特許第5952326号(P5952326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952326
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】光レセプタクル
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/26 20060101AFI20160630BHJP
【FI】
   G02B6/26
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-45649(P2014-45649)
(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公開番号】特開2015-38592(P2015-38592A)
(43)【公開日】2015年2月26日
【審査請求日】2014年5月19日
【審判番号】不服2015-1708(P2015-1708/J1)
【審判請求日】2015年1月28日
(31)【優先権主張番号】特願2013-136496(P2013-136496)
(32)【優先日】2013年6月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 祥
(72)【発明者】
【氏名】箱▲崎▼ 悟史
(72)【発明者】
【氏名】我妻 弘嗣
【合議体】
【審判長】 恩田 春香
【審判官】 河原 英雄
【審判官】 星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−119633(JP,A)
【文献】 特開平11−84182(JP,A)
【文献】 特開2010−181867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を導通するためのコアとクラッドを有する光ファイバと、前記光ファイバが固定される貫通孔を有するフェルールと、前記光ファイバを前記フェルールに固定する弾性部材と、を含むファイバスタブと、
前記ファイバスタブを保持する保持具と、
を備え、
前記光ファイバは、前記フェルールのプラグフェルールと光学的接続する側とは反対側の端面に向かってコア径およびファイバ外径が徐々に小さくなる第1の部分と、前記コア径および前記ファイバ外径が一定に保たれた第2の部分と、を有し、
前記弾性部材は、前記光ファイバと前記貫通孔の内壁との間の空間に隙間無く充填されるとともに、前記第1の部分の外周に楔状に存在し、
前記第1の部分および前記第2の部分は、全域に渡って前記貫通孔内に配設されたことを特徴とする光レセプタクル。
【請求項2】
前記ファイバスタブのプラグフェルールと光学的接続する側とは反対側の端面において、前記光ファイバの端面と前記フェルールの端面が略同一平面上に存在することを特徴とする請求項1に記載の光レセプタクル。
【請求項3】
前記第1の部分における前記コアの屈折率は、前記第2の部分における前記コアの屈折率と略同じであり、
前記第1の部分における前記クラッドの屈折率は、前記第2の部分における前記クラッドの屈折率と略同じであることを特徴とする請求項1または2に記載の光レセプタクル。
【請求項4】
前記ファイバスタブのプラグフェルールと光学的接続する側とは反対側の端面において、前記コアの中心が、前記フェルールの中心から0.005ミリメートルの範囲内に存在することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の光レセプタクル。
【請求項5】
前記ファイバスタブのプラグフェルールと光学的接続する側とは反対側の端面において、前記フェルールの端面と前記光ファイバの端面が、前記ファイバスタブの中心軸に対して略垂直となるように研磨されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の光レセプタクル。
【請求項6】
前記ファイバスタブのプラグフェルールと光学的接続する側とは反対側の端面において、前記フェルールの端面の一部と前記光ファイバの端面が、前記ファイバスタブの中心軸に対して垂直となる面から所定の角度をもつことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の光レセプタクル。
【請求項7】
