【文献】
BELYI IOURI F,CONSTRUCTION OF A FUSION PROTEIN CARRYING ANTIGENIC DETERMINANTS OF ENTERIC CLOSTRIDIAL TOXINS,FEMS MICROBIOLOGY LETTERS,ELSEVIER,2003年 8月 1日,P325-329
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
追加の抗原が、肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)、インフルエンザ菌(H.influenzae)、髄膜炎菌(N.meningitidis)、大腸菌(E.coli)、モラクセラ・カタラーリス(M.catarrhalis)、破傷風菌、ジフテリア菌、百日咳菌、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、腸球菌、および黄色ブドウ球菌(S.aureus)からなる1群から選択される細菌に由来する抗原である、請求項24に記載の免疫原性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
ポリペプチド
本発明は、第1の断片および第2の断片を含んでなるポリペプチドに関するものであって、この
(i) 第1の断片はトキシンAの繰り返しドメイン断片である;
(ii) 第2の断片はトキシンBの繰り返しドメイン断片である;
(iii) 第1の断片は第1の近位末端を有する;
(iv) 第2の断片は第2の近位末端を有する;ならびに
この第1の断片と第2の断片は互いに隣接しており、このポリペプチドは、トキシンAまたはトキシンBまたはその両方を中和する抗体を惹起する。
【0020】
ポリペプチドという用語は、アミノ酸の連続した配列を意味する。
【0021】
「トキシンA繰り返しドメイン」という用語は、C. ディフィシル由来トキシンAタンパク質のC末端ドメインを指しており、これは反復配列を含む。このドメインは、菌株VPI10463 (ATCC43255)由来トキシンAのアミノ酸1832−2710、および異なる菌株でそれらと同等なものを指すが、この菌株VPI10463 (ATCC43255)由来のアミノ酸1832−2710の配列は、配列番号1のアミノ酸1832−2710に相当する。
【0022】
「トキシンB繰り返しドメイン」という用語は、C. ディフィシル由来トキシンBタンパク質のC末端ドメインを指す。このドメインは、菌株VPI10463 (ATCC43255)由来のアミノ酸1834−2366、および異なる菌株での同等なものを指すが、この菌株VPI10463 (ATCC43255)由来のアミノ酸1834−2366の配列は、配列番号2のアミノ酸1834−2366に相当する。
【0023】
C. ディフィシルのトキシンAおよびBは、保存されたタンパク質であるが、その配列は、菌株間で少し異なっており、その上、異なる菌株のトキシンAおよびBのアミノ酸配列は、アミノ酸の数が異なる可能性がある。
【0024】
したがって、本発明のトキシンA繰り返しドメインおよび/またはトキシンB繰り返しドメインという用語は、配列番号1のアミノ酸1832−2710に対して90%、95%、98%、99%、もしくは100%の配列同一性を有する変異体、または配列番号2のアミノ酸1834-2366に対して90%、95%、98%、99%、もしくは100%の配列同一性を有する変異体である配列を意味する。ある実施形態において、「変異体」は、保存的なアミノ酸置換によって、基準のポリペプチドとは異なるものとなっているポリペプチドであり、これによってある残基が同じ物理化学的性質を有する別の残基で置き換えられている。典型的には、このような置換は、Ala、Val、LeuおよびIleの間で;SerおよびThrの間で;酸性残基AspおよびGluの間で;AsnおよびGlnの間で:ならびに塩基性残基LysおよびArgの間で;または芳香族残基PheおよびTyrの間で起こる。ある実施形態において、「断片」は、ポリペプチドの少なくとも250アミノ酸の連続部分を含有する、ポリペプチドである。
【0025】
さらに、アミノ酸ナンバリングは、ある菌株由来のトキシンA(またはトキシンB)と別の菌株由来のトキシンA(またはトキシンB)との間で異なることがある。この理由により、「異なる菌株における同等なもの」という用語は、基準となる菌株(たとえばC. ディフィシル VPI10463)のアミノ酸に相当するが、異なる菌株由来の毒素中に見いだされ、したがって異なる番号付けがなされる可能性のある、アミノ酸を意味する。「同等な」アミノ酸の領域は、異なる菌株に由来する毒素の、配列のアラインメントを行うことによって、決定することができる。全体を通して与えられるアミノ酸番号は、菌株VPI10463の番号を指している。
【0026】
ポリペプチドまたはタンパク質の「断片」という用語は、そのポリペプチドまたはタンパク質からの少なくとも100、200、230、250、300、350、380、400、450、480、500、530、550、580、または600アミノ酸の連続した部分を指す。「第1の断片」という用語は、トキシンA繰り返しドメインの少なくとも100、250、300、350、380、400、450、480、500、530、550、580、または600アミノ酸の連続した部分を指す。「第2の断片」という用語は、トキシンB繰り返しドメインの少なくとも100、200、230、250、280、300、350、400、450、または500アミノ酸の連続した部分を指す。
【0027】
「第1の近位末端」という用語は、第1の断片(ToxA断片)の末端であって、第2の断片(ToxB断片)に共有結合しているか、または第1および第2の断片の間のリンカー配列に共有結合しており、一次構造で第2の断片に最も近い前記末端を指す。「第2の近位末端」という用語は、第2の断片の末端であって、第1の断片(ToxA断片)に共有結合しているか、または第1および第2の断片の間のリンカー配列に共有結合しており、一次構造で第1の断片に最も近い前記末端を指す。
【0028】
ポリペプチドは、前駆体もしくは融合タンパク質などの、もっと大きなタンパク質の一部であってもよい。複数のヒスチジン残基などの、精製に役立つ配列を含有する追加のアミノ酸配列、または組換え体作製中の安定性のための追加の配列を含んでいることは、多くの場合好ましい。さらに、最終的な分子の免疫原としての能力を高めるために、外来ポリペプチドまたは脂質テールまたはポリヌクレオチド配列を追加することも考慮される。
【0029】
断片は、第1の断片のN末端が第2の断片のC末端に隣接するように、あるいはまた第1の断片のC末端が第2の断片のN末端に隣接するように、または第1の断片のC末端が第2の断片のC末端に隣接するように、または第1の断片のN末端が第2の断片のN末端に隣接するように、配置することができる。
【0030】
「隣接する」という用語は、一次構造において20個以下、15個以下、10個以下、8個以下、5個以下、2個以下、1個以下、または0個のアミノ酸で隔てられていることを意味する。
