(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸線方向に延びると共に先端が閉じた有底筒状をなし、固体電解質体を主体として構成される素子本体部と、前記素子本体部の内面に形成される内部電極と、前記素子本体部の外面に形成される外部電極と、を備えて測定対象ガス中の特定ガスを検出する検出素子と、
先端部に発熱部を備える長尺形状に形成され、先端部が前記検出素子の内部に挿入されると共に前記検出素子に当接して前記検出素子を加熱するヒータと、
前記検出素子および前記ヒータを収容するケーシングと、
を備えるガスセンサであって、
前記外部電極は、前記素子本体部の先端部分に形成される外部検知部を備え、
前記内部電極は、前記素子本体部の先端部分に形成される内部検知部と、前記素子本体部の後端から前記内部検知部にかけて形成された内部リード部と、を備え、
前記内部検知部は、前記素子本体部の軸線方向において、前記ヒータと前記検出素子との接触点よりも先端側領域に設けられる先端側内部検知部と、前記接触点よりも後端側領域に設けられる後端側内部検知部と、を備え、
前記先端側内部検知部は、前記素子本体部における周方向の全体に形成されており、
前記後端側内部検知部は、前記素子本体部の中心軸線を中心とする周方向に沿った周方向寸法が前記内部リード部の周方向寸法よりも大きく形成されるとともに、少なくとも一部が前記発熱部に対向しており、
前記後端側内部検知部のうち前記内部リードに連結される連結側検知部は、周方向の一部にのみ形成されるとともに、少なくとも一部が前記発熱部に対向すること、
を特徴とするガスセンサ。
前記後端側内部検知部は、前記素子本体部の軸線方向における前記接触点から前記発熱部の先端位置までの領域において、前記素子本体部における周方向の全体に形成されること、
を特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ヒータによる加熱や測定対象ガスからの熱伝導による加熱が不十分である場合には、素子本体部(より詳細には、固体電解質体)が適切な活性化状態とはならずに、特定ガスを適切に検出できない場合がある。
【0006】
つまり、素子本体部のうち一部が活性化状態であっても、素子本体部のうち内部電極および外部電極の形成領域が活性化状態ではない場合には、素子本体部でのイオンの移動距離が大きくなるため、内部電極と外部電極との間の電気抵抗値が大きくなり、特定ガスを適切に検出できない場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、特定ガスを検出するにあたり、検出素子の素子本体部(固体電解質体)を適切に活性化状態にすることができるガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のガスセンサは、軸線方向に延びると共に先端が閉じた有底筒状をなし、固体電解質体を主体として構成される素子本体部と、素子本体部の内面に形成される内部電極と、素子本体部の外面に形成される外部電極と、を備えて測定対象ガス中の特定ガスを検出する検出素子と、先端部に発熱部を備える長尺形状に形成され、先端部が検出素子の内部に挿入されると共に検出素子に当接して検出素子を加熱するヒータと、検出素子およびヒータを収容するケーシングと、を備えるガスセンサであって、外部電極は、素子本体部の先端部分に形成される外部検知部を備え、内部電極は、素子本体部の先端部分に形成される内部検知部と、素子本体部の後端から内部検知部にかけて形成された内部リード部と、を備え、内部検知部は、素子本体部の軸線方向において、ヒータと検出素子との接触点よりも先端側領域に設けられる先端側内部検知部と、接触点よりも後端側領域に設けられる後端側内部検知部と、を備え、先端側内部検知部は、素子本体部における周方向の全体に形成されており、後端側内部検知部は、素子本体部の中心軸線を中心とする周方向に沿った周方向寸法が内部リード部の周方向寸法よりも大きく形成されるとともに、少なくとも一部が発熱部に対向しており、後端側内部検知部のうち内部リードに連結される連結側検知部は、周方向の一部にのみ形成されるとともに、少なくとも一部が発熱部に対向すること、を特徴とするガスセンサである。
【0009】
このガスセンサの検出素子においては、内部電極が内部検知部と内部リード部とを備える。
内部検知部は、先端側内部検知部と後端側内部検知部とを備える。
【0010】
このうち、先端側内部検知部は、素子本体部の軸線方向において、ヒータと検出素子との接触点よりも先端側領域に設けられる。また、先端側内部検知部は、素子本体部における周方向領域の全体に形成されている。
【0011】
検出素子のうち先端部分は、測定対象ガスに直接晒されて測定対象ガスからの熱伝導により加熱され易い部分である。つまり、検出素子の素子本体部(固体電解質体)のうち先端部分は、測定対象ガスによる加熱により活性化状態となり易い部分である。
【0012】
このため、検出素子の素子本体部のうち先端側内部検知部が形成される領域は、測定対象ガスによる加熱により活性化状態となり、特定ガスを検出可能な状態となる。
次に、外部電極は、素子本体部の先端部分に形成される外部検知部を備えている。
【0013】
つまり、外部検知部は素子本体部の先端部分に形成されることから、検出素子の素子本体部のうち外部検知部が形成される領域は、測定対象ガスによる加熱により活性化状態となり、特定ガスを検出可能な状態となる。
【0014】
他方、後端側内部検知部は、その少なくとも一部が発熱部に対向している。
つまり、後端側内部検知部の形成領域は、ヒータの発熱部に対向する領域を含むことになり、ヒータの発熱部により加熱され易い部分となる。このため、検出素子の素子本体部のうち後端側内部検知部の形成領域は、ヒータによる加熱により活性化状態となり、特定ガスを検出可能な状態となる。
【0015】
また、後端側内部検知部は、素子本体部の中心軸線を中心とする周方向に沿った周方向寸法が内部リード部の周方向寸法よりも大きく形成されるため、素子本体部との接触面積を大きく確保でき、移動可能なイオンの量が多くなる。
【0016】
なお、ここでいう後端側内部検知部の周方向寸法とは、周方向寸法のうち最大径となる箇所における寸法を指す。
これらのことから、検出素子の素子本体部のうち、内部電極の内部検知部および外部電極の外部検知部の形成領域は、測定対象ガスおよびヒータによって加熱されて活性化状態となる。これにより、素子本体部が適切な活性化状態となり、内部電極と外部電極との間の電気抵抗値が小さくなって、特定ガスを検出可能な状態となる。
【0017】
また、後端側内部検知部のうち内部リードに連結される連結側検知部は、周方向の一部にのみ形成される。つまり、後端側内部検知部は、少なくとも連結側検知部においては、周方向の全周にわたり形成される構成ではない。このことから、軸線方向における内部リード部との対向領域の全体に後端側内部検知部を形成する場合に比べて、後端側内部検知部の形成領域を縮小できる。これにより、後端側内部検知部の材料費を低減できる。
【0018】
