(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回生抵抗収容部は、前記筐体の前記制御回路が配置される面と前記回生抵抗収容部を有する面とに挟持される側面から離れた位置に配設されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の真空ポンプ制御装置。
前記回生抵抗は、外周面が前記空洞部の内周に嵌合する回生抵抗収容具に収容されて前記空洞部に挿入されることを特徴とする請求項1から請求項3のうち少なくともいずれか1項に記載の真空ポンプ制御装置。
前記空洞部の内周と挿入される前記回生抵抗収容具の間には、前記回生抵抗が発熱により膨張する分のクリアランスを予め設けてあることを特徴とする請求項4記載の真空ポンプ制御装置。
【背景技術】
【0002】
吸気口及び排気口を有するケーシングの内部でロータを高速回転させて排気処理を行うターボ分子ポンプなどの真空ポンプには、ロータを回転させるためのモータを制御する真空ポンプ制御装置(コントローラ)が電気的に接続されている。
このようなモータを使用した回転機械では、減速時などでモータが回転することで反対に電気エネルギー(回生エネルギー)が発生する。回生エネルギーは、モータを制御するモータードライバー回路内で直流電圧上昇を引き起こし、回路内素子の故障に繋がる恐れがある。よって、回路素子の故障が起こらないように、回生エネルギーは処理される必要がある。回生エネルギーを処理する方法の1つとして、回生抵抗がある。回生抵抗は、回生エネルギーを熱エネルギーに変換して消費する。そのため、回生抵抗自体の発熱は避けられない。
また、回生抵抗は、冷却する目的で、真空ポンプ制御装置を構成する素子を内包する筐体の側面(壁面)などに接触させるように取りつけられている。そのため、真空ポンプ制御装置の筐体における回生抵抗が取り付けられた部分から、回生抵抗の発熱により真空ポンプ制御装置の筐体も発熱し、真空ポンプ制御装置が人が触ることができないくらいの温度にまで上昇してしまう。
回生抵抗の許容値はおおよそ300℃ほどではあるが、安全性・信頼性の面から、この許容値に対して、なるべく大幅に下回る温度状態を保つことができるように回生抵抗を冷却し続ける必要がある。
【0003】
また、真空ポンプ制御装置から発生する熱(即ち、回生抵抗による熱など)が、真空ポンプ制御装置と真空ポンプとが接続された接続部を通して真空ポンプへ伝わり、真空ポンプが加熱されて高温状態となり、真空ポンプに接続された真空装置側に支障をきたしてしまう場合がある。
ここで、真空装置について説明する。
真空ポンプを用いて排気処理を行うことで内部が真空に保たれるような真空装置には、半導体製造装置、電子顕微鏡装置、表面分析装置、微細加工装置などがある。こうした真空装置は、上述のようにして真空ポンプの放射熱の影響を受けてしまうと、測定精度や加工精度の誤差が大きくなり、その工程に多大な不具合が生じてしまう場合がある。
こうした理由から、真空装置において、より精密な加工やより精度の高い測定を実現させるためにも、真空ポンプ制御装置に配設された回生抵抗を冷却し続ける必要がある。
【0004】
図8は、従来の真空ポンプ制御装置2000の概略構成例を示した断面図である。
従来は、例えば、図示しないヒートシンク(放熱器、放熱板)を別途用意し、発熱する機械・電子部品(付近や壁面)に取り付けるなどして熱の放散によって温度を下げたり、また、
図8(a)に示したように、空冷ファン(冷却ファン)50などをとりつけて強制的に空気の移動量を増やして冷却能力を拡大させるなどしていた。
【0005】
より詳しくは、通常、回生抵抗200は、
図8(b)に示したように、モータの制御に係る他の素子(CPU、トランジスタなど)と共に、モータの制御基板(即ち、真空ポンプのモータを制御するための回路が搭載された基板)300上に搭載されているが、同一の制御基板300上に回生抵抗200と他の素子とが搭載されていると、回生抵抗200の発熱により回生抵抗200のみならず他の素子も温度が上昇してしまう。
この温度上昇を防ぐ(冷却させる)ために、回生抵抗200が搭載された制御基板300に冷却媒体を当てるなどして制御基板300を直接冷却させると、冷却箇所に結露が発生するなどして他の素子に重大な被害を及ぼしてしまう。