【0031】
本発明のポリペプチドは、トキシンAまたはトキシンBまたはその両方を中和する抗体を惹起する。ある実施形態において、ポリペプチドはトキシンAを中和する抗体を惹起する。他の実施形態において、ポリペプチドはトキシンBを中和する抗体を惹起する。他の実施形態において、ポリペプチドはトキシンAおよびトキシンBを中和する抗体を惹起する。
【0032】
ポリペプチドが毒素に対する抗体を惹起するかどうかは、そのポリペプチドを含有する免疫原性組成物でマウスを免疫化し、血清を採取して、血清の抗毒素力価をELISAで分析することによって、評価することができる。血清は、免疫化されていないマウスから得られる基準サンプルと比較すべきである。この方法の実例は、実施例6に見いだすことができる。本発明のポリペプチドは、そのポリペプチドに対する血清が、基準サンプルを10%、20%、30%、50%、70%、80%、90%、または100%を超える高いELISAの計測値を与えるならば、トキシンAを中和する抗体を惹起している。
【0033】
他の実施形態において。本発明のポリペプチドは、C.ディフィシル菌株に対する、哺乳類宿主の保護的免疫反応を惹起する。ある実施形態において、哺乳類宿主は、マウス、ウサギ、モルモット、非ヒト霊長類、サル、およびヒトからなる一群から選択される。ある実施形態において、哺乳類宿主はマウスである。他の実施形態において、哺乳類宿主はヒトである。
【0034】
ポリペプチドが哺乳類宿主においてC.ディフィシル菌株に対する保護的免疫反応を惹起するかどうかは、チャレンジアッセイで判定することができる。こうしたアッセイでは、哺乳類宿主はポリペプチドによるワクチン接種を受けてから、C.ディフィシルに暴露することで攻撃を受けるが、攻撃後にその哺乳動物が生存する期間を、ポリペプチドで免疫化されていない対照哺乳動物が生存する期間と比較する。ポリペプチドは、そのポリペプチドで免疫された哺乳動物が、免疫化を受けなかった対照哺乳動物と比べて、C.ディフィシルによる攻撃後に、少なくとも10%、20%、30%、50%、70%、80%、90%、または100%長く生存すれば、保護的免疫反応を惹起している。
【0035】
トキシンAおよびBのC末端ドメインの天然構造は、伸ばされたβソレノイド様構造からなる。この構造は、Ho et al (PNAS 102:18373-18378 (2005))で明らかなように、基本的にβシート構造からなり、少しのαヘリックス構造を伴う。存在する二次構造は、円偏光二色性によって明らかにすることができる。たとえば、遠紫外領域(190-250nm)におけるCDスペクトルの形状および大きさを測定し、その結果を既知の構造と比較する。これは、たとえば下記の実施例5に示すように、Jasco J-720分光偏光計にて1nmの分解能および帯域幅で、178から250nmまで0.01cmの光路を用いて、実施することができる。
【0036】
ある実施形態において、第1の断片は、25%、23%、20%、18%、15%、10%、または7%未満のαヘリックス二次構造を含有する。ある実施形態において、第2の断片は、28%、25%、23%、20%、18%、15%、10%、または7%未満のαヘリックス二次構造を含有する。他の実施形態において、第1の断片および第2の断片はどちらも、28%、25%、23%、20%、18%、15%、10%、または7%未満のαヘリックス二次構造を含有する。
【0037】
ある実施形態において、第1の断片は、20%、25%、28%、30%、33%、35%、38%、40%、または42%を越えるβシート構造を含有する。ある実施形態において、第2の断片は、20%、25%、28%、30%、33%、35%、38%、40%、または42%を越えるβシート構造を含有する。他の実施形態において、第1の断片および第2の断片はいずれも、20%、25%、28%、30%、33%、35%、38%、40%、または42%を越えるβシート構造を含有する。
【0038】
図2は、ToxAおよびToxBのC末端ドメインの構成を表す。トキシンAのC末端ドメインは、8個のリピート部分(リピート部分I、リピート部分II、リピート部分III、リピート部分IV、リピート部分V、リピート部分VI、リピート部分VII、およびリピート部分VIIIと称する)からなるが、これらのリピート部分は、さらに、
図2で白抜き四角として表されるショートリピート(SR)、および
図2で黒四角として表されるロングリピート(LR)に分けられる(ロングリピートを持たないToxAリピート部分VIIIを除いて)。ロングリピートはそれぞれ、他のロングリピートと構造および配列類似性を有する。同様に、ショートリピートは、互いに配列および構造上の類似性を有する。トキシンBのC末端ドメインは、SRおよびLRにさらに細分化される5個のリピート部分からなる。リピート部分はそれぞれ、1個のLR、および2から5個までのSRを含有する(ロングリピートのないToxBリピート部分Vを除いて)。本明細書の上で、「リピート部分」という表現は、ToxAの8個のリピート部分(I、II、III、IV、V、VI、VII、およびVIIIと称する)の1つ、またはToxBの5個のリピート部分(I、II、III、IV、またはVと称する)の1つを指す。本明細書で使用される「第1のリピート部分」という表現は、トキシンA繰り返しドメイン由来のリピート部分(またはリピート部分の一部)を指す。「第2のリピート部分」という表現は、トキシンB繰り返しドメイン由来のリピート部分(またはリピート部分の一部)を指す。本明細書の上で、「ロングリピート」という用語は、
図2で黒い四角として表されるLRドメインの1つを指す。本明細書上、「ショートリピート」という用語は、
図2で白抜き四角として表されるSRドメインの1つを指す。
【0039】
したがって、たとえば、ToxAのリピート部分Iは、SRを3個、およびLRを1個含有しており、これらはそれぞれ、ToxAの1番目のSRI、ToxAの2番目のSRI、ToxAの3番目のSRI、およびToxAのLRIと称することができる。
【0040】
第1の近位末端は、第1の断片がそのリピート部分の範囲内にあるアミノ酸で終わっている場合、「リピート部分」の中にあるとみなされる(すなわち、第1の近位末端は、リピート部分の配列の一部だけを含有する)。同様に、第2の近位末端は、第2の断片がそのリピート部分の範囲内にあるアミノ酸で終わっている場合、「リピート部分」の中にあるとみなされる。たとえば、第1の近位末端は、第1の断片がVPI10463のアミノ酸1832-1924(両端を含む)のいずれか1つ、または別の菌株の同等物で終わっているならば、「ToxAのリピート部分I」の中にある。第1の近位末端は、第1の断片がショートリピート-ロングリピート-ショートリピート部分の範囲内に含まれないアミノ酸で終わっている場合、ショートリピート-ロングリピート-ショートリピート部分の範囲内に含まれない。
【0041】
各ドメインのアミノ酸位置は、菌株VPI10463(ATCC43255)由来のトキシンAおよびトキシンBについて定義した。これらの位置は次の通りである。
