【文献】
WANG,D et al,Synthesis of dimethyl carbonate from methyl carbamate and methanol over lanthanum compounds,Fuel Processing Technology,2010年,Vol.91, No.9,p1081-1086
【文献】
BALL, P. et al,Carbonates and Polycarbonates from Urea and Alcohol,Angewandte Chemie International Edition in English,1980年,Vol.19, No.9,p718-720
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記陽イオンは、アルキル基またはヒドロキシアルキル基を有する、4級アンモニウム系陽イオン、イミダゾリウム系陽イオン、N−ヒドロキシアルキルピリジウム系陽イオン、ピラゾリウム系陽イオン、ピロリニウム系陽イオン、4級ホスホニウム系陽イオン、チアゾリウム系陽イオンまたはスルホニウム系陽イオンであり、
前記陰イオンは、ビス(トリフルオルメチルスルホニル)イミド陰イオン、トリフルオルメタンスルホネート陰イオンまたはトリス(トリフルオルメチルスルホニル)メタニド陰イオンであることを特徴とする請求項2に記載のジアルキルカーボネートの製造方法。
前記反応段階は、130ないし300℃の温度、および0.1気圧ないし15気圧の圧力下で進行することを特徴とする請求項1に記載のジアルキルカーボネートの製造方法。
前記尿素、アルキルカルバメートまたはこれらの混合物と、1価アルコールとは、1:1ないし1:100のモル比で使用されることを特徴とする請求項1に記載のジアルキルカーボネートの製造方法。
【背景技術】
【0002】
代表的なジアルキルカーボネート物質のジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)は、無色、無臭であり、人体毒性がない親環境的な分子構造を有している。また、ジメチルカーボネートは、多様な化学反応性があって、メチル、メトキシまたはメトキシカルボニル基などの反応性基を導入することができ、このような反応性基を導入することによって、ジメチルスルフェートまたはメチルハライドなどのような毒性および腐食性が強い化学薬品を代替することができる。そして、ジメチルカーボネートは、高い溶解性を示すため、クロロベンゼンのような溶媒を代替して親環境溶媒として使用可能であり、最近は、ポリカーボネートの原料であるホスゲンの代替物質、自動車のオクタン価向上のための添加剤、または二次電池の電解液などに使用されている。
【0003】
このようなジメチルカーボネートなどは、通常、メタノールなどのアルコール、ホスゲンおよび高濃度の苛性ソーダ溶液として製造されてきたが、有毒性のホスゲンと高濃度の苛性ソーダ溶液によって、安全性および環境的な面で問題が多いことが知られている。
【0004】
ジメチルカーボネートを製造する他の方法としては、エニケム(EniChem)工程がある。エニケム工程は、一酸化炭素とメタノールを1価の塩化銅触媒を使用して空気中の酸素で酸化させてジメチルカーボネートを製造する方法である。しかし、エニケム工程は、有毒な一酸化炭素を原料として使用する問題があり、転換率が低く、副産物として水が生成されることによって、未反応メタノールの精製および循環に使用されるエネルギー費用が多い問題がある。また、1価の塩化銅触媒が2価の銅イオンに酸化されやすくて触媒活性が低下し、腐食による反応装置の補完および爆発への対処などの問題がある。ひいては、生成物に微量の塩素イオンが残留して、電解液などに使用する時、精製費用が急激に上昇する問題がある。
【0005】
ジメチルカーボネートを製造するさらに他の方法として、メタノールを二酸化窒素に酸化させてメチルナイトレートを作り、水分を除去した後、一酸化炭素と白金触媒下で反応させてジメチルカーボネートを製造し、酸化窒素は再び空気と接触させて二酸化窒素に転換および循環させるウベ(Ube)工程がある。前記ウベ工程は、分離・精製のためのエネルギー費用が相対的に少ないが、有毒で腐食性が強い一酸化炭素および酸化窒素を使用することによって、腐食防止のための反応装置、爆発防止のための安全装置、および精密な濃度調節装置などが要求され、反応物の漏出の危険などの問題がある。
【0006】
ジメチルカーボネートを製造するさらに他の方法としては、エチレンオキシド(またはプロピレンオキシド)と炭酸ガスを触媒下で高圧反応させてエチレンカーボネート(またはプロピレンカーボネート)を製造した後、メタノールでエステル交換反応させてジメチルカーボネートとエチレングリコール(またはプロピレングリコール)を生産するテキサコ(Texaco)工程がある。テキサコ工程は、一酸化炭素などを使用せず、エニケム工程およびウベ工程より安全性の面で優れているが、高温・高圧雰囲気で行われることによって、原料として使用されるエチレンオキシドの漏出による爆発の危険性がある。また、エステル交換反応は、高い温度で行われるにもかかわらず、転換率が高くなくて、未反応物質と、生成物であるジメチルカーボネートおよびエチレングリコールの分離精製に多大なエネルギーが使用される問題がある。
【0007】
一方、最近、尿素とメタノールを触媒下で直接反応させてジメチルカーボネートを製造する方法に対する研究が活発に進められている。このような方法は、価格の安い尿素を原料として使用するだけでなく、副産物の水が生成されないため、メタノール−水−ジメチルカーボネートのような3つの成分による共沸混合物が生成されず、分離および精製過程が容易に行われる。また、副産物として生成されるアンモニアは、炭酸ガスと反応して再び尿素に転換および再使用可能なため、より環境親和的な工程によってジメチルカーボネートを製造することができる。
【0008】
このように、尿素とメタノールを用いてジメチルカーボネートを製造する従来の方法としては、(1)ジンクアセテート(Zinc acetate)触媒下で尿素とメタノールを反応させる方法(S.Bowden,E.Buther,J.Chem.Soc.1939,vol.78)や、(2)尿素、メタノールなどの1級脂肪族アルコール、有機金属化合物およびホスフィン系有機物の触媒を反応させてジアルキルカーボネートを合成する方法(Peter Ball,Heinz Fullmann,and Walter Heintz、“Carbonates and Polycarbonates from Urea and Alcohol)、Angrew.Chem.Int.Ed.Engl.1980,vol.19,No.9,pp718−720;WO95/17369)などがある。しかし、これら方法は、十分な収率でジメチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートを合成するのが難しい。
