(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
1.建設機械
図1は本発明の第1の実施の形態に係る基礎情報演算装置を適用する建設機械の一例である油圧ショベルの外観構成を表す斜視図である。以下の説明において断り書きのない場合は運転席の前方(同図中では左上方向)を機体の前方とする。
【0020】
図1では本発明に係る基礎情報演算装置を適用する建設機械として油圧ショベルを例示しているが、本発明はブルドーザ等の他の種類の建設機械にも適用され得る。本実施の形態においては、油圧ショベルを適用対象とした例を説明する。概略すると、同図に示した油圧ショベルは、車体10及び作業機20を備えている。車体10は、走行体11及び車体本体12を備えている。
【0021】
走行体11は、本実施の形態では無限軌道履帯を有する左右のクローラ(走行駆動体)13a,13bを備えており、左右の走行モータ3e,3f(
図2も参照)により左右のクローラ13a,13bをそれぞれ駆動することで走行する。走行モータ3e,3fには例えば油圧モータが用いられる。
【0022】
車体本体12は、走行体11上に旋回可能に設けた旋回体である。車体本体12の前部(本実施の形態では前部左側)には、操作者が搭乗する運転室14が設けられている。車体本体12における運転室14の後側には、エンジンや油圧駆動装置等を収容した動力室15が、最後部には機体の前後方向のバランスを調整するカウンタウェイト16が搭載されている。車体本体12を走行体11に対して連結する旋回フレーム(不図示)には旋回モータ3d(
図2参照)が設けられており、この旋回モータ3dによって走行体11に対して車体本体12が旋回駆動される。旋回モータ3dには例えば油圧モータが用いられる。
【0023】
作業機20は、車体本体12の前部(本実施の形態では運転室14の右側)に設けられている。作業機20は、ブーム21a、アーム21b、及びバケット21cを備えた多関節型の作業装置である。ブーム21aは、水平左右に延びるピン(不図示)によって車体本体12のフレームに連結され、ブームシリンダ3aによって車体本体12に対して上下に回動する。アーム21bは、水平左右に延びるピン(不図示)によってブーム21aの先端に連結され、アームシリンダ3bによってブーム21aに対して回動する。バケット21cは、水平左右に延びるピン(不図示)によってアーム21bの先端に連結され、バケットシリンダ3cによってアーム21bに対して回動する。ブームシリンダ3a、アームシリンダ3b及びバケットシリンダ3cには、例えば油圧シリンダが用いられる。このような構成によって前後方向に延びる鉛直面内で作業機20は俯仰動作する。俯仰動作する作業機20の軌跡を含む平面(本実施の形態では前後方向に延びる鉛直面)を「動作平面」と記載する。
【0024】
また、油圧ショベルには、位置や姿勢に関する情報を検出する検出器が適所に設けられている。例えば、ブーム21a、アーム21b及びバケット21cの各回動支点には、それぞれ角度検出器8a−8cが設けられている。角度検出器8a−8cは、作業機20の位置と姿勢に関する情報を検出する姿勢検出器として用いられ、それぞれブーム21a、アーム21b及びバケット21cの回動角を検出する。また、車体本体12には傾斜検出器8d、測位装置9a,9b、無線機9c(
図2等参照)、基礎情報演算装置30(
図2等参照)、領域制限掘削制御装置40(
図2等参照)が備えられている。傾斜検出器8dは、車体本体12の前後方向の傾斜を検出する傾斜検出手段として用いられる。測位装置9a,9bには例えばRTK−GNSS(Real Time Kinematic - Global Navigation Satellite System)が用いられ、測位装置9a,9bによって車体本体12の位置情報が取得される。無線機9cは、基準局GNSS(不図示)からの補正情報を受信するものである。基礎情報演算装置30及び領域制限掘削制御装置40については後述する。
【0025】
2.油圧駆動装置
図2は
図1に示した油圧ショベルに備えられた油圧駆動装置を基礎情報演算装置30及び領域制限掘削制御装置40とともに示す図である。説明済みのものについては、同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0026】
図2に示した油圧駆動装置は、油圧ショベルの被駆動部材を駆動する装置であって動力室15に収容されている。被駆動部材には、作業機20(ブーム21a、アーム21b及びバケット21c)、及び車体10(クローラ13a,13b及び車体本体12)が含まれる。この油圧駆動装置は、油圧アクチュエータ3a−3f、油圧ポンプ1、操作装置4a−4f、コントロールバルブ5a−5f、リリーフ弁6等を含む。
【0027】
油圧アクチュエータ3a−3fは、それぞれブームシリンダ3a、アームシリンダ3b、バケットシリンダ3c、旋回モータ3d、走行モータ3e,3fである。これら油圧アクチュエータ3a−3fは、油圧ポンプ1から吐出される圧油により駆動される。
【0028】
油圧ポンプ1はエンジン(図示せず)により駆動される。油圧ポンプ1から吐出された圧油は吐出配管2aを流れ、コントロールバルブ5a−5fを介してそれぞれ油圧アクチュエータ3a−3fに供給される。油圧アクチュエータ3a−3fからの各戻り油は、それぞれコントロールバルブ5a−5fを介して戻り油配管2bに流れ込んでタンク7に戻される。吐出配管2aの最高圧力を規制するのがリリーフ弁6である。
【0029】
操作装置4a−4fは、それぞれ油圧アクチュエータ3a−3fに対応する電気レバー装置であり、運転室14(
