特許第5952313号(P5952313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952313
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】HIV疾病の進行の予後診断法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/569 20060101AFI20160630BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20160630BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20160630BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20160630BHJP
   C07K 14/16 20060101ALN20160630BHJP
【FI】
   G01N33/569 H
   G01N33/53 D
   G01N33/53 N
   G01N33/543 545A
   C12Q1/04ZNA
   !C07K14/16
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-554964(P2013-554964)
(86)(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公表番号】特表2014-507661(P2014-507661A)
(43)【公表日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】IB2012050787
(87)【国際公開番号】WO2012114272
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2015年1月29日
(31)【優先権主張番号】11305187.4
(32)【優先日】2011年2月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513212420
【氏名又は名称】インナヴィルヴァクス
【氏名又は名称原語表記】INNAVIRVAX
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135873
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(74)【代理人】
【識別番号】100122736
【弁理士】
【氏名又は名称】小國 泰弘
(74)【代理人】
【識別番号】100122747
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 洋子
(74)【代理人】
【識別番号】100132540
【弁理士】
【氏名又は名称】生川 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100146031
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100181102
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 孝明
(72)【発明者】
【氏名】メイエ,ロランス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエイヤール,ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】ドブレ,パトリス
(72)【発明者】
【氏名】クルゼ,ジョエル
【審査官】 三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】 NGO-GIANG-HUONG NICOLE,HIV TYPE 1-SPECIFIC IGG2 ANTIBODIES: MARKERS OF HELPER T CELL TYPE 1 RESPONSE AND PROGNOSTIC MARKER OF LONG-TERM NONPROGRESSION,AIDS RESEARCH AND HUMAN RETROVIRUSES,2001年10月10日,V17 N15,P1435-1446
【文献】 VIEILLARD VINCENT,SPECIFIC ADAPTIVE HUMORAL RESPONSE AGAINST A GP41 MOTIF INHIBITS CD4 T-CELL SENSITIVITY TO NK LYSIS DURING HIV-1 INFECTION,AIDS,英国,2006年 9月 1日,V20 N14,P1795-1804
【文献】 VIEILLARD VINCENT,NK cytotoxicity against CD4+ T cells during HIV-1 infection: A gp41 peptides induces the expression of an NKp44 ligand,Proc Natl Acad Sci USA,2005年,Vol.102, No.31,Page.10981-10986
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/569
C12Q 1/04
G01N 33/53
G01N 33/543
C07K 14/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HIV−1ウイルスに感染した患者におけるin vitroにおけるHIV−1疾病の進行の予後診断のマーカーを分析する方法であって、
a)前記患者から収集した試料中の配列番号2の3Sペプチドに対して指向される抗体のレベルを測定する工程、を含み、
程a)で測定した抗3S抗体のレベル、HIV−1疾病の進行を示す抗3S抗体レベルの基準値と比較され、抗3S抗体のレベルは、CD4数予後診断マーカー及びウイルス負荷予後診断マーカーとは独立である、前記方法。
【請求項2】
工程a)は、配列番号2のペプチドに対して指向される抗体の免疫検出によって行なわれる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程a)は、固相支持体上に固定された配列番号2のペプチドを含むポリペプチドを使用してELISAアッセイによって行なわれる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
以下の工程:
1)前記患者から収集した前記試料中のHIV−1ウイルス負荷を測定する工程を含み、
程1)で測定したウイルス負荷値、HIV−1疾病の進行を示す基準値と比較されるとしてさらに定義される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
工程a)が、HIV−1感染患者から収集した試料中の少なくとも1つの他のHIV−1疾病予後診断マーカーを測定することをさらに含み、
程a)で測定した各HIV−1疾病予後診断マーカーについて、得られたマーカー値、前記予後診断マーカーについての基準値と比較される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記の1つ以上の他のHIV−1疾病予後診断マーカーが、(i)HIVウイルス負荷、(ii)CD4 T細胞の絶対数、(iii)CD4 T細胞の比率、および(iv)CD4+/CD8+Tリンパ球の比からなる群より選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
工程a)が、