【0009】
また、(3)有機スズ系化合物の触媒と、ポリグリコールエーテル化合物などの高沸点電子供与化合物を助触媒として使用してジアルキルカーボネートを製造する方法(J.Yong Ryu、米国登録特許6,010,976)が知られており、これに基づく多様な工程特許が知られている。しかし、このような方法の場合、有機スズ系化合物の触媒が水に不安定で、原料に不純物として含まれている水によってその活性が低下する短所があり、毒性などの問題点もある。また、助触媒として使用されるポリグリコールエーテル化合物は、高温で分解または重合可能であり、粘度の変化や、炭化などが発生して、助触媒として活性が低下することがある。しかも、前記触媒および助触媒は、再生が難しくて、環境汚染などを誘発することがある。
【0010】
一方、(4)Zn、Pb、Mn、LaまたはCeなどの遷移金属酸化物と、K、Na、Cs、Li、CaまたはMgなどのアルカリ(土類)金属酸化物をアルミナまたはシリカなどに担持させた触媒を使用し、反応器または蒸留塔を用いて尿素とメタノールを直接反応させることによってジメチルカーボネートを製造する方法が、米国登録特許7,271,120B2に開示されている。このような方法では、触媒と反応物を容易に分離することができるが、ジメチルカーボネートを合成するための反応温度がメタノールの沸騰点よりはるかに高い温度で行われ、高圧で気−液平衡状態を維持しなければならず、生成されたアンモニアとジメチルカーボネートを排出しなければ反応収率が低下することがある。しかも、中間生成物であるメチルカルバメート(MC)とジメチルカーボネートとの副反応によって、N−メチルメチルカルバメート(N−MMC)、またはN,N−ジメチルメチルカルバメートのような副産物が発生することがある。
【0011】
このように、反応蒸留によってジメチルカーボネートを製造する方法は、メタノールの沸点より高い反応温度およびメタノールの高い蒸気圧下でジメチルカーボネートの反応収率および蒸留効率を高めるために気液平衡をなす一定温度および圧力を維持しなければならず、アンモニアを排出し、蒸留物を得なければならない。この時得られる蒸留物は、ジメチルカーボネートとメタノールの共沸混合物であって、高い圧力での共沸混合物によって生成物であるジメチルカーボネートの濃度が低くなり、生産性が低下することがある。また、このような製造方法では、合成されたジメチルカーボネートの高い反応性によって、中間生成物のメチルカルバメート(MC)が反応したN−MMC、またはN,N−ジメチルメチルカルバメートなどの副産物が相当量生成され得る(Yoshio Ono,“Dimethyl carbonate for environmentally benign reaction”,Pure&Appl.Chem.,1996,Vol.68,No.2,pp367−375)。
【0012】
そして、(5)米国登録特許5,534,649では、尿素またはアルキルカルバメートとアルキルアルコールを、テトラメチルアンモニウムヒドロゲンカーボネートメチルエステル(tetramethylammonium hydrogencarbonate methyl ester)またはテトラメチルアンモニウムカルバメート(tetramethylammonium carbamate)のような4級アンモニウム塩系イオン性液体と、有機スズ系触媒の存在下に反応させてジアルキルカーボネートを製造している。しかし、ジメチルカーボネートの最大収率が4.13%と非常に低い問題がある。
【0013】
上述した問題点によって、多様な産業的用途を有するジメチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートをより高い収率で副産物の発生を減少させつつ、親環境的に製造することができる方法が引き続き要請されている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、発明の具体的な実施形態にかかるジアルキルカーボネートの製造方法について説明する。
【0028】
発明の一実施形態によれば、常温イオン性液体と、遷移金属または希土類金属の塩を含む触媒の存在下に、尿素、炭素数1ないし3のアルキルカルバメートまたはこれらの混合物と、炭素数1ないし3の1価アルコールとを反応させる段階を含むジアルキルカーボネートの製造方法が提供される。
【0029】
このような製造方法では、常温イオン性液体を反応媒質として使用し、所定の金属塩形態の触媒を使用して、尿素などと、メタノールなどの1価アルコールとを反応させて、ジメチルカーボネートのようなジアルキルカーボネートを製造する。このように常温イオン性液体を反応媒質として使用することによって、次のような原理でジアルキルカーボネートをより高い収率および反応速度で製造することができる。
【0030】
一般に、アルコールと、尿素またはアルキルカルバメートとを反応させてジアルキルカーボネートを製造する主な反応式は下記反応式1の通りである。
【0031】
<反応式1>
(1)ROH+H
2NCONH
2⇔ROCONH
2+NH
3↑
(2)ROH+ROCONH
2⇔ROCOOR+NH
3↑
【0032】
つまり、尿素およびアルコールが反応すると、アルキルカルバメートが形成され、このようなアルキルカルバメートが再びアルコールと反応してジアルキルカーボネートが製造できる。また、このような各反応で、アンモニアが副産物として生成され得る。したがって、このような反応中に生成されたジアルキルカーボネートとアンモニアを効果的に排出させると、平衡反応が正方向に行われ、これによって、反応速度と収率が向上できる。しかし、このような反応で反応物として使用されるアルコール(例えば、メタノール)は、比較的低い沸騰点を有するため、通常反応温度を維持するためには反応圧力を高める必要があり、このような高い圧力によって、生成されたアンモニアとジメチルカーボネートの溶解度が高くなる。そのため、前記反応式1の平衡定数(Ke)が低くなり得、これは、収率および反応速度の低下をもたらすことがある。しかも、N−アルキルアルキルカルバメート、N,N−ジアルキルアルキルカルバメート、トリアルキルアミン、ジアルキルアミンまたはモノアルキルアミンなどの副反応物の生成が増加し得る。
【0033】
しかし、一実施形態の製造方法では、常温イオン性液体を反応媒質として使用することによって、このような高い圧力による短所を解決することができる。常温イオン性液体は、反応物として使用されるアルコールと反応せず、このようなアルコールを反応温度まで加熱する熱媒体としての役割を果たすことができる。また、前記常温イオン性液体は、水、空気または温度変化に対する安定性に優れ、高温で蒸気圧が低いため、反応段階中の消耗がほとんどなく、反応物である尿素またはアルキルカルバメートをよく溶解させることができる。しかも、このような反応物が高温で分解または昇華されるのを抑制することができる。
