(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)濃度特性を測定し、(b)前記濃度特性の最大濃度を、前記最大濃度より低い基準最大濃度に変更しつつ前記濃度特性を線形にする仮階調補正データを生成するとともに、(c)前記濃度特性の最大濃度を維持しつつ前記濃度特性を線形にするベース階調補正データを生成し、(d)前記ベース階調補正データに基づく階調補正後に実行される追加階調補正に使用される追加階調補正データを、前記ベース階調補正データおよび前記追加階調補正データに基づく階調補正と前記仮階調補正データに基づく階調補正とが同一となるように生成する補正データ生成部と、
前記ベース階調補正データおよび前記追加階調補正データに基づき印刷画像の階調補正を行う画像処理部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
(e)前記ベース階調補正データを使用して濃度特性を測定し、(f)前記濃度特性に基づき前記追加階調補正データを調整する補正データ調整部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
前記補正データ調整部は、前記ベース階調補正データを調整せずに、前記ベース階調補正データおよび前記追加階調補正データに基づく階調補正後の最大濃度が前記基準最大濃度となるように、前記追加階調補正データを調整することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電子写真方式の画像形成装置では、画像内の画素値に対応してドットを成長させても、画素値とトナー濃度とは比例しない。
【0003】
また、画像形成装置の機体差、環境条件などによって、画素値とトナー濃度との関係が変化するため、画素値に比例したトナー濃度で印刷するには、機体ごとに濃度特性を調整する必要がある。
【0004】
ある濃度調整方法では、画像形成装置が、テストチャートを用紙に印刷し、印刷したテストチャートをスキャナーなどで読み取り、その読取結果に基づいて階調補正データを生成している(例えば特許文献1参照)。
【0005】
この方法では、テストチャートの印刷および読取という操作が煩雑であるため、実際には、あまり実行されない。そのため、画像形成装置が、定期的に階調補正データの調整を自動的に行うことが多い。その場合、画像形成装置が、中間転写体上に調整トナーパターンを形成し、その調整トナーパターンの濃度を濃度センサーで測定し、その測定結果に基づいて階調補正データを調整している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
中間転写体上の調整トナーパターンの濃度の測定結果に基づいて階調補正データを調整する場合、調整前の階調補正データを使用して画素値を補正した上で調整トナーパターンを形成させるため、経時変化などでトナー濃度が低下した場合、濃度調整を行っても、トナー濃度の最大濃度が、基準最大濃度(例えばID(Image Density)=1.4)に達しなくなってしまうことがある。
【0008】
図7は、階調補正データの調整について説明する図である。
図7(A)は、テストチャートを使用した階調補正データ生成時の画素値とトナー濃度との関係の一例を示す図である。
図7(B)は、目標となる画素値とトナー濃度との関係を示す図である。
図7(C)は、
図7(A)に示す画素値とトナー濃度との関係と、
図7(B)に示す目標となる関係とから得られる階調補正データの一例を示す図である。
図7(D)は、濃度特性変化後の画素値とトナー濃度との関係の一例を示す図である。
【0009】
例えば、
図7(A)に示す濃度特性のときに、画素値の最大値Xmax(例えば8ビットデータの場合、255)で基準最大濃度となり、かつ画素値とトナー濃度とが比例するように階調補正データを生成すると、
図7(C)に示すようになる。
【0010】
その後、
図7(D)の実線に示すように濃度特性が変化し、
図7(A)の場合(
図7(D)の破線)より濃度が低くなった場合、
図7(C)に示す階調補正データを使用して調整トナーパターンを生成すると、
図7(D)に示すように、画素値の最大値Xmaxに対応するYmaxでの濃度(つまり、階調補正後の最大濃度)が基準最大濃度より低くなってしまう。
