【実施例1】
【0022】
図1〜
図8は本発明の実施例1を示し、同図に示すように、フロアマットの固定構造1は、自走式車両の車両フロア2上にマット本体3を敷設し、この敷設したマット本体3を固定する固定構造である。前記フロアマットは、前記マット本体3の周縁部である後周縁部4Bに固定部材5を突設してなり、この固定部材5は切欠き開口部6を有する。また、前記固定構造1においては、前記車両フロア2と該車両フロア2上に固定した車両内装部品たるフットブラケット7との間に固定部材5を挿入し、それら車両フロア2とフットブラケット7との間に固定部材5を挟持することにより固定部材5を固定する。この例では、後周縁部4Bの左右で角部側に固定部材5をそれぞれ設けている。
【0023】
前記マット本体3は、下部に設けられたシート状のベース層11と、上部に設けられたパイルや起毛からなる上面部12とを備え、そのパイルや起毛の上端は自由端に形成されている。また、前記マット本体3の周縁部の全周には、繊維によりオーバーロック加工が施されたオーバーロック部13が形成されている。
【0024】
図4及び
図5は運転席の座席14を示し、この座席14は左右のシートレール15,15により車両フロア2に前後スライド可能に設けられている。前記シートレール15は、車両の前後方向に沿って長い2本のロアーレール(図示せず)とアッパーレール(図示せず)を備える。そして、固定レールである前記ロアーレールを車両フロア2に固定し、可動レールである前記アッパーレールを前記座席14の着座部14Aの下部に固定し、前記アッパーレールは前記ロアーレールに沿ってスライド可能に設けられている。
【0025】
また、左右のシートレール15,15に設けられたロック機構には、ロック解除レバー16が連結されている。このロック解除レバー16は、前記着座部14Aの前縁部の下方に着座部14Aの幅方向に沿うように延在し、座席14に着座した乗員が上方に引き上げ操作することにより、左右のシートレール15,15のロックを解除できるようになっている。
【0026】
前記シートレール15の前記ロアーレールの前側には前記フットブラケット7が設けられ、このフットブラケット7が車両フロア2に固定され、前記フットブラケット7は前記着座部14Aの前側に位置する。また、前記車両フロア2の上面には、上面部材たるカーペット17が恒久的に敷きつめられ、車両フロア2が平坦に形成されている。また、前記カーペット17は、不織布などからなり、柔軟性を有すると共に、吸音や遮音の防音機能を有する。
【0027】
図4,
図5及び
図8などに示す前記フットブラケット7は金属などの硬質材料からなる。また、前記フットブラケット7は、その基端側(車両後側)を前記ロアーレールに固定し、その先端側(車両前側)には車両フロア2に締結する締結部21が設けられている。この締結部21は、平面略円形な先端部22と、この先端部22より幅狭で先端側から基端側に向かって幅狭になる幅狭部23とを一体に有する。尚、幅狭部23の先端の左右幅は先端部22の左右幅より狭く形成されている。
【0028】
また、前記締結部21は、平坦な底板24の周囲に、下部が開口した断面略U字状の湾曲縁25が形成されている。そして、前記湾曲縁25は略一定幅を有するから、先端部22の底板24である底板先端部24Aも平面略円形をなし、幅狭部23の底板24である底板幅狭部24Bも基端側に向かって幅狭になるように形成されている。尚、底板24の下面と湾曲縁25の下縁25Fは略同一高さである。また、後述するように固定部材5を挿入する前は、前記カーペット17に先端部22の下縁25Fの全体又は少なくとも一部が接していることが好ましい。
【0029】
また、前記底板先端部24Aの略中心には、透孔26が穿設されており、この透孔26に固定手段たるボルト27が挿通され、このボルト27が前記カーペット17とこのカーペット17の下部の床面18に挿通されている。そして、前記ボルト27を床面18に捩じ込み止着したり、ボルト27にナット(図示せず)を螺合したりして締結部21が車両フロア2に固定される。尚、床面18は金属製などの硬質材料からなる。
【0030】
図1に示す前記マット本体3は、車両の運転席側の車両フロア2に敷設されるものであって可撓性を有する。前記車両フロア2の運転側には、右側に前後方向に長いアクセルペダル31が配置され、このアクセルペダル31の左側には、左右方向に長いブレーキペダル32が配置されている。また、前記マット本体3の前右角部には、前記アクセルペダル31に対応して凹部33が設けられている。さらに、前記マット本体3の前周縁部4Fが前記ブレーキペダル32に近接配置されると共に、前記マット本体3の前周縁部4Fと前記ブレーキペダル32との間に間隔が設けられており、この間隔によりマット本体3と前記ブレーキペダル32が干渉しない。
【0031】