よって、本発明によれば、特定ガスを検出するにあたり、検出素子の素子本体部(固体電解質体)を適切に活性化状態にすることが可能となる。
なお、本発明における「周方向寸法」とは、検出素子の中心軸線に垂直な平面において、検出素子の中心軸線を中心とした角度領域で表される。例えば、後端側内部検知部の周方向寸法は、検出素子の中心軸線を中心とした角度領域のうち後端側内部検知部の形成領域に対応した角度領域である。
【0019】
次に、本発明のガスセンサにおいては、後端側内部検知部は、その少なくとも一部が素子本体部の周方向において少なくとも発熱部の発熱中心に対向する、という構成を採ることができる。
【0020】
ここで、発熱部のうち発熱中心は、最も熱量が大きくなる領域である。このため、後端側内部検知部の少なくとも一部が発熱部の発熱中心に対向することで、後端側内部検知部は発熱部により加熱され易くなる。
【0021】
よって、本発明によれば、後端側内部検知部が活性化状態となり易くなり、特定ガスの検出精度を向上できる。
なお、後端側内部検知部は、素子本体部の軸線方向において少なくとも接触点から発熱部の発熱中心にかけて形成してもよい。
【0022】
つまり、このような後端側内部検知部の形成領域は、ヒータと検出素子との接触点の近傍を含むことになり、ヒータからの熱伝導により加熱され易い部分となる。このため、検出素子の素子本体部のうち後端側内部検知部の形成領域は、ヒータによる加熱により活性化状態となり、特定ガスを検出可能な状態となる。
【0023】
次に、本発明のガスセンサにおいては、後端側内部検知部は、素子本体部の周方向に沿った周方向寸法が発熱部の周方向寸法の80%相当値以上である、という構成を採ることができる。
【0024】
このように後端側内部検知部を形成することで、素子本体部における周方向領域のうちヒータの発熱部によって活性化状態となる領域に後端側内部検知部を配置できる。
これにより、内部電極と外部電極との間の電気抵抗値が小さくなり、特定ガスの検出精度が向上する。
【0025】
なお、「周方向寸法」とは、検出素子の中心軸線に垂直な平面において、検出素子の中心軸線を中心とした角度領域で表される。
次に、本発明のガスセンサにおいては、後端側内部検知部は、素子本体部の軸線方向において少なくとも接触点から発熱部の後端位置にかけて形成される、という構成を採ることができる。
【0026】
このように後端側内部検知部を形成することで、素子本体部の軸線方向領域のうちヒータの発熱部によって活性化状態となる領域に後端側内部検知部を配置できる。
これにより、内部電極と外部電極との間の電気抵抗値が小さくなり、特定ガスの検出精度が向上する。
【0027】
次に、本発明のガスセンサにおいては、後端側内部検知部は、素子本体部の周方向に沿った周方向寸法が発熱部の周方向寸法以上である、という構成を採ることができる。
このように後端側内部検知部を形成することで、素子本体部における周方向領域のうちヒータの発熱部によって活性化状態となる領域に後端側内部検知部を配置できるとともに、内部電極と素子本体部との接触面積を大きく確保できる。
【0028】
これにより、内部電極と外部電極との間の電気抵抗値が小さくなり、特定ガスの検出精度が向上する。
次に、本発明のガスセンサにおいては、内部検知部の厚さ寸法は、内部リード部の厚さ寸法よりも大きい、という構成を採ることができる。
【0029】
このように、内部検知部の厚さ寸法を内部リード部の厚さ寸法よりも大きくすることで、内部電極の耐久性を向上できる。つまり、素子本体部のうち先端側は後端側に比べて高温に晒されるが、内部電極のうち先端側に配置される内部検知部の厚さ寸法を相対的に大きく形成することで、高温環境下で長期間使用する場合においても、内部電極の破損を抑制できる。
【0030】
よって、本発明によれば、内部電極の耐久性が向上することでガスセンサとしての耐久性も向上でき、特定ガスを検出可能な状態を長期間持続することが可能となる。
次に、本発明のガスセンサにおいては、後端側内部検知部は、素子本体部の軸線方向における接触点から発熱部の先端位置までの領域において、素子本体部における周方向の全体に形成される、という構成を採ることができる。
【0031】
このように後端側内部検知部を形成することで、素子本体部における周方向領域のうちヒータの発熱部によって活性化状態となる領域に後端側内部検知部を配置できるとともに、内部検知部と素子本体部との接触面積をより一層大きく確保できる。
【0032】
これにより、内部電極と外部電極との間の電気抵抗値が小さくなり、特定ガスの検出精度が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
尚、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0035】
[1.第1実施形態]
[1−1.全体構成]
図1は、本発明が適用された実施形態としてのガスセンサ(酸素センサ1)の全体構成を表す断面図である。
【0036】
この酸素センサ1は、例えば、内燃機関の排気管にもうけられて、排気ガス中の特定ガス(本実施形態では、酸素)を検出する用途に用いられる。
尚、本実施形態においては、
図1に示す酸素センサ1の下端側が本発明における「センサの先端側」に相当し、同様に、
図1に示す酸素センサ1の上端側が「センサの後端側」に相当する。
【0037】
酸素センサ1は、
図1に示すように、部分安定化ジルコニアを主成分とする固体電解質体を主体として構成された軸線方向に延びて先端が閉じた有底筒状の検出素子2,検出素子2の内部に配置されて検出素子2を加熱する長尺形状のセラミックヒータ3,酸素センサ1の内部構造物を収容するとともに酸素センサ1を排気管等の取付部に固定するケーシング4などを備えて構成されている。
【0038】
図2は、検出素子2の内部構成を表した断面図である。
図3は、検出素子2の外観を表した正面図である。
検出素子2は、軸線方向(
図2では上下方向)に延びると共に先端側(
図2では下方)が閉塞された有底筒状の素子本体部24と、素子本体部24の外面に形成される外部電極26と、素子本体部24の内面に形成される内部電極27と、を備えている。また、検出素子2の先端部分は、特定ガス(本実施形態では、酸素)を検出するためのガス検出部25となる。
【0039】
図4は、セラミックヒータ3の外観を表した斜視図である。
図5は、セラミックヒータ3の内部構成を表した分解斜視図である。
セラミックヒータ3は、軸線方向に延びる長尺形状(棒状)に形成されており、その先端側内部に発熱部142を備えるセラミックヒータである。
【0040】
なお、本実施形態のセラミックヒータ3においては、長手方向の両端部のうち、発熱部分を備える側(発熱部142が形成される側)を「先端側」とし、これと反対側の端部を「後端側」として説明する。
【0041】
セラミックヒータ3は、発熱抵抗体141を有する丸棒状(略円柱形状)のセラミック基体102と、セラミック基体102の外表面に設けられるとともに発熱抵抗体141と電気的に接続される一対の電極パッド121と、を備えている。
【0042】
