(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952256
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】美容組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/68 20060101AFI20160630BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20160630BHJP
A61K 31/7032 20060101ALI20160630BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20160630BHJP
A61K 31/715 20060101ALI20160630BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20160630BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20160630BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20160630BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20160630BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
A61K8/68
A61K8/60
A61K31/7032
A61K31/7048
A61K37/20
A61P17/00
A61P17/04
A61P17/16
A61P43/00 121
A61Q19/00
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-273364(P2013-273364)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-127311(P2015-127311A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2015年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】尾上 貴俊
(72)【発明者】
【氏名】八尋 衣里奈
(72)【発明者】
【氏名】神谷 智康
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【審査官】
深谷 良範
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第1998/038198(WO,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0085758(KR,A)
【文献】
北垣浩志ら,焼酎粕・酒粕・麹菌から見いだしたグルコシルセラミドの構造及び機能性,FRAGRANCE JOURNAL,2013年12月15日,Vol.41, No.12,p.21-27
【文献】
KAWADA,C. et al,Dietary Glucosylceramide Enhances Tight Junction Function in Skin Epidermis via Induction of Claudin-1,Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry ,2013年 4月,Vol.77, No.4,p.867-869
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米由来スフィンゴ脂質及びサポナリンを含有することを特徴とする美容組成物。
【請求項2】
米由来スフィンゴ脂質及びサポナリンを含有することを特徴とする皮膚乾燥予防・改善組成物。
【請求項3】
米由来スフィンゴ脂質及びサポナリンを含有することを特徴とする肌荒れ改善組成物。
【請求項4】
米由来スフィンゴ脂質及びサポナリンを含有することを特徴とする皮膚水分蒸散抑制組成物。
【請求項5】
米由来スフィンゴ脂質及びサポナリンを含有することを特徴とする皮膚保湿組成物。
【請求項6】
米由来スフィンゴ脂質及びサポナリンを含有することを特徴とする皮膚バリア機能向上組成物。
