(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プラスチックフィルムの少なくとも一方の表面に、無機酸化物薄膜層と、ポリエチレンイミン誘導体を含む中間層と、下記一般式(1)で示されるアルコキシシランの(部分)加水分解物、その(部分)縮合物、またはそれらの混合物により架橋されたポリビニルアルコール系重合体を含む被覆層とをこの順に設けてなることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
R1n−Si(OR2)4-n・・・・(1)
ここで、R1およびR2は、同一または異なって炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは0〜3の整数である。
前記ポリエチレンイミン誘導体が、ポリエチレンイミンと、アルデヒド化合物、ケトン化合物、アルキルハライド化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、グアジニン化合物、尿素化合物、酸、および酸無水物よりなる群から選択される化合物との反応物である請求項1に記載のガスバリア性積層フィルム。
前記無機酸化物薄膜層を構成する無機酸化物が、少なくとも酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを含む多元系無機酸化物である請求項1または2に記載のガスバリア性積層フィルム。
前記プラスチックフィルムが、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムまたは二軸延伸ポリアミドフィルムである請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性積層フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を詳述する。
【0028】
本発明のガスバリア性積層フィルムは、プラスチックフィルムの少なくとも一方の表面に、無機酸化物薄膜層と、中間層と、被覆層とをこの順に設けてなるものである。
【0029】
(プラスチックフィルム)
本発明におけるプラスチックフィルムは、有機高分子樹脂からなり、溶融押出し等でフィルム化された後、長手方向および/または幅方向に延伸され、さらに必要に応じて、熱固定、冷却が施されたフィルムである。好ましくは、長手方向および幅方向に延伸された二軸延伸フィルムがよい。
【0030】
有機高分子樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12、全芳香族ポリアミドなどのポリアミド;のほか、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホンなどが挙げられる。これらの中でも、ポリエステルまたはポリアミドが好ましい。これらの有機高分子樹脂は、他の有機単量体を少量共重合したり、他の有機重合体をブレンドしたりしてもよい。
【0031】
ポリエステルは、ホモポリマーであってもよいし、複数のジカルボン酸成分および/または複数のグリコール成分からなるコポリマーであってもよい。ポリエステルを構成するジカルボン酸成分は、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸を主成分とすることが好ましく、これら以外に、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能カルボン酸;アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;などの他のカルボン酸成分を用いることができる。また、ポリエステルを構成するグリコール成分としては、エチレングリコールまたは1,4−ブタンジオールを主成分とすることが好ましく、これら以外に、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール;p−キシリレングリコールなどの芳香族グリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール;重量平均分子量が150〜20000のポリエチレングリコール;などの他のグリコール成分を用いることができる。
【0032】
ポリエステルが複数のジカルボン酸成分および/または複数のグリコール成分からなるコポリマーである場合、上述した主成分以外のその他の成分がポリエステル中に占める比率は、20質量%以下であることが好ましい。その他の成分が20質量%を超えると、フィルム強度、透明性、耐熱性などが低下する場合がある。
【0033】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどが好ましく挙げられ、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0034】
ポリアミドとしては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリ−ε−アミノへプタン酸(ナイロン7)、ポリ−ε−アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン2・6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4・6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6・6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6・10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6・12)、ポリオクタメチレンドデカミド(ナイロン8・12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8・6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン10・6)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン10・10)、ポリドデカメチレンドデカミド(ナイロン12・12)、メタキシリレンジアミン−6ナイロン(MXD6)などが挙げられ、これらを主成分とする共重合体であってもよい。
【0035】
ポリアミド共重合体としては、カプロラクタム/ラウリンラクタム共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、ラウリンラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体、エチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体などが挙げられる。
【0036】
これらのポリアミドには、フィルムの柔軟性の改質を目的として、芳香族スルホンアミド類、p−ヒドロキシ安息香酸、エステル類などの可塑剤、低弾性率のエラストマー成分、ラクタム類などを配合することも有効である。
【0037】
さらに、前記有機高分子樹脂には、公知の添加物、例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤などが添加されてもよい。
プラスチックフィルムの透明度は、特に限定されるものではないが、透明性を要求される用途に使用する場合には、50%以上の光線透過率をもつことが好ましい。
【0038】
本発明では、本発明の目的を損なわないかぎりにおいて、無機酸化物薄膜層を積層する前のプラスチックフィルムに、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、火炎処理、表面粗面化処理などの表面処理、公知のアンカーコート処理、印刷、装飾などを施してもよい。
【0039】
本発明におけるプラスチックフィルムの厚みは、3〜500μmの範囲が好ましく、6〜300μmの範囲がより好ましい。
【0040】
(無機酸化物薄膜層)
本発明では、プラスチックフィルムの少なくとも一方の面に無機酸化物薄膜層が設けられる。