前記第1の部分と前記貫通孔の内壁との間の空間に充填された前記弾性部材は、前記第2の部分と前記貫通孔の内壁との間の空間に充填された前記弾性部材と同じであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の光レセプタクル。
【請求項8】
前記光ファイバは、石英を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の光レセプタクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般に、光通信用の光トランシーバ・モジュールに係り、特に高速通信用モジュールに好適な光レセプタクルに関する。
【背景技術】
【0002】
光レセプタクルは、光通信用トランシーバの光モジュールにおいて光ファイバコネクタを受光素子や発光素子等の光素子と光学的に接続させるための部品として用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年、IPトラフィックの増加に伴い光通信用トランシーバは高速化が要求されている。一般に、レセプタクル型光モジュールを採用するトランシーバ等の形状は規格化されており、光学素子の1つである半導体レーザーから出射する光信号の変調速度を高速化すると、電気回路に必要なスペースが大きくなり、光モジュールの小型化が求められている。
【0004】
半導体レーザー素子のモードフィールド径は、一般的に光信号の伝送路として用いられる光ファイバのコア径10μmよりも小さい。
【0005】
近年では光トランシーバの通信速度をより高速化するため、単一のモジュール内に複数の半導体レーザーを有し、各半導体レーザーから出射された光を、板状部材の内部に形成された光導波路内で1つ導波路に合波した後、光レセプタクルの光ファイバと光学的に結合する構造の光モジュールも使われている。これらの光モジュールでは、小型化するために前述の光導波路を持つ板状部材を小型化する必要があり、光導波路のコア径は小さくなる傾向がある。
【0006】
発光素子に代えて受光素子を用いる光モジュールにおいても、より高速、より長距離通信用途で用いるために、受光素子の受光径を小さくする傾向がある。
【0007】
半導体レーザー素子から出射された光をファイバコアに集光する、またはファイバコアから出射された光を受光素子に集光するためのレンズは、光学素子のモードフィールド径とファイバコア径に差がある場合には倍率機能を有する必要があるが、同時にモジュール全長が長くなってしまうことを防ぐために光ファイバの光学素子側端面の一部のファイバコア径を小さくするという方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
しかしながら、特許文献2の図1または図2にあるように通常のファイバの外径を一定にしたままコア径を変換するためには、ファイバに屈折率制御用添加剤を局所的に加える必要があるが、この方法では作業方法が煩雑になるだけでなく管理項目が非常に多くなるため経済的に生産することが非常に難しいという課題があった。
【0009】
また、図3のようにファイバ先端の外径を変化させて先端部のコア径を変化させる場合には、上記とは異なり経済的に生産することは可能になるが、ファイバ端面のコア径を変化するためにファイバの外径を小さくしたことで強度が低下した部分が、フェルールの外側に剥き出しになっていることでファイバが折れてしまったり、クラックが多発するという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−181867号公報
【特許文献2】特許第4883969号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の態様は、上記問題を解決するためになされたもので、光ファイバの光学素子側端面のコアを小さくすることで光モジュール全長を短くすることに貢献しながら、光ファイバの変形部分の強度を確保して折れやクラックの発生を防ぎ、且つ光モジュール使用時における光ファイバの動きを抑制することで結合効率の低下を防止することができる光レセプタクルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、光を導通するためのコアとクラッドを有する光ファイバと、前記光ファイバが固定される貫通孔を有するフェルールと、前記光ファイバを前記フェルールに固定する弾性部材と、を含むファイバスタブと、前記ファイバスタブを保持する保持具と、を備え、前記光ファイバは、前記フェルールのプラグフェルールと光学的接続する側とは反対側の端面に向かってコア径およびファイバ外径が徐々に小さくなる第1の部分と、前記コア径および前記ファイバ外径が一定に保たれた第2の部分と、を有し、前記弾性部材は、前記光ファイバと前記貫通孔の内壁との間の空間に隙間無く充填されるとともに、前記第1の部分の外周に楔状に存在し、前記第1の部分および前記第2の部分は、全域に渡って前記貫通孔内に配設されたことを特徴とする光レセプタクルである。
