特許第5952281号(P5952281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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5952281特定波長の光束を用いて基板を処理する方法および対応する基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952281
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】特定波長の光束を用いて基板を処理する方法および対応する基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/268 20060101AFI20160630BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20160630BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20160630BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   H01L21/268 F
   H01L21/02 B
   H01L21/265 Q
   H01L21/265 W
   H01L21/20
【請求項の数】17
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-527562(P2013-527562)
(86)(22)【出願日】2011年9月20日
(65)【公表番号】特表2013-541197(P2013-541197A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】EP2011065259
(87)【国際公開番号】WO2012031998
(87)【国際公開日】20120315
【審査請求日】2014年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】507088071
【氏名又は名称】ソイテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル ブリュエル
【審査官】 桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/052408(WO,A1)
【文献】 特表2012−507878(JP,A)
【文献】 特表2010−541273(JP,A)
【文献】 特開2008−135436(JP,A)
【文献】 特開2008−244188(JP,A)
【文献】 米国特許第04456490(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/268
H01L 21/02
H01L 21/20
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定波長の光束(IR)によって基板(1)を処理する方法であって、この基板(1)は、吸収性、すなわち温度と独立的に前記光束を吸収する埋込層(3)を含み、この埋込層は、第1層(2)と第2層(4)との間に挿入されており、第1半導体性層(2)は、室温において低く、かつこの温度が上昇するにつれて増大する、光束の吸収係数を有し、少なくとも1つのパルスの前記光束(IR)により、前記埋込層(3)の方向において、前記第1層(2)を照射することに従う方法であり、
− 前記光束(IR)は、前記第1層(2)の表面のいくつかの場所に適用され、前記埋込層(3)の区域を加熱し、前記埋込層(3)の加熱された区域と反対側への熱前線の伝播により、第1層(2)中に熱ピラー(P)を形成する加熱区域を発生させ、前記埋込層(3)を介して、前記第2層(4)内部に拘束を膨張および発生させることを特徴とし、および、
− 照射を実施して、第2層(4)の前記埋込層(3)との界面(I)の近傍において、第2層(4)中に初期破断を開始されるのに充分な拘束を生成させ、少なくとも構造欠陥の生成がこの領域を脆くすることを特徴とする
方法。
【請求項2】
前記照射の前に、前記基板(1)をそのウェーハの化学的および/または機械的処理にかけて、初期破断を発生させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理が、前記第2層の前記埋込層(3)との界面(I)のレベルにおける、前記基板のウェーハの切り込みによって実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記照射の前に、前記基板(1)の脆化処理を、前記第1層(2)内または前記第2層(4)内、前記埋込層(3)との界面(I)の近傍において、または前記埋込層自身の中で用いることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記脆化処理は、以下の技術:
熱処理と組み合わせられるか、または組み合わせられない原子種の注入、
その材料が前記第1層(2)および前記第2層(4)の残部のメッシュパラメータとは異なるメッシュパラメータを有する材料である中間層の形成