本発明における無機酸化物薄膜を形成する無機酸化物としては、特に制限はなく、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどが挙げられる。特に、ガスバリア性に優れる点から、また膜の柔軟性を向上させてガスバリア性積層体に曲げや寸法変化に対する耐久性を付与できる点から、少なくとも酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを含む多元系無機酸化物が好ましく、酸化ケイ素(シリカ等)と酸化アルミニウム(アルミナ等)とからなる二元系無機酸化物がより好ましい。
【0041】
前記酸化ケイ素とは、Si、SiOやSiO
2などの各種珪素酸化物の混合物からなり、前記酸化アルミニウムとは、Al、AlOやAl
2O
3などの各種アルミニウム酸化物の混合物からなり、各酸化物内における酸素の結合量はそれぞれの製造条件によって異なってくる。
【0042】
酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを併用する場合、無機酸化物薄膜中の酸化アルミニウムの含有率は、20〜99質量%であることが好ましく、20〜75質量%であることがより好ましい。酸化アルミニウムの含有量が20質量%未満になると、ガスバリア性が必ずしも十分でない場合がある。一方、酸化アルミニウムの含有量が99質量%を超えると、二者併用の効果が低下し、蒸着膜の柔軟性が不十分となり、ガスバリア性積層体が曲げや寸法変化に比較的弱くなる場合がある。
【0043】
酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを併用する場合、無機酸化物薄膜中の酸化ケイ素の含有率は、1〜80質量%であることが好ましく、25〜80質量%であることがより好ましい。酸化ケイ素の含有量が1質量%未満になると、二者併用の効果が低下し、蒸着膜の柔軟性が不十分となり、ガスバリア性積層体が曲げや寸法変化に比較的弱くなる場合がある。一方、酸化ケイ素の含有量が80質量%を超えると、ガスバリア性が不十分になる場合がある。
【0044】
無機酸化物薄膜の厚みは、通常1〜800nmが好ましく、5〜500nmがより好ましい。厚みが1nm未満になると、満足のいくガスバリア性が得られ難くなるおそれがある。一方、800nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性の向上効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点でかえって不利となる。
【0045】
無機酸化物薄膜を形成する典型的な製法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理蒸着法、またはCVD法(化学蒸着法)などが適宜用いられる。
【0046】
例えば、真空蒸着法を採用してシリカとアルミナとからなる二元系無機酸化物を形成する場合、蒸着原料としては、SiO
2とAl
2O
3との混合物、またはSiO
2とAlとの混合物などが用いられる。加熱には、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱などを採用することができる。また、反応ガスとして、酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気などを導入したり、オゾン添加、イオンアシストなどの手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。さらに、プラスチックフィルムにバイアスを印加したり、プラスチックフィルムを加熱したり冷却するなど、薄膜形成条件も任意に変更することができる。
【0047】
蒸着材料、反応ガス、基板バイアス、加熱・冷却などの薄膜形成条件は、スパッタリング法やイオンプレーティング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。
【0048】
(ポリエチレンイミン誘導体を含む中間層)
本発明では、無機酸化物薄膜層と被覆層との間に中間層が設けられる。この中間層は、少なくともポリエチレンイミン誘導体を含むことが必要であり、ポリエチレンイミン誘導体のみを含んでもよい。
【0049】
このような中間層を有することにより、無機酸化物薄膜層と、アルコキシシランの(部分)加水分解物、その(部分)縮合物、またはそれらの混合物により架橋されたポリビニルアルコール系重合体を含む被覆層との接着性を良好にできるとともに、被覆層の寸法変化による応力が直接無機酸化物薄膜層に及ぶことを防止し、無機酸化物薄膜層への応力を緩和できるため、無機酸化物薄膜層のバリア性が低下しにくくなる。
【0050】
ポリエチレンイミンは、エチレンイミンの重合体であり、三員環構造のアミノ基を有する非常に反応性に富む水溶性高分子であり、好ましくは、分子量が100〜100000程度、アミン値が20程度である。
【0051】
ポリエチレンイミンは、従来より、溶融押出しラミネートにおけるアンカーコート剤として用いられ、少量で強い接着強度を得ることができることが知られていた。しかし、同時に接着部に水が付着すると接着強度が低下するという欠点も有している。
【0052】
本発明において、ポリエチレンイミン誘導体としては、(i) エチレンイミンと、他の成分との共重合体;(ii)ポリエチレンイミンと、アルデヒド化合物、ケトン化合物、アルキルハライド化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、グアニジン化合物、尿素化合物、酸、および酸無水物よりなる群から選択される化合物(以下、「特定化合物A」と称する)との反応物;(iii)ポリエチレンイミンに対しメチルビニル共重合体などをグラフトさせたグラフト体;(iv)ポリエチレンイミンと架橋剤との反応物;などが好ましく挙げられる。これらの中でも上記(ii)が特に好ましい。
【0053】
アルデヒド化合物の具体例としては、ホルムアルデヒド、ジメチルホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、尿素ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アクロレイン、ベンズアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ラウリンアルデヒドなどが挙げられる。
【0054】
ケトン化合物の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。
【0055】
アルキルハライド化合物の具体例としては、1,2−ジクロルエタン、1,2−ジクロルプロパン、1,2−ジクロルブタン、1,2−ジクロルヘキサン、1,2−ジクロルオクタン、1,2−ジブロムエタン、1,2−ジブロムプロパン、1,2−ジブロムブタン、1,2−ジブロムヘキサン、1,2−ジブロムオクタンなどが挙げられる。
【0056】
イソシアネート化合物の具体例としては、ブロック化イソシアネート化合物、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビスシクロへキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0057】
エポキシ化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0058】
グアニジン化合物の具体例としては、グアニジン、アセチルグアニジン、ヒプリルグアニジンなどが挙げられる。
【0059】
酸の具体例としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸;リン酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸;等が挙げられる。
酸無水物の具体例としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。
【0060】
前記(ii)のポリエチレンイミン誘導体は、ポリエチレンイミンと前記特定化合物Aとを、例えば15〜80℃で0.1〜6時間反応させることにより得られる。この際、反応溶剤として、水と相溶性がある溶剤、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジオキサンなどを添加することが好ましい。
【0061】
前記(ii)のポリエチレンイミン誘導体を得る際には、ポリエチレンイミン100質量部に対して、前記特定化合物Aを5〜40質量部反応させることが好ましく、10〜30質量部反応させることがより好ましい。
【0062】