【0034】
しかし、本発明者らの韓国登録特許公報第1102537号によれば、前記常温イオン性液体と共に、遷移金属または希土類金属の酸化物形態の触媒を使用し、尿素およびアルコールを反応させてジアルキルカーボネートを製造する方法が知られている。しかし、このような方法によれば、常温イオン性液体および金属酸化物触媒を撹拌する反応段階中に触媒の不活性化が伴い、触媒の活性や寿命が大きく低下することが確認された。したがって、ジアルキルカーボネートの収率が反応時間に応じて減少し、触媒の使用量も大きく増加する問題点が発生することが確認された。
【0035】
本発明者らが研究を重ねた結果、遷移金属または希土類金属の塩形態となる触媒を使用することによって、このような従来技術の問題点が完全に解決できることが確認された。この時、「遷移金属または希土類金属の塩」または「金属塩」とは、このような塩の水和物まで包括するものと理解できる。また、このような「金属塩」は、前記遷移金属または希土類金属の陽イオンが陰イオンと結合した形態のイオン結合塩を称することができる。そして、このような金属塩形態の触媒は、前記常温イオン性液体に均質に溶解して有機金属錯化合物などを形成することができる。
【0036】
以下の実施例によっても裏付けられるように、このような金属塩形態の触媒を使用することによって、反応媒質の常温イオン性液体内で前記触媒が均質に溶解して、活性および寿命が大きく向上でき、長期間優れた収率でジアルキルカーボネートを製造できることが確認された。しかも、このような触媒は、反応媒質の常温イオン性液体内に均質に溶解して、大気圧に準ずる低い圧力下でも、前記反応媒質との相互作用で非常に優れた活性および作用を示すことが明らかになった。したがって、一実施形態の製造方法では、反応圧力の上昇による副反応物の生成増加が実質的に発生せず、ジアルキルカーボネートをより向上した収率および反応速度で効果的に製造することができる。しかも、一実施形態の製造方法によれば、触媒の長期間の使用が可能になり、副産物または副反応物の生成が減少するだけでなく、未反応残留物などの再使用率が高くなることによって、より親環境的にジアルキルカーボネートを製造することができる。
【0037】
以下、一実施形態にかかるジアルキルカーボネートの製造方法を各段階別により詳細に説明する。
【0038】
尿素、炭素数1ないし3のアルキルカルバメートまたはこれらの混合物と、炭素数1ないし3の1価アルコールとを反応させる段階では、前記1価アルコールに溶解させた尿素などの溶液を触媒および常温イオン性液体を含む反応溶液に注入して反応を進行させることができる。この時、前記尿素の代わりに、あるいは尿素と共に、炭素数1ないし3のアルキルカルバメートを1価アルコールに溶解させた後、この溶液を前記反応溶液に注入して反応を進行させることもできる。具体的な一例において、前記反応段階では、常温イオン性液体に金属塩形態の触媒を溶かして撹拌しながら一定の反応温度を維持し、尿素、アルキルカルバメートまたはこれらの混合物が溶解したアルコール溶液を一定の流速で注入して前記反応段階を進行させることができる。
【0039】
この時、前記アルコールおよびアルキルカルバメートは、互いに立体障害(steric hindrance)を起こさず、ジアルキルカーボネートへの反応が行われやすく、生成されたジアルキルカーボネートの沸点が反応温度より低くて、気状で回収できる。
【0040】
また、前記反応段階において、前記アルコールとしては、メタノール、エタノールまたはn−プロピルアルコールなどの炭素数1ないし3の1価アルコールを使用することができ、前記アルキルカルバメートとしては、メチルカルバメート、エチルカルバメートまたはn−プロピルカルバメートなどの炭素数1ないし3のアルキルカルバメートを使用することができる。これら反応物を使用して、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートまたはジ−n−プロピルカーボネートなどのジアルキルカーボネートを製造することができる。
【0041】
そして、前記反応段階は、約130ないし300℃、または約140ないし250℃、または約150ないし200℃の温度で進行することができ、約0.1気圧ないし15気圧の圧力、または約0.3気圧ないし10気圧の圧力、または約0.5気圧ないし5気圧の圧力下で進行することができ、好適には大気圧近傍で進行することができる。このように、一実施形態の製造方法では、常温イオン性液体を反応媒質として使用し、金属塩形態の触媒を使用することによって、大気圧近傍の比較的低い圧力で前記反応段階を進行させることができる。その結果、すでに上述のように、副反応物の生成を減少させ、高い収率および反応速度でジアルキルカーボネートを製造することができる。ただし、このような反応段階が大気圧近傍でのみ進行できるのではなく、必要に応じて、圧力調節装置などを用いて反応圧力を適切に調節して反応段階を進行させることができる。
【0042】
また、前記反応段階において、前記尿素、アルキルカルバメートまたはこれらの混合物と、1価アルコールとは、約1:1ないし1:100、または約1:10ないし1:50、または約1:15ないし1:45、または約1:15ないし1:40のモル比で使用されるとよい。このようなモル比は、各尿素またはアルコールなどの各反応物の使用量の調節によって調節されたり、アルコールを気化させる方法などによって追加的に調節されるとよい。前記モル比が過度に小さくなる場合、ジアルキルカーボネートがきちんと製造されなかったり、熱分解副産物が増加して収率が低下することがある。逆に、前記モル比が過度に大きくなる場合、過剰のアルコールによって気化に必要な熱量が増加して熱効率が低下することがある。
【0043】
一例において、前記尿素、アルキルカルバメートまたはこれらの混合物は、アルコールに最大に溶解して飽和可能な比率で使用されるとよい。例えば、尿素およびメタノールを使用する場合、常温でメタノールに最大に溶解する約18重量%前後の比率で尿素を溶解させて使用することが最も好ましい。しかし、アルコールに対する尿素の溶解度は、温度に応じて変化し得るため、反応温度または収率などを考慮して適切な尿素濃度を選んで使用することができる。
【0044】
一方、上述した反応段階では、常温イオン性液体を反応媒質として使用する。このような常温イオン性液体は、イオンの結合によって構成されたにもかかわらず、常温で液体状態で存在する物質を称することができる。すでに上述のように、このような常温イオン性液体を反応媒質として使用して、反応圧力を高めなくても反応に必要な温度を維持することができ、その結果、ジアルキルカーボネートおよびアンモニアを効果的に連続排出させて、ジアルキルカーボネートの収率および反応速度を向上させることができる。
