である。
図9】前記実施形態によるカード用コネクタの構成を示す斜視図であり、第2カードが係合爪に形成された傾斜面を乗り上げた直後の状態図である。
図10】前記実施形態によるカード用コネクタの構成を示す斜視図であり、第2カードが係合爪に形成された傾斜面を乗り上げた後に、第2カードの先端縁がヘッダの先端縁に当接した状態図である。
図11】前記実施形態によるカード用コネクタの縦断面図であり、図11(A)は、第1カードをカード用コネクタに挿入する直前の状態図、図11(B)は、第1カードをカード用コネクタに挿入して第1カードの先端縁が係合爪に当接した状態図、図11(C)は、図11(B)の状態から第1カードを更に挿入した状態図、図11(D)は、第1カードの第1接続端子がコンタクトに接続した状態図である。
図12】前記実施形態によるカード用コネクタの縦断面図であり、図12(A)は、第2カードをカード用コネクタに挿入する直前の状態図、図12(B)は、第2カードをカード用コネクタに挿入して第2カードの先端縁が係合爪に当接した状態図、図12(C)は、第2カードが係合爪に形成された傾斜面を乗り上げた直後の状態図、図12(D)は、第2カードが係合爪に形成された傾斜面を乗り上げた後に、第2カードの先端縁がヘッダの先端縁に当接した状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[カード用コネクタの構成]
最初に、本発明の一実施形態によるカード用コネクタの構成を説明する。
【0042】
図1は、本発明の一実施形態によるカード用コネクタの構成を示す斜視図であり、図1(A)は、第1カードを挿入する前の状態図、図1(B)は、第1カードを挿入した状態図である。図2は、前記実施形態によるカード用コネクタに適合する第1カードの構成を示す図であり、図2(A)は、第1カードの平面図、図2(B)は、第1カードの左側面図である。
【0043】
図3は、前記実施形態によるカード用コネクタの構成を示す平面図である。図4は、前記実施形態によるカード用コネクタの構成を示す正面図である。図5は、前記実施形態によるカード用コネクタの構成を示す下面図である。
【0044】
図6は、前記実施形態によるカード用コネクタの構成を示す平面図であり、カバー板を取り外した状態図である。図7は、前記実施形態によるカード用コネクタの構成を示す斜視図であり、カバー板を取り外した状態図である。図8は、前記実施形態によるカード用コネクタの構成を示す斜視分解組立図である。
【0045】
(第1カード及び第2カードの構成)
図1を参照して、本発明の一実施形態によるカード用コネクタ(以下、コネクタと略称する)10は、所定の外形と厚さを有する正規の略矩形の第1カード5を挿入できる(図2参照)。一方、コネクタ10は、第1カード5に比べて、外形が小さく厚さも薄く形成された非正規の略矩形の第2カード6を挿入することもできる(図9又は図10参照)。
【0046】
図2を参照して、第1カード5は、例えば、XQD(登録商標)カードであり、一方の端面に開口したスロット5sの内部に複数の第1接続端子5tを配列している。又、第1カード5は、一方の側面51の途上に切り欠かれた方形の溝部51aを有している。一方、図9又は図10を参照して、第2カード6は、例えば、SDカードであり、露出した複数の第2接続端子6tを一方の端部に配列している。
【0047】
(カード用コネクタの概略構成)
図1から図8を参照すると、コネクタ10は、板状のハウジング1とカバー板2を備えている。ハウジング1は、第1カード5又は第2カード6が挿抜される凹部11を形成している。カバー板2は、ハウジング1の凹部11を覆っている。
【0048】
又、図1から図8を参照すると、コネクタ10は、ヘッダ12hに覆われた複数のコンタクト3とプッシュ・プッシュ形のイジェクト機構4を備えている。ヘッダ12hは、ハウジング1の奥部に配置され、凹部11の開口15に向かって突出すると共に、第1カード5のスロット5sに挿入できる(図11(A)参照)。イジェクト機構4は、凹部11の片翼に配置され、凹部11に挿入された第1カード5又は第2カード6を排出できる。
【0049】
