特許第5952305号(P5952305)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許59523052,2−ジフルオロ−1−クロロエタンから出発して2,2−ジフルオロエチルアミンを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952305
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】2,2−ジフルオロ−1−クロロエタンから出発して2,2−ジフルオロエチルアミンを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 209/62 20060101AFI20160630BHJP
   C07C 211/15 20060101ALI20160630BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160630BHJP
【FI】
   C07C209/62
   C07C211/15
   !C07B61/00 300
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-549821(P2013-549821)
(86)(22)【出願日】2012年1月20日
(65)【公表番号】特表2014-511347(P2014-511347A)
(43)【公表日】2014年5月15日
(86)【国際出願番号】EP2012050834
(87)【国際公開番号】WO2012101044
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2015年1月16日
(31)【優先権主張番号】11151873.4
(32)【優先日】2011年1月24日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/435,497
(32)【優先日】2011年1月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512137348
【氏名又は名称】バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】230105223
【弁護士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ルイ,ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ハインリツヒ,イエンツ−デイトマール
【審査官】 井上 千弥子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−308851(JP,A)
【文献】 特開2001−131177(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/074052(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/086394(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/123999(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/134327(WO,A1)
【文献】 EVANS ROBERT,2-FLUORO- AND 2,2-DIFLUOROETHYLNITROGUANIDINE,JOURNAL OF ORGANIC CHEMISTRY,1958年,V23,P1077-1078
【文献】 社団法人日本化学会,第5版 実験化学講座 14 有機化合物の合成II −アルコール・アミン−,2007年,第360〜363頁
【文献】 CHILDS,A.F. et al.,JOURNAL OF THE CHEMICAL SOCIETY,1948年,p.2174-2177
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,2−ジフルオロエチルアミンを調製する方法であって、以下の段階:
段階(i): 式(I)
【化1】



で表される2,2−ジフルオロ−1−クロロエタンを、塩基の存在下で、式(II)
【化2】








で表されるイミドと反応させて、式(III)
【化3】






で表される化合物を生成させること〔ここで、式(II)及び式(III)で表される化合物において、R及びRは、それぞれ互いに独立して、水素若しくはC−C−アルキルであり、又は、RとRはそれらが結合している炭素原子と一緒に6員芳香族環(ここで、該6員芳香族環は、置換されていてもよい)を形成する〕;
段階(ii): 式(III)で表される化合物を酸、塩基又はヒドラジンと反応させることによって、2,2−ジフルオロエチルアミンを切断すること;
を含んでいる、前記調製方法。
【請求項2】
式(II)で表される前記化合物が塩として存在している、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
式(II)で表される前記化合物が、スクシンイミド又はフタルイミドである、請求項1又は2に記載の調製方法。
【請求項4】
