(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、流量や流量に伴う流体圧力の制御を行うために、ソレノイドバルブが広く利用されている。また、ソレノイドバルブにおいては、コイルへの通電量と流量を比例させるリニアソレノイドを用いたものが知られている。
図17〜
図19を参照して、リニアソレノイドを用いた従来例に係るソレノイドバルブについて説明する。
図17は従来例に係るソレノイドバルブにおいて、バルブ部付近における弁が閉じた状態を示す模式的断面図である。
図18は従来例に係るソレノイドバルブにおいて、バルブ部付近における弁が開いた状態を示す模式的断面図である。
図19は従来例に係るソレノイドバルブにおけるコイルへの通電量と流量との関係を示すグラフである。
【0003】
この従来例に係るソレノイドバルブにおいては、コイルへの通電量に応じて往復移動するロッド100の先端面110の中央から更に先端方向に突出する弁体部120がロッド100に一体的に設けられている。そして、この弁体部120の外周にゴム製のOリング300が装着されている。また、弁座200には、弁孔210が設けられている。
【0004】
以上の構成により、コイルに対して通電されていない状態では、ロッド100の弁体部120が弁座200の弁孔210内に入り込み、Oリング300が、ロッド100の先端面110と弁座200の座面220との間に挟まれた状態となっている。これにより、弁孔210は弁体部120とOリング300によって塞がれた状態となる(
図17参照)。そして、コイルに対して通電されると、ロッド100の先端面110が座面220から離れる方向にロッド100が移動していく。これにより、弁孔210から弁体部120が抜け、かつOリング300が座面220から離れるため、弁孔210が開いた状態となる(
図18参照)。
【0005】
ここで、ゴム製のOリング300は、粘着性を有している。また、上記従来例においては、Oリング300は、ロッド100の先端面110と弁座200の座面220との間に挟まれた状態となっている。そのため、弁が閉じた状態から、ロッド100が移動し始めた直後においては、Oリング300は、座面220との粘着により、軸線方向に少し伸びた後に、座面220から離れて元の形状に戻るように変形する。なお、
図18中、点線で示すOリング300aは、座面220との粘着により、軸線方向に伸びた様子を示している。そのため、
図19中のグラフのX部に示すように、通電開始直後において、流体の流量が一瞬高くなるといった現象が生じてしまう。なお、
図19中、L1は非通電の状態から電流値が増加していく際の様子を示し、L2は電流値が高い状態から電流値が低減していき非通電になるまでの様子を示している。このグラフから分かるように、同じ電流値でもL1とL2では流量が異なっている。この流量の差はヒステリシスと呼ばれており、このヒステリシスが大きいほど、ある通電量に対する流量の誤差が大きくなってしまうことが分かる。このヒステリシスが生じる原因の一つとして、上述したOリング300の粘着の問題があると考えられている。
【0006】
このように、Oリング300が座面200に対して粘着してしまうことが、通電開始直後(弁が開き始めた直後)において流量制御を不安定にし、また、ヒステリシスを大きくしてしまい、流量制御の精度を低下させる原因となっている。なお、上記の説明においては、ソレノイドバルブにおける弁構造についての問題を説明したが、駆動源がソレノイド以外のもの(空圧アクチュエータ、油圧アクチュエータ、圧電アクチュエータなど)にお
ける弁構造であっても、同様の問題が起こり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、流量制御の精度の向上を図った弁構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0010】
すなわち、本発明の弁構造は、
往復動用のアクチュエータによって往復移動するように構成された往復動部材の先端に設けられる可撓性の弁体と、