またポリエチレンイミン誘導体は架橋されたものであってもよい。前記(iv)のポリエチレンイミン誘導体は、架橋されたものとなる。この場合に用いることのできる架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、チタン化合物、メチロールメラミン、ジメチロールエチレン尿素などが挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0063】
架橋剤として用いることのできるイソシアネート化合物またはエポキシ化合物の具体例としては、前記のイソシアネート化合物またはエポキシ化合物が挙げられる。
【0064】
架橋剤として用いることのできるチタン化合物の具体例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルへキシル)チタネート、テトラメチルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクタンジオレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
【0065】
架橋されたポリエチレンイミン誘導体は、ポリエチレンイミンと前記架橋剤とを、例えば、15〜80℃で0.1〜3時間反応させることにより得られる。この際、反応溶剤として、水と相溶性があるがある溶剤、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジオキサンなどを添加することが好ましい。
【0066】
架橋されたポリエチレンイミン誘導体を得る際には、架橋剤の添加量は、特に限定されないが、架橋剤を添加しすぎると、ガスバリア性が低下してしまうおそれがある。架橋剤の添加量は、架橋される官能基(水酸基など)に対して、モル比(架橋剤/架橋される官能基)で、1/1000〜1/2の範囲であることが好ましく、1/500〜1/10の範囲であることがより好ましい。架橋剤の添加量が少なすぎると、ガスバリア性積層フィルムの耐熱水性が低くなる傾向があり、一方、多すぎると、ガスバリア性積層フィルムのガスバリア性が低くなるばかりでなく、中間層用塗工液の使用時の希釈分散安定性が悪くなる傾向がある。
【0067】
中間層は、ポリエチレンイミン誘導体の水溶液を必要に応じて溶剤(例えば、水とアルコールとの混合液等)で希釈した塗工液を、無機酸化物薄膜層の表面に塗工し、乾燥、硬化させることにより形成することができる。
【0068】
中間層の塗工液を無機酸化物薄膜層の表面に塗工する方法は、特に限定されないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、マイヤーバーコーティング、ダイコーティングなどの通常の塗工方法を採用することができる。
【0069】
中間層を形成する際の塗工液の乾燥硬化温度は、特に限定されるものではないが、プラスチックフィルムの軟化点以下の温度が好ましい。具体的には、60〜150℃の温度で、1〜60秒間熱処理すれば十分に乾燥、硬化できる。60℃よりも低温か、または1秒より短時間になると、乾燥、硬化が不十分になる場合があり、一方、150℃よりも高温になると、熱に起因するシワがプラスチックフィルムに発生する場合があり、60秒より長時間になると、乾燥硬化工程での生産性が低下する傾向がある。
【0070】
中間層の乾燥後の樹脂付着量は、0.005〜5g/m
2であることが好ましく、0.01〜3g/m
2であることがより好ましく、0.015〜2g/m
2であることがさらに好ましい。厚みでいうと、0.005〜4.8μmであることが好ましく、0.01〜2.9μmであることがより好ましく、0.014〜1.9μmであることがさらに好ましい。付着量が少なすぎると、ガスバリア性や耐屈曲性の向上効果が期待しにくくなる。一方、付着量が多すぎると、膜強度が低下することがある。
【0071】
中間層中のポリエチレンイミン誘導体の含有率は、5〜100質量%であることが好ましく、20〜100質量%であることがより好ましく、50〜100質量%であることがさらに好ましい。ポリエチレンイミン誘導体の含有率が5質量%未満になると、応力緩和効果を発現しにくくなる。
【0072】
(ポリビニルアルコール系重合体を含む被覆層)
本発明では、下記一般式(1)で示されるアルコキシシランの(部分)加水分解物、その(部分)縮合物、またはそれらの混合物により架橋されたポリビニルアルコール系重合体を含む被覆層を、ポリエチレンイミン誘導体を含む中間層上に形成させることが必要である。
R
1n−Si(OR
2)
4-n・・・・(1)
ここで、R
1およびR
2は、同一または異なって炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは0〜3の整数である。
【0073】
ポリビニルアルコール系重合体は、得られるガスバリア性積層体の高湿度下でのガスバリア性をより向上させるために、ケン化度が90mol%以上であることが好ましく、97mol%以上であることがより好ましい。ケン化度が90mol%より小さいと、耐湿熱性が低下する傾向がある。
【0074】
また、ポリビニルアルコール系重合体は、得られるガスバリア性積層体の高湿度下でのガスバリア性をより向上させるために、重合度が100〜5000であることが好ましく、200〜2000であることがより好ましい。重合度が100より小さいと、ガスバリア性が低下する傾向があり、重合度が5000より大きいと、塗工液の粘度が大きくなり、塗工が困難となる傾向がある。
【0075】
さらに、ポリビニルアルコール系重合体として、分子中に疎水基を含有した変性ポリビニルアルコール系重合体を用いると、高湿度下において、高いガスバリア性が発現しやすい。
【0076】
前記一般式(1)で示されるアルコキシシランは、触媒等の作用で加水分解および/または縮合するものであれば特に限定されない。具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン;トリメチルメトキシシラン等のモノアルコキシシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;などが挙げられる。これらの中でも、ガスバリア性の観点から、テトラアルコキシシランが好ましく、テトラメトキシシランまたはテトラエトキシシランがより好ましい。これらアルコキシシランは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
架橋されたポリビニルアルコール系重合体は、例えば、前記ポリビニルアルコール系重合体と前記アルコキシシランとを混合し、加水分解反応、縮合反応、架橋反応を行うか、もしくは、前記ポリビニルアルコール系重合体と、前記アルコキシシランの(部分)加水分解物、その(部分)縮合物、またはそれらの混合物とを混合し、架橋反応を行うことにより、得ることができる。前記アルコキシシランの加水分解反応および縮合反応は、特に制限されるものではなく、通常、水、加水分解反応や縮合反応を行うための触媒、および有機溶媒が用いられる。
【0078】
前記アルコキシシランとポリビニルアルコール系重合体との使用割合は、アルコキシシランの使用量が、ポリビニルアルコール系重合体100質量部に対して、対応するケイ素酸化物換算で1質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、5質量部以上800質量部以下であることがより好ましく、さらに好ましくは10質量部以上である。アルコキシシランの使用量が1質量部より少ないと、十分な耐湿熱性を発現しにくくなる傾向がある。また、アルコキシシランの使用量が1000質量部より多いと、被覆層の脆性が増してクラックが入りやすくなるため、高湿度下でのガスバリア性が低下する傾向がある。
【0079】
また、ポリビニルアルコール系重合体と、アルコキシシランの(部分)加水分解物、その(部分)縮合物、またはそれらの混合物とを架橋反応させる場合には、ポリビニルアルコール系重合体と、アルコキシシランの(部分)加水分解物、その(部分)縮合物、またはそれらの混合物との結合性をより向上させるために、下記の一般式(2)で示される有機官能基および加水分解基を有するシラン化合物を添加してもよい。
R
3p−Si(OR
4)q・・・・(2)
ここで、R
3は、ポリビニルアルコール系重合体と反応し得る有機官能基であり、具体的には、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる1種であることが好ましく、エポキシ基であることがより好ましい。また、R