なお、検出素子2およびセラミックヒータ3の詳細構成については、後述する。
図1に戻り、ケーシング4は、検出素子2を保持するとともにそのガス検出部25を排気管等の内部に突出させる主体金具5と、主体金具5の上部に延設されて検出素子2との間で基準ガス空間を形成する外筒6と、主体金具5の内部に収容されるホルダ51,充填部材52,スリーブ53と、外筒6の内部に保持されるセパレータ7と、セパレータ7の内部に収容される外部電極端子部材8,内部電極端子部材9と、を備えて構成されている。
【0043】
また、主体金具5は、円筒状の本体を有し、検出素子2を下方から支持するホルダ51,ホルダ51の上部に充填される滑石粉末からなる充填部材52,充填部材52を上方から押圧するスリーブ53などを内部に収容する。
【0044】
即ち、主体金具5の下端側の内周には、内向き突出した段部54が設けられており、この段部54にパッキン55を介してホルダ51が係止されることにより、検出素子2が下方から支持されている。そして、ホルダ51の上側における主体金具5の内周面と検出素子2の外周面との間に充填部材52が配設され、さらにこの充填部材52の上側に筒状のスリーブ53及びパッキン56が順次同軸状に内挿された状態で主体金具5の上端部が内方(下方)に加締められることで、充填部材52が加圧充填される。それにより、検出素子2が主体金具5に対してしっかりと固定されている。また、主体金具5の下端側外周には、検出素子2の突出部分を覆うとともに、複数の孔部を有する金属製の二重のプロテクタ57,58が溶接によって取り付けられている。
【0045】
そして、主体金具5の上部開口部を覆うように外筒6の下端開口端部が主体金具5に外挿された後、この下端開口端部に外方から溶接が施され、外筒6が主体金具5に装着されている。
【0046】
また、外筒6における上端開口部61の近傍には、セラミックで筒状に形成された絶縁性のセパレータ7が内挿されている。
セパレータ7は、その軸方向中央付近の外周面に外側に突出したフランジ部71を有している。セパレータ7は、外筒6が外方から加締められることにより、このフランジ部71の下端面が外筒6の上部に係止される態様で外筒6の内部に保持されている。
【0047】
また、セパレータ7は、自身の後端面72から先端面73に向けて貫通する複数の挿通孔74と、セラミックヒータ3の後端部31を収容可能に先端面73に形成された凹部75と、を備えている。そして、セパレータ7は、外部電極端子部材8と内部電極端子部材9とをそれぞれ異なる挿通孔74の内部に収容して、外部電極端子部材8と内部電極端子部材9との絶縁性、外部電極端子部材8と外筒6との絶縁性、および内部電極端子部材9と外筒6との絶縁性を保持している。
【0048】
そして、外部電極端子部材8は、検出素子2の外周面に配置された外部電極26とリード線21とを電気的に接続するように配置されており、内部電極端子部材9は、検出素子2の内周面に配置された内部電極27とリード線22とを電気的に接続するように配置されている。
【0049】
外部電極端子部材8は、1枚の金属板(例えば、ステンレス鋼板)によって構成され、セパレータ7における挿通孔74の内部に収容される外部セパレータ収容部81と、外部電極26に当接して外部電極端子部材8と検出素子2とを電気的に接続する外部素子当接部82と、外部セパレータ収容部81と外部素子当接部82とを連結する外部連結部83と、を備える。
【0050】
内部電極端子部材9は、1枚の金属板(例えば、ステンレス鋼板)によって構成され、セパレータ7における挿通孔74の内部に収容される内部セパレータ収容部91と、検出素子2の内部に収容される検出素子収容部92と、内部セパレータ収容部91と検出素子収容部92とを連結する内部連結部93と、を備える。
【0051】
検出素子収容部92は、内部電極27に当接して内部電極端子部材9と検出素子2とを電気的に接続する内部素子当接部98と、セラミックヒータ3を把持するヒータ把持部99と、を備えて構成される。
【0052】
次に、外筒6の上端開口部61には、検出素子2の電極に夫々接続されるリード線21,22を夫々外部に引き出すとともに、酸素センサ1の内部への水分や油分の侵入を防止するシールユニット10が設けられている。
【0053】
このシールユニット10は、フッ素ゴムからなる円柱状のグロメット11と、このグロメット11の中央を軸方向に貫通する貫通孔14に嵌挿可能な筒状挿入部材16と、この筒状挿入部材16の上端部(大気側端部)を覆うとともに、これらグロメット11の貫通孔14の内周面と筒状挿入部材16の外周面との間に挟持されて固定されるシート状の通気フィルタ17と、を備えて構成されている。
【0054】
そして、グロメット11には、上記の貫通孔14と、リード線21,22を挿通するための挿通孔15と、が形成されている。
また、通気フィルタ17は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の未焼成成形体を、PTFEの融点よりも高い加熱温度で一軸方向に延伸することにより得られる多孔質繊維構造体(例えば、商品名:ゴアテックス(ジャパンゴアテックス(株)))により、水滴等の水を主体とする液体の透過は阻止し、かつ気体(空気、水蒸気等)の透過は許容する通気フィルタとして構成されている。
【0055】
そして、これらグロメット11,通気フィルタ17および筒状挿入部材16の組付けの際には、通気フィルタ17が筒状挿入部材16の大気側端部とその外周面とを覆うように筒状挿入部材16に被せられ、この状態で筒状挿入部材16とともに貫通孔14に挿入される。このようにして、通気フィルタ17は、筒状挿入部材16の外周面と貫通孔14の内周面との間に挟まれ、通気経路を塞いだ状態で固定される。
【0056】
そして、このように形成されたシールユニット10が、外筒6の上端開口部61の内側に配置され、グロメット11が、外筒6を介して径方向に加締められる。こうして、外筒6およびグロメット11が密着し、そのシール性がより確実なものとされる。そして、この通気フィルタ17により通気性及び防水性を保持しつつ、大気側から筒状挿入部材16の内部に形成された通気経路を介して基準ガス空間に空気が導入される。
【0057】
[1−2.検出素子]
図2および
図3に示すように、検出素子2は、素子本体部24と、外部電極26と、内部電極27と、を備えている。また、検出素子2の先端部分は、特定ガス(本実施形態では、酸素)を検出するためのガス検出部25となる。
【0058】
素子本体部24は、酸素イオン伝導性を有する固体電解質体(例えば、部分安定化ジルコニアなど)を主成分として構成される。素子本体部24は、一端が閉塞し他端が開口した有底筒状に形成されると共に、外向きに突出した鍔部24aを備える。
【0059】
外部電極26は、測定対象ガスに接触する測定電極であり、例えば白金からなる多孔質状の電極である。
図3に示すように、外部電極26は、鍔部24aから閉塞した先端部にかけての素子本体部24の外表面に形成される外部検知部26aと、他部材(外部電極端子部材8(