図1参照)に備えられている。操作レバー4a−4fからの操作信号(電気信号)は領域制限掘削制御装置40に入力され、コントロールバルブ5a−5fを駆動する指令信号(電気信号)に変換される。コントロールバルブ5a−5fは、領域制限掘削制御装置40からの指令信号をパイロット圧に変換する電気油圧変換手段(例えば比例電磁弁)を両端に備えた電気・油圧操作方式の弁である。これらコントロールバルブ5a−5fは、それぞれ操作装置4a−4fの操作を基に領域制限掘削制御装置40から入力される指令信号によって切換制御され、油圧アクチュエータ3a−3fに供給される圧油の流量及び方向を制御する。
【0030】
領域制限掘削制御装置40は、基本的な機体制御機能の他、領域制限掘削制御機能を備えたコントローラである。基本的な機体制御機能とは、操作装置4a−4fの操作に応じてコントロールバルブ5a−5fに指令信号を出力する機能である。領域制限掘削制御機能とは、操作装置4a−4fからの操作信号に加え、前述した角度検出器8a−8c及び傾斜検出器8dの信号を基に、掘削目標面を越えて掘削しないように作業機20の油圧アクチュエータ3a−3cを制御し、作業機20の動作領域を制限する機能である。領域制限掘削制御装置40には、基礎情報演算装置30が接続されていて、領域制限掘削制御の基礎情報が基礎情報演算装置30から入力される。
【0031】
3.基礎情報演算装置
図3は領域制限掘削制御装置40、表示装置38及び基礎情報演算装置30のブロック図である。説明済みのものについては、同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0032】
基礎情報演算装置30は、測位装置9a,9b及び無線機9cから入力される信号を基に、領域制限掘削制御の基礎情報を演算し領域制限掘削制御装置40に出力するコントローラである。この基礎情報演算装置30は、入力ポート31、位置姿勢演算装置32、目標面記憶装置33、二次元情報抽出装置34、特徴点情報送信装置35、記憶装置36及び通信ポート37を備えている。
【0033】
入力ポート31は、測位装置9a,9bで受信した現在位置情報、及び無線機9cで受信した補正情報(位置情報の補正値)を入力する。通信ポート37は、領域制限掘削制御装置40及び表示装置38との間で情報を授受する。
【0034】
位置姿勢演算装置32は、車体本体12上の二点(例えば測位装置9a,9bの位置)の位置情報を基に車体本体12の現在の位置や向き等を演算する。
【0035】
目標面記憶装置33は、掘削目標面の三次元位置情報を格納している。掘削目標面とは、油圧ショベルで掘削形成する(造形する)目標地形のことをいう。掘削目標面の三次元位置情報とは、掘削目標面をポリゴンで表した地形データに位置データを付した情報をいう。この三次元位置情報は予め作成されて目標面記憶装置33に記憶される。
【0036】
二次元情報抽出装置34は、目標面記憶装置33から読み出した掘削目標面の三次元位置情報、並びに測位装置9a,9b及び無線機9cから入力された油圧ショベルの現在位置情報を基に、作業装置20の動作平面上における基準面の二次元情報を抽出する。基準面とは、掘削目標面そのものをいう場合の他、掘削目標面を基に演算した面をいう場合もある。掘削目標面を基に演算した面とは、掘削目標面を設定距離だけシフトさせた面や設定角度だけ傾斜させた面等である。掘削目標面をシフト及び傾斜させた面も掘削目標面を基に演算した面に含まれる。基準面の二次元情報とは、油圧ショベルの前方の所定領域における作業機20の動作平面と基準面との交線又はこの交線を基に演算した線をいう。交線を基に演算した線とは、交線を設定距離だけシフトさせた線や設定角度だけ傾斜させた線等である。交線をシフト及び傾斜させた線も交線を基に演算した線に含まれる。以下、これら交線又は交線に基づく線を基準線と記載する。
【0037】
特徴点情報送信装置35は、二次元情報抽出装置34で抽出した上記基準線上の複数の特徴点の情報(後述)を、領域制限掘削制御の基礎情報として通信ポート37を介して領域制限掘削制御装置40に送信する。特徴点情報送信装置35により抽出される特徴点の詳細については後述する。
【0038】
記憶装置36は、油圧ショベルの各種寸法データや各種演算に使用する定数、プログラム等を格納した領域の他、位置姿勢演算装置32や二次元情報抽出装置34等の演算値等を記憶する領域を備えている。
【0039】
4.表示装置
基礎情報演算装置30及び領域制限掘削制御装置40には表示装置38が接続されている。この表示装置38は、基礎情報演算装置30や領域制限掘削制御装置40からの表示信号を基に情報を表示する装置であり、基礎情報演算装置30や領域制限掘削制御装置40に対する設定や指示をしたりする操作部を備えている。この表示装置38はタッチパネルであって表示部が操作部を兼ねているが、機械式のボタンやレバー等によって各種操作をする装置を用いることもできる。
【0040】
5.領域制限掘削制御装置
領域制限掘削制御装置40は、入力ポート41、特徴点情報受信装置42、記憶装置43、指令信号演算装置44、通信ポート45及び出力ポート46を備えている。
【0041】
入力ポート41は、操作装置4a−4fからの操作信号、角度検出器8a−8c及び傾斜検出器8dからの検出信号を入力する。特徴点情報受信装置42は、通信ポート45を介して基礎情報演算装置30から入力される基礎情報を受信する。記憶装置43は、作業機20の動作制御に関するプログラムや定数を格納している。指令信号演算装置44は、記憶装置43から読み出したプログラムに従って、操作装置4a−4fからの操作信号、角度検出器8a−8c及び傾斜検出器8d、基礎情報演算装置30から入力された基礎情報を基にコントロールバルブ5a−5fに対する指令信号を演算し、出力ポート46を介してコントロールバルブ5a−5fに指令信号を出力する。その結果、掘削目標面を越えて掘削しない範囲で操作に応じて作業装置20が動作する。領域制限掘削制御については適宜公知技術が適用できる。
【0042】
6.特徴点
