(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
抽出物が、凍結乾燥抽出物であり、該凍結乾燥抽出物は、固形物と混合して固体組成物となるか、又は水中、生理食塩水中、又はプロピレングリコール中に溶解又は懸濁される、請求項1に記載の組成物。
皮膚におけるしわの数および深さの低減、皮膚の弾性の増大、皮膚の水和作用の増大、およびこれらの組合せからなる群から選択される、皮膚の美的外観の改善のための、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、表皮、真皮、および皮下組織の3つの主要な組織層を有する複雑な器官である。皮膚構造およびその様々な細胞型、機構、および役割は多くの出版物において記載されている。薬物などの物質、天然抽出物、および紫外線照射の皮膚に対する影響を理解するために、非動物性の試験が開発されており、現在皮膚損傷/修復の試験において上首尾に用いられている(Auger、2004年; Rouabhia、1997年; Van de Sandt、1999年)。
【0003】
抗酸化剤は、組織損傷を著しく防止し、創傷治癒を刺激する。これは、脂質過酸化、炎症、および細胞DNAの変更の防止/制限を含めた多くのメカニズムによってなされる。いくつかの植物抽出物は強力な抗酸化効果を有すると考えられている(Thang、2001年)。
【0004】
チラコイドは、真核生物(植物および藻類)ならびに原核生物(細菌)における光合成を担う、特殊化された膜である。これらの光合成生物体は、複雑な一組の反応においてCO
2を炭水化物に還元することによってこの気体を有機材料に変換する。この還元反応のための電子は最終的には水に由来しており、水は、次いで、酸素と陽子とに変換される。この過程のためのエネルギーは、色素(主にクロロフィルおよびカロチノイド)によって吸収される光によって供給される。
【0005】
皮膚は身体と環境との間の境界面であり、損傷を引き起こし、皮膚の加齢を加速化し得る内的因および環境要因の両方に継続的に曝露されている。フリーラジカルまたは活性酸素種(ROS)からの酸化ストレスは、加齢の過程にとって主要な一因であると考えられている。ROSは、身体における正常の化学反応によって、ならびにUV照射、汚染、喫煙、ストレス、および他の外的要因によって生成される。加齢の間、皮膚におけるROSレベルは上昇し、抗酸化の防御は低下することが実証されている。酸化ストレスは、DNA、細胞膜脂質、およびタンパク質などの細胞構成成分の損傷に関与する。したがって、局所的に適用される抗酸化剤は、皮膚におけるフリーラジカルによって引き起こされる損傷を低減する上で重要な役割を果たし得る。
【0006】
脂質過酸化は、植物および動物の両方における細胞の傷害の十分に確立されているメカニズムであり、細胞および組織における酸化ストレスの指標として用いられている。脂質過酸化物は、多価不飽和脂肪酸に由来し、不安定であり、分解されて複雑な一連の化合物を形成する。これらの化合物には反応性のカルボニル化合物が含まれ、この中ではマロンジアルデヒド(MDA)が最も豊富である。したがって、MDAの測定は、脂質過酸化の指標として広く用いられている(Esterbaur、1991年)。脂質過酸化生成物のレベルの増大は、ヒトおよびモデル系の両方において様々な慢性疾患と関連している。チオバルビツール酸反応性物質(TBARS)アッセイは、生物学的試料中のMDAを測定するのに一般的に用いられている。しかし、この反応は、遊離MDAおよびタンパク質結合したMDAの両方が反応し得るので、比較的非特異的である。
【0007】
MDA-586法は、遊離のMDAをアッセイし、または加水分解ステップの後、全MDA(すなわち、遊離のMDAおよびタンパク質結合したシッフ塩基コンジュゲート)をアッセイするようにデザインされている。アッセイ条件は、4-ヒドロキシアルケナルなどの他の脂質過酸化生成物からの干渉を最小にするように働く。
【0008】
UVB照射(280〜320nm)は、タンパク質、脂質、およびDNAなどの様々な生物学的巨大分子中によく吸収され、照射エネルギーを光化学反応に変換することによって直接損傷を引き起こす。さらに、ROS(例えば、酸素ラジカルおよび一重項酸素)が生成され、これは細胞DNAおよび他の細胞成分を修飾し得、光発癌をもたらす可能性がある。太陽輻射のUVA成分(320〜400nm)は、一重項酸素が主要な役割を果たす有害な生物学的効果を生成することも示されている。これは、皮膚および目など、UVA照射に曝露される組織においてとりわけ重要である。
【0009】
皮膚は日光に頻繁に曝露され、UVA曝露は、主に一重項酸素の作用によって皮膚の加齢および皮膚癌を引き起こすと考えられている。一重項酸素は、転写因子活性化因子タンパク質-2によって遺伝子調節を媒介し、ストレス活性化タンパク質キナーゼを活性化し、または皮膚線維芽細胞において1パターンのマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ、ならびにp38およびc-Jun-N-末端キナーゼの誘導を誘発する。
【0010】
組織において制限された数の分子がUVA照射を弱く吸収する。UVA照射を吸収した後、これらの分子(内因性光増感剤)は、酸素分子にエネルギーを伝達させる長命のその三重項状態にクロスオーバーする。伝達されたエネルギーは、エネルギー的に励起されている酸素分子(一重項酸素)をもたらすが、この酸素分子は高度に反応性である。
【0011】
t-ブチルヒドロペルオキシド(tBHP)が皮膚(ヒトケラチノサイト)上で脂質過酸化を模倣することはよく知られている。tBHPは、いくつかの生物学的系においてフリーラジカル生成を誘発するのに用いられる有機過酸化物である。tBHPに曝露された赤血球は、脂質過酸化、ヘモグロビン分解、およびヘキソース一リン酸-分路(shunt)刺激を受ける。脂質過酸化およびヘモグロビン分解は、ある範囲の酸化損傷の両極端を表す。tBHPはアポトーシスまたは壊死によって細胞死を誘発する。赤血球溶血アッセイは、ある化合物の抗酸化効果を評価するのに最良の細胞モデルの1つである。
【0012】
抗酸化および抗炎症の両方の性質を有する、動的でインタクトなチラコイド膜抽出物、ならびに他の抗炎症化合物と組み合わせたその使用は、それぞれ国際特許公開第WO01/49305号および第WO01/04042号に記載されている。チラコイド抽出物の抗酸化および抗炎症の性質は、in vitro、ex vivo、in situ、およびin vivoの試験において実証されている。特に、チラコイド抽出物は、一重項酸素種を含めた有害な活性酸素種を捕捉し、炎症促進性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインを、炎症の減弱に向けて変調することが示されている。
【0013】
