(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、海底熱水鉱床の付近の海底は起伏が激しいことが多いので、電極を直接海底に接触させて海底下に電流を流す電気探査を行うことは難しい場合が多い。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、海底下の電気的な性質を探査できる海底探査装置及び海底探査方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[適用例1]
適用例にかかる海底探査装置は、
誘導電流を発生させる送信ループと、
前記送信ループに送信電流を供給した後に前記送信電流を遮断する送信電源と、
前記送信ループの周囲に配置された2つ以上の電位測定用電極と、
前記電位測定用電極のうちの2つの電位差の経時的な変化に含まれる前記送信電流の遮断後の過渡応答を測定する測定部と、
を含む、海底探査装置である。
【0007】
本適用例によれば、送信ループが発生させる誘導電流が海底下に流れるので、電位測定用電極のうちの2つの電位差の経時的な変化に含まれる送信電流の遮断後の過渡応答を測定することによって海底下の電気的な性質を探査できる。
【0008】
[適用例2]
上述の適用例にかかる海底探査装置において、
前記測定部が測定した前記電位差の経時的な変化に含まれる前記送信電流の遮断後の過渡応答に基づいて、海底下の比抵抗を算出する比抵抗算出部をさらに含むことが好ましい。
【0009】
海底下の比抵抗が小さいほど、電位測定用電極のうちの2つの電位差はゆっくり減衰する。したがって、本適用例によれば、電位測定用電極のうちの2つの電位差の経時的な変化に含まれる送信電流の遮断後の過渡応答に基づいて海底下の比抵抗を算出できる。
【0010】
[適用例3]
上述の適用例にかかる海底探査装置において、
前記測定部が測定した前記電位差の経時的な変化に含まれる前記送信電流の遮断後の過渡応答に基づいて、海底下の充電率を算出する充電率算出部をさらに含むことが好ましい。
【0011】
海底下の分極効果が大きいほど、電位測定用電極のうちの2つの電位差はゆっくり減衰する。したがって、本適用例によれば、電位測定用電極のうちの2つの電位差の経時的な変化に含まれる送信電流の遮断後の過渡応答に基づいて海底下の充電率を算出できる。
【0012】
[適用例4]
上述の適用例にかかる海底探査装置において、
前記電位測定用電極は、3つ以上であることが好ましい。
【0013】
本適用例によれば、3つ以上の電位測定用電極を用いて、一度の測定で電位測定用電極の組み合わせを代えて電位差を測定できる。したがって、海底の電気的な性質の異方性を測定できる。
【0014】
[適用例5]
上述の適用例にかかる海底探査装置において、
枠体をさらに含み、
前記送信ループ及び前記電位測定用電極は、前記枠体に設けられていることが好ましい。
【0015】
本適用例によれば、送信ループ及び電位測定用電極の相対的な位置関係を固定できる。したがって、より正確に海底下の電気的な性質を測定できる。
【0016】
[適用例6]
上述の適用例にかかる海底探査装置において、
前記送信ループのループ面は、海底に対向して配置されることが好ましい。
【0017】
本適用例によれば、送信ループが発生させる誘導電流が、海底下の深さ方向に広がるので、海底下の深い位置の電気的な性質を探査できる。
【0018】
[適用例7]
適用例にかかる海底探査方法は、
誘導電流を発生させる送信ループと、前記送信ループの周囲に配置された2つ以上の電位測定用電極と、枠体とを含み、前記送信ループ及び前記電位測定用電極は、前記枠体に設けられている、海底探査装置を用いた海底探査方法であって、
前記送信ループに送信電流を供給した後に前記送信電流を遮断する誘導電流発生工程と、
前記電位測定用電極のうちの2つの電位差の経時的な変化に含まれる前記送信電流の遮断後の過渡応答を測定する測定工程と、
を含む、海底探査方法である。
【0019】
本適用例によれば、送信ループが発生させる誘導電流が海底下に流れるので、電位測定用電極のうちの2つの電位差の経時的な変化に含まれる送信電流の遮断後の過渡応答を測定することによって海底下の電気的な性質を探査できる。
【0020】
また、本適用例によれば、送信ループ及び電位測定用電極の相対的な位置関係を固定できるので、より正確に海底下の電気的な性質を測定できる。