【0013】
この光レセプタクルによれば、フェルールのプラグフェルールと光学的接続する側とは反対側の端面におけるコア径が、フェルールのプラグフェルールと光学的接続する側の端面におけるコア径よりも小さいため、光モジュールの長さを小さくすることができる。また、光ファイバの全体がフェルールの貫通孔内に存在するため、光ファイバの折れやクラックといった不具合を抑制する。
光ファイバの外径が細くなった部分の外周には弾性部材が楔状に存在するため、光ファイバがフェルールよりも外側に突き出ることを抑え、光ファイバの外周のカケやクラックを抑制することができる。
さらに、光ファイバの端面の位置を制御しやすくなるため、光モジュールの組み立て時の接続ロスを小さくし、経済的に光モジュールを組み立てることができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、前記ファイバスタブのプラグフェルールと光学的接続する側とは反対側の端面において、前記光ファイバの端面と前記フェルールの端面が略同一平面上に存在することを特徴とする光レセプタクルである。
【0015】
この光レセプタクルによれば、光モジュールの組み立て時の接続ロスを小さくし、容易に光モジュールを組み立てることができる。
【0016】
第3の発明は、第1または2の発明において、前記第1の部分における前記コアの屈折率は、前記第2の部分における前記コアの屈折率と略同じであり、前記第1の部分における前記クラッドの屈折率は、前記第2の部分における前記クラッドの屈折率と略同じであることを特徴とする光レセプタクルである。
【0017】
この光レセプタクルによれば、光ファイバの全体において、クラッドおよびコアのそれぞれの屈折率を一定にすることで、光ファイバ内の損失管理を容易にし、光レセプタクルを経済的に生産することができる。
【0018】
第4の発明は、第1〜3のいずれか1つの発明において、前記ファイバスタブのプラグフェルールと光学的接続する側とは反対側の端面において、前記コアの中心が、前記フェルールの中心から0.005ミリメートルの範囲内に存在することを特徴とする光レセプタクルである。
【0019】
この光レセプタクルによれば、光ファイバのコアの位置を制御することで、光モジュールの組み立て時の接続ロスを小さくし、容易に光モジュールを組み立てることができる。
【0020】
第5の発明は、第1〜4のいずれか1つの発明において、前記ファイバスタブのプラグフェルールと光学的接続する側とは反対側の端面において、前記フェルールの端面と前記光ファイバの端面が、前記ファイバスタブの中心軸に対して略垂直となるように研磨されていることを特徴とする光レセプタクルである。
【0021】
この光レセプタクルによれば、光ファイバの端面をファイバスタブの中心軸に対して直となるように研磨することで、光レセプタクルに接続される光学素子と、光レセプタクルと、の位置決めが容易になり、光モジュールを経済的に生産することができる。
【0022】
第6の発明は、第1〜5のいずれか1つの発明において、前記ファイバスタブのプラグフェルールと光学的接続する側とは反対側の端面において、前記フェルールの端面の一部と前記光ファイバの端面が、前記ファイバスタブの中心軸に対して垂直となる面から所定の角度をもつことを特徴とする光レセプタクルである。
【0023】
この光レセプタクルによれば、フェルールの端面の一部と光ファイバの端面とをファイバスタブの中心軸に対して垂直となる面から所定の角度をもつように研磨することで、光レセプタクルに接続される発光素子から出射され光ファイバに入射する光のうちで、光ファイバの端面で反射した光が発光素子に戻ることを防止し、光学素子を安定して動作させることができる。
の発明は、第1〜のいずれか1つの発明において、前記第1の部分と前記貫通孔の内壁との間の空間に充填された前記弾性部材は、前記第2の部分と前記貫通孔の内壁との間の空間に充填された前記弾性部材と同じであることを特徴とする光レセプタクルである。
の発明は、第1〜のいずれか1つの発明において、前記光ファイバは、石英を有することを特徴とする光レセプタクルである。
【発明の効果】