前記弁体によって、弁孔が閉じられたり開かれたりする弁座と、を備える弁構造であって、
前記弁座は、
前記往復動部材が挿通される挿通孔と、
該挿通孔に向かうにつれて凹む傾斜面により構成される座面と、
前記挿通孔と前記座面との間の領域に設けられる前記弁孔と、
前記座面のうち外周面側に偏った位置に、径方向に伸びる溝と、を備えており、
前記弁体は、前記往復動部材の後端側への該往復動部材の移動に伴って、該往復移動部材に引っ張られて前記座面の形状に倣って撓むように変形することで、該座面に対する接触領域が、前記溝が設けられている領域から前記挿通孔側に向かって拡がっていき、該溝が設けられている領域よりも内側に至ることによって弁孔が閉じるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、往復動部材が後端側に移動していくと、弁体が座面の形状に倣って撓むように変形し、弁体の座面に対する接触領域が、溝が設けられている領域よりも内側に至った状態では、弁孔が閉じた状態となる。つまり、弁が閉じた状態となる。そして、往復動部材が先端側に移動していくと、撓んだ状態で座面に着座していた弁体が、元の形状に戻るように変形していく。そして、弁体の座面に対する接触領域が、溝が設けられている領域内にまで縮小すると、溝を介して、流体が流れていく。つまり、弁が開いた状態となる。
【0012】
このように、本発明においては、弁体が(挿通孔に向かうにつれて凹む傾斜面により構成される)座面の形状に倣って撓むように変形することで弁が閉じ、撓んだ状態から元の形状に戻るように変形することで弁が開くように構成されている。そして、弁体が元の形状に戻るように変形する過程で、弁体は座面から楔状に離れていくため、仮に弁体が座面に粘着していたとしても、弁体は座面から容易に剥がされていく。従って、従来例のOリングの場合のように両側から圧縮された状態から座面から離れるのに比べて、本発明における弁体の方が座面から離れ易い。従って、従来技術のように、弁が開き始めた直後において、流体制御が不安定になってしまうことはない。また、本発明においては、上記の通り、弁体が座面から離れ易いことからヒステリシスによる流量制御の誤差も少なくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、流量制御の精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は本発明の実施例に係るソレノイドバルブの模式的断面図である。
【
図2】
図2は本発明の実施例に係るバルブ部の斜視図の一部である。
【
図3】
図3は本発明の実施例に係るソレノイドバルブにおいて、バルブ部付近における弁が全開した状態を示す模式的断面図である。
【
図4】
図4は本発明の実施例に係るソレノイドバルブにおいて、弁が全開した状態における座面と弁体との位置関係を示す図である。
【
図5】
図5は本発明の実施例に係るソレノイドバルブにおいて、バルブ部付近における弁が少し開いた状態を示す模式的断面図である。
【
図6】
図6は本発明の実施例に係るソレノイドバルブにおいて、弁が少し開いた状態における座面と弁体との位置関係を示す図である。
【
図7】
図7は本発明の実施例に係るソレノイドバルブにおいて、バルブ部付近における弁が閉じた状態を示す模式的断面図である。
【
図8】
図8は本発明の実施例に係るソレノイドバルブにおいて、弁が閉じた状態における座面と弁体との位置関係を示す図である。
【
図9】
図9は本発明の実施例に係る弁体の変形例1を示す模式的断面図である。
【
図10】
図10は本発明の実施例に係る弁体の変形例2を示す模式的断面図である。
【
図11】
図11は本発明の実施例に係る弁体の変形例3を示す平面図である。
【
図12】
図12は本発明の実施例に係る弁体の変形例3を示す模式的断面図である。
【
図13】
図13は本発明の実施例に係る弁体の変形例4を示す平面図である。
【
図14】
図14は本発明の実施例に係る弁体の変形例4を示す模式的断面図である。
