特許第5952341号(P5952341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5952341二酸化窒素(NO2)から一酸化窒素(NO)への変換
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952341
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】二酸化窒素(NO2)から一酸化窒素(NO)への変換
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/10 20060101AFI20160630BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20160630BHJP
   A61P 9/08 20060101ALI20160630BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20160630BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20160630BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20160630BHJP
   C01B 21/24 20060101ALI20160630BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   A61M16/10 Z
   A61K33/00
   A61P9/08
   A61P11/00
   A61P9/12
   A61P11/06
   C01B21/24 A
   B01J31/02 M
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-111284(P2014-111284)
(22)【出願日】2014年5月29日
(62)【分割の表示】特願2010-544478(P2010-544478)の分割
【原出願日】2009年1月28日
(65)【公開番号】特開2014-221204(P2014-221204A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2014年6月27日
(31)【優先権主張番号】61/024,178
(32)【優先日】2008年1月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509262655
【氏名又は名称】ゲノ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】グレグ バスクエズ
(72)【発明者】
【氏名】ダビド エイチ.フイネ
(72)【発明者】
【氏名】ダビド ピー.ロウンベフレル
【審査官】 姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/023616(WO,A2)
【文献】 実開昭61−082246(JP,U)
【文献】 特表2008−510675(JP,A)
【文献】 特開2003−275583(JP,A)
【文献】 特開平10−179742(JP,A)
【文献】 特表2010−522130(JP,A)
【文献】 特開昭62−047371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/10
A61K 33/00
A61P 9/08
A61P 9/12
A61P 11/00
A61P 11/06
B01J 31/02
C01B 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化窒素を患者に送達するシステムであって:
二酸化窒素、四酸化二窒素、又は一酸化窒素を含むガスのガス供給源;
入口、出口、及び抗酸化剤を含む第1のデバイスであって、該入口が該ガス供給源から該ガスを受け取り、かつ該出口にレセプタクルを経由して該ガスを流体連通し、ここで該ガスが該レセプタクル内の抗酸化剤と接触するように構成されている、前記第1のデバイス;及び、
該第1のデバイスの出口に接続され、該患者への送達前に二酸化窒素を一酸化窒素に変換する、レキュペレーター;を含み、
該レキュペレーターが、プロリン、ジフェニルアミン、第二級アミン又は第三級アミンからなる群から選択される二酸化窒素捕捉剤を含み;かつ
該レキュペレーターがフィルターを含み、ガス流が60L/分の場合に、レキュペレーターを介する圧力損失が2.94hPa未満である、前記システム。
【請求項2】
前記レキュペレーターを介する圧力損失、15L/分で0.98hPa未満である、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記レキュペレーターが、大気圧で操作される、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記レキュペレーターが、21〜100%の範囲の酸素濃度を有する、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記レキュペレーターが、0%〜99%の湿度を有する、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記レキュペレーターが、熱的に絶縁されている、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記レキュペレーターが、加湿導管を介して前記第1のデバイスの出口と接続されている、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記加湿導管が、加熱される、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
前記加湿導管が、約35℃に加熱される、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
前記レキュペレーターが、NO/NO2ガス分析器に接続されている、請求項1記載のシステム。
【請求項11】
前記レキュペレーターが、粒子フィルターを更に含む、請求項1記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、米国特許仮出願番号第61/024,178号(2008年1月28日出願)の利益を主張し
、参照によりその全体を本明細書中に組み込んでいる。
【0002】
(技術分野)