ここで、結露とは、冷却部分(冷却面)が露点(即ち、相対温度が100%になる温度)以下になると、その冷却面上(即ち、固体状態における物質の表面、または内部)に、空気中の水蒸気が凝縮して水滴として出現する現象であり、このような結露が制御基板300内に発生すると、制御回路に不具合を生じる虞がある。
【0006】
そこで、従来、真空ポンプの制御装置では、
図8(a)に示したように、回生抵抗200のみを制御基板300から外し、真空ポンプ制御装置2000の筐体壁面に直接密着させて取りつけてその壁面部分を冷却ファン50で冷却することで、回生抵抗200のみを冷却する方法がとられている。
【0007】
また、筐体の壁面に密着させて電気素子や抵抗を冷却する一例として、下記特許文献1では、発熱する素子を冷却する技術が提案されている。
具体的には、電気素子が電極を介して電気素子収容容器の側面部と接合された構成にすることにより、電気素子で発生した熱を電極及び電気素子収容容器の側面部を通じて効率的に放熱する技術について記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(i)実施形態の概要
本発明の実施形態では、真空ポンプのロータを回転させるモータを制御する真空ポンプ制御装置(コントローラ)に備えられる回生抵抗を、アルミ・ダイキャスト・ケーシング内に収容する。
より詳しくは、真空ポンプ制御装置の筐体を、アルミニウムのダイキャスティング(金型鋳造)で製造(即ち、筐体はアルミ・ダイキャスト)し、当該アルミ・ダイキャストの一部(本実施形態では天板、即ち、真空ポンプ制御装置の上蓋)に、回生抵抗全体が収まる寸法に設計された空洞部が設けられた回生抵抗収容部を設ける。以後、真空ポンプ制御装置の筐体であるアルミ・ダイキャストの天板部分における、当該空洞部を有する一帯である回生抵抗収容部を、アルミ・ダイキャストで製造された、回生抵抗のためのケーシングと呼ぶ。
そして、回生抵抗を当該空洞部に嵌め込み、空洞部の開口部分を、ボルト及び、ケーシングと同素材のアルミニウム板(回生抵抗固定金具)で封止することで、回生抵抗は空洞部に取り出し可能に収容される。
【0015】
(ii)実施形態の詳細
以下、本発明の好適な実施の形態について、
図1〜
図7を参照して詳細に説明する。
本実施形態では、真空ポンプの一例としてターボ分子ポンプを用いて説明する。
本発明に係る実施形態では、ターボ分子ポンプ本体1を制御するための真空ポンプ制御装置20が、ポンプ固定脚18を介してターボ分子ポンプ本体1に装着されている。つまり、ターボ分子ポンプ本体1と真空ポンプ制御装置20が一体化されている。
(真空ポンプ本体)
まず、本発明の実施形態に係るターボ分子ポンプ本体1について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る回生抵抗のためのケーシング(以後、回生抵抗ケーシングと呼ぶ)を備えた真空ポンプ制御装置と一体化されたターボ分子ポンプ本体1の概略構成例を示した図である。
また、
図1には、真空ポンプ制御装置20に接続された冷却プレート(水冷プレート)40、ターボ分子ポンプ本体1に接続された真空室30の一部も示されている。
水冷プレート40については後述する。
ここで、ターボ分子ポンプ本体1に接続された真空室30について説明する。
真空室30は、例えば、表面分析装置や微細加工装置のチャンバ等として用いられる真空装置を形成している。
真空室30は、真空室壁31によって構成され、ターボ分子ポンプ本体1との接続ポートを有する真空容器である。
【0016】
以下に、ターボ分子ポンプ本体1の構成について説明する。
図2は、本発明の実施形態に係るターボ分子ポンプ本体1の概略構成例を示した図である。
図3は、ターボ分子ポンプ本体1の軸線方向の断面図を示した図である。
ターボ分子ポンプ本体1は、真空室30の排気処理を行うための真空ポンプ本体である。
このターボ分子ポンプ本体1は、ターボ分子ポンプ部とねじ溝式ポンプ部を備えた、いわゆる複合翼タイプの分子ポンプである。
ターボ分子ポンプ本体1の外装体を形成するケーシング2は、略円筒状の形状をしており、ケーシング2の下部(排気口6側)に設けられたベース3と共にターボ分子ポンプ本体1の筐体を構成している。そして、このターボ分子ポンプ本体1の筐体の内部には、ターボ分子ポンプ本体1に排気機能を発揮させる構造物である気体移送機構が収納されている。