【
図15】
図15は本発明の実施例に係る弁体の変形例5を示す平面図である。
【
図16】
図16は本発明の実施例に係る弁体の変形例6を示す平面図である。
【
図17】
図17は従来例に係るソレノイドバルブにおいて、バルブ部付近における弁が閉じた状態を示す模式的断面図である。
【
図18】
図18は従来例に係るソレノイドバルブにおいて、バルブ部付近における弁が開いた状態を示す模式的断面図である。
【
図19】
図19は従来例に係るソレノイドバルブにおけるコイルへの通電量と流量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、以下の説明においては、弁構造が適用される装置の一例として、ソレノイドバルブの場合を例にして説明する。
【0016】
(実施例)
図1〜
図8を参照して、本発明の実施例に係るソレノイドバルブについて説明する。
【0017】
<ソレノイドバルブの全体構成>
図1を参照して、本発明の実施例に係るソレノイドバルブの全体構成を説明する。ソレノイドバルブSVは、往復動用のアクチュエータであるソレノイド部Sと、弁構造としてのバルブ部Vと、これらソレノイド部Sとバルブ部Vを構成する各種部材を収容するハウジング部Hとから構成される。
【0018】
ソレノイド部Sは、ボビン11と、ボビン11に巻かれ、通電により磁界を発生するコイル12と、コイル12によって発生した磁界により磁気回路が形成されることでセンターポスト14に磁気的に吸引されるプランジャ13と、プランジャ13の先端に固定される往復動部材としてのロッド13aとを備えている。また、ソレノイド部Sは、上記の磁気回路を形成するべく、いずれも磁性部材からなる一対のプレート15a,15b及びケース15cも備えている。また、ソレノイド部Sは、プランジャ13をセンターポスト14から離れる方向に付勢する第1スプリング16a及び第2スプリング16dと、第1スプリング16aを受けるスプリング受け16bと、スプリング受け16bの位置調整を行うアジャストスクリュ16cとを備えている。更に、ソレノイド部Sは、コイル12に電気的に接続された端子17も備えている。
【0019】
ハウジング部Hは、ソレノイド部Sとバルブ部Vを構成する各種部材を収容するハウジング本体21と、ハウジング本体21に固定されるカバー22とから構成される。ハウジング本体21には、元圧側から流体を流入させるための入力ポート部21aと、出力側(制御圧側)に流体を排出させるための出力ポート部21bが設けられている。また、ハウジング本体21には、外部電源からの電気供給を得るために電気的な接続を行うためのコネクタ部21cも設けられている。また、ハウジング本体21とカバー22との間には、シールリング72が設けられている。
【0020】
バルブ部Vは、ロッド13aの先端に設けられる可撓性の弁体30と、弁体30によって弁の開閉がなされる弁座40とを備えている。また、バルブ部Vは、弁座40を位置決めするためのスペーサリング60と、弁座40の外周面とハウジング本体21の内周面との間の隙間を封止するシールリング71とを備えている。
【0021】
なお、上述した第1スプリング16aと第2スプリング16dによる付勢力と、コイル12への通電量による磁力とのバランスによって、所望の流量(又は流量に伴う流体圧力)の制御がなされるように、アジャストスクリュ16cにより、スプリング受け16bの位置の調整がなされる。
【0022】
<バルブ部(弁構造)>
<<バルブ部の構成>>
特に、
図2〜
図8を参照して、バルブ部Vの構成について、より詳細に説明する。バルブ部Vは、上記の通り、弁体30と、弁座40とを備えている。
【0023】
弁体30は、円板状の部材で構成されており、可撓性を有する材料により構成されている。なお、可撓性を有する材料としては、フッ素樹脂などの樹脂や、金属などを挙げることができる。この弁体30は、その中央部分がロッド13aの先端に固定されている。
【0024】