図1参照))と接触するために素子本体部24の外表面の開口端領域に設けられた外部接続部26bと、外部検知部26aと外部接続部26bとを電気的に接続するための外部リード部26cと、を備える。
【0060】
図2に示すように、内部電極27は、特定ガスを検出する際の基準ガス濃度を定めるための基準電極であり、例えば白金からなる多孔質状の電極である。内部電極27は、素子本体部24の内面のうち先端部分に形成される内部検知部27aと、他部材(内部電極端子部材9(
図1参照))と接触するために素子本体部24の内面の開口端領域に設けられた内部接続部27bと、内部検知部27aと内部接続部27bとを電気的に接続するための内部リード部27cと、を備える。
【0061】
内部リード部27cは、素子本体部24の後端側(内部接続部27bの形成領域)から素子本体部24の先端側(内部検知部27a)にかけて形成される。
内部接続部27bおよび内部リード部27cは、それぞれの幅方向寸法(周方向寸法)が同一寸法となる形態で形成されている。
【0062】
内部検知部27aは、素子本体部24の軸線方向において、セラミックヒータ3と検出素子2との接触点63(接触位置Cp)よりも先端側領域に設けられる先端側内部検知部27dと、接触点63(接触位置Cp)よりも後端側領域に設けられる後端側内部検知部27eと、を備える。
【0063】
素子本体部24は、その内面のうち後端側領域(接触点63(接触位置Cp)よりも後端側の領域)の一部において、内部リード部27cおよび後端側内部検知部27eが形成されない検知部未形成領域24bを有する。
【0064】
内部検知部27aの厚さ寸法は、内部リード部27cの厚さ寸法に比べて、大きく形成されている。具体的には、内部検知部27aの厚さ寸法は、0.9[μm]であり、内部リード部27cの厚さ寸法は、0.7[μm]である。
【0065】
なお、内部検知部27aのうち先端側内部検知部27dおよび後端側内部検知部27eの説明は、後述する。
[1−3.セラミックヒータ]
図4に示すように、セラミックヒータ3は、軸線方向に延びる長尺形状(棒状)に形成されており、その先端側内部に発熱部142を備えるセラミックヒータである。
【0066】
セラミックヒータ3は、発熱抵抗体141を有する丸棒状(略円柱形状)のセラミック基体102と、セラミック基体102の外表面に設けられるとともに発熱抵抗体141と電気的に接続される一対の電極パッド121と、を備えている。
【0067】
セラミックヒータ3は、セラミック基体102の後端側に設けられた一対の電極パッド121を介して外部装置(電源装置など)から発熱抵抗体141に対して通電されることで、発熱抵抗体141が発熱するよう構成されている。なお、
図4では、一対の電極パッド121のうち一方は図示可能な表側の電極パッド121のみ図示しており、裏側の電極パッド121は図示されておらず、その形成位置は符号の矢印で示される位置である。
【0068】
発熱抵抗体141のうち発熱部142(
図4参照)は、セラミック基体102の先端側に配置されている。つまり、セラミックヒータ3は、セラミック基体102のうち先端側が発熱することで、検出素子2を加熱するよう構成されている。
【0069】
図5に示すように、セラミックヒータ3は、丸棒状のアルミナセラミック製の碍管101の外周に絶縁性の高いアルミナセラミック製のグリーンシート140,146が巻き付けられ、これが焼成されることによって製造される。
【0070】
グリーンシート140の上には、ヒートパターンとしてのタングステン系の材料を主体とする発熱抵抗体141が形成されている。発熱抵抗体141は、先端側に形成される発熱部142と、発熱部142の両端のそれぞれに接続される一対のリード部143と、を備えて構成される。
【0071】
グリーンシート140の後端側には、2個のスルーホール144が設けられている。一対のリード部143は、2個のスルーホール144を介して、セラミックヒータ3の外表面上に形成される2つの電極パッド121と電気的に接続される。
【0072】
グリーンシート146は、グリーンシート140のうち発熱抵抗体141が形成される側の面に圧着されるシートである。
グリーンシート146のうちグリーンシート140に接する圧着面とは反対側の表面にアルミナペーストが塗布され、この塗布面を内側にしてグリーンシート140,146が碍管101に巻き付けられて外周から内向きに押圧されることにより、セラミックヒータ成形体が形成される。その後、セラミックヒータ成形体が焼成されることにより、セラミックヒータ3として形成される。
【0073】
[1−4.先端側内部検知部および後端側内部検知部]
図2に示すように、内部検知部27aは、素子本体部24の軸線方向において、セラミックヒータ3と検出素子2との接触点63よりも先端側領域に設けられる先端側内部検知部27dと、接触点63よりも後端側領域に設けられる後端側内部検知部27eと、を備える。
【0074】
ここで、
図6に、セラミックヒータ3が挿入された検出素子2における先端部分の内部構造を模式的に表した説明図を示す。
図6では、検出素子2およびセラミックヒータ3のそれぞれの内部構造を表しており、発熱部142は点線で表している。
【0075】
図6では、検出素子2の軸線方向位置(図の上下方向位置)のうち、内面の先端を内面先端位置Ed、接触点63に相当する位置を接触位置Cp、発熱部142の先端に相当する位置を発熱部先端位置Hd、発熱部142のうち軸線方向領域で最も熱量が大きくなる領域を発熱部発熱中心Hc、発熱部142の後端に相当する位置を発熱部後端位置Hu、内部電極27の内部検知部27aの後端に相当する位置を検知部後端位置Eu、としてそれぞれ図示している。
【0076】
本実施形態の検出素子2は、内面先端位置Edから発熱部先端位置Hdまでの寸法が2.5[mm]であり、発熱部先端位置Hdから発熱部後端位置Huまでの寸法が3.5[mm]である。
【0077】
なお、
図2では、これらのうち、内面先端位置Ed、接触位置Cp、検知部後端位置Eu、を図示している。
また、
図7に、検出素子2の周方向における内部電極27の形成領域を模式的に表した説明図を示す。なお、
図7では、
図6に示す検出素子2およびセラミックヒータ3におけるA−A断面、B−B断面、C−C断面に相当する説明図をそれぞれ示す。
【0078】
内部電極27の内部検知部27aのうち、先端側内部検知部27dは、
図2および
図6に示すように、素子本体部24の軸線方向領域については、素子本体部24の内面のうち接触位置Cp(接触点63に相当する位置)から内面先端位置Edまでの領域(第1領域T1)に形成されている。
【0079】
先端側内部検知部27dは、
図7の「A−A断面」欄に示すように、検出素子2(素子本体部24)の中心軸線S1を中心とする周方向領域については、素子本体部24の内面において中心軸線S1を中心とする周方向領域の全体(全周)に形成されている。
【0080】
内部電極27の内部検知部27aのうち、後端側内部検知部27eは、
図2および
