(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の操作装置500では、大きな力覚(トルク)を得るために、永久磁石502としてネオジム磁石等の高価な磁石が用いられるため、コストが非常に高くなる。また、上記の操作装置500では、短時間定格等において励磁コイル506に過電流を流して強い磁場を形成したときに永久磁石502が減磁する場合がある。また、励磁コイル506に過電流が流れて発熱したり、操作装置500が高温雰囲気下で使用されたりすることによって永久磁石502が高温に曝され、これにより、永久磁石502が減磁又は消磁する場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、永久磁石を用いることなく操作部材へ力覚を付与することが可能な力覚付与型操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解消すべく、本発明は、磁力によって生じるトルクを利用して力覚を生じさせる力覚付与型操作装置であって、励磁コイル、及び、前記励磁コイルが取りつけられ且つ複数の第1磁極面を有する固定部本体を備える固定部と、各第1磁極面と間隔を空けて対向可能な複数の第2磁極面を有し、且つ前記固定部の周囲に配置される回転部と、前記回転部を前記固定部に対して回転可能に支持する支持部と、前記回転部を回転操作するための操作部材と、を備える。そして、前記固定部は、前記複数の第1磁極面が当該固定部の周囲を囲む共通の第1仮想球面に沿ってそれぞれ配置され、前記励磁コイルの励磁によって各第1磁極面に磁束線が集中する形状を有し、前記支持部は、前記回転部を前記第1仮想球面に沿って複数の方向に回転可能に支持し、前記回転部は、前記励磁コイルが励磁した状態で各第2磁極面が前記第1磁極面と所定の間隔を空けてそれぞれ対向したときに、励磁電流の流れる方向と直交する前記励磁コイルの断面の周囲を囲むような磁気回路を前記固定部と共同して形成すると共に、当該回転部の回転に伴って、前記第2磁極面が、前記第1仮想球面と中心が一致し且つ前記第1仮想球面よりも径の大きな第2仮想球面に沿って動くような形状を有する。
【0010】
かかる構成によれば、励磁コイルに励磁電流を供給して励磁させることで固定部と回転部とによって励磁コイルの周囲(詳しくは、励磁電流の流れる方向と直交する励磁コイルの断面の周囲)を囲むような磁気回路が形成され、この状態で回転部を操作部材によって回転操作することで第2磁極面が第2仮想球面に沿って動く。これにより、第1及び第2仮想球面の径方向視において、第1磁極面と第2磁極面との重なっている部位の面積が変化するため、永久磁石を用いなくても、操作部材によって回転部を第2仮想球面に沿った方向に回転操作したときに第1磁極面と第2磁極面との間の磁気吸引力を利用して操作部材に操作方向と逆向きのトルクを力覚として付与することができる。詳しくは、以下の通りである。
【0011】
各第1磁極面とこれに対応する第2磁極面とがそれぞれ対向した状態で励磁コイルに励磁電流が供給されると、固定部と回転部とによって前記励磁コイルの断面を囲うような磁気回路が形成される(例えば、
図3参照)。この磁気回路が形成された状態では、第2磁極面が第1磁極面の正面位置(例えば、
図3の例では、第1及び第2仮想球面の径方向視における第1磁極面と第2磁極面との重なっている部位の面積が最も大きくなる位置)のときに第1磁極面と第2磁極面との間の磁気抵抗が最小となる一方、回転部が回転して第2磁極面が第2仮想面に沿って動くのに伴ってこれら第1磁極面と第2磁極面との間の磁気抵抗が大きくなる。このため、操作部材によって回転部を回転操作した(回転させた)ときに励磁コイルが励磁していると、対応する第1磁極面と第2磁極面との間の磁気吸引力が磁気抵抗の小さくなる方向に働くため、回転部には各第2磁極面が対応する第1磁極面の正面位置に向かう方向に磁気吸引力が作用し、回転部に回転方向と逆方向のトルクが生じて操作部材に力覚が付与される。