図4は本実施の形態において特徴点情報送信装置35で抽出される上記特徴点を例示した図である。説明済みのものについては、同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0043】
図4に示すように、まず油圧ショベルに対して予め設定した基準点Oから作業機20の動作平面に沿って前方に延ばした軸をX座標軸、基準点から動作平面に沿って上方に延ばした軸をZ座標軸とする。油圧ショベルの姿勢によらず、X座標軸は常に基準点Oから動作平面に沿って水平前方に延び、Z座標軸は基準点Oから動作平面に沿ってX座標軸に直交する方向に延びる。基準点OはXZ座標系の原点である。ここで、基準点Oとは、油圧ショベルに対して設定した任意の一点又はこの任意の一点に基づいて演算された点をいう。任意の一点に基づいて演算された点とは、任意の一点に対して予め設定された位置関係にある点等である。本実施の形態では、例えばブーム21aの基部の支点を基準点Oとするが、ブーム21aの基部の支点と一定の位置関係にある点等も基準点Oとなり得る。従って、油圧ショベル上の点以外も基準点Oとなり得る。
【0044】
同図に示した線分Lは二次元情報抽出装置34で抽出された上記基準線(二次元情報)である。以下、線分Lを基準線Lと呼び替える。この基準線Lは、作業機20の動作平面で切った目標地形断面の外形線又はこの外形線と一定の関係にある線に等しい。
【0045】
特徴点情報送信装置35が抽出する特徴点P1,P2,・・・Pnは、X座標が一定間隔の基準線L上の複数の点である。特徴点P1のX座標は基準点OのX座標(つまり0)である。特徴点P1,P2,・・・PnのX座標の間隔ΔXは、特に限定されないが例えば20cm程度とすることができる。特徴点情報送信装置35から領域制限掘削制御装置40に送信される特徴点情報は、これら特徴点P1,P2,・・・PnのZ座標のみである。
【0046】
図5は本実施の形態において基礎情報演算装置30から領域制限掘削制御装置40に送信される特徴点情報の一態様を表した模式図である。
【0047】
基礎情報演算装置30から領域制限掘削制御装置40の通信にCAN(Controller Area Network)を用いた場合、8バイトの情報が1メッセージとして送信される。1つの位置情報に2バイトを要するため、1メッセージ当たり4つの位置情報が含まれる。具体例を説明すると、
図5に示したメッセージID−1には特徴点P1−P4のZ座標Z1−Z4が、メッセージID−2には特徴点P5−P8のZ座標Z5−Z8が含まれている。特徴点P1,P2・・・PnのX座標は予め設定されていて既知であるため、領域制限掘削制御装置40においては特徴点P1,P2・・・PnのZ座標を受信することで、特徴点P1,P2・・・PnのXZ座標が特定される。
【0048】
なお、
図4において作業機20による掘削動作のX座標軸方向の範囲をRとして、掘削動作範囲RをX座標軸方向に設定数nで等分した場合、各区分のX座標軸方向の寸法を間隔ΔXとすると、掘削動作範囲Rによって間隔ΔXは変化するが、特徴点の数はnに定まり送信データ数は一定になる。
【0049】
7.基礎情報の演算手順
図6は基礎情報演算装置30による基礎情報の演算及び送信の手順を表すフローチャートである。
【0050】
・スタート
運転室14にオペレータが乗り込んで電源を入れると、基礎情報演算装置30に電源が投入され、所定の初期処理の後、
図6の手順が開始される。基礎情報演算装置30は、同図の手順(スタートからエンドまで)を一定周期(例えば200ms)で繰り返し実行する。
【0051】
・ステップS100
ステップS100に手順を移すと、基礎情報演算装置30は、測位装置9a,9bからの位置情報、及び無線機9cからの補正情報を基に、位置姿勢演算装置32によって車体本体12上の二点(ここでは測位装置9a,9bの位置)のそれぞれの正確な三次元現在位置情報(X,Y,Z)を演算する。Y座標軸は、XZ座標軸に(作業機20の動作平面に)基準点Oで直交する座標軸である。位置姿勢演算装置32で演算された測位装置9a,9bの現在位置情報は、記憶装置36に格納される。
【0052】
・ステップS110
ステップS110に手順を移すと、基礎情報演算装置30は、測位装置9a,9bの三次元位置情報、及び車体本体12上における測位装置9a,9bの取り付け位置の情報(既知)を記憶装置36から読み出し、位置姿勢演算装置32によって基準点O(本実施の形態ではブーム21aの基端側の支点位置)の現在位置の三次元情報を演算する。基準点Oと測位装置9a,9bの位置関係は既知である。位置姿勢演算装置32で演算された基準点Oの現在位置情報は、記憶装置36に格納される。
【0053】
・ステップS120
ステップS120に手順を移すと、基礎情報演算装置30は、ステップS100で演算した測位装置9a,9bの三次元位置情報、及び測位装置9a,9bの取り付け位置情報を記憶装置36から読み出し、位置姿勢演算装置32によって車体本体12の姿勢を演算する。車体本体12の姿勢情報には、車体の向き及び傾きが含まれる。車体本体12の向きは、例えば運転席の正面方向である。車体本体12の傾きには、車体本体12の前後及び左右の傾きが含まれる。車体本体12の前後の傾きは、領域制限掘削制御装置40を介して基礎情報演算装置30に入力される傾斜検出器8dからの検出信号を基に、位置姿勢演算装置32により演算される。また、左右の傾きは、測位装置9a,9bの三次元位置情報、及び測位装置9a,9bの取り付け位置情報を基に、前後の傾きと同様、位置姿勢演算装置32により演算される。位置姿勢演算装置32で演算された車体本体12の姿勢情報は、記憶装置36に格納される。
【0054】
・ステップS130
ステップS130に手順を移すと、基礎情報演算装置30は、目標面記憶装置33から掘削目標面の三次元位置情報を読み込む。
【0055】
・ステップS140
