(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
生体組織に対し、第一の超音波と、該第一の超音波によって生じた生体組織における物体の移動を検出するための第二の超音波とを超音波プローブから交互に繰り返し送信させる送信制御部であって、繰り返し送信される前記第一の超音波の送信パラメータの値であって、前記物体の動きと関係する送信パラメータの値が、互いに異なっている送信制御部と、
前記第一の超音波に対応する前記第二の超音波の送信毎に、該第二の超音波の送信によって得られたエコー信号に基づいて、前記物体の移動の有無を判定する判定部と、
該判定部により前記物体の移動が有ると判定された場合における前記第一の超音波の送信パラメータの値又は前記判定部により前記物体の移動が無いと判定されなおかつ前記第一の超音波の送信パラメータの値が該第一の超音波の送信を終了する所定値に達した場合における該所定値に応じた画像を表示させる表示画像制御部と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置。
前記判定部により前記物体の移動が有ると判定された場合における前記第一の超音波の送信パラメータの値及び前記判定部により前記物体の移動が無いと判定されなおかつ前記第一の超音波の送信パラメータの値が前記第一の超音波の送信を終了する所定値に達した場合における該所定値のうち少なくともいずれかが複数記憶される記憶部を備え、
前記表示画像制御部は、前記記憶部に記憶された複数の値に基づいて前記画像を表示させる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について説明する。
図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ(probe)2、送受信ビームフォーマ3、エコーデータ処理部4、表示制御部5、表示部6、操作部7、制御部8、記憶部9を備える。
【0012】
前記超音波プローブ2は、被検体の生体組織に対して超音波を送信し、そのエコー信号を受信する。この超音波プローブ2によって送信される超音波には、第一の超音波と、この第一の超音波によって生じた生体組織の動きを検出する第二の超音波とが含まれる。詳細は後述する。
【0013】
前記送受信ビームフォーマ3は、前記制御部8からの制御信号に基づいて、前記超音波プローブ2を駆動させて所定の送信パラメータ(parameter)を有する前記第一の超音波及び前記第二の超音波を送信させる。また、送受信ビームフォーマ3は、超音波のエコー信号について、整相加算処理等の信号処理を行なう。前記送受信ビームフォーマ3及び前記制御部8は、本発明における送信制御部の実施の形態の一例である。
【0014】
前記エコーデータ処理部4は、
図2に示すように、Bモード処理部41及びドプラ(doppler)処理部42を有する。前記Bモード処理部41は、前記送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに対し、対数圧縮処理、包絡線検波処理等のBモード処理を行い、Bモードデータを作成する。
【0015】
また、前記ドプラ処理部42は、前記送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに対してドプラ処理を行なってドプラデータを作成する。ドプラ処理は、直交検波処理やフィルタ処理等を含む。
【0016】
前記ドプラ処理部42は、例えばカラードプラ(color doppler)画像を作成するためのカラードプラ処理を行なう。ただし、前記ドプラ処理部42は、パルスドプラ(pulse doppler)法による画像を作成するためのパルスドプラ処理を行なってもよいし、連続波ドプラ法による画像を作成するための連続波ドプラ処理を行なってもよい。
【0017】
前記Bモード処理部41及び前記ドプラ処理部42は、前記第二の超音波の送信によって得られたエコーデータに基づいて、前記Bモード処理及び前記ドプラ処理を行なう。
【0018】
前記表示制御部5は、
図3に示すように、スキャンコンバータ(scan converter)51、判定部52、表示画像制御部53を有する。前記スキャンコンバータ51は、前記Bモードデータを走査変換してBモード画像データを作成する。
【0019】
前記判定部52は、前記ドプラデータに基づいて、第一の超音波の送信によって生体組織における物体の移動の有無を判定する。詳細は後述する。前記判定部52は、本発明における判定部の実施の形態の一例である。
【0020】