【0012】
このように、上記構成の力覚付与型操作装置によれば、永久磁石を用いることなく磁気吸引力を生じさせて回転部にトルクを発生させ、これにより、操作部材を通じた力覚提示が可能となる。
【0013】
しかも、予定された電流より大きな励磁電流が励磁コイルに供給される電流暴走時においても、回転部には、第2磁極面が前記正面位置に戻る方向のトルクしか生じないため、第2磁極面が前記正面位置に戻ったときの位置に操作部材を停止させることができる。即ち、電流暴走時においても、意図しない方向に操作部材が動くのを防ぐことができる。
【0014】
前記力覚付与型操作装置では、前記各第1磁極面が前記第1仮想面の一部に相当する形状を有し、前記各第2磁極面が前記第2仮想球面の一部に相当する形状を有することが好ましい。
【0015】
このように、第1磁極面が第1仮想球面の一部に相当する形状を有し、第2磁極面が、第1仮想球面と中心が一致し且つ第1仮想球面より径の大きな第2仮想球面の一部に相当する形状を有して当該第2仮想球面に沿って移動するため、第互いの干渉を避けつつ、第1及び第2仮想球面の径方向における第1磁極面と第2磁極面との間隔を小さくすることができる。これにより、励磁コイルに供給される励磁電流の大きさに対する回転部に生じるトルクの大きさをより大きくすることができる。即ち、回転部に、より効率よくトルクを生じさせることができる。
【0016】
また、前記力覚付与型操作装置では、前記軸部材は、その周面に導線が巻回されて前記励磁コイルが形成される軸部と、この軸部の両側に位置して前記第1磁極面を構成する外側面を有する磁極形成部とを含むことが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、磁気回路の一部が形成される軸部材内部での磁束密度の偏りを抑えることができる。
【0018】
この場合、前記第1磁極面が前記軸部材の軸心方向の先端面によって構成されてもよく、前記第1磁極面が、前記軸部材における前記励磁コイルが取り付けられた位置よりも端部側の部位における当該軸部材の径方向に広がる大径部の先端面によって構成されてもよい。
【0019】
また、前記力覚付与型操作装置では、前記固定部は、磁性材料で形成され且つ磁気的に絶縁された状態で互いに交差する複数の軸部材を有し、前記各軸部材では、両端面が前記第1磁極面をそれぞれ構成し、前記回転部は、磁性材料で形成され、且つ前記軸部材毎に当該軸部材と共同して前記磁気回路を形成する複数の磁路部材を有し、前記各磁路部材は、前記軸部材両端の各第1磁極面と対向可能な前記第2磁極面をそれぞれ有する一対の磁極部と、これら一対の磁極部同士を接続する部位と、を有し、互いに離間した状態でそれぞれ配置され、前記励磁コイルは、各軸部材に当該軸部材の周面を囲むようにそれぞれ取り付けられてもよい。
【0020】
かかる構成によれば、軸部材毎に励磁コイルに供給する励磁電流の大きさを変えて磁気回路毎の磁束密度を変えることで、操作部材を操作する方向によって力覚量を異ならせることができる。
【0021】
また、前記力覚付与型操作装置は、各第2磁極面が対応する第1磁極面とそれぞれ対向した状態からの前記回転部の回転角を検出可能な回転角検出部と、前記回転角検出部での検出結果に基づいて前記励磁コイルに供給する励磁電流を調整する制御部と、を備えてもよい。
【0022】
かかる構成によれば、操作部材による回転部の回転操作(回転量)に応じて、回転部に生じさせるトルクの大きさを調整することにより、操作部材に付与される力覚量を回転操作した量に応じて調整することができる。
【0023】
また、前記力覚付与型操作装置は、当該力覚付与型操作装置によって操作される作業機械の被操作部の負荷を検出する負荷検出部をさらに備え、前記制御部が、負荷検出部での検出結果に基づいて前記励磁コイルに供給する励磁電流を調整してもよい。
【0024】