段階(i)における前記塩基が、第3級アミン類、置換されているか又は置換されていないピリジン類及び置換されているか又は置換されていないキノリン類、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルモルホリン、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2−メチル−5−エチルピリジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、4−ジメチルアミノピリジン、キノリン、キナルジン、N,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,4−ジアザシクロヘキサン、N,N−ジエチル−1,4−ジアザシクロヘキサン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノナン(DBN)、ジアザビシクロウンデカン(DBU)、ブチルイミダゾール、メチルイミダゾール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム及び酢酸ナトリウムから選択される、請求項1〜3の1項に記載の調製方法。
【請求項5】
段階(i)における前記塩基が、炭酸カリウム又は炭酸ナトリウムである、請求項1〜3の1項に記載の調製方法。
【請求項6】
使用される式(II)で表されるイミドに対する塩基のモル比が、0.8〜5の範囲内にある、請求項4又は5に記載の調製方法。
【請求項7】
段階(i)においてさらに触媒が存在し、そして、その触媒が、臭化アルカリ金属、ヨウ化アルカリ金属、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、臭化テトラアルキルアンモニウム、ヨウ化テトラアルキルアンモニウム、ハロゲン化テトラアルキルホスホニウム、ハロゲン化テトラアリールホスホニウム、テトラキス(ジメチルアミノ)ホスホニウムブロミド、テトラキス(ジエチルアミノ)ホスホニウムブロミド、テトラキス(ジプロピルアミノ)ホスホニウムクロリド、テトラキス(ジプロピルアミノ)ホスホニウムブロミド及びビス(ジメチルアミノ)[(1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−イリデン)アミノ]メチリウムブロミドから選択される、請求項1〜6の1項に記載の調製方法。
【請求項8】
前記触媒が、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム又は臭化テトラブチルアンモニウムである、請求項7に記載の調製方法。
【請求項9】
段階(ii)において無機酸を使用する、請求項1〜8の1項に記載の調製方法。
【請求項10】
前記無機酸が、塩酸、臭化水素酸、硫酸又はリン酸である、請求項9に記載の調製方法。
【請求項11】
式(III)で表される前記イミドに対する酸のモル比が、0.8〜100の範囲内にある、請求項1〜10の1項に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,2−ジフルオロ−1−クロロエタンから出発して2,2−ジフルオロエチルアミンを調製するための調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物2,2−ジフルオロエチルアミンは、活性物質の調製における重要な中間体である。2,2−ジフルオロエチルアミンを調製するためのさまざまな方法が知られている(例えば、Schwartzら、「Chem. Zentralblatt, Volume 75, 1904, pages 944−945」;Dickeyら、「Industrial and Engineering Chemistry, 1956, No. 2, 209−213」)。該既知調製方法は、低い収率で反応時間が極めて長いか又は当該反応混合物が腐食性が高いので不利であり、これらの理由により、該既知調製方法は工業規模で使用するのに適していない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Chem. Zentralblatt, Volume 75, 1904, pages 944−945
【非特許文献2】Industrial and Engineering Chemistry, 1956, No. 2, 209−213
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2,2−ジフルオロエチルアミンを調製するための上記既知調製方法を根幹として、2,2−ジフルオロエチルアミンを簡単で安価な方法でどのように調製し得るかという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、イミド中間体を最初に調製し、次いで、切断すれば、2,2−ジフルオロエチルアミンを特に有利に調製し得るということを見いだした。
【0006】
従って、本発明の対象は、2,2−ジフルオロエチルアミンを調製するための調製方法であって、ここで、該調製方法は、以下の段階:
段階(i): 式(I)
【化1】
【0007】
で表される2,2−ジフルオロ−1−クロロエタンを、酸捕捉剤(特に、塩基)の存在下で、式(II)
【化2】
【0008】
で表されるイミドと反応させて、式(III)
【化3】
【0009】
で表される化合物を生成させること〔ここで、式(II)及び式(III)で表される化合物において、R及びRは、それぞれ互いに独立して、水素若しくはC−C−アルキルであり、又は、RとRはそれらが結合している炭素原子と一緒に6員芳香族環(ここで、該6員芳香族環は、置換されていてもよい;好ましくは、該6員芳香族環は、ハロゲン又はC−C12−アルキルで置換されていてもよい)を形成する〕;