【0024】
光ファイバの光学素子側端面のコアを小さくすることで光モジュール全長を短くすることに貢献しながら、光ファイバの変形部分の強度を確保して折れやクラックの発生を防ぎ、且つ光モジュール使用時における光ファイバの動きを抑制することで結合効率の低下を防止することができる光レセプタクルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第一の実施形態を示す光レセプタクルの模式断面図である。
図2】本発明の第一の実施形態におけるファイバスタブの拡大断面図である。
図3】本発明の第二の実施形態を示す光レセプタクルの模式断面図である。
図4】本発明の第二の実施形態におけるファイバスタブの拡大断面図である。
図5】本発明の第三の実施形態を示す光ピグテールモジュールの模式断面図である。
図6】コア径に関する解析条件および解析結果の一例を例示する模式図である。
図7】コア径に関する解析結果の他の一例を例示する模式図である。
図8】光源と光ファイバ中心とのオフセット量と、損失と、に関する解析結果の一例を例示するグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について例示をする。尚、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0027】
図1は、本発明の第一の実施形態を示す光レセプタクルの模式断面図である。
光レセプタクル1は、光ファイバ2と光ファイバ2を保持する貫通孔3cを有するフェルール3弾性部材9とを含むファイバスタブ4と、ファイバスタブ4を保持する保持具5と、ファイバスタブ4の先端を一端で保持し、他端で光レセプタクル1に挿入されるプラグフェルールを保持可能なスリーブ6からなり、光ファイバ2はフェルール3の貫通孔3cに弾性部材9を用いて接着固定されている。なお、光レセプタクル1に挿入されるプラグフェルールは図示されていない。
【0028】
フェルール3に適する材質はセラミックス、ガラス等が挙げられるが、本実施例ではジルコニアセラミックスを用い、その中心に光ファイバ2を接着固定し、プラグフェルールと光学的接続される一端(端面3b:図2参照)を凸球面に研磨して形成した。また、光レセプタクル1の組立てにおいて、ファイバスタブ4は保持具5に圧入固定されることが多い。
【0029】
スリーブ6に適する材質は樹脂、金属、セラミックス等があげられるが、本実施例では全長方向にスリットを有するジルコニアセラミックス製の割りスリーブを用いた。スリーブ6は一端でファイバスタブ4の凸球面に研磨された先端部(端面3b)を保持し、他端で光レセプタクルに挿入されるプラグフェルールを保持するようになっている。
【0030】
図2は、本発明の第一の実施形態におけるファイバスタブの拡大断面図である。
光ファイバ2はクラッド7とコア8からなり、ファイバスタブ4の凸球面に研磨した端面3bとは反対側の端面3aにおけるコア径D1が、凸球面に研磨した端面3bのコア径D2よりも小さくなるように、ファイバ外径およびコア径がその先端部(端面2a)に向かって徐々に小さくなる部分を有しており、外径が変形する部分2bは全てフェルール3の貫通孔3c内に収容されている。つまり、端面3aにおけるファイバ外径D3は、端面3bにおけるファイバ外径D4よりも小さい。
【0031】
光ファイバ2のファイバ外径およびコア径を小さくする方法としては、ファイバ所定部位の外周から石英の融点以上の熱を加えながら光ファイバ先端部を引き伸ばす方法等が挙げられる。
【0032】
ファイバスタブ4において光ファイバ2はフェルール3の貫通孔3cに弾性部材(接着剤)9を用いて固定される。ここで接着剤に適する材料としてはエポキシ、シリコン等の樹脂系接着剤があげられるが、本実施例では高温硬化型のエポキシ系接着剤を用いた。なお、フェルール3の貫通孔3cと光ファイバ2の内壁との間に存在する空間には同接着剤が隙間無く充填されている。
【0033】
ここで、光ファイバ2の外径が徐々に小さくなる部分2bは通常、外径を一定に保っている部分に比べて強度が低下する。本発明の第一の実施形態においては、光ファイバ2の外径が徐々に小さくなる部分2bが全てフェルール3の貫通孔3c内に収容されており、さらに周囲を接着剤としての弾性部材9により覆われているため、光ファイバ2の端面2aを研磨したり、光モジュールとして実際に使用する際に光ファイバ2が折れてしまったり、クラックが入ったりという現象が起こりにくくなる。
【0034】