かかる構成によれば、前記負荷に応じて回転部に生じさせるトルクの大きさを調整することにより、操作部材に付与される力覚量を調整することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上より、本発明によれば、永久磁石を用いることなく操作部材へ力覚を付与することが可能な力覚付与型操作装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の第1実施形態について、
図1〜
図4を参照しつつ説明する。
【0028】
力覚付与型操作装置(以下、単に「操作装置」とも称する。)は、ショベルやクレーンをはじめとする作業機械等の操作を行うための装置であり、操作レバー等の操作部材の操作時に、操作者等に操作部材を通じて力覚提示を行う、即ち、操作者等に力覚情報を知覚させることができる。
【0029】
この操作装置は、スイッチトリラクタンスモータ(Switched Reluctance Motor)の駆動原理を利用して発生させたトルクを利用して力覚提示を行う。
図1〜
図3に示されるように、操作装置10は、ステータ部(固定部)20と、ロータ部(回転部)30と、ロータ支持部(支持部)33と、操作レバー(操作部材)12と、回転角検出部14と、負荷検出部16と、制御部18と、を備える。尚、以下の説明では、
図1のように操作レバー12が垂直上方を向いたときの各構成部材の位置を中立位置とする。
【0030】
ステータ部20は、励磁コイル21と、ステータ本体(固定部本体)22と、ステータ支持部23と、を有する。
【0031】
励磁コイル21は、銅線等の導線を単純巻きして形成されたコイルであり、励磁電流が流れる(供給される)ことによってステータ本体22を磁化する。具体的に、励磁コイル21は、ステータ本体22の軸部220の周囲に導線が単純巻きされることによって形成されている。即ち、励磁コイル21は、そのコイル軸がステータ本体22における軸部220の中心軸Cと一致するように、軸部220の周囲を囲むように当該軸部220に取り付けられている。尚、励磁コイル21は、帯状の導線をフラットワイズに巻回した所謂パンケーキコイル等でもよい。
【0032】
ステータ本体22は、軸部材によって構成され、この軸部材が軸部220と一対の大径部221、221とによって構成される。これら軸部220と一対の大径部221、221とは一体に構成され、例えば、軟鉄等の透磁率の高い素材(軟磁性材料)によって形成されている。
【0033】
軸部220は、垂直方向に延びる中心軸Cを有する円柱状の部位である。この軸部220の外径は、励磁コイル21の内径と同じである。
【0034】
大径部221は、中心軸C方向における軸部220の両端部から径方向外側に広がる部位である。本実施形態の大径部221は、上下方向の寸法(厚さ寸法)が一定のフランジ状の部位である。このように大径部221は、他の部位(本実施形態では軸部220)から突出するような形状を有することで、ステータ本体22が励磁されたときに磁束線が集中して磁極を構成する。大径部221は、前記径方向の先端に、ステータ本体22が励磁されたときに磁極面となる先端面を有する。本実施形態では、この先端面を第1磁極面222と称する。
【0035】
各大径部221の第1磁極面222は、
図3に示されるようなステータ本体22の周囲を囲む共通の第1仮想球面225上にそれぞれ位置する。即ち、第1磁極面222は、軸部220における励磁コイル21が取り付けられた位置よりも端部側の部位における当該軸部220の径方向に広がる大径部221の先端面によって構成されている。具体的には、各第1磁極面222は、中心軸C上における軸部220の上下方向の中央位置C
0を中心とする球面である第1仮想球面225の一部によって構成されている。
【0036】
このように構成されるステータ本体22では、一対の大径部221、221間において軸部220を囲むように励磁コイル21が配置され、この状態で励磁コイル21に励磁電流が供給されると、軟磁性材料によって形成されたステータ本体22が磁化される。