段階(ii): 式(III)で表される化合物を酸、塩基又はヒドラジンと反応させることによって、2,2−ジフルオロエチルアミンを切断すること;
を含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
段階(i)で使用される式(II)のイミドは、塩として存在することも可能である。そのような塩は、一部の例では、市販されている(例えば、フタルアミドのカリウム塩)。本発明による調製方法において、該塩を使用する前に、式(II)で表されるイミドを、適切な塩基と反応させることによって、塩に変換することも可能である。適切な塩基は、当業者には知られているか、又は、本発明において酸捕捉剤として挙げられている塩基を包含する。
【0011】
本発明による調製方法においては、式(II)〔式中、R及びRはそれぞれ水素である(即ち、スクシンイミド)、又は、RとRはそれらが結合している炭素原子と一緒に6員芳香族環を形成する(即ち、フタルアミド)〕で表される化合物を使用するのが好ましい。式(II)で表される化合物としてスクシンイミドを使用する場合、段階(i)において式(III−a)で表される化合物が得られ、この化合物は新規である。式(II)で表される化合物としてフタルアミドを使用する場合、段階(i)において式(III−b)で表される化合物が得られる:
【化4】
【0012】
本発明による調製方法は、下記スキームによって例証することができる:
【化5】
【0013】
2,2−ジフルオロ−1−ハロエタン化合物は塩基性条件下で反応してHCl、HBr又はHIが除外されてフッ化ビニリデンを生成し、従って、もはや段階(i)の反応には利用できないといことは、「Chemistry of Organofluorine Compounds (1976), 2nd edition, pp.489−490」及び「Houben Weyl, E 10b/2, pp.92−98」から知られているにもかかわらず、並びに、2,2−ジフルオロエチルアミンは極めて反応性が高く、従って、得られた式(III)で表されるイミドが段階(i)の本発明による反応条件下でさらに反応するであろうことが極めて起こりそうであるということは、「J. Org. Chem., 2007, 72 (22), p.8569」から知られているにもかかわらず、本発明者らは、驚くべきことに、式(III)で表されるイミドが極めて良好な収率及び極めて良好な純度で得られるということを見いだした。従って、大規模な精製は無しで済ますことができる。結局、目標化合物である2,2−ジフルオロエチルアミンも、それに応じて、段階(i)で使用される出発物質に基づいて極めて良好な収率で得られる。
【0014】
さらに、段階(i)で使用される2,2−ジフルオロ−1−クロロエタンが極めて良好に且つ90%を超える収率で式(III)で表されるイミドに変換され得るということも驚くべきことであった。正確に言えば、クロロアルカン類は、ブロモアルカン類又はヨードアルカン程反応性は高くなく、従って、イミド類(特に、置換されているか又は置換されていないフタルイミド類)とは効率的には反応しないということは知られている。
【0015】
N−(2,2−ジフルオロエチル)フタルイミド(これは、式(III−b)で表される化合物に対応する)を調製するために2,2−ジフルオロ−1−ブロモエタンを使用することは、知られており、そして、Evans,R., Milani,V., Hafner,L.S.及びSkolnik,Sol.によって、「Journal of Organic Chemistry (1958), 23, pp.1077−1078」に記載されている。記載されている反応では、2,2−ジフルオロ−1−ブロモエタンを、210℃で、DMF中でカリウムフタルイミドと反応させ、それによって、N−(2,2−ジフルオロエチル)フタルイミドが47%の収率で得られる。
【0016】
N−(2,2−ジフルオロエチル)フタルイミドの調製に関して、Evansらによって記載された方法は、第1に、該方法は極めて高温で実施しなければならなず、及び、第2に、その収率が僅かに47%にすぎないので、不利である。該調製方法は、さらに、反応中に、使用する2,2−ジフルオロ−1−ブロモエタンの質量の約50%が臭素の分子量が大きいことに起因して失われるので、望ましくない物質収支を示す。
【0017】
用語「物質収支」は、一般に、生産システムの投入される物質の量と産出される物質の量の間のタイプによる規則正しい比較を意味するものと理解される。良好な物質収支の場合、投入される量(質量)は産出される量(質量)に対応する。
【0018】
本発明による反応において2,2−ジフルオロ−1−クロロエタンを使用することは、より良い物質収支を示す反応の一因である。
【0019】
式(II)で表される化合物は、知られているか、市販されているか、又は、通常の方法で調製することができる。
【0020】