− 上のマーカー(i)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(ii)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(iii)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(iv)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(i)および(ii)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(i)および(iii)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(i)および(iv)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(ii)および(iii)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(ii)および(iv)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(iii)および(iv)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(i)、(ii)および(iii)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(i)、(ii)および(iv)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(ii)、(iii)および(iv)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(i)、(iii)および(iv)と組み合わせた抗3S抗体レベル、および
− 上のマーカー(i)、(ii)、(iii)および(iv)と組み合わせた抗3S抗体レベル
からなる群より選択されたHIV−1疾病予後診断マーカーの組合せの測定を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
)1つ以上の抗レトロウイルス剤を含む薬学的組成物を用いる治療処置を施されたHIV−1感染患者から収集した試料に対して、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法を実施する工程、および
b)前記HIV−1感染患者の治療処置を適切に適合させる必要性を決定する工程
を含む、治療処置の効力をモニタリングするための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HIV疾病の予後診断の分野に関する。
【0002】
HIVウイルスによるヒトの感染は、一般的に、血漿試料中の抗HIV抗体の免疫検出によって診断される。今日、数多くのHIV ELISA検査キットが市販されている。一般的に、公知のHIV ELISA検査キットは、HIV抗原の混合物で予めコーティングされたポリスチレン製マイクロウェルのストリップを使用し、前記HIV抗原は、組換えHIV−1 gp41、gp120およびHIV−2 gp36糖タンパク質などの、E. coliで発現される組換えHIV抗原からなり得る。
【0003】
一旦、HIVウイルスによる個体の感染が診断されたら、いつ抗レトロウイルス製剤による処置(ART)を開始するかを決定する目的を含めて、HIV疾病の進行の経過観察が行なわれる。これは、前記患者に対するHIV病期分類法を実施することを必要とする。
【0004】
HIV疾病病期分類システムおよび分類システムは、臨床医および患者に、臨床管理のための必須な情報を提供する重要なツールである。2つの主要な分類システム、すなわち、それぞれ(i)システム世界保健機関(WHO)臨床病期分類システムおよび疾病分類システム、並びに(ii)米国疾病管理予防センター(CDC)分類が現在使用されている。
【0005】
HIV/AIDSのWHO臨床病期分類システムおよび疾病分類システムは、主に、臨床事象の発生の決定に基づき、臨床検査結果は必ずしも必要とされない。WHO臨床病期分類システムは、資料の限られた国で広く使用されており、そして施設において第一レベルおよび紹介レベルの両方において実用的および有用であることが証明された。
【0006】
CDC病期分類システムは、CD4+Tリンパ球細胞(CD4)数によって、および特定のHIV関連容態の存在によって、HIV疾病の重度を評価する。CDC病期分類システムによると、AIDSの定義は、200個の細胞/μl未満のCD4数、または14%未満のCD4比率(全てのリンパ球に対して)を有する全てのHIV感染個体、並びに特定のHIV関連容態および症状を有するものを含む。従って、CDCシステムによると、CD4数は、HIVの段階および予後を評価するための、並びにAIDSへの進行および日和見的な病気のリスクをモニタリングするための標準的な臨床検査からなる。CD4細胞数はまた、医師が症状のある患者における鑑別診断を行ない、そして抗レトロウイルス処置(ART)の開始に関する決定を下し、そして日和見感染のための予防を開始することを手引きする。
【0007】
非処置のHIV感染では、HIV複製は、通常、1日に数十億個の新たなHIVコピーを産生する。血漿中HIV RNA(ウイルス負荷)検査は、血漿中のHIVウイルス負荷(burden)を定量する。ウイルス負荷のモニタリングを行なえる地域では、ウイルス負荷は、ARTを受けている患者における処置応答をモニタリングし、そしてCD4細胞数と共に、HIV進行を評価するために使用される標準的なツールである(特に、Mellors et al., 1996, Science, Vol. 272(5265) : 1167-170参照)。
【0008】
AIDSは、世界中で3000万人を超える人々が罹患している大流行の疾病であり、毎年200万人を超える人々が新たに感染している。現在までに、AIDSは依然として致命的な疾病であり、これにより2009年には200万人を超える人々が死亡した。
【0009】
複数の明確に異なる治療処置を利用できる必要性または既存のARTを絶え間なく改良する必要性の他に、医師に、特にARTを開始する適切な時期を決定させ、そしてケースバイケースで疾病進行プロファイルに対して処置を正しく適応させることを手助けすることを目的とした的確なまたは補完するツールを提供するために、複数の病期分類法または予後診断法が絶えず必要とされている。
【0010】
発明の要約
本発明は、HIV−1ウイルスに感染した患者におけるin vitroにおけるHIV−1疾病の進行の予後診断法に関し、前記方法は、
a)前記患者から収集した試料中の3Sペプチドに対して指向される抗体のレベルを測定する工程、
b)工程a)で測定した抗体のレベルを、HIV−1疾病の進行を示す基準値と比較する工程
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、200個の細胞/μlを上回るCD4数を有し、そして予め決定された基準値(ここでは、予め決定された基準値すなわち「カットオフ」値は50である)より上(上の曲線、1番)または下(下の曲線、2番)のそれぞれ抗3S抗体レベルを有するHIV−1感染患者の120カ月の期間におよぶ生存時間を示したカプランマイヤー曲線を示した図である。横座標:月数で表現した、HIV−1感染日後の期間。縦座標:生存分布(100%=1単位)。
図2図2は、200個の細胞/mmを上回るCD4数を有し、そして予め決定された基準値(ここでは、予め決定された基準値すなわち「カットオフ」値は50である)より上(上の曲線、1番)または下(下の曲線、2番)のそれぞれ抗3S抗体レベルを有するHIV−1感染患者の36カ月の期間におよぶ生存時間を示したカプランマイヤー曲線を示した図である。横座標:月数で表現した、HIV−1感染日後の期間。縦座標:生存分布(100%=1単位)。