【0037】
ステータ支持部23は、水平方向に広がる板状の基部230と、基部230から上方に延びてステータ(ステータ本体22及びこれに取り付けられた励磁コイル21)の下端(ステータ本体22の下側の大径部221の下面)に接続され、ステータを基部230上の所定の高さ位置に支持する支持部231と、を有する。
【0038】
ロータ部30は、ロータ31と、外殻部32と、を有し、ステータの周囲に配置されて当該ステータに対して回転可能に構成される。
【0039】
ロータ31は、筒状部310と、一対の延出部311、311と、を有する。これら筒状部310と一対の延出部311、311とは一体に構成され、例えば、軟鉄等の透磁率の高い素材(軟磁性材料)によって形成されている。
【0040】
筒状部310は、中心軸Cを中心にその周囲を囲う円筒形状を有する。筒状部310の内径は、励磁コイル21の外径より大きい。即ち、中立位置のときに、筒状部310の内周面と励磁コイル21の外周面との間に所定の間隔が形成されている(
図3参照)。
【0041】
延出部311は、中心軸C方向における筒状部310の両端部から径方向内側に延びる部位である。本実施形態の延出部311は、上下方向の寸法(厚さ寸法)が一定の板状の部位である。延出部311は、前記径方向の先端に、ロータ31が励磁されたときに磁極面となる先端面を有する。本実施形態では、この先端面を第2磁極面312と称する。
【0042】
各延出部311の第2磁極面312は、中立位置のときに、第1磁極面222との間にギャップが設けられた状態で第1磁極面222の外側に位置し且つこれと対向する面である。具体的に、第2磁極面312は、第1仮想球面225と中心C
0が一致し且つ第1仮想球面225よりも径の大きな第2仮想球面226の一部によって構成されている。以下では、
図3に示されるような位置、即ち、第1仮想球面225及び第2仮想球面226の径方向視において、第1磁極面222と第2磁極面312との重なっている面積が最も大きくなる第2磁極面312の第1磁極面222に対する位置を正面位置と称する。
【0043】
このように構成されるロータ31は、励磁コイル21が励磁されることでステータ本体22と共に磁化され、励磁電流の流れる方向と直交する励磁コイル21の断面(
図3に示される励磁コイル21の断面)の周囲を囲むような磁気回路35をステータ本体22と共同して形成する。
【0044】
外殻部32は、ロータ31の外側を囲う部材であり、ロータ31の下部を囲む下側部位320と、ロータ31の上部を囲う上側部位321と、を有する。この外殻部32は、非磁性材料によって形成されている。また、外殻部32は、ロータ31と連結され、ロータ31と一体的に動く。
【0045】
下側部位320は、支持部231及びその周囲を残してロータ31の下部を囲う。この下側部位320の外周面320aは、軸部220の中央位置C
0を中心とする所定の球面の一部によって構成されている。尚、この所定の球面は、内部にロータ31が配置可能な直径の球面であり、各第1磁極面222が位置する第1仮想球面225よりも直径の大きな球面である。
【0046】
上側部位321は、中心軸Cと操作レバー12の軸心とが一致するように、操作レバー12がその頂部(上端部)に取り付けられている。
【0047】
ロータ支持部33は、軸部220の上下方向の中央位置C
0を回転中心として第1仮想球面225に沿って複数の方向に回転可能に外殻部32を支持する。即ち、ロータ支持部33は、ステータに対してロータ部30(ロータ31及び外殻部32)を複数の方向に回転可能に支持する。本実施形態のロータ支持部33は、3つのボールベアー(ボールトランスファー)330を有する。各ボールベアー330は、ボールとこれを任意の方向に回転可能に支持するホルダとを有し、各ボールが平面視において正三角形の頂角に当たる位置にそれぞれ配置され、これにより、ロータ部30がステータに対して複数の方向に回転可能となるように、下方側から外殻部32(ロータ部30)を支持する。