特に別途示されていない限り、表現「アルキル」は、それ単独でも、又は、例えば、本発明による触媒に関連して言及されているように、別の用語と組み合わされていても(例えば、臭化テトラアルキルアンモニウム、ヨウ化テトラアルキルアンモニウム又はハロゲン化テトラアルキルホスホニウム)、最大で12個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の飽和炭化水素鎖、即ち、C−C12−アルキルを意味し、好ましくは、最大で6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の飽和炭化水素鎖、即ち、C−C−アルキルを意味し、極めて好ましくは、最大で4個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の飽和炭化水素鎖、即ち、C−C−アルキルを意味する。そのようなアルキルの例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル及びn−ドデシルである。該アルキルは、適切な置換基(例えば、ハロゲン)で置換され得る。
【0021】
特に別途示されていない限り、表現「アリール」又は「6員芳香族環」は、フェニル環を意味する。
【0022】
特に別途示されていない限り、「ハロゲン」又は「hal」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。
【0023】
段階(i)における式(I)で表される2,2−ジフルオロ−1−クロロエタンと式(II)で表されるイミドの反応は、ニートでも(即ち、溶媒を添加しなくても)又は溶媒の存在下でも、実施することが可能である。
【0024】
段階(i)において当該反応混合物に溶媒を添加する場合、その溶媒は、好ましくは、当該反応混合物がそのプロセス全体を通して充分に撹拌できる状態にあるような量で使用する。使用する2,2−ジフルオロ−1−クロロエタンの体積に基づいて、有利には、1〜50倍の量の、好ましくは、2〜40倍の量の、特に好ましくは、20〜20倍の量の該溶媒を使用する。用語「溶媒」は、本発明によれば、純粋な溶媒の混合物も意味するものと理解される。
【0025】
当該反応条件下において不活性である全ての有機溶媒は、適切な溶媒である。本発明による適切な溶媒は、特に、以下のものである:エーテル類(例えば、エチルプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、n−ブチルエーテル、アニソール、フェネトール、シクロヘキシルメチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルグリコール、ジフェニルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、並びに、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドポリエーテル類);テトラヒドロチオフェンジオキシドのような化合物、及び、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジプロピルスルホキシド、ベンジルメチルスルホキシド、ジイソブチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド又はジイソアミルスルホキシド;スルホン類、例えば、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、ジブチルスルホン、ジフェニルスルホン、ジヘキシルスルホン、メチルエチルスルホン、エチルプロピルスルホン、エチルイソブチルスルホン及びテトラメチレンスルホン;脂肪族炭化水素類、シクロ脂肪族炭化水素類又は芳香族炭化水素類(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、例えば、沸点が例えば40℃〜250℃の範囲内にある成分を含んでいるホワイトスピリット、シメン、沸点間隔(boiling point interval)が70℃〜190℃の範囲内にあるベンジンフラクション、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテル、リグロイン、オクタン、ベンゼン、トルエン又はキシレン);ハロゲン化芳香族化合物(例えば、クロロベンゼン又はジクロロベンゼン);アミド類(例えば、ヘキサメチルホスホルアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジプロピルホルムアミド、N,N−ジブチルホルムアミド、N−メチルピロリジン、N−メチルカプロラクタム、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジン、オクチルピロリドン、オクチルカプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリンジオン、N−ホルミルピペリジン又はN,N’−1,4−ジホルミルピペラジン);ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、n−ブチロニトリル、イソブチロニトリル又はベンゾニトリル);ケトン類(例えば、アセトン);又は、それらの混合物。
【0026】
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチレンスルホン及びN−メチルピロリドンが、段階(i)における好ましい溶媒である。
【0027】
段階(i)において、場合により、触媒を存在させる/添加することも可能である。
【0028】