UV照射を捕捉し、太陽エネルギーを熱に散逸させるチラコイド抽出物の能力のために、ROSスカベンジャーとして、特に紫外線(UV)照射に対する光防護剤(photoprotector)として、および太陽遮蔽(solar screen)としてのチラコイド抽出物の使用も記載されている(国際特許公開第WO01/49305号)。
【0014】
さらに、US20070036877は、傷害の部位にチラコイド抽出物を直接適用するin vivoの局所適用は、無毛マウスにおけるUV誘発性皮膚損傷を防止または低減を示すことを開示している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】UVB誘発性組織損傷に対する抽出物の有効性を示す図である。非処置組織(対照)、抽出物を含まない組成物(ビヒクル)で処置した組織、ならびに抽出物0.1%(A)および0.01%(B)を含む組成物で処置した組織において、2つのレベルのUVB曝露(10kJ/m
2および25kJ/m
2)に曝露した後、損傷が観察された。
【
図2】UVA誘発性組織損傷に対する抽出物の有効性を示す図である。非処置組織(対照)、抽出物を含まない組成物(ビヒクル)で処置した組織、ならびに抽出物0.1%(A)および0.01%(B)を含む組成物で処置した組織において、2つのレベルのUVA曝露(250kJ/m
2および750kJ/m
2)に曝露した後、損傷が観察された。
【
図3】UVB誘導性シクロブタンピリミジンダイマー(CPD)形成に対する抽出物の有効性を示す図である。
【
図4】抽出物処置し、次いでUVB照射した後のCPD頻度の評価を示す図であり、(1)は低分子量のDNAフラグメントによって判定してUVBによって誘発される損傷を示し、(2)は非保護の組織において示されるよりも高分子量のDNAの存在によって判定して、抽出物によってもたらされる保護を示す。
【
図5】抽出物処置し、次いでUVB照射した後のCPD頻度の評価を示す図である。抽出物で処置した組織は、低分子量のDNAスメアによって判定して非保護のものよりも光酸化性損傷が少なかった。
【
図6】UVB誘発性組織損傷に対する抽出物および日焼け止めの相乗効果を示す図である。人工ヒト皮膚を、日焼け止め(SPF=7.5)単独、日焼け止めプラス0.01%抽出物、または日焼け止めプラス0.1%抽出物で30分間保護した。対照の組織は保護されなかった。保護された組織および非保護の組織を、25kJ/m
2のUVBに曝露し、または曝露しなかった。照射直後に生検を採取し、マッソン3色染料を用いて染色した。次いで、染色した切片を250×倍率の光学顕微鏡を用いて分析し、写真撮影した。
【
図7】UVA誘発性組織損傷に対する抽出物および日焼け止めの相乗効果を示す図である。人工ヒト皮膚を、日焼け止め(SPF=7.5)単独、日焼け止めプラス0.01%抽出物、または日焼け止めプラス0.1%抽出物で30分間保護した。対照の組織は保護されなかった。保護された組織および非保護の組織を、750kJ/m
2のUVAに曝露し、または曝露しなかった。照射直後に生検を採取し、マッソン3色染料を用いて染色した。次いで、染色した切片を250×倍率の光学顕微鏡を用いて分析し、写真撮影した。
【
図8】UVB誘発性CPDに対する抽出物および日焼け止めの相乗効果を示す図である。人工ヒト皮膚を、日焼け止め(SPF=7.5)単独、日焼け止めプラス0.01%抽出物、または日焼け止めプラス0.1%抽出物で30分間保護した。対照の組織は保護されなかった。保護された組織および非保護の組織を、25kJ/m
2のUVBに曝露し、または曝露しなかった。照射直後に生検を採取し、特異的な抗CPDモノクローナル抗体を用いて染色した。次いで、染色した切片を250×倍率の蛍光顕微鏡を用いて分析し、写真撮影した。
【
図9】UVB誘発性CPDに対する抽出物および日焼け止めの相乗効果を示す図である。人工組織を、日焼け止め(SPF=7.5)単独、日焼け止めプラス0.01%抽出物、または日焼け止めプラス0.1%抽出物で30分間保護した。対照の組織は保護されなかった。保護された組織および非保護の組織を、25kJ/m
2のUVBに曝露し、または曝露しなかった。照射直後にDNAを各試料から抽出し、T4endo-Vで処置し、電気泳動によって分画にした(C=対照、V=ビヒクル、M=分子量標準、SS=日焼け止め)。
【
図10】UVA誘発性光酸化損傷に対する抽出物および日焼け止めの相乗効果を示す図である。人工組織を、日焼け止め(SPF=7.5)単独、日焼け止めプラス0.01%抽出物、または日焼け止めプラス0.1%抽出物で30分間保護した。対照の組織は保護されなかった。保護された組織および非保護の組織を、750kJ/m
2のUVAに曝露し、または曝露しなかった。照射直後に、NthおよびFpgで処置した各試料からDNAを抽出し、次いで電気泳動によって分画にした(C=対照、V=ビヒクル、M=分子量標準、SS=日焼け止め)。
【
図11】UVB誘発性組織損傷の修復に対する抽出物の有効性を示す図である。人工組織を150kJ/m
2のUVBに曝露した。照射直後、組織に、ビヒクルまたは0.01%および0.1%の2つの濃度の抽出物を重層し、または重層しなかった。3時間後、生検を採取し、マッソン3色染料を用いて染色し、250×倍率の光学顕微鏡を用いて観察した。
【
図12】UVA誘発性組織損傷の修復に対する抽出物の有効性を示す図である。人工組織を250kJ/m
2のUVAに曝露した。照射直後、組織に、ビヒクルまたは0.01%および0.1%の2つの濃度の抽出物を重層し、または重層しなかった。3時間後、生検を採取し、マッソン3色染料を用いて染色し、250×倍率の光学顕微鏡を用いて観察した。
【
図13】UVB誘発性CPD形成の修復に対する抽出物の有効性を示す図である。人工組織を150kJ/m
2のUVBに曝露した。照射直後、組織に、ビヒクルまたは0.01%および0.1%の2つの濃度の抽出物を重層し、または重層しなかった。3時間後、生検を採取し、抗CPDモノクローナル抗体を用いて染色し、250×倍率の蛍光顕微鏡を用いて観察した。
【
図14】UVB誘発性CPDの修復に対する抽出物の有効性を示す図である。人工組織を150kJ/m
2のUVBに曝露した。照射直後、組織に、ビヒクルまたは0.01%および0.1%の2つの濃度の抽出物を重層し、または重層しなかった。3時間後、各試料からDNAを抽出し、T4endo-Vで処置し、電気泳動によって分画にした(C=対照、V=ビヒクル、M=分子量標準)。
【
図15】UVA誘発性光酸化損傷の修復に対する抽出物の有効性を示す図である。人工組織を250kJ/m
2のUVAに曝露した。照射直後、組織に、ビヒクルまたは0.01%および0.1%の2つの濃度の抽出物を重層し、または重層しなかった。3時間後、各試料からDNAを抽出し、NthおよびFpgで処置し、次いで電気泳動によって分画にした(C=対照、V=ビヒクル、M=分子量標準)。
【
図16】Corneometer(登録商標)によって測定した、0日目に比べた、1日目、7日目、および28日目の水和作用における改善のパーセントを示す図である。