前記表示部6は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイなどである。前記操作部7は、特に図示しないが、操作者が指示や情報を入力するためのキーボード(keyboard)や、トラックボール(trackball)等のポインティングデバイス(pointing device)などを含んで構成されている。
【0021】
前記制御部8は、特に図示しないがCPU(Central Processing Unit)を有して構成される。この制御部8は、前記記憶部9に記憶された制御プログラムを読み出し、前記超音波診断装置1の各部における機能を実行させる。前記超音波診断装置1は、コンピュータとしての構成を備えている。
【0022】
前記記憶部9は、HDD(Hard Disk Drive:ハードディスクドライブ)や、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の半導体メモリ(Memory)である。
【0023】
次に、本例の超音波診断装置1の作用について
図4のフローチャートに基づいて説明する。この
図4のフローチャートは、被検体の生体組織における観察対象の組織性状を判別する画像を表示させるためのフローチャートである。本例では、組織性状の判別は、乳房において、腫瘤であるか濃縮性の嚢胞であるかの判別であり、また嚢胞の濃縮度の判別である。また、組織性状の判別は、肝臓において、腫瘤であるか肝血管腫であるかの判別であってもよい。
【0024】
先ず、ステップS1では、操作者は、Bモード画像を表示させるため、被検体の体表面に前記超音波プローブ2を当接し、この超音波プローブ2により、生体組織に対して超音波の送受信を行なう。これにより、
図5に示すように、前記表示部6にBモード画像BIが表示される。また、操作者は、前記操作部7を用いて、前記Bモード画像BIに検出領域Rを設定する。
【0025】
前記検出領域Rは、後述するように第一の超音波の送信によって生体組織において物体の移動の有無を検出する対象となる領域である。前記検出領域Rは、診断を行なう者が、組織性状を判別したい対象(観察対象)に設定される。
【0026】
次に、ステップS2では、操作者は、物体の移動の検出モードの入力を前記操作部7において行なう。これにより、前記制御部8は、生体組織に対して前記超音波プローブ2から第一の超音波W1を送信させる。この第一の超音波W1は、所定の送信パラメータの値を有するパルス(pulse)波である。前記第一の超音波W1は、そのビーム(beam)が、前記観察対象又は観察対象の近傍を通るように送信される。
【0027】
次に、ステップS3では、前記制御部8は、前記ステップS2において前記第一の超音波W1が送信された生体組織に対して、前記超音波プローブ2から第二の超音波W2を送信させる。そして、前記超音波プローブ2は、前記第二の超音波W2のエコー信号を受信する。この第二の超音波W2は、カラードプラモードの超音波である。前記第二の超音波W2の送受信は、前記検出領域Rを含むように行われる。このステップS3では、前記第二の超音波W2の送信及びそのエコー信号の受信が、一フレーム分行われる。すなわち、このステップS3では、前記第二の超音波の送受信が複数回行なわれる。
【0028】
次に、ステップS4では、前記ドプラ処理部42は、前記ステップS3で得られたエコー信号に基づいてドプラデータを作成する。そして、前記判定部52は、このドプラデータに基づいて、前記検出領域Rにおいて物体の移動の有無を判定する。
【0029】
前記判定部52による判定及び生体組織における物体について、前記検出領域Rが乳房における観察対象に設定された場合を例に挙げて説明する。
図6において、観察対象Oが嚢胞であった場合、嚢胞内には粒状の構造物Xが存在している。この構造物Xは、脂肪分等であり、流動性を有している。前記構造物Xは、前記第一の超音波W1によって、例えば矢印に示すように流動する(一つの構造物Xの動きのみ図示)。前記構造物Xは、前記物体の一例である。
【0030】
ただし、構造物Xの流動性は、嚢胞の濃縮度によって異なっている。具体的には、嚢胞の濃縮度が高くなる(水分が少なくなる)ほど、構造物Xの密度も高くなるため、構造物Xの流動性は低くなる。一方、嚢胞の濃縮度が低くなる(水分が多くなる)ほど、構造物Xの密度も低くなるため、構造物Xの流動性は高くなる。
【0031】