図3図3は、200個の細胞/mmを上回るCD4数を有し、そして予め決定された基準値(ここでは、ウイルス負荷基準値すなわち「カットオフ」値は4 logである)より下(上の曲線、1番)または上(下の曲線、2番)のそれぞれウイルス負荷レベルを有するHIV−1感染患者の36カ月の期間におよぶ生存期間を示したカプランマイヤー曲線を示した図である。横座標:月数で表現した、HIV−1感染日後の期間。縦座標:生存分布(100%=1単位)。
図4図4は、200個の細胞/mmを上回るCD4数を有し、そして(i)予め決定された基準値を上回る抗3S抗体(>50)および予め決定された基準値よりも低いまたは等しいウイルス負荷(≦4 log)(曲線番号1)、(ii)予め決定された基準値を上回る抗3S抗体(>50)および予め決定された基準値を上回るウイルス負荷(>4 log)(曲線番号2)、(iii)予め決定された基準値よりも低いまたは等しい抗3S抗体(≦50)および予め決定された基準値よりも低いまたは等しいウイルス負荷(≦4 log)(曲線番号3)、および(iv)予め決定された基準値よりも低いまたは等しい抗3S抗体(≦50)および予め決定された基準値を上回るウイルス負荷(>4 log)(曲線番号4)のそれぞれの4つのクラスに分類された、患者の36ヶ月間の期間におよぶ生存時間を示したカプランマイヤー曲線の図を示す。横座標:月数で表現した、HIV−1感染日後の期間。縦座標:生存している人々の比(100%=1単位)。
図5図5は、200個の細胞/mmを上回るCD4数を有し、そして(i)予め決定された基準値を上回る抗3S抗体(>50)および予め決定された基準値よりも低いまたは等しいウイルス負荷(≦4 log)(曲線番号1)、(ii)予め決定された基準値を上回る抗3S抗体(>50)および予め決定された基準値を上回るウイルス負荷(>4 log)(曲線番号2)、(iii)予め決定された基準値よりも低いまたは等しい抗3S抗体(≦50)および予め決定された基準値よりも低いまたは等しいウイルス負荷(≦4 log)(曲線番号3)、および(iv)予め決定された基準値よりも低いまたは等しい抗3S抗体(≦50)および予め決定された基準値を上回るウイルス負荷(>4 log)(曲線番号4)のそれぞれの4つのクラスに分類された、患者の120ヶ月間の期間におよぶ生存時間を示したカプランマイヤー曲線の図を示す。横座標:月数で表現した、HIV−1感染日後の期間。縦座標:生存している人々の比(100%=1単位)。
図6図6は、200個の細胞/mmを上回るCD4数を有し、そして(i)予め決定された基準値を上回る抗3S抗体(>50)および予め決定された基準値よりも低いまたは等しいウイルス負荷(≦4 log)(曲線番号1)、(ii)予め決定された基準値を上回る抗3S抗体(>50)および予め決定された基準値を上回るウイルス負荷(>4 log)(曲線番号2)、(iii)予め決定された基準値よりも低いまたは等しい抗3S抗体(≦50)および予め決定された値よりも低いまたは等しいウイルス負荷(≦4 log)(曲線番号3)、および(iv)予め決定された基準値よりも低いまたは等しい抗3S抗体(≦50)および予め決定された値を上回るウイルス負荷(>4 log)(曲線番号4)のそれぞれの4つのクラスに分類された、AIDSを有さない患者の120カ月の期間におよぶ生存時間を示したカプランマイヤー曲線の図を示す。横座標:月数で表現した、HIV−1感染日後の期間。縦座標:生存している人々の比(100%=1単位)。
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、HIV−1感染患者におけるHIV−1疾病の進行状態を示す新規で独立したマーカーを提供する。本発明は、前記の新規で独立したマーカーを使用して、HIV−1疾病の進行の予後を決定するための新規な方法を提供する。
【0013】
本発明によると、検査したHIV−1感染個体からの試料において決定された、特定のHIV−1由来ペプチド(「3S−ペプチド」)に対して指向される抗体のレベルは、前記個体のHIV−1疾病の進行の状態を示すことが判明した。
【0014】
HIV−1ウイルスのgp41糖タンパク質に由来するペプチドからなる前記3Sペプチドはそれ自体公知である。3Sペプチドは、当技術分野において、CD4 T細胞においてNKp44Lタンパク質の膜発現を誘導することが示されている。CD4 T細胞の表面におけるNKp44L発現は、HIV−1−1感染の最中の活性化NK細胞によるCD4 T細胞の溶解において重要な役割を果たし、そして結果として、3S−ペプチドに対して指向される特異的抗体は、疾病の経過に影響を及ぼし得ると考えられた(Vieillard et al., 2005, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 102 : 10981-10986参照)。
【0015】
また、当技術分野において、抗3S抗体は、ALTと命名された非常に特殊な患者コホートに属する幾人かのHIV−1感染患者において検出され、前記コホートは、専ら、無症候性の長期生存という稀な表現型を有するHIV−1感染患者を含む(Vieillard et al., 2006, AIDS, Vol. 20(14) : 1795-1804参照)。Vieillard et al.(2006)は、前記のALT患者コホートにおいて、(i)CD4T細胞数の減少と、(ii)抗3S抗体レベルの減少との間の相関の存在を示した。Vieillard et al. (2006)はまた、抗3S抗体の存在が、これらの高度に特異的なHIV感染個体において、高レベルのCD4T細胞と相関していたことを示した。
【0016】
Vieillard et al.(2006)は、抗3S抗体の存在が、NKp44Lの発現およびNK溶解に対するCD4の感受性を抑制することで疾病の経過に影響を及ぼし得ると結論付けた。また、Vieillard et al.(2006)は、血清中の抗3S抗体の存在がCD4細胞数を制御するのに役に立つと述べた。これらの著者らは、CD4 T細胞全個体群の枯渇が、抗3S抗体の消失と密接に関連することを観察した。これらの著者らはまた、抗3S抗体の産生が、おそらく、CD4 T細胞の進行性の枯渇を減速させることに寄与し得ることを付け加えた。
【0017】
今回、本発明により、抗3S抗体のレベルは、HIV−1感染患者におけるHIV−1疾病の進行状態の信頼性あるマーカーを構成することが判明した。
【0018】
驚くべきことに、本発明者らは、抗3S抗体のレベルは、HIV−1疾病進行の信頼性のある指標であることを示した。
【0019】
さらに、本明細書において、抗3S抗体レベルは、マーカーが単独で使用された場合にさえ、HIV−1疾病の進行を示すマーカーを構成することが示された。
【0020】
またさらに、本明細書において、抗3S抗体レベルは、CD4数予後診断マーカーおよびウイルス負荷予後診断マーカーを含む他の慣用的に使用されるHIV−1予後診断マーカーとは独立した、HIV−1疾病進行マーカーを構成することが示された。
【0021】
本明細書において、本発明による結果は、一般的なHIV−1感染患者のコホート、すなわちHIV−1血清陽性個体のコホートから得られ、Vieillard et al.(2006)によって研究されたALTコホートのような無症候性の長期生存という稀な表現型を有する患者コホートからは得られていないことが明記されている。
【0022】