また、通常光レセプタクル1では光を光ファイバ2に入射する、または光ファイバ2より光を出射する際に光ファイバ2の端面2aでの光の反射を防ぐため、ファイバスタブ4の凸球面に研磨された端面3bとは反対側の端面3aにおいて、光ファイバ2の端面2aはフェルール3の中心軸C1(ファイバスタブの中心軸と同じ)に対して略垂直な平面となるように研磨される。ここで略垂直とは、フェルール3の中心軸C1に対して85度〜95度程度であることが望ましい。
【0035】
本発明の第一の実施形態では、光ファイバ2の端面2aはフェルール3の中心軸C1に対して垂直となる平面に研磨されており、さらに光ファイバ2の端面2aとフェルール3の端面3aはほぼ同一平面上に存在している。ここでほぼ同一平面上とは、光ファイバ2の端面2aとフェルール3の端面3aの距離が−250nm〜+250nm程度であることが望ましい。
【0036】
このことにより、光ファイバ2の外周に直接大きな外力がかかることがなくなり、光ファイバ2の端面2aを研磨する時等に光ファイバ2が折れたり、クラックが入ったりという現象を防止できる。
【0037】
光ファイバ2の外径が徐々に小さくなる部分2bにおけるクラッド7の屈折率は、ファイバ2の外径が徐々に小さくなる部分2b以外におけるクラッド7の屈折率と略同じである。光ファイバ2の外径が徐々に小さくなる部分2bにおけるコア8の屈折率は、ファイバ2の外径が徐々に小さくなる部分2b以外におけるコア8の屈折率と略同じである。ここでいう略同じ屈折率とは、1.4以上1.6以下程度である。
これによれば、光ファイバ2の全体において、クラッド7およびコア8のそれぞれの屈折率を一定にすることで、光ファイバ2内の損失管理を容易にし、光レセプタクル1を経済的に生産することができる。
【0038】
ファイバスタブ4の凸球面に研磨した端面3bとは反対側の端面3aにおいて、光はファイバ2のコア8の中心は、フェルール3の中心から0.005ミリメートル(mm)の範囲内に存在する。これにより、光ファイバ2のコア8の位置を制御することで、光モジュールの組み立て時の接続ロスを小さくし、容易に光モジュールを組み立てることができる。
【0039】
図3は、本発明の第二の実施形態を示す光レセプタクルの模式断面図である。
光レセプタクル1を構成する部材は第一の実施形態と同様であり、光ファイバ2と光ファイバ2を保持する貫通孔3cを有するフェルール3の凸球面に研磨された端面3b(図4参照)とは反対側の端面3a(図4参照)において、光ファイバ2の端面2aとフェルール3の端面3bの一部が、フェルール3の中心軸C1に対して垂直となる面から所定の角度(例えば4度〜10度)を持つ平面となるように研磨されている。
【0040】
このことにより、第一の実施形態と同様に、光ファイバ2のファイバ外径D3が徐々に小さくなる部分が全てフェルール3の貫通孔3c内に収容されており、さらに周囲を接着剤としての弾性部材9により覆われているため、光ファイバ2の端面2aを研磨したり、光モジュールとして実際に使用する際に光ファイバ2が折れてしまったり、クラックが入ったりという現象が起こりにくくなる。
また、光レセプタクル1に接続される発光素子から出射され光ファイバ2に入射する光のうちで、光ファイバ2の端面2aで反射した光が発光素子に戻ることを防止し、光学素子を安定して動作させることができる。
【0041】
図4は、本発明の第二の実施形態におけるファイバスタブの拡大断面図である。
図2と同様に、光ファイバ2はクラッド7とコア8からなり、ファイバスタブ4の凸球面に研磨した端面3bとは反対側の端面3aにおけるコア径D1が、凸球面に研磨した端面3bのコア径D2よりも小さくなるように、光ファイバ外径およびコア径がその先端部(端面2a)に向かって徐々に小さくなる部分2bを有している。つまり、端面3aにおけるファイバ外径D3は、端面3bにおけるファイバ外径D4よりも小さい。
【0042】
通常、ファイバスタブ4におけるフェルール3の中心軸C1に対して垂直となる面から所定の角度を持つ面を形成するためには、フェルール3の貫通孔3cに光ファイバ2を挿入し、接着剤で固定した後にフェルール3と光ファイバ2を同時に研磨して形成する。
【0043】
本発明の第一、および第二の実施形態では、光ファイバ2の外径が細くなった部分2bの外周に、光ファイバ2をフェルール3の貫通孔3c内に固定するための弾性部材(接着剤)9が楔状に存在する。このため、弾性部材9が光ファイバ2をフェルール3の貫通孔3c内部に押し込もうとする力が働き、接着剤としての弾性部材9を硬化させたあとで光ファイバ2の端面2aがフェルール3の端面3aよりも突き出てしまうという現象が起きにくくなる。