【表1】
【0042】
このため、「リピート部分」という用語は、トキシンA(配列番号1)のアミノ酸1832-1924、1925-2058、2059-2192、2193-2306、2307-2440、2441-2553、2554-2644、もしくは2645-2710、またはトキシンB(配列番号2)のアミノ酸1834-1926、1927-2057、2058-2189、2190-2323、もしくは2324-2366、またはC.ディフィシルの異なる菌株におけるそれらの同等物を指すといえる。
【0043】
したがって、「ショートリピート」という用語は、トキシンA(配列番号1)のアミノ酸1832-1852、1853-1873、1874-1893、1925-1944、1945-1965、1966-1986、1987-2007、2008-2027、2059-2078、2079-2099、2100-2120、2121-2141、2142-2161、2193-2212、2213-2233、2234-2253、2254-2275、2307-2326、2327-2347、2348-2368、2369-2389、2390-2409、2441-2460、2461-2481、2482-2502、2503-2522、2554-2573、2574-2594、2595-2613、2645-2664、2665-2686、もしくは2687-2710、またはトキシンB(配列番号2)のアミノ酸1834-1854、1855-1876、1877-1896、1927-1946、1947-1967、1968-1987、1988-2007、2008-2027、2058-2078、2079-2099、2100-2119、2120-2139、2140-2159、2190-2212、2213-2233、2234-2253、2254-2273、2274-2293、2324-2343、もしくは2344-2366、またはC.ディフィシルの異なる菌株におけるそれらの同等物を指すといえる。
【0044】
同様に、「ロングリピート」という用語は、トキシンA(配列番号1)のアミノ酸1894-1924、2028-2058、2162-2192、2276-2306、2410-2440、2523-2553、もしくは2614-2644、またはトキシンB(配列番号2)のアミノ酸1897-1926、2028-2057、2160-2189、もしくは2294-2323、またはC.ディフィシルの異なる菌株におけるそれらの同等物を指すといえる。
【0045】
同様に、「ショートリピート-ロングリピート-ショートリピート部分」という用語は、トキシンA(配列番号1)のアミノ酸1874-1944、2008-2078、2142-2212、2254-2326、2390-2460、2503-2573、もしくは2595-2664、またはトキシンB(配列番号2)のアミノ酸1877-1946、2008-2078、2140-2212、もしくは2274-2343、またはC.ディフィシルの異なる菌株におけるそれらの同等物を指すといえる。「ショートリピート-ロングリピート-ショートリピート部分を破壊しない(中断させない)」という表現は、近位末端が、ショートリピート-ロングリピート-ショートリピート部分を破壊しない(中断させない)領域内にあることを意味しており、概して、このことは、近位末端が、ロングリピート内にも、ショートリピート-ロングリピート-ショートリピート部分を構成するショートリピート内にも存在しないことを意味するが、ただし、近位末端は、そのショートリピートの、ロングリピートから順繰りにもっとも遠く離れたアミノ酸1、2、3、4、5、または6個の領域内にあってもよい。ある実施形態において、「ショートリピート-ロングリピート-ショートリピート部分を破壊しない(中断させない)」という表現は、近位末端が、ショートリピート-ロングリピート-ショートリピート部分の範囲内にないことを意味する。
【0046】
ある実施形態において、第1の近位末端はショートリピート内にある。ある実施形態において、第2の近位末端はショートリピート内にある。ある実施形態において、第1の近位末端および第2の近位末端は、ショートリピート内にある。ある実施形態において、第1の近位末端はショートリピート-ロングリピート-ショートリピート部分を破壊しない。ある実施形態において、第2の近位末端は、ショートリピート-ロングリピート-ショートリピート部分を破壊しない。ある実施形態において、第1の近位末端および第2の近位末端は、ショートリピート-ロングリピート-ショートリピート部分を破壊しない。
【0047】
ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンA(配列番号1)のアミノ酸1878-1940、2146-2208、2012-2074、2258-2322、2394-2456、2507-2569、2599-2660、もしくは2593-2660、またはC.ディフィシルの異なる菌株におけるそれらと同等なアミノ酸の範囲内に含まれない。もう1つの実施形態において、第2の近位末端は、トキシンB(配列番号2)のアミノ酸1881-1942、2012-2074、2144-2208、もしくは2278-2339、またはC.ディフィシルの異なる菌株におけるそれらと同等なアミノ酸の範囲内に含まれない。さらに他の実施形態において、第1の近位末端は、トキシンA(配列番号1)のアミノ酸1878-1940、2146-2208、2012-2074、2258-2322、2394-2456、2507-2569、2599-2660、もしくは2593-2660、またはC.ディフィシルの異なる菌株におけるそれらと同等なアミノ酸の範囲内に含まれず、第2の近位末端も、トキシンB(配列番号2)のアミノ酸1881-1942、2012-2074、2144-2208、もしくは2278-2339、またはC.ディフィシルの異なる菌株におけるそれらと同等なアミノ酸の範囲内に含まれない。
【0048】
ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分V(配列番号1のアミノ酸2307-2440、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)、VI(配列番号1のアミノ酸2441-2553、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)、VII(配列番号1のアミノ酸2554-2644、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)、またはVIII(配列番号1のアミノ酸2645-2710、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。他の実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VII(配列番号1のアミノ酸2554-2644、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。他の実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIII(配列番号1のアミノ酸2645-2710、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。