【
図17】0日目に比べた、1日目、7日目、および28日目のUe(伸展性)の進化を示す図である。
【
図18】0日目に比べた、1日目、7日目、および28日目のUf(最大振幅)の進化を示す図である。
【
図19】0日目に比べた、1日目、7日目、および28日目のR9(疲労性)の進化を示す図である。
【
図20】0日目に比べた、1日目、7日目、および28日目のUr/Ue(ハリ)の進化を示す図である。
【
図21】0日目に比べた、1日目、7日目、および28日目のしわの面積を示す図である。
【
図22】0日目に比べた、1日目、7日目、および28日目のしわの全長の進化を示す図である。
【
図23】0日目に比べた、1日目、7日目、および28日目のしわの平均の長さの進化を示す図である。
【
図24】0日目に比べた、1日目、7日目、および28日目のしわの合計数を示す図である。
【
図25】0日目に比べた、1日目、7日目、および28日目のクラス1におけるしわの数の進化を示す図である。
【
図26】0日目に比べた、1日目、7日目、および28日目のクラス2におけるしわの数の進化を示す図である。
【
図27】0日目に比べた、1日目、7日目、および28日目のクラス3におけるしわの数の進化を示す図である。
【
図28】混合(1:1)し、10分間照射した脂肪酸およびクリーム製剤を示す照射ウエルを示す図である。
【
図29a】45℃で1時間インキュベート後(緑色および青色)ならびに2時間インキュベート後(暗緑色および赤色)、UV照射(10分)によって引き起こされる脂質過酸化に対するクリーム製剤の保護指数を示す図である。(略語:PBO、プラセボクリーム;PGD2、PurGenesisデイ(0.01%抽出物); PGN2、PurGenesisナイト(0.015%抽出物);PGE1、PurGenesisアイ(0.02%抽出物);EA、Elisabeth Arden Prevage;LM、LaMer)。最終濃度:脂肪酸10%(v/v);クリーム製剤;10%(p/v)。
【
図29b】45℃で1時間インキュベート後(緑色および青色)ならびに2時間インキュベート後(暗緑色および赤色)、UV照射(10分)によって引き起こされる脂質過酸化に対するクリーム製剤の保護指数を示す図である。酸化促進効果を100%で制限する。(略語:PBO、プラセボクリーム;PGD2、PurGenesisデイ(0.01%抽出物); PGN2、PurGenesisナイト(0.015%抽出物);PGE1、PurGenesisアイ(0.02%抽出物);EA、Elisabeth Arden Prevage;LM、LaMer)。最終濃度:脂肪酸10%(v/v);クリーム製剤;10%(p/v)。
【
図29c】45℃で1時間インキュベート後(緑色および青色)ならびに2時間インキュベート後(暗緑色および赤色)、UV照射(10分)によって引き起こされる脂質過酸化に対するクリーム製剤の保護指数を示す図である。(略語:PBO、プラセボクリーム;PGD2、PurGenesisデイ(0.01%抽出物);EA、Elisabeth Arden Prevage;LM、LaMer)。最終濃度:脂肪酸10%(v/v);クリーム製剤;10%(p/v)。
【
図29d】45℃で1時間インキュベート後(緑色および青色)ならびに2時間インキュベート後(暗緑色および赤色)、UV照射(10分)によって引き起こされる脂質過酸化に対するクリーム製剤の保護指数を示す図である。酸化促進効果を300%でカットオフする。PBO、プラセボクリーム;PGD2、PurGenesisデイ(0.01%抽出物); PGN2、PurGenesisナイト(0.015%抽出物);PGE1、PurGenesisアイ(0.02%抽出物);EA、Elisabeth Arden Prevage;LM、LaMer。最終濃度:脂肪酸、10%(v/v);クリーム製剤;10%(p/v)。
【
図29e】45℃で1時間インキュベート後(緑色および青色)ならびに2時間インキュベート後(暗緑色および赤色)、UV照射(10分)によって引き起こされる脂質過酸化に対するクリーム製剤の保護指数を示す図である。酸化促進物効果を200%でカットオフする。PBO、プラセボクリーム;PGD2、PurGenesisデイ(0.01%抽出物); PGN2、PurGenesisナイト(0.015%抽出物);PGE1、PurGenesisアイ(0.02%抽出物);EA、Elisabeth Arden Prevage;LM、LaMer。最終濃度:脂肪酸、10%(v/v);クリーム製剤;10%(p/v)。
【
図30】化粧用製剤ありおよびなしでtBHP(2mM)によって引き起こされるウシ赤血球の溶血を示す図である。
【
図31】I50の溶血;細胞損傷の50%を誘発する相対的インキュベート時間を示す図である。
【
図32】3つの化粧用製剤(抽出物濃度0.01%、0.015%、および0.02%)の相対的保護指数を示す図である。
【
図33】インキュベート125分後および225分後の3つの化粧用製剤(抽出物濃度0.01%、0.015%、および0.02%)に対するウシ赤血球溶血に対する保護指数の比較を示す図である。
【
図34】対照(tBHPなし):3連とクリーム中の対照を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
UVAおよびUVBの損傷から皮膚を保護するための抽出物の使用
本発明にしたがって、抽出物0.01%を含むもの、および抽出物0.1%を含むものの、2つの局所用組成物を開発した。
【0026】
UVAおよびUVB照射の人工光源、ならびに2つの濃度の抽出物を含む局所用組成物、およびいかなる抽出物も含まない局所用組成物を用いて、本発明者らは、非保護の(対照)EHSと比べた場合の、人工ヒト皮膚(EHS)における形態学的変化、CPD形成、およびDNA損傷を評価した。
【0027】
形態学的分析は、抽出物は、UVAの構造的損傷からEHSの保護をもたらすことを示していた。
【0028】
本発明者らは、光合成細胞抽出物を市販の日焼け止めローションに加えた場合、EHSにおけるUVA/UVB誘発性DNA損傷を低減することをさらに発見した。
【0029】
2つの濃度の抽出物を含む組成物は、UVBおよびUVAの両方によって誘発されるEHS構造上の損傷およびDNA損傷の修復において明らかな改善を実証した。したがって、本発明者らは、抽出物はUVA誘発性DNA光酸化損傷の修復を促進することを発見した。
【0030】
さらに、低濃度の抽出物(0.01%)を従来の日焼け止めに加えると、UV誘導性DNA損傷からの保護において驚くべき著しい増大が実証されることが示された。
【0031】
UVB誘発性EHS組織損傷に対する抽出物の有効性
本発明者らは、0.1%抽出物、0.01%抽出物、および抽出物なし(ビヒクル)を含む局所用組成物で処置したEHSを、非処置のEHS(対照)と比較した。EHSを10kJ/m
2および25kJ/m
