【実施例】
【0037】
以下に、実施例及び比較例をあげて更に本発明を説明するが、これらは何れも例示的なものであって本発明の内容を限定するものではない。尚、重合反応においては、溶剤、モノマーについては、十分に脱気・乾燥したものを使用した。
【0038】
<測定法>
(1)単量体単位の組成の決定方法
プロトン核磁気共鳴(
1H−NMR)法によって求めた。
装置:JEOL−ECX400(分解能400MHz)
溶媒:重水素化クロロホルム
リファレンス:TMS又はクロロホルム
温度:20℃
【0039】
定量に必要なシグナルのシフト位置は以下の通りである。シフト位置は、溶媒、温度の測定条件、重合体構造によって移動する場合があるので、その際にはブロック共重合体組成物中に含まれる単量体単位全体について適切な帰属を行う。
【0040】
[定量に用いたシグナル]
(a)4.8〜5.0ppm
ブタジエンビニル結合(=CH2)。ビニル結合による1,2−ビニル基1ユニットあたり2Hを含む。
【0041】
(b)5.0〜5.6ppm
ブタジエンビニル結合による1,2−ビニル基(−CH=)及びブタジエン1,4−結合(主鎖中の2重結合)(−CH=)。ビニル結合による1,2−ビニル基1ユニットあたり1Hと、1,4−結合1ユニットあたり2Hを含む。
【0042】
(c)6.3〜7.3ppm
α−メチルスチレン、スチレン中のベンゼン環H。α−メチルスチレン及びスチレン1ユニットあたり5Hを含む。標準としてクロロホルムを用いた場合、この範囲(7.2ppm)にクロロホルム中のH1つを含む。
【0043】
[定量法]
(a)、(b)、(c)の範囲の積分値をそれぞれI
a、I
b、I
c、クロロホルムの積分値をI
chとした場合、ブタジエンビニル結合量のモル%M
x、ブタジエン1,4−結合のモル%M
y、α−メチルスチレンとスチレンとの総和のモル%M
zは、それぞれ、次の数式によって計算できる。
【数1】
【0044】
[実施例1]
(1)容積50Lの反応容器に150ppmのテトラヒドロフランを含むシクロヘキサン17kgを添加し、α−メチルスチレン5400gを添加した。
(2)次いでn−ブチルリチウムを10質量%含むシクロヘキサン溶液(開始剤)を徐々に添加し、α−メチルスチリルアニオンの発色が観察された時点から、更に50mL添加し40℃まで昇温した。
(3)容器内温を40℃に保ちながらスチレン650gを仕込み速度650g/hで添加した。
(4)内温を40℃に保ちながらスチレン450gを仕込み速度450g/hで添加した。
(5)ブタジエン760gを一括添加した。添加終了後、50℃まで内温を上げ、1時間攪拌した。
(6)エポキシ化大豆油(アデカ社製)5.4gを60mLのシクロヘキサンで希釈した溶液を添加し、30分攪拌した。
(7)メタノール10gを添加し、重合活性末端を失活させて、重合液を得た。
(8)重合液をベント付き二軸押出機に供給し、脱揮してブロック共重合体組成物を得た。
このブロック共重合体組成物を、Tダイを付したフィルム押出成形機を用いシリンダー温度240℃、ダイ温度240℃で、厚さ100μmのフィルムを押し出し、ロールに巻き取った。得られた溶融押出フィルムを、テンター横延伸機を用い、ガラス転移温度+10℃で2.5倍に一軸延伸し、延伸フィルムを得た。
得られたブロック共重合体組成物、溶融押出フィルム及び延伸フィルムの測定結果を表1に示した。
【0045】
[実施例2]
α−メチルスチレンを5500g、実施例1の工程(3)においてスチレン750gを仕込み速度750g/hで添加、実施例1の工程(4)においてスチレン520gを仕込み速度520g/hで添加、ブタジエンを520gとした以外は、実施例1と同様にしてブロック共重合体組成物、溶融押出フィルム及び延伸フィルムを得た。これらの測定結果を表1に示した。
【0046】
[実施例3]
α−メチルスチレンを4800g、実施例1の工程(3)においてスチレン560gを仕込み速度560g/hで添加、実施例1の工程(4)においてスチレン390gを仕込み速度390g/hで添加、ブタジエンを1400gとした以外は、実施例1と同様にしてブロック共重合体組成物、溶融押出フィルム及び延伸フィルムを得た。これらの測定結果を表1に示した。
【0047】
[実施例4]
α−メチルスチレンを5800g、実施例1の工程(3)においてスチレン430gを仕込み速度430g/hで添加、実施例1の工程(4)においてスチレン300gを仕込み速度300g/hで添加、ブタジエンを750gとした以外は、実施例1と同様にしてブロック共重合体組成物、溶融押出フィルム及び延伸フィルムを得た。これらの測定結果を表1に示した。