前記第一の超音波W1の送信によって構造物Xが流動するか流動しないかは、構造物の流動性に関する嚢胞内の状態と、前記第一の超音波W1の送信パラメータ(parameter)の値の二つの条件によって決まる。ここでいう送信パラメータは、超音波による構造物の流動と関係するパラメータであり、送信の際に超音波振動子に印加する電圧(送信電圧)、送信周波数、超音波のパルス長などである。具体的には、超音波は、送信電圧が高くなるほど、送信周波数が低くなるほど又はパルス長が長くなるほど、構造物の流動性が低くてもその構造物を流動させることができる。逆に、超音波は、送信電圧が低くなるほど、送信周波数が高くなるほど又はパルス長が短くなるほど、構造物の流動性が高くないとその構造物を流動させることができない。
【0032】
前記観察対象O内に前記構造物Xが存在しており、これが前記第一の超音波W1によって流動すれば、前記ドプラデータとして、前記構造物Xが流動していることを示す流速データ等を得ることができる。一方、前記観察対象O内に前記構造物Xが存在していても、これが流動しなかったり、そもそも前記観察対象O内に前記構造物Xが存在していなかったりする場合、ドプラデータとして、前記構造物Xが流動していることを示す流速データ等を得ることができない。例えば、腫瘤には第一の超音波W1によって流動する構造物は存在せず、流速データを得ることはできない。従って、前記判定部52は、前記ドプラデータに基づいて、物体の移動の有無を判定する。
【0033】
ちなみに、
図6では、前記観察対象が嚢胞である場合を図示しているが、第一の超音波によって肝血管腫が動いた場合についても、ドプラデータとして、肝血管腫が動いていることを示す流速データ等を得ることができる。
【0034】
前記ステップS4において、前記判定部52により、物体の移動が有ると判定された場合(前記ステップS4において「NO」)、ステップS5の処理へ移行する。一方、前記ステップS4において、前記判定部52により、物体の移動が無いと判定された場合(前記ステップS4において「YES」)、ステップS6の処理へ移行する。
【0035】
前記ステップS5では、前記制御部8は、前記第一の超音波W1の送信パラメータのうち、送信電圧、送信周波数、パルス長など、物体の移動と関係する送信パラメータの値が、予め設定された所定値に達したか否かを判定する。このステップS5において、前記送信パラメータの値が予め設定された所定値に達していないと判定された場合(前記ステップS5において「NO」)、ステップS7の処理へ移行する。一方、前記ステップS5において、前記送信パラメータの値が予め設定された所定値に達したと判定された場合(前記ステップS5において「YES」)、ステップS6の処理へ移行する。
【0036】
前記ステップS7では、前記制御部8は、次に送信される第一の超音波W1の送信パラメータのうち、送信電圧、送信周波数、パルス長など、物体の移動と関係する送信パラメータの値を変更する。具体的には、前記制御部8は、物体がより移動しやすくなるよう送信パラメータの値を変更する。例えば、前記制御部8は、送信電圧を、直近の第一の超音波W1の送信時のものよりも高くする。また、前記制御部8は、送信周波数を、直近の第一の超音波W1の送信時のものよりも低くしてもよい。また、前記制御部8は、パルス長が直近の第一の超音波W1の送信時のものよりも長くなるよう送信パラメータの値を設定してもよい。
【0037】
前記ステップS7において変更される送信パラメータの値は、予め記憶されていてもよい。この場合、送信パラメータの値が、設定される順番とともに記憶される。例えば、送信電圧として、V1,V2,・・・,V(N−1),VN(N:自然数)が、この順で変更されるように記憶される(V1<V2,・・・,V(N−1)<VN)。また、送信周波数として、F1,F2,・・・,F(N−1),FN(N:自然数)が、この順で変更されるように記憶される(F1>F2,・・・,F(N−1)>FN)。また、パルス長が、L1,L2,・・・,L(N−1),LN(N:自然数)の順で変更されるように(L1<L2,・・・,L(N−1)<LN)、各々のパルス長に対応する送信パラメータの値が記憶される。
【0038】
一回目に送信される前記第一の超音波W1の送信パラメータの値(前記送信電圧V1、前記送信周波数F1、前記パルス長L1)は、前記観察対象Oが嚢胞である場合に、濃縮度がある程度低い場合には物体が移動し、濃縮度がある程度高い場合には物体が移動しない値に設定されることが望ましい。このような値に設定することにより、嚢胞の濃縮度合に応じて物体の移動が検出されたり検出されなかったりするので、後述のカラー画像CIとして、嚢胞の濃縮度合に応じた画像を得ることができる。
【0039】
前記ステップS7において、送信パラメータの値が変更されると、前記ステップS2へ戻る。このステップS2では、変更された送信パラメータの値を有する第一の超音波W1の送信が行われる。そして、前記ステップS2,S3,S4,S5,S7の処理が繰り返される。