2のUVBに曝露した。
図1に示す通り、UVBに曝露したEHSの様々な層(胚芽層(germinativum)、顆粒膜、有棘層(spinosum)、および角質層)は、UVB非曝露の組織に比べて、相互に識別することが難しかった。UVB照射量を10 kJ/m
2から25kJ/m
2に増大すると、角質層の肥厚によって決定して表皮組織崩壊における増大、および表皮細胞層の数における低減が存在した(
図1aおよび1e)。形態学的に分化したケラチノサイト(核が不鮮明で、細胞質が大きく、空胞の存在する大型の細胞)も、これらの照射した組織において誘発された。ビヒクル処置したEHSにおいて匹敵する変化が観察された(
図1bおよび1f)。抽出物保護されたEHSは組織または細胞の損傷のわずかな低減を示した(
図1c、1d、1g、および1h)。しかし、保護および非保護両方のEHSの様々な表皮層は依然として見ることができた。
【0032】
これらの組織学的分析は、両方の濃度(0.01%および0.1%)の抽出物を含む組成物は、UVB照射の照射量の上昇(10〜25kJ/m
2)からの効率的な組織構造保護物質として働かなかったことを示唆している。
【0033】
UVA誘発性EHS組織損傷に対する抽出物の有効性
本発明者らは、抽出物0.1%、抽出物0.01%、および抽出物なし(ビヒクル)を含む局所組成物で処置したEHSを、非処置のEHS(対照)と比較した。EHSを750kJ/m
2および250kJ/m
2のUVAに曝露した。
図2に示す通り、UVAに曝露したEHSの様々な層(胚芽層、顆粒膜、有棘層、および角質層)は、UVA非曝露の組織に比べて完全に組織崩壊されており、相互に識別することが難しかった。組織崩壊は、角質層の肥厚および表皮細胞層の数の低減によって決定して(
図2aおよび2e)、250kJ/m
2に比べて750kJ/m
2に曝露した後に高かった。形態学的に、本発明者らはUVA照射した表皮における細胞を同定することができなかった。ビヒクル処置したEHSにおいて、低い程度であるが、匹敵する変化が観察された(
図2dおよび2f)。それとは反対に、抽出物保護したEHSは、UVAによって誘発される組織または細胞の損傷のわずかな低減を示した。保護されたEHSの様々な表皮層は、両方の抽出物濃度に対して(0.01%および0.1%)、依然として見ることができた(
図2c、2d、2g、および2h)。これらの組織学的分析により、抽出物を含む組成物はUVA損傷から組織構造を保護することが明らかになった。
【0034】
UVB誘発性EHSのDNA損傷に対する抽出物の有効性
免疫蛍光顕微鏡検査法を用いて、本発明者らは、抽出物の、UVB曝露後のCPD形成および分布に対する効果を評価した。
図3に示す通り、10kJ/m
2および25kJ/m
2の2つの照射量のUVBは、非保護の(対照)EHSにおける表皮細胞のほとんどにおいてCPDを誘発した(
図3bおよび3f)。CPD陽性の核が表皮の全層にわたって分布し、基底層においてCPD染色された核の比率が高かった。ビヒクル処置の適用は、CPD陽性細胞の出現を妨げなかった(
図3cおよび3g)。CPD染色された細胞の数は、抽出物保護した(
図3d、3h、3e、および3i)組織に比べて、非保護の組織においてわずかに多く(
図3b、3f、3c、および3g)、CPDの形成の防止は著しくなかった。
【0035】
本発明者らは、中性グリオキサールゲル電気泳動を用いてCPD頻度も測定した。EHSの表皮におけるCPDの全体的な頻度に対するUVBの効果を
図4に示し、図中、低分子量のDNAフラグメントはUVB誘発性の損傷を示す。DNAフラグメント移動性分布の分析は、処置した組織全てにおいてはるかに小型のDNAフラグメントが存在したことを示していた。10kJ/m
2のUVBに曝露した後、DNAスメアによって明らかである通り、2つの濃度の抽出物を含む組成物は照射の間DNA損傷をわずかに防いだが、25kJ/m
2の照射では抽出物による保護は観察されなかった。
【0036】
これらの結果は、両方の濃度(0.01%および0.1%)の抽出物は、10kJ/m
2および25kJ/m
2のUVB照射によって誘発されるDNA損傷からEHS細胞を著しく保護しないことを指摘している。
【0037】
UVA誘発性のEHS細胞損傷に対する抽出物の有効性
本発明者らはまた、中性グリオキサールゲル電気泳動を用いてCPD頻度に対するUVAの効果を測定した。FpgおよびendoIIIで消化したDNAの中性グリオキサールゲル電気泳動から得られた結果(
図5)は、250kJ/m
2および750kJ/m
2のUVA照射の間のDNA損傷からのEHS細胞の保護において、いずれかの濃度の抽出物の著しい有効性を最終的に実証しなかった。
【0038】
抽出物プラス日焼け止めの使用
組織学的パラメータの評価は、抽出物を日焼け止め(SS)に加えてもUVAおよびUVB光線に対する日焼け止めの保護効果を低減せず、EHS組織に対する光感受性効果がないことを指摘している。しかし、抽出物を市販の日焼け止めに加えると、日焼け止め単独に比べた場合、UVAおよびUVBのDNA損傷からの保護において驚くべき著しい増大が実証される。
【0039】
結果は、市販の日焼け止めと抽出物との間の相乗効果を実証するものであり、抽出物を日焼け止めに加えると、UVB誘発性損傷からの細胞のDNA保護が著しく増大され、UVA誘発性光酸化損傷に対する保護能力が改善される。概して、抽出物を日焼け止めに加えると、UVA誘発性DNA損傷から著しく保護された。
【0040】
UVB誘発性EHS組織損傷に対する抽出物プラス日焼け止め(SS-抽出物)の有効性
図6に示す通り、25kJ/m
2のUVBへの曝露は組織崩壊を誘発した。UVBに曝露されたEHSの様々な層(胚芽層、顆粒膜、有棘層、および角質層)は、UVB非曝露の組織に比べて、相互に識別することが難しかった。形態学的に、照射した組織に存在する分化したケラチノサイト(核が不鮮明で、細胞質が大きく、空胞の存在する大型の細胞)は、UVB(25kJ/m
2)の有害な効果を確証するものであった。
図6f、6g、および6hは、UVB曝露の効果が、日焼け止め単独によって、およびSS-抽出物混合物によって妨げられたことを説明している。実際、日焼け止めと混合した抽出物の両方の濃度(0.01%および0.1%)に対して、保護されたEHSの異なる表皮層は依然として見ることができた(
図6gおよび6h)。非照射の組織において、SS-抽出物混合物は人工組織に対して構造上の変化を誘発しなかった(
図6cおよび6d)。
【0041】
UVA誘発性EHS組織損傷に対するSS-抽出物の有効性
図7に表す結果は、非保護の組織を750kJ/m
2のUVAに曝露すると組織崩壊を誘発することを示している。照射した組織において、角質層以外の非保護の組織(
図7a)において層(胚芽層、顆粒膜、有棘層、および角質層)の分化は存在しなかった。角質層は非常に厚く、UVA照射による組織および細胞の壊死が確認された。
図7gおよび