弁座40は、その中央に、ロッド13aが挿通される挿通孔41を備えている。この挿通孔41の中心軸線は、プランジャ13,ロッド13a、及び弁体30の中心軸線と一致するように設けられている。なお、挿通孔41の内周面にはロッド13aの軸受13bが設けられている。そして、弁座40におけるプランジャ13とは反対側に座面43が設けられている。この座面43は、挿通孔41に向かうにつれて凹む(つまり中央に向かうにつれて凹む)傾斜面により構成されている。また、弁座40には、挿通孔41と座面43との間の領域に複数の弁孔42が設けられている。より具体的には、挿通孔41の周囲に、周方向に間隔を空けて複数の弁孔42が設けられている。更に、弁座40には、座面43のうち外周面側に偏った位置に、径方向に伸び、かつ周方向に間隔を空けて設けられる複数の溝44が備えられている。これら複数の溝44は、外周面側から中央に向かうにつれて溝の深さが徐々に浅くなるように構成されている。なお、本実施例においては、これ
ら複数の溝44は外周面に至る位置まで伸びるように設けられている。
【0025】
<<バルブ部のメカニズム>>
特に、
図3〜
図8を参照して、バルブ部Vのメカニズムについて説明する。
【0026】
ソレノイド部Sのコイル12に対して通電されていない状態では、磁力は発生しておらず、第1スプリング16aと第2スプリング16dによる付勢力によって、プランジャ13は、センターポスト14から離れる方向に移動している。これにより、
図3に示すように、弁体30は、ほぼ自然状態(撓んでいない状態)で弁座40の座面43に着座した状態となる。
図4はこの状態における座面43と弁体30との位置関係を示している。図示のように、弁体30が、ほぼ自然状態で座面43に着座した状態においては、弁体30の外周面付近が座面43に接触するように構成されている。
図4中、Rに示す領域が、弁体30が座面43に対して接触する領域である。図示のように、弁体30が座面43に対して接触する領域Rは、複数の溝44が設けられている領域上にある。従って、複数の溝44を介して、入力ポート部21aから出力ポート部21bへと至る流路が形成された状態となる。従って、入力ポート部21aから流入された流体は、複数の溝44を介して出力ポート部21bから排出される(
図3中矢印A参照)。なお、弁座40には、弁孔42から排出される流体を出力ポート部21b側に向けて排出可能とする孔部45が設けられている。また、
図4中の矢印は、複数の溝44を介して、流体が弁孔42に向かって流れていく様子を示している。
【0027】
そして、ソレノイド部Sのコイル12に対して通電が開始されると、磁気吸引力によって、第1スプリング16aと第2スプリング16dによる付勢力に抗して、プランジャ13はセンターポスト14に向かって移動を開始する。これに伴って、プランジャ13の先端に設けられたロッド13aもセンターポスト14に向かって移動していく。これにより、ロッド13aの先端に固定された弁体30は、その中央付近がセンターポスト14側に引っ張られるため、弁体30は座面43の形状に倣って撓むように変形していく(
図5参照)。そして、このような弁体30の変形が進むにつれて、弁体30が座面43に対して接触する領域Rは、複数の溝44が設けられている領域から挿通孔41側に向かって拡がっていく(
図6参照)。ここで、上記の通り、複数の溝44は、外周面側から中央に向かうにつれて溝の深さが徐々に浅くなるように構成されている。従って、弁体30が座面43に対して接触する領域Rが、挿通孔41側に向かって拡がっていくにつれて、溝44の部分における流路の断面積は徐々に狭くなっていく。
【0028】
弁体30の変形が更に進むことで、弁体30の座面43に対する接触領域Rは、複数の溝44が設けられている領域よりも内側に至る(
図8参照)。これにより、複数の弁孔42が設けられている領域の外周側に、弁体30と座面43との環状の接触領域が形成されるため、入力ポート部21aから出力ポート部21bへと至る流路は遮断された状態となる(
図7参照)。これにより、弁が閉じた状態となる。
【0029】