当然のこととして、無症候性の長期生存個体におけるHIV感染の進行機序は、一般的なHIV感染被験者の個体群で見られ得るものとは異なる。これは再度、本明細書において開示された本発明の所見によって完全に説明される。
【0023】
本発明によると、一般的なHIV−1感染患者の個体群においては、ALT患者コホートから得られたVieillard et al.の所見とは対照的に、(i)抗3S抗体レベルと(ii)CD4T細胞レベルとの間に相関はないことが判明した。本発明の所見はここでも、当業者が、一般的なHIV感染被験者の個体群におけるHIV感染の進行を解明するために、無症候性の長期生存HIV感染個体から得られたデータの利点を活用することを期待できないことを示す。
【0024】
さらに、上で示したように、当技術分野において、特殊なALT患者コホートにおいては、抗3S抗体のレベルは、CD4 T細胞数と強く相関すると考えられた。Vieillard et al.(2006)の以前の結果は、抗3S抗体レベルとCD4細胞数との間に見られた強い相関のために、(i)HIV−1疾病予後診断マーカー、すなわちCD4細胞数と(ii)HIV−1感染患者の生物学的パラメーター、すなわち抗3S抗体レベルとの間に強い依存性が見られたことを当業者にせいぜい教義しただけであったことが思い出される。当業者はVieillard et al.(2006)の結果を考慮すると仮説的に認めたとしても、CD4細胞数および抗3S抗体レベルによって予想通りにもたらされるであろう以前に開示された情報の重複は、当業者に、抗3S抗体レベルが、HIV−1疾病進行の予後診断マーカーを構成し得るという可能性を探索することをやめさせるだろう。
【0025】
特定の局面において、本発明は、HIV−1疾病進行の重度の予後診断法を提供し、前記方法は、特に、AIDSの経過をモニタリングするために、並びに抗レトロウイルス処置の治療効力をモニタリングするために使用され得る。
【0026】
本発明は、HIV−1ウイルスに感染した患者におけるin vitroにおけるHIV−1疾病の進行の予後診断法に関し、これは
a)前記患者から収集した試料中の配列番号2の3Sペプチドに対して指向される抗体のレベルを測定する工程、
b)工程a)で測定した抗3S抗体のレベルを、HIV−1疾病の進行を示す抗3S抗体レベルの基準値と比較する工程
を含む。
【0027】
本明細書の実施例に示されているように、一般的なHIV−1感染個体の個体群において、抗3S抗体の存在ではなく抗3S抗体のレベルと、HIV−1疾病の進行の予後との間に相関が認められた。
【0028】
本明細書で意味するような「HIV−1疾病」は、ウイルス感染事象の時から始まって、個体の死亡日までに(個体の死亡が、ウイルス感染事象の直接的な結果または間接的な結果であるかに関わらず)、HIV−1ウイルスに感染した個体の受ける全ての生理学的容態を基本的に包含する。HIV−1ウイルスによる個体の感染は、免疫系の効力の減少を進行的に引き起こし、そしてHIV−1感染個体を日和見感染および腫瘍にかかりやすくする、慢性的な疾病状態を引き起こすことが思い出される。従って、HIV−1疾病は、一次感染(または急性感染)の時期、血清転換の時期、無症候性段階の時期、HIV−1症候性疾病の初期および中期の段階、並びにHIV−1疾病の後期の段階(AIDSとも呼ばれる)を包含する。
【0029】
本発明によると、配列番号2のペプチドに対して指向される抗3S抗体は、ペプチド配列NH−SWSNKS−COOH(配列番号1)を含むアミノ酸配列を有する基準ポリペプチドに特異的に結合する抗体を包含する。これらの抗体はまとめて本明細書において「抗3S抗体」と呼ばれる。それはまた、配列番号2の配列に密接に関連したアミノ酸配列を有するペプチドに結合する抗体にも対応し得る。配列番号2に密接に関連した配列を有するペプチドは、配列番号3および配列番号4からなる群より選択されたアミノ酸配列を含むペプチド(これは16アミノ酸残基長を有するペプチドを含む)、並びに配列番号3および配列番号4からなる群より選択されたアミノ酸配列を含むペプチド(例えば、これは(i)配列番号2のペプチドの変異体(11位のアミノ酸残基セリンが、トレオニン残基によって置換されている)および(ii)配列番号2のペプチドの変異体(10位のアミノ酸残基リジンが、アルギニン残基によって置換されている)を含む)を包含する。
【0030】
本明細書において意図したように、3S−ペプチドに対して指向される抗体は、配列番号2のペプチドに結合する抗体を包含する。
【0031】
本発明によると、抗3S抗体は、好ましくは、3Sペプチドに結合するポリクローナル抗体からなり、そしてこれはHIV感染個体から収集された試料中に含まれる。
【0032】
好ましくは、3S−ペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドからなる。
【0033】
本明細書において意図するHIV疾病診断予後マーカーの「レベル」は、試料中、例えばHIV感染患者から収集した試料中の前記予後診断マーカーの定量値からなる。いくつかの態様において、前記の定量値は、実際に測定された絶対値からなるのではなく、むしろ、使用したアッセイフォーマットで起こるシグナル・ノイズ比を考慮し、そして/またはアッセイごとのHIV疾病マーカーレベルの測定の再現性を高めるために使用された較正基準値を考慮して得られた最終値からなる。いくつかの態様において、HIV疾病予後診断マーカーの「レベル」は、任意単位として表現される。なぜなら、重要なのは同じ種類の任意単位を(i)アッセイごとに、または(ii)HIV感染患者ごとに、または(iii)同じ患者の明確に異なる時点で実施されたアッセイごとに、または(iv)患者の試料中で測定されたHIV予後診断マーカーレベルと、予め決定された基準値(これは本明細書においては「カットオフ」値とも呼ばれ得る)とを比較することであるからである。
【0034】
実際に、試料中の抗3S抗体レベルを表現するためにどのような種類の数値的単位を使用したとしても、測定された数値は、検査した試料中に含まれる抗3S抗体の量、または最も好ましくは前記試料中の抗3S抗体の濃度を反映する。
【0035】
また実例として、HIVウイルス負荷予後診断マーカーは、検査した患者の試料中に含まれるHIVゲノムのコピー数、または代替的には検査した患者の試料中のHIVゲノムコピーの濃度を反映する数値的単位で表現され得る。
【0036】
同様に、他のHIV予後診断マーカーも数値的単位で表現され得、これはそれぞれ(i)検査した試料中のCD4 T細胞の数または代替的にはその濃度、および(ii)検査した試料中に存在する全リンパ球細胞の中のCD4 T細胞の比率を反映する。
【0037】
本明細書で意図したように、患者から収集した試料は、抗体を含むと予想されるあらゆる体液、並びに主に血液および血液由来物質を包含する。本発明によると、患者から収集された試料は、全血試料、血清試料および血漿試料を包含する。
【0038】
本明細書の実施例において示したように、本発明のin vitroにおける方法は、HIV感染患者における免疫抑制状態の早期発生または遅延発生の可能性を決定することを可能とする。結果として、本発明のin vitroにおけるHIV疾病の進行の予後診断法は、HIV感染患者の臨床パラメーターを追跡するための時間間隔の期間を決定する目的で、そしてその後、抗レトロウイルス治療処置を開始する好機を決定するために実施され得る。
【0039】
また、本明細書の実施例において示されているように、本発明のin vitroにおける方法は、ウイルス感染に因り免疫抑制状態をすでに受けているHIV感染患者におけるHIV疾病の進行の予後を決定することを可能とする。別の言葉で言えば、本発明のin vitroにおける方法は、(i)HIV疾病の症候性段階に早期に入る可能性が高いHIV感染免疫抑制患者と、(ii)HIV疾病の症候性段階に早期に入る可能性が低いHIV感染免疫抑制患者とを識別することを可能とする。