本明細書は、一酸化窒素の制御発生に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
ニトロシルラジカルとしても公知の一酸化窒素(NO)は、肺血管内の重要なシグナル分
子であるフリーラジカルである。一酸化窒素(NO)は、肺動脈圧の上昇により生じる肺高
血圧を緩和することができる。例えば、2〜100ppmの範囲の、低濃度の一酸化窒素(NO)
を吸入することで、肺血管の血管拡張によって、哺乳動物の肺高血圧を迅速かつ安全に低
下させることができる。
【0004】
一酸化窒素(NO)の吸入によって、いくつかの疾患又は生理学的状態を調整することが
できる。低濃度の吸入用一酸化窒素(NO)の使用は、疾患の進行を予防する、後退させる
、又は制限することができる。該疾患に挙げることができるのは、限定されないが、急性
肺血管収縮、外傷、吸引又は吸入傷害、肺内の脂肪塞栓、アシドーシス、肺炎、成人呼吸
促進症候群、急性肺水腫、急性高山病、心臓手術後の急性肺高血圧、新生児の持続性肺高
血圧、周産期吸引症候群、硝子膜病、急性肺血栓塞栓症、ヘパリン−プロタミン反応、敗
血症、喘息及び喘息発作重積状態、又は低酸素症である。また、一酸化窒素(NO)を使用
して、慢性肺高血圧、気管支肺異形成、慢性肺血栓塞栓病、及び突発性若しくは原発性肺
高血圧、又は慢性低酸素症を治療できる。典型的に、該NOガスは、窒素ガス(N2)で希釈
した、ボトル入りのガスの形態で供給される。酸素(O2)の存在下において、NOは二酸化
窒素(NO2)に酸化されるので、微量のO2でさえNOガスのタンク中に存在するのを防ぐた
めに、細心の注意を払わなければならない。NOとは異なり、ppmレベルのNO2ガスは、吸入
した場合、高い毒性があり、かつ肺中に硝酸及び亜硝酸を形成し得る。
【発明の概要】
【0005】
(概要)
一態様において、二酸化窒素を一酸化窒素に変換するための装置は、入口、出口、アス
コルビン酸の水性溶液で被覆されている表面活性材料、及び吸収剤を含むレセプタクルを
具備しており、ここで該入口は、ガス流中の二酸化窒素を一酸化窒素に変換するように、
ガス流を受け取り、かつ該ガス流が、該表面活性材料及び該吸収剤を経由して、該出口へ
流体連通するように構成されている。該吸収剤は、シリカゲル又は活性アルミナとするこ
とができる。
【0006】
別の態様において、治療量の一酸化窒素を哺乳類に提供する方法は、二酸化窒素をガス
流に拡散させること、該二酸化窒素を、アスコルビン酸で被覆されている表面活性材料及
び吸収剤に曝して、酸化によるアスコルビン酸の副生成物を除去すること、及び該一酸化
窒素を治療量で哺乳類に輸送することを含む。
更なる態様において、治療量の一酸化窒素を哺乳類に送達するシステムは、一酸化窒素
のガス供給源;並びにプロリン及びジフェニルアミンからなる群から選択されるNO2捕捉
剤を含む。
【0007】
一態様において、二酸化窒素を一酸化窒素に変換するためのレキュペレーターは、出口
を含む排出シェル(exit shell)、一定のアニュラスを有する、有孔の内部及び外部管を
含む内部シェル、アスコルビン酸の水性溶液で被覆されている表面活性材料、吸収剤、及
びガス流中の二酸化窒素を一酸化窒素に変換するように、ガス流を受け取り、かつ該ガス
流が、該表面活性材料及び該吸収剤を経由して、該出口へ流体連通するように構成されて
いる入口を含む上蓋を備える。該レキュペレーターは、該上蓋の周囲に環状リング(annu
lar ring)を更に備える。
【0008】
別の態様において、一酸化窒素を患者に送達するシステムは、二酸化窒素、四酸化二窒
素、又は一酸化窒素のガス供給源、入口、出口、及び該入口と該出口との間に位置する多
孔質性固体マトリックスを有する第1の装置(ここで該多孔質性固体マトリックスは、抗
酸化剤の水性溶液で被覆されており、かつ該入口は、ガス流中の二酸化窒素を一酸化窒素
に変換するために、該供給源からガス流を受け取とり、かつ該ガス流が、該孔質性固体マ
トリックスを経由して、該出口に流体連通するように構成されている。)、及び該第1の
デバイスの出口と接続されたレキュペレーター(該レキュペレーターは、該患者への送達
前に二酸化窒素を一酸化窒素に変換する。)を備える。該レキュペレーターは、60L/分の
流量で3cm未満の水圧の流れ抵抗を有することができる。該レキュペレーターは、15L/分
で1cm未満の流れ抵抗を有することができる。該レキュペレーターは、大気圧で動作させ
ることができる。該レキュペレーターは、21〜100%の範囲の酸素濃度を有することができ
る。該レキュペレーターは、乾燥〜99%(非凝縮)の湿度を有することができる。該レキ
ュペレーターは、熱的に絶縁することができる。該レキュペレーターは、加湿導管(humi
dified line)を介して第1の装置の出口と接続することができる。該加湿導管は、加熱す
ることができる。該加湿導管は、約35℃まで加熱することができる。該レキュペレーター
は、NO/NO2ガス分析器に接続することができる。該レキュペレーターは、粒子フィルター
を更に含むことができる。
【0009】
更なる態様において、NO送達システムにおけるNO及びNO2ガスのサンプリング方法は、
ガス試料を得ること、該ガス試料を空気で希釈すること、並びにNO及びNO2の量をガス分
析器で測定することを含む。該ガス試料は、50%に希釈することができる。該ガス試料は
、33%に希釈することができる。該ガス試料は、病室の空気で希釈することができる。該
ガス試料は、壁からの空気で希釈することができる。該ガス試料は、酸素で希釈すること
ができる。
本発明の1つ以上の実施態様の詳細を、添付図面及び以下の記述にて説明する。本発明
の他の特徴、目的、及び利点は、本明細書及び図面より、並びに特許請求の範囲より明ら
かとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
(図面の説明)
図1】NO2をNOに変換するカートリッジのブロック図である。
図2A-B】ディスク状フィルターレキュペレーターの実装を示した概略図である。
図3A-B】管状フィルターレキュペレーターの実装を示した概略図である。
図4】レキュペレーターの実装を示した概略図である。
図5】レキュペレーターの別の実装を示した概略図である。
図6A-B】一酸化窒素(NO)送達システム及びガスの流れを示した流れ図である。
図7】ディスク状レキュペレーターのサイズによる圧力損失の変化を示した図である。
図8】集中治療室用の一酸化窒素送達を示した流れ図である。
図9A-D】皿状フィルター及び管状フィルターの幾何図形を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(詳細な説明)