ステップS140に手順を移すと、基礎情報演算装置30は、ステップS110,S120の演算結果を記憶装置36から読み出し、基準点Oの位置情報、車体本体12の姿勢情報、及び掘削目標面の三次元位置情報を基に、二次元情報抽出装置34によって前述したように基準面の二次元情報として基準線を抽出する。二次元情報抽出装置34で演算された基準線の情報は、記憶装置36に格納される。
【0056】
・ステップS150
ステップS150に手順を移すと、基礎情報演算装置30は、基準線を記憶装置36から読み出し、特徴点情報送信装置35によって特徴点を抽出する。特徴点情報送信装置35は、それら特徴点の情報を領域制限掘削制御装置40への送信用の情報に加工し、記憶装置36に格納する。ここで実行する情報の加工は、
図4を用いて先に説明した特徴点P1,P2,・・・PnのZ座標(
図5参照)を演算することである。
【0057】
・ステップS160
ステップS160に手順を移すと、基礎情報演算装置30は、特徴点情報送信装置35によって、通信ポート37を介して特徴点P1,P2,・・・Pnの情報(Z座標)を領域制限掘削制御装置40へ送信する。
【0058】
・エンド
前述した通り、基礎情報演算装置30は通電している間は、ステップS160の手順を終了したら手順をステップS100に戻し、
図6の手順を繰り返し実行する。ステップS160の手順を終了した時点で電源が切られていれば、所定の終了処理を実行して停止する。
【0059】
8.効果
本実施の形態の場合、領域制限掘削制御のために基礎情報演算装置30から領域制限掘削制御装置40に送信される基礎情報は、特徴点P1,P2,・・・PnのZ座標のみである。このように基礎情報が極めて簡単で小容量であるため、基礎情報演算装置30を領域制限掘削制御装置40とは別のコントローラに分けても、領域制限掘削制御装置40に対する通信(基礎情報の受け渡し)に時間を要さず、掘削領域制限制御を高効率化することができる。また、基礎情報の通信時間が著しく短縮できるので、基礎情報の受け渡しを作業機20の動作に余裕を持って先行させることができ、領域制限掘削制御の精度を向上させることもできる。そして、領域制限掘削制御に関する基本的機能を備えた領域制限掘削制御装置40と、領域制限掘削制御に必要な基礎情報を演算する基礎情報演算装置30とを別々のコントローラに分けることができるので、領域制限掘削制御機能を有する建設機械の開発を柔軟化することができ、また開発効率の向上にも寄与する。
【0060】
(第2の実施の形態)
図7は本発明の第2の実施の形態の説明図である。説明済みのものについては、同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0061】
本実施の形態は、作業機20の掘削動作範囲R、すなわち特徴点P1,P2,・・・Pnを求める範囲を手動設定する例である。第1の実施の形態では、掘削動作範囲R(
図4参照)の設定については特に触れなかった。第1の実施の形態の場合、掘削動作範囲Rの始点(特徴点P1)のX座標は0(基準点OのX座標)、終点PnのX座標は(ΔX×(n−1))であり、作業機20を前方に一杯に伸ばした場合のバケット21cの先端位置を終点Pnとした場合、特徴点P1,P2,・・・Pnの間隔ΔXは最大となる。その一方で、作業機20の可動範囲を全て使用して掘削作業をすることは一般的には少なく、現実には作業機20の可動範囲を部分的に用いて掘削作業をする場合が多い。この場合、掘削作業に使用する可動範囲には特徴点P1,P2,・・・Pnの一部しか存在せず、掘削作業に用いられる作業機20の動作範囲における基準面の演算精度が低下する。
【0062】
そこで、本実施の形態では、特徴点情報送信装置35に対して掘削動作範囲Rを設定する設定装置を設けてある。この設定装置は別途設けても良いが、本実施の形態では表示装置38で兼ねてある。表示装置38によって掘削動作範囲R(掘削動作範囲Rの前後両端位置のX座標)が設定されると、特徴点情報送信装置35では、掘削動作範囲RをX座標軸方向に設定数nに区分するX座標が求められる。こうして特徴点情報送信装置35で求められたX座標は、特徴点P1,P2,・・・PnのX座標情報として記憶装置36に格納されるとともに、領域制限掘削制御装置40に送信され、領域制限掘削制御装置40の記憶装置43に記憶される。本実施の形態では、先に
図6で説明した基礎情報演算手順のステップS140で演算される基準線Lは設定した掘削動作範囲Rで求められ、ステップS150では掘削動作範囲Rのn個の特徴点P1,P2,・・・Pnが抽出される。その他の構成や制御手順については第1の実施の形態と同様である。
【0063】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果に加え、掘削目標面に対する造形誤差を抑制し掘削造形精度を向上させることができるという効果が得られる。実作業を考慮して掘削動作範囲Rを適当に限定することによって特徴点P1,P2,・・・Pnの間隔ΔXが狭まるからである。
【0064】
図8は表示装置38における掘削動作範囲Rの設定画面のメニュー画面の一態様を例示した図である。
【0065】
図8に示したメニュー画面51は、表示装置38の表示画面上で適宜操作して呼び出すことで表示される画面である。このメニュー画面51には、設定方法の選択を促すメッセージとともに、ボタン51a−51cが表示されている。ボタン51a,51bは設定方法を選択する選択ボタンである。ボタン51aを押すと、掘削動作範囲Rの両端を指定するマニュアル設定が選択される。ボタン51bを押すと、予め決められた複数の掘削動作範囲Rから適当なものを選択するセレクト設定が選択される。ボタン51cを押すと、前の画面(メニュー画面51を呼び出した画面)に戻る。
【0066】
図9はマニュアル設定で掘削動作範囲Rの一端を指定する画面の一態様を例示した図である。