図6から図8を参照すると、イジェクト機構4は、帯板状のスライド部材41を有している。スライド部材41は、ハウジング1の一方の側壁13に沿って移動できる。スライド部材41は、係合爪410を有している。係合爪410は、凹部11の片翼側から凹部11の中央部に向かって突出している。又、係合爪410は、第1カード5又は第2カード6の先端縁に当接できる(図11(B)又は図12(B)参照)。
【0050】
図6から図8を参照すると、係合爪410は、第2カード6を凹部11に挿入すると、第2カード6が乗り上げる傾斜面41sをカード当接面に有している(図9又は図10参照)。一方、第1カード5を凹部11に挿入すると、係合爪410が複数のコンタクト3の下方に移動して、第1接続端子5tがコンタクト3に接続できる(図11(D)参照)。
【0051】
(イジェクト機構の構成)
図6から図8を参照すると、スライド部材41は、片持ち状の板ばね42を備えている。板ばね42は、基端部がスライド部材41に固定されている。板ばね42は、スライド部材41と一体に移動できる。又、板ばね42は、第1カード5の一方の側面51に弾性をもって付勢すると共に、第1カード5の溝部51aに出入り可能なV字状に屈曲された屈曲部42aを有している(図2参照)。
【0052】
図1又は図6から図8を参照して、第1カード5を凹部11に挿入すると、板ばね42の屈曲部42aが変形された後に復帰して、屈曲部42aを第1カード5の溝部51aに進入できる。第1カード5が凹部11から排出される過程では、板ばね42の屈曲部42aが第1カード5の溝部51aに係合して、第1カード5の飛び出しを防止できる。
【0053】
図7又は図8を参照すると、スライド部材41は、ハート状のカム溝41aを一方の側面に形成している。又、イジェクト機構4は、圧縮コイルばね43と案内棒44を更に有している。
【0054】
図7又は図8を参照すると、圧縮コイルばね43は、ハウジング1に保持され、スライド部材41を第1カード5又は第2カード6が排出される方向に力を付勢している。案内棒44は、その一端部44aがハート状のカム溝41aに連結している。又、案内棒44は、その他端部44bがハウジング1に回動自在に支持されている。
【0055】
図8を参照すると、凹部11の片翼は、第1案内溝部11g、第2案内溝部12g、及び隔壁13gを含んでいる。第1案内溝部11gには、圧縮コイルばね43に付勢されて、スライド部材41が凹部11の開口側に停止される。又、第1案内溝部11gは、板ばね42の屈曲部42aの先端部が凹部11に僅かに突出するように、スライド部材41を傾斜状態で保持する(図6参照)。第2案内溝部12gは、第1案内溝部11gに連通している。又、第2案内溝部12gは、板ばね42の屈曲部42aが第1カード5の溝部51aに係合した状態で、スライド部材41の直線運動を確保させる。
【0056】
図8を参照すると、実体として、第1案内溝部11g及び第2案内溝部12gと凹部11とは、四角柱状に延びるガイド14gによって、区画されている。そして、スライド部材41は、その側壁41wがガイド14gに案内されて、スライド部材41の直線運動が確保できる。なお、第2案内溝部12gの一部の領域内では、スライド部材41は傾動することもできる。
【0057】
図6又は図7を参照すると、隔壁13gは、第1案内溝部11gと凹部11とを隔てるように、凹部11の奥側に向かって僅かに突出している。スライド部材41が凹部11の奥側に移動すると、スライド部材41の端部が隔壁13gを乗り越えてスライド部材41の傾斜状態が矯正される。
【0058】
(コンタクトの構成)
図3から図6を参照すると、ハウジング1の凹部11には、複数のコンタクト3を並設配置している。これらのコンタクト3は、コネクタ10が実装されるプリント基板1pと第1カード5とを電気的に接続できる(図1参照)。
【0059】
図2又は図6を参照すると、第1カード5は、絶縁性のプラスチック筐体の内部にICチップ(図示せず)が収納されている。このICチップは、スロット5sの内部に貼り付けられた複数の金属箔に接続されている。そして、並設配置された複数の金属箔が第1カード5の第1接続端子5tとなっている。個別のコンタクト3は、個別の第1接続端子5tと一対一に接続されてよく、機械的及び電気的に接続する。
【0060】