【0048】
尚、ボールベアー330の数は、3つに限定されない。例えば、外殻部32の外周面320aが前記所定の球面の一部によって構成されている場合、ボールベアー330は、4つ以上でもよい。
【0049】
また、ロータ支持部33の具体的構成は限定されない。本実施形態では、例えば、ボールベアーによってロータ部を支持する構成であるが、ロータ部30を、中央位置C
0を回転中心として第1仮想球面225に沿って複数の方向に回転可能に支持できる構成であれば、他の構成であってもよい。
【0050】
操作レバー12は、外殻部32の上側部位321の頂部から上方に向かって延び、ロータ部30(詳しくは、外殻部32)と一体的に動く。このため、
図4に示されるように、中央位置C
0を回転中心にして操作レバー12を回転操作する(倒す)ことで、ロータ31をステータ(励磁コイル21が配置された状態のステータ本体22)に対して回転させることができる。本実施形態では、外殻部32が3つのボールベアー330によって支持されているため、平面視において、360°いずれの方向にも操作レバー12を倒すことができる。
【0051】
回転角検出部14は、中立位置からのロータ部30(ロータ31)の傾斜方向(平面視において操作レバー12をどの方向に倒したか)及び回転角を検出し、検出結果に応じた回転信号を制御部18に出力する。本実施形態の回転角検出部14は、例えば、トラックボール機構、具体的には、外殻部32の外周面320aと接し且つ外周面320aの移動に伴って回転可能なボール部材を有し、外殻部32の回転に応じて前記ボール部材が回転することで、このボール部材の回転方向と回転量を検出し、これらに基づいて中立位置からのロータ部30の傾斜方向と回転量(回転角)とを検出する。
【0052】
負荷検出部16は、操作レバー12を操作して作業機械で作業するときに、当該作業機械に加わる負荷等を検出し、この負荷に応じた負荷信号を制御部18に出力する。
【0053】
制御部18は、回転角検出部14からの回転信号が入力されると、この回転信号に基づいて作業機械に当該作業機械を動作させるための信号を出力する。また、制御部18は、回転角検出部14からの回転信号及び負荷検出部16からの負荷信号が入力されると、これらの信号に基づいて、励磁コイル21に供給する励磁電流を調整する。本実施形態の制御部18は、例えば、回転角検出部14によって検出された回転角が大きくなるのに応じて、励磁コイル21に供給される励磁電流を所定の割合で大きくする。また、この制御部18は、負荷検出部16によって検出された負荷が大きくなるのに応じて、励磁コイル21に供給される励磁電流を所定の割合で大きくする。
【0054】
以上のような操作装置10では、以下のようにして、操作レバー12を操作する操作者等に対し、力覚提示が行われる。
【0055】
操作者等が、作業機械を操作する(作業機械に所定の動作を行わせる)ために、例えば、
図4に示されるように、操作レバー12を倒す(回転操作する)。尚、
図4における操作レバー12を倒す方向は一例であり、本実施形態の操作装置10では、操作レバー12を中立位置からいずれの方向にも倒すことができる。
【0056】
このとき、回転角検出部14がロータ部30(ロータ31)の中立位置からの回転角を検出し、検出結果に応じた回転信号を制御部18に出力すると、回転信号が入力された制御部18は、検出されたロータ31の回転角に応じた大きさの励磁電流を励磁コイル21に供給する。これにより、ロータ部30に中立位置方向のトルクが生じ、操作者等は、操作レバー12を通じて前記トルクを力覚として知覚する。詳しくは、以下の通りである。
【0057】