一酸化窒素(NO)はよく知られ、かつよく研究されたガスである。通常、NOは、0.010
〜0.500パーツパーミリオン(ppm)の濃度で、大気中に(自動車及び発電所からの汚染物
質として)存在しており、交通混雑においては、NO濃度は1.5ppmに達する場合もある。ま
た、NOは、たばこの煙中にも、500ppm〜2000ppmもの高いレベルで存在する。
【0012】
医学的用途について、NOガスは、酸素のように、長年研究され、患者を治療するのに使
用されている。生体系において、NOは、ヒトの身体で天然に産生される分子である。NOは
、公知の、数少ないガス状シグナル分子の1つである。NOは、様々な生物学的過程に関わ
っている、鍵となる脊椎動物の生物学的メッセンジャーである。NOは、高反応性(数秒の
寿命を有する。)であり、更に膜を自由に通過して拡散する。こうした特性がNOを、隣接
した細胞間、及び細胞内での過渡的なシグナル分子に適したものにさせる。ニトログリセ
リン、亜硝酸アミル、及びシルデナフィル(バイアグラ)などのいくつかの医薬品は、そ
れらが、NOを遊離するか、又は生じさせて、生体内に放出するので、血管拡張薬として作
用する。1987年、NOの内皮由来弛緩因子との生物学的な類似点が示された。その後、NO及
び内皮由来弛緩因子は、同じものであると判断された。1980年代後期〜1990年代初期の間
に、NO吸入は、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、鎌状赤血球貧血、COPD、及び他の状態の有
望な治療として現れた。それ以来、NOは、遷延性肺高血圧を低下させ、かつ望ましくない
全身の血圧低下なしに、肺高血圧を低下させることが示されており、このことは、心臓及
び肺移植患者、並びに介入性の心血管処置を受けている他の患者を治療する場合に有用で
ある。該ガスは、長年、いくつかの競合するCEマーク取得配給システムが存在したので、
いくつかの供給元から容易に入手可能であった。1990年代の間に、該ガスの医薬的使用は
特許となり、該費用は大幅に増加した。この制約があったとしても、近年NOは、新生児へ
の承認適応を除いた多くの使用のために、施設の又は全国的なプロトコルの下で、日常的
に、かつ安全に使用されている。
【0013】
治療的使用のために、NOを哺乳動物に送達する場合、哺乳動物への二酸化窒素(NO2
の送達を回避することが重要となる可能性がある。NO2は、酸素(O2)によるNOの酸化に
よって形成し得る。NO2形成の比率は、O2濃度にNO濃度の二乗を乗算したもの、すなわち
(O2*(NO)*(NO)=NO2に比例する。
【0014】
一態様において、NO2をNOに変換する、NO送達システムを提供する。該システムは、変
換を行うための単純かつ有効な機構として、抗酸化剤の水溶液で被覆された表面活性材料
を用いる。表面活性材料の一例は、シリカゲルである。使用することができる表面活性材
料の別の例は、綿である。該表面活性材料は、水を保持することが可能な物質とすること
ができるか、又はそのような物質を含むことができる。水分を吸収することができる大き
な表面積を有する、別の種類の表面活性材料を使用することもできる。より具体的には、
希薄なガス状NO2が、抗酸化剤の水性溶液で被覆された表面活性材料上を通過することに
よって、NO2をNOに変換することができる。該水性の抗酸化剤が、アスコルビン酸(すな
わち、ビタミンC)である場合、該反応は、周囲温度で定量的である。
【0015】
アスコルビン酸の湿潤条件下での酸素によるアスコルビン酸の酸化は、50を超える異な
った化合物が報告されており、複雑となり得る(J.C. Deutschの文献、「デヒドロア(de
hydroa)の自然加水分解及び脱水(Spontaneous hydrolysis and dehydration of dehydr
oa)」Analytical Biochemistry, Vol. 260, no. 2, pages 223-229 (7月1日、1998);Do
ng Bum Shin及びMilton S. Featherの文献、「L-アスコルビン酸の分解における中間体と
しての3-デオキシ-L-グリセロ-ペントース-2-ウロース(3-デオキシ-L-キシロソン)及びL-
トレオ-ペントース-2-ウロース(L-キシロソン)(3-deoxy-L-glycero-pentos-2-ulose(3-d
eoxy-L-xylosone) and L-threo-pentos-2-ulose(L-xylosone) as intermediates in the
degradation of L-ascorbic acid)」Carbohydrate Research, Vol. 280, pages 246-250
(12月15日、1990);Eiji Kimotoらの文献、「イオン対高速液体クロマトグラフィーによ
るデヒドロ-L-アスコルビン酸の変換生成物の分析(Analysis of the transformation pr
oducts of dehydro-L-ascorbic acid by ion-pairing high-performance liquid chromat
ography)」Analytical Biochemistry, Vol. 214, pages 38-44 (1993), アカデミックプ
レス社;Steven R. Tannenbaumらの文献、「アスコルビン酸によるニトロソアミン形成の
阻害(Inhibition of nitrosamine formation by ascorbic acid)」The American Journ
al of Clinical Nutrition, Vol. 53 (1 Suppl.) pages 247S-250S (1月、1990)を参照さ
れたい。これらの全ては、参照によりその全体を組み込んでいる。)。一般に、該反応は
、デヒドロキシアスコルビン酸を導き、次いで、それは、更に複数の種に分解し得る。
【0016】
図1は、NO2をNOに変換することによってNOを発生させるための、カートリッジ100の例
を示している。NO発生カートリッジ、カートリッジ、又はシリンダーとも呼ぶことができ
る該カートリッジ100は、入口105及び出口110を含む。スクリーン及びグラスウール115が
、該入口105及び該出口110の両方に位置し、かつ該カートリッジ100の残部は、水中の抗
酸化剤の飽和溶液に浸して、該表面活性材料を被覆した、表面活性材料120で満たされて
いる。該表面活性材料は、シリカゲルとすることができる。また、該スクリーン及びグラ