図3から図6及び図11を参照すると、コンタクト3は、ばねの働きが片持ち梁であるカンチレバーコンタクトを用いている。コンタクト3は、弾性アームと固定アームで構成され、弾性アームは、ヘッダ12hの底面に配置され、第1カード5に形成された第1接続端子5tに接触する接点を設けている。固定アームは、凹部11を構成する対向壁14に圧入して固定している。コンタクト3は、固定アームの端部にリード部3rを形成しており、リード部3rをプリント基板1pにはんだ接合することにより、実施形態によるコネクタ10を表面実装用コネクタとすることができる(図1参照)。
【0061】
(ハウジングの構成)
図3又は図6から図8を参照すると、ハウジング1は、一方の側壁13と、一方の側壁13と直交して第1カード5の先端縁が対向する対向壁14を有している。一方の側壁13及びカバー板2の他方の折り曲げ片22と、対向壁14で囲われた薄直方体状の空間を「第1カード5又は第2カード6が挿抜される凹部11」と規定できる。又、カード保持部とすることもできる。
【0062】
図4から図8を参照すると、ハウジング1の凹部11がカバー板2で覆われることにより、対向壁14と対向して第1カード5又は第2カード6が挿入される長方形の開口15が形成される。対向する一方の側壁13と他方の折り曲げ片22の距離は、第1カード5の幅よりも僅かに広く、対向する一方の側壁13と他方の折り曲げ片22により第1カード5の姿勢が規制され、第1カード5の第1接続端子5tとコンタクト3とが正しく位置合わせできる。
【0063】
(カバー板の構成)
図1又は図3から図4を参照すると、カバー板2は、主面板21の両翼が直角に折り曲げ加工されている。そして、カバー板2は、一対の折り曲げ片22・22に複数の略矩形穴22hを開口している。これらの略矩形穴22hは、ハウジング1の一方の側壁13及び対向壁14の側面に突出する複数のランス1rに係止できる(図6から図8参照)。
【0064】
又、図1又は図3から図5を参照すると、カバー板2は、プリント基板1pにはんだ接合される複数のリード片2rを設けている。これらのリード片2rがプリント基板1pにはんだ接合されることにより、プリント基板1pとの接合強度を補強でき、これらのリード片2rをプリント基板1pのグラウンドに接地することもできる。
【0065】
図1又は図3から図5を参照すると、カバー板2の主面板21は、一対の板ばね片2a・2aを有している。板ばね片2aは、第1カード5がハウジング1の凹部11の底面に向かう力を付勢している。板ばね片2aは、第1カード5の表面を傷つけないように、比較的弱い力で第1カード5の表面を付勢している。
【0066】
(スライド部材の構成)
図6から図8を参照すると、スライド部材41は、凹部11の一方の片翼に配置されている。凹部11の片翼には、スライド部材41を移動可能に案内する第2案内溝部12gを設けている。そして、スライド部材41は、第2案内溝部12gに規制されて、第1カード5の挿抜方向と平行する方向に進退できる。スライド部材41は、第2案内溝部12gの領域内では、進退する直線運動のみが許容されている。
【0067】
図6から図8を参照すると、スライド部材41の側壁41wは、部分的には、第1カード5の姿勢(傾き)を規制する一方の側壁として機能でき、第1カード5の姿勢(傾き)を規制する他方の側壁は、第1カード5の他方の側面52を案内する、カバー板2に設けた他方の折り曲げ片22が代行している(図3から図5参照)。
【0068】
図8を参照すると、スライド部材41の端部には、圧縮コイルばね43の一部を保持する円筒穴4hが穿設されている。一方、ハウジング1には、円筒穴4hに対向し、圧縮コイルばね43の内部に入る棒状突起1tが形成されている。
【0069】
図6から図8を参照すると、圧縮コイルばね43の両コイル端部を円筒穴4hと棒状突起1tとの間に装架することにより、スライド部材41を第1カード5又は第2カード6が排出される方向に力を付勢することができる。第1カード5又は第2カード6が凹部11に挿入されない状態では、スライド部材41は、圧縮コイルばね43に付勢されて、傾斜した状態で、凹部11の開口15側(第1案内溝部11g)に停止している。
【0070】
図8を参照すると、案内棒44の両端部は、略直角に屈折されている。図7を参照すると、案内棒44の一端部44aは、スライド部材41の側面に穿設されたハート状のカム溝41aに連結している。一方、案内棒44の他端部44bは、一方の側壁13の先端部側に形成された穴11hに挿入され、回動自在に支持されている。そして、案内棒44の一端部44aは、ハート状のカム溝41aに従動できる。