【請求項7】
米由来スフィンゴ脂質及びサポナリンを含有することを特徴とする皮膚かゆみ抑制組成物。
【請求項8】
米由来スフィンゴ脂質及びサポナリンを含有することを特徴とするタイトジャンクション機能亢進組成物。
【請求項9】
米由来スフィンゴ脂質及びサポナリンを含有することを特徴とするクローディン−1発現促進組成物。
【請求項10】
前記米由来スフィンゴ脂質が、グルコシルセラミドであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スフィンゴ脂質及びサポナリンを含有する美容組成物、皮膚乾燥予防・改善組成物、肌荒れ改善組成物、皮膚水分蒸散抑制組成物、皮膚保湿組成物、皮膚バリア機能向上組成物、皮膚かゆみ抑制組成物、タイトジャンクション機能亢進組成物、クローディン−1発現促進組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の最外層に存在する角質層は、外部からの物質の進入や皮膚内部からの水分の蒸散を抑制すると同時に、角質層に水分を保持することによって皮膚の柔軟性や外観を保つ機能を有している。この角質層は、角質細胞間脂質と呼ばれる脂質が、角質細胞の隙間を埋めるように存在しており、該角質細胞間脂質の50%はスフィンゴ脂質の1種であるセラミドであることが知られている。また、一般的に、角質層から角質細胞間脂質(特に、セラミド)が減少すると、肌荒れ、乾燥肌、老化肌等を引き起こすことが知られている。
この角質層からの角質細胞間脂質の減少に対し、従来から、セラミド等のスフィンゴ脂質を外用で補うことにより、機能が低下した角質層の状態を改善することができると言われている。
【0003】
スフィンゴ脂質の美容用途の例としては、蒟蒻芋由来のグルコシルセラミドを含有する表皮細胞増殖促進剤及び皮膚外用剤(特許文献1)、スフィンゴ糖脂質(β−グルコシルセラミド)を溶解することで表皮のバリア機能、あるいは水分保持(水分蒸散防御)機能を発揮させ、皮膚の保湿を確保する水溶液若しくは乳化水溶液(特許文献2)、セラミド、グルコシルセラミド、ガラクトシルセラミド等のセラミド類とジイソプロピルアミンジクロロアセテートまたは、γ−アミノ酪酸を配合した皮膚化粧料(特許文献3)等が開示されているが、より優れた美容効果や機能性を持つ組成物の開発が望まれていた。
【0004】
また、サポナリンは、フラボノイドの一種であり、従来から植物の花に含有されていることが知られている。このサポナリンを含む植物としてムクゲが知られており、その花を乾燥させたものは、木槿花として漢方に用いられている。しかし、サポナリン自体、美容用途としては殆ど利用されていないのが現状である。
【0005】
一方、皮膚の表皮顆粒層に存在するタイトジャンクションは、隣接する皮膚同士を密着させ、細胞と細胞の隙間をシールすることで、皮膚中の水分の蒸発を防ぐとともに、外界からの物質の透過を制御することができることが知られている。近年の研究により、このタイトジャンクションが、皮膚のバリア機能に関し重要な役割を担っていることが分かっている(非特許文献1)。
更に、タイトジャンクションを構成するクローディン等の細胞膜タンパク質が、ストランドを形成することで、タイトジャンクションのバリア機能を制御することが分かっている(非特許文献2)。
そのため、クローディン等の細胞膜タンパク質の発現が減少した場合、タイトジャンクションの構造的な破壊が起こり、タイトジャンクションが、物質の透過に対するバリアとして機能しなくなるので、乾燥肌,荒れ肌,アトピー性皮膚炎や各種感染症等の皮膚症状やそれに伴う皮膚のかゆみ等が引き起こされることが考えられる。(特許文献4)
【0006】
上記皮膚症状の悪化に対し、タイトジャンクション形成促進作用を有するものとして、キンポウゲ科キンポウゲ属オウレンの根茎の抽出物を含有する皮膚外用剤(特許文献5)、ミカン科ミカン属ダイダイの果皮(トウヒ)の抽出物を含有する皮膚外用剤(特許文献6)等が開示されている。
また、細胞膜タンパク質であるクローディンの産生促進作用を有するものとして、アルニカの抽出物,アシタバの抽出物,センキュウの抽出物,ハトムギの抽出物,及び冬虫夏草の抽出物から選択される少なくとも1種を含有するクローディン−1産生促進剤等が開示されている(特許文献4)。
しかしながら、これまでに知られているクローディン−1(以下、CLDN1と記す。)産生促進剤には、CLDN1の産生促進率が低いものもあり、よりタイトジャンクションの形成促進作用に優れた組成物の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−195550号公報