【0067】
図9に示した画面52は、メニュー画面51でボタン51aを押した場合に表示されるマニュアル設定の最初の画面である。同図に示した画面52には、掘削動作範囲Rの一番奥(運転室14から一番離れた位置)の指定を促すメッセージとともに、ボタン52a,52bが表示されている。ボタン52aは掘削動作範囲Rの一番奥(特徴点PnのX座標)を指定するボタンであり、メッセージに従ってオペレータが想定する掘削動作範囲Rの一番奥まで作業機20を伸ばして(例えば
図7に点線で示した状態として)ボタン52aを押すと、特徴点PnのX座標が指定される。ボタン52bを押すと、メニュー画面51に戻る。
【0068】
図10はマニュアル設定で掘削動作範囲Rの他端を指定する画面の一態様を例示した図である。
【0069】
図10に示した画面53は、画面52でボタン52aを押した場合に表示されるマニュアル設定の第二の画面である。同図に示した画面53には、掘削動作範囲Rの一番手前(運転室14に一番近い位置)の指定を促すメッセージとともに、ボタン53a,53bが表示されている。ボタン53aは掘削動作範囲Rの一番手前(特徴点P1のX座標)を指定するボタンであり、メッセージに従ってオペレータが想定する掘削動作範囲Rの一番手前まで作業機20を戻して(例えば
図7に実線で示した状態として)ボタン53aを押すと、特徴点P1のX座標が指定される。特徴点P1のX座標の指定が完了したら設定が終了し、例えばメニュー画面51を呼び出した画面に戻る。ボタン53bを押すと、画面52に戻る。
【0070】
図11はセレクト設定で掘削動作範囲Rを指定する画面の一態様を例示した図である。
【0071】
図11に示した画面54は、メニュー画面51でボタン51bを押した場合に表示されるセレクト設定の画面である。同図に示した画面54には、掘削動作範囲Rの指定を促すメッセージとともに、ボタン54a−54eが表示されている。ボタン54a−54cは掘削動作範囲Rを指定するボタンであり、すぐ横に示してある参考情報(現在搭乗している機体の機種名や車格(車体サイズ))を基に、ボタン54a−54cのうち該当するものを押す。ボタン54a−54cのうちのいずれかを押すと、掘削動作範囲Rの設定が終了し、例えばメニュー画面51を呼び出した画面に戻る。適当な選択肢がない場合には、ボタン54dを押すと画面がスクロールして別のボタンが表示されるので、その中の適当なボタンを押せば掘削動作範囲Rの設定が終了する。また、ボタン54eを押すと、メニュー画面51に戻る。
【0072】
(第3の実施の形態)
図12は本発明の第3の実施の形態の説明図である。説明済みのものについては、同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0073】
本実施の形態は、基礎情報演算装置30から領域制限掘削制御装置40に送信される基準線に関する情報の他の態様を例示するものである。第1及び第2の実施の形態においては、特徴点P1,P2,・・・PnのX座標が予め定まっていて、前述した基準線L上の特徴点P1,P2,・・・PnのZ座標が基礎情報演算装置30から送信させる場合を説明した。それに対し、本実施の形態において抽出される特徴点Pb1−Pb3及びPf1−Pf3は、基準線L上における作業機20とX座標の近い複数の屈曲点又はこれら屈曲点を基に演算された複数の点である。屈曲点を基に演算された複数の点とは、屈曲点と一定の位置関係にある点等であり、領域制限掘削制御に大きな影響を与えない程度に屈曲点からずれた点である。特徴点Pb1−Pb3は作業機20の特定位置(本実施の形態ではバケット21cの先端部の幅方向中央位置とする)から−X方向に近い順にとった複数の屈曲点又はその近傍の点であり、本実施の形態では3点としているが数に限定はない。同様に、特徴点Pf1−Pf3は作業機20の特定位置から+X方向に近い順にとった複数の屈曲点又はその近傍の点であり、本実施の形態では3点としているが数に限定はない。作業機20の特定位置と屈曲点の遠近は、例えばX座標の値で判断する。
【0074】
なお、特徴点Pb1−Pb3及びPf1−Pf3を求めるに際し、本実施の形態においては領域制限掘削制御装置40から角度検出器8a−8cの検出信号を入力し、作業機20の特定位置の現在位置を演算する手順を追加する必要がある。この手順は、位置姿勢演算装置32又は特徴点情報送信装置35により実行されるようにすることができる。角度検出器8a−8cからの信号が基礎情報演算装置30にも入力されるようにしても良い。
【0075】
図13及び
図14は本実施の形態における特徴点の模式図である。
【0076】
基準面の三次元情報は多角形(一般に三角形)のポリゴンを組み合わせで表現される。
図13に示したように基準面Fが平面Fa1−Fa3からなる単純な形状であって基準線L上の屈曲点の数が少ない場合、例えば作業機20のバケット21cが同図に点線で示した位置にあるとすると、図示した範囲においては、バケット21cの特定位置(例えば先端部の幅方向中央位置)から−X方向(後方側)に特徴点Pb1、+X方向(前方側)に特徴点Pf1が抽出される。
【0077】
それに対し、例えば基準面Fが
図14に示したように曲面Fb1−Fb3からなり基準線L上の屈曲点が密になると、同程度の範囲でも、バケット21cの特定位置から近い順に−X方向(後方側)に特徴点Pb1−PB3、+X方向(前方側)に特徴点Pf1−Pf3が抽出される。
【0078】
このように、抽出される特徴点の間隔は基準面Fの形状によって異なり、同程度の範囲でも特徴点の数が異なってくる。本実施の形態の場合、基礎情報演算装置30は、先に
図6で説明した基礎情報演算手順におけるステップS150において、上記のように作業機20と所定の位置関係にある特徴点Pb1−Pb3及びPf1−Pf3を抽出する。
【0079】