【0048】
[実施例5]
α−メチルスチレンを5000g、実施例1の工程(3)においてスチレン870gを仕込み速度870g/hで添加、実施例1の工程(4)においてスチレン600gを仕込み速度600g/hで添加、ブタジエンを760gとした以外は、実施例1と同様にしてブロック共重合体組成物、溶融押出フィルム及び延伸フィルムを得た。これらの測定結果を表1に示した。
【0049】
[実施例6]
実施例1の(1)においてn−ブチルリチウムを10質量%含むシクロヘキサン溶液(開始剤)を徐々に添加し、α−メチルスチリルアニオンの発色が観察された時点から、更に72mL添加、エポキシ化大豆油を7.8gとした以外は、実施例1と同様にしてブロック共重合体組成物、溶融押出フィルム及び延伸フィルムを得た。これらの測定結果を表1に示した。
【0050】
[実施例7]
(1)容積50Lの反応容器に150ppmのテトラヒドロフランを含むシクロヘキサン17kg、α−メチルスチレン5400gを添加した。
(2)次いでn−ブチルリチウムを10質量%含むシクロヘキサン溶液(開始剤)を、α−メチルスチリルアニオンの発色が確認できるまで徐々に添加した後、更に25mL添加し40℃まで昇温した。
(3)容器内温を40℃に保ちながらスチレン650gを仕込み速度650g/hで添加した。
(4)ブタジエン760gを一括添加した。添加終了後、50℃まで内温を上げ、1時間攪拌した。内温を40℃に下げた。
(5)内温を40℃に保ちながらスチレン450kgを仕込み速度450g/hで添加した。
(7)重合活性末端をメタノールにより失活させて、重合液を得た。
(8)反応液をベント付き二軸押出機に供給し、脱揮して共重合樹脂を得た。
この樹脂を、Tダイを付したフィルム押出成形機を用いシリンダー温度240℃、ダイ温度240℃で、厚さ100μmのフィルムを押し出し、ロールに巻き取った。得られたフィルムを、テンター横延伸機を用い、ガラス転移温度+10℃で2.5倍に一軸延伸し、延伸された光学フィルムを得た。
得られたブロック共重合体組成物、溶融押出フィルム及び延伸フィルムの測定結果を表1に示した。
【0051】
【表1】
【0052】
[比較例1]
(1)容積50Lの反応容器に150ppmのテトラヒドロフランを含むシクロヘキサン17kg、α−メチルスチレン6100gを添加した。
(2)次いでn−ブチルリチウムを10質量%含むシクロヘキサン溶液(開始剤)を、α−メチルスチリルアニオンの発色が確認できるまで徐々に添加した後、更に26mL添加し40℃まで昇温した。
(3)容器内温を40℃に保ちながらスチレン700gを仕込み速度700g/hで添加した。
(4)内温を40℃に保ちながらスチレン490kgを仕込み速度490g/hで添加した。
(5)重合活性末端をメタノールにより失活させて、重合液を得た。
(6)反応液をベント付き二軸押出機に供給し、脱揮して共重合樹脂を得た。
この樹脂を、Tダイを付したフィルム押出成形機を用いシリンダー温度240℃、ダイ温度240℃で、厚さ100μmのフィルムを押し出し、ロールに巻き取った。得られたフィルムを、テンター横延伸機を用い、ガラス転移温度+10℃で2.5倍に一軸延伸し、延伸された光学フィルムを得た。
得られたブロック共重合体組成物、溶融押出フィルム及び延伸フィルムの測定結果を表2に示した。
【0053】
[比較例2]
α−メチルスチレンを5900g、実施例1の工程(3)においてスチレン690gを仕込み速度690g/hで添加、実施例1の工程(4)においてスチレン480gを仕込み速度480g/hで添加、ブタジエンを250gとした以外は、実施例1と同様にしてブロック共重合体組成物、溶融押出フィルム及び延伸フィルムを得た。これらの測定結果を表2に示した。
【0054】
[比較例3]
実施例1の工程(1)において、テトラヒドロフラン7kg、シクロヘキサン10kg、α−メチルスチレンを5400g添加した以外は、実施例1と同様にしてブロック共重合体組成物、溶融押出フィルム及び延伸フィルムを得た。これらの測定結果を表2に示した。
【0055】
[比較例4]
n−ブチルリチウムを10質量%含むシクロヘキサン溶液(開始剤)を100mL、エポキシ化大豆油を10.8g添加した以外は、実施例1と同様にしてブロック共重合体組成物、溶融押出フィルム及び延伸フィルムを得た。これらの測定結果を表2に示した。
【0056】
[比較例5]