図6に示すように、素子本体部24の軸線方向領域については、接触位置Cpから発熱部後端位置Huまでの領域(第2領域T2、第3領域T3、第4領域T4)を少なくとも含むように形成されている。より詳細には、後端側内部検知部27eは、素子本体部24の軸線方向領域においては、接触位置Cpから検知部後端位置Euまでの領域(第2領域T2から第5領域T5までの領域)に形成されている。つまり、後端側内部検知部27eは、素子本体部24の軸線方向において、接触位置Cpから発熱部発熱中心Hcまでの領域(第2領域T2、第3領域T3)を少なくとも含むように形成されている。
【0081】
また、後端側内部検知部27eのうち、内部リード27部cに連結される領域は、連結側検知部27fである。連結側検知部27fは、発熱部後端位置Huから検知部後端位置Euまでの領域(第5領域T5)に形成されている。
【0082】
内部電極27の内部リード部27c(
図6では図示省略)は、
図6における第6領域T6に形成されている。
図7の「B−B断面」欄および「C−C断面」欄の内容から判るように、後端側内部検知部27eは、検出素子2の中心軸線S1を中心とする周方向領域については、周方向寸法(検知部周方向寸法W1または検知部幅方向寸法W1ともいう)が内部リード部27cの周方向寸法(リード部周方向寸法W3またはリード部幅方向寸法W3ともいう)よりも大きく形成されている。
【0083】
また、後端側内部検知部27eの検知部周方向寸法W1は、セラミックヒータ3の発熱部142の周方向寸法(発熱部周方向寸法W2または発熱部幅方向寸法W2ともいう)よりも大きい。また、後端側内部検知部27eは、その少なくとも一部が素子本体部24の周方向においてセラミックヒータ3の発熱部142の発熱部発熱中心Hcに対向するように形成されている。
【0084】
さらに、連結側検知部27fは、その少なくとも一部が素子本体部24の周方向においてセラミックヒータ3の発熱部142の発熱部発熱中心Hcに対向するように形成されている。また、連結側検知部27fは、素子本体部24の内面における周方向の一部にのみ形成されており、全周にわたり形成されるものではない。
【0085】
このように構成される酸素センサ1は、セラミックヒータ3からの加熱および測定対象ガスからの熱伝導により、検出素子2の先端部分(詳細には、発熱部後端位置Huよりも先端側の領域)が活性化状態となり、測定対象ガス中の特定ガス(本実施形態では、酸素)を検出することが可能となる。
【0086】
[1−5.効果]
以上説明したように、本実施形態の酸素センサ1においては、内部電極27の先端側内部検知部27dは、検出素子2のうち接触点63(接触位置Cp)よりも先端側の領域に設けられており、排気ガス(測定対象ガス)による加熱により活性化状態となり易い部分に設けられる。
【0087】
また、外部電極26の外部検知部26aは、検出素子2のうち鍔部24aよりも先端側に形成されており、このうち接触点63(接触位置Cp)よりも先端側の領域に設けられる部分は、排気ガス(測定対象ガス)による加熱により活性化状態となり易い部分である。
【0088】
つまり、外部検知部26aの先端部分および先端側内部検知部27dは、測定対象ガス(排気ガス)による加熱により活性化状態となり、特定ガス(酸素)を検出可能な状態となる。
【0089】
次に、後端側内部検知部27eは、その少なくとも一部が素子本体部24の周方向においてセラミックヒータ3の発熱部142の発熱部発熱中心Hcに対向するように形成されている。
【0090】
また、後端側内部検知部27eは、素子本体部24の軸線方向において、接触位置Cp(接触点63)から発熱部発熱中心Hcまでの領域(第2領域T2、第3領域T3)を少なくとも含むように形成されている。これにより、後端側内部検知部27eは、少なくとも接触位置Cp(接触点63)から発熱部142の発熱部発熱中心Hcにかけて形成される部分を含んでいる。
【0091】
つまり、後端側内部検知部27eの形成領域は、セラミックヒータ3と検出素子2との接触位置Cp(接触点63)の近傍を含むことになり、セラミックヒータ3からの熱伝導により加熱され易い部分となる。このため、検出素子2の素子本体部24のうち後端側内部検知部27eの形成領域は、セラミックヒータ3による加熱により活性化状態となり、特定ガス(酸素)を検出可能な状態となる。
【0092】
また、後端側内部検知部27eは、素子本体部24の中心軸線S1を中心とする周方向に沿った検知部周方向寸法W1が内部リード部27cのリード部周方向寸法W3よりも大きく形成されるため、素子本体部24との接触面積を大きく確保でき、移動可能なイオンの量が多くなる。
【0093】
これらのことから、検出素子2の素子本体部24のうち、内部電極27の内部検知部27aおよび外部電極26の外部検知部26aの形成領域は、測定対象ガスおよびヒータによって加熱されて活性化状態となる。これにより、素子本体部24が適切な活性化状態となり、内部電極27と外部電極26との間の電気抵抗値が小さくなって、特定ガス(酸素)を検出可能な状態となる。
【0094】
よって、本実施形態の酸素センサ1によれば、特定ガス(酸素)を検出するにあたり、検出素子2の素子本体部24を適切に活性化状態にすることができる。
また、後端側内部検知部27eの検知部周方向寸法W1は、セラミックヒータ3の発熱部142の周方向寸法(発熱部周方向寸法W2または発熱部幅方向寸法W2ともいう)よりも大きい。さらに、後端側内部検知部27eは、その少なくとも一部が素子本体部24の周方向においてセラミックヒータ3の発熱部142の発熱部発熱中心Hcに対向するように形成されている。
【0095】
このように後端側内部検知部27eを形成することで、素子本体部24における周方向領域のうち発熱部142によって活性化状態となる領域に後端側内部検知部27eを配置できるとともに、内部電極27と素子本体部24との接触面積を大きく確保できる。
【0096】
これにより、内部電極27と外部電極26との間の電気抵抗値が小さくなり、特定ガス(酸素)の検出精度が向上する。
本実施形態においては、内部検知部27aの厚さ寸法は、内部リード部27cの厚さ寸法に比べて、大きく形成されている。
【0097】
このように、内部検知部27aの厚さ寸法を内部リード部27cの厚さ寸法よりも大きくすることで、マイグレーションなどの影響により内部検知部27aの一部が移動する可能性がある環境下であっても、内部検知部27aが完全に消失することが生じがたくなる。つまり、マイグレーションなどの影響が生じる環境下で長期間使用する場合においても、内部検知部27aと素子本体部24との接触面積を大きく確保できる。
【0098】
よって、本実施形態の酸素センサ1によれば、素子本体部24の適切な活性化状態を継続することができ、特定ガス(酸素)を検出可能な状態を長期間持続することが可能となる。
【0099】
[1−6.特許請求の範囲との対応関係]
ここで、特許請求の範囲と本実施形態とにおける文言の対応関係について説明する。
内燃機関の排気ガスが測定対象ガスの一例に相当し、酸素が特定ガスの一例に相当し、セラミックヒータ3がヒータの一例に相当する。
【0100】
[2.検出素子の活性化状態の比較測定]
酸素センサ1の検出素子2に関して、内部電極27の形状(形成領域)を変更した場合における検出素子2の活性化状態の違いを比較測定した測定結果について説明する。