【0049】
ある実施形態において、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分I(配列番号2のアミノ酸1834-1926、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)、II(配列番号2のアミノ酸1927-2057、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)、またはIII(配列番号2のアミノ酸2058-2189、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。他の実施形態において、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分II(配列番号2のアミノ酸1927-2057、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。他の実施形態において、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分I(配列番号2のアミノ酸1834-1926、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。
【0050】
ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIII(配列番号1のアミノ酸2645-2710、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分I(配列番号2のアミノ酸1834-1926、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。他の実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIII(配列番号1のアミノ酸2645-2710、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分II(配列番号2のアミノ酸1927-2057、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。他の実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VII(配列番号1のアミノ酸2554-2644、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分I(配列番号2のアミノ酸1834-1926、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。他の実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VII(配列番号1のアミノ酸2554-2644、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分II(配列番号2のアミノ酸1927-2057、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。他の実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VI(配列番号1のアミノ酸2441-2553、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分I(配列番号2のアミノ酸1834-1926、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。他の実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VI(配列番号1のアミノ酸2441-2553、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分II(配列番号2のアミノ酸1927-2057、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。他の実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分V(配列番号1のアミノ酸2307-2440、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分I(配列番号2のアミノ酸1834-1926、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。他の実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分V(配列番号1のアミノ酸2307-2440、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分II(配列番号2のアミノ酸1927-2057、もしくは異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。
【0051】
ある実施形態において、第1の近位末端は、配列番号1のアミノ酸2690-2710、もしくは2695-2710、もしくは2700-2710、または異なる菌株のそれらと同等の部分の範囲内にある。他の実施形態において、他の実施形態において、第1の近位末端は、配列番号1のアミノ酸2670-2700、もしくは2675-2695、もしくは2680-2690、または異なる菌株のそれらと同等の部分の範囲内にある。ある実施形態において、第2の近位末端は、トキシンBのアミノ酸1860-1878、または異なる菌株のそれらと同等の部分の範囲内にある。ある実施形態において、第2の近位末端は、配列番号2のアミノ酸1950-1980、1955-1975、もしくは1960-1970、または異なる菌株のそれらと同等の部分の範囲内にある。他の実施形態において、第2の近位末端は、配列番号2のアミノ酸1978-2008、1983-2003、もしくは1988-1998、または異なる菌株のそれらと同等の部分の範囲内にある。他の実施形態において、第2の近位末端は、配列番号2のアミノ酸1860-1878、1854-1876、1857-1887、1862-1882、もしくは1867-1877、または異なる菌株のそれらと同等の部分の範囲内にある。
【0052】
ある実施形態において、第1の断片は、完全なトキシンA繰り返しドメイン(アミノ酸1832−2710)からなる。ある実施形態において、第2の断片は、完全なトキシンB繰り返しドメイン(アミノ酸1833-2366)からなる。