エポキシ化大豆油を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてブロック共重合体組成物、溶融押出フィルム及び延伸フィルムを得た。これらの測定結果を表2に示した。
【0057】
[比較例6]
(1)容積50Lの反応容器に、容器内温を−40℃に保ちながらテトラヒドロフラン7kg、シクロヘキサン10kg、α−メチルスチレン2300g、スチレン500gを添加した。
(2)次いでn−ブチルリチウムを10質量%含むシクロヘキサン溶液(開始剤)を、α−メチルスチリルアニオンの発色が確認できるまで徐々に添加した後、更に60mLを添加し、3時間攪拌した。
(3)40℃に昇温し、ブタジエン740gを一括添加した。添加終了後、50℃まで内温を上げ、1時間攪拌した。
(4)60Lのシクロヘキサンで希釈したエポキシ化大豆油(アデカ社製)7.5g添加し、1時間攪拌した。
(5)重合活性末端をメタノールにより失活させて、重合液を得た。
(6)反応液をベント付き二軸押出機に供給し、脱揮してブロック共重合体組成物を得た。
この樹脂を、Tダイを付したフィルム押出成形機を用いシリンダー温度240℃、ダイ温度240℃で、厚さ100μmのフィルムを押し出し、ロールに巻き取った。得られたフィルムを、テンター横延伸機を用い、ガラス転移温度+10℃で2.5倍に一軸延伸し、延伸フィルムを得た。
得られたブロック共重合体組成物、溶融押出フィルム及び延伸フィルムの測定結果を表2に示した。
【0058】
[比較例7]
α−メチルスチレンを2700g、実施例1の工程(3)においてスチレン310gを仕込み速度310g/hで添加、実施例1の工程(4)においてスチレン210gを仕込み速度210g/hで添加、ブタジエンを1500gとした以外は、実施例1と同様にしてブロック共重合体組成物、溶融押出フィルム及び延伸フィルムを得た。これらの測定結果を表2に示した。
【0059】
【表2】
【0060】
各種評価は下記の方法によった。
(1)柔軟性
柔軟性として溶融押出フィルムの耐折強度の測定を以下の条件下で行い、下記基準によって判断した。折り曲げ回数200回以上を合格とした。
測定条件
測定器:MIT−D FOLDING ENDURANCE TESTER(東洋精機社製)
荷重(張力):500g重
折り曲げ速度:175回/分
折り曲げ角度:左右各45度
折り曲げ装置先端半径:0.38mm
試験片幅:15mm
折り曲げ方向:フィルム押出方向
サンプル点数:5点(折り曲げ回数1000回以上のものは2点)
(2)透明性
ASTM D1003に基づき、ヘーズメーター(日本電色工業社製NDH−1001DP型)を用いてフィルムのヘーズ(単位:%)を測定した。2%以下を合格とした。
(3)外観
溶融押出フィルムについて、画像処理装置(ニレコ社製LUZEX SE)を用いて観測し、下記基準にて良否を判断した。「優」、「良」を合格とした。
「優」:長さ50μm以上のフィルム欠陥が0個/m
2
「良」:長さ50μm以上のフィルム欠陥が1〜4個/m
2
「不可」:長さ50μm以上のフィルム欠陥が5個/m
2以上
ここで、「フィルム欠陥」とは、異物の混入や、未溶融ブツの発生等により、周囲とは不均一になって見える部分を指す。
(4)熱安定性
セイコー電子工業社製TG/DTA 220TGAを用いて、以下の条件で加熱重量減少を測定した。5%重量減少した際の温度が320℃以上のものを合格とした。
フローガス;N2 100ml/分
昇温条件:30℃より400℃まで10℃/分
(5)光弾性複屈折
光弾性複屈折を表す指標である光弾性係数を、溶融押出フィルムに引張応力をかけた状態で位相差測定装置にてリタデーション(単位:nm)を測定することによって求めた。荷重fが加わった状態でのリタデーションをRe(f)、試験片幅をwとすると、光弾性係数Cは
C=dRe(f)/df×w
となるので、試験片に加えた荷重に対するリタデーションの値の傾きを求めることで算出した。位相差測定装置は王子計測社製KOBRA−WRを使用し、応力は、イマダ社製、デジタルフォースゲージZ2S−DPU−50Nによって加えた。光弾性係数の絶対値が5×10
−121/Pa以下のものを合格とした。
(6)位相差発現性
位相差測定装置(王子計測社製KOBRA−WR)を用いて、延伸フィルムのリタデーション(単位:nm)を測定した。リタデーションの絶対値が100nm以上を合格とした。また、位相差顕微鏡で観察することで、配向複屈折の符号は、実施例と比較例中の全てのサンプルについて負であることを確認した。