から選択されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記埋込層(3)は連続層であり、連続性の断絶を伴わないことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記埋込層(3)は、不連続層である、すなわち、別個の領域(31)の集合によって構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記基板(1)は、その吸収性埋込層(3)が,ドープされた層であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記吸収性埋込層(3)が,シリコンで作成されるドープされた層であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2層(4)の厚さは、前記第1層(2)の厚さより小さく、それらの厚さの比が1/2と1/100との間であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記光束(IR)が、レーザー放射であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記光束(IR)が、赤外のレーザー放射であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記赤外のレーザー放射が、10.6マイクロメートルのオーダーの波長を有することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
光束(IR)を用いて、円柱状またはテーパー状形態の少なくとも1つの放射の形態を具体化することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記第1層(2)の表面に沿って前進的に移動する光束(IR)を用いて、薄板状の放射の形態を具体化することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記埋込層が、吸収性であることに加えて、他の層(2,4)の材料または複数の材料よりも大きな熱膨張係数を有することを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記第1層(2)および前記第2層(4)の少なくとも一方は、シリコンで作成されることを特徴とする請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定波長の光束を用いて基板を処理するための方法、および対応する基板に関する。
【背景技術】
【0002】
Smart Cutの登録商標の下でよく知られている方法は、広く用いられている転写技術である。当該技術は、ドナー基板中に一定量の原子種またはイオン種を注入して、その中の特定の深さに脆化領域を形成する工程と、転写される薄層を画定する工程と、支持基板すなわち受容体基板上にドナー基板を接着する工程と、脆化領域のレベルにおけるドナー基板の破断を促して、受容体基板に接着している薄層の脱離を起こす工程とから一般的に構成される。
【0003】
そのような方法は、一般的に満足すべきものである。しかし、依然として、実施の総合コストに不可避的に影響する大量の原子種を必要とする。
【0004】
したがって、最終的に基板の薄層または厚い層を脱離し、効率的であり、汚れがなく、容易に実施される方法を用いる、ピースまたは基板を処理する別法に対する要求が依然として存在する。
【0005】
また、少なくとも1つの被加熱層および下層を含むプレートを少なくとも局部的に加熱する方法が開示されている(非特許文献1および特許文献1参照)。
【0006】
これらの文献において、下層は、特定波長の光束に関して吸収性であるという独特な特徴を有し、この吸収は温度条件とは独立的に起こる。
【0007】
同様に、被加熱層は、それ自身で、当該光束に関して室温において低く、この温度が上昇するに伴って増大する吸収係数を有するという独特の特徴を有する。
【0008】
この被加熱層が前記光放射によって照射される際に、光ビームにある程度の透過性を有する被加熱層を通過することによって吸収性下層を加熱することができる。
【0009】
この方法によって、非加熱層と下層とを分離する界面が加熱され、次いで、その界面に隣接する複数の層が加熱される。そのような加熱は、続いて、それらの層を吸収性とし、吸収性層から最も離れた層をますます吸収性にする。
【0010】
これは、速やかであり、非常に均質であり、かつ実質的に断熱的に進行する「熱前線(thermal front)」をもたらす。
【0011】
したがって、この方法は、基板の局所化された領域を相当な深さまで迅速に加熱する。その深さは、熱処理が介在する唯一の機構が熱拡散であることを保証された場合に、かつ著しく長い加熱期間の後にのみ、不適切に加熱されるであろうものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2921752号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Michel BRUEL、「Laser heatin of thick layers through the backwards, self-sustained propagation of a steep and steady state thermal front」、Eur. Phys. J. Appl. Phys., 45, 10304 (2009)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、そのような技術を用いて、基板の脆化をもたらすように基板を処理することを可能にしたことを見いだした。