この気体移送機構は、大きく分けて、回転自在に軸支された回転部と、ターボ分子ポンプ本体1の筐体に対して固定された固定部と、から構成されている。
【0017】
ケーシング2の端部には、当該ターボ分子ポンプ本体1へ気体を導入するための吸気口4が形成されている。また、ケーシング2の吸気口4側の端面には、外周側へ張り出したフランジ部5が形成されている。ターボ分子ポンプ本体1と真空室壁31とは、フランジ部5を介してボルト等の締結部材を用いて固定することによって結合されている。
また、ベース3には、当該ターボ分子ポンプ本体1から気体を排気するための排気口6が形成されている。
また、真空ポンプ制御装置20がターボ分子ポンプ本体1から受ける熱の影響を低減させるために、ベース3に、チューブ(管)状の部材からなる冷却(水冷)管70が埋設されている。
冷却管70は、内部に熱媒体である冷却剤を流し、この冷却剤に熱を吸収させるようにすることで、当該冷却管70周辺を冷却するための部材である。
このように、冷却管70に冷却剤を流すことによってベース3が強制的に冷却されることで、ターボ分子ポンプ本体1から真空ポンプ制御装置20へ伝導する熱を低減(抑制)することができる。
この冷却管70は、熱抵抗の低い部材つまり熱伝導率の高い部材、例えば、銅、やステンレス鋼などによって構成されている。
また、冷却管70に流す冷却材、つまり物体を冷却するための材料は、液体であっても気体であってもよい。液体の冷却材としては、例えば、水、塩化カルシウム水溶液やエチレングリコール水溶液などを用いることができ、一方、気体の冷却材としては、例えば、アンモニア、メタン、エタン、ハロゲン、ヘリウムや炭酸ガス、空気などを用いることができる。
なお、本実施形態では、冷却管70がベース3に配設されているが、冷却管70の配設位置はこれに限られるものではない。例えば、ターボ分子ポンプ本体1のステータコラム10の内部に直接嵌め込むように設けてもよい。
【0018】
回転部は、回転軸であるシャフト7、このシャフト7に配設されたロータ8、ロータ8に設けられた回転翼9、排気口6側(ねじ溝式ポンプ部)に設けられたステータコラム10などから構成されている。なお、シャフト7及びロータ8によってロータ部が構成されている。
回転翼9は、シャフト7の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜してシャフト7から放射状に伸びたブレードからなる。
また、ステータコラム10は、ロータ8の回転軸線と同心の円筒形状をした円筒部材からなる。
【0019】
シャフト7の軸線方向中程には、シャフト7を高速回転させるためのモータ部11が設けられている。
さらに、シャフト7のモータ部11に対して吸気口4側、および排気口6側には、シャフト7をラジアル方向(径方向)に非接触で軸支するための径方向磁気軸受装置12、13が、また、シャフト7の下端には、シャフト7を軸線方向(アキシャル方向)に非接触で軸支するための軸方向磁気軸受装置14が各々設けられている。
【0020】
ターボ分子ポンプ本体1の筐体の内周側には、固定部が形成されている。この固定部は、吸気口4側(ターボ分子ポンプ部)に設けられた固定翼15と、ケーシング2の内周面に設けられたねじ溝スペーサ16などから構成されている。
固定翼15は、ターボ分子ポンプ本体1の筐体の内周面からシャフト7に向かって、シャフト7の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜して伸びているブレードから構成されている。
各段の固定翼15は、円筒形状をしたスペーサ17により互いに隔てられている。
ターボ分子ポンプ本体1では、固定翼15が軸線方向に、回転翼9と互い違いに複数段形成されている。
【0021】
ねじ溝スペーサ16には、ステータコラム10との対向面にらせん溝が形成されている。ねじ溝スペーサ16は、所定のクリアランス(間隙)を隔ててステータコラム10の外周面に対面するようになっている。ねじ溝スペーサ16に形成されたらせん溝の方向は、らせん溝内をロータ8の回転方向にガスが輸送された場合に、排気口6に向かう方向である。
また、らせん溝の深さは、排気口6に近づくにつれて浅くなるようになっており、それ故、らせん溝を輸送されるガスは排気口6に近づくにつれて圧縮されるように構成されている。