【0021】
[適用例8]
上述の適用例にかかる海底探査方法において、
前記測定工程で測定された前記電位差の経時的な変化に含まれる前記送信電流の遮断後の過渡応答に基づいて、海底下の比抵抗を算出する比抵抗算出工程をさらに含むことが好ましい。
【0022】
海底下の比抵抗が小さいほど、電位測定用電極のうちの2つの電位差はゆっくり減衰する。したがって、本適用例によれば、電位測定用電極のうちの2つの電位差の経時的な変化に含まれる送信電流の遮断後の過渡応答に基づいて海底下の比抵抗を算出できる。
【0023】
[適用例9]
上述の適用例にかかる海底探査方法において、
前記測定工程で測定された前記電位差の経時的な変化に含まれる前記送信電流の遮断後の過渡応答に基づいて、海底下の充電率を算出する充電率算出工程さらに含むことが好ましい。
【0024】
海底下の分極効果が大きいほど、電位測定用電極のうちの2つの電位差はゆっくり減衰する。したがって、本適用例によれば、電位測定用電極のうちの2つの電位差の経時的な変化に含まれる送信電流の遮断後の過渡応答に基づいて海底下の充電率を算出できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。用いる図面は説明の便宜上のものである。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0027】
1.海底探査装置
図1は、本実施形態にかかる海底探査装置1の構成を示す模式図である。
【0028】
本実施形態にかかる海底探査装置1は、誘導電流を発生させる送信ループ10と、送信ループ10に送信電流を供給した後に送信電流を遮断する送信電源20と、送信ループ10の周囲に配置された2つ以上の電位測定用電極30と、電位測定用電極30のうちの2つの電位差の経時的な変化に含まれる送信電流の遮断後の過渡応答を測定する測定部40と、を含む。
【0029】
送信ループ10は、送信電源20が出力する電流を流すコイルとして構成されている。送信ループ10を構成するケーブルは、絶縁膜で被覆されていてもよい。これによって、送信ループ10と海水とを絶縁した状態で海底下に誘導電流を流すことができる。
図1に示される例では、送信ループ10の巻き数は1回であるが、巻き数が複数回であってもよい。
【0030】
送信電源20は、送信ループ10に送信電流を供給した後に送信電流を遮断する。本実施形態においては、送信電源20は、送信ループ10に電流を供給する状態と電流を遮断する状態とを繰り返している。送信電源20が出力する送信電流は、正の電流と負の電流とが交互に出力される交替直流であることが好ましい。これによって、電位測定用電極30で測定される電位の0点が求めやすくなる。送信ループ10に送信電流を供給した後に送信電流を遮断することによって、送信ループ10の周りに誘導電流を発生させる。送信電源20が出力する送信電流は、探査目的などに応じて、例えば、数十アンペア程度としてもよい。
【0031】
電位測定用電極30は、送信ループ10の周囲に配置されている。
図1に示される例では、電位測定用電極30は、4つ設けられているが、少なくとも2つ以上あればよい。また、送信ループ10が発生させる誘導電流は、送信ループ10の外側に広がる傾向があるので、電位測定用電極30は、送信ループ10の外側に配置されることが好ましい。また、電位測定用電極30は、非分極電極で構成されていることが好ましい。電位測定用電極30の相互の間隔は、探査目的などに応じて、例えば、数メートル程度としてもよい。海水を通して海底下に誘導電流を発生させることができるので、電位測定用電極30は、海底面に接するように配置される必要はない。
【0032】
測定部40は、電位測定用電極30のうちの2つの電位差の経時的な変化に含まれる送信電流の遮断後の過渡応答を測定する。特に、送信電源20が送信ループ10に送信電流を供給した状態から送信電流を遮断した状態に切り替えた直後からその後の電位差を経時的に測定することが好ましい。また、接地電位GNDと電位測定用電極30の各々との電位差を測定し、適宜差分を算出することによって電位測定用電極30のうちの2つの電位差を経時的に測定してもよい。
【0033】