【特許文献2】特開2013−155117号公報
【特許文献3】特開平01−22810号公報
【特許文献4】特開2010−65007号公報
【特許文献5】特開2007−176830号公報
【特許文献6】特開2007−176835号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】TheJournal of Cell Biology 156:1099−1111(2002)
【非特許文献2】日本香粧品科学会誌Vol.31:296−301(2007)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、美容組成物、皮膚かゆみ抑制組成物、皮膚乾燥予防・改善組成物、肌荒れ改善組成物、皮膚水分蒸散抑制組成物、皮膚保湿組成物、皮膚バリア機能向上組成物、タイトジャンクション機能亢進組成物、CLDN1発現促進組成物(以下、本発明の組成物と記す。)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を鑑みて鋭意検討を行い、タイトジャンクションの形成に働きかけるCLND1の発現促進において、スフィンゴ脂質及びサポナリンを含有する組成物が優れた効果を有することを見出し本発明に至った。
【0011】
本発明の組成物は、以下の通りである。
(1)スフィンゴ脂質及びサポナリンを含有することを特徴とする美容組成物。
(2)スフィンゴ脂質及びサポナリンを含有することを特徴とする皮膚乾燥予防・改善組成物。
(3)スフィンゴ脂質及びサポナリンを含有することを特徴とする肌荒れ改善組成物。
(4)スフィンゴ脂質及びサポナリンを含有することを特徴とする皮膚水分蒸散抑制組成物。
(5)スフィンゴ脂質及びサポナリンを含有することを特徴とする皮膚保湿組成物。
(6)スフィンゴ脂質及びサポナリンを含有することを特徴とする皮膚バリア機能向上組成物。
(7)スフィンゴ脂質及びサポナリンを含有することを特徴とする皮膚かゆみ抑制組成物。
(8)スフィンゴ脂質及びサポナリンを含有することを特徴とするタイトジャンクション機能亢進組成物。
(9)スフィンゴ脂質及びサポナリンを含有することを特徴とするクローディン−1発現促進組成物。
(10)本発明の組成物において、スフィンゴ脂質が、グルコシルセラミドであることを特徴とする(1)乃至(9)に記載の組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の組成物により、CLDN1の発現が促進され、タイトジャンクションの形成を促進することができ、皮膚のバリア機能を強化・改善することができるとともに、皮膚の保湿効果を高め、肌の乾燥を防止することができる。
これにより、肌の乾燥を防止することにより皮膚のかゆみ、肌荒れ等の抑制・防止ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1乃至3、比較例1及び2のCLDN1をコードするmRNAの発現率を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の組成物について説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではない。
【0015】
本発明に用いるスフィンゴ脂質は、アミノ基を持つ長鎖アルコールであるスフィンゴイド類(スフィンゴイド塩基)を含む複合脂質の総称である。具体的には、該スフィンゴイド類に脂肪酸が酸アミド結合したセラミドと、該セラミドに糖類が結合したスフィンゴ糖脂質、リン酸及び塩基が結合したスフィンゴリン脂質に分類される。
これらスフィンゴ脂質は、生物界に幅広く存在していることが知られており、角質層の機能低下の改善等を目的とした美容用途の他、医薬用途等の様々な用途で用いられている。
本発明におけるスフィンゴ脂質は、以下の化学式で表される。
【0016】
【化1】
(上記一般式において、R
1は炭素数15〜19の飽和又は不飽和の長鎖炭化水素又は長鎖アルコールであり、R
2は炭素数12〜28の直鎖又は分岐鎖状のアシル基(脂肪酸基)であり、R
3は水素、単糖残基、オリゴ糖残基、リン酸基、ホスホコリン残基、ホスホセリン残基、ホスホエタノールアミン残基又はホスホイノシトール残基を表す。)