スウール115も、カートリッジ100に挿入する前に、水中の抗酸化剤の飽和溶液に浸す。図
1の例として、該抗酸化剤に挙げることができるのは、アスコルビン酸である。他の実施
態様において、該抗酸化剤に挙げることができるのは、αトコフェロール又はγトコフェ
ロールである。
【0017】
該カートリッジの湿潤したシリカゲルは、副反応の生成物の大部分を吸着し、捕捉する

水分の存在下において、酸素及びNO、NO2は、N2O3、N2O4、及び亜硝酸イオンを形成す
る。一実施態様において、これらの反応物は、一般的なアミノ酸であるプロリンを挙げる
ことができる、NO2捕捉剤と結合して、N-ニトロソプロリンを形成することができる。N-
ニトロソプロリンは、非発癌性である。Tannenbaumの文献(The American Journal of Cl
inical Nutrition, Vol. 53 (1 Suppl.) pages 247S-250S (1月、1990))、並びにOhshim
a及びBartschの文献(Cancer Res. Vol. 41, p. 3658-3662 (1981))によって、この反応
をインビボで使用して、身体のニトロソ化能を測定し、かつビタミンCの添加がこの能力
を低下させ得ることが示されている。そのような反応を使用して、酸素及びNOの存在下に
おいて、湿ったNO2を含む空気流から、気相のNO2を捕捉することができる。該プロリンは
、結晶性粉末の形態とすることができる。プロリンを管内に設置することができ、ガスは
、その上を流れることが可能である。存在するNO2は、該プロリンと不可逆的に結合する
ことができ、N-ニトロソプロリンを形成する。この反応の適用は、この反応を捕捉剤とし
て使用して、NO及び酸素及び空気を含む空気流から、最終段階の微量のNO2を除去するこ
とである。一実施態様において、そのようなNO2捕捉剤をNO送達システムに使用して、存
在するすべてのNO2をプロリンと非可逆的に結合させて、N-ニトロソプロリンを形成させ
ることができる。
【0018】
該プロリンは、粉末の形態であるか、又は例えば、シリカゲル、活性アルミナ及び活性
炭などの物質上に堆積されている溶液とすることができる。プロリンが有効である限り、
他の適切な物質をNO2ガスとの反応に使用できる。一実施態様において、水中のプロリン
水性溶液を使用できる。別の実施態様において、ジフェニルアミン又は第二級アミン又は
第三級アミンを使用して、NO2ガスと反応させることができる。第二級アミンの例に挙げ
ることができるのは、ジメチルアミン、メチルエタノールアミン又は2-(メチルアミノ)エ
タノール、例えば、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、及びピペリジンなどの環状ア
ミンである。第三級アミンの例に挙げることができるのは、トリメチルアミン、ジメチル
エタノールアミン(DMEA)、2-(ジメチルアミノ)エタノール、又はビス-トリスである。
【0019】
好ましくは、該ニトロソ生成物が、発癌性又は毒性がない場合、任意の材料を使用する
ことができる。他の実施態様において、NO2と結合して有機化合物を形成する、任意の化
合物を使用することができる。NO2を該システムから除去するために、生成物に含まれる
のは、該NO2が化学的に結合する限り、限定はされないが:ニトロ、ニトロソ、又はアゾ
である。
【0020】
一実施態様において、該NO送達システムにNO2捕捉剤を備えることができる。NO2捕捉剤
の目的は、ベンチレータ内で、及びガスバッグ又は他の一時的なガス貯蔵装置内での保管
中に、形成され得るすべてのNO2ガスを除去することである。別の実施態様において、該N
O2捕捉剤は、ガスの配管内で形成されたNO2を、NO発生カートリッジの出口から除去する
ことができる。該NO2捕捉剤は、患者に送達する前に、任意の流量及び任意のNO濃度で、
該NO2レベルを0.1ppm未満に低下させる、安全装置として機能することができる。
【0021】
別の態様において、該NO送達システムにレキュペレーターを備える。該レキュペレータ
ーの目的は、ベンチレータ内で、及びガスバッグ又は他の一時的なガス貯蔵装置内での保
管中に、形成され得たすべてのNO2ガスをNOに変換することである。一実施態様において
、該レキュペレーターは、患者のすぐ近傍の装置である。それは、主要なNO発生カートリ
ッジと同じ目的、すなわち、NO2をNOに変換することを果たす。別の実施態様において、
該レキュペレーターは、シリンダー状NO発生カートリッジの出口からのガス配管内で形成
されたNO2を、NOに変換する。該レキュペレーターは、NOと酸素との反応によって、ベン
チレータ内で、及びガスの配管内で形成された、すべてのNO2を回収する必要があるカー
トリッジとすることができる。該レキュペレーターは、患者に送達する前に、任意の流量
及び任意のNO濃度で、該NO2レベルを0.1ppm未満に低下させる、安全装置として機能する
ことができる。
【0022】
一実施態様において、該レキュペレーターに対する流れ抵抗を、例えば、60L/分の流量
で3cm未満の水圧、及び/又は15L/分の流量で<1cmの水圧などと、できるだけ低くするこ
とができる。該レキュペレーターは、大気圧で動作させることができる。該レキュペレー
ターの酸素濃度は、21%〜100%の範囲とすることができる。該レキュペレーターの湿度は
、0%〜99%とすることができる。該レキュペレーターは、熱的に絶縁して、水分凝縮を防
止すことができる。該レキュペレーターへの入口は、患者へガスを送達している加湿(及
び加熱)導管からとすることができる。典型的に、この導管を、約35℃まで加熱して、該
導管での水分凝縮を防止することができる。
【0023】
該レキュペレーターの出口側は、NO/NO2ガス分析器へ向かうサンプルプローブ(sample
probe)とすることができる。該サンプル導管は、相対湿度を低下させるために、及び分
析器へのサンプル導管における、酸素からのNO2の形成速度を最小化するために、等量の
空気で希釈することができる。該レキュペレーターの重量は、扱いにくいことがないよう
に、2ポンド未満であるが、好ましくは、1ポンド未満又は0.5ポンド未満であり、可能な
限り低く保つことができる。該レキュペレーターからの出口は、長さの短い(およそ6イ
ンチ(約15.2cm))、およそ1インチ(2.54cm)の直径のベンチレータ管によって患者に
直接に向けられる。該レキュペレーターは、使い捨てとすることができ、かつ一度だけの
使用とすることができる。該レキュペレーターは、粒子フィルターを組み込み、患者へ送
達されている、レキュペレーターからの微量のダスト、例えば、該レキュペレーター用の