このように構成されたターボ分子ポンプ本体1により、真空室30内の真空排気処理を行うようになっている。
【0022】
(真空ポンプ制御装置)
次に、上述したような構成を有するターボ分子ポンプ本体1に装着される真空ポンプ制御装置20の構造について説明する。
図4(a)は、本発明の実施形態に係る真空ポンプ制御装置20の概略構成例を示した図である。
本実施形態に係る真空ポンプ制御装置20は、ターボ分子ポンプ本体1における各種動作を制御する制御回路を備えたコントロールユニットを構成しており、
図1に示したように、ターボ分子ポンプ本体1のベース3の底部に配設(装着)されている。
【0023】
本実施形態の真空ポンプ制御装置20には、ターボ分子ポンプ本体1に設けられているコネクタ(図示しない)と対になるコネクタ(図示しない)が設けられており、真空ポンプ制御装置20に設けられている制御回路は、ターボ分子ポンプ本体1のコネクタと、真空ポンプ制御装置のコネクタとを接合(結合)させることによって、ターボ分子ポンプ本体1の電子部品と電気的に接続されるように構成されている。そのため、真空ポンプ制御装置20は、ターボ分子ポンプ本体1と真空ポンプ制御装置20とを接続する専用ケーブルを用いることなく、ターボ分子ポンプ本体1のモータ部11や径方向磁気軸受装置12、13、及び軸方向磁気軸受装置14、変位センサ(図示しない)の駆動信号や電力をターボ分子ポンプ本体1へ供給したり、ターボ分子ポンプ本体1から各種信号などを受信したりすることができる。
【0024】
本発明の実施形態に係る真空ポンプ制御装置20は、真空ポンプ制御装置の筐体220、上蓋即ち制御ユニット・ケーシング210、回生抵抗ケーシング211、回生抵抗200、及び制御基板300を備えている。
真空ポンプ制御装置の筐体220及び制御ユニット・ケーシング210はアルミ・ダイキャストであり、制御ユニット・ケーシング210は、その全体又は一部が回生抵抗ケーシング211として機能する。これら筐体220、制御ユニット・ケーシング210、及び回生抵抗ケーシング211は、アルミ・ダイキャストで構成されている。
また、制御ユニット・ケーシング210は、筐体220における上部(ターボ分子ポンプ本体1側)の開口端を密閉するように、シール部材214により筐体220に接合されている。
制御基板300は、制御回路が搭載された基板であり、本実施形態では、複数の制御基板300が筐体220内部に固定されている。
【0025】
ここで、制御基板300に搭載されている制御回路について説明する。
制御回路には、モータ部11や径方向磁気軸受装置12、13、及び軸方向磁気軸受装置14の駆動回路、電源回路などが設けられている。さらに、これら駆動回路を制御するための回路や、ターボ分子ポンプ本体1の制御に用いられる各種情報が格納された記憶素子が搭載されている。
一般に、電子回路で用いられる電子部品(素子)には、信頼性を考慮した環境温度が設定されている。例えば、上述した記憶素子の環境温度は、概ね60℃程度となっている。なお、このような耐熱特性の低い素子を低耐熱素子と表現する。
各電子部品は、ターボ分子ポンプ本体1の動作時において、環境温度の設定値範囲内で使用しなければならない。
また、真空ポンプ制御装置20内部に設けられている回路には、上述した低耐熱素子の他にも、素子内の損失(内部損失)により発熱する部品(パワー素子)も多数用いられている。例えば、モータ部11の駆動回路であるインバータ回路を構成するトランジスタ素子などがこれに相当する。
このような自己発熱量が大きくなるような素子においても環境温度が設定されている。
【0026】
(回生抵抗の冷却機構)
また、真空ポンプ制御装置20には、
図4(a)に示すように、水冷プレート40が接続されている。
水冷プレート40には、上述した真空ポンプ本体(ターボ分子ポンプ本体1)の冷却管70と同様の水冷用の冷却管80が円周状に埋め込まれており、冷却管80に冷却材を流すことにより、水冷プレート40が冷却され、そして、水冷プレート40と接触している制御ユニット・ケーシング210、及び、制御ユニット・ケーシング210の一部である回生抵抗ケーシング211が強制的に冷却される。