そして、弁が閉じた状態から、コイル12への通電量を減らしていくと、撓んだ状態で座面43に着座していた弁体30は、元の形状に戻るように変形していく。そして、弁体30の座面43に対する接触領域Rが、複数の溝44が設けられている領域内にまで縮小すると、複数の溝44を介して、流体が流れていく。つまり、弁が開いた状態となる。
【0030】
<本実施例に係るソレノイドバルブの優れた点>
本実施例に係るソレノイドバルブSVにおいては、弁体30が(挿通孔41に向かうにつれて凹む傾斜面により構成される)座面43の形状に倣って撓むように変形することで弁が閉じ、撓んだ状態から元の形状に戻るように変形することで弁が開くように構成されている。そして、弁体30が元の形状に戻るように変形する過程で、弁体30は座面43
から楔状に離れていくため、仮に弁体30が座面43に粘着していたとしても、弁体30は座面43から容易に剥がされていく。従って、従来例のOリングの場合のように両側から圧縮された状態から座面から離れるのに比べて、本実施例に係る弁体30の方が座面43から離れ易い。また、本実施例においては、通電量を減らしていく過程で、弁が開くように構成されている。
【0031】
以上のことから、従来技術のように、通電開始直後(弁が開き始めた直後)において、流体制御が不安定になってしまうことはない。また、本実施例においては、上記の通り、弁体30が座面43から離れ易いことからヒステリシスによる流量制御の誤差も少なくすることができる。また、従来例のOリングの場合には、プランジャが往復移動する毎に粘着状態が異なってしまい、流量特性にバラツキが生じるのに対して、本実施例に係るソレノイドバルブSVの場合には、そのような問題が解消され、流量特性を安定させることができる。
【0032】
そして、本実施例に係るソレノイドバルブSVにおいては、上記の通り、弁体30が撓んだ状態から元の形状に戻る過程で、弁体30は座面43に接触したままの状態で、複数の溝44を通って流体が流れていく。つまり、弁体30が撓んだ状態から元の形状に戻る過程で、弁体30の座面43に対する接触領域は、外周面側へと拡がっていく。ここで、本実施例では、上記の通り、複数の溝44は、外周面側から中央に向かうにつれて溝の深さが徐々に浅くなるように構成されている。従って、弁体30の座面43に対する接触領域が外周面側へ拡がるにつれて、溝44の部分における流路の断面積は徐々に広くなっていく。これにより、弁体30が撓んだ状態から元の形状に戻る過程で、流体が流れる流路の断面積が急に広くなってしまわないようにしている。なお、溝44の長さや幅や深さなどの大きさや、数の設定によって、コイル12への通電量に対する流量の変化をリニアにすることができ、かつ最大流量を調整することができる。
【0033】
(その他)
上述した弁体30の材料としてフッ素樹脂を採用し、弁座40の材料としてステンレス鋼を採用すると、弁体30と弁座40の座面43との間の固着作用を低減することができ、弁体30と座面43との粘着を効果的に抑制できる。また、上記実施例においては、コイル12に通電されていない状態においても、弁体30の外周面付近が座面43に接触するように構成される場合を示したが、コイル12に通電されていない状態では、弁体30が座面43から離れるように構成してもよい。この場合には、通電量が増えていく過程で、弁体30が座面43に着座し、その後、弁体30が座面43の形状に倣って撓むように変形していく。
【0034】
また、プランジャ13やロッド13aや軸受13bなどの摺動部材の摺動面に、公知の表面処理(PTFE焼き付けなど)を行って、摺動面の低摩擦化を行うことにより、より一層、ヒステリシスを低減させることが可能となる。更に、軸受として、磁気軸受を採用し、非接触式の軸受構造とすれば、より一層、ヒステリシスを低減させることが可能となる。
【0035】