【0101】
図8に、内部電極27の形状を模式的に表した展開図を示す。
図8では、内部電極27の内部検知部27aのうち、先端側内部検知部27dの周方向寸法(幅方向寸法)をWaとして表し、後端側内部検知部27eの周方向寸法(幅方向寸法)をWbとして表し、内部リード部27cの周方向寸法(幅方向寸法)をWcとして表す。
【0102】
なお、本測定に用いた検出素子2の内部電極27は、内部接続部27bおよび内部リード部27cのそれぞれの周方向寸法(幅方向寸法)が同一寸法となる形状である。
図8では、先端側内部検知部27dが検出素子2の内面の周方向の全面に形成される形態の内部電極27を図示しており、先端側内部検知部27dの周方向寸法Wa(幅方向寸法Wa)は、検出素子2の内面の全周寸法と同じである。また、
図8における後端側内部検知部27eの周方向寸法Wb(幅方向寸法Wb)は、
図7における検知部周方向寸法W1に相当する。
【0103】
また、
図8では、内部電極27のうち、内部検知部27aの先端側内部検知部27dの軸線方向寸法をLaとして表し、内部検知部27aの後端側内部検知部27eの軸線方向寸法をLbとして表し、内部リード部27cおよび内部接続部27bを合わせた軸線方向寸法をLcとして表している。
【0104】
[2−1.第1測定]
第1測定として、セラミックヒータ3および測定対象ガスによる加熱が行われる条件下において、内部検知部27aにおける後端側内部検知部27eの検知部周方向寸法W1(検知部幅方向寸法W1(=Wb))を変化させた場合において、検知部周方向寸法W1ごとの検出素子2の活性化状態を比較した比較測定について説明する。
【0105】
なお、内部電極27が活性化する所定温度で安定させた状態で測定を行っている。
第1測定では、後端側内部検知部27eの検知部周方向寸法W1がセラミックヒータ3の発熱部142の発熱部周方向寸法W2(発熱部幅方向寸法W2)よりも大きい検出素子2(試料1)と、後端側内部検知部27eの検知部周方向寸法W1がセラミックヒータ3の発熱部142の発熱部周方向寸法W2よりも小さい検出素子2(試料2〜試料4)と、の4種類の検出素子2を用いた。
【0106】
なお、試料1が最も検知部周方向寸法W1が大きく、試料1から試料4にかけて次第に検知部周方向寸法W1が小さくなる。
また、試料1から試料4は、いずれも、後端側内部検知部27eの軸線方向位置および軸線方向寸法Lbに関して、後端側内部検知部27eが
図6に示す接触位置Cpから発熱部後端位置Huまでの領域(第2領域T2、第3領域T3、第4領域T4)を少なくとも含むように形成されている。
【0107】
さらに、第1測定では、試料1から試料4までの各試料についてそれぞれ複数個を用いて比較測定を実施した。
検出素子2の活性化状態は、内部電極27と外部電極26との間の電気抵抗値(電極間抵抗値Ri)に基づき判断することができ、電極間抵抗値Riが小さいほど活性化状態が高いと判断でき、電極間抵抗値Riが大きいほど活性化状態が低いと判断できる。
【0108】
第1測定の測定結果を
図9に示す。
図9に示すように、試料1が最も電極間抵抗値Riが小さくなり(最も活性化状態が高くなり)、試料1から試料4にかけて次第に電極間抵抗値Riが大きくなる(活性化状態が低くなる)ことが判る。
【0109】
このうち、試料1および試料2の活性化状態であれば、酸素を検知することが可能であるが、試料3や試料4の活性化状態では、酸素を検知することが難しい状態である。
なお、試料2は、検知部周方向寸法W1が発熱部周方向寸法W2の80%相当値である。また、試料1から試料4のいずれも、内部リード部27cの周方向寸法Wc(幅方向寸法Wc)は、発熱部周方向寸法W2の20%相当値である。
【0110】
ここでの「周方向寸法」とは、検出素子2の中心軸線S1に垂直な平面において、検出素子2の中心軸線S1を中心とした角度領域で表される。
よって、第1測定によれば、後端側内部検知部27eの検知部周方向寸法W1(検知部幅方向寸法W1)がセラミックヒータ3の発熱部142の発熱部周方向寸法W2(発熱部幅方向寸法W2)の80%相当値よりも大きい検出素子であれば、セラミックヒータ3および測定対象ガスによる加熱が行われる条件下において、適切に酸素を検出できることが判る。
【0111】
[2−2.第2測定]
次に、第2測定として、セラミックヒータ3および測定対象ガスによる加熱が行われる条件下において、内部検知部27aの後端側内部検知部27eとセラミックヒータ3の発熱部142との対向面積の大きさを変化させた場合において、対向面積の大きさごとの検出素子2の活性化状態を比較した比較測定について説明する。
【0112】
なお、第2測定は、内部電極27の内部リード部27cがセラミックヒータ3の発熱部142に対向しないように配置された酸素センサ1を用いて実施した。
図10に、内部電極27の内部リード部27cがセラミックヒータ3の発熱部142に対向しないように配置された酸素センサ1のうち、
図6に示す検出素子2およびセラミックヒータ3におけるC−C断面に相当する説明図を示す。
【0113】
本測定に用いた検出素子2は、内部リード部27cのリード部周方向寸法W3(リード部幅方向寸法W3(=Wc))が角度領域で150度となるように形成されている。このリード部周方向寸法W3は、セラミックヒータ3の発熱部142の発熱部周方向寸法W2(発熱部幅方向寸法W2)に対する80%相当値以上の大きさである。
【0114】
また、本測定に用いた検出素子2においては、後端側内部検知部27eは、素子本体部24の内面において中心軸線S1を中心とする周方向領域の全体(全周)に形成されており、検知部周方向寸法W1(検知部幅方向寸法W1(=Wb))が検出素子2の内面の全周寸法と同じである。つまり、本測定に用いた検出素子2は、内部検知部27a(後端側内部検知部27eおよび先端側内部検知部27d)が素子本体部24の内面において中心軸線S1を中心とする周方向領域の全体(全周)に形成される構成である。
【0115】
第2測定では、後端側内部検知部27eの軸線方向寸法が異なる3種類の検出素子2を用いて、後端側内部検知部27eとセラミックヒータ3の発熱部142との重複面積(対向面積)の大きさが異なる3種類の酸素センサ1について比較測定を行った。
【0116】
具体的には、重複面積(対向面積)の大きさが発熱部142の80%相当値となるよう構成された酸素センサ1(試料11)と、重複面積(対向面積)の大きさが発熱部142の50%相当値となるよう構成された酸素センサ1(試料12)と、重複面積(対向面積)が無い状態となるよう構成された酸素センサ1(試料13)と、を用いた。
【0117】
なお、第2測定では、試料11から試料13までの各試料についてそれぞれ複数個を用いて比較測定を実施した。検出素子2の活性化状態は、内部電極27と外部電極26との間の電気抵抗値(電極間抵抗値Ri)に基づき判断することができ、電極間抵抗値Riが小さいほど活性化状態が高いと判断でき、電極間抵抗値Riが大きいほど活性化状態が低いと判断できる。
【0118】