図7hを検討すると、UVA曝露の効果が、日焼け止め単独によって、およびSS-抽出物混合物によって妨げられたことが明らかである。実際、保護されているEHSの様々な表皮層は、日焼け止めと混合した抽出物の両方の濃度(0.01%および0.1%)に対して依然として見ることができる(
図7f、7g、および7h)。非照射の組織において、SS-抽出物混合物は、人工組織に対して構造上の変化を誘発しなかった(
図7cおよび7d)。
【0042】
UVB誘発性EHSのDNA損傷に対するSS-抽出物の有効性
免疫蛍光顕微鏡検査を用いて、本発明者らは、UVB曝露後のCPDの形成および分布に対するSS-抽出物の効果も評価した。
図8に示す通り、UVBへの曝露(25kJ/m
2)は、非保護(対照)のEHSにおける表皮細胞においてCPDを誘発した(
図8e)。CPD陽性の核が表皮の全層にわたって分布し、基底層においてCPD染色された核の比率は高かった。日焼け止めおよび両方の濃度(0.01%および0.1%)のSS-抽出物の適用は、照射した細胞においてCPDの形成を妨げた。抽出物と日焼け止めとの間の相乗効果を評価するために、中性グリオキサールゲル電気泳動を用いて評価を行った。EHSの表皮におけるCPDの全体的な頻度に対するUVB(25kJ/m
2)の効果を
図9に示す。DNAフラグメント移動性分布の分析は、はるかに小型のDNAフラグメントが、非保護の、および日焼け止め保護したEHSにおいて著しく存在したことを実証していた。しかし、組織をSS-抽出物の混合物(0.01%および0.1%)で保護し、UVBに曝露した場合、高分子量のDNAスメアの存在によって判断すると、CPD頻度の著しい低減が存在した。
【0043】
UVA誘発性EHSのDNA損傷に対するSS-抽出物の有効性
UVA照射は著しい量の光酸化損傷を生成することが知られているので、FpgおよびendoIIIで消化したDNAに対して中性グリオキサールゲル電気泳動を用いて評価を行った。DNAフラグメント移動性分布の分析は、はるかに小型のDNAフラグメントが非保護の組織中に著しく存在したことを示していた(
図10)。日焼け止め単独で保護した組織において、高分子量のDNAスメアの位置によって判断して、光酸化損傷が妨げられた。SS-抽出物(0.1%)保護した組織において、非保護の組織および日焼け止め保護した組織に比べた場合、より高い分子量のDNAスメアが本質的に存在した。
【0044】
これらの結果は、抽出物を日焼け止めローションに加えると、UVA誘発性光酸化損傷に対する抽出物の保護能力が著しく改善されることを説明している。概して、抽出物を日焼け止めに加えると、UVA誘発性DNA損傷から著しく保護された。
【0045】
UV誘発性の組織およびDNAの損傷を修復するための抽出物の使用
両方の濃度の抽出物(0.01%および0.1%)を含む組成物は、UVBおよびUVAの両方によって誘発されるEHSの構造的損傷およびDNA損傷の修復において明らかな改善を実証した。本発明者らは、抽出物がUVB誘発性組織損傷を修復し、UVB誘発性CPDの修復を非常に著しく促進し、UVA誘発性DNA光酸化損傷の修復を促進することを実証した。
【0046】
UVB誘発性EHS組織損傷の修復に対する抽出物の有効性
図11に示す通り、150J/m
2のUVBへの曝露が誘発する組織崩壊は、照射3時間後に修復されなかった。UVBに曝露されたEHSの様々な層(胚芽層、顆粒膜、有棘層、および角質層)は、相互に容易に識別できず、基底層が完全に非存在であることが明らかになった。これは、この照射された組織における細胞は、UVB照射によって高度に影響を受け、UVB誘発性損傷を修復することができなかったことを示唆していた。同じことをビヒクル処置した組織に言うことができ、ビヒクル処置した組織は分化したケラチノサイト(核が不鮮明で、細胞質が大きく、空胞の存在する大型の細胞)であることが明らかになった。
図11は、UVBの副作用は全て、抽出物を含む組成物で処置した組織において修復されたことを実証している。実際、保護されたEHSの様々な表皮層は、抽出物の両方の濃度(0.01%および0.1%)に対して依然として見ることができた。
【0047】
UVA誘発性EHS組織損傷の修復に対する抽出物の有効性
図12は、非保護の組織(対照)およびビヒクル保護した組織に対する250kJ/m
2のUVAへの曝露が誘発する組織崩壊は、基底層の非存在および角質層の肥厚によって実証される通り、3時間後に修復されなかったことを説明している。UVA誘発性の損傷は、基底層において特異的に、両方の濃度の抽出物(0.01%および0.1%)を含む組成物で処置した組織において修復された。これらの組織学的分析は、抽出物がUVA損傷した組織における修復過程を促進することを示唆している。
【0048】
UVB誘発性EHSのDNA損傷の修復に対する抽出物の有効性
免疫蛍光顕微鏡検査法を用いて、UVB誘発性CPDの修復に対する抽出物の効果を評価した。
図13に示す通り、CPD陽性細胞の数は、ビヒクル処置した組織に比べた場合、非保護の組織において非常に多かった。これとは反対に、両方の濃度の抽出物(0.01%および0.1%)を含む組成物で処置した組織中で3時間インキュベートした後、CPD陽性細胞は存在せず、UVB誘発性CPDの修復が著しく高かった(全体)ことを示していた。CPDの修復過程に対する抽出物の効果は、中性グリオキサールゲル電気泳動分析によって確認された。実際、
図14は、抽出処置した組織におけるDNAスメアは、非処置(対照)およびビヒクル処置した組織に比べた場合、高分子量に局在していた。
【0049】
UVA誘発性EHS細胞損傷の修復に対する抽出物の有効性
抽出物の修復の有効性を、FpgおよびendoIIIで消化したDNA上の中性グリオキサールゲル電気泳動を用いてUVA照射に対してやはり評価した。
図15に示す通り、DNAフラグメント移動性分布の分析により、抽出物処置したEHSにおけるよりも、非処置の組織(対照)およびビヒクル処置した組織においてはるかに小型のDNAフラグメントが明らかになった。実際、抽出物(0.01%および0.1%)を含む組成物で保護した組織、DNAスメアは高分子量に本質的に存在した。
【0050】
化粧上の有効性(水和作用、弾性、および抗プロフィロメトリー(anti-profilometry)効果)
本発明にしたがって、異なる3つの濃度の抽出物(0.01%、0.015%、および0.02%)を含む化粧用組成物を開発し、市販の化粧用クリームと比較した。用いたパラメータは、皮膚に対する水和作用、弾性、および抗プロフィロメトリー効果であった。
【0051】
1日目、7日目、および28日目の各対象の前頭部、こめかみ、目の下の領域、頬、および顎の領域上で得られた水和作用のデータを
図16に提供する。A群およびB群では3つ全ての測定点の、ならびにC群では28日目の、0日目に対する改善は著しかった。本発明の化粧用組成物は、28日目までの17%(対15%および6%)の統計上有意な皮膚の水和作用の最高レベルと関連していた。