さらに、前記マット本体3の後側左右には、合成樹脂等からなる略筒状のマット本体側固定部材41,41が設けられ、このマット本体側固定部材41には透孔等からなる挿入受け部42が設けられている。また、前記車両フロア2のカーペット17には車両側固定部材(図示せず)が設けられ、この車両側固定部材には前記挿入受け部42に挿入係止する係止部(図示せず)が設けられており、この係止部としては、前記挿入受け部42に挿入する突起や、前記挿入受け部42に係脱可能なロックレバー等が例示される。
【0032】
前記固定部材5は合成樹脂などのシート材からなり、厚さが1〜2mm程度であって、撓み性を有する。
図3及び
図7などに示すように、前記固定部材5は、先端側(車両後側)が開口する前記切欠き開口部6を有する略C形の挿入部52と、基端側(車両前側)の連結部53とを一体に備える。そして、前記挿入部52は円弧状の左右の挿入腕部52A,52Aを挿入基端部52Bにより連結してなる。また、挿入部52はフットブラケット7の締結部21の形状に対応して形成されている。尚、挿入部52は半円より大きく形成されている。
【0033】
図7に示すように、前記切欠き開口部6の最大左右幅W2は前記底板先端部24Aの左右幅W3より大きく、前記挿入部52の外縁54の左右幅Wは前記先端部22の左右幅W1より大きい。また、前記先端部22の左右幅W1より切欠き開口部6の左右幅W2は小さい。尚、前記左右幅W2より切欠き開口部6の先端部における左右幅は僅かに小さいが、この先端部の左右幅より前記底板先端部24Aの左右幅W3は小さい。このように底板先端部24Aより切欠き開口部6が大きく、挿入部52の先端側から切欠き開口部6内に底板先端部24Aを挿入可能であり、また、前記切欠き開口部6より先端部22が大きく、この先端部22より挿入部52が大きく形成されている。そして、前記固定部材5は、その挿入部52の外縁54が、締結部21の先端部22を囲い込んで、取付状態で、取り囲むような形状をなし、また、切欠き開口部6は、底板先端部24Aを囲い込んで、取付状態で、取り囲むような形状をなす。
【0034】
このように構成することにより、左右の挿入腕部52A,52Aの上面及び挿入基端部52Bの上面に、先端部22の下縁25Fが当接するように挿入配置することができる。また、
図7及び
図8に示すように、切欠き開口部6と底板先端部24Aとの間に隙間δがあるから、この隙間δにより固定部材5と締結部21との左右及び前後寸法のバラツキを吸収することができる。
【0035】
また、この例では、前記連結部53は前記挿入部52の左右幅より幅狭に形成され、その連結部53の左右方向中央に透孔55が穿設されている。そして、マット本体3の固定状態において、前記挿入部52が前記底板先端部24Aを囲い込むようにして配置され、切欠き開口部6内に底板先端部24Aが遊嵌される。
【0036】
前記固定部材5は、リベットなどの加締め部材61によりマット本体3,3Aに固定されている。前記加締め部材61は、軸本体62の上部に皿形の径大頭部63を有し、この径大頭部63の上面は湾曲面に形成されている。また、マット本体3には、前記固定部材5の前記透孔55に対応して透孔64が穿設され、それら透孔55,64に前記軸本体62を挿通し、その軸本体62の下部を拡径するように潰して固定部材5の下面に沿う加締め部65を形成している。
【0037】
このようにしてマット本体3の下面に固定部材5の連結部53側の上面が略密着した状態で、マット本体3の下面に固定部材5が連結固定され、この固定状態で挿入部52は後周縁部4Bの端部から外側に突出した状態で配置され、固定部材5は前記軸本体62を中心に水平方向回動可能となり、固定部材5の先端側が左右に回動可能となる。
【0038】
また、
図7に示すように、固定状態で、切欠き開口部6の基端と後周縁部4Bの端部との間には間隔Kが設けられる。尚、
図1に示すように、前記左右のマット本体側固定部材41,41の挿入受け部42,42の間隔より、マット本体3の左右の透孔64,64の間隔が広い。また、左右の透孔64,64は前記左右のマット本体側固定部材41,41の挿入受け部42,42より左右方向外側に位置する。このように挿入受け部42の位置より外側に固定部材5を配置することにより、マット本体3の後周縁部4Bの角部側の浮き上がりを効果的に抑制することができる。
【0039】
図2に示すマット本体3Aは、車両の助手席側の車両フロア2に敷設されるものであり、平面形状が異なる点とマット本体側固定部材41が設けられていない点以外は前記マット本体3と同一構成である。そして、前記マット本体3Aの後周縁部4Bの左右に前記固定部材5,5を連結しており、好ましくは前記マット本体3Aの後周縁部4Bの角部近傍に前記固定部材5,5を配置する。これによって、マット本体3Aの後周縁部4Bの角部側の浮き上がりを効果的に抑止することができる。尚、図示しないが、助手席側の座席も前記座席14と同様にシートレール15,15により前後スライド可能であり、シートレール15の前側は前記フットブラケット7により車両フロア2に固定されている。
【0040】