2,2−ジフルオロ−1−クロロエタンとの反応を促進する全ての触媒は、本発明による調製方法において使用するのに適している。適切な触媒の混合物も考えられる。本発明に従って特に適しているものは、以下のものである:アルカリ金属の臭化物及びヨウ化物(例えば、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム又は臭化カリウム);臭化アンモニウム及びヨウ化アンモニウム;臭化テトラアルキルアンモニウム及びヨウ化テトラアルキルアンモニウム(例えば、ヨウ化テトラエチルアンモニウム又は臭化テトラブチルアンモニウム);特定のハロゲン化ホスホニウム、例えば、ハロゲン化テトラアルキルホスホニウム又はハロゲン化テトラアリールホスホニウム(例えば、臭化ヘキサデシルトリブチルホスホニウム、臭化ステアリルトリブチルホスホニウム、臭化テトラブチルホスホニウム、臭化テトラオクチルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム及び臭化テトラフェニルホスホニウム)、テトラキス(ジメチルアミノ)ホスホニウムブロミド、テトラキス(ジエチルアミノ)ホスホニウムブロミド、テトラキス(ジプロピルアミノ)ホスホニウムクロリド又はテトラキス(ジプロピルアミノ)ホスホニウムブロミド;及び、ビス(ジメチルアミノ)[(1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−イリデン)アミノ]メチリウムブロミド。
【0029】
本発明による調製方法においては、触媒として、好ましくは、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化テトラブチルアンモニウム又は臭化テトラフェニルホスホニウムを使用し、及び、特に好ましくは、臭化テトラブチルアンモニウムを使用し、特に、臭化テトラ(n−ブチル)アンモニウム、ヨウ化ナトリウム又はヨウ化カリウムを使用する。
【0030】
該触媒は、例えば、HBr又はHIをアンモニアと反応させることによって、その場で製造することも可能である。さらに、該触媒は、反応性が高い臭化アルキル又はヨウ化アルキル(例えば、臭化メチル、臭化エチル、ヨウ化メチル又はヨウ化エチル)を添加することによって、その場で製造することも可能である。
【0031】
本発明による調製方法においては、該触媒は、使用される式(II)で表されるイミドに基づいて、約0.01〜約25重量%の濃度で使用する。さらに高い濃度は、原理的には可能である。該触媒は、好ましくは、約0.2〜約25重量%の濃度で、特に好ましくは、約0.4〜約20重量%の濃度で、及び、極めて特に好ましくは、約0.5〜約15重量%の濃度で、使用する。しかしながら、該触媒は、好ましくは、約0.05〜約4重量%の濃度で、約0.1〜約11重量%の濃度で、又は、約0.5〜約11重量%の濃度で、使用することも可能である。
【0032】
段階(i)の反応は、有利には、当該反応中に遊離される塩化水素に結合することが可能な1種類以上の酸捕捉剤の存在下で実施し、それによって、収率が高くなる。
【0033】
遊離された塩化水素に結合することが可能な有機塩基及び無機塩基は、適切な酸捕捉剤である。有機塩基の例は、第3級窒素塩基、例えば、第3級アミン類、置換されているか又は置換されていないピリジン類及び置換されているか又は置換されていないキノリン類、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルモルホリン、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2−メチル−5−エチルピリジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、4−ジメチルアミノピリジン、キノリン、キナルジン、N,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,4−ジアザシクロヘキサン、N,N−ジエチル−1,4−ジアザシクロヘキサン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノナン(DBN)、ジアザビシクロウンデカン(DBU)、ブチルイミダゾール及びメチルイミダゾールである。
【0034】
無機塩基の例は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸水素塩又は炭酸塩、及び、別の無機水性塩基である;好ましいのは、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム及び酢酸ナトリウムである。炭酸カリウム又は炭酸ナトリウムが、極めて特に好ましい。
【0035】
使用される式(II)で表されるイミドに対する酸捕捉剤のモル比、特に、上記塩基のモル比は、約0.8〜約5の範囲内、好ましくは、約0.9〜約4の範囲内、特に好ましくは、約1〜約3の範囲内にある。さらに多い量の塩基を使用することも技術的には可能である。
【0036】
使用される式(II)で表されるイミドに対する2,2−ジフルオロ−1−クロロエタンのモル比は、通常、約0.3〜約30の範囲内、好ましくは、約0.5〜約10の範囲内、及び、特に好ましくは、約1〜約8の範囲内、又は、約1〜約4の範囲内、又は、約2〜約4の範囲内にある。該2,2−ジフルオロ−1−クロロエタンは、溶媒として使用することも可能であり、その場合、上記比は、相応して大きくなる。
【0037】
式(II)で表されるイミド及び該塩基は、2,2−ジフルオロ−1−クロロエタンの中に導入することも可能である。
【0038】