【0015】
ある種の状況において、この脆化は、関心のある層の脱離をもたらすことができる。
【0016】
関連する用途における被制限的な例として、そのような層の厚さは、典型的には0.5〜50マイクロメートルの範囲内であることができる。
【0017】
したがって、本発明の1つの態様は、特定波長の光束を用いて基板を処理するための方法に関し、この基板は、吸収性である埋込層、すなわち、温度と独立的に前記光束を吸収する埋込層を含み、この埋込層は、第1層、前記処理層、および第2層の間に挿入されており、第2半導体層は、室温において低く、かつこの温度が上昇するにつれて増大する光束に対する吸収係数を有し、前記第1層は前記埋込層の方向において少なくとも1パルスの前記光束によって照射される方法は、以下の特徴を有する。
− 前記光束は、前記第1層の表面のいくつかの場所に適用され、埋込層の領域を加熱し、熱前線の伝搬によって、前記埋込層の加熱領域と対向して、この第1層の中に、熱ピラーを形成する加熱区域を発生させ、当該熱ピラーは、埋込層を介して第2層内部に拘束を膨張および発生させる。
− 照射を用いて、第2層において、前記埋込層との界面近傍において初期破断を開始するのに充分な拘束を生成し、最少の発生する構造的欠陥がこの領域を脆くする。
【0018】
他の有利かつ非制限的な特徴によれば、
− 前記照射の前に、前記基板を、そのウェーハを化学的および/または機械的処理にかけて、初期破断を生成させる。
− 前記処理は、実質的に第2層と前記埋込層との界面のレベルにおける、基板のウェーハの切れ込み(indentation)によって実施される。
− 前記照射の前に、前記基板の脆化処理を、前記埋込層との界面近傍における第1層または第2層中で、あるいは埋込層自身の中で実施することができる。
− 前記脆化処理は、以下の技術から選択することができる:熱処理と組み合わせられるか、または伴わない原子種の注入、ポロシフィケーション(porosification)、中間層(その材料が、前記層の残部のメッシュパラメータとは異なるメッシュパラメータを有する)の形成。
− 前記埋込層は、連続性の断絶(continuity solution)の存在しない連続層である。
− 前記埋込層は、不連続層である、すなわち、別個の領域の集合体から形成される。
− その吸収性埋込層がドープ層である基板が用いられ、ドープされた層はたとえばシリコンで形成される。
− 前記第2層の厚さは、好ましくは前記第1層の厚さより小さく、それらの厚さの比は1/2〜1/100である。
− 前記光束は、レーザー放射、たとえば、好ましくは10.6マイクロメートルのオーダーの波長を有する赤外である。
− 柱状またはテーパー状の形態の少なくとも1つの放射を有する形態に具体化される束を用いる。
− 前記第1層の表面に沿って前進的に移動し、薄板状の放射の形態を具体化する束を用いる。
− 吸収性であることに加えて、前記埋込層が、他の層の材料または複数の材料よりも大きな熱膨張係数を有することも可能である。
− 前記第1層および第2層の少なくとも一方はシリコンである。
【0019】
発明の別の特徴は、埋込層を含む基板に関し、埋込層は吸収性すなわち温度に独立的に特定波長の光束を吸収し;埋込層は、室温において低く、かつ後者が上昇するにつれて増大する光束に対する吸収係数を有する第1層と、第2層との間に挿入され;前記第2層の厚さは、前記第1層の厚さよりも小さく、それらの厚さの比は1/2と1/100との間である。
【0020】
本発明の他の特徴および利点は、いくつかの好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】発明に従う処理方法にかけることが適当である、埋込層を含む基板の概略断面図である。
図2】前記方法の実施を例示する、図1と同様の図である。
図3図2に例示される構造の詳細の拡大図である。
図4】基板の変形の実施形態の断面および簡略図である。
図5】本発明の方法の2つの実施形態の一方の簡略図である。
図6】本発明の方法の2つの実施形態の他方の簡略図である。
図7】本方法の別の変形の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本記載は、添付の図面を参照しつつ提供される。
【0023】
図1に示す基板は、本発明の方法に従って処理されるのに適当である。
【0024】
基板1は埋込層3を含み、埋込層3は第1層2と第2層4との間に挿入されている。
【0025】
「処理」層と呼ばれ、たとえばシリコンである第1層2は独特の特徴を有する。当該特徴は、室温において低く、この温度が上昇するのに伴って増大する、特定波長の光束の吸収係数を有するというものである。
【0026】
したがって、この層が、たとえば数1015原子/cm付近の濃度で低濃度ドープされたシリコンを含む際に、この材料は、遠赤外(たとえば10.6マイクロメートルのオーダーの波長)で放射されるレーザー型の放射に対して透明である。
【0027】
その上にある埋込層3は、たとえば、層2の上にエピタキシャル成長される層である。この層は、前述の光束に関して顕著に吸収性であり、かつ温度に実質的に独立的であるという独特の特徴を有する。
【0028】
それが半導体である場合、この層を吸収性にする1つの方法は、たとえば別の原子種を用いて層をドープすることである。
【0029】
したがって、この埋込層は、たとえば、厚さ1マイクロメートルを有し、たとえばホウ素、リンまたはヒ素の原子を1×1020原子/cmのオーダーの濃度でドープしたシリコンの層であることができる。
【0030】