次に、前記マット本体3,3Aの車両フロア2への固定方法について説明する。固定部材5の挿入部52の先端側を、カーペット17と締結部21の下縁25Fとの間に差し入れる。この場合、締結部21は硬質材料からなるが、カーペット17が柔軟性を有し、固定部材5が薄いシート状をなすから、カーペット17と締結部21の下縁25Fとの間に挿入部52をスムーズに挿入することができる。そして、左右の挿入腕部52A,52Aと挿入基端部52Bの上面に下縁25Fが当接するように挿入部52を挿入する。この状態で挿入部52が前記底板先端部24Aを取り囲み、切欠き開口部6と底板先端部24Aとの間には隙間δが形成される。また、カーペット17と締結部21の下縁25Fとの間に差し入れた後は、カーペット17の弾性によりカーペット17と締結部21の下縁25Fとの間に固定部材5が確実に挟持される。
【0041】
この場合、固定部材5は加締め部材61を中心にマット本体3,3Aに水平方向回動可能に設けられているから、左右のフットブラケット7,7と左右の固定部材5,5との間で間隔などに誤差があっても、固定部材5,5を水平回動することによりバラツキを吸収することができ、固定を円滑に行うことができる。
【0042】
また、マット本体側固定部材41を設けたマット本体3では、左右のマット本体側固定部材41,41によりマット本体3が、車両フロア2に対して、左右に位置決めされるから、この位置決め状態で固定部材5,5の位置と左右のフットブラケット7,7の位置との間に誤差があっても、固定部材5,5を水平方向に回動することにより、前記誤差を吸収することができる。
【0043】
このようにして固定部材5が車両フロア2のカーペット17とフットブラケット7の締結部21との間に挟持され、固定部材5が上下方向に固定される。これによりマット本体3の後周縁部4B側の車両フロア2からの浮き上がりを抑制することができる。
【0044】
このように本実施例では、請求項1に対応して、
シートレール15,15に座席14が設けられており、シートレール15,15が車両フロア2上に配設された車両内装部品たるフットブラケット7に支持され、フットブラケット7を備えた車両フロア2上
にマット本体3
が敷設
されるフロアマットの固定構造
であって、マット本体3の
座席側の周縁部たる後周縁部4Bに
は固定部材5
が設けられ、固定部材5はマット本体3の車両フロア2側の面に固定されるシート状部材であり、固定部材5は切欠き開口部6を有
する挿入部52を備え、車両フロア2
の上面と
フットブラケット7の下との間に
挿入部52が挟持
されるから、長時間の使用等によるマット本体3,3Aの浮き上がりを抑制することで、商品性を確保することができる。
【0045】
また、マット本体3,3Aのシートレール15がスライドしたときマット本体3,3Aとシートレール15の干渉を防止することができ、商品性を確保できる。
【0046】
さらに、マット本体3,3Aがシートレール15に噛み込むことで、スライド機能を妨げることを防止できる。
【0047】
また、シートレール15がスライドしたときマット本体3,3Aとシートレール15とが接触して、シートレール15に塗布された潤滑剤がマット本体3,3Aに付着することを防止できる。
【0048】
また、このように本実施例では、請求項2に対応して、
固定部材5とマット本体3とは、固定部材5とマット本体3それぞれに形成された透孔55,64に軸本体62が挿通され、軸本体62を備えた加締め部材61によって固定部材5はマット本体3,3Aに水平方向回動可能に連結されているから、固定部材5を車両内装部品たるフットブラケット7と車両フロア2の間で挟持させるポイントのバラツキに対応することができる。
【0049】
さらに、このように本実施例では、請求項3に対応して、
マット本体3の座席側の周縁部たる後周縁部4Bの内側には、マット本体3を車両フロア2に固定するマット本体側固定部材41が複数設けられている。
【0050】
さらに、このように本実施例では、請求項4に対応して、切欠き開口部6内で固定手段たるボルト27により車両フロア2と車両内装部品たるフットブラケット7が固定されている。
【0051】
また、実施例上の効果として、前記挿入部52は左右の挿入腕部52A,52Aを基端側の挿入基端部52Bにより連結してなり、左右の挿入腕部52A,52Aと挿入基端部52Bの上面に先端部22の下縁25Fが当接するように、挿入部52を先端部22の下に挿入するから、車両フロア2とフットブラケット7との間に固定部材5を確実に挟持することができる。さらに、固定部材5を、回転中心軸たる軸本体62を有する加締め部材61によりマット本体3,3Aに取り付けたから、固定部材5を回動自在にマット本体3,3Aに連結することができる。また、挿入部52より連結部53の幅が狭いから、
図7に示すように、マット本体3の左右方向縁側に固定部材5を取り付け易くなる。さらに、前記固定部材5は、その挿入部52の外縁54が、締結部21の先端部22を囲い込んで、取付状態で、取り囲むような形状をなし、また、切欠き開口部6は、底板先端部24Aを囲い込んで、取付状態で、取り囲むような形状をなすから、確実な取付状態が得られる。