本実施形態にかかる海底探査装置1によれば、送信ループ10が発生させる誘導電流が海底下に流れるので、電位測定用電極30のうちの2つの電位差の経時的な変化に含まれる送信電流の遮断後の過渡応答を測定することによって海底下の電気的な性質を探査できる。すなわち、本実施形態にかかる海底探査装置1によれば、海底における時間領域の電磁探査を行うことができる。
【0034】
本実施形態にかかる海底探査装置1は、測定部40が測定した電位差(電位測定用電極30のうちの2つの電位差)の経時的な変化に含まれる送信電流の遮断後の過渡応答に基づいて、海底下の比抵抗を算出する比抵抗算出部50をさらに含んでいてもよい。
【0035】
後述されるように、海底下の比抵抗が小さいほど、電位測定用電極30のうちの2つの電位差はゆっくり減衰する。したがって、本実施形態にかかる海底探査装置1によれば、電位測定用電極30のうちの2つの電位差の経時的な変化に含まれる送信電流の遮断後の過渡応答に基づいて海底下の比抵抗を算出できる。
【0036】
本実施形態にかかる海底探査装置1は、測定部40が測定した電位差(電位測定用電極30のうちの2つの電位差)の経時的な変化に含まれる送信電流の遮断後の過渡応答に基づいて、海底下の充電率を算出する充電率算出部60をさらに含んでいてもよい。
【0037】
後述されるように、海底下の分極効果が大きいほど、電位測定用電極30のうちの2つの電位差はゆっくり減衰する。したがって、本実施形態にかかる海底探査装置1によれば、電位測定用電極30のうちの2つの電位差の経時的な変化に含まれる送信電流の遮断後の過渡応答に基づいて海底下の充電率を算出できる。
【0038】
本実施形態にかかる海底探査装置1において、電位測定用電極30は、3つ以上であることが好ましい。
図1に示される例では、電位測定用電極30は、平面視で正方形の角の位置になるように、同一平面上に4つ設けられている。電位測定用電極30の配置はこれに限らず、例えば、同一直線上に並ばないように3つ以上の電位測定用電極30を配置したり、同一直線上に間隔を異ならせて3つ以上の電位測定用電極30を配置したりすることもできる。
【0039】
本実施形態にかかる海底探査装置1によれば、3つ以上の電位測定用電極30を用いて、一度の測定で電位測定用電極30の組み合わせを代えて電位差を測定できる。したがって、海底の電気的な性質の異方性を測定できる。
【0040】
本実施形態にかかる海底探査装置1は、枠体70をさらに含み、送信ループ10及び電位測定用電極30は、枠体70に設けられていてもよい。
図1に示される例では、送信ループ10及び電位測定用電極30は、枠体70に固定されて設けられている。枠体70は、例えば、ROV(Remotely operated vehicle)の一部であってもよい。枠体70の形状としては、送信ループ10及び電位測定用電極30の相対的な位置関係を固定できるかぎり、任意の形状を採用できる。
【0041】
本実施形態にかかる海底探査装置1によれば、送信ループ10及び電位測定用電極30の相対的な位置関係を固定できる。したがって、より正確に海底下の電気的な性質を測定できる。
【0042】
本実施形態にかかる海底探査装置1において、送信ループ10のループ面は、海底に対向して配置されていてもよい。ループ面と海底が対向する配置は、ループ面の法線方向に海底が存在するような配置である。
【0043】
本実施形態にかかる海底探査装置1によれば、送信ループ10が発生させる誘導電流が、海底下の深さ方向に広がるので、海底下の深い位置の電気的な性質を探査できる。
【0044】
2.海底探査方法
図2は、本実施形態にかかる海底探査装置1を用いた海底探査方法の一例を示すフローチャートである。
【0045】
本実施形態にかかる海底探査方法は、誘導電流を発生させる送信ループ10と、送信ループ10の周囲に配置された2つ以上の電位測定用電極30と、枠体70とを含み、送信ループ10及び電位測定用電極30は、枠体70に設けられている、海底探査装置1を用いた海底探査方法であって、送信ループ10に送信電流Iを供給した後に送信電流Iを遮断する誘導電流発生工程(ステップS100)と、電位測定用電極30のうちの2つの電位差Vの経時的な変化に含まれる送信電流Iの遮断後の過渡応答を測定する測定工程(ステップS102)と、を含む。
【0046】
誘導電流発生工程(ステップS100)では、送信ループ10に送信電流Iを供給した後に送信電流Iを遮断することによって、送信ループ10の周りに誘導電流を発生させる。