第2測定の測定結果を、
図11の左側領域に示す。
図11の左側領域に示すように、試料11が最も電極間抵抗値Riが小さくなり(最も活性化状態が高くなり)、試料11から試料13にかけて次第に電極間抵抗値Riが大きくなる(活性化状態が低くなる)ことが判る。
【0119】
このうち、試料11および試料12の活性化状態であれば、酸素を検知することが可能であるが、試料13の活性化状態では、酸素を検知することが難しい状態である。
よって、第2測定によれば、後端側内部検知部27eとセラミックヒータ3の発熱部142との重複面積(対向面積)の大きさが発熱部142の50%相当値となるよう構成された酸素センサ1であれば、セラミックヒータ3および測定対象ガスによる加熱が行われる条件下において、適切に酸素を検出できることが判る。
【0120】
[2−3.第3測定]
次に、第3測定として、第2測定に用いた3種類の各試料について、検出素子2とセラミックヒータ3との相対位置を変更して、内部電極27の内部リード部27cがセラミックヒータ3の発熱部142に対向するように配置された酸素センサ1について、対向面積の大きさごとの検出素子2の活性化状態を比較した比較測定について説明する。
【0121】
つまり、第3測定では、内部リード部27cが発熱部142に対向するように配置された酸素センサ1について、内部検知部27aの後端側内部検知部27eとセラミックヒータ3の発熱部142との対向面積の大きさを変化させた場合において、対向面積の大きさごとの検出素子2の活性化状態を比較した。
【0122】
なお、第3測定に用いた3種類の試料21,22,23は、それぞれ第2測定での試料11〜試料13における検出素子2とセラミックヒータ3との相対位置を変更したものである。
【0123】
第3測定の測定結果を、
図11の右側領域に示す。
図11の右側領域に示すように、試料21,22,23のいずれも電極間抵抗値Riはほぼ等しい値であり、第2測定において最も活性化状態が高い試料11と同等の抵抗値あるいは同等以下の抵抗値を示している。つまり、第3測定の試料21,22,23は、いずれも第2測定での試料11と同等あるいはそれ以上に良好な活性化状態である。
【0124】
これは、内部電極27のうち、内部検知部27a(後端側内部検知部27e)のみならず、内部リード部27cについても、活性化状態となった素子本体部24との間でイオンの授受が可能な領域として機能したためと考えられる。
【0125】
つまり、本測定に用いた検出素子2は、内部リード部27cのリード部周方向寸法W3(リード部幅方向寸法W3(=Wc))が角度領域で150度となるように形成されており、このリード部周方向寸法W3は、セラミックヒータ3の発熱部142の発熱部周方向寸法W2(発熱部幅方向寸法W2)に対する80%相当値以上の大きさである。
【0126】
このため、試料22,23においては、後端側内部検知部27eとセラミックヒータ3の発熱部142との重複面積(対向面積)の大きさが発熱部142の50%相当値よりも小さいものの、内部検知部27aに代わり内部リード部27cがイオン授受領域として機能することで、試料21と同等の良好な活性化状態になったと考えられる。
【0127】
また、第3測定の試料21は、第2測定の試料11と比べて、複数の測定結果のバラツキが小さいことから、内部電極27の内部リード部27cをセラミックヒータ3の発熱部142に対向するように配置することで、検出素子2の活性化状態がより良好な状態となることが判る。
【0128】
よって、第3測定によれば、内部電極27の内部リード部27cをセラミックヒータ3の発熱部142に対向するように配置することで、セラミックヒータ3および測定対象ガスによる加熱が行われる条件下において、適切に酸素を検出できることが判る。
【0129】
[2−4.第4測定]
次に、第4測定として、セラミックヒータ3による加熱は行わず、測定対象ガスによる加熱のみが行われる条件下において、検出素子2とセラミックヒータ3との接触位置Cp(接触点63)に対する内部検知部27a(後端側内部検知部27e)の検知部後端位置Euの相対位置を変化させた場合において、その相対位置ごとの検出素子2の活性化状態を比較した比較測定について説明する。
【0130】
第4測定では、接触位置Cp(接触点63)よりも後端側に検知部後端位置Euが設けられる構成の2種類の酸素センサ1(試料31,32)と、接触位置Cp(接触点63)に検知部後端位置Euが設けられる構成の酸素センサ1(試料33)と、接触位置Cp(接触点63)よりも先端側に検知部後端位置Euが設けられる構成の2種類の酸素センサ1(試料34,35)と、の5種類の酸素センサ1を用いた。
【0131】
なお、本測定に用いた検出素子2は、後端側内部検知部27eは、素子本体部24の内面において中心軸線S1を中心とする周方向領域の全体(全周)に形成されており、検知部周方向寸法W1(検知部幅方向寸法W1(=Wb))が検出素子2の内面の全周寸法と同じである。つまり、本測定に用いた検出素子2は、内部検知部27a(後端側内部検知部27eおよび先端側内部検知部27d)は、素子本体部24の内面において中心軸線S1を中心とする周方向領域の全体(全周)に形成されている。
【0132】
また、試料31が最も後端側に検知部後端位置Euが設けられており、試料31から試料35になるに従い、次第に検知部後端位置Euが先端側に近づくように構成されている。換言すれば、試料31が最も内部検知部27aの面積が大きく形成されており、試料31から試料35にかけて次第に内部検知部27aの面積が小さくなる。
【0133】
第4測定の測定結果を
図12に示す。
図12に示すように、試料31,32,33が最も電極間抵抗値Riが小さくなり(最も活性化状態が高くなり)、試料34から試料35にかけて次第に電極間抵抗値Riが大きくなる(活性化状態が低くなる)ことが判る。
【0134】
このような活性化状態の相違が生じた原因の1つとしては、内部検知部27aの面積の大きさが影響していると考えられる。このことは、最も内部検知部27aの面積の小さい試料35の活性化状態が最も低く、試料34,試料33になるに従い、活性化状態が良好になることからも裏付けられる。
【0135】
しかし、試料31,32,33の測定結果を比較すると、内部検知部27aの面積の大きさが異なるにもかかわらず、活性化状態はほぼ同等である。これは、検出素子2の先端領域で測定対象ガスから受けた熱量が、検出素子2の先端側から後端側に熱伝導する際に、接触位置Cp(接触点63)にて発熱停止状態のセラミックヒータ3にも熱伝導してしまい、検出素子2のうち接触位置Cp(接触点63)よりも後端側領域が十分に加熱されないことが原因と考えられる。
【0136】
このことから、検出素子2のうち接触位置Cp(接触点63)よりも先端側領域は、測定対象ガスによる加熱で活性化状態となりうるが、検出素子2のうち接触位置Cp(接触点63)よりも後端側領域は、測定対象ガスによる加熱では十分には活性化状態となり難いことが判る。
【0137】