【0011】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、濃度特性が変化しても、基準最大濃度まで使用できる補正データを生成する画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る画像形成装置は、(a)濃度特性を測定し、(b)前記濃度特性の最大濃度を、前記最大濃度より低い基準最大濃度に変更しつつ前記濃度特性を線形にする仮階調補正データを生成するとともに、(c)前記濃度特性の最大濃度を維持しつつ前記濃度特性を線形にするベース階調補正データを生成し、(d)前記ベース階調補正データに基づく階調補正後に実行される追加階調補正に使用される追加階調補正データを、前記ベース階調補正データおよび前記追加階調補正データに基づく階調補正と前記仮階調補正データに基づく階調補正とが同一となるように生成する補正データ生成部と、前記ベース階調補正データおよび前記追加階調補正データに基づき印刷画像の階調補正を行う画像処理部とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、濃度特性が変化しても、基準最大濃度まで使用できる補正データを生成する画像形成装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の機械的な内部構成を示す側面図である。この画像形成装置は、プリンター、ファクシミリ装置、複写機、複合機などといった、電子写真方式の印刷機能を有する装置である。
【0017】
この実施の形態の画像形成装置は、タンデム方式のカラー現像装置を有する。このカラー現像装置は、感光体ドラム1a〜1d、露光装置2および現像装置3a〜3dを有する。感光体ドラム1a〜1dは、ブラック、マゼンタ、シアン、およびイエローの4色の感光体である。露光装置2は、感光体ドラム1a〜1dの表面へレーザー光を照射して静電潜像を形成する装置である。露光装置2は、レーザー光の光源であるレーザーダイオード、そのレーザー光を感光体ドラム1a〜1dへ導く光学素子(レンズ、ミラー、感光体ドラム1a〜1dの表面において主走査方向に沿って光を走査するためのポリゴンミラーなど)、ポリゴンミラーを回転させるポリゴンモーターなどを有する。
【0018】
現像装置3a〜3dは、トナーカートリッジ内のトナーを感光体ドラム1a〜1d上の静電潜像に付着させて現像しトナー像を形成する。感光体ドラム1aおよび現像装置3aにより、ブラックの現像が行われ、感光体ドラム1bおよび現像装置3bにより、マゼンタの現像が行われ、感光体ドラム1cおよび現像装置3cにより、シアンの現像が行われ、感光体ドラム1dおよび現像装置3dにより、イエローの現像が行われる。
【0019】
中間転写ベルト5は、感光体ドラム1a〜1dに接触し、感光体ドラム1a〜1d上のトナー像を転写される環状の中間転写体である。中間転写ベルト5は、駆動ローラー6およびテンションローラー7に張架され、駆動ローラー6からの駆動力によって、感光体ドラム1dとの接触位置から感光体ドラム1aとの接触位置への方向へ周回していく。
【0020】
転写ローラー8は、搬送されてくる用紙を中間転写ベルト5に接触させ、中間転写ベルト5上のトナー像を用紙に転写する。なお、トナー像を転写された用紙は、図示せぬ定着器へ搬送され、トナー像が用紙へ定着される。
【0021】
濃度センサー9は、中間転写ベルト5に光を照射し、その反射光を検出する。特に、濃度センサー9は、調整処理時において、中間転写ベルト5上の調整トナーパターンの濃度、位置などを検出する。この濃度センサー9は、反射型光学センサーである。
【0022】
クリーニングユニット10は、例えばクリーニングローラーであって、中間転写ベルト5上の残留トナーを除去する。
【0023】
図2は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【0024】
図2に示すように、この画像形成装置は、コントローラー21と、印刷装置22と、画像読取装置23と、記憶装置24とを備える。
【0025】
コントローラー21は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)および/またはマイクロコンピューターを有し、ハードウェアおよび/またはソフトウェアに基づき、画像形成装置内の各部を制御するとともに、各種処理部として動作する。
【0026】
コントローラー21は、補正データ生成部31、補正データ調整部32、および画像処理部33として動作する。
【0027】