微細なシリカゲル又はアスコルビン酸、又は該捕捉剤用のプロリンなどのいかなる可能性
も防止することができる。また、同フィルター材料は、細菌及び他の微粒子が、該患者へ
送達されるのを防止するであろう。
【0024】
一実施態様において、該レキュペレーターを、図2A及びBに例示するようなディスク状
として提供する。更なる実施態様において、該レキュペレーターは、同軸管を有する管構
造の工業において広く使用されている、一般的なフィルター構造を含む。この種の構造は
、浄水器フィルターにおいて、及び送気管(air line)の圧縮への使用に、特に一般的で
ある。別の実施態様において、該レキュペレーターを、図3A及びBに例示するような管状
フィルターとして提供する。図3A及びBに示すように、該管状フィルターは、フィルター
媒体が内部の有孔領域の所定の位置にしっかりと保持された状態で、3つの同軸管から構
成することができる。該管状フィルターは、2つの有孔の管の間のアニュラス(annulus)
の所定の位置に、シリカゲル又はアスコルビン酸粉体を保持することができる。フィルタ
ー媒体は、シリカゲル又はアスコルビン酸粉体の両接触面に設置することができる。該粉
末又は粉体は、圧縮材料が流動空気流と接触することなしに、ファイリングの間、圧縮す
ることができる。小径の形状を使用することができる場合、該アスペクト比は、患者の近
くで容易に操作されるであろう。該管状フィルターは、図3Bに示すような出口シェル、一
定のアニュラスを有する有孔の内部及び外部管を含む内部シェル、及びシリカゲル又はア
スコルビン酸粉体が充填されたアニュラスを備える。該内部及び外部のアニュラスは、フ
ィルター材料で内側を覆うことができる。一実施態様において、管状フィルターの最終的
な構体を図3Bに示す。該最終構体は、上蓋、及び該上部の環状リングを備え、シリカゲル
又はアスコルビン酸粉体への圧力を保つことができる。
【0025】
一実施態様において、NO及びNO2ガスサンプリング方法を提供する。例えば、該ガスサ
ンプリング導管において、NOと酸素との反応により、100ppmのNO及び100%の酸素に対して
、1.70ppmのNO2が形成し得る。NOと酸素との反応が同時に起こっているガス流において、
NO2をどのようにサンプリングするかが問題となる。これは、高いNO濃度で悪化する。例
えば、200ppmのNOでは、該サンプリング導管中のNO2の形成速度は、100ppmと比べて、4倍
の速度である。また、100%の酸素では、該速度は、空気中の5倍の速度である。患者にお
いて、該導管で起こったことを正確に読み取るために、迅速にサンプル採取をすること、
又はとにかく該反応を減速させることのどちらかが必要である。50%まで希釈することで
、NO濃度の低下によって4倍、及び酸素濃度の低下によっておよそ2.5倍で、該速度は低下
する。
【0026】
一実施態様において、検出用の、患者からのサンプル管は、最大66%、又は最大50%、又
は最大33%まで希釈できる。該試料は、試サンプリング地点で希釈することができる。該
試料は、空気で希釈することができる。例えば、1部の試料と1部の空気で希釈して、該試
料中の水濃度を減少させることができる。別の実施態様において、該試料はまた、下記の
ように希釈することができる:1部の試料及び2部の部屋(例えば、病室)からの空気。あ
るいは、該試料は、壁からの絶乾空気を使用して希釈することができる。
更なる実施態様において、該サンプル管を、該レキュペレーター上のサンプリング地点
に隣接して、2又は3個接合することができる。こうして、50又は66%の希釈を行うことが
できる。
【実施例】
【0027】
(ガスシリンダーカートリッジデザイン)
別の態様において、該ガスシリンダー及び臨床使用に適切な量のNO2を提供する。FDAの
標準的な部屋の大きさは:3.1×6.2×4.65m=89.3m3=89,300Lである。OSHAのNO2レベル
は5ppmである。本明細書中に記載の3つのガスシリンダーの全部は、それらが送達できる
ガス量が大体等しい。
【0028】
サイズASのシリンダーは、2000psiまで加圧される。3600L、124ppmの全内容物を突然開
放すると、空気の入れ替えがない場合に、5.0ppmの部屋内NO2レベルとなる。したがって
、現行のFDAの安全に対する要件に応じるために、このサイズ及び種類のガスシリンダー
における最大濃度は、100ppmのNO2(安全率を組み込んで)とすべきである。実験室で使
用するシリンダーは、100ppmのNO2を含有する3,600リッターのガス(希釈せずに)を送達
する。5L/分の場合、このガスシリンダーは、720分間=12時間持続する。レギュレーター
及び上部なしに48ポンド(約21.8kg)の場合、このシリンダーは、看護師又は治療専門家
が持ち上げるには重く、台車で運ばなければならない。
【0029】
現在、サイズAQ/BL/88 2000psiのシリンダーが病院で使用されている。1918L、233ppm
の全内容物を突然開放すると、空気の入れ替えがない場合に、5.0ppmの病室内NO2レベル
となる。したがって、現行のFDAの安全に対する要件に応じるために、このサイズ及び種
類のガスシリンダーにおける最大濃度は、200ppmのNO2(安全率を組み込んで)とすべき
である。このサイズのシリンダー及び200ppmのNO2について、理想的な酸素レベルは、70
〜74%である。この圧縮シリンダーは、100ppmのNO2を含有する3836リッターのガス(希釈
後)を送達するであろう。5L/分の場合、このガスシリンダーは、767分間=12.8時間持続
するだろう。このシリンダーは、重量30ポンド(約13.6kg)であり、看護師が持ち上げる
にはまだ重い。それは多少操作しやすいが、まだ運搬に台車を要する。
【0030】
Luxfer社のME36 3000psiシリンダーは、2000psiの代わりに3000psiの圧力で992Lを保持
する。992L、450ppmの全内容物を突然開放すると、5.0ppmの病室内NO2レベルとなる。し
たがって、現行のFDAの安全に対する要件に応じるために、このサイズ及び種類のガスシ
リンダーにおける最大濃度は、400ppmのNO2(安全率を組み込んで)とすべきである。し
かし、このシリンダーは、INO社の30ポンド(約13.6kg)に比べて、わずか8.3ポンド(約
3.77kg)の重量である。この小型、高圧のシリンダーの内容物は、AQ及びASと同じくらい
の長い間持続する。これは、用いるシリンダーへの移動が、INO社の速度の2又は4倍かか
るが、重量は1/3未満であり、これは合理的な代償である。鍵となる利点は、該シリンダ