【0053】
ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIIIのショートリピート3(配列番号1のアミノ酸2687-2710、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分IIのショートリピート4(配列番号2のアミノ酸1988-2007、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIIIのショートリピート3(配列番号1のアミノ酸2687-2710、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分IIのショートリピート3(配列番号2のアミノ酸1968-1987、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIIIのショートリピート3(配列番号1のアミノ酸2687-2710、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分IIのショートリピート2(配列番号2のアミノ酸1947-1967、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIIIのショートリピート3(配列番号1のアミノ酸2687-2710、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分Iのショートリピート3(配列番号2のアミノ酸1877-1896、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIIIのショートリピート3(配列番号1のアミノ酸2687-2710、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分Iのショートリピート2(配列番号2のアミノ酸1855-1876、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIIIのショートリピート3(配列番号1のアミノ酸2687-2710、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分Iのショートリピート1(配列番号2のアミノ酸1834-1854、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIIIのショートリピート2(配列番号1のアミノ酸2665-2686、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分IIのショートリピート4(配列番号2のアミノ酸1988-2007、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIIIのショートリピート2(配列番号1のアミノ酸2665-2686、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分IIのショートリピート3(配列番号2のアミノ酸1968-1987、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIIIのショートリピート2(配列番号1のアミノ酸2665-2686、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分IIのショートリピート2(配列番号2のアミノ酸1947-1967、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIIIのショートリピート2(配列番号1のアミノ酸2665-2686、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分Iのショートリピート3(トキシンBのアミノ酸1877-1896、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIIIのショートリピート2(配列番号1のアミノ酸2665-2686、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分Iのショートリピート2(配列番号2のアミノ酸1855-1876、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIIIのショートリピート2(配列番号1のアミノ酸2665-2686、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分Iのショートリピート1(配列番号2のアミノ酸1834-1854、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIIのショートリピート2(配列番号1のアミノ酸2574-2594、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分IIのショートリピート4(配列番号2のアミノ酸1988-2007、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIIのショートリピート2(配列番号1のアミノ酸2574-2594、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分IIのショートリピート3(配列番号2のアミノ酸1968-1987、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIIのショートリピート2(配列番号1のアミノ酸2574-2594、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分IIのショートリピート2(配列番号2のアミノ酸1947-1967、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIIのショートリピート2(配列番号1のアミノ酸2574-2594、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分Iのショートリピート2(配列番号2のアミノ酸1855-1876、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIIのショートリピート2(配列番号1のアミノ酸2574-2594、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分Iのショートリピート1(配列番号2のアミノ酸1834-1854、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIのショートリピート3(配列番号1のアミノ酸2482-2502、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分IIのショートリピート4(配