【0052】
図17は、皮膚の即時伸展性または変形し易さを表す、Ueの進化を説明するものである。Ueにおける低減は、変形に対する皮膚の抵抗によって測定した、ハリにおける改善を示している。Ueのパラメータは、処置群Aに対して、1日目に5%、7日目に1%、および28日目に26%、徐々に低減した。1日目および7日目の低減はp<0.05で有意であり、28日目の低減はp<0.01で有意であった。処置群BおよびCもUeパラメータにおける低減を実証し、特に、28日目にB群では27%、C群では26%であった。これらの低減は、p<0.01で統計上有意であった。
【0053】
図18は、皮膚の最大振幅または最大変形を表し、年齢とともに増大するパラメータである、Ufの進化を説明するものである。処置群Aは1日目に最大変形における-5%の有意な低減(p<0.05)を実証し、それに対して処置群BおよびCは同時の測定でこの弾性パラメータにおいて改善が見られなかった。7日目、皮膚の最大変形は処置群Aおよび処置群Bにおいて有意に(p<0.05)改善し(6%対8%)、処置群Cでみとめられた改善は統計上有意ではなかった。28日目、3つの処置群全てが、以下の通り、皮膚の最大変形における改善を実証した:A群に対して25%、B群に対して28%、およびC群に対して27%。これらの改善は、p<0.01で統計上有意であった。
【0054】
皮膚の疲労性は、一般に年齢とともに増大するパラメータである。
図19において見られる通り、処置による有意な変化は、1日目および7日目の皮膚の疲労性に対して、A群、B群、およびC群に対して観察されなかった。しかし、28日目、3つの処置群全てにおいて皮膚の疲労性における低減がみとめられたが、処置群Aにおいて見られた改善だけが統計上有意であった(p<0.05)。
【0055】
Ur/Ueは、年齢とともに低減する正味の弾性またはハリを表し、皮膚の弾性の試験において最も重要なパラメータであると考えられている。1日目および7日目、
図20に示す通り、このパラメータに対して、処置に起因する著しい変化は観察されなかった。しかし、請求する化粧用組成物での処置は、28日目までにハリにおける5%の統計上有意な増大を実証した(p<0.05)。
【0056】
図21、22、および23に示す通り、本発明の化粧用組成物は、処置1日目という早期にベースラインに比べて以下のしわのパラメータにおける統計上有意な改善を示し、これは処置とともに規模が増大し、28日目に依然として著しかった:しわの面積1日目に-12%および28日目に-17%(各p<0.01)(
図21);しわの全長1日目に-11%および28日目に-13%(各p<0.01)(
図22);ならびにしわの平均長さ1日目に-5%および28日目に-11%(p<0.05およびp<0.01)(
図23)。
図24に見られる通り、1日目のしわの合計数において-7%の有意な改善(p<0.01)も、本発明の化粧用組成物で観察された。これとは対照的に、他の2つの高級製品ラインでの処置はしわのパラメータを改善したが、改善は本発明の化粧用組成物に対して見られる改善の規模の18%から47%にすぎず、ベースラインに比べて統計上有意ではなかった。
【0057】
しわのクラスに関して、また
図25、26、および27に示す通り、本発明の化粧用組成物は、処置1日目という早期に、クラス3(深い)のしわの数を-7%、有意でなく低減し、処置28日目のクラス3のしわにおけるベースラインからの有意な-13%(p<0.05)の低減および処置1日目のクラス2(中程度)のしわにおける-9%(p<0.01)の有意な低減をもたらした唯一の処置であった。他の2つの匹敵する高級製品ラインは、クラス3のしわを、28日目にそれぞれ+7%および+5%増大した。
【0058】
3つのいずれかの処置に対して、クラス1(細かい)のしわの数の低減において、有意な結果は見られなかった。しわの深さの統計学的分析は、3つのいずれかの処置に対して徐々に有意な低減を表さなかった。
【0059】
スピラントールとの相乗効果
スピラントールは、皮下の筋肉における収縮を阻害し、抗しわ製品として用いられていることが知られている、アクメラ・オレラシア(Acmella oleracea)抽出物である。スピラントールを光合成細胞抽出物と一緒に用いると、抗しわ化粧用組成物において相乗効果を引き起こす。
【実施例1】
【0060】
人工ヒト皮膚の調製
皮膚ドナーは、年齢15歳から20歳の健康な女性であった。先に記載されている乳房縮小手術(breast reduction surgery)の後、UV非曝露の正常ヒト皮膚生検からケラチノサイトおよび線維芽細胞を単離した。人工ヒト皮膚(EHS)を、仔ウシ皮膚I型およびIII型コラーゲン(2mg/ml、Sigma)を正常ヒト線維芽細胞(1.5×10
6細胞/ml)と混合して真皮を生成することによって生成した。組織を、5%ウシ胎仔血清補充培地で4日間培養し、次いでケラチノサイト(9×10
4/cm
2)を接種してEHSを得た。EHSを7日間、水浸条件下で増殖させ、次いでさらに5日間、空気-液体界面に上げて表皮を様々な層に分化させた。各段階を、同じ皮膚の生検から単離したケラチノサイトおよび線維芽細胞を用いて行った。
【0061】
抽出物処置およびUV照射
2つの濃度の抽出物(A=0.1%およびB=0.01%)を試験した。抽出物ビヒクル単独(抽出物処置において見出されたのと同じ濃度)を第1対照とした。正常の非処置組織を第2対照とした。体積60μlの抽出物またはそのビヒクルを、照射30分前にEHSの角質層上に適用した。3つの実験条件(非処置、ビヒクル処置、または抽出物処置)を試験した。培地由来の毒性物質のUV誘発性の形成を避けるために、照射前に、培養培地を、フェノールレッドおよびヒドロコルチゾンなしの照射培地(ウシ下垂体抽出物を補ったDME)によって置き換えた。EHSを含むペトリ皿を氷上に配置し、覆いをせずにEHSをUV光線に直接曝露した。3つの照射量のUVA(0kJ/m
2、250kJ/m
2、および750kJ/m
2)および3つの照射量のUVB(0kJ/m
2、10kJ/m
2、および25kJ/m
2)を用いて、処置および比処置のEHSを照射した。UVA源は、およそ360nmのピークを含む発光スペクトルを有するネオンBLB光45cm(BL-18番、15WUV、Ateliers Albert Inc.、Montreal、QC)であった。UVB源は、290nmから320nmの間にピークを含む発光スペクトルを有するFS20T12/UVB/BPランプ(Philips、Somerset、NJ)であった。施した照射量は全て、YSI Kettering 65A放射計(Yellow Springe Instruments、OH)を用いてモニタリングした。
【0062】
UV曝露後の組織学的および免疫組織化学的分析