【0071】
図6から図8を参照すると、ハート状のカム溝41aを有するスライド部材41を動節となるカムとし、案内棒44を従動節とすれば、スライド部材41と案内棒44とは、カムと従動節が相対変位するカム装置を構成している。又、ハート状のカム溝41aは、ハート状の軌跡を描く平面曲線のみならず、ハート状のカム溝41aの底面が段差又は斜面となる連続軌跡を含む空間曲線となっている。スライド部材41と案内棒44は、いわゆる立体カム装置を構成している。
【0072】
図8を参照すると、ハート状のカム溝41aは、始点4sからの行き行程の軌跡と始点4sに戻る帰り行程の軌跡とを描いている。ハート状のカム溝41aの軌跡は、案内棒44の一端部44aが部分的に逆行することはあっても、全行程において案内棒44の一端部44aが逆行しない不可逆の連続軌跡を描いている。
【0073】
図8を参照すると、ハート状のカム溝4aは、行き行程の軌跡と帰り行程の軌跡の分岐点に、V字状に陥没するV字溝4vを形成している。案内棒44の一端部44aがV字溝4vに係止することにより、圧縮コイルばね43に付勢されて、第1カード5の装着位置でスライド部材41をロックできる。ハート状のカム溝41aと案内棒44で構成するカム装置は、スライド部材41の一方の停止位置を規定している。
【0074】
図6から図8を参照すると、板ばね42は、基端部をスライド部材41に圧入して固定している。板ばね42は、V字状に屈曲された屈曲部42aが凹部11に向かって突出するようにスライド部材41に配置されている。板ばね42とスライド部材41は、一体となって進退する。板ばね42は、ばねの働きが片持ち梁であってよく、第1カード5が進退する方向と直交する方向に荷重が作用することによってのみ、弾性変形するように構成されている。
【0075】
[カード用コネクタの作用]
次に、実施形態によるコネクタ10の動作を説明しながら、コネクタ10の作用及び効果を説明する。先に、正規のカードである第1カード5の装着順序を説明する。
【0076】
図9は、前記実施形態によるカード用コネクタの構成を示す斜視図であり、第2カードが係合爪に形成された傾斜面を乗り上げた直後の状態図である。図10は、前記実施形態によるカード用コネクタの構成を示す斜視図であり、第2カードが係合爪に形成された傾斜面を乗り上げた後に、第2カードの先端縁がヘッダの先端縁に当接した状態図である。
【0077】
図11は、前記実施形態によるカード用コネクタの縦断面図であり、図11(A)は、第1カードをカード用コネクタに挿入する直前の状態図、図11(B)は、第1カードをカード用コネクタに挿入して第1カードの先端縁が係合爪に当接した状態図、図11(C)は、図11(B)の状態から第1カードを更に挿入した状態図、図11(D)は、第1カードの第1接続端子がコンタクトに接続した状態図である。
【0078】
図12は、前記実施形態によるカード用コネクタの縦断面図であり、図12(A)は、第2カードをカード用コネクタに挿入する直前の状態図、図12(B)は、第2カードをカード用コネクタに挿入して第2カードの先端縁が係合爪に当接した状態図、図12(C)は、第2カードが係合爪に形成された傾斜面を乗り上げた直後の状態図、図12(D)は、第2カードが係合爪に形成された傾斜面を乗り上げた後に、第2カードの先端縁がヘッダの先端縁に当接した状態図である。
【0079】
図11(A)に示された状態から、第1カード5を凹部11に挿入すると、第1カード5の先端縁が板ばね42の屈曲部42aに当接する(図6参照)。第1カード5の先端縁が板ばね42の屈曲部42aに当接した状態では、スライド部材41は、傾動した姿勢を維持している(図6参照)。又、第1カード5の先端縁が板ばね42の屈曲部42aに当接した状態では、案内棒44の一端部44aは、ハート状のカム溝41aの始点4sに位置している(図8参照)。
【0080】
次に、第1カード5の先端縁が板ばね42の屈曲部42aに当接した状態から、第1カード5を凹部11の奥側に更に挿入すると、図11(B)に示された状態になる。図11(B)に示された状態では、第1カード5の先端縁が係合爪410のカード当接面に当接している。又、図11(B)に示された状態では、板ばね42の屈曲部42aが変形された後に復帰して、板ばね42の屈曲部42aが第1カード5の溝部51aに進入している(図6参照)。