また、水冷プレート40は、筐体220における側壁の形成面にボルト(図示しない)などの締結部材によって固定されている。なお、本実施形態では、この水冷プレート40は、ボルト(図示しない)を外すことにより容易に真空ポンプ制御装置20から切り離すことができるように、即ち着脱自在に構成されている。
【0027】
(真空ポンプ制御装置の回生抵抗ケーシング)
本実施形態では、回生抵抗ケーシング211は、
図4(a)に示したように、真空ポンプ制御装置20の側面(筐体220の側部)から、クリアランスdだけ離れた位置に配置されるように構成している。なお、このクリアランスdは、例えば、5mm〜20m程度である。
このように、回生抵抗200が、真空ポンプ制御装置20の側面(筐体220の側部)の内側に取りつけられるのではなく、筐体220の側部から離して配設される構成にしたので、例えば、作業点検などを行う作業員が触れる可能性のある部分(筐体220の側部)が過剰に熱くなることを抑制することができ、作業時の安全性を向上させることができる。
【0028】
本実施形態では、クリアランスdを設ける構成にしたが、これに限られることはない。
例えば、
図4(b)に示したように、回生抵抗ケーシング211を制御ユニット・ケーシング210の中央に位置するように構成することもできる。
あるいは、
図4(c)に示したように、制御ユニット・ケーシング210そのもので回生抵抗ケーシング211を構成するように構成してもよい。
【0029】
上述のように、回生抵抗200を、回生抵抗200よりも大きなアルミ・ダイキャスト・ケーシング(回生抵抗ケーシング211)に収容する構成にすることで、回生抵抗200が単体で配設されている場合よりも熱容量が大きくなるので、回生抵抗200自体の温度上昇を抑制することができる。
仮に、回生抵抗200単体で発熱した場合、回生抵抗200は200〜300℃にまで上昇して許容温度(一般的には300℃程度に設定されている)を超えてしまうおそれがあるが、容器(アルミ・ダイキャスト・ケーシング)に収容することで、上記理由により温度が上がりにくくなる。実験では、許容温度として問題のない150℃位にまで下げることが可能であった。
【0030】
図5(a)は、本発明の実施形態に係る制御ユニット・ケーシング210及び回生抵抗ケーシング211の概略構成例を示した拡大図であり、
図5(b)は、
図5(a)におけるA矢視図である。
本発明の実施形態に係る回生抵抗ケーシング211は、真空ポンプ制御装置20の上蓋(天板)の役割を担う制御ユニット・ケーシング210(アルミ・ダイキャスト・ケーシング)の一部として構成される。
なお、本実施形態では回生抵抗ケーシング211は制御ユニット・ケーシング210の一部としたが、これに限られることはない。例えば、別途、アルミ・ダイキャスティング(金型鋳造)で製作した回生抵抗ケーシング211を、取付具(例えば、ボルトなど)で制御ユニット・ケーシング210に取りつける構成にすることもできる。
【0031】
回生抵抗ケーシング211は、回生抵抗200全体が収まる寸法に設計された空洞部212を有し、この空洞部212に回生抵抗200が挿入されて嵌め込まれる。
更に、回生抵抗ケーシング211は、嵌め込まれた回生抵抗200が落下してしまうのを防止するために、空洞部212をふさぐ(封止する)蓋として機能する回生抵抗固定金具213と、回生抵抗200を回生抵抗ケーシング211に嵌め込んだ後、回生抵抗固定金具213を回生抵抗ケーシング211に取りつける取付具であるボルト215と、を備えることにより回生抵抗200を取り出し可能に拘持(収容)する。
回生抵抗200は導線250によって制御基板300(
図4)と接続されている。
また、
図5に示したように、本実施形態の回生抵抗ケーシング211は、熱容量を増やすために、側面から見た場合が矩形、且つ、底面(即ち、A矢印方向)から見た場合が楕円形(俵型、卵形)である円筒(円柱)形としたが、回生抵抗ケーシング211の形状はこれに限られることはない。
【0032】
なお、回生抵抗200の挿入を可能にするために、回生抵抗ケーシング211の空洞部212の内面の側面積は、回生抵抗200の外面(外周)の側面積よりも、大きくなるように構成されている。
より具体的には、回生抵抗200が発熱により膨張する分のクリアランスが設けてある。例えば、12〜38μm程度のすき間となっている。
適度なクリアランスを予め設けておくことで、回生抵抗200が発熱により膨張した場合に、回生抵抗200が回生抵抗ケーシング211に隙間無く拘持(収容)され得る(接着状態になるような)構成にしている。