【0017】
セラミドは、スフィンゴイド類のアミノ基に炭素数12〜28の直鎖又は分岐鎖状の脂肪酸が結合したものであり、(化1)において、R
1は炭素数15〜19の飽和又は不飽和の長鎖炭化水素又は長鎖アルコール、R
2は炭素数12〜28の直鎖又は分岐鎖状のアシル基(脂肪酸基)、R
3は水素である。通常セラミドタイプ1〜セラミドタイプ7までの7種のタイプが知られている。後述するスフィンゴ糖脂質及びスフィンゴリン脂質はセラミドの構造が共通構造となる。
スフィンゴ糖脂質は、前述したセラミドに糖類が結合したものであり、(化1)において、R
1及びR
2はセラミドと同様であり、R
3は単糖残基又はオリゴ糖残基である。該糖類としては、グルコース残基、マンノース残基、ガラクトース残基、フルクトース残基、ラムノース残基、スクロース残基、ラクトース残基、トレハロース残基、マルトース残基、ラフィノース残基、パノース残基、マルトトリオース残基、メレジトース残基、ゲンチアノース残基、スタキオース残基等が挙げられる。
スフィンゴリン脂質は、前述したセラミドにリン酸基が結合したもの、該リン酸基を解してコリンが結合したものであり、(化1)において、R
1及びR
2はセラミドと同様であり、R
3はリン酸基、ホスホコリン残基、ホスホセリン残基、ホスホエタノールアミン残基又はホスホイノシトール残基等が挙げられる。
【0018】
本発明の組成物に用いる該スフィンゴ脂質は、動物や植物、微生物等の原料を由来としており、それらに破砕・粉砕等の処理を行った加工物を直接用いても良く、また、それらを分離・抽出等又は人工的に合成する等の方法で得たものを用いても良い。
スフィンゴ脂質を含む原料としては、例えば、牛や豚,馬等の動物、綿実,甜菜,蒟蒻芋,菜種,サトウキビ,ゴマ,ピーナッツ,大豆,とうもろこし,米,小麦,パイナップル,柚子,蜜柑,リンゴ等の植物、タモギ茸等のきのこ類,ミルク等の食物、酵母等が挙げられる。
原料からのスフィンゴ脂質の抽出・分離方法及び合成方法は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。抽出方法としては、例えば、エタノール,水,含水エタノール等の当業者が通常用いる抽出溶媒を加え、必要に応じて加温して抽出する方法等を挙げることができる。
また、原料からスフィンゴ脂質を得るための破砕・粉砕処理方法は、特に限定されず、湿式・乾式どちらでも良く、粉砕条件、処理装置も特に限定されず、市販の装置等を適宜使用することができる。使用する装置としては、例えば、高圧ホモジェナイザー、超音波粉砕機、気流式粉砕機、高速回転衝撃粉砕機、ボールミル又はビーズミル等が挙げられる。
これらの処理は、加工物の粒径等の物性が好ましい範囲内になるよう、必要に応じて複数回繰り返しても良く、複数の処理を組み合わせても良い。
本発明において、スフィンゴ脂質の中でも、スフィンゴ糖脂質であることが好ましく、該スフィンゴ糖脂質の中でもグルコシルセラミド(セラミド末端のヒドロキシル基にグルコース残基が結合したもの)、中でも米由来のグルコシルセラミドであることがより好ましい。
本発明の組成物に配合されるスフィンゴ脂質の含有量としては、特に制限はなく、目的や形状,使用対象等の様々な条件に応じて、広範囲でその含有量を適宜設定できる。例えば、0.00001〜90質量%、好ましくは0.0001〜10質量%、より好ましくは0.0001〜1質量%の範囲で選択される。
【0019】
本発明の組成物に用いるサポナリンは、イソビテキシン(サポナレチン)の7−O−グルコシドのことであり、ムクゲやヒスイカズラ等に含まれ、花の特徴的な緑色に寄与する成分として知られている。
本発明の組成物において、サポナリンは、サポナリンを含有する植物等に破砕・粉砕等の処理を行った加工物を直接用いても良いし、分離・抽出等又は人工的に合成する等の方法で得るものを用いても良い。
破砕・粉砕等の処理や抽出方法、合成方法等は特に限定されず、スフィンゴ脂質の場合と同様、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明の組成物中のサポナリンの含有量は、特に制限はなく、目的や形状,使用対象等の様々な条件に応じて、広範囲でその含有量を適宜設定できる。例えば、本発明の組成物に対し、0.00001〜90質量%、好ましくは0.0001〜10質量%、より好ましくは0.0001〜1質量%の範囲で選択される。
にする
【0020】