【0045】
このような常温イオン性液体としては、水素イオン(H
+)を生成可能な陽イオンと、フッ素(Fluorine)を含む疎水性陰イオンとを含むものを使用することができ、具体例として、アルキル基またはヒドロキシアルキル基を有する、4級アンモニウム系陽イオン、イミダゾリウム系陽イオン、N−ヒドロキシアルキルピリジウム系陽イオン、ピラゾリウム系陽イオン、ピロリニウム系陽イオン、4級ホスホニウム系陽イオン、チアゾリウム系陽イオンまたはスルホニウム系陽イオンと、ビス(トリフルオルメチルスルホニル)イミド陰イオン、トリフルオルメタンスルホネート陰イオンまたはトリス(トリフルオルメチルスルホニル)メタニド陰イオンとを含む常温イオン性液体を使用することができる。
【0046】
このような常温イオン性液体を使用して、金属塩形態の触媒と、尿素およびアルキルカルバメートなどとの反応物を効果的に溶解させながら、このような反応物の昇華を抑制することができる。また、触媒との相互作用で反応速度および収率をより向上させることができる。ひいては、前記常温イオン性液体は、反応物中のアルコールと実質的に反応しない疎水性を示しつつ、アルコールを反応温度まで加熱する熱媒体(heating medium)として作用することができる。したがって、適切な常温イオン性液体を使用すると、反応圧力の上昇を実質的に伴わなくても、適切な反応温度を達成することができて、ジアルキルカーボネートの収率および反応速度をより向上させることができる。
【0047】
付加して、前記常温イオン性液体は、基本的に、水と分離が容易な疎水性および不溶性を示すため、触媒の性能が低下したり汚染された時、酸洗浄により、これに溶けている金属塩触媒を除去し、必要に応じて活性炭などで脱色した後、エーテルや蒸留水などで洗浄して再使用することができる。したがって、一実施形態の製造方法では、触媒および常温イオン性液体の反応媒質をより高い比率で再使用することができるため、親環境的にジアルキルカーボネートを製造することができる。
【0048】
一方、上述した常温イオン性液体の最も代表的な例としては、[Choline][NTf
2]((β−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム
+・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド
−;(β−hydroxyethyl)trimethylammonium
+・bis(trifluoromethylsulfonyl)imide))が挙げられる。このような常温イオン性液体は、構造と電磁的な極性などによって独特の触媒特性および溶解性を示すことができる。また、高い温度でも蒸気圧が非常に低くて損失する恐れがなく、空気と水分に露出しても安定した特性を示して取り扱いが容易である。また、環境親和型疎水性および水に対する不溶性液体であり、ジアルキルカーボネートを合成する反応で活性が非常に優れて、上述した反応段階で適切に使用できる。しかも、このような常温イオン性液体は、尿素などが昇華、蒸発または分解されるのを抑制することができ、反応温度で尿素またはアルキルカルバメートなどが液状に適切に維持されるようにすることができるため、これを使用すると、反応物の濃度をより高めて反応効率をより向上させることができる。
【0049】
一方、上述した反応段階では、遷移金属または希土類金属の塩を含む所定の金属塩形態の触媒を使用する。この時、このような「遷移金属または希土類金属の塩」または「金属塩」の範疇には、このような塩の水和物まで包括されるものと理解できることはすでに上述した通りである。前記触媒において、遷移金属の塩は、3族または4族遷移金属の塩になるとよい。より具体例として、前記遷移金属または希土類金属の塩としては、Zr、Ce、LaまたはYなどの塩を使用することができ、前記遷移金属または希土類金属の硝酸塩またはハロゲン塩などを使用することができる。このような触媒のいくつかの具体例としては、触媒は、ZrO(NO
3)
2、Ce(NO
3)
3、CeCl
3、ZrCl
4、La(NO
3)
3またはLaCl
3などや、これらの任意の水和物などが挙げられる。
【0050】
このような3族または4族の遷移金属または希土類金属の塩を触媒として使用することによって、上述した反応段階をより促進させることができ、ジアルキルカーボネートをより高い収率で製造できることが確認された。また、すでに上述した従来技術のように、遷移金属または希土類金属の酸化物形態の触媒を使用する場合、常温イオン性液体および触媒を撹拌する反応段階中に触媒の不活性化が伴い、触媒の活性や寿命が低下することがある。そのため、ジアルキルカーボネートの収率が反応時間に応じて減少して、触媒の使用量が大きく増加し得る。これに対し、一実施形態では、前記常温イオン性液体に均質に溶解して有機金属錯化合物などを形成することができる硝酸塩またはハロゲン塩などの金属塩形態の触媒を使用することによって、触媒の活性および寿命を大きく向上させ、長期間優れた収率でジアルキルカーボネートを製造できることが確認された。
【0051】
また、上述した触媒は、このような触媒:常温イオン性液体の重量比が約1:1ないし1:1000、または約1:3ないし1:500、または約1:5ないし1:200となる量で使用されるとよい。このような含有量で触媒を使用して、上述した反応段階をより効果的に活性化しながらも、反応段階の経済性および親環境的特性を最適化することができる。
【0052】
一方、上述した一実施形態のジアルキルカーボネートの製造方法では、上述のように、常温イオン性液体と、前記触媒の存在下に、尿素、炭素数1ないし3のアルキルカルバメートまたはこれらの混合物と、炭素数1ないし3の1価アルコールとを反応させる1次反応段階を進行させた後、前記1次反応段階の生成物を追加反応させる2次反応段階をさらに進行させることもできる。
【0053】
このような2次反応段階は、上述した1次反応段階の生成物に含まれているイソシアン酸をアルキルカルバメートに転換する反応段階として理解できる。また、2次反応段階では、1次反応段階の生成物に含まれている尿素と、前記アルキルカルバメートなどとを継続して反応させてジアルキルカーボネートを形成することができる。このような2次反応段階の温度および圧力などの条件は1次反応段階に準ずることができ、1次反応段階と同じ反応器または別の反応器で進行することができる。ただし、このような2次反応段階では、前記イソシアン酸の転換反応をより促進するために、後述するZr、Ce、Zn、Ti、PbまたはMgなどの金属酸化物触媒を追加的に加えたり、あるいはこのような触媒が含まれている別の反応器で進行したり、あるいは反応条件が一部調節された別の反応器で進行することができる。このような別の反応器での進行および/または追加的な触媒の付加などによって、前記1次反応段階と、2次反応段階とは互いに区分される。