4は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。なお、pおよびqは1以上の整数であり、かつ、p+q=4の等式が成り立つ。
【0080】
アルコキシシランの加水分解反応、その縮合反応、またはそれらの反応生成物とポリビニルアルコール系重合体との架橋反応は、酸性条件、塩基性条件のいずれの条件下においても促進される。なお、被覆層を形成する塗工液に、ガスバリア性が劣化しない範囲内で前記各反応を起こすための、一般に知られている触媒を添加してもよい。
【0081】
触媒としては、酸性触媒として、塩酸、硝酸、硫酸などの鉱酸;リン酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸;等が挙げられる。また、塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどの無機塩基;アンモニア、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミンなどの有機塩基;等が挙げられる。これらの触媒の中でも、酸性触媒が好ましく、塩酸、硝酸、硫酸などの鉱酸がより好ましい。触媒は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、触媒は、加水分解反応を目的とする触媒と、縮合反応を目的にする触媒とに分けて用いてもよい。触媒(特に酸性触媒)の使用量は、特に限定されず、溶液がゲル化しない範囲内で、任意の量を添加することができる。
【0082】
アルコキシシランの加水分解反応、その縮合反応、またはそれらの反応生成物とポリビニルアルコール系重合体との架橋反応においては、その他、架橋剤、表面調整剤などを添加してもよい。なお、加水分解時の反応溶液のpHは、0.5以上が好ましく、2.0以上がより好ましい。また、加水分解時の温度は、20〜60℃が好ましく、25〜55℃がより好ましい。加水分解時間は、溶液のpHおよび温度によって異なるが、概ね0.5〜5時間程度である。加水分解時のpHが0.5より小さい場合や、加水分解時の温度が60℃より高い場合には、加水分解反応は十分に進行するが、縮合反応が制御しにくくなり、溶液がゲル化する傾向がある。一方、温度が20℃より低い場合には、加水分解反応が抑制される傾向がある。
【0083】
アルコキシシランの加水分解反応、その縮合反応、またはそれらの反応生成物とポリビニルアルコール系重合体との架橋反応を行う際に用いる有機溶媒は、アルコキシシランを溶解させ、さらに、ポリビニルアルコール系重合体の水溶液と相溶するものであれば特に限定はされないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどの低級アルコールが好ましい。これらは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
アルコキシシランの加水分解反応、その縮合反応、またはそれらの反応生成物とポリビニルアルコール系重合体との架橋反応を行う際の有機溶媒の添加量は、特に限定されないが、アルコキシシラン100質量部に対して、2〜500質量部が好ましく、10〜300質量部がより好ましい。有機溶媒の添加量が少なすぎると、アルコキシシランが十分に溶解せず、加水分解反応が抑制される傾向がある。一方、多すぎると、ポリビニルアルコール系重合体の溶解性が低下する傾向がある。
【0085】
被覆層は、架橋されたポリビニルアルコール系重合体を含む塗工液を、中間層の表面に塗工し、乾燥、硬化させることにより形成することができる。
【0086】
被覆層の塗工液を中間層の表面に塗工する方法は、特に限定されないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、マイヤーバーコーティング、ダイコーティングなどの通常の塗工方法を採用することができる。
【0087】
被覆層を形成する塗工液の乾燥硬化温度は、特に限定されるものではないが、プラスチックフィルムの軟化点以下の温度が好ましく、架橋反応が十分に行われる温度であればよい。具体的には、60〜150℃の温度で、1〜60秒間熱処理すれば十分に乾燥、硬化できる。60℃よりも低温か、または1秒より短時間になると、架橋反応が十分に進まない場合があり、150℃よりも高温になると、熱に起因するシワがプラスチックフィルムに発生する場合があり、60秒より長時間になると、乾燥硬化工程での生産性が低下する傾向がある。
【0088】
被覆層の乾燥後の樹脂付着量は、0.01〜10g/m
2であることが好ましく、0.05〜5g/m
2であることがより好ましく、0.1〜2g/m
2であることがさらに好ましい。厚みでいうと、0.01〜10μmであることが好ましい。付着量が少なすぎると、被覆層にピンホールが発生し十分な性能が発現しない場合がある。一方、付着量が多すぎると、被覆層にクラックが生じ易く十分な性能が発現しない場合がある。
【0089】
(エージング処理)
被覆層形成後に、ガスバリア性積層フィルムをエージング処理することによって、被覆層の架橋密度を増大させ、よりガスバリア性を向上させることができる。このエージング処理の温度や時間は、特に限定されないが、20〜120℃で1〜500時間処理することが好ましく、40〜100℃で8〜200時間処理することがより好ましい。処理温度が20℃より低いと、または処理時間が1時間より短いと、十分に架橋密度を増大させることができない場合がある。一方、120℃を超えると、フィルムの収縮によって、フィルムロールが巻き締まるために、無機酸化物薄膜層がダメージを受ける場合がある。また、500時間を超えて過度に長時間処理しても、それに相当するガスバリア性の向上効果は得られない。
【0090】
(蒸着用アンカーコート層)
無機酸化物薄膜層による防湿機能を長期間維持する点から、無機酸化物薄膜層とプラスチックフィルムとの間にアンカーコート層を設けることが好ましい。これにより、無機酸化物薄膜層とプラスチックフィルムとの密着性が向上するため、防湿機能を長期間維持できる。
【0091】
アンカーコート層を形成する樹脂としては、水溶性または水分散性ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、メタキシリレン基および/または水添キシリレン基を含有するポリウレタン樹脂、オキサゾリン基を有する樹脂が好ましく挙げられる。
【0092】
[水溶性または水分散性ポリエステル樹脂]
水溶性または水分散性ポリエステル樹脂としては、各種ポリエステル樹脂またはそれらの変性物が挙げられる。このようなポリエステル樹脂の具体例としては、テレフタル酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、2−スルホイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、ドデカン二酸などの多価カルボン酸成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールなどのジオール成分との反応物が挙げられ、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などによる変性物も挙げられる。
【0093】
水溶性または水分散性ポリエステル樹脂は、なかでも、水溶性芳香族ポリエステル系樹脂または酸価が200eq/t以上の水性アクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂または共重合体を含むことが好ましい。この共重合体にはブロック体またはグラフト体も含まれる。
【0094】
前記水性アクリル樹脂は、耐水性を悪化させない極性基を有していることが、アンカーコート層の耐水性の点で好ましい。耐水性を悪化させない極性基としては、加熱後に分解して極性が低下する基が挙げられ、具体的には、カルボン酸のアミン塩が挙げられる。使用することができるアミンは、塗膜の乾燥条件で気化するものが好ましく、例えばアンモニウム、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。
【0095】