列番号2のアミノ酸1988-2007、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIのショートリピート3(配列番号1のアミノ酸2482-2502、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分IIのショートリピート3(配列番号2のアミノ酸1968-1987、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIのショートリピート3(配列番号1のアミノ酸2482-2502、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分IIのショートリピート2(配列番号2のアミノ酸1947-1967、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIのショートリピート3(配列番号1のアミノ酸2482-2502、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分Iのショートリピート2(配列番号2のアミノ酸1855-1876、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIのショートリピート3(配列番号1のアミノ酸2482-2502、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分Iのショートリピート1(配列番号2のアミノ酸1834-1854、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIのショートリピート2(配列番号1のアミノ酸2461-2481、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分IIのショートリピート4(配列番号2のアミノ酸1988-2007、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIのショートリピート2(配列番号1のアミノ酸2461-2481、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分IIのショートリピート3(配列番号2のアミノ酸1968-1987、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIのショートリピート2(配列番号1のアミノ酸2461-2481、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分IIのショートリピート2(配列番号2のアミノ酸1947-1967、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIのショートリピート2(配列番号1のアミノ酸2461-2481、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分Iのショートリピート2(配列番号2のアミノ酸1855-1876、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、トキシンAのリピート部分VIのショートリピート2(配列番号1のアミノ酸2461-2481、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にあり、第2の近位末端は、トキシンBのリピート部分Iのショートリピート1(配列番号2のアミノ酸1834-1854、または異なる菌株のそれらと同等の部分)の範囲内にある。
【0054】
ある実施形態において、第1の近位末端は、配列番号1のアミノ酸2690-2710、もしくは2695-2710、もしくは2700-2710、または異なる菌株のそれらと同等の部分の範囲内にあり、第2の近位末端は、配列番号2のアミノ酸1950-1980、1955-1975、もしくは1960-1970、または異なる菌株のそれらと同等の部分の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、配列番号1のアミノ酸2690-2710、もしくは2695-2710、もしくは2700-2710、または異なる菌株のそれらと同等の部分の範囲内にあり、第2の近位末端は、配列番号2のアミノ酸1978-2008、1983-2003、もしくは1988-1998、または異なる菌株のそれらと同等の部分の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、配列番号1のアミノ酸2690-2710、もしくは2695-2710、もしくは2700-2710、または異なる菌株のそれらと同等の部分の範囲内にあり、第2の近位末端は、配列番号2のアミノ酸1857-1887、1862-1882、もしくは1867-1877、または異なる菌株のそれらと同等の部分の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、配列番号1のアミノ酸2670-2700、もしくは2675-2695、もしくは2680-2690、または異なる菌株のそれらと同等の部分の範囲内にあり、第2の近位末端は、配列番号2のアミノ酸1950-1980、1955-1975、もしくは1960-1970、または異なる菌株のそれらと同等の部分の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、配列番号1のアミノ酸2670-2700、もしくは2675-2695、もしくは2680-2690、または異なる菌株のそれらと同等の部分の範囲内にあり、第2の近位末端は、配列番号2のアミノ酸1978-2008、1983-2003、もしくは1988-1998、または異なる菌株のそれらと同等の部分の範囲内にある。ある実施形態において、第1の近位末端は、配列番号1のアミノ酸2670-2700、もしくは2675-2695、もしくは2680-2690、または異なる菌株のそれらと同等の部分の範囲内にあり、第2の近位末端は、配列番号2のアミノ酸1857-1887、1862-1882、1860-1878、もしくは1867-1877、または異なる菌株のそれらと同等の部分の範囲内にある。
【0055】
ある実施形態において、第1の断片は、少なくとも100、200、300、400、または450個のアミノ酸を含んでなる。ある実施形態において、第2の断片は、少なくとも100、200、300、または400個のアミノ酸を含んでなる。
【0056】
ある実施形態において、ポリペプチドはさらにリンカーを含んでなる。このリンカーは、第1の近位末端と第2の近位末端との間にあってもよいが、あるいは、第1の断片および/または第2の断片の遠位末端を他のアミノ酸配列に連結していてもよい。
【0057】