【0047】
図3(A)〜
図3(C)は、本実施形態にかかる海底探査方法における送信電源20の送信電流I、送信電流Iの遮断後の起電力E及び送信電流Iの遮断後に電位測定用電極30で測定される電位差Vのタイミングチャートである。送信電流Iは交替直流(周期前半の正側の出力と周期後半の負側の出力が対称である信号)である。
図4は、送信ループ10が発生させる誘導電流を説明するための模式図である。
図4において、送信電流Iが正である場合には、送信ループ10を矢印の向きに電流が流れるものとする。
【0048】
まず、
図3(A)に示すように、送信電源20から送信ループ10に正の送信電流Iを出力する。次にこの送信電流Iを急激に遮断する。これによって、
図3(B)に示すように、電磁誘導の法則によって遮断前の同じ磁場を維持しようとする起電力Eが発生し、海底面に誘導電流が発生する。その後、送信電源20から送信ループ10に負の送信電流Iを出力する。次にこの送信電流Iを急激に遮断する。かかる動作を周期Tで繰り返す。
【0049】
この海底面の誘導電流は、海底下の比抵抗に応じて減衰するが、この電流の変化を妨げるような新しい誘導電流が地中に生じる。このプロセスが繰り返され、あたかも誘導電流500が、誘導電流501、誘導電流502へと海底下深部に伝播していくような現象が発生する。
【0050】
これらの誘導電流は、電流経路地層の比抵抗に応じて減衰する。このため、海底近傍に配置された電位測定用電極30を用い、誘導電流の減衰を2つの電位測定用電極30の電位差Vの時間変化として
図3(C)に示すように検出し、海底下の比抵抗を知ることができる。例えば、地下が高比抵抗の場合は、誘導電流は急速に減衰していくが、低比抵抗の場合はゆっくり減衰する。
【0051】
また、海底下に分極効果を有する鉱物が存在する場合には、誘導電流が鉱物に充電され、その後に放電される現象が発生する。このため、分極効果を有する鉱物が存在する場合には、送信電流Iの遮断後のある程度の時間が経過した後においても2つの電位測定用電極30の電位差Vが残る現象が発生する。すなわち、海底下の分極効果が大きいほど、誘導電流はゆっくり減衰する。
【0052】
したがって、誘導電流発生工程(ステップS100)の後に、電位測定用電極30のうちの2つの電位差Vの経時的な変化に含まれる送信電流Iの遮断後の過渡応答を測定する測定工程(ステップS102)を行うことによって、海底下の電気的な性質を探査できる。
【0053】
図5は、送信電流Iの遮断後における、2つの電位測定用電極30の電位差Vの時間変化を模式的に示すグラフである。横軸は時間の対数、縦軸は電位差Vの対数を表す。
【0054】
図5に示すように、海底下の比抵抗の大小の影響は電気的な現象であるので、比較的早い時間に生じる。海底下の比抵抗が大きいほど、電位差Vの減衰は速くなり、海底下の比抵抗が小さいほど、電位差Vの減衰は遅くなる。
【0055】
一方、
図5に示すように、海底下の分極効果の大小の影響は電気化学的な現象であるので、比較的遅い時間に生じる。海底下の分極効果が大きいほど、電位差Vの減衰は遅くなり、海底下の分極効果が小さいほど、電位差Vの減衰は速くなる。
【0056】
このように、本実施形態にかかる海底探査方法によれば、電位測定用電極30のうちの2つの電位差Vの経時的な変化に含まれる送信電流Iの遮断後の過渡応答を測定することによって海底下の電気的な性質を探査できる。すなわち、本実施形態にかかる海底探査方
法によれば、海底における時間領域の電磁探査を行うことができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、送信ループ10及び電位測定用電極30の相対的な位置関係を固定できるので、より正確に海底下の電気的な性質を測定できる。
【0058】
本実施形態にかかる海底探査方法において、測定工程(ステップS102)で測定された電位差Vの経時的な変化に含まれる送信電流Iの遮断後の過渡応答に基づいて、海底下の比抵抗を算出する比抵抗算出工程(ステップS104)をさらに含んでもよい。
図2に示される例では、測定工程(ステップS102)の後に比抵抗算出工程(ステップS104)を行なっている。
【0059】