段階(i)の反応は、耐圧性密閉試験容器(オートクレーブ)内で、原則として、内因性圧力下で実施する。反応中の圧力(即ち、内因性圧力)は、使用される反応温度に依存し、2,2−ジフルオロ−1−クロロエタンの量に依存し、及び、段階(i)において溶媒が存在している場合には、使用される溶媒に依存する。圧力を増大させることが望まれる場合、圧力の付加的な増大は、窒素又はアルゴンなどの不活性ガスを添加することによって達成することができる。
【0039】
本発明による調製方法は、連続的に、又は、バッチ式で、実施することができる。本発明による調製方法の一部の段階を連続的に実施し、そして、残りの段階をバッチ式で実施することも考えられる。本発明の意味の範囲内において、連続的な段階は、化合物(出発物質)の反応器への流入と化合物(生成物)の反応器からの流出が同時に、しかし、離れた場所で起こるような段階であり、一方、バッチ式段階では、一連の化合物(出発物質)の流入と場合により化学反応と化合物(生成物)の流出が次々と経時的に起こる。
【0040】
段階(i)の実施においては、その内部温度は、約90℃〜約160℃の範囲内にあるのが好ましく、特に好ましくは、約90℃〜約140℃の範囲内にある。
【0041】
段階(i)における反応の反応時間は短く、そして、約0.5〜約20時間の範囲内にある。さらに長い反応時間も可能であるが、経済的に有益ではない。
【0042】
段階(i)からの反応混合物は、その生成物の物理的特性に応じて後処理する。フタルイミド又は置換されているフタルイミドを式(II)で表される化合物として使用する場合、最初に、溶媒を減圧下で除去する。スクシンイミドを式(II)で表される化合物として使用する場合、最初に、固体を濾過する。その後、反応混合物の「希釈」(即ち、その中で塩が溶解し得る水の添加)を、通常、実施する。次いで、生成物を、濾過によって単離することができるか、又は、有機溶媒を使用して水相から抽出することができる。
【0043】
段階(ii)において、2,2−ジフルオロエチルアミン又はその塩を生成させるための式(III)で表されるイミドを切断は、酸、塩基又はヒドラジンを添加することによって実施する。好ましくは、酸又はヒドラジンを段階(ii)で使用する。
【0044】
段階(ii)において使用することが可能な塩基は、当業者には知られているか、又は、本発明において酸捕捉剤として挙げられている塩基を包含する。段階(ii)において使用する酸は、有機酸又は無機酸であり、好ましくは、無機酸を使用する。本発明によるそのような好ましい無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸である。
【0045】
段階(ii)における式(III)で表されるイミドの切断は、適切な溶媒の中で実施する。ここでも、該溶媒は、好ましくは、当該反応混合物がそのプロセス全体を通して撹拌できる状態にあるような量で使用する。使用する式(III)で表されるイミドに基づいて、有利には、約1〜50倍(v/v)の量の、好ましくは、約2〜40倍の量の、特に好ましくは、2〜10倍の量の該溶媒を使用する。
【0046】
当該反応条件下において不活性である全ての有機溶媒が、溶媒として使用可能である。用語「溶媒」は、本発明によれば、純粋な溶媒の混合物も意味するものと理解される。
【0047】
段階(ii)において本発明に従って適している溶媒は、特に、以下のものである:
水、エーテル類(例えば、エチルプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、n−ブチルエーテル、アニソール、フェネトール、シクロヘキシルメチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルグリコール、ジフェニルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、並びに、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドポリエーテル類);脂肪族炭化水素類、シクロ脂肪族炭化水素類又は芳香族炭化水素類(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、例えば、沸点が例えば40℃〜250℃の範囲内にある成分を含んでいるホワイトスピリット、シメン、沸点間隔(boiling point interval)が70℃〜190℃の範囲内にあるベンゼンフラクション、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテル、リグロイン、オクタン、ベンゼン、トルエン又はキシレン);直鎖カルボン酸及び分枝鎖カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸及びイソ酪酸)及びそれらのエステル類(例えば、酢酸エチル及び酢酸ブチル);アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール及びイソブタノール)、又は、それらの混合物。段階(ii)における本発明による好ましい溶媒は、メタノール、エタノール及び水又はそれらの混合物である。
【0048】
使用される式(III)で表されるイミドに対する酸又はヒドラジンのモル比、約0.8〜約100の範囲内、好ましくは、約1〜約20の範囲内、特に好ましくは、約1.1〜約10の範囲内にある。さらに多い量の酸又はヒドラジンを添加することも、原理的には可能である。適切な取扱い性を有している場合、該酸は溶媒として使用することも可能である。
【0049】