【0040】
ちなみに、前記ステップS5において、判定の基準となる送信パラメータの値である予め設定された所定値は、前記ステップS7において変更される送信パラメータの値のうち、最後の順番の送信パラメータの値(第一の超音波W1の送信を終了する送信パラメータの値)である。例えば、送信電圧における予め設定された所定値は前記送信電圧VNであり、送信周波数における予め設定された所定値は前記送信周波数FNである。また、パルス長における予め設定された所定値は前記パルス長LNである。
【0041】
前記ステップS4において、物体の移動が有ると判定された場合、ステップS6では、直近の第一の超音波の送信パラメータの値のうち、物体の移動と関係する送信パラメータ(送信電圧、送信周波数、パルス長等)の値が前記記憶部9に記憶される。
【0042】
また、前記ステップS5において、送信パラメータの値が所定値に達していると判定された場合、前記ステップS2,S3,S4,S5,S7の処理ループを終了し、前記ステップS6の処理へ移行する。このステップS6では、前記ステップS5において判定の基準となる送信パラメータの値である予め設定された所定値(前記送信電圧VN、前記送信周波数FN、前記パルス長LN)が、前記記憶部9に記憶される。前記ステップS5において判定の基準となり、なおかつ前記ステップS6において記憶される送信パラメータの値である予め設定された所定値は、本発明において、判定部により前記物体の移動が無いと判定されなおかつ第一の超音波の送信パラメータの値が、該第一の超音波の送信を終了する所定値に達した場合におけるその所定値の実施の形態の一例である。
【0043】
ステップS6において送信パラメータの値の記憶が行われると、ステップS8の処理へ移行する。このステップS8では、前記表示画像制御部53は、前記ステップS6において記憶された送信パラメータの値に応じた色を有するカラー画像CIを、
図7に示すように前記表示部6に表示させる。
【0044】
前記カラー画像CIは、前記検出領域Rに表示される。ただし、これに限られるものではない。前記カラー画像CIは、Bモード画像BIに対して重畳して(背景のBモード画像BIが透過しない状態で)表示されてもよい。また、前記カラー画像CIは、Bモード画像BIと合成されて(背景のBモード画像BIが透過した状態で)表示されてもよい。
【0045】
例えば送信電圧としてV1〜VNが記憶され、送信周波数としてF1〜FNが記憶され、パルス長としてL1〜LNが記憶されている場合、前記カラー画像CIの色は、記憶された前記パラメータの数Nに応じて、N個に設定される。
【0046】
本例によれば、物体が移動しやすくなるように送信パラメータの値が変更されていき、物体の移動が検出された時の送信パラメータの値又は物体の移動が無いと判定されなおかつ第一の超音波W1の送信パラメータの値が、第一の超音波W1の送信を終了する所定値に達した場合におけるその所定値に応じた色を有するカラー画像CIが表示されるので、このカラー画像CIの色に応じて、組織性状を区別することができる。具体的には、前記カラー画像CIの色により、観察対象が嚢胞であるのか腫瘤であるのかを知ることができ、また観察対象が嚢胞であった場合には、嚢胞の濃縮度を知ることができる。また、肝血管腫であるのか腫瘤であるのかを知ることができる。
【0047】
ちなみに、本例において、前記物体の移動が有ると判定された場合における第一の超音波W1の送信パラメータの値又は第一の超音波W1の送信を終了する送信パラメータの値に応じた画像が前記表示部6に表示されればよい。例えば、前記表示画像制御部53は、前記カラー画像CIに代えて、前記送信パラメータに応じた1〜Nの数字を前記表示部6に表示させてもよい。この場合、数字の画像は、本発明の表示画像制御部によって表示される画像の実施の形態の一例である。
【0048】
本例において、ステップS1〜S7の処理が複数回繰り返され、前記ステップS6において、送信パラメータの値が複数回記憶されてもよい。この場合、記憶された複数の送信パラメータの値に基づくカラー画像CIが表示されてもよい。例えば、記憶された複数の送信パラメータの平均値が算出され、この平均値に応じたカラー画像CIが表示されてもよい。
【0049】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態の超音波診断装置について説明する。以下、第一実施形態と異なる事項について説明する。
【0050】
図8に示すように、本例では、前記表示制御部5は、前記スキャンコンバータ51、前記表示画像制御部53のほか、評価部54を有している。