上述したように、海底下の比抵抗が小さいほど、電位測定用電極30のうちの2つの電位差Vはゆっくり減衰する。したがって、本実施形態によれば、電位測定用電極30のうちの2つの電位差Vの経時的な変化に含まれる送信電流Iの遮断後の過渡応答に基づいて海底下の比抵抗を算出できる。
【0060】
本実施形態にかかる海底探査方法において、測定工程(ステップS102)で測定された電位差Vの経時的な変化に含まれる送信電流Iの遮断後の過渡応答に基づいて、海底下の充電率を算出する充電率算出工程(ステップS106)をさらに含んでもよい。
図2に示される例では、比抵抗算出工程(ステップS104)の後に充電率算出工程(ステップS106)を行なっているが、測定工程(ステップS102)の後に充電率算出工程(ステップS106)を行なってもよい。
【0061】
上述したように、海底下の分極効果が大きいほど、電位測定用電極30のうちの2つの電位差Vはゆっくり減衰する。したがって、本実施形態によれば、電位測定用電極30のうちの2つの電位差Vの経時的な変化に含まれる送信電流Iの遮断後の過渡応答に基づいて海底下の充電率を算出できる。
【0062】
また、海底探査装置1を測定ポイントに応じて次々と移動させながら、又は、海底探査装置1を連続的に移動させながら、又は、複数の海底探査装置1をそれぞれの測定ポイントに設置して観測データを集め、この観測データを分析することによって地下の比抵抗分布や充電率分布を求めることができる。またこの比抵抗分布や充電率分布に基づき地下構造を知ることができる。
【0063】
3.実施例
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0064】
本実施形態にかかる海底探査装置1を用いて、塩水中の鉱石の比抵抗の異方性及び充電率を測定するための室内水槽実験を行った。本実験で用いた送信ループ10の直径は10cmで、巻き数は50回である。送信電源20の送信電流Iは、電流値3.8A、周期100msecの矩形波交番電流とした。電位測定用電極30としては、電位測定用電極A〜Dの4つを設け、平面視で1辺10cmの正方形の角の位置になるように配置した。
【0065】
本実験においては、塩水(電気伝導率15S/m)と、断面積17.57cm
2×長さ14.42cmの直方体の鉱石(比抵抗0.2Ω・m、充電率287mV/V(電気伝導率3.3S/mの塩水で含水時))を用いた。
【0066】
図6(A)は、第1配置を説明するための平面図、
図6(B)は、第1配置を説明するための正面図である。
図7(A)は、第2配置を説明するための平面図、
図7(B)は、
第2配置を説明するための正面図である。
【0067】
図6(A)及び
図6(B)に示されるように、第1配置では、塩水中において、鉱石の長辺が電位測定用電極A−B間に位置するように海底探査装置1を配置した。
図7(A)及び
図7(B)に示されるように、第2配置では、塩水中において、鉱石の短辺が電位測定用電極A−B間に位置するように海底探査装置1を配置した。本実験においては、鉱石を置かない配置、第1配置及び第2配置での電位測定用電極A−B間の電位差を測定した。
【0068】
図8は、電位測定用電極A−B間の電位差の過渡応答を示すグラフである。横軸は、送信電流Iを遮断した後の経過時間[sec]であり、縦軸は、電位測定用電極A−B間の電位差[V]を表す。
【0069】
図8に示されるように、0.000075秒までの時間帯においては、鉱石を置かない配置の場合には、鉱石を置く第1配置及び第2配置に比べて電位差が急激に小さくなっており、塩水で含水された鉱石が塩水よりも低比抵抗であることが読み取れる。また、第2配置では第1配置よりも電位差がゆっくり減衰しており、鉱石の配置による比抵抗の異方性が読み取れる。また、0.000075秒以降の時間帯においては、鉱石を置かない配置に比べて、鉱石を置く第1配置及び第2配置では電位差がゆっくり減衰しており、鉱石の分極効果が読み取れる。
【0070】
以上の結果によって、本実施形態にかかる海底探査装置1を用いて、塩水中の鉱石の比抵抗の異方性及び充電率が計測可能であることが確認できた。
【0071】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、複数を適宜組み合わせることが可能である。
【0072】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。