段階(ii)における切断は、約0℃〜約150℃の範囲内の温度で実施することができる。該内部温度は、好ましくは、約20℃〜約130℃の範囲内にある;それは、特に好ましくは、約40℃〜110℃の範囲内にある。
【0050】
該切断に関する反応時間は短く、そして、約0.1〜12時間の範囲内にある。さらに長い反応時間も可能であるが、経済的に有益ではない。
【0051】
該反応が終了した後、得られた2,2−ジフルオロエチルアミンは、蒸留によって精製することができる。あるいは、該2,2−ジフルオロエチルアミンは、塩(例えば、塩酸塩)として単離及び精製することもできる。該2,2−ジフルオロエチルアミン塩は、その後、塩基を添加することによって遊離させることができる。
【0052】
本発明について下記実施例によってさらに充分に記述するが、本発明は、これによってそれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0053】
調製実施例
実施例1: 2−(2,2−ジフルオロエチル)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオンの調製(段階(i))
【化6】
【0054】
実施例1.1
27.6g(0.269mol)の量の2,2−ジフルオロ−1−クロロエタン、2.16g(6.73mmol)の臭化テトラ(n−ブチル)アンモニウム及び20g(0.135mol)のフタルイミドを95gのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させ、46.96g(0.336mol)の炭酸カリウムで処理する。その反応混合物を、オートフレーブ内で加圧下に、120℃で16時間撹拌する。その反応が終了した後、周囲温度まで冷却し、溶媒を減圧下で完全に除去する。残った残渣を150mLの水で処理し、固体を濾過する。そのフィルター残渣を水で2回洗浄し、生成物を減圧下で乾燥させる。28.5gの量の2−(2,2−ジフルオロエチル)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン(純度97.4%)が得られる。これは、理論値の97.7%の収率に相当する。
【0055】
Н NMR(CDCl):7.91(d,2H),7.7(d,2H),6.06(tt,1H),4.07(dt,2H)。
【0056】
実施例1.2
27.6g(0.269mol)の量の2,2−ジフルオロ−1−クロロエタン、2.16g(6.73mmol)の臭化テトラ(n−ブチル)アンモニウム及び20g(0.135mol)のフタルイミドを95gのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させ、28.18g(0.201mol)の炭酸カリウムで処理する。その反応混合物を、オートクレーブ内で加圧下に、120℃で16時間撹拌する。その反応が終了した後、周囲温度まで冷却し、溶媒を減圧下で完全に除去する。残った残渣を100mLの水で処理し、固体を濾過する。そのフィルター残渣を水で2回洗浄し、生成物を減圧下で乾燥させる。24.9gの量の2−(2,2−ジフルオロエチル)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン(純度99.5%)が得られる。これは、理論値の87.2%の収率に相当する。
【0057】
Н NMR(CDCl):7.91(d,2H),7.7(d,2H),6.06(tt,1H),4.07(dt,2H)。
【0058】
実施例1.3(比較実施例)
21.4g(0.214mol)の量の2,2−ジフルオロ−1−クロロエタン及び20g(0.107mol)のカリウムフタルイミドを95gのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させる。その反応混合物を、オートクレーブ内で加圧下に、120℃で12時間撹拌する。その反応が終了した後、周囲温度まで冷却し、溶媒を減圧下で完全に除去する。残った残渣を100mLの水で処理し、固体を濾過する。そのフィルター残渣を水で2回洗浄し、生成物を減圧下で乾燥させる。22.5gの量の2−(2,2−ジフルオロエチル)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン(純度59%しかない)が得られる。これは、理論値の59%の収率に相当する。
【0059】
Н NMR(CDCl):7.91(d,2H),7.7(d,2H),6.06(tt,1H),4.07(dt,2H)。
【0060】
実施例1.4
54.25g(0.529mol)の量の2,2−ジフルオロ−1−クロロエタン、9.1g(0.066mol)の炭酸カリウム及び50g(0.264mol)のカリウムフタルイミドを237gのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させる。その反応混合物を、オートクレーブ内で加圧下に、120℃で12時間撹拌する。その反応が終了した後、周囲温度まで冷却し、溶媒を減圧下で完全に除去する。残った残渣を250mLの水で処理し、固体を濾過する。そのフィルター残渣を水で2回洗浄し、生成物を減圧下で乾燥させる。55.5gの量の2−(2,2−ジフルオロエチル)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン(純度96.5%)が得られる。これは、理論値の95.8%の収率に相当する。
【0061】