図15は本実施の形態において基礎情報演算装置30から領域制限掘削制御装置40に送信される特徴点情報の一態様を表した模式図である。
【0080】
前述した通り、基礎情報演算装置30から領域制限掘削制御装置40の通信にCANを用いた場合、前述したように8バイトの情報(4つの位置情報)が1メッセージとして送信される。
図15に示したメッセージID−1には特徴点Pf3,Pf2のXZ座標(X1,Z1,X2,Z2)が含まれている。第1の実施の形態と異なり、特徴点Pf3,Pf2のX座標は既知の値ではないので、本実施の形態では特徴点Pf3,Pf2のXZ座標を送信する。同様に、メッセージID−2には特徴点Pf1,Pb1のXZ座標(X3,Z3,X4,Z4)が、メッセージID−3には特徴点Pb2,Pb3のXZ座標(X5,Z5,X6,Z6)が含まれている。この基礎情報を基にして、領域制限掘削制御装置40において特徴点Pb1−Pb3及びPf1−Pf3が特定され、領域制限掘削制御が実行される。
【0081】
その他の構成や制御手順については第1の実施の形態と同様である。
【0082】
本実施の形態においては、領域制限掘削制御のために基礎情報演算装置30から領域制限掘削制御装置40に送信される基礎情報は、特徴点Pb1−Pb3及びPf1−Pf3のXZ座標のみであり、第1の実施の形態と同様に基礎情報は極めて簡単で小容量である。従って、本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0083】
また、本実施の形態においては、掘削目標面が複雑な形状であるほど特徴点Pb1−Pb3,Pf1−Pf3のX座標軸方向の間隔が自然と狭まる。掘削目標面の複雑さに対応して特徴点の間隔が狭まるので、それだけ領域制限掘削制御に供される情報の密度が高まり、地形の掘削造形精度が高まる利点がある。
【0084】
ここで、測位装置9a,9bで検出される測位装置9a,9bの位置には、測位装置9a,9bの検出値や測位装置9a,9bの取り付け位置等の誤差が含まれ得る。また、油圧ショベルの構成要素の寸法公差や製作誤差等によって、例えば作業機20の特定点の演算位置が実際の位置からずれる場合もある。これらの場合、基準点や基準線、基準面の精度が低下し、領域制限掘削制御に影響し得る。そこで、基準点、基準線又は基準面の補正態様について代表的な例を以下に順次説明する。以下の実施の形態では、ブーム21aの基端側の支点(ブーム21aの左右の幅方向の中央を通る鉛直面と回動中心軸との交点)を本来あるべき基準点とする。また、掘削目標面を基準面とする。
【0085】
(第4の実施の形態)
図16は本発明の第4の実施の形態に係る補正態様の説明図である。同図では、ブーム21aを上方から(−Z方向に)見ている。本実施の形態は基準線の補正の一例である。
【0086】
図16に示した基準点O’は、補正を実行しない場合に測位装置9a,9bの位置等から位置姿勢演算装置32によって演算される基準点である。この例においては、基準点O’が測位装置9a,9bの検出値や取り付け位置の誤差、油圧ショベルの構成要素の寸法公差や製作誤差等に起因して、本来あるべき基準点Oに対してY座標軸方向にΔYだけずれている。この場合、二次元情報抽出装置34によって基準線L’を算出するときに用いられる作業機20の動作平面が現実の動作平面に対してΔYだけオフセットするため、抽出される基準線L’も本来抽出されるべき基準線Lに対してΔYだけずれてしまう。本実施の形態はこのような場面で本来あるべき基準線Lを得る例である。
【0087】
図17は本実施の形態における修正画面の一態様を例示した図である。
【0088】
図17に示した修正画面55は基準線のY座標軸方向の修正量(オフセット量ΔYを相殺する値)を入力設定する画面であり、表示装置38(
図3参照)の表示画面上で適宜操作して呼び出すことで表示される。この修正画面55には修正量の入力を促すメッセージとともに、ボタン55a−55c、及び修正量を表示するインディケータ55dが表示されている。ボタン55a,55bを押すと修正量が増減する。例えば、ボタン55aを1回押すと修正量が所定値(例えば1mm)増大し、繰り返し押すことで所定値ずつ増大していく。また、ボタン55bを1回押すと修正量が所定値(例えば1mm)減少し、繰り返し押すことで所定値ずつ減少していく。インディケータ55dには、ボタン55a,55bの操作に伴って変化する修正量が表示され、修正量を確認しながら設定することができる。ボタン55cを押すと前画面に戻る。
【0089】
修正画面55で設定した修正量は、表示装置38から通信ポート37を介して基礎情報演算装置30に入力され、基礎情報演算装置30内の記憶装置36に記憶される。本実施の形態の場合、例えば先に
図6で説明したステップS140において、二次元情報抽出装置34は、記憶装置36に記憶された修正量を基に、抽出した基準線L’をY座標軸方向に−ΔYだけシフトさせて基準線Lを求める。これにより、本来あるべき基準線Lが得られ、領域制限掘削制御に対する基準点Oの誤差の影響を抑えることができる。
【0090】
また、本実施の形態の補正態様が効果を奏する場面は、基準点Oに対して基準点O’がずれて演算される場合に限定されない。基準点O’が基準点Oに対してずらして設定してある場合、例えば基準点O’の位置情報を油圧ショベルの車格に関わらず同一の設定とした場合等にも本補正態様は有意義である。この場合、車格の異なる個々の油圧ショベルにおいて基準点O,O’を精度良く求めておき、基準点Oに対する基準点O’の修正量を予め記憶装置36に記憶させておく。これにより、記憶装置36から読み出した修正量を基に、二次元情報抽出装置34によって基準線L’を補正して基準線Lを求めることができる。基準点O,O’から高精度に求めたオフセット量ΔYを用いることで高精度な基準線Lが得られる。
【0091】