第2層4は、それ自身、先行する層の上にエピタキシャル成長される層であり、たとえば同様にシリコン製である。
【0031】
この図において参照符号5で示されるものは、埋込層3との界面Iに非常に接近し、脆化されているという特徴を有する、層4の任意選択的区域である。
【0032】
この局所化された脆化処理は、よく知られている脆化処理によりその背面40から層4内で実施することができ、当該脆化処理は、熱処理と組み合わせられるかまたは組み合わせられない原子種の注入、あるいはこの区域5における細孔の形成(ポロシフィケーションの処理)のようなものである。
【0033】
処理の別の例は、中間層の形成であり、中間層の材料は、その残部の材料のメッシュパラメータとは異なるメッシュパラメータを有する。
【0034】
したがって、層4は、たとえば以下の様式で形成することができる:シリコン上に厚さ2μmのSi−Geのエピタキシャル成長層の形成、ここで、ゲルマニウムのパーセンテージは20%超であり、および、たとえば、その上に20μmの別のシリコン層をエピタキシーにより成長させる。
【0035】
有利なことには、本発明の目的物を形成する方法の適用が同様に層2内部の脆化の結果ではないように、第2層4の厚さは第1層2の厚さよりも小さく、それらの厚さの比は、好適かつ典型的には、1/2と1/100との間である。層2および層4の対応する厚さは、図2中に参照符号eBおよびeCで示されている。
【0036】
図2に示されるように、本発明に従う方法は、その前面20により、光束を用いて第1層2を照射することからなる。当該光束の波長は、この光束が埋込層3により吸収され、同時に少なくともその最初の瞬間において層2に対して透明であるように決定される。
【0037】
基板がシリコンに基づく上記の場合において、光束は、好ましくは赤外領域のレーザー放射である。
【0038】
これは、図2において黒い矢印で表わされ、参照符号IRで示される。
【0039】
この方法の第1のフェーズにおいて、赤外線は、層2全体を通過し、局所的に加熱される層3で吸収される。
【0040】
この加熱は、層3との界面I’のレベルにおいて層2へと広がり、その領域は、それらの吸収係数の累進的上昇によりますます透明性が低下する。
【0041】
光束IRが柱状形状またはテーパー状形状の放射の衝撃の形態で具体化される図2の実施形態において、参照符号Pで示される一連の熱「ピラー」が層2の内部に発生する。
【0042】
したがって、これらの「ピラー」は、層2の加熱領域であり、放射によって目標とされた層2の区域に対向して位置する。
【0043】
後者は、光放射のエネルギー出力および光放射の適用の継続時間の関数である高さeAを有する。
【0044】
本出願人は、層2の局所化された温度の上昇により、これら熱ピラーが、図3に示すように、拘束C、特に剪断性拘束を膨張および発生させ、当該拘束は、埋込層3を局所的に変形させ、かつ界面付近の第2層4に伝播される。
【0045】
したがって、本発明の方法は、第2層4の中、埋込層3との界面Iの近傍において、初期破断を開始させるのに充分なレベルの拘束に対する照射を用いることからなる。最低限に見積もっても、本方法は、層4内に構造欠陥を発生させ、層4を局所的に脆くする。
【0046】
以下の単純な規則が、拘束のレベルに関する条件を得るのに用いられるべきパラメータの値を決定するのに用いられる。
【0047】
それぞれの熱ピラーの温度およびその高さを選択して、自由空間(すなわち、構造内に見いだされるのではないように、孤立しているとみなす)において、鉛直(すなわち、垂直)方向におけるこの熱ピラーの理論的膨張を、少なくともその直径の4/1000に等しいようにする。
【0048】
たとえば、直径50μmの円柱形態に具体化される光束を用いて、50μmに実質的に等しい直径を有する熱ピラーを作る。それぞれのピラーの温度は、1273ケルビン、すなわち、室温とのデルタTが1000ケルビンまで導かれる。この温度範囲における平均の膨張係数は、2.5×10−6である。
【0049】
前述の基準を満足させるためのピラーの高さeAは、以下のように計算される。
eA×2.5×10−6×1000=(4/1000)×50、
すなわち、eA=80μm
【0050】
もちろん、任意選択的に、商業的に入手可能なシミュレーションソフトウェアを用いて、最適なパラメータを選択することができる。
【0051】
この初期破断は、前述のように、層4の基板の初期破断および/または脆化が区域5において実施された場合に、ますます使用が容易になる。
【0052】
初期破断は、そのウェーハの先行する化学的および/または機械的処理(たとえば、そこに切れ込みを形成する)にその基板をかけることからなる。
【0053】
この場合、最初の瞬間に、切れ込みの付近の照射を用いて、切れ込みに本来的に存在する初期破断をより一層接近して伝播させることが好ましい。
【0054】
同様に、eCがeBと比較して非常に小さいことのために、層4が変形し初期破断を発生させる能力はかなりのものであり、この開始部(initiation)はますます接近(closer and closer)して広がり、層4の一部を基板の残部から分離させ、追加の機械的拘束を作るであろう。
【0055】
図4を参照して、これは前述と同一の種類であるが、吸収性層3が連続ではない構造1を取り扱う。
【0056】
連続性の断絶との比較により、多数の別個の領域31、すなわち別個の領域31の集合からなり、吸収性材料の多数の「ブロック」を形成するように存在する。
【0057】