照射直後に各EHSから生検を採取した。これらを、ブアン溶液で固定し、次いでパラフィン中に包埋するか、または最適な切断温度で直接包埋し、液体窒素中凍結し、使用まで-80℃で貯蔵した。パラフィン包埋した生検の薄い切片(4μm)をマッソン3色染料で染色して、他所に記載した通り、組織の構造を評価した。CPD評価に対して、UVBで照射した組織のみを用いた。この目的では、UVB照射した凍結した生検の薄いクリオスタット切片(4μm)を、特異的なマウスモノクローナルCPD抗体(Biomedical Technologies、Stoughton、CA)と一緒に室温で45分間インキュベートした。CPD抗体は、2本鎖または1本鎖DNA中UV誘発したチミジンダイマーと特異的に反応する。次いで、切片を、1:100希釈したヤギ抗マウス免疫グロブリン(Chemicon、Temecula、Calif)に対してフルオレセインイソチオシアネートコンジュゲート(FITC)中、室温で30分間インキュベートした。切片を、インキュベートの間に、リン酸緩衝食塩水で大々的に洗浄した。これらに、50%グリセロール封入剤中カバーガラスとともに搭載し、落射蛍光顕微鏡を用いて観察し、写真撮影した。
【0063】
太陽UV照射曝露後の分子分析
照射直後、表皮細胞を、先に記載した通り単離した。ホモジナイズ後、細胞を遠心分離し、細胞ペレットを2mlの0.15M NaCl; 0.005M EDTA pH7.8および2mlの0.02M Tris-HCl pH8.0; 0.02M NaCl; 0.02M EDTA pH7.8; 1% SDS中に再懸濁した。先に記載した通りDNAを精製し、UVB照射に特異的であるCPD光産物の全体的な頻度、およびUVA照射に特異的である光酸化損傷を評価するのに用いた。
【0064】
CPDを特異的に切断するために、UV照射したDNA10μgをH
2O50μl中に溶解した。以下の溶液: 10×二重バッファー(10×二重バッファー:500mM Tris-HCl pH7.6、500 mM NaCl、および10 mM EDTA)10μL、1M DTT 0.1μL、5mg/mL BSA 2μL、飽和量のT
4エンドヌクレアーゼVを含む溶液50μLを各DNA試料に加え、H
2Oで最終体積50μLにして完了した。反応を37℃で1時間行った。光酸化損傷を特異的に切断するために、UV照射したDNA10μgを水50μlおよび2×Nthタンパク質バッファー(100mM tris-HCl pH 7.6、200mM KCl、2 mM EDTA、0.2mMジチオスレイトール、200μg/mlウシ血清アルブミン)50μL中に溶解した。酵素(nthおよびfpg)を希釈バッファー(50mM tris-HCl pH 7.6、100mM KCl、1mM EDTA、0.1mMジチオスレイトール、500μg/mlウシ血清アルブミン、10% (v/v)グリセロール)5μlに加え、全消化体積は105μlであった。試料を37℃で60分間インキュベートした。エタノール沈降後、消化したDNAを再懸濁して最終濃度1μg/μLとした。
【0065】
各クラスの光生成物の全体的な頻度を、先に記載した通り、グリオキサール/ジメチルスルホキシド変性させたゲノムDNAの中性アガロースゲル電気泳動で決定した。簡潔に述べると、処置したDNA5μg/10μlを蒸留水中に溶解し、100mMリン酸ナトリウム、pH7.0 2μL、6Mグリオキサール(Sigma Chemical Co.、St. Louis、MO)3.5μL、およびジメチルスルホキシド10μLを加えた。DNA試料を50°Cで1時間インキュベートした。ローディング前にローディングバッファー(10mMリン酸ナトリウム、pH 7.0; 50%グリセロール; 0.25%キシレンシアノールFF) 3.8μLを加えた。ゲルを、バッファーを絶えず循環させ3〜4ボルト/cmでバッファーを流しながら、10mMリン酸ナトリウムpH7.0中を流した。ゲルを、TAE pH8.0中1×SYBR(登録商標)Gold核酸ゲル染色(S-11494) (Molecular Probes、Eugene、Oregon)溶液中2時間染色し、写真撮影した。DNA光生成物の1本鎖中断への酵素的変換後、全体の付加物の頻度を推定した。アガロースゲルによるDNAフラグメントの遊走により、これらの分子量による分離が可能となる(フラグメントが小さいほど遊走の距離が長くなる)。Willisらは、ランダムに切断されたDNA分子がゲル分画化される場合、各フラグメントの移動性は、移動範囲の中央にわたって分子量の対数に比例することを示している。したがって、DNA染色色素の最高強度の分子量を推定することによって、各DNAスメアのおよその質量を算出することができる。得られた数を2によって除し(各フラグメントは各終端に1個の光生成物を含んでいるので)、1メガベース(Mb)あたりの損傷の数として表した。
【実施例2】
【0066】
人工ヒト皮膚の調製
皮膚ドナーは、年齢15歳から20歳の健康な女性であった。先に記載されている乳房縮小手術の後、UV非曝露の正常ヒト皮膚生検からケラチノサイトおよび線維芽細胞を単離した。人工ヒト皮膚を、上記に記載した通り生成した。
【0067】
日焼け止めプラス抽出物処置およびUV照射
2つの濃度の抽出物(0.01%および0.1%)を、別々にSPF15の日焼け止め(SS)と混合したv/v。抽出物(0.01%および0.1%)と混合した後、得られた日焼け止めのSPFは7.5であった。ビヒクル(SPF7.5を有する日焼け止め)を対照とした。正常の非保護の組織を第2対照とした。SS-抽出物またはSS-ビヒクルの60μlの体積を、照射30分前、EHSの角質層上に適用した。照射手順は上記に記載したのと同じであった。2つの照射量のUVA(0kJ/m
2および750kJ/m
2)および2つの照射量のUVB(0kJ/m
2および25kJ/m
2)を用いて、保護および非保護のEHSを照射した。
【0068】
UV曝露後の組織学的および免疫組織化学的分析
照射直後、各EHSから生検を採取した。これらを、ブアン溶液で固定し、パラフィン中に包埋するか、または最適な切断温度で直接包埋し、液体窒素中凍結し、使用まで-80℃で貯蔵した。組織学的(マッソン3色染料)および免疫蛍光(CPD)分析を、上記に記載した通りに行った。CPD評価に対して、UVBを照射した組織だけを用いた。
【0069】
UV曝露後の分子分析
照射直後、表皮細胞を単離し、DNAを抽出するのに用いた。精製したDNAを用いて、UVB照射に特異的であるCPD光生成物の全体的な頻度、およびUVA照射に特異的である光酸化損傷を評価した。この目的では、本発明者らは、上記に記載した様々な段階を用いた。
【実施例3】
【0070】
人工ヒト皮膚の調製
皮膚ドナーは、年齢15歳から20歳の健康な女性であった。先に記載されている乳房縮小手術の後、UV非曝露の正常ヒト皮膚生検からケラチノサイトおよび線維芽細胞を単離した。人工ヒト皮膚を、上記に記載した通り生成した。
【0071】
UVに対する組織の曝露とその後の抽出物での処置
これらを生成した後、EHSを紫外線(UVAまたはUVB)源に曝露した。1照射量(250kJ/m