励磁コイル21が励磁した状態でロータ31がステータ本体22に対して中立位置から第1仮想球面225(又は第2仮想球面226)に沿って回転すると、第1磁極面222の一部に対して第2磁極面312の所定部位(前記第1磁極面222の一部と正面位置において対向する部位)が第1仮想球面225(第2仮想球面226)に沿って移動するため当該部位間の磁気抵抗が増加し、この磁気抵抗の増加によってロータ31に当該ロータ31の回転方向と逆向きの磁気吸引力が作用する。このため、当該操作装置10では、永久磁石を用いなくてもロータ部30に中立位置からの回転方向と逆向きのトルクを生じさせ、これにより、当該ロータ部30を回転操作する操作レバー12に力覚を付与することができる。より詳しくは、以下の通りである。
【0058】
励磁コイル21に励磁電流が供給されると、励磁コイル21の励磁によって生じた磁束線は、励磁コイル21の断面を囲うような磁気回路(閉じた磁気回路)35が形成される(
図3参照)。この磁気回路35が形成された状態では、第2磁極面312の前記所定部位が第1磁極面222の正面位置(本実施形態の第1磁極面222の一部と第2磁極面312の前記所定部位とにおいては、第1及び第2仮想球面225、226の径方向視において第1磁極面222の一部と第2磁極面312の前記所定部位との重なっている部位の面積が最大となる位置)のときに第2磁極面312と第1磁極面222との間の磁気抵抗が最小となり、ロータ31が回転して第2磁極面312の前記所定部位が第1磁極面222の一部と第1及び第2仮想球面225、226の径方向における間隔を保ちながら第2仮想球面226に沿って移動する(前記径方向視において第1磁極面222の一部と第2磁極面312の前記所定部位との重なっている部位の面積が小さくなる)のに伴ってこれら部位間の磁気抵抗が大きくなる。前記磁気回路が形成された状態では、磁気抵抗が小さくなる方向に磁気吸引力が働くため、中立位置から回転させたロータ部30には、中立位置に戻る方向(即ち、第2磁極面312の前記所定部位が正面位置に向かう方向)の磁気吸引力が作用する(即ち、トルクが生じる)。これにより、操作者等によって回転操作された操作レバー12に回転操作方向と逆向きの力(前記トルク)が加わり、これが操作者等に力覚として知覚される。
【0059】
また、本実施形態での操作装置10では、ロータ部30に生じるトルクの大きさは操作レバー12を倒す(回転操作する)角度が大きい程大きくなる。また、作業機械の作業時における当該作業機械に加わる負荷が大きい程、励磁コイル21に供給される励磁電流が大きくなる。このため、操作レバー12を倒す程、また、作業機械に加わる負荷が大きい程、ロータ部30に、より大きなトルクが生じる。これにより、操作レバー12を一度に大きく倒し難くなるため、作業機械の急激な動作を防ぐことができる。また、負荷が大きい程、操作レバー12を倒し難くなるため、負荷の大きな状態での作業機械の急激な動作を防いで、作業機械に大きな負荷が急激に加わるのを防ぎ、その結果、この急激な負荷に起因する作業機械の損傷等を防ぐことができる。
【0060】
以上のように、本実施形態の操作装置10によれば、永久磁石を用いなくても、操作レバー12によってロータ部30を第1仮想球面225に沿った方向に回転操作したときに第1磁極面222と第2磁極面312との間の磁気吸引力を利用して操作レバー12に操作方向と逆向きのトルクを力覚として付与することができる。
【0061】
しかも、この操作装置10では、予定された電流より大きな励磁電流が励磁コイル21に供給される電流暴走時においても、ロータ部30には、第2磁極面312が前記正面位置に戻る方向のトルクしか生じないため、第2磁極面312が前記正面位置に戻ったときの位置に操作レバー12を停止させることができる。即ち、電流暴走時においても、意図しない方向に操作レバー12が動くのを防ぐことができる。
【0062】
次に、本発明の第2実施形態について
図5〜
図8を参照しつつ説明するが、上記第1実施形態と同様の構成には同一符号を用いると共に詳細な説明を省略し、異なる構成ついてのみ詳細に説明する。
【0063】
操作装置110は、
図5に示されるように、ステータ部(固定部)120と、ロータ部(回転部)130と、ロータ支持部33と、操作レバー(操作部材)12と、回転角検出部14と、負荷検出部16と、制御部118と、を備える。