ーが、薬局で貯蔵するのに、かつ看護師が片手で持ち上げるのに十分に小型で、かつ軽い
ことである。このサイズのシリンダーにおける理想的な酸素レベルは、約60%である。Lux
fer社の高圧、小型のガスシリンダーは、100ppmのNO2を含有する3968リッターのガス(希
釈して)を送達するだろう。5L/分で、このガスシリンダーは、793分間=13.2時間持続す
る。わずか8.3ポンド(約3.77kg)の場合、このシリンダーは、看護師が片手で持ち上げ
ることができる。それは、病院の薬局で保管するのに十分小さい。3000 PSIのLuxfer社の
シリンダーは、最高の性能を提供し、かつ好ましいパッケージである。表1に、本明細書
中に記載したシリンダーの仕様を示す。
【0031】
該レキュペレーターの物理的な配置は、直径4.5インチ(11.43cm)のシリンダー、及び
活性炭粉末を備えた排出管に適合可能である。例として、管の設計を図4に例示する。
図5に示した修正された設計は、小さい垂直な管が接近して挟まれている、可能な限り
互いに接近した2つの主要な管を有する。全パッケージは、4.5インチ(11.43cm)以下の
ガスシリンダーの上部に適合しなければならない。これを、図5に概略的に示す。アスコ
ルビン酸/シリカゲル粉体を保持した、各主要な管は、約1インチ(2.54cm)の内径を有す
る。内部及び外部管は、同じ側に置かれる必要がある。該短い管は、少量の活性炭を含み
、微量のアセトアルデヒドを除去することができる。集中治療室で使用するための全パッ
ケージのいくつかの実施態様を、図6A及びBに示す。
【0032】
ガスボトルは、60%の酸素とバランスであるN2との混合物を含有する。また、該ガスは
、約400ppmのNO2を含有する。このガスは、該ガスシリンダーから、取り付けられたレギ
ュレーターを介して放出され、ここで、圧力は、20〜100psiのレベルに低下される。該ガ
スは、固有の迅速脱着によって、別の混合箱に接続される。
【0033】
次いで、400ppmのNO2を含有するガスを、空気/酸素混合物と混合し、該NO2濃度を治療
用濃度まで低下させる。現在の使用において、これは0.1〜80ppmである。該システムの一
態様において、>200ppmまで上昇することができる。該混合器のダイヤルを、NOと同じpp
mに調整する。該混合器から放出するガスは、迅速脱着付属品を用いて、該NO発生カート
リッジ上へ流れる。空気、酸素混合器は、従来の設計であり、かつ市販されている。典型
的に、該空気及び酸素は、施設としての病院の壁供給から供給される。あるいは、該ガス
を、カートリッジ前にまずベンチレータ内を流して、ガス圧を50から20psaまで低下させ
ることができる。
【0034】
該カートリッジは、NO2をNOに変換する。該ガスが、該カートリッジを通り過るとき、
現在、該ガスは、適切な酸素濃度の空気・酸素混合物中に適当な治療用濃度のNOを有する
。該カートリッジを通り過ぎたガスは、迅速脱着継手によって混合箱に戻るように接続さ
れ、ここで酸素濃度が採取され、かつ表示される。一実施態様において、酸素センサーを
使用して、適切な酸素濃度を正確に設定することができる。
【0035】
該混合箱の3つの接続の理由は、該ガスシリンダーの迅速な交換を可能にすることにあ
る。第2のシリンダーが、混合箱上の同一組の3つの迅速脱着継手に配管されるであろう。
シリンダーを交換する必要がある場合、3連スタックバルブを使用して、一ガスシリンダ
ーから別のものに切り替えて、空のシリンダーを取り替えることができる。これは、図6A
には示されていない。
【0036】
該混合箱からのガス混合物は、従来の医療用ベンチレータに供給する酸素を取り替える
。次いで、従来の方法で該ベンチレータを使用し、患者に対して、該治療専門家が所望す
るどんな通気の循環でも行うことができる。該装置は、酸素及び空気の混合物中の、低濃
度(用量)の純粋なNOガスを送達するための機構を、医師に提供することを意図している
。該ガスは、機械的、又は用手的なベンチレータを通過し、呼吸器の管及びマスク、又は
管を通って、患者の肺に移動する。該ガス流は、人工呼吸器若しくは用手呼吸によって、
又は加圧ガスタンクから患者への直接送達(自発呼吸下の患者について)によって、制御
することができる。該装置は、該医師が、送達ガスのNO濃度及び酸素濃度を、独立して調
節することを可能にする。
【0037】
(使用適応症)
該装置は、酸素/空気混合物中の異なる濃度で、純粋なNOを提供することを示す。
【0038】
(総合的な製品説明)
一実施態様において、一酸化窒素(NO)発生器及び送達システムは、酸素/空気混合物
中の純粋な一酸化窒素(NO)を作り出す、送達する、及び監視するために互いに作用する
、5つの構成要素を含む。該ガスは、患者による吸引のための、標準的な麻酔及び呼吸器
呼吸装置を介して移動する。該麻酔部分は、様々な流量を提供し、及び/又は自身で呼吸
していない患者を支援するのにのみ必要とされる。その最も単純な形態において、ガスボ
トルは独立しており、該ガスはガスボトルを出発したときに、NOに変換される。次いで、
この方法で、該ガスはマスク又はカニューレを満たす。該ガス流は、人工呼吸器若しくは
用手呼吸によって、又はタンクの圧力(自発呼吸下の患者について)によって、提供する
ことができる。NO及び酸素の濃度は、各患者の状態及び要求に基づいて、医師によって決
定され、調整される。
【0039】
(製品成分)
(ガスタンク)
第1の構成要素は、酸素/空気混合物中の少量の二酸化窒素(NO2)を有する、加圧式の
アルミニウム製ガスタンクである。この混合物は、有毒なので、他の構成要素による処理
なしでは吸引することはできない。該タンクは、該混合物へのガス圧を制限するための標
準的なレギュレーターを備えている。タンクは、濃縮レベルのNO2ガス及び一定の酸素/空
気比を有する。これらの濃度は、下記の混合システムを使用して調整される。使用するタ
ンク又は輸送は、規定の濃度のNO2ガス及び酸素/空気とし、混合する必要がない。
【0040】
(混合システム)
該混合システムは、接続された2つの標準的な混合器、及び酸素センサーを備える。第1
の混合チャンバーは、加圧タンク又は病院のガスシステムから供給され得る医療用の酸素
及び空気を取込む。ノブは、患者に送達されるガスの所望のFiO2(吸引酸素の比率)の選
択を可能にし、酸素センサーによって測定される、混合チャンバー中の酸素/空気混合を
調整する。この混合物の出力は、第2の混合チャンバーに送り込まれ、ここで上記のガス
タンクからのNO2ガスと混合される。この混合チャンバーのノブは、医師が患者に送達す