さらに好ましくは、水溶性芳香族ポリエステル系樹脂または酸価が200eq/t以上の水性アクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂または共重合体は、2重結合を有する酸無水物を含有する少なくとも1種のモノマーからなるラジカル重合体を含むことが好ましい。このようなラジカル重合体は、酸無水物が導入されたものとなるので、樹脂分子間で架橋反応を行なうことが可能となる。すなわち、樹脂中の酸無水物は、コート液中では加水分解などによりカルボン酸に変化し、乾燥または製膜中の熱履歴により、分子間で(酸無水物同士で)または他の分子の活性水素基と反応してエステル基などを生成することで、塗布層の樹脂を架橋し、耐水性および加熱白化防止性などを発現させる。酸無水物構造を有する前記ラジカル重合体の含有率は、前記樹脂または共重合体中、5質量%以上であることが好ましい。ラジカル重合体が5質量%未満では、耐水性向上効果が十分得られないことがある。
【0096】
2重結合を有する酸無水物を含有するモノマーとしては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。
【0097】
また、前記ラジカル重合体は、他の重合性不飽和単量体との共重合体であってもよい。前記他の重合性不飽和単量体としては、フマル酸、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどのフマル酸のモノエステルまたはジエステル;マレイン酸、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸のモノエステルまたはジエステル;イタコン酸、イタコン酸のモノエステルまたはジエステル;フェニルマレイミドなどのマレイミド;スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレン誘導体;ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのビニル芳香族化合物;アルキルアクリレートまたはアリールアクリレート、アルキルメタクリレートまたはアリールメタクリレート(アルキル基またはアリール基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等)などのアクリル重合性単量体;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートのヒドロキシ含有アクリル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドなどのアミド基含有アクリル単量体;N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有アクリル単量体;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有アクリル単量体;アクリル酸、メタクリル酸またはそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)などを含有するアクリル単量体などが挙げられる。
【0098】
[ポリビニルアルコール樹脂]
ポリビニルアルコール樹脂のケン化度と重合度は、目的とする微粒子分散性、塗工液の粘度、製造時の延伸性を加味して定められる。ポリビニルアルコールの重合度(以下、いずれも「数平均分子量」を示す。)は、好ましくは300以上、より好ましくは500以上であり、好ましくは2600以下、より好ましくは2000以下であることが推奨される。重合度が300未満になると、結晶化速度が速すぎるため、十分な変形性が得られないことがある。また重合度が2600を超えるとポリビニルアルコール水溶液の粘度が高くなり過ぎて、ゲル化し易くなるためコーティングが困難となることがある。
【0099】
[アクリル樹脂]
アンカーコート層を構成する樹脂組成物は、アクリル樹脂を含有してもよい。アクリル樹脂としては、アルキルアクリレートおよび/またはアルキルメタクリレート(以下、纏めて「アルキル(メタ)アクリレート」と称する。)を主要な成分とする水性アクリル樹脂が挙げられる。水性アクリル樹脂としては、具体的には、アルキル(メタ)アクリレート成分を通常40〜95モル%の含有割合で含み、必要に応じて、共重合可能でかつ官能基を有するビニル単量体成分を通常5〜60モル%の含有割合で含む水溶性または水分散性の樹脂が挙げられる。水性アクリル系樹脂におけるアルキル(メタ)アクリレートの含有割合を40モル%以上とすることにより、塗布性、塗膜の強度、耐ブロッキング性が特に良好になる。一方、アルキル(メタ)アクリレートの含有割合を95モル%以下とし、共重合成分として特定の官能基を有する化合物を水性アクリル系樹脂に5モル%以上導入することにより、水溶化または水分散化を容易にするとともに、その状態を長期にわたり安定化することができ、その結果、アンカーコート層と基材フィルムとの接着性や、アンカーコート層内での反応によるアンカーコート層の強度、耐水性、耐薬品性などを改善することができる。
【0100】
アルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基としては、例えば、メチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
共重合可能でかつ官能基を有するビニル単量体における官能基としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基またはその塩、アミド基またはアルキロール化されたアミド基、アミノ基(置換アミノ基を含む)、アルキロール化されたアミノ基またはその塩、水酸基、エポキシ基などが挙げられ、特に、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基が好ましい。これらの官能基は、1種のみでもよいし2種以上であってもよい。
【0101】
ビニル単量体として用いることのできる、カルボキシル基や酸無水物基を有する化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などのほか、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などが挙げられ、さらには無水マレイン酸なども挙げられる。
【0102】
ビニル単量体として用いることのできる、スルホン酸基またはその塩を有する化合物としては、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0103】
ビニル単量体として用いることのできる、アミド基またはアルキロール化されたアミド基を有する化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、メチロール化アクリルアミド、メチロール化メタクリルアミド、ウレイドビニルエーテル、β−ウレイドイソブチルビニルエーテル、ウレイドエチルアクリレートなどが挙げられる。
【0104】
ビニル単量体として用いることのできる、アミノ基、アルキロール化されたアミノ基またはそれらの塩を有する化合物としては、例えば、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、2−アミノエチルビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−アミノブチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、またはこれらのアミノ基をメチロール化したものや、ハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸、サルトンなどにより4級化したものなどが挙げられる。
【0105】
ビニル単量体として用いることのできる、水酸基を有する化合物としては、例えば、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、β−ヒドロキシプロピルアクリレート、β−ヒドロキシプロピルメタクリレート、β−ヒドロキシビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレートなどが挙げられる。
【0106】
ビニル単量体として用いることのできる、エポキシ基を有する化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。
【0107】