Н NMR(CDCl):7.91(d,2H),7.7(d,2H),6.06(tt,1H),4.07(dt,2H)。
【0062】
実施例1.5
27.6g(0.269mol)の量の2,2−ジフルオロ−1−クロロエタン及び20g(0.135mol)のフタルイミドを95gのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させ、56.3g(0.403mol)の炭酸カリウムで処理する。その反応混合物を、オートクレーブ内で加圧下に、120℃で16時間撹拌する。その反応が終了した後、周囲温度まで冷却し、溶媒を減圧下で完全に除去する。残った残渣を100mLの水で処理し、固体を濾過する。そのフィルター残渣を水で2回洗浄し、生成物を減圧下で乾燥させる。22.2gの量の2−(2,2−ジフルオロエチル)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン(純度98.4%)が得られる。これは、理論値の77%の収率に相当する。
【0063】
Н NMR(CDCl):7.91(d,2H),7.7(d,2H),6.06(tt,1H),4.07(dt,2H)。
【0064】
実施例2: 1−(2,2−ジフルオロエチル)ピロリジン−2,5−ジオンの調製(段階(i))
【化7】
【0065】
実施例2.1
204.9g(1.9mol)の量の2,2−ジフルオロ−1−クロロエタン、3.22g(9.9mmol)の臭化テトラ(n−ブチル)アンモニウム及び20g(0.19mol)のスクシンイミドを83.6g(0.599mol)の炭酸カリウムで処理する。その反応混合物を、オートクレーブ内で加圧下に、120℃で16時間撹拌する。その反応が終了した後、周囲温度まで冷却し、次いで、その反応混合物を濾過する。そのフィルター残渣をジクロロメタンで洗浄し、溶媒を減圧下で除去する。36.5gの量の1−(2,2−ジフルオロエチル)ピロリジン−2,5−ジオン(純度85%)が得られる。これは、理論値の95%の収率に相当する。
【0066】
Н NMR(CDCl):5.99(tt,1H),3.89(dt,2H),2.79(s,4H);
19F NMR:−123.15(dt,CFH)。
【0067】
実施例2.2
40.9g(0.39mol)の量の2,2−ジフルオロ−1−クロロエタン、3.22g(9.9mmol)の臭化テトラ(n−ブチル)アンモニウム、95gのN,N−ジメチルホルムアミド及び20g(0.19mol)のスクシンイミドを83.6g(0.599mol)の炭酸カリウムで処理する。その反応混合物を、オートクレーブ内で加圧下に、120℃で16時間撹拌する。その反応が終了した後、周囲温度まで冷却し、次いで、その反応混合物を濾過する。そのフィルター残渣をジクロロメタンで洗浄し、溶媒を減圧下で除去する。その油状物を再度30mLの水で処理し、30mLのジクロロメタンで2回抽出する。その有機相を合して脱水し、溶媒を減圧下で除去する。27.3gの量の1−(2,2−ジフルオロエチル)ピロリジン−2,5−ジオン(純度93%)が得られる。これは、理論値の77.8%の収率に相当する。
【0068】
Н NMR(CDCl):5.99(tt,1H),3.89(dt,2H),2.79(s,4H)。
【0069】
実施例3: 2,2−ジフルオロエチルアミンの調製(段階(ii))
【化8】
【0070】
実施例3.1
反応フラスコ内の50mLのエタノールの中に入れた10g(0.046mol)の量の2−(2,2−ジフルオロエチル)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオンを3.16g(0.063mol)のヒドラジン水和物で処理する。その反応混合物を加熱還流し、還流温度で16時間撹拌する。50℃まで冷却し、その反応混合物を6mLの32%塩酸を用いてpH2に調節する。それを、再度、短時間加熱還流し、次いで、周囲温度まで冷却し、固体を濾過する。その母液を濃縮乾燥させる。3.9gの2,2−ジフルオロエチルアミンが塩酸塩として得られる(これは、理論値の71.4%に相当する)。
【0071】
Н NMR(DO):6.31(tt,1H),3.51(dt,2H)。
【0072】
実施例3.2
反応フラスコ内の50mLの水の中に入れた10g(0.046mol)の量の2−(2,2−ジフルオロエチル)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオンを50mLの32%塩酸で処理する。その反応混合物を加熱還流し、還流温度で20時間撹拌する。次いで、その反応混合物を周囲温度まで冷却し、固体を濾過する。その母液を濃縮乾燥させる。5.2gの2,2−ジフルオロエチルアミンが含有量93%の塩酸塩として得られる(これは、理論値の88%に相当する)。
【0073】
Н NMR(DO):6.31(tt,1H),3.51(dt,2H)。
【0074】
実施例4: 2,2−ジフルオロエチルアミンの調製(段階(ii))
【化9】
【0075】
実施例4.1
反応フラスコ内の50mLの水の中に入れた10g(0.052mol)の量の1−(2,2−ジフルオロエチル)ピロリジン−2,5−ジオンを50mLの32%塩酸で処理する。その反応混合物を加熱還流し、還流温度で22時間撹拌し、次いで、周囲温度まで冷却し、固体を濾過する。その母液を濃縮乾燥させる。3.1gの2,2−ジフルオロエチルアミンが塩酸塩として得られる(これは、理論値の50%に相当する)。
【0076】
Н NMR(DO):6.31(tt,1H),3.51(dt,2H)。