このように、空洞部212と挿入される回生抵抗200とは、挿入時は若干の隙間を隔ててはいるものの、真空ポンプ制御装置20の駆動時(即ち、回生抵抗200を冷却する必要が生じる時)には、発熱した回生抵抗200が膨張して回生抵抗200と回生抵抗ケーシング211との隙間(クリアランス)は無くなることで、常時、回生抵抗200と回生抵抗ケーシング211とを接している状態に保つことができる。このため、回生抵抗ケーシング211の上部(即ち、ターボ分子ポンプ本体1側)に配設された水冷プレート40(
図4)により、回生抵抗200を効率よく冷却し続けることができる。
このように、本実施形態では、回生抵抗200と回生抵抗ケーシング211とが密着しているので、水冷プレート40は、回生抵抗ケーシング211を介して回生抵抗200を直接冷やすことができる(即ち、空気が介在していない)。
【0033】
また、このような構成の本実施形態では、回生抵抗200と当該回生抵抗が取りつけられる筐体220の側部とが、回生抵抗が円筒形の場合は線、又は、回生抵抗が矩形の場合は単面(一つの面)で接触していた従来の構成(
図8(c))よりも、回生抵抗200と回生抵抗ケーシング211とが密着(接触)する面積が著しく増大する。
このように、水冷プレート40による冷却効果を、回生抵抗200の側周面における広範囲に及ばせることが可能になるため、冷却効果を向上させることができる。
【0034】
また、本実施形態では、ターボ分子ポンプ本体1と真空ポンプ制御装置20とを一体型としたがこれに限られることはない。
例えば、
図9に示したような真空ポンプ本体(ターボ分子ポンプ本体)と真空ポンプ制御装置とが一体型ではない場合は、真空ポンプ本体と真空ポンプ制御装置とをケーブルなどで接続して配置する構成にすればよい。この場合、真空ポンプ制御装置で使用する冷却プレート用の冷却システム(水冷管など)を別途設けて冷却に必要な水を用意(供給)するようにして構成することができる。
【0035】
(回生抵抗)
図6(a)〜(c)は、回生抵抗を説明するための図である。
回生抵抗200には様々な形がある。本実施形態では回生抵抗200は円筒形即ち円柱状(丸棒)の構成としたが、これに限られることはない。例えば、四角形や六角形といった、底面が矩形である柱状の回生抵抗も考えられる。
【0036】
(変形例)
上述した本発明の実施形態は、様々に変形することが可能である。
図7は、本発明の実施形態の変形例に係る回生抵抗ケーシング211内に回生抵抗200を挿入する際に使用する、回生抵抗200を入れるための回生抵抗収容具である金属ケース400の一例を示した図である。
通常、既製品の回生抵抗200の形状や寸法は、
図6(a)〜(c)に示したように、ばらつきがあり一様ではなく、また、その表面は、滑らかな平面状ではない。そのため、回生抵抗200を回生抵抗ケーシング211に直接挿入した場合に、回生抵抗200が回生抵抗ケーシング211の内壁面に接触する部分は限られてしまう。
【0037】
そうした回生抵抗200の形状及び寸法のばらつきや、表面の非滑らかさに対応するために、本変形例では、回生抵抗200を回生抵抗ケーシング211に直接は挿入せず、回生抵抗専用の金属のケースである金属ケース400に入れて、その金属ケース400を回生抵抗ケーシング211内に挿入(収容)する。金属ケース400内の回生抵抗200の周りには、熱伝導性の高い電熱グリスなどを充填し、両者の隙間を減らしておくと、更に効果が発揮される。回生抵抗専用とは、例えば、回生抵抗200が
図6(a)及び(b)に示したような矩形であれば、矩形の金属ケース400を使用し、一方、回生抵抗200が
図6(c)に示したような円筒形であれば、円筒形の金属ケース400を使用する。
この金属ケース400は、その外周が、回生抵抗ケーシングの内周面(即ち、空洞部)に沿った形状を有し、従って、金属ケース400は回生抵抗ケーシング211に隙間無く嵌め込まれ得る。
形状や寸法精度が高い金属ケース400に入れた回生抵抗200を回生抵抗ケーシング211へ挿入する構成にすることで、回生抵抗ケーシング211と金属ケース400との形状誤差が少なく寸法差も均一に近いものとなる。