そのような「層」は、たとえば、構造の全表面上のエピタキシー、次いでマスクを通した局所化されたエッチングにより作成される。マスクを除去した後に、今度は、第2層4がエピタキシー成長される。
【0058】
たとえば、1つの代替法は、たとえば,マスクを通して1016原子/cmのオーダーの注入量にしたがうヒ素の注入、次いで3時間にわたる1050℃におけるアニーリングを進行させることである。
【0059】
したがって、図5および図6に示されるように、層2および層4の一方が、室温において低く、温度が上昇するにつれて増大する光束の吸収係数を有することによって、構造物は、下からまたは上から照射することができる。
【0060】
図8のスキームにしたがって、層3は、吸収性であることに加えて、その周囲に存在する材料、すなわち、層2および層4の材料よりも大きな熱膨張係数を有する。これは、構造物中の初期破断を形成する能力を高める。
【0061】
本発明に従う方法のいくつかの実施形態を、以下に記載する。
【実施例】
【0062】
(実施例1)
CVD型のエピタキシー技術を用いて、約200マイクロメートルの厚さを有し、n型に低濃度(1015原子/cm)ドープされたシリコン基板上に、1020原子/cmのホウ素濃度においてホウ素原子を大量にドープされた厚さ2.5マイクロメートルのシリコンの層を形成する。
【0063】
CVD型のエピタキシーにより、厚さ20マイクロメートルのn型の低濃度(数1015原子/cm)ドープシリコンの層を、この層の上に形成する。
【0064】
次いで得られる構造物を、p型ドープされたケイ素を優先的に攻撃することが専門家によく知られているエチレン−ジアミン・ピロカテコール水溶液中に、数分間にわたって浸す。よって、p型ドープされた層は、その周縁において化学的に攻撃される。
【0065】
基板(ウェーハ)の周縁部に、高さ約2.5マイクロメートル、深さ約10マイクロメートルの切れ込みが作成され、それによって、実質的にドープ層のレベルに、またはその付近に、破断の伝播の出発点として役立つことができる開始部が形成される。
【0066】
次に、継続時間600ナノ秒および20J/cmのエネルギーを有するパルス状の直径50ミクロンの円柱状光束の形態において、COレーザー光束を適用する。
【0067】
それぞれのバルスにおいて、実質的に50マイクロメートルの断面を有し、p型ドープ層から約60マイクロメートルの高さまで伸びる熱ピラーを形成する。ピラーの全高さにわたって実質的に均一である到達温度は、約1400℃である。
【0068】
好ましくは、これ以前の例とは独立的に、最初の熱ピラーを切れ込みの付近(百マイクロメートル以下の距離)に作成し、切れ込みに本来的に存在する初期破断を伝播させる。
【0069】
次いで、基板の全表面が熱ピラーの形成を経験する。それぞれの新規の熱ピラーは、先行するピラーが形成された点に十分に接近した距離(たとえば、100ミクロン未満)に構築され、破断がますます接近して伝播できるようにする。このピラーの形成は、レーザービームが連続的に放射し、各点においてのみレーザー光束が600ナノ秒待機するような速度で移動させるという意味において、連続的に実施することができる。
【0070】
(実施例2)
CVD型のエピタキシー技術により、厚さ約200マイクロメートルのSiの基板上に、1020原子/cmの濃度においてホウ素により高濃度でp型にドープされたSiの2.5マイクロメートルの層を形成する。
【0071】
CVD型のエピタキシーにより、この層の上方に厚さ2マイクロメートルのシリコン−ゲルマニウムの層を形成する。ここで、この層を作成する際のエピタキシー装置のガス流の動的調整により、ゲルマニウムの濃度は漸進的に変化し、層の基部における5%から、層の厚さの中央の25%に到達し、層の上部において約5%まで再び減少する。エピタキシーにより、Si−Geのこの層の上方に、厚さ20マイクロメートルのn型低濃度(数1015原子/cm)ドープ層を作成する。
【0072】
次いで、この構造物を、前述と同様に処理する。
【0073】
吸収性埋込層は、必ずしも、ドープされたシリコンで作成された層ではない。それは、光子(光束の成分)のエネルギーよりも小さいバンドギャップを有する、任意の半導体性層を含むことができる。それは単に酸化物の層であることもできる。
【0074】
(実施例3)
この場合において、第1層を、厚さ約20マイクロメートルの「真性」(すなわち、ドープされていない)Siで作成する。その上に、真性ゲルマニウム(非ドープ)の10マイクロメートルの吸収性層、および50マイクロメートルのSiGe(0.8/0.2)の層(第2層)を連続して形成する。光束は、1.08マイクロメートルに等しい波長のレーザーにより発生させる。
【0075】
(実施例4)
ここで、第1層は、(その表面に回路を含むプレートの接着および減厚により)回路が転写された、厚さ500マイクロメートルのシリコン基板である。厚さ20マイクロメートルの回路層は、第2層を構成する。回路の表面に酸化物の平坦化された層を形成し、この転写段階を可能にしていた。同様に第1層も酸化されていた。組み立ておよび減厚の後に、酸化物の1つまたは複数の層は、吸収性層を形成する。
【0076】
第1層に対する転写の後に、たとえば相互接続、接点などを形成することにより、回路の形成を完了することができる。
【0077】
次いで、この回路層(第2層)の露出した面を、最終支持体と組み合わせ、そして、本発明にしたがって10.6マイクロメートルの波長のレーザーを第1層の露出面に適用し、最終支持体に対して第1層を転写する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7