【0040】
また、本明細書の実施例は、本発明のin vitroにおけるHIV疾病の進行の予後診断法が、(i)長期生存の可能性が高いHIV感染患者と、(ii)長期生存の可能性が低いHIV感染患者とを識別することを可能とすることを示す。
【0041】
前記方法の工程a)において、抗3S抗体のレベルは、当業者には周知の任意の抗体検出法によって測定され得る。従って、抗3S抗体のレベルは、ELISA、ラジオイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、イムノアフィニティクロマトグラフィー、免疫沈降法などを含むがそれらに限定されない、任意の種類のイムノアッセイによって測定され得る。
【0042】
特定の態様において、抗3S抗体のレベルは、ELISA法を包含するイムノソルベントアッセイによって測定される。
【0043】
工程a)において、抗3S抗体のレベルは、(i)抗体検出法においてベイトとして使用される3Sペプチドと(ii)検査した患者の試料中に存在する抗3S抗体との間に形成される複合体によって直接的にまたは間接的に生成される実際のシグナルを指す数値として表現される。
【0044】
抗体検出法、例えばELISAのようなイムノアッセイを実施する場合には慣用的であるように、シグナルレベル(すなわち抗3S抗体レベル)は、任意単位(AU)として表現される。任意単位は、一般的に、バックグラウンドノイズシグナルを差し引いた後に決定され、後者は、抗3S抗体が除外されていることが知られる患者の試料(例えば血清試料または血漿試料)と同じ種類の試料から測定される。一般的に、任意単位は、一連の較正標準物質(例えば、一連の試料、各試料は既知量の抗3S抗体を含む)を使用して、抗体検出法を較正した後に決定される。
【0045】
本発明のin vitroにおけるHIV疾病予後診断法の工程b)において、工程a)で測定される抗3S抗体のレベルの定量値を、HIV疾病の予後を示す予め決定された基準値と比較する。前記の予め決定された基準値は、「HIV疾病予後を示す」。なぜなら、それは、(i)前記の基準値を上回る工程a)で測定された値に対するHIV疾病進行の「良好な」予後と、(ii)前記の基準値を下回る工程a)で測定された値に対するHIV疾病進行の「悪い」予後との識別を可能とするからである。
【0046】
本明細書の実施例において開示されているように、生存時間を含む種々の関連した臨床パラメーターについて追跡された大きなHIV感染個体コホートから収集された試料において得られた抗3S抗体レベル値からのカプランマイヤー曲線を実施することによって、本発明者らは、(i)遅延した自発的なHIV疾病進行および長い生存時間を含む好ましい転帰を有する患者と、(ii)遅延していない自発的なHIV疾病進行および短い生存時間を含む不良な転帰を有する患者とを識別することを可能とする抗3S抗体レベル値を決定した。
【0047】
実例として、本明細書の実施例において開示されたELISA検査フォーマットを使用した場合、予め決定された基準値(これはまた「カットオフ」値とも呼ばれ得る)は50である。従って、実施例において開示されたELISA検査フォーマットを使用して、50未満の抗3S抗体レベル値が、本発明によるin vitroにおける方法の工程a)で測定されたHIV感染患者から収集された試料は、好ましくない転帰を有する患者として分類される。逆に、50を超える抗3S抗体レベル値が本発明によるin vitroにおける方法の工程a)で測定されたHIV感染患者から収集された試料は、好ましい転帰を有する患者として分類される。
【0048】
本発明のin vitroにおけるHIV疾病予後診断法を実施するために、前記方法の工程b)で比較のために使用される基準値(これはまた「カットオフ」値とも呼ばれ得る)は、以下に記載のように決定され得る。
【0049】
抗3S抗体予後診断マーカーの基準(「カットオフ」)値は、
a)HIV感染患者からの試料の収集物を準備する工程;
b)工程a)で準備された各患者の試料のために、対応するHIV感染患者についての実際の臨床転帰に関する情報を準備する工程;
c)抗3S抗体レベルについての一連の任意の定量値を準備する工程;
d)工程a)で準備された収集物に含まれる各患者の試料中の抗3S抗体のレベルを定量する工程;
e)工程b)で準備された1つの特定の任意定量値に対して前記の患者の試料をそれぞれ以下の2つの群に分類する工程:
(i)前記の一連の定量値に含まれる前記の任意の定量値よりも低い抗3S抗体レベルについての定量値を示す患者の試料を含む第1群;
(ii)前記の一連の定量値に含まれる前記の任意の定量値よりも高い抗3S抗体レベルについての定量値を示す患者の試料を含む第2群;
これにより、前記の特定の定量値に対して2つの群の患者の試料が得られ、各群の患者の試料は別々に列挙される;
f)工程d)で得られた前記の生物学的マーカーについての定量値と、(ii)工程e)で定義された第1群および第2群に含まれる血清/血漿試料が得られた患者の実際の臨床転帰との間の統計学的有意性を計算する工程;
g)工程e)からf)まで種々の任意値を検査する工程、
h)得られた任意の定量値(最も高い統計学的有意性(最も有意)が工程g)で観察された)からなるとして前記の基準値(「カットオフ」値)を設定する工程
を含む方法を実施することによって予め決定され得る。
【0050】
上において開示されているように、前記の方法は、悪い転帰予後と良好な転帰予後とを識別することを可能とする「カットオフ」値の設定を可能とする。
【0051】
本明細書において意図されているように、そして本明細書の実施例において示されているように、(i)悪い転帰予後は、500個の細胞/mmを下回るCD4 T細胞数を有する患者(200個の細胞/mmを下回るCD4 T細胞数を有する患者を含む)について、AIDSの臨床症状の発症が、HIVによる感染時から6〜72カ月後の期間内に起こる高い確率、並びに、短い生存期間を包含し、一方、(ii)良好な転帰予後は、500個の細胞/mmを下回るCD4 T細胞数を有する患者(200個の細胞/mmを下回るCD4 T細胞数を有する患者を含む)についての、AIDSの臨床症状の発症が、HIVによる感染時から6〜72カ月後の期間内に起こる低い確率、並びに、長い生存期間を包含する。
【0052】
上のカットオフ値を決定するための方法の工程b)の特定の好ましい態様において、HIV感染患者の実際の臨床転帰に関する前記情報は、(i)AIDSを有さない生存期間(AFS)および(ii)500個のCD4細胞/mmを下回るまたは200個のCD4細胞/mmを下回るCD4 T細胞数を有する患者の生存時間(TCDB)からなる群より選択される。
【0053】
本明細書の実施例において示されているように、予後診断マーカーとして抗3S抗体のレベルを使用した場合に、HIV疾病予後診断の正確度は、前記の予後診断マーカーを、それ自体公知である1つ以上のHIV予後診断マーカー、例えばHIVウイルス負荷と組み合わせることによってさらに改善され得る。
【0054】
実施例において示されているように、抗3S抗体レベルのHIV疾病予後診断正確度は、他の公知のHIV予後診断マーカーの1つ、すなわちウイルス負荷の予後診断正確度よりも有意に高い。しかしながら、実施例はまた、本発明のin vitroにおけるHIV疾病予後診断法の予後診断正確度は、(i)ウイルス負荷マーカーと(ii)抗3S抗体マーカーのレベルとを組み合わせることによって改善され得ることを示す。
【0055】
従って、本発明のin vitroにおけるHIV疾病予後診断法のいくつかの態様において、前記方法はさらに、
1)前記患者から収集した前記試料中のHIVウイルス負荷を測定する工程、および