【0054】
一方、このように反応段階を1次および2次に区分実施することは、従来技術と区分される一実施形態の主な特徴の一つとして考慮される。このような特徴によって一実施形態が優れた作用を示すのは、以下のような理由があると考えられる。
【0055】
下記反応式2に示されているように、1次反応段階の進行過程中に尿素またはアルキルカルバメートの少なくとも一部が熱分解されてイソシアン酸(HNCO、isocyanic acid)が形成できる。
【0056】
<反応式2>
H
2NCONH
2⇔HNCO↑+NH
3↑⇔NH
4+NCO
−→(HNCO)
3
ROCONH
2⇔HNCO↑+ROH↑
HNCO+ROH→ROCONH
2
【0057】
しかし、このようなイソシアン酸は、アンモニアと反応してアンモニウムイソシアネート(NH
4+NCO
−、ammonium isocyanate)を形成することができ、これは、冷却器で固体として析出され、次第にアルコールに溶けない6員環のシアヌル酸アンモニウム(NH
4)
3(NCO)
3、ammonium cyanurate)またはシアヌル酸((HNCO)
3、cyanuric acid)化合物に転換できる。これは、冷却器の通路を塞いで冷却効率を低下させるだけでなく、深刻な場合、冷却器の随時取替の原因になることもある。
【0058】
前記2次反応段階では、このようなイソシアン酸をアルコールと反応させてアルキルカルバメートに転換することができる。また、1次反応段階の生成物に含まれている尿素と、前記アルキルカルバメートなどとを継続して反応させてジアルキルカーボネートを形成させることができる。このような2次反応段階の進行により、前記シアヌル酸アンモニウムまたはシアヌル酸による問題点を最小化することができ、メチルアミンなどの副反応物の生成をさらに減少させることができるだけでなく、ジアルキルカーボネートの収率や、精製効率などをより向上させることができる。
【0059】
一方、上述した2次反応段階は、1次反応段階と同じ反応器で連続進行することもできるが、イソシアン酸などのより効果的な反応および除去のために、上述した1次反応段階は、撹拌反応器内で進行し、前記2次反応段階は、カラム形態の固定層反応器で進行することができる。また、このような固定層反応器の内部は、金属酸化物触媒が含まれるとよく、例えば、金属酸化物触媒が担持されたラシヒリングまたは成形体として充填されるとよい。そして、前記2次反応段階、例えば、イソシアン酸を転換させる反応をより効果的に進行させるために、前記2次反応段階は、Zr、Ce、Zn、Ti、PbおよびMgからなる群より選択された1種以上の金属の酸化物を含む触媒の添加下に進行することができ、このような金属酸化物触媒が反応器の内部に充填できることは上述した通りである。
【0060】
そして、前記1次反応段階が進行する反応器には、例えば、常温イオン性液体を基準として、約0.1〜5.0%V/W・minの速度で尿素、アルキルカルバメートまたはこれらの混合物と、アルコールなどとの反応物が供給されるとよい。ただし、このような反応物の供給速度は、反応器の形態や、反応温度を維持するように反応器に供給される熱量などを考慮して多様に調節されるとよい。
【0061】
一方、上述した一実施形態の製造方法では、上述した反応段階を進行させた後に、このような反応段階の生成物から、ジアルキルカーボネートを含む生成物を、アンモニアを含む副産物と、1価アルコールおよびアルキルカルバメートを含む未反応残留物から分離して最終的に生成物を得る段階をさらに進行させることができる。
図1は、このような分離段階を含んでジアルキルカーボネートを連続製造する方法を概略的に示すブロック図である。
【0062】
図1を参照すれば、すでに上述した1次および2次反応段階を進行させた後に、これら反応段階の生成物から、前記副産物および未反応残留物を分離する段階を進行させることができる。つまり、上述した各反応段階を経ると、最終生成物のジアルキルカーボネートと共に、反応が完了していないアルコールおよびアルキルカルバメートなどを含む未反応残留物と、反応段階中に生成された副産物のアンモニアなどが生成物に含まれる。
【0063】
したがって、このような未反応残留物および副産物などを、前記反応段階の生成物から、蒸留塔を用いた蒸留または膜分離装置などを用いた膜分離などの方法で分離する段階を進行させることによって、ジアルキルカーボネートを高い純度で得ることができる。また、前記生成物から分離されたアルコールおよびアルキルカルバメートなどを含む未反応残留物は、蒸留塔に含まれている再沸器(Reboiler)などを用いて、反応段階に循環(例えば、1次反応段階のための撹拌反応器に還流)させて再使用可能であり、前記アンモニアを含む副産物は除去できる。そして、前記未反応残留物および副産物が除去されたジアルキルカーボネートを含む最終生成物は、高純度で回収および収得できる。このような連続製造工程により、全体的な反応効率をより向上させ、副産物の総発生量をさらに減少させて、環境親和的にジアルキルカーボネートを製造することができる。
【0064】
一方、以上では1次および2次反応段階を進行させた後に、上述した分離段階および/または循環および再使用段階を進行させる場合を例に挙げて説明したが、2次反応段階を省略し、1次反応段階に対応する上述した反応段階の直後に直ちに前記分離段階および/または循環および再使用段階を進行させることもできるのはもちろんである。この場合にも、前記反応段階によって得られた生成物から未反応残留物および副産物を除去して高純度のジアルキルカーボネートを得ることができ、分離された未反応残留物を反応段階(例えば、撹拌反応器)またはこのような撹拌反応器に連結された還流冷却器などに循環させて再使用することができる。
【0065】
また、上述した分離段階と、循環および再使用段階が共に進行して前記ジアルキルカーボネートが連続製造されてもよいが、分離段階だけが進行してジアルキルカーボネートがバッチ(batch)で製造されてもよい。
【0066】
図2には、上述した分離段階および/または循環および再使用段階を含むジアルキルカーボネート製造方法のより具体的な一例が概略的なフローチャートとして示されている。このような
図2を参照すれば、一実施形態の製造方法では、上述した反応段階(例えば、1次および2次反応段階)を進行させた後に、前記反応段階の生成物を第1蒸留塔で1次蒸留して、塔底の未反応残留物を反応段階に循環させ、塔上で副産物を精製して、アンモニア、1価アルコールおよびジアルキルカーボネートを含む1次生成物を形成する段階と、前記1次生成物に残留するアンモニアを脱気および精製して、1価アルコールおよびジアルキルカーボネートを含む2次生成物を形成する段階と、前記2次生成物を第2蒸留塔で2次蒸留して、塔底の未反応残留物を反応段階に循環させ、塔上で1価アルコールおよびジアルキルカーボネートを含む3次生成物を形成する段階と、前記3次生成物を膜分離装置で膜分離して、未反応残留物を追加分離して2次蒸留塔に循環させ、3次生成物より高濃度のジアルキルカーボネートを含む4次生成物を形成する段階と、前記4次生成物を第3蒸留塔で3次蒸留して、塔上の蒸留物を膜分離装置に循環させ、塔底からジアルキルカーボネートを含む最終生成物を回収する段階とを含むことができる。