【0064】
ステータ部120は、
図6及び
図7にも示されるように、複数の励磁コイル21、…と、ステータ本体(固定部本体)122と、ステータ支持部23と、を有する。
【0065】
ステータ本体122は、複数(本実施形態の例では2つ)の軸部材1220、…と、固定部材1222と、を有する。
【0066】
各軸部材1220は、互いに交差する方向に延び、例えば、軟鉄等の透磁率の高い素材(軟磁性材料)によってそれぞれ形成されている。本実施形態の2つの軸部材1220、1220は、水平面において互いに直交する方向に延びる略円柱状の部材であり、軸心方向の中央部分で交差している。各軸部材1220の前記中央部分には、
図7に示されるように、前記交差した状態で互いに接触しないような凹部1221がそれぞれ形成されている。これにより、軸部材1220、1220同士は、交差した状態で互いに磁気的に絶縁される。尚、本実施形態の2つの軸部材1220、1220は、凹部1221を設けて互いに接触しない(所定の間隔を設ける)ようにすることで、磁気的に絶縁しているが、この構成に限定されない。例えば、軸部材1220間に非磁性体を挟み込むことで磁気的に絶縁してもよい。
【0067】
各軸部材1220の軸心方向の両端部には、当該軸部材1220が励磁されたときに磁極面となる先端面をそれぞれ有する。本実施形態では、この先端面を第1磁極面222と称する。
【0068】
各第1磁極面222は、軸部材1220の軸心方向視において円形であり、
図6に示されるようなステータ本体122の周囲を囲む共通の第1仮想球面225上にそれぞれ位置する。即ち、各第1磁極面222は、中央位置C
1を中心とする球面である第1仮想球面225の一部によって構成されている。
【0069】
また、各軸部材1220の両端部には、当該軸部材1220の軸心とコイル軸とが一致するように当該軸部材1220の外周面に励磁コイル21がそれぞれ取り付けられている。この状態で、各励磁コイル21に励磁電流がそれぞれ供給されると、軟磁性材料によって形成された各軸部材1220が磁化される。
【0070】
固定部材1222は、2つの軸部材1220、1220が水平面において互いに交差(本実施形態の例では直交)した状態(互いの相対位置)を固定する部材であり、非磁性材料によって形成されている。本実施形態の固定部材1222は、例えば、立方体形状を有し、2つの軸部材1220、1220を直交するように挿通させた状態でこれら2つの軸部材1220、1220を保持する。
【0071】
ロータ部130は、軸部材1220と同数(本実施形態の例では2つ)の磁路部材131、…と、外殻部32と、を有する。
【0072】
複数の磁路部材131は、外殻部32にそれぞれ固定され、外殻部32と一体的に動く。具体的には、各磁路部材131は、
図8にも示されるように、一対の磁極部1310、1310と、接続部1311とをそれぞれ有し、例えば、軟鉄等の透磁率の高い素材(軟磁性材料)によって形成されている。各磁極部1310は、中立位置のときに、第1磁極面222との間にギャップが設けられた状態で第1磁極面222に対して平行な第2磁極面312をそれぞれ有する。本実施形態の磁極部1310は、第2磁極面312が一方の面を構成する略円板状の部材である。接続部1311は、中立位置のときに、軸部材1220両端の各第1磁極面222と対向する(換言すると、軸部材1220を軸心方向から挟むように配置された)一対の磁極部1310、1310同士を接続する。本実施形態の各接続部1311は、他の接続部1311と接触しないように円弧形状に延びている。このため、磁路部材131、131同士は、磁気的に絶縁されている。
【0073】
このように構成される磁路部材131は、中立位置のときに磁極部1310、1310間に位置する軸部材1220に取り付けられた2つの励磁コイル21、21が励磁することによって前記軸部材1220と共に磁化される。これにより、励磁電流の流れる方向と直交する励磁コイル21、21の断面の周囲を囲むような磁気回路(閉じた磁気回路)35を前記軸部材1220と共同して形成する(