本発明の組成物には、スフィンゴ脂質及びサポナリン以外に、その他の成分を含有しても良い。
前記のその他の成分としては、例えば;ゼラチン,コラーゲンペプチド等のタンパク質;アルギン酸,難消化性デキストリン,グアーガム,グアーガム,グルコマンナン,ポリデキストロース,フコイダン等の水溶性食物繊維;セルロース,ヘミセルロース,ペクチン,リグナン,グルカン,ガラギーナン,アガロース,キチン・キトサン等の不溶性食物繊維;カルシウム,マグネシウム,鉄等のミネラル類;N−アセチルグルコサミン,ヒアルロン酸,コンドロイチン硫酸等のムコ多糖類;乳,発酵乳,脱脂粉乳等の乳製品;豆乳,豆乳粉末等の豆乳製品;レモン,リンゴ,明日葉,ケール,甘藷,甘藷茎葉,じゃがいも,ニンジン,カボチャ,ニガウリ,トマト,グリーンピース,モロヘイヤ等の植物又は植物加工品;スピルリナ等の藻類;乳酸菌,納豆菌,酪酸菌,麹菌,酵母等の微生物等を配合することができる。更に必要に応じて通常食品分野で用いられる、デキストリン,ブドウ糖,乳糖,ショ糖,麦芽糖,果糖,エリスリトール,トレハロース,マルチトール,キシリトール,でんぷん等の糖類、ビートオリゴ糖,大豆オリゴ糖,キシロオリゴ糖,フラクトオリゴ糖,イソマルトオリゴ糖等のオリゴ糖類、ステビア,アセスルファムカリウム,スクラロース,アスパルテーム,ソーマチン,還元麦芽糖等の甘味料;クエン酸,乳酸,グルコン酸,リンゴ等の酸味料;酸化チタン等の着色料;アラビアガム,キサンタンガム等の増粘剤;シェラック等の光沢剤;タルク,二酸化ケイ素,セルロース,ステアリン酸カルシウム等の賦形剤;ビタミンA,ビタミンC,ビタミンE等のビタミン類やローヤルゼリー,プロテイン,キトサン,レシチン等の栄養補助剤、その他、種々の結合剤,滑沢剤,安定剤,希釈剤,増量剤,乳化剤,着色料,香料,食品添加物,調味料等を挙げることができる。
これらその他の成分の含有量は、本発明の組成物の形態等に応じて適宜選択することができる。
【0021】
本発明の組成物は、経口や経皮等目的に応じて適宜摂取することができ、その摂取方法、摂取量、摂取回数、摂取時期、及び摂取対象としては、特に制限はされない。
また、摂取対象個体の年齢、体重、体質等、様々な要因や目的に応じて適宜選択することができる。
【0022】
本発明の組成物を摂取する際の形状も特に限定されず、経口組成物とする場合、具体的な形状としては、例えば、粉や顆粒の粉末状,タブレット(チュアブル)状,球状,カプセル状,カプレット状,飴状,棒状,板状,ブロック状,ウエハース状,ビスケット状,グミ状等の固形物;ゲル状,クリーム状,ゼリー状等の半固形物;シロップ状,液状等の流動物等の形状が挙げられる。尚、カプセル状の経口組成物は、ソフトカプセル及びハードカプセルが含まれ、液状の経口組成物は、炭酸飲料,コーヒー飲料,茶系飲料,ミネラルウォーター,フレーバーウォーター,スポーツ・機能性飲料,果実飲料,乳性飲料,乳飲料,豆乳飲料,野菜飲料,栄養飲料(ミニドリンク類)等が含まれる。
経口組成物を粉末飲料にすることで、スフィンゴ脂質及びサポナリンの加工が容易であり、組成物としての安定性にも優れるとともに、カプセルや錠剤等と異なり1度に多くの組成物を摂取することができるので好ましい。尚、本発明の組成物は歯磨剤、マウスウォッシュ等の口腔用組成物としても良い。
また、経皮吸収組成物とした場合、スフィンゴ脂質及びサポナリンは、経口組成物と同様に、これらの加工物や抽出物等をそのまま用いても良く、また、ステアリン酸等の脂肪酸;セタノール,オクチルドデカノール,1,3ブチレングリコール,グリセリン等のアルコール;酸化鉄や酸化チタン等の着色料;スクワラン等の機能性素材等の他の成分と混合して、通常用いられる方法により組成物を調製しても良い。具体的な形状としては、例えば、化粧水,美容液,乳液,クリーム,軟膏,ローション,オイル,パック等の基礎化粧料;石鹸,クレンジングクリーム,クレンジングローション,クレンジングミルク,洗顔料等の皮膚洗浄料;シャンプー,リンス,トリートメント等の洗髪用化粧料;ヘアクリーム,ヘアスプレー,ヘアトニック,ヘアジェル,ヘアローション,ヘアオイル,ヘアエッセンス,ヘアウォーター,ヘアワックス,ヘアフォーム等の整髪料、育毛・養毛料、1剤式染毛剤や2剤式染毛剤,ヘアカラー等の染毛料、パーマネントウェーブ剤や縮毛矯正剤等のパーマ剤やウエーブ保持剤等の頭髪化粧料;ファンデーション,白粉,おしろい,口紅,頬紅,アイシャドウ,アイライナー,マスカラ,眉墨,まつ毛等のメークアップ化粧料;美爪料等の仕上げ用化粧料;香水類、浴用剤、その他、抗炎症剤や腋臭防止剤、ふけ又はかゆみ予防用毛髪化粧料、脱毛抑制剤、除毛剤、髭剃り用剤、日焼け止め剤、にきび予防乃至改善剤、油性肌用化粧料、衛生用品、衛生綿類、ウエットティシュ等が挙げられる。