【0067】
以下、このような連続製造方法のより具体的な一例と、その進行のための製造装置などについて各段階別に説明する。
【0068】
まず、反応段階直後に進行する1次蒸留段階では、上述した反応段階の生成物を1次蒸留塔で蒸留することができる。このような1次蒸留の結果、1次蒸留塔の塔上には、アンモニアを含む副産物と共に、ジアルキルカーボネートを含む1次生成物、例えば、ジアルキルカーボネート/アルコールの混合溶液が生成できる。これより前記副産物の一部を精製および除去すると、前記ジアルキルカーボネート/アルコールの混合溶液が生成され、このような混合溶液中のジアルキルカーボネートの濃度は、約5ないし30重量%になるとよい。また、このような混合溶液中には一部のアンモニアが残留し得る。
【0069】
このように、塔上の生成物から前記アンモニアを含む副産物の一部を精製および除去するために、冷却器を用いることができ、これによって、前記アンモニアなどをガス状に分離および除去することができる。この時、このような冷却器の温度は、例えば、前記アルコールとしてメタノールを使用する場合、約0ないし35℃になるとよい。仮に、冷却器の温度が過度に低くなると、アンモニアと共に蒸気として排出されるアルコールの量を減少させることができるが、アンモニアおよび副産物のメチルアミン類が蒸留物に溶解して、アンモニアの回収および副産物の精製に多大な費用および時間が消耗することがある。逆に、冷却器の温度が過度に高くなると、メタノールの回収率が低下することがある。このような点を考慮して、冷却器の温度は、経済的な面や、アルコールの種類などを考慮して適切に設定することができる。
【0070】
一方、前記第1蒸留塔の塔底には、アルコールおよびアルキルカルバメートを含む未反応残留物が分離され、このような未反応残留物は、反応段階、例えば、1次反応段階のための反応器に循環して再使用できる。この時の第1蒸留塔の還流比は、約2ないし24:1になるとよく、このような還流比でアルコールを還流させることによって、最適のジアルキルカーボネート収率を示すことができる。ただし、前記第1蒸留塔および蒸留物の条件に応じて適切な還流比が変化し得るのはもちろんである。
【0071】
また、前記第1蒸留塔の再沸器(Reboiler)の温度は、前記未反応残留物を還流させるために一定に維持されることが適切であり、前記アルコールなどをより効果的に還流させるために、その沸点に準ずる温度、例えば、メタノールの場合、約65ないし68℃の温度に維持されることが好ましい。
【0072】
一方、上述した1次蒸留段階を進行させた後には、前記1次生成物に残留するアンモニアを脱気および精製して、1価アルコールおよびジアルキルカーボネートを含む2次生成物を形成する。このような段階により、前記1次蒸留段階で一部除去されて残ったアンモニアが実質的に完全に除去できる。このために、前記段階では、二酸化炭素または窒素ガスを用いて、前記1次生成物からアンモニアをストリッピング(stripping)する方法で除去することができ、その他にも、当業者に自明な多様な方法で残留アンモニアを除去できるのはもちろんである。
【0073】
このように残留アンモニアを脱気および精製して、アルコールおよびジアルキルカーボネートを含む2次生成物を形成した後には、これを2次蒸留することができる。このような2次蒸留を進行させると、塔底にはアルコールなどの未反応残留物が生成され、塔上には残りのアルコールおよびジアルキルカーボネートを含む3次生成物が形成できる。このうち、前記アルコールなどの未反応残留物は、上述した反応段階、例えば、1次反応段階のための反応器に循環および再使用可能であり、3次生成物は、以後の段階を通じてより精製できる。
【0074】
このような2次蒸留段階では、前記2次生成物を共沸蒸留させることができる。これによって、2次蒸留塔の塔上に形成される3次生成物は、アルコール/ジアルキルカーボネートの共沸混合物(例えば、ジメチルカーボネート製造工程の場合、大気圧下で30重量%ジメチルカーボネート/70重量%メタノールの共沸混合物)になるとよく、残りのアルコールなどの未反応残留物が塔底に形成されて濃縮できる。このような濃縮アルコールなどは、上述した反応段階に循環および再使用できる。
【0075】
一方、上述のように、第1および第2蒸留塔で生成された未反応残留物は、反応段階、例えば、1次反応段階に循環および再使用できるが、1次反応段階の進行のための反応器に、各反応物と、前記第1および第2蒸留塔で循環した未反応残留物を遅く注入すると、生産性が低下することがある。逆に、これらを過度に速く注入する場合、生産性は高くなるが、アルコールの蒸発熱によって反応温度を調節しにくくなり、未反応アルコールの増加によってジアルキルカーボネートの濃度が低くなることがある。その結果、ジアルキルカーボネートの精製費用、例えば、反応段階後の各蒸留段階などでアルコールの回収費用が増加して経済的な面で好ましくないことがある。このような点を考慮して、前記第1および第2蒸留塔で循環した未反応残留物中のアルコールは、反応物として供給されるアルコールと合わせて、反応物に含まれている尿素、アルキルカルバメートまたはこれらの混合物:アルコールのモル比が、約1:1ないし1:100、または約1:10ないし1:50、または約1:15ないし1:45、または約1:15ないし1:40のモル比となるように、1次反応段階のための反応器に循環および供給されることが適切である。
【0076】
このような2次蒸留段階の進行後には、これより形成された3次生成物を膜分離装置で膜分離して、アルコールなどの未反応残留物を追加分離することができる。このように追加分離されたアルコールなどは、上述した2次蒸留塔に循環して再使用できる。
【0077】
このような膜分離段階により、2次蒸留段階で形成された共沸混合物である3次生成物の共沸点を破壊することができ、これによって、より高濃度のジアルキルカーボネートを含む4次生成物を形成することができる。このような共沸点破壊のために、前記膜分離装置としては、膜蒸留(pervaporation)装置を適切に適用することができる。
【0078】