るNOガスの濃度の選択を可能にする。この混合チャンバーの出力は、下記のガス変換器及
び精製カートリッジを通過する。これは、互いに独立した、変動するNO及び酸素濃度を可
能にする。
【0041】
(ガス変換器及び精製カートリッジ)
最後の混合器からのガス混合物は、ガス変換器及び精製カートリッジを通って流れる。
このカートリッジは、全てのNO2ガスをNOガスに変換し、ガス混合物全体中のいかなる不
純物も除去する。該変換が基本的に100%である場合、NOガス濃度は、NO2ガス濃度と同じ
になる。酸素濃度(酸素/空気比)は変化しない。該カートリッジの出力は、機械的又は
用手的換気システムに送達され、適切に加圧される。また、輸送に使用するタンクは、該
患者へのガスの流れを制御する流量計も装着されている。
【0042】
(レキュペレーターカートリッジ)
レキュペレーターカートリッジは、患者において、該患者の呼吸管の吸息肢末端に設置
される。このカートリッジは、ガス変換器と同じ技術を含む。このカートリッジの目的は
、2つある。第1は、NOガスと酸素との反応を介して形成され得るすべてのNO2をNOに再変
換することである。第2は、送達ガスの細菌及びウイルスの濾過を提供することである。
【0043】
(ディスク状レキュペレーター)
該レキュペレーターの明確な形式は、それをよりガスシリンダー装置のようにすること
であるが、それは、約3〜4インチ(約7.62〜約10.2cm)を有し、かつ該カートリッジの深
さは、5.5インチ〜0.3インチ(約14.0〜約0.76cm)未満に縮小される。このようなカート
リッジは、パンケーキ形を有しており、いくつかの呼吸装置に使用される粒子フィルター
と類似して見えるであろう。
下記の等式は、カートリッジを通過する圧力損失が、半径及び深さに応じて変動するこ
とを示している。一定容積のカートリッジについて、該圧力損失は半径の4乗で変化する

【数1】
一定容積の材料について
【数2】
材料の容積が半分の場合
【数3】
【0044】
半径0.4インチ(約1.02cm)及び深さ5.5インチ(約14.0cm)のガスボトルカートリッジ
は、実験的に測定した、2.7psi=187cm H2O水の圧力損失を有する。様々な直径に対する
圧力損失の算出を表2に示す。60L/分で3.0cm H2Oの設計目標を達成するために、5L/分で0
.2〜0.3cm水の圧力損失が必要である。この低圧力損失を達成するために、平坦なディス
クの直径は、4.0〜4.5インチ(約10.2〜約11.4cm)とする必要がある。現行のシリンダー
状カートリッジと同じ量の材料を有する場合、該深さは4.00インチ(約10.2cm)で0.56cm
、及び4.5インチ(約11.4cm)で0.44インチ(約1.12cm)とする必要がある。
【0045】
直径3インチ(約7.62cm)及び厚さ1.0cmの平坦なディスクを実験室で試験し、シリンダ
ー状カートリッジと同様の性能を示した。すべてのフィルターが同じ容積の材料を有する
場合の、大きさによる圧力損失の変動を図7に示す。そのような装置をどのように構築す
るかについて、様々な概念を評価した。困難なことは、2つの非常に薄いフィルタークロ
ス間に、シリカゲル又はアスコルビン酸粉体をどのように封入するかということである。
該封入は、全ての場所で均一な厚さを有するだけでなく、該シリカゲル又はアスコルビン
酸粉体の固着がない。固着は破壊的であり、チャネリング及び故障を招く恐れがある。そ
のような設計の例を図2Bに示す。
【0046】
ディスク状及び管状のフィルターを通過する圧力損失の比較を、下記に数学的に、並び
図9A及びBに示す。
【数4】
【0047】
基本的に、管状フィルターの圧力損失は、ディスク状フィルターのように、表面積(管
状フィルターの内周)及びベッドの厚さに比例することを、該分析により示された。大き
さ及び圧力損失の詳細な計算を、下記、並びに図9C及びDに示す。
管の計算の続き
外部管の容積:
【数5】
内部管の容積:
【数6】
V=シリカゲル又はアスコルビン酸粉体の容積=
【数7】
【数8】
容積=2.76立方インチ(約45.2cm3)(5.5インチ(約14.0cm)−0.8インチ(約2.03cm)
円柱)
r1=0.5インチ(約1.27cm)
l=3.0インチ(約7.62cm)
【数9】
間隙=0.23インチ≡0.58cm
面積=2πrl=2π(0.5)(3)=94平方インチ(約607cm2
ディスクと同一面積3.54ペリメーター
圧力損失=0.5cm H2O
【0048】
次いで、これらの等式を用いて、様々な形状の管状フィルターを評価し、該ディスクフ
ィルターと比較した。例えば、0.5インチ(約1.27cm)(内径1インチ(約2.54cm))の内
半径、及び直径1.25インチ(約3.18cm)の外部アニュラス径を有する長さ4インチ(約10.
2cm)の管状フィルターは、約1.75インチ(約4.45cm)の外部シェル直径を有する。この
面割当ての管状フィルターは、5l/分でわずか0.19cm H2Oの圧力損失を有し、それは、直
径4.5インチ(約11.4cm)のディスクに相当する。アニュラスと呼ばれる、該管の間の間
隙は、0.4cmの空間を有する。表3を参照されたい。表3から、直径5インチ(約12.7cm)の
ディスクの性能が望ましいことが仮定され、それは、19.63平方インチ(約126.7cm2)の
有効表面積、及び0.12cm水の圧力損失を有する。管状型において、同じ表面積及び圧力損
失は、0.57の内部直径及び0.70インチ(約1.78cm)の外径で得ることができ、該管は5.50
インチ(約14.0cm)の長さとなる。
【0049】
(ガスの監視)
該システムは、該患者へ送達するNO及びNO2濃度を監視し、かつ表示するために、ガス
センサーを必要とする場合がある。これらは市販のモニターとすることができ、警報機能
を備えるべきである。該システムの表象的な図を図8に示す。
【0050】
100ppmのNO及び100%の酸素について、該サンプルが約2メートルの管を通過し、大量の
水滴の濾過を介して、PrinterNoxに入る間に、1.70ppmのNO2が形成されることが、実験及
び計算の両方によって示されている。該PrinterNoxは、吸引用途のNO及びNO2を測定する
ための、市販の電気化学ガス分析器である。また、該サンプルは、>100に水で飽和して
おり、水滴の濾過は必須である。これは、焼却炉及び発電所の煙突からの煙突の監視で直
面する、典型的な問題である。いくつかの有望な下記解決策がある。
第1は、該サンプル導管を加熱して、蒸気相に水がとどまるようにすることである。ま
た、該装置を加熱する場合、該ウォーターフィルターを排除し、かつ該サンプリング時間