【0044】
この現象は、光ファイバ2とフェルール3とを固定する弾性部材9として高温硬化型の接着剤を用いたときにより顕著となる。通常、接着剤の熱膨張係数は光ファイバ2の材料であるガラスよりも大きいため、高温硬化型の接着剤であれば硬化する際に光ファイバ2をフェルール3の貫通孔3c内部に押し込もうとする力がより大きくなる。
【0045】
光ファイバ2の端面2aがフェルール3の端面3aよりも引き込んだ状態にあることにより、ファイバスタブ4の一端面をフェルール3の中心軸C1に対して垂直となる面から所定の角度を持って研磨しようとする際に、光ファイバ2の外周部が直接研磨紙等に接触することが無くなり、光ファイバ2の外周のカケやクラックが起きにくくなる。
【0046】
図5は、本発明の第三の実施形態を示す光ピグテールモジュールの模式断面図である。 図5に示すように光ピグテールモジュール10等においても本発明の形状を適用することが可能である。これにより、光ピグテールモジュール10の全長を短くし、且つ光ファイバ2の強度を保ち折れやクラックを防止することが可能となる。
【0047】
次に、本発明者が実施した光ファイバのコア径に関する検討について、図面を参照しつつ説明する。
図6は、コア径に関する解析条件および解析結果の一例を例示する模式図である。
図6(a)は、本検討で用いた光ファイバを表す模式断面図である。図6(b)は、本検討の結果の一例を例示する表である。図6(c)は、本検討の結果の一例を例示するグラフ図である。
【0048】
図2および図4に関して前述したように、本実施形態では、ファイバスタブ4の凸球面に研磨した端面3bとは反対側の端面3aにおけるコア径D1は、凸球面に研磨した端面3bのコア径D2よりも小さい。本検討では、コア径D2を8.2マイクロメートル(um)とした。一方で、図6(b)に表した表のように、端面3aにおけるコア径D1を変化させ、コア径D2とコア径D1との間の差(D2−D1)を1μm、2μm、3μm、4μm、および5μmに設定した。また、図6(b)に表した表のように、光ファイバ2の外径が徐々に小さくなる部分(コア径変換部)2bの長さLを50μm、100μm、250μm、500μm、1000μm、および2000μmに設定した。
【0049】
このような条件のもとで、図6(a)に表した矢印A1の方向に光が進行した場合の損失(デシベル:dB)の結果の一例は、図6(c)に表した通りである。すなわち、コア径D2とコア径D1との間の差(D2−D1)が大きくなると、損失が大きくなる。また、コア径D2とコア径D1との間の差(D2−D1)が4μmおよび5μmの場合には、コア径変換部2bの長さLが長くなると、損失が大きくなる。
【0050】
本発明者が得た知見によれば、光ファイバ2の内部における損失の許容値は、−1.0dBである。これにより、コア径D2とコア径D1との間の差(D2−D1)を3μm以下とし、コア径変換部2bの長さLを1000μm以下とすることが望ましい。すると、光ファイバ2の内部における損失を許容値以下に抑えることができる。コア径D2とコア径D1との間の差(D2−D1)が2μm以下である場合には、コア径変換部2bの長さLを2000μm以下とすることが望ましい。
【0051】
図7は、コア径に関する解析結果の他の一例を例示する模式図である。
図7(a)は、光ファイバの内部における損失の解析結果の一例を例示する模式図である。図7(b)は、コア周辺の光エネルギーの積分値(Launch)の解析結果の一例を例示する模式図である。図7(a)では、光ファイバの内部における損失の値をモノトーン色の濃淡で表している。損失の値の凡例は、図7(c)に表した通りである。
【0052】
本解析では、コア径D2とコア径D1との間の差(D2−D1)を1μmとし、コア径変換部2bの長さLを250μmとした。また、図7(a)に表した矢印A2の方向に光が進行した場合の解析を行った。図7(a)に表した図の縦軸Z(μm)は、光ファイバ2の端面2aからの距離を表している。つまり、Z=0μmのところは、光ファイバ2の端面2aである。これは、図7(b)に表した図の縦軸についても同じである。
【0053】
図7(a)に表したように、コア径変換部2bが終了しコア8がストレートに変化する部分(Z=250μm)の付近では、光がコア8からクラッド7に放射されている。これにより、コア径変換部2bが終了しコア8がストレートに変化する部分(Z=250μm)の付近において、損失が生じていることが分かる。この解析結果から、コア径変換部2bの形状(コア径差(D2−D1)、長さL)が、光ファイバ2の内部における損失により大きな影響を及ぼすことが分かる。