2)工程1)で測定したウイルス負荷値を、HIV疾病の進行を示す基準値と比較する工程
を含む。
【0056】
上の方法の態様において、ウイルス負荷は、当業者には周知の慣用的な技術のいずれか1つを通して測定され得る。実例として、ウイルス負荷は、Jennings et al. (2005, J Clin Microbiol, Vol. 43(12) : 4950-4956)によって開示された方法を使用することによって測定され得る。実際に、ウイルス負荷定量のための基準値は、抗3S抗体のレベルの予め決定された基準値(または「カットオフ」値)を計算するために本明細書において記載されたものと同じ方法を使用することによって決定され得る。
【0057】
当業者によって容易に理解され得るように、ウイルス負荷マーカーの予め決定された基準値(または「カットオフ」値)は、使用されるウイルス負荷アッセイフォーマットに依存して変化し得る。
【0058】
実例として、ウイルス負荷マーカーの4logの予め決定された基準値(「カットオフ」値)は、本発明のin vitroにおけるHIV疾病予後診断法を実施するために実施例において使用されている。
【0059】
任意の特定の理論によって固めたくはないが、本発明者らは、本発明のin vitroにおけるHIV疾病予後診断法は、抗3S抗体予後診断マーカーと、1つ以上の他のHIV疾病予後診断マーカーとを組み合わせることによって実施され得ると考える。前記の1つ以上のHIV疾病予後診断マーカーは、(i)HIVウイルス負荷、(ii)CD4 T細胞の絶対数および(iii)CD4+Tリンパ球の比率からなる群より選択され得る。
【0060】
これらの態様によると、in vitroにおけるHIV疾病の進行の予後診断法は、
a)HIV感染患者から収集した試料中の抗3S抗体のレベルおよび少なくとも1つの他のHIV疾病予後診断マーカーを測定する工程、および
b)工程a)で測定した各HIV疾病予後診断マーカーについて、得られたマーカー値を、前記予後診断マーカーの基準値と比較する工程
を含み得る。
【0061】
好ましい態様において、前記の1つ以上の他のHIV疾病予後診断マーカーは、(i)HIVウイルス負荷、(ii)CD4 T細胞の絶対数、(iii)CD4 T細胞の比率および(iv)CD4+/CD8+Tリンパ球の比率からなる群より選択される。これらは、HIV疾病予後診断マーカーの以下の組合せ:
− 上のマーカー(i)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(ii)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(iii)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(iv)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(i)および(ii)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(i)および(iii)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(i)および(iv)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(ii)および(iii)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(ii)および(iv)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(iii)および(iv)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(i)、(ii)および(iii)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(i)、(ii)および(iv)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(ii)、(iii)および(iv)と組み合わせた抗3S抗体レベル、
− 上のマーカー(i)、(iii)および(iv)と組み合わせた抗3S抗体レベル、および
− 上のマーカー(i)、(ii)、(iii)および(iv)と組み合わせた抗3S抗体レベル
を含む。
【0062】
工程a)で測定した各マーカー値が、それぞれの基準値より上または下であるかどうか(工程b)で比較する)に依存して、HIV疾病の進行の「良好な」予後またはHIV疾病の進行の「悪い」予後が決定される。実際に、(i)予め決定された値を上回る抗3S抗体値は「良好な」予後として分類され、一方(ii)予め決定された基準値を上回るウイルス負荷値は「悪い」予後パラメーターとして分類される。
【0063】
実際に、工程b)の結果は、(i)検査した少なくとも1つのHIV予後診断マーカーについて、工程a)で測定したマーカー値が、前記マーカーについて「悪い」予後として分類される(すなわち、マーカーは「低い」と印され得る)状況、および(ii)検査した少なくとも1つの他のHIV予後診断マーカーについて、工程a)で測定したマーカー値が、前記マーカーについて「良好な」予後として分類される(すなわちマーカーは「高い」と印され得る)状況を包含する。これらの状況において、HIV疾病の進行についての予後は、「高い」マーカーおよび「低い」マーカーの数および場合によりそれぞれの統計学的重みを考慮に入れることによって決定される。いくつかの態様において、検査された各マーカーの測定値は、前記の測定されたマーカー値に対して、HIV疾病の進行の予後における統計学的有意性のその重みを実体化する数的因子を作用させることによって平衡化される。
【0064】
抗3S抗体予後診断マーカーを1つ以上の他のHIV疾病予後診断マーカーと組み合わせる本発明のHIV疾病の進行の予後診断法の態様において、工程b)は、検査した各HIV予後診断マーカーについて工程a)で測定した値を数学的に積分し、そして各々の対応する基準値と比較することによって行なわれ、よって得られた複合HIV疾病予後診断マーカーの単一の予測値(例えば「悪い」予後または「良好な」予後)が生成される。2つ以上のマーカーの組合せを統合した複合マーカーの生成は、当業者には周知である。
【0065】
実例として、HIV疾病進行についての複合予後診断マーカーは、そこに含まれる各々の個々の予後診断マーカーの線形的な組合せから生じ得、ロジスティック回帰分析を使用して、複合予後診断マーカー内の各々の個々の予後診断マーカーのそれぞれの重みを推定し得る。あるいは、適切な数学的モデルを使用して、使用したマーカー組合せの予後値を確立することができる。
【0066】
本発明はさらに、疾病進行の正確な予後指標を提供することによって、HIV感染のための治療処置の効力をモニタリングするための方法を提供する。このようなモニタリング法は、(i)可能な治療薬を同定するために、および(ii)これらの薬物を用いた療法を受けている患者をモニタリングするための両方のために非常に重要である。
【0067】
特に、本発明は、治療処置の効力をモニタリングするための方法を扱い、これは
a)必要とするHIV感染患者に、1つ以上の抗レトロウイルス剤を含む薬学的組成物を投与することによって治療処置を実施する工程、および
b)前記患者から収集した試料に対して本明細書に記載されたin vitroにおけるHIV疾病の進行の予後診断法を実施する工程、および
c)必要であれば、工程a)で実施された治療処置を適切に適応させる工程
を含む。
【0068】
いくつかの態様において、工程a)で実施される治療処置は、「良好な」予後、例えば、AIDS段階への進入を伴わない長い生存時間の高い可能性が決定されれば継続される。