そして、このような膜分離段階を進行させた後には、前記4次生成物を第3蒸留塔で3次蒸留することができる。このような3次蒸留段階では、共沸によって、塔上に、アルコールなどと、ジアルキルカーボネートの共沸混合物の蒸留物が生成可能であり、このようなアルコールなどの蒸留物は、上述した膜分離装置に循環および再使用できる。また、前記3次蒸留塔の塔底には、ジアルキルカーボネートを含む最終生成物が形成できる。このような最終生成物は、非常に高い純度でジアルキルカーボネートを含むため、これを回収して、高収率、高純度のジアルキルカーボネートを最終的に得ることができる。
【0079】
一方、上述した方法によってジアルキルカーボネート(例えば、ジメチルカーボネート)を連続製造するために用いられる装置は次のように構成できる。
図2および上述した連続製造方法を参照すれば、このような製造装置は、常温イオン性液体と、前記触媒の存在下に、尿素、炭素数1ないし3のアルキルカルバメートまたはこれらの混合物と、炭素数1ないし3の1価アルコールとの1次反応段階が進行する1次反応器と、前記1次反応段階の生成物が追加反応して、1次反応段階の生成物に含まれているイソシアン酸をアルキルカルバメートに転換させるための2次反応器と、前記2次反応器に連結され、上述した1次蒸留段階を進行させるための第1蒸留塔と、前記第1蒸留塔の上部に連結され、上述したアンモニアの脱気および精製段階を進行させるための脱気部と、前記脱気部に連結され、上述した2次蒸留段階を進行させるための第2蒸留塔と、前記第2蒸留塔の上部に連結され、上述した膜分離段階を進行させるための膜分離装置と、前記膜分離装置に連結され、上述した3次蒸留段階を進行させるための第3蒸留塔とを含むことができる。このような製造装置において、前記第1、第2および第3蒸留塔は、常圧蒸留塔になるとよく、前記膜分離装置は、膜蒸留(pervarporation)装置になるとよい。
【0080】
このような製造装置において、第1、第2および第3蒸留塔、脱気部および膜分離装置などで進行する各反応または精製段階に関してはすでに説明したので、これに関する重複説明は省略する。
【0081】
すでに上述のように、このような製造装置では、1次および2次反応段階により、ジアルキルカーボネートが高い収率および反応速度で製造可能であり、以後の各蒸留段階、膜分離段階および脱気段階などにより、高純度のジアルキルカーボネートが効率的に得られる。また、このような各製造過程で、副産物および副反応物の発生が最小化され、未反応残留物の再使用比率が高くなり得るため、ジアルキルカーボネートがより経済的、親環境的に製造できる。
【0082】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳細に説明する。ただし、このような実施例は、発明の例として提示されたに過ぎず、発明の権利範囲がこれによって定められるのではない。
【0083】
<実施例1>
反応システムは、反応器、凝縮器、撹拌器、そして、一定量のアルコールを注入可能な定量ポンプから構成した。凝縮器の温度は5℃に維持し、気化した生成物を液体として確保できるようにした。
【0084】
イオン性液体[Choline][NTf
2]100g、触媒ZrO(NO
3)
22g、尿素7.5gを反応器に入れて撹拌した。30分間の撹拌後に、反応温度である180℃に加熱した後、0.5mL/minの流量でメタノールを注入した。この時、注入されるメタノールの量は60gであった。メタノールの注入が完了すると、凝縮された生成物を定量ポンプによって同じ流量で反応器に再循環した。前記過程は大気圧で行い、生成物は2.5時間ごとに採取してジメチルカーボネートの収率を測定し、12.5時間反応後、前記過程を繰り返した。12.5時間でのジメチルカーボネートの収率は、繰り返し試験回数に応じて46.2、53.9、55.6%と、安定した合成収率を得た。
【0085】
<比較例1>
前記実施例1と同様に実施するが、触媒をZrO(NO
3)
22gの代わりに金属酸化物のZnO2gを使用してジメチルカーボネートを製造した。12.5時間でのジメチルカーボネートの収率は、繰り返し試験回数に応じて40.0、47.2、34.7%と、3番目の繰り返し試験では収率が低下した。これによって、金属酸化物触媒を使用する時、実施例1の場合とは異なり、触媒の活性が低下することが分かり、前記実施例の金属塩触媒に比べて寿命および活性が劣化することが確認された。
【0086】
<実施例2>
前記実施例1と同様に実施するが、触媒をZrO(NO
3)
22gの代わりにCe(NO
3)
31.4gおよびZrO(NO
3)
20.6gを使用してジメチルカーボネートを製造した。3回繰り返し試験後、反応時間12.5時間でのジメチルカーボネートの収率は43.0%であった。
【0087】
<実施例3>
前記実施例1と同様に実施するが、触媒をZrO(NO
3)
22gの代わりにCe(NO
3)
32gを使用してジメチルカーボネートを製造した。3回繰り返し試験後、反応時間12.5時間でのジメチルカーボネートの収率は36.3%であった。
【0088】
<実施例4>
前記実施例1と同様に実施するが、触媒をZrO(NO
3)
22gの代わりにLa(NO
3)
32gを使用してジメチルカーボネートを製造した。3回繰り返し試験後、反応時間12.5時間でのジメチルカーボネートの収率は43.0%であった。
【0089】
<実施例5>
前記実施例1と同様に実施するが、イオン性液体[Choline][NTf
2]を100gより少ない20gで使用して(イオン性液体/触媒の重量比=10)ジメチルカーボネートを製造した。3回繰り返し試験後、反応時間12.5時間でのジメチルカーボネートの収率は48.3%であった。
【0090】
<実施例6>
前記実施例1と同様に実施するが、イオン性液体[Choline][NTf
2]を100gより少ない10gで使用して(イオン性液体/触媒の重量比=5)ジメチルカーボネートを製造した。3回繰り返し試験後、反応時間12.5時間でのジメチルカーボネートの収率は44.3%であった。
【0091】
以上の実施例および比較例において、ジアルキルカーボネートの収率は、各反応時間後、試料を採取して、ガスクロマトグラフィー分析(分析条件:DB−WAX capillaryカラム(0.25mmφx30mx0.25μm)、FID検出器)を行うことによって測定された。生成されたジメチルカーボネートの定量分析は、ヘプタノール(heptanol)を使用して検量線(calibration curve)を作成し、これを分析して計算し、これを下記数式1に適用して収率を計算し、このように測定された各実施例および比較例の収率測定結果は下記表1ないし3にまとめられた通りである。
【0096】
*ジアルキルカーボネートを製造するための連続工程実験装置