なお、基準点O,O’のY座標にずれがない場合(ΔY=0の場合)、本補正の必要はない(言い換えれば設定修正量=0とすれば良い)。
【0092】
(第5の実施の形態)
第4の実施の形態では基準点O’のオフセット量ΔYを基に基準線L’を補正して基準線Lを求める場合を例示したが、基準点O’を基準点Oに補正して基準線Lを求めることも考えられる。修正画面は第4の実施の形態と同様のものを用いることができ、修正画面55で設定した修正量は記憶装置36に記憶される。本実施の形態の場合、例えば先に
図6で説明したステップS110において、位置姿勢演算装置32は、記憶装置36に記憶された修正量を基に、演算した基準点O’の位置情報を補正して基準点Oの位置情報を求める。その結果、ステップS140で二次元情報抽出装置34によって基準点Oを通る動作平面と基準面とから基準線Lが抽出される。これにより、本来あるべき基準線Lが得られ、領域制限掘削制御に対する基準点Oの誤差の影響を抑えることができる。本実施の形態の場合、基準線L’は抽出されない。
【0093】
また、第4の実施の形態と同様、本実施の形態の補正態様が効果を奏する場面は、基準点Oに対して基準点O’がずれて演算される場合に限定されない。基準点O’が基準点Oに対してずらして設定してある場合、例えば基準点O’の位置情報を油圧ショベルの車格に関わらず同一の設定とした場合等にも本補正態様は有意義である。この場合、車格の異なる個々の油圧ショベルにおいて基準点O,O’を精度良く求めておき、基準点Oに対する基準点O’のオフセット量ΔYを予め記憶装置36に記憶させておく。これにより、記憶装置36から読み出したオフセット量ΔYを基に、位置姿勢演算装置32によって基準点O’を補正して基準点Oを求めることができる。基準点O,O’から高精度に求めたオフセット量ΔYを用いることで高精度な基準線Lが得られる。
【0094】
なお、基準点O,O’のY座標にずれがない場合(ΔY=0の場合)、本補正の必要はない(言い換えれば設定修正量=0とすれば良い)。
【0095】
(第6の実施の形態)
本実施の形態は、Y座標軸方向のみではなくXYZ方向に三次元的に補正をする例である。即ち、第4及び第5の実施の形態でΔYを設定したのと同じ要領で基準点O,O’のXYZ座標の各オフセット量ΔX,ΔY,ΔZを予め設定しておけば、基準点O’を基準点Oに三次元的に補正する、或いは基準線L’を基準線Lに三次元的に補正することができる。本実施の形態では、第3の実施の形態で説明した特定点の補正に本補正態様を適用した例を説明する。
【0096】
図18は本発明の第6の実施の形態に係る補正態様の説明図である。同図では、ブーム21aを左側から(−Y方向に)見ている。本実施の形態も基準点の補正の一例である。説明済みのものについては、同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0097】
図18に示した特定点Po’は、補正を実行しない場合において、第3の実施の形態で説明したように測位装置9a,9bの位置等から位置姿勢演算装置32又は二次元情報抽出装置34によって演算される点である。本実施の形態においては、この特定点Po’が測位装置9a,9bの検出値や取り付け位置の誤差、油圧ショベルの構成要素の寸法公差や製作誤差等に起因して、作業機20の先端上の本来あるべき特定点Poに対し、X座標軸方向にΔX、Y座標軸方向にΔY、Z座標軸方向にΔZだけずれている。ΔX,ΔY,ΔZをXYZ成分とする三次元的なオフセット量をΔSとする。特定点Po’は、第3の実施の形態において特徴点Pb1−Pb3及びPf1−Pf3の抽出の基礎となるので、特定点Po’に誤差があると特徴点Pb1−Pb3及びPf1−Pf3の抽出精度が低下し、領域制限掘削制御に影響し得る。そこで、本実施の形態では特定点Po’を特定点Poに三次元的に補正する。
【0098】
図19は本実施の形態における修正画面の一態様を例示した図である。
【0099】
図19示した修正画面56は特定点のオフセット量ΔS(各座標軸方向のオフセット量ΔX,ΔY,ΔZ)を修正量として入力設定する画面であり、表示装置38(
図3参照)の表示画面上で適宜操作して呼び出すことで表示される。この修正画面56には、修正量の入力を促すメッセージとともに、ボタン56a−56f,56j、及び修正量を表示するインディケータ56g−56iが表示されている。
図17に示した修正画面55と同様、ボタン56a−56fを押すと修正量が増減する。例えば、ボタン56aを1回押すとX座標軸方向の修正量が所定値(例えば1mm)増大し、繰り返し押すことで所定値ずつ増大していく。また、ボタン56bを1回押すとX座標軸方向の修正量が所定値(例えば1mm)減少し、繰り返し押すことで所定値ずつ減少していく。インディケータ56gには、ボタン56a,56bの操作に伴って変化するX座標軸方向の修正量が表示され、修正量を確認しながら設定することができる。同様に、インディケータ56hにはボタン56c,56dの操作に伴って変化するY座標軸方向の修正量が、インディケータ56iにはボタン56e,56fの操作に伴って変化するZ座標軸方向の修正量がそれぞれ表示される。ボタン56jを押すと前画面に戻る。
【0100】
修正画面56で入力された修正量は、基礎情報演算装置30の記憶装置36に記憶され、例えば位置姿勢演算装置32又は二次元情報抽出装置34は、記憶装置36から読み出したオフセット量ΔS(ΔX,ΔY,ΔZ)を基に、演算した特定点Po’を補正して現実の特定点Poを求める。これにより、特徴点Pb1−Pb3及びPf1−Pf3等の抽出精度が向上し、領域制限掘削制御の精度を向上させることができる。
【0101】