を短縮することができ、それによって該NO2形成を低減させる。該形成速度は、時間に対
して線形であり、かつNO2に4乗であるので、NO2サンプリングについては、良い方法では
ない。
【0051】
第2は、供給源での試料採取することである。これは機能するが、水の凝縮という問題
が残る。
第3は、試料を希釈することである。これは、3つの重要な下記操作を行う。
1. 試料を希釈する。これは、NO及びO2からNO2の形成を減少させる。これは、下流での試
料採取を可能にする。そうでなければ、分析器で測定されるNOの多くがサンプリング導管
で形成されるだろう。
2. 湿度を低下させる。これは、導管における水の凝縮を防止し、それによって、水滴の
濾過の必要性を排除する。
3. それはNOレベルを50%低下させる。これは、該装置をPrinterNOxの検出セルの動作範囲
に至らせる。
【0052】
(1回の希釈(50%)をともなう試料管の検討)
初期状態:100ppmのNO、100%の酸素、及び水分凝縮(>100%)。
50%希釈をともなう:50ppmのNO、60.5%の酸素、及び大幅に減少した湿度。
検出器において:NO2の形成速度は、4*100/60.5=6.6減少した。
NO2は1.70から0.26ppmまで減少した。
大きな水分凝縮フィルター容積を除去することで、該レベルはより更に低下するであろ
う。
NO読み込みは、全ての濃度で50%まで低下する。これは、20ppmが10として読み込まれ、
かつ2ppmが1ppmとして読み込まれることを意味する。これは較正によって補正されるが、
該精度は、50%まで低下するであろう。
該導管中のNO2形成は、通常濃度では、0まで有効に低下される。例えば、80ppmのNOで
あっても、導管中で形成されたNO2は、希釈せずに1.09ppmとなり、及び希釈をともない<
0.16ppmとなる。
【0053】
(2回の希釈(33%)をともなう試料管の検討)
初期状態:100ppmのNO、100%の酸素、及び水分凝縮(>100%)。
33%希釈をともなう:33ppmのNO、47%の酸素、及び大幅に減少した湿度。
検出器において:NO2の形成速度は、9*100/47=20減少した。
NO2は1.70から0.09ppmまで減少した。
NO読み込みは、全ての濃度で1/3低下する。これは、20ppmが6.67として読み込まれ、か
つ2ppmが0.67ppmとして読み込まれることを意味する。これは較正によって補正されるが
、該精度は、l/3低下するであろう。
該導管中のNO2形成は、通常濃度では、0まで有効に低下される。例えば、80ppmのNOで
あっても、導管中で形成されたNO2は、希釈せずに1.09ppmとなり、及び希釈をともない<
0.05ppmとなる。
【0054】
(湿度)
体温である37℃の場合、100%の相対湿度時の水の量は、44g/M3である。典型的に、病院
の空気は、50%の相対湿度及び22℃の温度である。この温度の空気は10g/M3を含む
1部の試料と1部の病室からの空気との希釈は、該管中の水濃度を27g/M3まで低下させる
。この量の水蒸気は、28℃(82°F)の温度で空気から凝縮し始める。
1部の試料と2部の病室からの空気との希釈は、該管中の水濃度を21.3g/M3まで低下させ
る。この量の水蒸気は、23.5℃(74°F)の温度で空気から凝縮し始める。
別の方法は、壁からの絶乾空気を用いることである。これは同じ箱で利用でき、平行管
を用いて、試料採取位置にパイプを通すことができる。
該検出器は、安定性を確保するために、一定温度で作動する必要がある。したがって、
検出モジュールの内部は温和である。サンプル導管が厚い壁で、又は1つの管が別の管の
内部を走っていることで絶縁されている限り、50:50の希釈が行われる。
【0055】
(適用(50%又は66%希釈))
試料管は、レキュペレーターのサンプリング地点付近、2点(又は3点)に接合される。
あるいは、第2のサンプリング口を特別な補助器具に成形してもよい。使用者からあまり
に多くの疑問が起こることから、フラッピングエアーサンプルポートを有さないことが最
良であろう。これは、患者の吸気導管からの試料を半分、及び部屋からの試料を半分、取
込むことを可能にする。また、較正もこの点で行うべきである。技術的には、これは操作
するのに全く有効な方法であり、全ての規制認可指針に応じるものである。当然ながら、
該方法はまた、EPA標準手順を言及する提出文書に記載されている。
試料採取点で希釈することは、全く有効な方法である。また、おそらく、検出器上の大
きなデッドボリュームの水分凝縮トラップを有する必要がないであろう。これは、5つも
の要因によって、NO2形成レベルをより更に低下させる。検出セルの寿命は、自家試験の
間でさえ、数日から12ヵ月に増加するであろう。希釈は、反応性ガス流の好ましい試料採
取方法である。
【0056】
(他の適用)
ガスボトル単体をNOの全ての用途に使用できる。いかなる電子機器も用いず、該ガスを
送達するのに利用できる。該システムの利点は、単純、混合なし、電子機器なし、及びソ
フトウェアなしということである。該レギュレーターを接続し、バルブを開くだけである

また、該ガスボトルシステムは希釈装置とともに使用できる。この場合、該ガスは、酸
素中の約1000ppmのNO2として輸送される。第1段階において、次いで、該使用者の装置は
、この濃度を約20ppmのNO2まで落とす。第2段階では、カートリッジを挿入し、NOに変換
する。この型は、現行の市販されているものと類似しているが、NO2は該レキュペレータ
ーによって除去されるので、どんなNO2もガス導管で形成されることを患者が心配する必
要はない。同様に、該レキュペレーターカートリッジは、現行のシステムとともに使用し
て、吸入される全ての残留NO2ガスを治療用形態、つまりNOに変換する。また、該レキュ
ペレーターは、該システムからNOガスが失われることがなく、しかも十分な規定用量を受
けることを保証する。
【0057】
該システムが、有毒な形態であるNO2の存在なく約100〜200ppm以上の高用量のNOを送達
できるという事実が重要である。先行研究の多くが、20ppmの範囲の用量で用いられたが
、研究者らは、常に、毒性のNO2の存在に悩まされた。これは、彼らが服用することがで
きる用量を限定する。該システムを用いることで、吸入ガスにおける全てのNO2毒性問題
が排除される。この事実は単独で、複数の疾患、特にARDS(急性呼吸促迫症候群)の治療
に対するNOガスの有用性を大幅に上昇させるだろう。
他の実施は、下記の特許請求の範囲内にある。
【表1】
【表2】
【表3】
図1
図2A
図2B
図3A-B】
図4
図5
図6A-B】
図7
図8
図9A-D】