水性アクリル樹脂には、アルキル(メタ)アクリレートおよびビニル単量体として上述した官能基を有する化合物のほかに、例えば、アクリロニトリル、スチレン類、ブチルビニルエーテル、マレイン酸モノまたはジアルキルエステル、フマル酸モノまたはジアルキルエステル、イタコン酸モノまたはジアルキルエステル、メチルビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルトリメトキシシランなどを併用して含有させることもできる。
【0108】
[ポリウレタン樹脂]
ウレタン樹脂は、構成成分として、少なくともポリオール成分、ポリイソシアネート成分を含み、さらに必要に応じて鎖延長剤を含んでもよい。ウレタン樹脂は、これら構成成分が主としてウレタン結合により共重合された高分子化合物である。ポリエステルポリオール部分は、アンカーコート層に柔軟性を付与し、フィルムの寸法変化による無機薄膜層への応力を低減することができ、プラスチックフィルムとの密着性向上にも寄与することができる。一方、ウレタン結合部分によって、アンカーコート層自体の凝集力が向上し、結果として耐水性が向上する。なお、これらウレタン樹脂の構成成分は、核磁気共鳴分析などにより特定することが可能である。
【0109】
ウレタン樹脂の構成成分であるポリエステルポリオールは、ジカルボン酸とグリコールとの反応によって得られる。ポリエステルポリオールを形成するジカルボン酸としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸が挙げられる。脂肪酸ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、シュウ酸などが挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。p−ヒドロキシ安息香酸のようなオキシ酸の一部も挙げられる。脂環族ジカルボン酸としては、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。
【0110】
ポリエステルポリオールを形成するグリコール成分としては、炭素数2以上の脂肪族グリコールまたは脂環族グリコールが挙げられる。前記ジカルボン酸成分とグリコール成分とを用い、通常、溶融重縮合法により、ポリエステルポリオールが調製される。例えば、前記各成分を直接反応させて水を留去しエステル化するとともに、重縮合を行なう直接エステル化法、または前記ジカルボン酸成分のジアルキルエステルとグリコール成分とを反応させてアルコールを留出しエステル交換を行わせるとともに重縮合を行なうエステル交換法などにより調製される。溶融重合法以外に、溶液重縮合法、界面重縮合法なども採用することができる。
【0111】
ウレタン樹脂の構成成分であるポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネートの異性体類、ジフェニルメタンジイソシアネートの異性体類などの芳香族ジイソシアネート類;キシリレンジイソシアネートなどの芳香族脂肪族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジイソシアネート類;ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類;またはこれらの化合物を単一あるいは複数でトリメチロールプロパンなどとあらかじめ付加させたポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0112】
前記ポリエステルポリオールに前記ジイソシアネートを通常の方法により反応させれば、ポリウレタンが得られる。さらに、ジオール、ジアミンなどの2個以上の活性水素を有する低分子化合物(鎖延長剤)を反応させて鎖延長させることも可能である。上記ジオールとしては、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられ、ジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。
【0113】
本発明で用いるウレタン樹脂は、カルボン酸基を有し、その酸価が10〜40mgKOH/gの範囲内にあることが好ましく、15〜35mgKOH/gの範囲内にあることがより好ましく、20〜30mgKOH/gの範囲内にあることがさらに好ましい。また、ウレタン樹脂中のカルボン酸基とオキサゾリン基とを反応させることにより、アンカーコート層は部分的に架橋しながらも柔軟性を維持でき、一層の凝集力向上と無機薄膜の応力緩和とが両立できる。
【0114】
ウレタン樹脂にカルボン酸(塩)基を導入するためには、例えば、ポリオール成分として、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などのカルボン酸基を有するポリオール化合物を共重合成分として導入し、塩形成剤により中和する。塩形成剤の具体例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミンなどのトリアルキルアミン類;N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンなどのN−アルキルモルホリン類;N−ジメチルエタノールアミン、N−ジエチルエタノールアミンなどのN−ジアルキルアルカノールアミン類が挙げられる。これらの塩形成剤は、1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。
【0115】
[オキサゾリン基を有する樹脂]
オキサゾリン基を有する樹脂としては、例えば、オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体を、必要に応じその他の重合性不飽和単量体と従来公知の方法(例えば溶液重合、乳化重合等)によって重合させることにより得られる重合体を挙げることができる。
【0116】
オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどが挙げられる。
【0117】
その他の重合性不飽和単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルキルまたはシクロアルキルエステル(アルキルまたはシクロアルキルの炭素数1〜24個);2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル(ヒドロキシアルキルの炭素数2〜8個);スチレン、ビニルトルエンなどのビニル芳香族化合物;のほか、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。これらの重合性不飽和単量体は、1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。
【0118】
前記オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体およびその他の重合性不飽和単量体の共重合体の組成モル比は、オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体が30〜70モル%であることが好ましく、40〜65モル%であることがより好ましい。
【0119】
オキサゾリン基を有する樹脂は、他樹脂との相溶性、濡れ性、架橋反応効率、層の透明性の観点から、水溶性樹脂であることが好ましい。オキサゾリン基を有する樹脂を水溶性にするためには、他の重合性不飽和単量体として親水性単量体を用いることが好ましい。親水性単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールのモノエステル化合物などのポリエチレングリコール鎖を有する単量体、(メタ)アクリル酸2−アミノエチルおよびその塩、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、スチレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。なかでも、水への溶解性が高い(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールのモノエステル化合物などのポリエチレングリコール鎖を有する単量体が好ましい。導入するポリエチレングリコール鎖の分子量としては、200〜900が好ましく、300〜700がより好ましい。
【0120】
[メタキシリレン基および/または水添キシリレンジ基を含有するポリウレタン樹脂]