このように金属ケース400を設けることで、回生抵抗200が発熱して膨張すると金属ケース400の内側と密着し、その結果、回生抵抗200は金属ケース400の外側と密着している回生抵抗ケーシング211と(金属ケース400を介して)密着することができる。
【0038】
また、金属ケース400は、耐熱性のある耐熱鋼やステンレス鋼(SUS)製であることが望ましい。
これは、仮に、金属ケース400を、アルミ・ダイキャスト・ケーシングである回生抵抗ケーシング211と同素材のアルミニウムで作製すると、同素材同士であるために回生抵抗200の熱により融着してしまう可能性があるためである。
このように融着を起こすと、例えば、回生抵抗200の交換時など、回生抵抗ケーシング211から回生抵抗200を外す場合に、外すことが困難又は不可能になってしまうからである。
このように、用いる回生抵抗200の形状に合わせた金属ケース400を使用する構成にすることで、仮に、膨張しても回生抵抗ケーシング211に密着し得ないような回生抵抗200であっても、当該金属ケース400の内装を回生抵抗200に合わせて(即ち、膨張した場合に密着し得るように)加工すればよく、回生抵抗ケーシング211を加工する必要がなくなる。その結果、製造コストを低減させることができる。
また、回生抵抗200の変形例として、上記金属ケース400に抵抗を設置し、抵抗の周りをセラミックや酸化アルミナで固めるなどした、オーダーメイドの回生抵抗であってもよい。
【0039】
上述したように、本発明の実施形態及び変形例によれば、以下(1)〜(5)を実現することができる。
(1)真空ポンプ制御装置の天板の一部又は全体に、アルミ・ダイキャスティングで作製した、回生抵抗用のケーシングである回生抵抗ケーシングを設けたことで、回生抵抗が単体で配設されている場合よりも熱容量が大きくなるので、回生抵抗自体の温度が上昇しにくくなる。
つまり、回生抵抗が単体で発熱して温度が上昇するのではなく、回生抵抗の熱が回生抵抗ケーシングへ伝達されるので、この回生抵抗ケーシングが熱をため込む役割を担うことで回生抵抗が単体で配設置されている場合よりも熱容量を大きくすることができる。
その結果、温度が上昇しにくい真空ポンプ制御装置と、当該真空ポンプ制御装置を備えた真空ポンプとを提供することができる。
(2)回生抵抗ケーシングを有する真空ポンプ制御装置の天板(即ち、制御ユニット・ケーシング)上に冷却(水冷)プレートを設けたので、回生抵抗から放射される熱を真空ポンプ制御装置の天板近傍で遮ることができるため、真空ポンプ制御装置本体の温度上昇を低減(減衰)させること、及び、真空ポンプ制御装置に一体型に配設されるターボ分子ポンプの内部にまで放射される回生抵抗からの熱の量を低減させることができる。
その結果、回生抵抗の放熱性を簡単な構成で向上させることができ、温度上昇を適切に抑制することができる真空ポンプ制御装置と、当該真空ポンプ制御装置を備えた真空ポンプとを提供することができる。
(3)回生抵抗ケーシングに、回生抵抗の形に合った、即ち、発熱時の回生抵抗の膨張により回生抵抗と回生抵抗ケーシングとが密着し得る寸法に設計された、回生抵抗全体が収まる穴(空洞)を設け、当該穴の中に回生抵抗を挿入して開口口に蓋をする構成にしたことで、回生抵抗ケーシングと回生抵抗との密着性が高くなり熱伝導を向上させることができる。
その結果、回生抵抗の放熱性を向上させることができる真空ポンプ制御装置と、当該真空ポンプ制御装置を備えた真空ポンプとを提供することができる。
(4)回生抵抗ケーシングを、真空ポンプ制御装置内部に於いて真空ポンプ制御装置の筐体の側壁から所定のクリアランスだけ離れた位置に設置させたことで、真空ポンプ制御装置の壁面の温度上昇を適切に低減させることができ、人が真空ポンプ制御装置の外側から真空ポンプ制御装置に接触した場合の安全性を向上させることができる。
(5)回生抵抗を、回生抵抗ケーシングの内周面に沿った形状を有する回生抵抗専用の金属ケースに入れて回生抵抗ケーシング内に挿入(収容)する構成にしたので、種々異なる回生抵抗本体の形状及び寸法のばらつきや、表面の非滑らかさに煩わされることなく、回生抵抗ケーシングと回生抵抗を密着させることができる。
その結果、種類が一様ではない回生抵抗を使用する場合であっても、種類に応じた金属ケースを利用することで、一様に回生抵抗の放熱性を向上させることができる真空ポンプ制御装置と、当該真空ポンプ制御装置を備えた真空ポンプとを提供することができる。