【0069】
いくつかの態様において、治療処置は、「悪い」予後、例えばAIDS段階への進入を伴わない長い生存時間の低い可能性が決定されれば、適応させる(例えば、より高い用量で投与されるか、または1つ以上の活性成分をより効率的なものと置き換える)。
【0070】
特定の局面において、本発明は、有効量の抗ウイルス剤(または抗ウイルス剤の組合せ)をHIV感染個体に投与し、そして治療転帰をモニタリングすることを考える。
【0071】
本明細書において以前にすでに明記したように、in vitroにおけるHIV疾病の進行の予後診断法は、好ましくは、公知の免疫検出法によって実施される。本明細書の実施例は、非常に慣用的な免疫検出法である酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)によって、本発明のin vitroにおけるHIV予後診断法を実施する態様を説明する。他の免疫検出法と同様に、ELISAは、非競合的イムノアッセイとしてまたは競合的イムノアッセイとしてのいずれかで実施され得る。
【0072】
非競合的ELISAでは、標識されていない抗原(例えば3Sペプチド)を、マイクロタイタープレートまたはバイオチップの表面などの固相支持体または反応容器に結合させる。
【0073】
その後、生物学的試料(例えばHIV感染患者から収集された試料)を、反応容器に結合した抗原と合わせ、そして生物学的試料中に存在する抗体(例えば、HIV感染患者から収集された試料中に存在する抗3S抗体)を、固相支持体上に固定された抗原と結合させ、これにより免疫複合体を形成させる。
【0074】
免疫複合体が形成された後、過剰な生物学的試料を除去し、そして容器を洗浄して、非特異的に結合した抗体を除去する。その後、免疫複合体を、適切な酵素標識抗免疫グロブリン(これは「二次抗体」とも呼ばれ得る)と反応させる。二次抗体は、免疫複合体中の抗体(例えば抗3S抗体)と反応するが、反応容器に結合した他の抗原とは反応しない。ヒト抗体との結合に特異的な二次抗体は当技術分野において周知であり、そしてこれはSigma Chemical Co. (St Louis, MO, USA)などから市販されている。
【0075】
2回目の洗浄工程後、酵素基質を加える。二次抗体に連結した酵素は、基質を検出可能な産物へと変換する反応を触媒する。過剰な抗原が存在する場合、産物の量は、患者の試料中に存在する抗体(「一次抗体」とも呼ばれる)の量と正比例する。
【0076】
いくつかの態様において、産物は蛍光または発光であり、これは、当技術分野において周知の技術および装置を使用して測定することができる。いくつかの態様において、酵素反応により、酵素基質の発色性産物への変換がなされ、これは分光光度的に測定され得る。
【0077】
二次抗体に連結させることのできる典型的な酵素としては、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼおよびウレアーゼが挙げられる。
【0078】
ELISAを実施するために適切な固相支持体としては、有機および無機ポリマー、例えばデキストラン、天然または改質セルロース(modified celluloses)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。
【0079】
3Sペプチドを使用した抗3S抗体の免疫検出によって、本発明に記載のin vitroにおけるHIV疾病の進行の予後診断を実施するために、前記3Sペプチドは、(i)化学合成によって、または(ii)前記3Sペプチドをコードする発現カセット(最終的に組換えベクター、すなわち組換えプラスミドに挿入される)で形質転換された例えばE.coli細胞における組換え発現によって得られる。
【0080】
本発明はさらに、以後の実施例によって(いずれにしてもこれに制限されることはない)説明される。
【0081】
実施例
実施例1:HIV疾病の進行の予後診断マーカーとしての抗3S抗体のレベルの同定
A.材料および方法
A.1.患者
1988年に開始されたANRS SEROCO/HEMOCOコホートには、21の病院および個人開業医のネットワークから問い合わせられたHIV感染成人が登録された。研究は倫理委員会によって承認され、そして全ての被験者は、書面によるインフォームドコンセントを提出した。患者は参加時に臨床検査を受け、そしてその後、その臨床状態に応じて3または6カ月毎に診察を受ける。全てのAIDS指標疾患がカルテで確認され、そして担当医師によって見直される。経過観察できなかった患者の臨床状態は、国立AIDS登録一覧表(national AIDS register)を用いて照合確認することによって評価される。登録時および6カ月毎の受診時に収集された血清は−180℃で保存される。
【0082】
本研究において適格な患者は、既知の血清転換日を有し、感染から24カ月後以内および1996年より前にコホートに含められ、そして登録時から利用可能な凍結保存された血清試料を有していた。HIV血清転換は、HIV抗体検査陰性から陽性までの24ヶ月未満の間隔、または不完全なウェスタンブロット、その後の完全なウェスタンブロットによって記述された。感染日は、不完全なウェスタンブロット日−1カ月、または初回症候性感染日−15日間、または2つの検査の間の中点として定義された(Hubert 2000)。入手可能な凍結血清を有する244人の血清転換者がこの分析に含められた。経過観察は、cARTの広範な使用の時代の前の1996年に検閲された。感染年の中央値は1989年であり、そして感染以後の経過観察時間の中央値は6.5年間であった。
【0083】
A.2.研究プロトコール
本発明者らは、感染から24カ月後以内のSEROCOコホートにおける1996年以前に登録された244人のHIV−1の非処置の血清転換者を検討した(登録年の中央値は1989年)。経過観察は1996年に検閲し、経過観察の中央値は6.5年間であった。初期抗3S抗体レベルは、登録時に凍結血清から測定した。疾病進行のリスクに対する抗3S抗体の役割を推定するために、感染から200/mmを下回るCD4(91事象)および臨床的AIDS(83事象)までの時間を、50単位/mLを超える抗体を有する患者を、より低いまたは検出不可能なレベルを有する患者と比較して、カプランマイヤー曲線を通して推定した。粗および調整RRを、Cox回帰モデルを通して推定した。
【0084】
A.3.抗3S抗体レベルの測定
ELISAアッセイを、平底96ウェルマイクロプレート上(Maxisorp, Nunc)で実施した。
【0085】
プレートを、PBS中2mg/mlの3Sペプチドを用いて4℃で一晩17時間かけてコーティングした。プレートを2回PBS/0.1%Tweenで洗浄し、そしてその後、PBS/3%脱脂乳中で37℃で2時間かけて遮断した。
【0086】
検査した血清/血漿を熱で失活させ(56℃、45分間)、そしてその後、種々の濃度(1/20、1/200および1/2000)で3連、37℃で1時間30分かけて加えた。血清をアッセイバッファー(PBS、3%脱脂乳、0.1%tween−20)中で希釈した。
【0087】
PBS/0.1%Tween中で2回洗浄した後、1/2000に希釈したビオチン−SP−コンジュゲートウサギ抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch)を加え、そして37℃で1時間かけてインキュベーションした。ビオチンコンジュゲート抗体をアッセイバッファー(PBS、3%脱脂乳、0.1%tween−20)中で希釈した。
【0088】
洗浄後、ビオチンを、1/5000に希釈したExtraAvidinペルオキシダーゼコンジュゲート(Sigma)を使用して37℃で1時間かけて捕捉した。ExtrAvidinをアッセイバッファー(PBS、3%脱脂乳、0.1%tween−20)中で希釈した。最後の洗浄後、基質溶液を用いて発色させ、そして450nmにおける吸光度(OD)を測定した。