【0081】
次に、図11(B)に示された状態から、圧縮コイルばね43に抗して、第1カード5を凹部11の奥側に更に挿入すると、図11(C)に示された状態になる。図11(C)に示された状態では、板ばね42の屈曲部42aが第1カード5の溝部51aに係合しており、スライド部材41は、凹部11の奥側に進行している。又、図11(B)に示された状態から、図11(C)に示された状態に移行する過程では、案内棒44の一端部44aは、ハート状のカム溝41aの始点4sから行き行程の軌跡に移動している(図7又は図8参照)。
【0082】
又、図11(B)に示された状態から、図11(C)に示された状態に移行する過程では、第1カード5は、凹部11の底面とカバー板2の主面板21で板厚方向の動きが規制されている。したがって、第1カード5は、係合爪410の傾斜面41sを乗り上げることなく、係合爪410を移動できる。
【0083】
図11(C)に示された状態から、圧縮コイルばね43に抗して、第1カード5を凹部11の奥側に更に挿入すると、図11(D)に示された状態になる。図11(D)に示された状態では、スライド部材41は、第1案内溝部11gの領域から第2案内溝部12gの領域に移動しており、スライド部材41は、直進運動のみが許容されている。又、図11(D)に示された状態では、係合爪410が複数のコンタクト3の下方に移動して、第1接続端子5tがコンタクト3に接続できる。
【0084】
又、図8を参照して、スライド部材41の移動に相対して、案内棒44の一端部44aがハート状のカム溝41aの頂点に形成されたV字溝4vに係止することにより、スライド部材41が位置固定される。この場合、板ばね42の屈曲部42aが第1カード5の溝部51aに入り込んでいることにより、第1カード5の装着状態が維持される。このようにして、実施形態によるコネクタ10は、第1カード5をロックできる。なお、第1カード5の排出順序は、説明を省略する。
【0085】
次に、非正規のカードである第2カード6をコネクタ10に挿入した場合の状態変化を説明する。
【0086】
図12(A)に示された状態から、第2カード6を凹部11に挿入すると、第2カード6の先端縁が係合爪410のカード当接面に当接している(図12(B)参照)。図12(B)に示された状態から、圧縮コイルばね43に抗して、第2カード6を凹部11の奥側に更に挿入すると、図9又は図11(C)に示すように、第2カード6は、係合爪410の傾斜面41sを乗り上げることになる。
【0087】
図9又は図11(C)に示された状態から、第2カード6を凹部11の奥側に更に挿入すると、第2カード6は、係合爪410を乗り越えて移動する。第2カード6の先端縁がヘッダ12hの先端縁に当接して、第2カード6の進入を阻止できる(図10又は図11(D)参照)。そして、第2カード6の誤挿入による操作から、コンタクト3を保護できる。
【0088】
このように、実施形態によるコネクタ10は、第1カード5又は第2カード6の先端縁に当接する係合爪410を有し、係合爪410は、第2カード6を凹部11に挿入すると、第2カード6が乗り上げる傾斜面41sをカード当接面に有しているので、第2カード6を凹部11に挿入すると、第2カード6の先端縁がヘッダ12hの先端縁に当接して、第2カード6の進入を阻止できる。そして、コンタクト3を保護できる。
【0089】
本発明によるカード用コネクタは、カードの誤挿入に起因して、電気的誤接続によるデータ消失を防止できると共に、誤接続によるカードの取り出しが容易である。本発明によるカード用コネクタは、カード内のデータを保護でき、コネクタを修理する手間と費用を削減できる。
【符号の説明】
【0090】
1 ハウジング
2 カバー板
3 コンタクト
4 イジェクト機構
5 第1カード
5s スロット
5t 第1接続端子
6 第2カード
6t 第2接続端子
10 コネクタ(カード用コネクタ)
11 凹部
12h ヘッダ
41 スライド部材
41s 傾斜面
410 係合爪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12