また、上記実施例においては、弁座40における挿通孔41の周囲に、周方向に間隔を空けて複数の弁孔42が設けられる場合の構成を示した。しかしながら、本発明においては、弁孔42の数や配置が限定されるものではない。従って、弁孔42は一つであってもよい。また、上記実施例においては、弁座40には、座面43のうち外周面側に偏った位置に、周方向に間隔を空けて設けられる複数の溝44が備えられる場合の構成を示した。しかしながら、本発明においては、溝44の数や配置が限定されるものではない。従って、溝44は一つであってもよい。また、上記実施例においては、弁座40に設けられる複数の溝44は、外周面に至る位置まで伸びるように設けられる場合の構成を示したが、流
路が形成されさえすれば、外周面にまで至らない溝で構成してもよい。
【0036】
更に、上記実施例においては、弁体30が円板状の部材により構成される場合を示したが、本発明に適用可能な弁体は、そのような部材には限定されない。以下、
図9〜
図16を参照して、本発明に適用可能な弁体の変形例をいくつか説明する。
【0037】
図9は弁体の変形例1を示す模式的断面図である。この図に示す弁体31は、円板状の部材における外縁部分31aが湾曲した構成となっている。弁体の材料として、例えば弾性率が比較的高い金属を採用した場合、弁体を円板状にすると、撓み変形時にしわなどが発生し易いが、変形例1に係る弁体31のように外縁部分を湾曲させることで、しわの発生を抑制できる。
【0038】
図10は弁体の変形例2を示す模式的断面図である。この図に示す弁体32は、円板状の部材において、全体的に湾曲した構成となっている。この弁体32の場合にも、上記変形例1に係る弁体31と同様に、しわの発生を抑制できる。
【0039】
図11は弁体の変形例3を示す平面図であり、
図12は弁体の変形例3を示す模式的断面図(
図11中PP断面図)である。これらの図に示す弁体33は、円板状の部材において、同心的に凹凸が設けられ、断面で見ると波形状となるように構成されている。この弁体33の場合にも、上記変形例1に係る弁体31と同様に、しわの発生を抑制できる。
【0040】
図13は弁体の変形例4を示す平面図であり、
図14は弁体の変形例4を示す模式的断面図(
図13中QQ断面図)である。これらの図に示す弁体34は、円板状の部材において、周方向に間隔を空けて複数のディンプル34aが設けられる構成となっている。この弁体34の場合にも、上記変形例1に係る弁体31と同様に、しわの発生を抑制できる。
【0041】
図15は弁体の変形例5を示す平面図である。この図に示す弁体35は、円板状の部材において、周方向に間隔を空けて複数の円形の貫通孔35aが設けられる構成となっている。この弁体35によれば、弁が開いた状態において、貫通孔35aも流路の一部となるため、貫通孔35aの数や大きさにより、最大流量を調整することができる。なお、弁が閉じた状態においては、複数の貫通孔35aよりも内側の部分が座面43に接触するように構成されることは言うまでもない。なお、この変形例5については、上述した変形例1〜4のいずれに対しても組み合わせることができる。
【0042】
図16は弁体の変形例6を示す平面図である。この図に示す弁体36は、円板状の部材において、周方向に間隔を空けて複数のスリット状の貫通孔36aが設けられる構成となっている。この弁体36によれば、変形例5の場合と同様に、弁が開いた状態において、貫通孔36aも流路の一部となるため、貫通孔36aの数や大きさにより、最大流量を調整することができる。なお、弁が閉じた状態においては、複数の貫通孔36aよりも内側の部分が座面43に接触するように構成されることは言うまでもない。なお、この変形例6については、上述した変形例1〜4のいずれに対しても組み合わせることができる。
また、上記各実施例においては、弁構造がソレノイドバルブに適用される場合を例にして説明した。しかしながら、本発明の弁構造は、ソレノイドバルブ以外の弁構造にも適用可能である。すなわち、往復動部材を往復移動させるための往復動用のアクチュエータとしては、ソレノイドには限られず、空圧アクチュエータ,油圧アクチュエータ及び圧電アクチュエータなども適用可能である。本発明は、これらの各種往復動用のアクチュエータによって往復移動するように構成された往復動部材に弁体が設けられた弁構造に対しても適用可能である。