図8参照)。本実施形態では、軸部材1220の両端部に取り付けられた2つの励磁コイル21、21を一緒に囲むように閉じた磁気回路35であり、軸部材1220毎に前記磁気回路35が形成される。即ち、本実施形態では、2つの磁気回路35、35が形成される。尚、
図8では、磁気回路35の説明の便宜上、一方の軸部材1220と、固定部材1222とを省略している。
【0074】
制御部118は、励磁コイル21に供給する励磁電流を軸部材1220毎に調整可能な点以外は、第1実施形態の制御部18と同様に構成される。軸部材1220毎に励磁コイル21に供給する励磁電流の大きさを変えることで、例えば、一方の軸部材1220の軸心方向に操作レバー12を倒したときの力覚量と、他方の軸部材1220の軸心方向に操作レバー12を倒したときの力覚量とを、異ならせることができる。
【0075】
以上の操作装置110によれば、第1実施形態の操作装置10と同様に、永久磁石を用いなくても、操作レバー12によってロータ部130を第1仮想球面225に沿った方向に回転操作したときに各第1磁極面222と、これに対応する第2磁極面312と、の間にそれぞれ働く磁気吸引力を利用して、操作レバー12に対して操作方向と逆向きのトルクを力覚として付与することができる。
【0076】
また、操作装置110では、予定された電流より大きな励磁電流が励磁コイル21に供給される電流暴走時においても、ロータ部130には、各第2磁極面312が正面位置に戻る方向のトルクしか生じないため、各第2磁極面312が正面位置にそれぞれ戻ったときの位置(中立位置)に操作レバー12を停止させることができる。即ち、電流暴走時においても、意図しない方向に操作レバー12が動くのを防ぐことができる。
【0077】
しかも、本実施形態の操作装置110によれば、軸部材1220毎に閉じた磁気回路35が形成されるため、軸部材1220毎に励磁コイル21に供給する励磁電流の大きさを変えて磁気回路毎の磁束密度を変えることで、操作レバー12を倒す方向によって力覚量を異ならせることができる。
【0078】
尚、本発明の力覚付与型操作装置は、第1及び第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0079】
第1及び第2実施形態では、各第1磁極面222が第1仮想球面225の一部によってそれぞれ構成され、各第2磁極面312が第2仮想球面226の一部によってそれぞれ構成されているが、この構成に限定されない。複数の第1磁極面が第1仮想球面225に沿って配置されると共に、複数の第2磁極面が第2仮想球面226に沿って配置されていてもよい。この場合、各第1磁極面とこれに対応する第2磁極面との間隔が、ステータ本体22、122に対し、ロータ部30、130が第1及び第2仮想球面225、226に沿って複数の方向に回転できるような大きさに設定される。
【0080】
第1実施形態の操作装置10では、ステータ本体22に取り付けられる励磁コイル21は1つであるが、複数であってもよい。
【0081】
第2実施形態の各軸部材1220には、励磁コイル21がそれぞれ2つずつ取り付けられているが、1つずつでもよく、3つ以上ずつでもよい。また、軸部材1220毎に取り付けられる励磁コイル21の数が異なっていてもよい。
【0082】
また、第2実施形態の操作装置110では、軸部材1220が2つであるが、3つ以上であってもよい。この場合、軸部材1220と同じ数の磁路部材131が配置される。
【0083】
また、第2実施形態の操作装置110では、各軸部材1220に取り付けられる励磁コイル21は、それぞれ同じ巻き数のコイルであるが、異なっていてもよい。この場合、各励磁コイルに供給する励磁電流の大きさを同じにしても、操作レバー12を倒す方向によって力覚量を変えることができる。