【0023】
本発明の組成物における、スフィンゴ脂質とサポナリンの配合比(重量比)は特に限定されず、目的や使用対象等の条件に応じて適宜設定でき、スフィンゴ脂質:サポナリン=1:0.01〜1000、好ましくは1:0.1〜500より好ましくは1:0.1〜200が選択される。
【0024】
本発明の組成物を調製する際、スフィンゴ脂質及びサポナリンは、これらを抽出・分離・合成したもの又はこれらを含有する原料の加工物をそのまま使用しても良いが、デキストリン,二酸化ケイ素等の賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤等と混合し、成形等したものを使用しても良い。また、水(精製水等)、食用油(コーン油等)等の溶媒に溶解乃至分散させて使用しても良い。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
<CLDN1発現促進作用>
(実施例1)
まず、角化細胞増殖培地2キット(PromoCell社製)を用いて予め培養しておいたヒト表皮角化細胞(継代回数9回,PromoCell社製)を、5×10^4cells/wellとなるように24ウェルプレートへ播種し、37℃の5%CO
2インキュベーター内で24時間前培養を行った。
次に、試料として、スフィンゴ糖脂質の1種であるグルコシルセラミドと、サポナリンを準備し、グルコシルセラミドを15μg/mL、サポナリンを1.5μg/mLの濃度で含む角化細胞増殖培地(PromoCell製)を準備した。
次いで、ヒト表皮角化細胞を培養した培地を除去し、試料を含む培地と入れ替え、37℃の5% CO
2インキュベーターで更に40時間培養を行った。
培養後、培養上清を除去し、RNA抽出キット(RNeasy mini kit:QIAGEN社製)を用い細胞からRNAを回収し、RNAを逆転写反応キット(Quantitect Reverse Transcription Kit:QIAGEN社製)を用いてcDNAを合成した。
得られたcDNAを用いて、タイトジャンクションの構成タンパク質の1つであるCLDN1をコードするmRNA発現量を測定した。なお、内部標準としてGAPDHのmRNA発現量も測定した。コントロールとして、試料を全く含まない培地を使用して同様の操作を行った。
CLDN1をコードするmRNAの発現量[%]は、発現量[%]=(試料を含む培地のmRNA発現量)/(試料を含まない培地のmRNA発現量)×100の計算式から算出した。
【0027】
尚、使用したグルコシルセラミドは、米から抽出したグルコシルセラミドであり、(化2)に示される(a)乃至(f)の構造を有するグルコシルセラミドが含まれる。(化2)中、脂肪酸の構造における[A:B]において、Aは脂肪酸の炭素数、Bは脂肪酸中の二重結合の数を表す。スフィンゴイド塩基の構造における[C:D]の記載において、dは4位の炭素原子にヒドロキシル基がないこと、tは4位の炭素原子にヒドロキシル基があることを表し、Cはスフィンゴイド塩基の炭素数、Dはスフィンゴイド塩基中の二重結合の数を表す。また、二重結合の数Dに付いた上付きの記号において、数字は二重結合の位置を表し、E及びZは二重結合の種類(Eはトランス型二重結合、Zはシス型二重結合)を表す。例えば、(a)のグルコシルセラミドの場合、炭素数20の飽和脂肪酸と、スフィンゴイド塩基が結合しており、該スフィンゴイド塩基は、炭素数が18、トランス型二重結合が4位と8位の2箇所あり、4位の炭素原子にヒドロキシル基がないことを表す。
【0028】
【化2】
【0029】
(実施例2)
試料のサポナリンの濃度を15μg/mLとした以外は実施例1と同様にした。
【0030】
(実施例3)
試料のサポナリンの濃度を150μg/mLとした以外は実施例1と同様にした。
【0031】
(実施例4)
試料のサポナリンの濃度を1500μg/mLとした以外は、実施例1と同様にした。
【0032】
(比較例1)
試料としてグルコシルセラミドのみを用い、濃度を15μg/mLとした以外は、実施例1と同様にした。
【0033】
(比較例2)
試料としてサポナリンのみを用い、濃度を15μg/mLとした以外は、実施例1と同様にした。
結果を