【0054】
図7(b)に表した「Launch」は、コア8の周辺の光エネルギーの積分値を表す。光が光ファイバ2の端面2aから入射した直後では、光の干渉が起こるため、計算上の光エネルギーの積分値が大きく減衰している。一方で、コア径変換部2bの終了する部分の付近から、光エネルギーの積分値が安定している。これにより、実際には、入射部分(Z=0μm)からコア径変換部2bが終了する部分(Z=250μm)までに生ずる光エネルギーの積分値の減衰量が、光ファイバ2の内部にコア径変換部2bを設けることによる損失であると考えられる。
【0055】
図8は、光源と光ファイバ中心とのオフセット量と、損失と、に関する解析結果の一例を例示するグラフ図である。
図8に表したグラフ図の横軸は、光源と、光ファイバ中心と、間のオフセット量(μm)を表す。図8に表したグラフ図の縦軸は、光ファイバ2の端面2aに光源から光を入射した際に、光ファイバ2の端面2aと、光ファイバ2の端面2aから3mmの位置と、の間において光ファイバ2の内部で生じる損失(dB)を表す。
【0056】
一般的に、光レセプタクル1と発光素子(図示せず)とを組み立てる際には、結合パワーを確認しつつアクティブに調芯を行う。光レセプタクル1と発光光源との組立は、主に溶接で行われる。経済的に光モジュールを生産するためには、光レセプタクル1と発光光源との中心軸のズレができるだけ小さいことが望ましい。コア径が8.2μmの光ファイバ2およびコア径が3.4μmの光ファイバ2において、光源と光ファイバ2の中心とのオフセット量と、光ファイバ2の内部で生じる損失と、に関する解析結果の一例は、図8に表した通りである。なお、光源と光ファイバ2の中心とのオフセット量は、光ファイバ2のコア8の中心と、フェルール3の中心と、の間のオフセット量と等価である。
【0057】
図8に表したように、光ファイバ2のコア8の中心が、フェルール3の中心から5μmよりも離れてしまうと、調芯時に発光素子とコア8の中心とを一致させることができなくなり、光ファイバ2の内部における損失が大きくなる。調芯をスムーズに実施するためには、調芯における発光光源と光ファイバ2との中心軸の位置調整量は、10μm以下となっていることが望ましく、調芯前の発光光源と光ファイバ2との中心軸のオフセット量は、5μm程度にすることが可能である。そのため、光ファイバ2のコア8の中心と、フェルール3の中心と、の間のオフセット量を5μm以下に管理することで、光モジュールの組立の際の損失を小さくすることができる。つまり、光ファイバ2のコア8の中心が、フェルール3の中心から5μmの範囲内に存在することが望ましい。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、ファイバスタブ4の凸球面に研磨した端面3bとは反対側の端面3aにおけるコア径D1が凸球面に研磨した端面3bのコア径D2よりも小さいため、光モジュールの長さを小さくすることができる。また、光ファイバ2の全体がフェルール3の貫通孔3c内に存在するため、光ファイバ2の折れやクラックといった不具合を抑制する。
光ファイバ2の外径が細くなった部分2bの外周には弾性部材9が楔状に存在するため、光ファイバ2がフェルール3よりも外側に突き出ることを抑え、光ファイバ2の外周のカケやクラックを抑制することができる。
さらに、光ファイバ2の端面2aの位置を制御しやすくなるため、光モジュールの組み立て時の接続ロスを小さくし、経済的に光モジュールを組み立てることができる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、ファイバスタブ4などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや光ファイバ2やフェルール3の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0060】
1 光レセプタクル、 2 光ファイバ、 2a 端面、 2b コア径変換部(部分)、 3 フェルール、 3a 端面、 3b 端面、 3c 貫通孔、 4 ファイバスタブ、 5 保持具、 6 スリーブ、 7 クラッド、 8 コア、 9 弾性部材、 10 光ピグテールモジュール
図1
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