【0051】
本例の作用について
図9のフローチャートに基づいて説明する。ステップS11〜S13については、第一実施形態における前記ステップS1〜S3と同様である。ただし、前記ステップS12において送信される第一の超音波W1の送信パラメータの値は、物体を移動させることができる値に設定される。例えば、この第一の超音波W1の送信パラメータの値は、濃縮度がある程度高く、Bモード画像において腫瘤との区別が困難な嚢胞において、物体を移動させることができる値に設定される。
【0052】
ステップS14では、第一実施形態の前記ステップS4と同様に、前記ドプラ処理部42は、前記ステップS3で得られたエコー信号に基づいてドプラデータを作成する。ここでは、ドプラデータはカラードプラデータである。前記第一の超音波W1により物体が移動していれば、カラードプラデータを得ることが出来る。前記ドプラ処理部42は、本発明において、物体の移動の有無を二次元領域内において検出する検出部の実施の形態の一例である。また、前記評価部54が前記ドプラデータに基づいて、前記生体組織の注目部位に対する組織性状についての評価を行なう。前記評価部54は、本発明における評価部の実施の形態の一例である。
【0053】
前記評価部54による評価について説明する。例えば、前記評価部54は、前記検出領域Rにおいて、前記ドプラデータが得られた領域の大きさに応じた評価を行なう。前記ドプラデータが得られた領域の大きさは、例えばドプラデータが得られたピクセル(pixel)の数や、前記計測領域Rの全ピクセル数に対するドプラデータが得られたピクセル数の割合などである。前記評価部54は、前記ドプラデータが得られた領域の大きさに応じて、組織性状に関するレベル(level)を決定する。このレベルは、例えばレベル1〜N(N:1より大きい自然数)である。
【0054】
例えば、レベル1〜Nは、嚢胞の濃縮度と、嚢胞であるか腫瘤であるかの区別を示す。この場合、レベル1は、嚢胞の濃縮度が最も低い(流動性の度合いが大きい)ことを示し、レベル2,3,・・・と、レベルの数が大きくなるほど、濃縮度が高いことを示す。そして、レベルNは、腫瘤であることを示す。従って、ドプラデータが得られたピクセル数が多いほどレベルの数値は小さくなり、一方でドプラデータが得られたピクセル数が少ないほどレベルの数値は大きくなる。レベルNは、流速等を示すドプラデータが得られない場合のレベルである。
【0055】
前記評価部54は、前記ドプラデータに基づいて得られる流速値や流速の分散値に応じた評価を行なってもよい。この場合、前記評価部54は、前記検出領域Rにおいて、ドプラデータが得られた全ピクセルの流速値の平均値や流速の分散値を算出する。そして、前記評価部54は、前記流速値又は分散値に応じて組織性状に関するレベル1〜Nを決定する。具体的には、流速値又は分散値が大きいほど物体の流動性が高いのでレベルの数値は小さくなり、一方で流速値又は分散値が小さいほど物体の流動性が低いのでレベルの数値は大きくなる。
【0056】
次に、ステップS15においては、前記表示画像制御部53は、前記評価部54によって決定されたレベルに応じた色を有するカラー画像CIを前記表示部6に表示させる(
図7参照)。
【0057】
本例によれば、組織性状についての評価に応じた色を有するカラー画像CIが表示されるので、第一実施形態と同様に、前記カラー画像CIの色に応じて組織性状を区別することができる。
【0058】
本例において、前記第二の超音波W2は、パルスドプラモード又は連続波ドプラモードの超音波であり、前記ドプラデータは、パルスドプラ処理によって得られたドプラデータ又は連続波ドプラ処理によって得られたドプラデータであってもよい。この場合、ドプラデータの流速値に応じて組織性状に関するレベル1〜Nを決定する。
【0059】
また、一般に一フレーム分のカラードプラデータを得るための超音波の送受信は、一音線あたり複数回行なわれ、各ピクセルにおいて複数の流速が得られる。従って、前記評価部54は、前記検出領域Rにおいて、各ピクセルの流速の分散値の平均値を算出し、得られた平均値に応じて前記レベル1〜Nを決定してもよい。
【0060】
(第三実施形態)
次に、第三実施形態の超音波診断装置について説明する。以下、第一、第二実施形態と異なる事項について説明する。
【0061】
図10に示すように、本例では、前記表示制御部5は、前記スキャンコンバータ51、前記表示画像制御部53、評価部54のほか、移動検出部55を有している。
【0062】
本例の作用について