また、本実施の形態では特定点Po’の補正を例示したが、前述した通り基準点O,O’間にオフセット量ΔS(ΔX,ΔY,ΔZ)が生じた場合にも適用可能である。基準点Oは、前述した通りブーム21aの基部の支点等である。本実施の形態を基準点O’の補正に適用する場合、第4及び第5の実施の形態と同様、本補正態様が効果を奏する場面は、基準点Oに対して基準点O’がずれて演算される場合に限定されない。基準点O’が基準点Oに対してずらして設定してある場合、例えば基準点O’の位置情報を油圧ショベルの車格に関わらず同一の設定とした場合等にも本補正態様は有意義である。
【0102】
なお、特定点Po’,Po(又は基準点O,O’)のXYZ各座標にずれがない場合(ΔX=ΔY=ΔZ=0の場合)、本補正の必要はない(言い換えれば設定修正量=0とすれば良い)。
【0103】
(第7の実施の形態)
図20は本発明の第7の実施の形態に係る補正態様の説明図である。同図では、ブーム21aを上方から(−Z方向に)見ている。本実施の形態も基準線の補正の一例である。説明済みのものについては、同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0104】
図20に示した基準線L’は、補正を実行しない場合に測位装置9a,9bの位置等から二次元情報抽出装置34によって演算される基準線である。この基準線L’は、測位装置9a,9bの検出値や取り付け位置の誤差、油圧ショベルの構成要素の寸法公差や製作誤差等に起因して、作業機20の現実の動作平面に沿った本来あるべき基準線Lに対して基準点Oを中心にしてΔθだけ傾いている。この場合、作業機20の現実の動作平面と演算上の動作平面との間にオフセット量Δθが存在することとなり、この誤差が領域制限掘削制御に影響し得る。本実施の形態はこのような場面で基準線L’の傾きを補正して基準線Lを得る例である。
【0105】
図21は本実施の形態における修正画面の一態様を例示した図である。
【0106】
図21示した修正画面57は基準線の回転方向の修正量(オフセット量Δθを相殺する値)を入力設定する画面であり、表示装置38(
図3参照)の表示画面上で適宜操作して呼び出すことで表示される。この修正画面57には修正量の入力を促すメッセージとともに、ボタン57a−57c、及び修正量を表示するインディケータ57dが表示されている。ボタン57a,57bを押すと修正量が増減する。例えば、ボタン57aを1回押すと修正量が所定値(例えば1度)増大し、繰り返し押すことで所定値ずつ増大していく。また、ボタン57bを1回押すと修正量が所定値(例えば1度)減少し、繰り返し押すことで所定値ずつ減少していく。インディケータ57dには、ボタン57a,57bの操作に伴って変化する修正量が表示され、修正量を確認しながら設定することができる。ボタン57cを押すと前画面に戻る。
【0107】
修正画面57で設定した修正量は、表示装置38から通信ポート37を介して基礎情報演算装置30に入力され、基礎情報演算装置30内の記憶装置36に記憶される。本実施の形態の場合、例えば先に
図6で説明したステップS140において、二次元情報抽出装置34は、記憶装置36に記憶された修正量を基に、抽出した基準線L’をΔθだけ回転させて基準線Lを求める。これにより、現実の作業機20に対して本来あるべき基準線Lが得られ、領域制限掘削制御に対する基準線L’の誤差の影響を抑えることができる。
【0108】
なお、基準線L,L’の傾きにずれがない場合(Δθ=0の場合)、本補正の必要はない(言い換えれば設定修正量=0とすれば良い)。
【0109】
また、本実施の形態においては、抽出された基準線L’の傾きを補正する場合を例に挙げて説明したが、動作平面の傾きを補正して基準線Lを求めることも考えられる。
【0110】
(第8の実施の形態)
図22は本発明の第8の実施の形態に係る補正態様の説明図である。同図では、油圧ショベルを左側から(−Y方向に)見ている。本実施の形態は基準面の補正の一例である。説明済みのものについては、同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0111】
図22に示した基準点O’は、各種誤差等に起因して基準点Oに対して三次元的にオフセット量ΔSだけ斜め上にずれている。この場合、作業機20の実際の軌跡と演算上の軌跡との間にオフセット量ΔSに起因する誤差が生じ得る。具体的には、現実の作業機20の基部支点が基準点O’よりも低位置にあるので、演算上の掘削位置よりも深く掘削してしまう。そこで、本実施の形態では、基準点Oに対する基準点O’のずれに合わせて、基礎情報演算装置30の目標面記憶装置33に記憶された掘削目標面Faをオフセット量ΔSだけ斜め上に移動させた基準面Fbを演算する。これにより基準面Fbが高位置にシフトするので、結果として作業機20の掘削地形が元の掘削目標面Faに倣うことになり、基準点O’のずれに起因する作業機20の軌跡の誤差が相殺される。
【0112】
修正画面については
図19に例示した画面を用いることができる。この修正画面で設定した修正量は、基礎情報演算装置30の記憶装置36に記憶され、例えば二次元情報抽出装置34は、記憶装置36から読み出したオフセット量ΔS(ΔX,ΔY,ΔZ)を基に、掘削目標面FaをΔSだけシフトさせて基準面Fbを求める。二次元情報抽出装置34は、演算した基準面Fbを基に基準線Lを抽出する。これにより、領域制限掘削制御の精度低下を抑制することができる。
【0113】
なお、基準点O,O’のXYZ各座標にずれがない場合(ΔX=ΔY=ΔZ=0の場合)、本補正の必要はない(言い換えれば設定修正量=0とすれば良い)。
【0114】
また、第4及び第5の実施の形態と同様、本実施の形態に係る補正態様が効果を奏する場面は、基準点Oに対して基準点O’がずれて演算される場合に限定されない。基準点O’が基準点Oに対してずらして設定してある場合、例えば基準点O’の位置情報を油圧ショベルの車格に関わらず同一の設定とした場合等にも本補正態様は有意義である。
【0115】
最後に、以上説明した各実施の形態は適宜組み合わせて実施できることは言うまでもない。