メタキシリレン基および/または水添キシリレンジ基を含有するポリウレタン樹脂は、原料の一つであるポリイソシアネートの一部または全部として、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを用いて製造されるものであり、さらに、下記に示す各種のポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物を反応させたポリウレタン樹脂であってもよい。
【0121】
ポリイソシアネート化合物としては、具体的には、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;トリメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;などのジイソシアネート化合物が挙げられる。
【0122】
ポリオール成分(特にジオール成分)としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールなどが挙げられる。また、水酸基の代わりにカルボン酸、アミンなどの活性水素を含有する化合物も併用することができる。
【0123】
(太陽電池保護シート)
本発明の太陽電池保護シートは、上記本発明のガスバリア性積層フィルムを備えたものである。太陽電池保護シートは、太陽電池モジュールの光入射面、その反対面、または両面に配され、太陽電池素子を保護するものである。太陽電池保護シートは、各機能を有した樹脂シートが、1層または2層以上積層されたシートであり、具体的にはフロントシート、バックシートと称される。太陽電池素子は湿度により劣化を受けるため、通常、これらの保護シートには防湿機能(水蒸気バリア機能)が要求される。よって、本発明のガスバリア性積層フィルムは、水蒸気バリア性を長期間維持し得る点で、太陽電池保護シートの構成部材として好適である。
【0124】
太陽電池のフロントシートの態様としては、ポリエステルフィルム/接着剤/本発明のガスバリア性積層フィルム/接着剤/ハードコート層といった構成が例示される。ハードコート層には耐候性を向上させるために、紫外線吸収剤を添加することが好ましい。また、最外層に防汚層や反射防止層などを設けることは、太陽電池素子に入射する光線量を増加させ、光電変換効率を向上させる点で、好ましい態様である。
【0125】
また、太陽電池のバックシートの態様としては、ポリエステルフィルム/接着剤/本発明のガスバリア性積層フィルム/接着剤/ポリフッ化ビニルフイルムまたはポリエステル系高耐久防湿フィルムといった構成が例示される。
【0126】
本願は、2012年2月13日に出願された日本国特許出願第2012−028594号に基づく優先権の利益を主張するものである。2012年2月13日に出願された日本国特許出願第2012−028594号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0127】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はもとよりこれらの実施例に限定されるものではない。
【0128】
1.評価方法
実施例および比較例において用いた評価方法を以下に説明する。
1−1.ラミネートガスバリア性積層フィルムサンプルの作製
実施例及び比較例で得られたガスバリア性積層フィルムを60℃で168時間エージング処理した後、その被覆層の上に、ウレタン系2液硬化型接着剤(トーヨーケム(株)社製、主剤:「LIS−073−50」、硬化剤:「CR001」)を、乾燥後の樹脂付着量が4.0g/m
2となるように塗工し、乾燥温度80℃で20秒間乾燥した後、ニップ圧力0.2MPa(2kgf/cm
2)、キャンロール温度80℃の条件で、ポリエステルフィルム(東洋紡(株)製「シャインビーム(登録商標)Q1211」、50μm)を貼り合わせた。同様にして、ガスバリア性積層フィルムの被覆層の反対側の表面にも、ポリエステルフィルム(東洋紡(株)製「シャインビーム(登録商標)Q1211」、50μm)を貼り合わせて、Q1211(50μm)/ガスバリア性積層フィルム/Q1211(50μm)の構成とし、さらに、40℃で7日間エージングして、ラミネートガスバリア性積層フィルムサンプルを得た。
【0129】
1−2.水蒸気透過度測定
ラミネートガスバリア性積層フィルムサンプルについて、JIS−K7129 B法に準じて、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製「PERMATRAN−W 3/33MG」)を用い、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下で水蒸気透過度を測定した。なお、ラミネートガスバリア性積層フィルムサンプルへの調湿は、被覆層側のポリエステルフィルムから水蒸気を透過させることにより行った。
また、上記ラミネートガスバリア性積層フィルムサンプルを、温度85℃、湿度85%RHの環境下で所定時間(100時間、500時間、1000時間)保持した後、40℃にて1日間乾燥させたものについても、同様に水蒸気透過度を測定した。
【0130】
2.使用した材料
実施例および比較例で用いた各材料について説明する。
2−1.蒸着用アンカーコート層の塗工液の調製
(メタキシリレン基および水添キシリレン基を含有するウレタン樹脂(樹脂A))
メタキシリレンジイソシアネート45.59質量部、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン93.9質量部、エチレングリコール24.8質量部、ジメチロールプロピオン酸13.4質量部および溶剤としてメチルエチルケトン80.2質量部を混合し、窒素雰囲気下70℃で5時間反応させた。次いで、得られたメタキシリレン基および水添キシリレン基を含有したウレタンプレポリマー溶液を40℃でトリエチルアミン9.6質量部にて中和した。このポリウレタンプレポリマー溶液を624.8質量部の水にホモディスパーにより分散させ、2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノール21.1質量部で鎖伸長反応を行い、その後、メチルエチルケトンを留去することにより、固形分濃度25質量%、平均粒子径90nmの水分散型ポリウレタン樹脂(樹脂A)を得た。これを水で希釈し、固形分濃度が6質量%の水分散液とした。
【0131】
(共重合ポリエステル樹脂(樹脂B))
撹拌機、温度計および部分還流式冷却器を具備したステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート466質量部、ジメチルイソフタレート466質量部、ネオペンチルグリコール401質量部、エチレングリコール443質量部、およびテトラ−n−ブチルチタネート0.52質量部を仕込み、160℃から220℃までの温度にて4時間かけてエステル交換反応を行なった。次いで、フマル酸23質量部を加え、200℃から220℃まで1時間かけて昇温し、エステル化反応を行なった。次いで、255℃まで昇温しながら、反応系を徐々に減圧し、0.2mmHgの減圧下で1時間30分反応させた後、無水トリメリット酸19質量部を加え、窒素雰囲気下220℃で1時間撹拌して、淡黄色透明のポリエステル(樹脂B)を得た。
【0132】
(蒸着用アンカーコート層の塗工液)
樹脂Aと樹脂Bとの樹脂比率が、樹脂A/樹脂B=20/80(質量比)となるように混合し、これを水で希釈して、固形分濃度が10質量%の塗工液を調製した。
【0133】
2−2.中間層の塗工液の調製
2−2−1.PEI−1
ポリエチレンイミン(日本曹達(株)製「チタボンド(登録商標)T−185E」)と、エポキシ化合物(日本曹達(株)製「チタボンド(登録商標)T−185硬化剤」)とを、固形分換算でポリエチレンイミン/エポキシ化合物=10/2(質量比)となるように混合し、最終の固形分濃度が0.5質量%になる量の30℃の溶剤(水10質量%、エタノール90質量%)中で、2時間反応させて、塗工液(PEI−1)を調製した。
【0134】
2−2−2.PEI−2
ポリエチレンイミン(トーヨーケム(株)製「AD372MW」)と、エポキシ化合物(大日精化工業(株)製「TS241硬化剤」)とを、固形分換算でポリエチレンイミン/エポキシ化合物=10/2(質量比)となるように混合し、最終の固形分濃度が0.5質量%になる量の30℃の溶剤(水10質量%、メタノール10質量%、エタノール70質量%、イソプロパノール10質量%)中で、2時間反応させて、塗工液(PEI−2)を調製した。