補正データ生成部31は、(a)この画像形成装置の濃度特性(画素値に対するトナー濃度の特性)を測定し、(b)その濃度特性の最大濃度を、最大濃度より低い基準最大濃度に変更しつつ濃度特性を線形にする仮階調補正データを生成するとともに、(c)その濃度特性の最大濃度を維持しつつ濃度特性を線形にするベース階調補正データを生成し、(d)ベース階調補正データに基づく階調補正後に実行される追加階調補正に使用される追加階調補正データを、ベース階調補正データおよび追加階調補正データに基づく階調補正と仮階調補正データに基づく階調補正とが同一となるように生成する。
【0028】
具体的には、補正データ生成部31は、テストチャートを印刷装置22に印刷させ、印刷されたテストチャートの画像を画像読取装置23に読み取らせ、テストチャートの画像の読取結果に基づき濃度特性を測定する。
【0029】
補正データ調整部32は、(e)ベース階調補正データを使用して濃度特性を測定し、(f)その濃度特性に基づき追加階調補正データを調整する。
【0030】
具体的には、補正データ調整部32は、ベース階調補正データを適用した階調で調整トナーパターンを中間転写体ベルト5上に形成させ、中間転写ベルト5上に形成された調整トナーパターンの濃度を濃度センサー9で測定して濃度特性を測定する。
【0031】
さらに、補正データ調整部32は、ベース階調補正データを調整せずに、ベース階調補正データおよび追加階調補正データに基づく階調補正後の最大濃度が基準最大濃度となるように、追加階調補正データを調整する。
【0032】
なお、補正データ調整部32は、所定のスケジュールに基づく調整タイミングが到来すると自動的に追加階調補正データの調整を行う。また、ユーザーやサービスパーソンによる操作による調整要求が検出された場合にも、補正データ調整部32は、追加階調補正データの調整を行う。
【0033】
画像処理部33は、ベース階調補正データおよび追加階調補正データに基づき印刷画像の階調補正を行う。
【0034】
印刷装置22は、
図1に示す機械的な構成で、コントローラー21内の画像処理部33による画像処理後の画像データに基づく画像を印刷する内部装置である。
【0035】
画像読取装置23は、原稿から原稿画像を光学的に読み取り、原稿画像のカラー画像データを生成する内部装置である。
【0036】
記憶装置24は、フラッシュメモリーなどの不揮発性の記憶装置であり、上述の階調補正データなどを記憶している。
【0037】
次に、上記画像形成装置の動作について説明する。
【0039】
図3は、
図1および
図2に示す画像形成装置の、階調補正データ生成時の動作を説明するフローチャートである。
図4は、
図1および
図2に示す画像形成装置の、階調補正データ生成時の処理を説明する図である。
図4(A)は、テストチャートを使用した階調補正データ生成時の画素値とトナー濃度との関係の一例を示す図である。
図4(B)は、最大濃度を基準最大濃度にする場合の線形な画素値とトナー濃度との関係を示す図である。
図4(C)は、
図4(A)に示す画素値とトナー濃度との関係と、
図4(B)に示す目標となる関係とから得られる仮階調補正データの一例を示す図である。
図4(D)は、最大濃度を維持する場合の線形な画素値とトナー濃度との関係を示す図である。
図4(E)および
図4(F)は、ベース階調補正データおよび追加階調補正データの一例を示す図である。
【0040】
補正データ生成部31は、印刷装置22を制御して、テストチャートを用紙に印刷させる(ステップS1)。テストチャートは、ブラック、マゼンタ、シアン、およびイエローの各色について、64階調のパッチを含む。
【0041】
次に、ユーザーが、テストチャートが印刷された用紙を、画像読取装置23に載置した後、補正データ生成部31は、画像読取装置23を制御して、用紙に印刷されたテストチャートの画像を読み取らせ、テストチャートにおける各パッチのRGB画像データを取得する(ステップS2)。これにより、例えば
図4(A)に示すような濃度特性がブラック、マゼンタ、シアン、およびイエローの各色について得られる。
【0042】
各色について、補正データ生成部31は、その濃度特性から、
図4(B)に示すような濃度特性への補正をするための、
図4(C)に示すような仮階調補正データを生成するとともに(ステップS3)、
図4(D)に示すような濃度特性への補正をするための、
図4(E)に示すようなベース階調補正データを生成する(ステップS4)。
【0043】
そして、各色について、補正データ生成部31は、仮階調補正データおよびベース階調補正データから、
図4(F)に示すような追加階調補正データを生成する(ステップS5)。このとき、