2)のUVAおよび1照射量(150J/m2)のUVBを用いて非保護のEHSを照射した。照射手順はセクション1.2に記載したものと同じであった。照射直後、組織を抽出物で処置した。体積60μlの抽出物またはそのビヒクルを、分析前に3時間、EHSの角質層上に適用した。
【0072】
組織学的および免疫組織化学的分析
インキュベート期間の後、各EHSから生検を採取した。これらを、ブアン溶液で固定し、パラフィン中に包埋するか、または最適な切断温度で直接包埋し、液体窒素中凍結し、使用まで-80℃で貯蔵した。組織学的(マッソン3色染料)および免疫蛍光(CPD)分析を、上記に記載した通りに行った。CPD評価に対して、UVBを照射した組織だけを用いた。
【0073】
UV曝露後の分子分析
インキュベート期間の後、表皮細胞を単離し、DNAを抽出するのに用いた。精製したDNAを用いて、UVB照射に特異的であるCPD光生成物の全体的な頻度、およびUVA照射に特異的である光酸化損傷を評価した。
【実施例4】
【0074】
年齢35歳から72歳(平均年齢54.6歳)の健康女性志願者72人の、比較上の化粧有効性試験(一重盲検、単施設、並行群デザイン)において、本化粧用組成物の有効性を28日の使用期間にわたって、2つの主要な市販の抗加齢ブランドの化粧用組成物と比較した。有効性パラメータは、皮膚の外観、水和作用、弾性、およびプロフィロメトリー(抗しわ効果)に対する効果を含んでいた。
【0075】
各志願者に、非有効成分と組み合わせて、抽出物0.01%、0.015%、および0.02%を含む本化粧用組成物の3つの製剤を、28日の期間にわたって用いるように、適用指示書とともに提供した。測定は、0日目、1日目、7日目、および28日目に行った。水和作用をCorneometer(登録商標)を用いて評価し、弾性をCutometer(登録商標)を用いて評価し、プロフィロメトリー測定をVisia-CR Imaging systemを用いて目の輪郭ゾーン(contour zone)のシリコーン複製物から取った。製品使用の検証を、製品試料を重量測定することによって決定した。
【0076】
最初の来所時(0日目すなわちD0)、志願者に、3つの試験処置(デイクリーム、アイローション、およびナイトクリーム)の1つの容器、毎回の適用後に完成させるフォローアップシート、ならびに28日の処置の後に完成させる自己評価アンケート用紙を無作為に配布した。
【0077】
志願者に、毎朝、顔面および手を(各自いつもの洗浄製品で)洗浄した後、各自の顔面のカラスの足跡領域を含めた目の輪郭領域をカバーするのに十分な量のアイローションを適用するように指示した。アイローションが十分に浸透した後、志願者は、目の輪郭領域を避けて各自の顔全体をカバーするのに十分な量のデイクリームを適用しなければならなかった。
【0078】
さらに、志願者に、毎朝、目の輪郭領域を避けて各自の顔全体をカバーするのに十分なナイトクリームを適用するよう指示した。
【0079】
他の全てのスキンケア製品(いつもの洗浄製品およびメーキャップを除く)の使用は、試験の間禁止した。各自のいつもの顔面洗浄剤またはメーキャップ製品のブランドに関する変更は、試験開始前の週の間も、試験の間も許可しなかった。
【0080】
0日目、12枚の顔面のデジタル写真(標準、交差分極(cross polarized)、UV、および平行偏光(Parallel Polarized)の4つの異なる画像モードにおいて、前向き、右横顔および左横顔)を、Visia-CR Imaging Systemを用いて撮影した。引き続き、温度(22℃±3)および相対湿度(30%±5)を制御した実験室において試験を行った。制御した部屋において15分安定化させた後、処置前のCorneometer(登録商標)を用いた水和作用の測定、Cutometer(登録商標)を用いた弾性の測定、および目の輪郭ゾーンのシリコーンインプリント(imprint)によるプロフィロメトリーをとった。
【0081】
D0に行った測定を、D1、D7、およびD28に、上記に記載したのと同じやり方で繰り返した。D1、D7、およびD28に、志願者は日誌を完成させるために戻る必要があった。志願者はまた、試験製品の未使用部分を有する試料容器を実験室に戻すことになっていた。試料容器の使用しなかった部分および日誌(日記を使用)は、プロトコールに対する志願者の遵守を評価しようとするものであった。
【0082】
水和作用
角質層の表皮の水分は、皮膚の電気的性質である静電容量に基づいた非侵襲性のin vivoの機器試験方法によって評価することができる。角質層は誘電体であり、水和状態における変化は全て静電容量における変化によって反映され、Corneomete(登録商標)によって任意の単位において表される。
【0083】
弾性
皮膚の外観は、皮膚の弾性の性質に関連し、それによって非常に影響を受ける。皮膚の弾性は、化粧品の使用により変化を受けやすい。皮膚の機械的特性および粘弾性特性における変化は、皮膚の弾性を反映する。弾性に関連するパラメータは、Cutometer(登録商標)SEM575(Courage and Khazaka、ドイツ)によって測定される。機器に、1秒に4回繰り返す皮膚上の制御された吸引(400mbarの真空)を含むプローブ(アパチャーの直径2mm)を装着する。各々の頬の中央から2回測定を行った。
【0084】
各測定部位に対する結果は、以下のパラメータとして表す:
Ue=真空の適用による「伸展性」または「即時弾性変形」
Uf=皮膚の「全体の振幅」または「最大振幅」(Ue+Uv)
Ur=「緊張度」
Ur/Ue=「正味の弾性」または「純粋な弾性」またはハリ
【0085】
最後に、4回の吸引後、Cutometer(登録商標)は皮膚の「疲労度」の尺度を提供する。
【0086】
抗しわ効果
志願者がまっすぐであるが座った姿勢を維持している間に、シリコーンポリマーを目の輪郭ゾーンの「カラスの足跡」領域上に適用することによって、目の輪郭ゾーンのインプリント(皮膚表面のネガ)を得た。本試験に用いたシリコーンポリマーは、Silfo(登録商標)(Flexico-Developments Ltd.、Potters Bar、イングランドのシリコーン製歯科用印象材)からなっていた。
【0087】
カラスの足跡のインプリントを、Quantirides(登録商標)ソフトウエア(Monoderm、モナコによるデザイン)に連結したコンピュータ化デジタル画像処理システムによって分析して、皮膚のトポグラフィを得た。この標準化された技術は、入射光線がレプリカ上35°の角度に傾いた時に投影される影を測定することに基づいている。
【0088】
分析したパラメータは、しわのある皮膚の合計面積、皮膚の解放による陥凹の数および平均深さ、ならびに深いしわおよび中等度のしわの深さであった。所与の製品の有効性をよりよく実証するために、処置の前および後に、しわを深さによって鑑別した(0〜55μmをクラス1、55〜100μmをクラス2、および110〜800μmをクラス3)。