【0135】
2−2−3.PEI−3
ポリエチレンイミン(大日精化工業(株)製「セイカダイン(登録商標)4100」)と、エポキシ化合物(大日精化工業(株)製「TS241硬化剤」)とを、固形分換算でポリエチレンイミン/エポキシ化合物=10/2(質量比)となるように混合し、最終の固形分濃度が0.5質量%になる量の30℃の溶剤(水80質量%、メタノール15質量%、イソプロパノール5質量%)中で、2時間反応させて、塗工液(PEI−3)を調製した。
【0136】
2−2−4.ポリエステルウレタン−1
2液硬化ウレタン(トーヨーケム(株)製「EL−530A」/「EL−530B」)を酢酸エチルで希釈して、塗工液(ポリエステルウレタン−1)を調製した。
【0137】
2−2−5.ポリエステルウレタン−2
2液硬化ウレタン(大日精化工業(株)製(セイカダイン(登録商標)2730A/セイカダイン(登録商標)2730B)を酢酸エチルで希釈して、塗工液(ポリエステルウレタン−2)を調製した。
【0138】
2−3.被覆層の塗工液の調製
2−3−1.PVA−1
ポリビニルアルコール((株)クラレ製「ポバール(登録商標)PVA105」;ケン化度98〜99mol%、平均重合度500)の10質量%水溶液100質量部に、水112質量部、イソプロパノール(キシダ化学(株)製、特級)45質量部を添加した後、2N塩酸(キシダ化学(株)製)1.3質量部を添加し、さらにテトラエトキシシラン(コルコート(株)製「エチルシリケート28」)54質量部を順次添加し、液が均一になるまで攪拌して、塗工液(PVA−1)を調製した。
【0139】
2−3−2.PVA−2
ポリビニルアルコール((株)クラレ製「ポバール(登録商標)PVA105」;ケン化度98〜99mol%、平均重合度500)の10質量%水溶液100質量部に、水を72質量部、イソプロパノール(キシダ化学(株)製、特級)41質量部を添加した後、2N塩酸(キシダ化学(株)製)1.0質量部添加し、さらにテトラエトキシシラン(コルコート(株)製「エチルシリケート28」)36質量部を順次添加して、液が均一になるまで攪拌して、塗工液(PVA−2)を調製した。
【0140】
3.ガスバリア性積層フィルムの作製
(実施例1)
(蒸着用アンカーコート層の形成)
二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡(株)製「東洋紡エステル(登録商標)フィルム、E5102」、厚み12μm)を幅400mm、長さ1000mにスリットしたフィルムロールのコロナ放電処理面に、グラビアコーターで、乾燥後の付着量が0.15g/m
2となるように蒸着用アンカーコート層の塗工液を塗工し、160℃で8秒間乾燥して、蒸着用アンカーコート層を形成させた。
【0141】
(無機酸化物薄膜層の形成)
次に、得られたフィルムロールの蒸着用アンカーコート層の表面に、下記のようにして無機酸化物を蒸着し、20nm厚の無機酸化物薄膜層を有する蒸着フィルムロールを得た。
【0142】
蒸着源として、3〜5mm程度の大きさの粒子状のシリカ(SiO
2:純度99.99%)と、アルミナ(Al
2O
3:純度99.9%)とを用い、得られたフィルムロールの蒸着層用アンカーコート層の表面に、電子ビーム蒸着法により、酸化アルミニウムと二酸化ケイ素との混合薄膜の形成を行った。蒸着材料は、混合せずに、2つに区切って投入した。加熱源として、EB銃を用い、Al
2O
3とSiO
2のそれぞれを時分割で加熱した。そのときのEB銃のエミッション電流は1.2Aとし、Al
2O
3とSiO
2との組成比がAl
2O
3:SiO
2=45:55となるように、各材料を加熱した。蒸着時の圧力は、1×10
-2Paに調整した。蒸着時のフィルムを冷却するためのロールの温度は、−10℃に調整した。
【0143】
(中間層の形成)
次に、ポリエチレンイミン誘導体を含む中間層を形成した。
得られた蒸着フィルムロールの無機酸化物薄膜層(蒸着層)の表面に、乾燥後の樹脂付着量が0.04g/m
2となるように、塗工液(PEI−1)をグラビアコーターで塗工し、80℃で4.5秒間、乾燥硬化させて、ポリエチレンイミン誘導体を含む中間層を形成させた。
【0144】
(被覆層の形成)
次に、中間層の表面に、乾燥後の樹脂付着量が0.5g/m
2となるように、塗工液(PVA−1)をグラビアコーターで塗工し、100℃で4.5秒間、乾燥硬化させて、テトラエトキシシランの(部分)加水分解物、その(部分)縮合物、またはそれらの混合物により架橋されたポリビニルアルコールを含む被覆層を形成させて、厚み約13μmのガスバリア性積層フィルムを得た。
【0145】
(実施例2)
中間層を形成するにあたり、塗工液(PEI−2)を用い、乾燥後の樹脂付着量が0.03g/m
2となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、フィルム厚み約13μmのガスバリア性積層フィルムを作製した。
【0146】
(実施例3)
中間層を形成するにあたり、塗工液(PEI−3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、フィルム厚み約13μmのガスバリア性積層フィルムを作製した。
【0147】
(実施例4)
被覆層を形成するにあたり、塗工液(PVA−2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、フィルム厚み約13μmのガスバリア性積層フィルムを作製した。
【0148】
(実施例5)
蒸着用アンカーコート層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして、フィルム厚み約13μmのガスバリア性積層フィルムを作製した。
【0149】
(実施例6)
蒸着用アンカーコート層を設けなかったこと以外は、実施例2と同様にして、フィルム厚み約13μmのガスバリア性積層フィルムを作製した。
【0150】
(実施例7)
無機酸化物薄膜層を形成するにあたり、金属酸化物の蒸着を下記のように変更したこと以外は、実施例3と同様にして、フィルム厚み約13μmのガスバリア性積層フィルムを作製した。
【0151】
蒸着源として、3〜5mm程度の大きさの粒子状のSi(純度99.99%)と、シリカ(SiO
2:純度99.9%)を用い、フィルムロールの蒸着用アンカーコート層の表面に、電子ビーム蒸着法により、酸化ケイ素薄膜を形成した。蒸着材料は混合せずに、2つに区切って投入した。加熱源として、EB銃を用い、SiとSiO
2のそれぞれを時分割で加熱した。そのときのEB銃のエミッション電流は0.8Aとし、SiとSiO
2との組成比がSi:SiO
2=1:9となるように、各材料を加熱して、20nm厚の膜を作った。蒸着時の圧力は、1×10
-2Paに調整した。蒸着時のフィルムを冷却するためのロールの温度は、−10℃に調整した。
【0152】
(比較例1、2)
中間層を設けなかったこと以外、比較例1では実施例1と同様にして、比較例2では実施例5と同様にして、フィルム厚み約13μmのガスバリア性積層フィルムを作製した。
【0153】
(比較例3、4)
中間層を形成するにあたり、塗工液(ポリエステルウレタン−1)を用い、乾燥後の樹脂付着量が0.3g/m
2となるようにしたこと以外、比較例3では実施例1と同様にして、比較例4では実施例5と同様にして、フィルム厚み約13μmのガスバリア性積層フィルムを作製した。
【0154】
(比較例5)
中間層を形成するにあたり、塗工液(ポリエステルウレタン−2)を用い、乾燥後の樹脂付着量が0.3g/m
2となるようにしたこと以外は、実施例4と同様にしてフィルム厚み約13μmのガスバリア性積層フィルムを作製した。
【0155】
実施例1〜7および比較例1〜5のガスバリア性積層フィルムについて、水蒸気バリア性(水蒸気透過度)を評価した。結果を表1に示す。
【0156】
【表1】
【0157】
表1から、実施例1〜7のラミネートガスバリア性積層フィルムサンプルは、85℃、85%RH下で1000時間保持されても、水蒸気透過度1.0g/m
2・24h以下であることがわかる。一方、中間層を設けなかった比較例1、2、またはポリエステルウレタン系樹脂からなる中間層を設けた比較例3〜5のラミネートガスバリア性積層フィルムサンプルは、経時的に水蒸気透過度が大きくなりやすいことがわかる。
【0158】
つまり、本発明のガスバリア性積層フィルムは、高温度・高湿度という過酷な条件に長時間曝されても、優れた水蒸気バリア性(防湿性)を維持できる。