よって、検出素子2のうち接触位置Cp(接触点63)よりも後端側領域は、測定対象ガスによる加熱ではなく、セラミックヒータによる加熱を利用することで活性化状態とすることができる。このことから、検出素子2をより高い活性化状態にするためには、セラミックヒータによる加熱を利用することが有効である。
【0138】
[2−5.第5測定]
次に、第5測定として、セラミックヒータ3による加熱は行わず、測定対象ガスによる加熱のみが行われる条件下において、内部検知部27aの周方向寸法(幅方向寸法)を変化させた場合において、周方向寸法ごとの検出素子2の活性化状態を比較した比較測定について説明する。
【0139】
なお、第5測定では、内部検知部27aにおける後端側内部検知部27eの検知部周方向寸法W1(検知部幅方向寸法W1(=Wb))を変化させるとともに、内部検知部27aの先端側内部検知部27dについても、周方向寸法(幅方向寸法)を変化させた。具体的には、先端側内部検知部27dおよび後端側内部検知部27eのそれぞれの周方向寸法(幅方向寸法)を同一寸法とした。
【0140】
第5測定では、内部検知部27aの検知部周方向寸法W1がセラミックヒータ3の発熱部142の発熱部周方向寸法W2(発熱部幅方向寸法W2)よりも大きい検出素子2(試料41)と、内部検知部27aの検知部周方向寸法W1がセラミックヒータ3の発熱部142の発熱部周方向寸法W2よりも小さい検出素子2(試料42〜試料44)と、の4種類の検出素子2を用いた。
【0141】
なお、試料41は、内部検知部27a(先端側内部検知部27dおよび後端側内部検知部27e)が、素子本体部24の内面において中心軸線S1を中心とする周方向領域の全体(全周)に形成される構成である。そして、試料41が最も検知部周方向寸法W1が大きく、試料41から試料44にかけて次第に検知部周方向寸法W1が小さくなる。
【0142】
第5測定の測定結果を
図13に示す。
図13に示すように、試料41が最も電極間抵抗値Riが小さくなり(最も活性化状態が高くなり)、試料41から試料44にかけて次第に電極間抵抗値Riが大きくなる(活性化状態が低くなる)ことが判る。
【0143】
この測定結果によれば、検出素子2のうち接触位置Cp(接触点63)よりも先端側領域においては、内部検知部27aの面積を大きく確保することで、測定対象ガスの加熱による活性化状態を向上できることが判る。
【0144】
よって、第5測定の測定結果によれば、検出素子2のうち接触位置Cp(接触点63)よりも先端側領域における内部検知部27a(先端側内部検知部27d)を大きく形成することで、検出素子2の活性化状態が良好になることが判る。より好ましくは、検出素子2のうち接触位置Cp(接触点63)よりも先端側領域における内部検知部27a(先端側内部検知部27d)を、素子本体部24の内面において中心軸線S1を中心とする周方向領域の全体(全周)に形成するとよい。
【0145】
[3.他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0146】
例えば、上記第1実施形態では、後端側内部検知部27eに関して、検出素子2(素子本体部24)の中心軸線S1を中心とする周方向領域が全体(全周)ではなく一部領域である後端側内部検知部27eについて説明したが、周方向領域が全体(全周)となるように後端側内部検知部27eを形成しても良い。これは、例えば、第2測定に用いた試料11と同様の構成である。
【0147】
また、後端側内部検知部27eについては、軸線方向領域の一部領域について周方向領域の全体(全周)に形成し、軸線方向領域におけるその他の領域については周方向領域の一部に形成するという形態の後端側内部検知部27eとして形成しても良い。
【0148】
このような構成の後端側内部検知部27eの一例としては、素子本体部24の軸線方向における接触位置Cp(接触点63)から発熱部142の発熱部先端位置Hdまでの領域(
図6での第2領域T2)では周方向領域の全体(全周)に形成され、発熱部先端位置Hdから検知部後端位置Euまでの領域(
図6での第3領域T3〜第5領域T5)では周方向領域の一部領域に形成される構成の後端側内部検知部27eが挙げられる。
【0149】
このように後端側内部検知部27eを形成することで、素子本体部24における周方向領域のうちセラミックヒータ3の発熱部142によって活性化状態となる領域に後端側内部検知部27eを配置できるとともに、内部検知部27aと素子本体部24との接触面積をより一層大きく確保できる。
【0150】
これにより、内部電極27と外部電極26との間の電気抵抗値が小さくなり、特定ガス(酸素)の検出精度が向上する。
あるいは、後端側内部検知部27eの他の例としては、素子本体部24の軸線方向における接触位置Cp(接触点63)から発熱部142の発熱部後端位置Huまでの領域(
図6での第2領域T2から第4領域T4)では周方向領域の全体(全周)に形成され、発熱部後端位置Huから検知部後端位置Euまでの領域(
図6での第5領域T5)では周方向領域の一部領域に形成される構成の後端側内部検知部27eが挙げられる。換言すれば、この後端側内部検知部27eは、連結側検知部27f以外の領域が周方向の全体(全周)に形成されるとともに、連結側検知部27fの領域が周方向領域の一部領域に形成される構成である。このような構成の後端側内部検知部27eを備える内部電極27の形状を模式的に表した展開図を
図14に示す。
【0151】
このような構成の内部電極27を備えるガスセンサは、内部電極27と外部電極26との間の電気抵抗値が小さくなり、特定ガス(酸素)の検出精度が向上する。
次に、上記の第1実施形態では、内部接続部27bおよび内部リード部27cがそれぞれの幅方向寸法(周方向寸法)が同一寸法となる形態の内部電極27の検出素子2について説明したが、内部電極27はこのような形態に限定されるものではない。例えば、内部接続部27bは、内部リード部27cよりも幅方向寸法を大きく形成しても良い。あるいは、内部接続部27bは、外部接続部26bと同様に、周方向の全周にわたり形成される形態であってもよい。
【0152】
次に、内部検知部27aは、少なくとも一部が素子本体部における周方向領域の全体にわたり連続して形成されていればよく、素子本体部の内部のうち検知部後端位置Euよりも先端側領域の全面に形成されていなくてもよい。
【0153】
また、先端側内部検知部27dは、素子本体部における周方向領域の全体にわたり連続して形成される部分を有していればよく、素子本体部の先端側の内部全面に形成されていなくてもよい。例えば、素子本体部の先端側頂点部に、先端側内部検知部27dが形成されない検知部未形成領域を設けても良い。
【0154】
次に、内部検知部27aの厚さ寸法および内部リード部27cの厚さ寸法は、上記数値に限られることはなく、例えば、内部検知部27aの厚さ寸法は、0.5〜2.0[μm]の範囲内で任意の数値に設定してもよく、内部リード部27cの厚さ寸法は、0.1〜1.0[μm]の範囲内で任意の数値に設定してもよい。ただし、この場合、内部検知部27aの厚さ寸法が内部リード部27cの厚さ寸法よりも大きくなるように、内部検知部27aおよび内部リード部27cのそれぞれの厚さ寸法を選択する必要がある。