図11のフローチャートに基づいて説明する。ステップS21,S22については、前記各実施形態におけるステップS1,S2,S11,S12と同様である。前記ステップS22における第一の超音波W1の送信パラメータの値は、前記第二実施形態のステップS12と同様である。
【0063】
ステップS23では、第二の超音波W2として、Bモード用の超音波が送信され、そのエコー信号が受信される。次に、ステップS24では、得られたエコー信号に基づいて、Bモードデータ及びBモード画像データが作成される。そして、前記移動検出部55は、Bモード画像データに基づいて、前記ステップS1で設定された検出領域R内のスペックル(speckle)をトラッキング(tracking)する。このトラッキング処理は、前記第一の超音波W1の送信による生体組織における物体の移動に伴う検出領域Rの移動をトラッキングする処理である。前記移動検出部55は、本発明における検出部の実施の形態の一例である。
【0064】
前記移動検出部55は、例えば二フレームのBモード画像データを対象にして相関演算を用いたパターンマッチング処理を行ない、前記検出領域R内のスペックルをトラッキングする。
【0065】
次に、ステップS25では、前記評価部54が、前記移動検出部55による前記検出領域Rの移動の検出結果に基づいて、生体組織の注目部位に対する組織性状についての評価を行なう。例えば、前記評価部54は、前記検出領域Rの移動距離に応じた評価を行なう。この場合、前記評価部54は、前記移動距離の大きさに応じて、前記第二実施形態と同様に、組織性状に関するレベル1〜Nを決定する。本例では、前記移動距離が大きいほどレベルの数値は小さくなり、一方で前記移動距離が小さいほどレベルの数値は大きくなる。前記移動距離が零であれば、レベルNとなる。
【0066】
次に、ステップS26においては、前記第二実施形態のステップS15と同様に、前記表示画像制御部53は、前記評価部54によって決定されたレベルに応じた色を有するカラー画像CIを前記表示部6に表示させる(
図7参照)。
【0067】
本例によれば、第二実施形態と同様に、組織性状についての評価に応じた色を有するカラー画像CIが表示されるので、前記カラー画像CIの色に応じて組織性状を区別することができる。
【0068】
以上、本発明を前記実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、前記第二、第三実施形態において、前記表示画像制御部53は、前記評価部54によって決定された前記レベル1〜Nの文字を前記表示部6に表示させてもよい。この場合、文字の画像は、本発明の表示画像制御部によって表示される画像の実施の形態の一例である。
【0069】
また、前記各実施形態において、前記第二の超音波W2は、ドプラモードではなく、Bフロー(B−flow)モードの超音波であってもよい。この場合、
図12に示すように、前記エコーデータ処理部4は、前記ドプラ処理部42の代わりに、Bフロー処理部43を有する。このBフロー処理部43は、本発明における検出部の実施の形態の一例である。前記第一実施形態においては、前記判定部52は、前記Bフロー処理部43によって得られたBフローデータに基づいて、物体の移動の有無を判定する。また、前記第二実施形態においては、前記検出領域Rにおいて、前記Bフローデータが得られた領域の大きさに応じて、組織性状に関するレベル1〜Nを決定する。さらに、前記第三実施形態においては、Bフローデータをスキャンコンバータ51によって走査変換して得られた二フレームのBフロー画像データを対象にして、前記移動検出部55が前記検出領域Rのスペックルトラッキングを行なう。そして、前記検出領域Rの移動の検出結果に基づいた評価が行われる。
【0070】
また、前記第二実施形態において、前記第一の超音波W1の送信とこれに対応する第二の超音波W2の送信とが複数回行なれ、前記評価部54は、これら複数の第二の超音波W2の送信によって得られた複数のドプラデータ又は複数のBフローデータに基づいて評価を行なってもよい。例えば、前記評価部54は、前記ドプラデータ又は前記Bフローデータが得られた領域の大きさの平均値、流速値の平均値、流速の分散値の平均値、流速の分散値の平均の平均値を算出し、この平均に応じて前記レベル1〜Nを決定してもよい。
【0071】
また、前記第三実施形態において、前記第一の超音波W1の送信とこれに対応する第二の超音波W2の送信とが複数回行なれ、前記移動検出部55によって前記検出領域Rの移動距離が複数算出されて、前記評価部54が複数の移動距離に基づいて評価を行なってもよい。例えば、前記評価部54は、複数の移動距離の平均を算出し、この平均に応じて前記レベル1〜Nを決定してもよい。