【0089】
プレートを、2回PBS/0.1%Tween中で、そしてその後2回PBS中で洗浄し、そしてTMB(Sigma)の存在下、室温で暗闇下で30分間かけて色を顕現させた。
【0090】
化学反応を4N HSOを用いて停止し、そして450nmで分析した(Microplate reader, Molecular Devices)。
【0091】
陰性対照は、アッセイバッファーで1/20に希釈した10人の非感染ドナーからのヒトAB血清(SAB)および血漿を使用した。
【0092】
抗3S抗体の定量は、15C8f2と命名された、精製マウス抗3Sモノクローナル抗体の希釈液を含む、較正標準物質を使用した。標準曲線は、このモノクローナル抗体の連続2倍希釈液に相当し、数値は0から200ng/mlの間であった。モノクローナル抗体はアッセイバッファーで希釈される。
【0093】
検査した試料のODは、標準曲線の線形部分内に報告され、同じシグナルを与える15C8F2モノクローナル抗体の対応する濃度が得られる。
【0094】
任意単位で表現される抗3S抗体の数値は、検査した試料の希釈係数および容量を考慮することによって決定される。検出限界は、陰性対照について得られた数値によって設定され、そして10の任意単位の数値に固定される。
【0095】
A.4.他の方法
CD4リンパ球数は、受診の度にフローサイトメトリーによって決定される。全てのHIV−1RNAレベルは保存された血清から遡及的に決定された。
【0096】
3つの参加している大学研究室が逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応を使用した(Amplicor HIV-1モニターアッセイ, Roche Molecular Systems, Neuilly-sur-Seine, 定量閾値400コピー/mL)。初期の抗3S抗体レベルを、登録時に凍結血清から測定した(推定感染日からの時間の中央値:9か月間)。
【0097】
A.5統計学的分析
ピアソンカイ二乗検定またはフィッシャー直接検定を使用して、質的変数を比較し:ノンパラメトリックなクラスカル・ウォリス検定を連続変数のために使用した。
【0098】
HIV疾病進行のリスクの予後診断マーカーとしての抗3S抗体レベルの適格性についてアッセイするために、感染から200/mmを下回るCD4(91事象)までのおよび臨床的AIDS(83事象)までの時間を、カプランマイヤー曲線を通して推定した。50単位/mLを超える抗体を有する患者における無事象生存曲線を、ログランク検定を使用してより低いまたは検出不可能なレベルを有するものと比較した。粗および調整された相対リスク(RR)を、Coxモデルを使用することによって推定した。
【0099】
B.結果
血清転換者の72%が、血清転換に近い検出可能な抗3S抗体を有し(推定感染日からの時間の中央値:9か月)、53%が50単位を超えていた。登録時の抗3S抗体レベルは、HIV−RNAレベルと逆相関したが、以下の表1に示されているように、CD4数とは全く関連が認められなかった。従って、結果は、抗3S抗体レベルおよびCD4 T細胞数は、独立したマーカーからなることを示す。
【0100】
【表1】
【0101】
200/mmを下回るCD4への進行は、50を超える抗3S抗体を有する患者において有意に遅延したが、効果は一過性であった(抗3S抗体と時間との間の相互作用項:p=0.003)。これらの結果を図1および2に示す。
【0102】
図1および2の結果は、200のCD4 T細胞/mmを下回るCD4 T細胞数に向かう進行のリスクは、参加後最初の120カ月間(図1;Pログランク=0.07;Pウィルコクソン=0.02)または参加後最初の36ヶ月間(図2;Pログランク=0.002;Pウィルコクソン=0.02)を考慮に入れた場合、50のカットオフ値を上回る抗3S抗体レベルを有する患者においては遅延することを示す。図1および2の結果は、抗3S抗体レベルが、HIV疾病の進行についての、特に、200/mmを上回るCD4 T細胞数を有するHIV感染患者における生存の予後についての実際の予後診断マーカーを構成することを示す。
【0103】
感染後から最初の3年間の間にCD4<200/mmの相対リスク(RR)は0.21であった([95%CI:0.07〜0.62]、p=0.005)。
【0104】
この生存利点は、基線ウイルス負荷およびCD4、年齢および性別について調整した後も依然として観察された(調整RR:0.23[0.07〜0.73]、p=0.01)。類似の結果が、AIDSまでの時間についても観察された。
【0105】
カプランマイヤー曲線は、50単位/mLを上回る抗体および4logを上回るウイルス負荷を有する患者における生存利点は、4logを超えるウイルス負荷を有する他の患者と比較して、5〜6年後にはもはや持続しなかったことを示す。これらの結果を図4〜6に示す。図3は、HIVウイルス負荷マーカー単独のHIV予後値を示す(pログランク=0.005;Pウィルコクソン=0.006)。両方のバイオマーカーが、異なる固有の予後値を有し、これらの各々は独立している。
【0106】
図3は、登録後最初の36カ月間のHIVウイルス負荷のレベルの分析を示し、ウイルス負荷値は、4logのカットオフ値より上または下として分類される。
【0107】
図4は、コンタミ後から36カ月間の(i)抗3S抗体レベル(50のカットオフ値より上(「高い」)または下(「低い」))および(ii)HIVウイルス負荷のレベル(4logのカットオフ値より上または下)の複合分析を示す。図4の結果は、HIV疾病の進行のより正確な予後が、抗3S抗体レベルマーカー(50のカットオフ値を上回る抗3S抗体レベルを有するHIV感染患者)をHIVウイルス負荷マーカー(4logのカットオフ値を下回るHIVウイルス負荷値)と組み合わせた場合に決定されることを示す(pログランク=0.001;Pウィルコクソン=0.001)。コンタミ後から120カ月間の同じ結果を図5に示す(pログランク=0.0001;pウィルコクソン=0.0001)。
【0108】
図6は、コンタミ後から120ヶ月間、(i)抗3S抗体レベルおよび(ii)HIVウイルス負荷のレベルの複合測定を使用した場合の、AIDSに向けての進行のリスクの予後を示す。図6の結果は、HIV疾病の進行の高度に正確な予後を示し、それぞれPログランク=0.0005およびPウィルコクソン=0.0003の非常に有意な値を有する。
【0109】
被験者の部分集合は、その抗体を、登録から24〜36カ月後に再度測定された。
【0110】
一貫して高い抗体を有する被験者は依然として、50を下回る抗3S抗体レベルの減少を経験した被験者と比較して、無病生存利点を有していた。
【0111】
最後に、以下の表2に、抗3S抗体およびHIVウイルス負荷のレベルは、HIV感染患者におけるHIV疾病の進行についての2つの独立した予後診断マーカーを構成することが示される。
【0112】
【表2】
【0113】
表2の結果はまた、200のCD4 T細胞/mm未満のCD4 T細胞数に向けての、36ヶ月間の期間におよぶ、進行のリスクは、年齢、性別、HIV RNAおよびDNAの調整後、50のカットオフ値を上回る抗3S抗体レベルを有する患者において遅延していることを示す。
【0114】
これら全ての結果は、CD4レベル、ウイルス負荷および抗3Sが、HIV感染の予後の3つの独立したマーカーであることを示す。さらに、抗3Sの閾値は、不良な予後患者と良好な予後患者との間のカットオフ値として決定された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]