図1及び表1に示す。尚、発現量は、コントロールに対する発現量を表す。
【0034】
【表1】
【0035】
図1及び表1より、グルコシルセラミドとサポナリンを重量比1:0.1で含む実施例1では、CLDN1をコードするmRNAの発現量が126%あり、CLDN1の発現促進効果が得られていることが分かった。また、グルコシルセラミドとサポナリンの重量比1:1の実施例2は発現量が133%、グルコシルセラミドとサポナリンの重量比1:10の実施例3は発現量が155%、グルコシルセラミドとサポナリンの重量比が1:100の実施例4は発現量が140%あり、グルコシルセラミドに対するサポナリンの配合量を所定の割合にすることで、CLDN1の発現が促進されることが確認された。
一方、グルコシルセラミドのみを試料とした比較例1では、CLDN1をコードするmRNAの発現量は98%、サポナリンのみを試料とした比較例2では、CLDN1をコードするmRNAの発現量は93%であり、CLDN1の発現促進効果は得られなかった。
【0036】
以上のことから、スフィンゴ脂質であるグルコシルセラミドとサポナリンは、単独ではCLDN1の発現は促進されず、グルコシルセラミドとサポナリンを組み合わせることで、CLDN1の発現が相乗的に促進されることが確認された。
また、実施例1から分かるように、サポナリンの配合量は、1.5μg/mL(比較例2に対し10分の1の濃度)という少量であっても、グルコシルセラミドと組み合わせることで、CLDN1の発現促進効果が得られることが確認された。
これにより、スフィンゴ脂質及びサポナリンを含む本発明の組成物は、CLDN1の発現促進作用を有し、タイトジャンクションの形成を促進することができ、皮膚のバリア機能を強化・改善することができるとともに、皮膚の保湿効果を高め、肌の乾燥を防止することができ、皮膚のかゆみを抑制し肌荒れを改善することができる。
【0037】
以下に本発明の組成物の配合例を記載するが、本発明は以下の配合例に限定されるものではない。
【0038】
(配合例1:顆粒)
表2の配合割合で、各成分をフローコーターNFL−200型流動層造粒機(フロイント産業株式会社製)に投入し、数分間気流で混合し、これに、水を噴霧することにより造粒を行った。得られた造粒物を30メッシュの篩によって篩別し顆粒剤とした。
【0039】
【表2】
【0040】
(配合例2:顆粒)
表3の配合割合で、配合例1と同様の方法を用いて顆粒剤とした。
【0041】
【表3】
【0042】
(配合例3:錠剤)
表4の配合割合で各成分を配合し、定法に従い打錠して錠剤を製造した。
【0043】
【表4】
【0044】
(配合例4:錠剤)
表5の配合割合で各成分を配合し、定法に従い打錠して錠剤を製造した。
【0045】
【表5】
【0046】
(配合例5:ソフトカプセル)
表6の配合割合で各成分を配合した内溶液を調製し、定法に従いソフトカプセル化した。
【0047】
【表6】
【0048】
(配合例6:ハードカプセル)
表7の配合割合で組成物を調製し、定法に従いハードカプセル化した。
【0049】
【表7】
【0050】
(配合例7:飴)
表8の配合割合で各成分を配合し、飴を製造した。
【0051】
【表8】
【0052】
(配合例8:液体飲料)
表9の配合割合で各成分を配合し、液体飲料を製造した。
【0053】
【表9】
【0054】
(配合例9:グミ)
表10の配合割合で各成分を配合し、定法に従い型に入れて成型し、グミを製造した。
【0055】
【表10】
【0056】
(配合例10:粉末飲料)
表11の配合割合で、配合例1と同様の方法を用いて顆粒剤とし、水,お湯等の液体に分散・溶解させて摂取する粉末飲料とした。
【0057】
【表11】
【0058】
(配合例11:ゼリー)
表12の配合割合で各成分を配合し、定法に従い型に入れて成型し、ゼリーを製造した。
【0059】
【表12】
【0060】
(配合例12:ガム)
表13の配合割合で各成分を配合し、定法に従い型に入れて成型し、ガムを製造した。
【0061】
【表13】
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、CLDN1の発現が促進され、タイトジャンクションの形成を促進することができ、皮膚のバリア機能を強化・改善することができる組成物を提供することができるとともに、皮膚の保湿効果を高め、肌の乾燥を防止することができ、皮膚のかゆみを抑制し肌荒れを改善する組成物を提供することができる。