図4に示すように、入力Xに対するベース階調補正データの入出力関係による出力tを、追加階調補正データに対する入力として得られる、追加階調補正データによる出力Yが、入力Xに対する仮階調補正データによる出力Yと同一となるように、追加階調補正データが生成される。
【0044】
補正データ生成部31は、そのベース階調補正データおよび追加階調補正データを記憶装置24に記憶する(ステップS6)。
【0045】
そして、印刷要求に基づき印刷画像を印刷させる際に、画像処理部33は、記憶装置24からベース階調補正データおよび追加階調補正データを読み出して、ある画素値を入力Xとし、ベース階調補正データにおけるその入力Xに対する出力tを、追加階調補正データに対する入力とし、追加階調補正データにおけるその入力tに対する出力Yを、階調補正後の画素値とする。
【0047】
図5は、
図1および
図2に示す画像形成装置の、階調補正データ調整時の動作を説明するフローチャートである。
図6は、
図1および
図2に示す画像形成装置の、階調補正データ調整時の処理を説明する図である。
図6(A)は、濃度特性変化後の画素値とトナー濃度との関係の一例を示す図である。
図6(B)は、最大濃度を基準最大濃度にする場合の線形な画素値とトナー濃度との関係を示す図である。
図6(C)および
図6(D)は、ベース階調補正データおよび調整後の追加階調補正データの一例を示す図である。
【0048】
まず、補正データ調整部32は、印刷装置22を制御して、ベース階調補正データに基づき、調整トナーパターンを中間転写ベルト5上に形成させる(ステップS21)。調整トナーパターンは、ブラック、マゼンタ、シアン、およびイエローの各色について、テストチャートの階調より少ない8階調のパッチを含む。
【0049】
つまり、階調補正データの調整時には、追加階調補正データを使用せずに、ベース階調補正データのみで階調補正が行われ、各パッチの画素値が決定される。
【0050】
そして、補正データ調整部32は、印刷装置22の濃度センサー9を使用して、調整トナーパターンの各パッチの濃度を測定する(ステップS22)。
【0051】
補正データ調整部32は、測定した濃度に基づいて、追加階調補正データを調整する(ステップS23)。
【0052】
例えば
図6(A)に示す破線から実線へ濃度特性における濃度が低下した場合、ベース階調補正データおよび追加階調補正データで、
図6(B)に示すような濃度特性が得られるように、ベース階調補正データ(
図6(C))を変化させずに、追加階調補正データが、
図6(D)に示す破線から実線へ調整される。
【0053】
そして、補正データ調整部32は、調整後の追加階調補正データで、記憶装置24に記憶されている追加階調補正データを更新する(ステップS24)。
【0054】
調整後においても同様に、印刷要求に基づき印刷画像を印刷させる際に、画像処理部33は、記憶装置24からベース階調補正データおよび追加階調補正データを読み出して、ある画素値を入力Xとし、ベース階調補正データにおけるその入力Xに対する出力tを、追加階調補正データに対する入力とし、追加階調補正データにおけるその入力tに対する出力Yを、階調補正後の画素値とする。
【0055】
以上のように、上記実施の形態によれば、補正データ生成部31は、(a)濃度特性を測定し、(b)濃度特性の最大濃度を、その最大濃度より低い基準最大濃度に変更しつつ濃度特性を線形にする仮階調補正データを生成するとともに、(c)その濃度特性の最大濃度を維持しつつ濃度特性を線形にするベース階調補正データを生成し、(d)ベース階調補正データに基づく階調補正後に実行される追加階調補正に使用される追加階調補正データを、ベース階調補正データおよび追加階調補正データに基づく階調補正と仮階調補正データに基づく階調補正とが同一となるように生成する。そして、画像処理部33は、そのベース階調補正データおよび追加階調補正データに基づき印刷画像の階調補正を行う。
【0056】
これにより、印刷装置22の濃度特性が変化しても、基準最大濃度まで使用できる補正データ(つまり、ベース階調補正データと追加階調補正データとの組合せ)が生成される。
【0057】
なお、上述の実施の形態は、本発明の好適な例であるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【0058】
例えば、上記実施の形態では、中間転写体として中間転写ベルト5が使用されているが、他の形態の中間転写体を使用する場合でも同様に階調補正データの調整が実行される。