以下の実施例などでは、明細書で説明したジアルキルカーボネート連続製造装置を用いてジメチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートを製造した。この時、ジアルキルカーボネート製造装置の1次反応器としてはガラス製撹拌反応器を用い、前記1次反応器は、内部に原料注入用1/16"Φテフロン(登録商標)チューブを含み、原料が常温イオン性液体に十分に浸るようにした。また、メタノールなどのアルコールが反応温度で気化して分散しやすくなるように、4−ブレード(blade)タービン形態の撹拌器および撹拌モータを用い、反応器の温度を調節するために、ヒーティングマントル(heating mantle)および温度調節器を設けた。前記1次反応器の上部には、充填剤としてガラス材質の5mmΦx5mmラシヒリング(Raschig ring)が満たされた固定層反応器(または補助蒸留塔;2次反応器)を設け、温度調節装置も設けた。1次反応器内にある空気を置換するために窒素シリンダ(N
2)を設けて反応器内部の空気を置換できるようにした。1次反応器の内部に尿素/アルコール(メタノール)溶液を供給するために、定量ポンプと供給量を精密に測定するためのデジタル秤を設けた。還流するアルコール(メタノール)が1次反応器に供給されるように連結し、アルコール(メタノール)がテフロン(登録商標)チューブを介して1次反応器内で気化するように設定した。
【0097】
第1蒸留塔は、2つのカラムで設けており、下部蒸留カラム(25mmΦx350mmの真空外皮)と、上部蒸留カラム(12.7mmΦx610mmの真空外皮)とから構成されている。前記上下部カラムの中央部分に、前記2次反応器から生成される反応物と未反応アルコール(メタノール)の蒸気が注入され、ジメチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートが蒸留されるように設けた。前記第1蒸留塔の下部の再沸器(reboiler)は、250ml容量の3口丸底フラスコであり、再沸器で分離されるアルコール(メタノール)/ジアルキルカルバメート(メチルカルバメート)溶液を反応器に還流させるための定量ポンプおよび再沸器の水位調節のための水位調節器をアルコール(メタノール)供給ポンプと連動して設けた。また、アルコール(メタノール)供給量を測定可能なデジタル秤を設け、再沸器の温度を調節可能な温度調節器、および沸騰防止のためのマグネチック撹拌器を設けた。同時に、還流比を調節できるように還流調節器および還流バルブを取り付け、アルコール(メタノール)蒸気漏れと装置内部の詰まり現象を常時点検するために差圧計を設け、凝縮されていないアンモニアを蒸留塔の冷却器の上部から吸収するための吸収瓶と逆流防止のための安全瓶を設けることによって、ジアルキルカーボネート連続製造装置を構成した。
【0098】
<実施例7>:ジメチルカーボネートの連続製造
前記連続工程実験装置を用いて、500mlの反応器に[Choline][NTf
2]常温イオン性液体500gを入れて、触媒のZrO(NO
3)
2・6H
2O10gを溶解させた後、反応温度180℃に到達すると、メタノールに対して尿素の濃度が18重量%となるように、尿素/メタノール溶液を、定量ポンプによって0.5ml/minを反応器中に注入した。また、蒸留装置の再沸器(reboiler)にある未反応メタノールと中間生成物のメチルカルバメートは、ポンプを用いて2.0ml/minの流速で反応器に循環させてジメチルカーボネートを合成した。次に、蒸留装置を用いて、1:12の還流比によって上部凝縮器からジメチルカーボネートとメタノールとの混合蒸留物を得て、実験例2のように分析し、収率と選択度を
図3に示した。
【0099】
<実施例8>:ジメチルカーボネートの連続製造
メタノールにメチルカルバメートを23.8重量%の濃度で溶解させて原料として使用したことを除いては、前記実施例7と同様に行ってジメチルカーボネートを製造した。収率と選択度を実施例7と同様の方法で分析して
図4に示した。
【0100】
<実施例9>:ジエチルカーボネートの製造
前記実施例1のメタノールの代わりにエチルアルコール75mlを使用したことを除いては、前記実施例1と同様に行ってジエチルカーボネートを製造した。
【0101】
<実施例10>:ジ−n−プロピルカーボネートの製造
前記実施例1のメタノールの代わりにn−プロピルアルコール75mlを使用したことを除いては、前記実施例1と同様に行ってジ−n−プロピルカーボネートを製造した。
【0102】
<実験例1>:ジエチルカーボネートおよびジ−n−プロピルカーボネートの収率の分析
前記実施例9および10で製造されたジエチルカーボネートおよびジ−n−プロピルカーボネートの収率を分析するために、反応が2.5時間、6.5時間および10.5時間行われた試料を採取して、ガスクロマトグラフィー分析(分析条件:DB−WAX capillaryカラム(0.25mmφx30mx0.25μm)、FID検出器)を行った。生成されたジエチルカーボネートおよびジ−n−プロピルカーボネートの定量分析は、ヘプタノール(heptanol)を用いて検量線を作成し、これを分析して計算し、これを下記数式1に適用して収率を計算し、その結果を下記表4に示した。
【0105】
表4に示しているように、反応時間が増加するほど収率が増加することが分かり、実施例9の場合、ジエチルカーボネートは最大28.13%の収率を示し、実施例10のジ−n−プロピルカーボネートは最大22.82%の収率を示した。これにより、実施例の製造方法によってジエチルカーボネートおよびジ−n−プロピルカーボネートを高い収率で製造できることが確認された。
【0106】
<実験例2>:原料に応じたジメチルカーボネートの収率および選択度の分析
前記実施例7および8で尿素またはメチルカルバメートを原料として250時間以上連続反応を実施し、製造されたジメチルカーボネートの収率および選択度を分析するために、ガスクロマトグラフィー分析(分析条件:DB−WAX capillaryカラム(0.25mmφx30mx0.25μm)、FID検出器)を行った。1次蒸留で得られたジメチルカーボネートの蒸留物を濃度とGC分析後、ピーク面積比に対する検量線と比較して計算し、これを前記数式1および下記数式2に適用して収率および選択度を計算し、その結果を下記
図3および
図4に示した。
【0108】
図3に示しているように、実施例7で尿素を原料としてジメチルカーボネートを製造した時、選択度は90%を上回り、250時間平均約70%以上の収率を示した。ジメチルカーボネート以外の副産物は、トリメチルアミン、ジメチルアミンなどが生成されたことが分かり、副産物の濃度は、ジメチルカーボネートの濃度に対して最大10%未満で、90%以上の選択度を示した。
【0109】
また、
図4に示しているように、実施例8でメチルカルバメートを原料としてジメチルカーボネートを製造した時、最大収率は約70%を示し、250時間平均約65%の収率を示し、選択度は95%以上を維持した。これにより、原料として尿素またはアルキルカルバメートを用いてジアルキルカーボネートを製造できることを確認した。