ペプチドリンカー配列は、第1の断片と第2の断片を隔てるために用いることができる。このようなペプチドリンカー配列は、当技術分野で周知の標準的な方法を用いて融合タンパク質に組み入れられる。適当なペプチドリンカー配列は、次の要因に基づいて選択することができる:(1) フレキシブルな伸びきったコンフォメーションをとることができること;(2) 第1の断片および/または第2の断片上の機能性エピトープと相互作用しうる二次構造をとることができないこと;ならびに(3) ToxAおよび/またはToxBの機能性エピトープと反応する可能性のある疎水性もしくは荷電残基がないこと。ペプチドリンカー配列は、Gly、Asn、およびSer残基を含有することができる。他の中性に近いアミノ酸、ThrおよびAlaなどもリンカー配列に使用することができる。リンカーとして有効に使用することができるアミノ酸配列には、Maratea et al., Gene 40:39-46 (1985); Murphy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:8258-8262 (1986); U.S. Patent No. 4,935,233、およびU.S. Patent No. 4,751,180に記載のものが含まれる。
【0058】
ある実施形態において、リンカーは1-19、1-15、1-10、1-5、1-2、5-20、5-15、5-15、10-20、または10-15個までのアミノ酸を含んでなる。ある実施形態において、リンカーは、グリシンリンカーであって、リンカーは、多数(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、18、または19個)の連続したグリシン残基を含んでいてもよく、あるいはまた、リンカーは、いくつかのグリシン残基およびいくつかの他のアミノ酸、たとえばアラニンなどを含んでいてもよい。他の実施形態において、リンカーは1つのグリシン残基を含有する。
【0059】
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、大きな融合タンパク質の一部である。融合タンパク質は、他のタンパク質抗原の免疫原性部分をコードするアミノ酸を追加して含有することができる。たとえば、融合タンパク質は、肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)、インフルエンザ菌(H.influenzae)、髄膜炎菌(N.meningitidis)、大腸菌(E.coli)、モラクセラ・カタラーリス(M.catarrhalis)、破傷風菌(C.tetani)、ジフテリア菌(C.diphtheriae)、百日咳菌(B.pertussis)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、腸球菌、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)からなる一群から選択される細菌から得られ、または導き出されるタンパク質抗原の免疫原性部分を含有することができる。この場合、リンカーは第1の断片もしくは第2の断片と、他のタンパク質抗原の免疫原性部分との間にあってもよい。
【0060】
「その免疫原性部分」または「免疫原性断片」という用語は、その断片が、細胞傷害性Tリンパ球、ヘルパーTリンパ球、またはB細胞によって認識されるエピトープを含んでいるような、ポリペプチドの断片を指す。当然のごとく、免疫原性部分は、基準配列のアミノ酸の少なくとも30%、適切には少なくとも50%、特に少なくとも75%、そして中でも特に少なくとも90%(たとえば95%または98%)を含有する。免疫原性部分は、当然のごとく、基準配列のエピトープ領域のすべてを含有する。
【0061】
ある実施形態において、ポリペプチドは、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号21、配列番号23、配列番号25、または配列番号27の免疫原性断片を含有する。ある実施形態において、ポリペプチドは、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号21、配列番号23、配列番号25、または配列番号27のうち、少なくとも500、550、600、650、700、750、780、800、830、850、880、900、920、または950アミノ酸の免疫原性断片を含有する。他の実施形態において、ポリペプチドは、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号21、配列番号23、配列番号25、または配列番号27の変異体を含み、さらに他の実施形態において、ポリペプチドは、配列番号3 - 配列番号7に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する変異体を含んでなる。
【0062】
ある実施形態において、ポリペプチドは、トキシンAからの450、475、500、525、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、または850個を越えるアミノ酸を含んでなる。ある実施形態において、ポリペプチドは、トキシンAからの850、825、800、775、750、725、700、675、650、625、または600個未満のアミノ酸を含んでなる。ある実施形態において、ポリペプチドは、トキシンBからの350、375、400、425、450、475、500、または525個を越えるアミノ酸を含んでなる。ある実施形態において、ポリペプチドは、トキシンBからの525、500、475、または450個未満のアミノ酸を含んでなる。
【0063】
「同一性」という用語は、当技術分野で知られており、場合によって、配列を比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド配列、または2つ以上のポリヌクレオチド配列の間の関係性である。当技術分野において、「同一性」は、場合によって、一列に並んだポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の一致によって決定される、そうした配列間の配列関連性の程度も意味する。「同一性」は、既知の方法によって容易に計算することが可能であり、その方法にはComputational Molecular Biology, Lesk, A.M.編、Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W.編、Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M.およびGriffin, H.G.編、Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heine, G., Academic Press, 1987; およびSequence Analysis Primer, Gribskov, M.およびDevereux, J.編、M Stockton Press, New York, 1991; ならびにCarillo, H.およびLipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073 (1988)に記載のものがあるがそれらに限定されない。同一性を決定する方法は、テストする配列間で最大の一致を与えるようにデザインされる。さらに、同一性を決定する方法は、公開されているコンピュータープログラムで体系化される。2つの配列間の同一性を決定するためのコンピュータープログラム法には、NeedleプログラムBLASTP、BLASTN (Altschul, S.F. et al., J. Molec. Biol. 215: 403-410 (1990))、およびFASTA( Pearson and Lipman Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85; 2444-2448 (1988))があるがこれに限定されない。BLASTファミリーのプログラムは、NCBIおよび他のソースから公開されている(BLAST Manual, Altschul, S., et al., NCBI NLM NIH Bethesda, MD 20894; Altschul, S., et al., J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990))。よく知られているSmith Watermanアルゴリズムも同一性を決定するために使用することができる。
【0064】
ポリペプチド配列比較のためのパラメーターには下記のものがある:
アルゴリズム:Needleman and Wunsch, J. Mol Biol. 48: 443-453 (1970)
比較行列:BLOSSUM62、Henikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 89:10915-10919 (1992)より
ギャップペナルティ:10
ギャップ伸長ペナルティ:0.5
これらのパラメーターを用いた有用なプログラムは、'needle'プログラムとしてEMBOSSパッケージから公開されている(Rice P.et al, Trends in Genetics 2000 col.16(6):276-277)。前記パラメーターは、ペプチド比較のためのデフォルトパラメーターである(末端ギャップ対するペナルティを加えない)。
【0065】
配列番号1に対する基準配列の同一性を決定するために、ある実施形態において、基準配列の全長にわたって、配列同一性を算出する。他の実施形態において、配列番号1の配列の全長にわたって、配列同一性を算出する。配列番号2に対する基準配列の同一性を決定するために、ある実施形態において、基準配列の全長にわたって、配列同一性を算出する。他の実施形態において、配列番号2の配列の全長にわたって、配列同一性を算出する。
【0066】
本発明の他の態様において、下記を含んでなるポリペプチドが与えられる:(i) 配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、または配列番号34、または配列番号35、(ii) 配列番号10-19に対して少なくとも80%、85%、88%、90%、92%、95%、98%、99%、または100%同一性を有する変異体;または(iii) 配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、または配列番号34、または配列番号35のうち少なくとも100、200、230、250、300、350、380、400、450、480、500、530、550、580、または600アミノ酸からなる断片。他の実施形態において、ポリペプチドは、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、または配列番号34、または配列番号35、ii) 配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、または配列番号34、または配列番号35に対して少なくとも80%、85%、88%、90%、92%、95%、98%、99%、または100%同一性を有する変異体;または(iii) 配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、または配列番号34、または配列番号35のうち少なくとも100、200、230、250、300、350、380、400、450、480、500、530、550、580、または600アミノ酸からなる断片を含んでなる。他の実施形態において、ポリペプチドは、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、または配列番号34、または配列番号35、ii) 配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、または配列番号34、または配列番号35に対して少なくとも80%、85%、88%、90%、92%、95%、98%、99%、または100%同一性を有する変異体;または(iii) 配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、または配列番号34、または配列番号35のうち少なくとも100、200、230、250、300、350、380、400、450、480、500、530、550、580、または600アミノ酸からなる断片を含んでなる。
【0067】
ある実施形態において、ポリペプチドは、トキシンAから450、475、500、525、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、または850個を越えるアミノ酸を含んでなる。ある実施形態において、ポリペプチドは、トキシンAから850、825、800、775、750、725、700、675、650、625、または600個未満のアミノ酸を含んでなる。ある実施形態において、ポリペプチドは、トキシンBから350、375、400、425、450、475、500、もしくは525個を越えるアミノ酸を含んでなる。ある実施形態において、ポリペプチドは、トキシンBから525、500、475、または450個未満のアミノ酸を含んでなる。
【0068】
他の実施形態において、ポリペプチドは、トキシンAまたはトキシンBまたはその両方を中和する中和抗体を惹起する。他の実施形態において、ポリペプチドはトキシンAを中和する抗体を惹起する。他の実施形態において、ポリペプチドはトキシンBを中和する抗体を惹起する。他の実施形態において、ポリペプチドは、トキシンAおよびトキシンBを中和する抗体を惹起する。本発明のポリペプチドは、そのポリペプチドに対する血清が、基準サンプルより10%、20%、30%、50%、70%、80%、90%、または100%高いELISA計測値を与えるならば、トキシンAを中和する抗体を惹起している。
【0069】
他の実施形態において、本発明のポリペプチドは、哺乳類宿主においてC.ディフィシル菌株に対して保護的免疫反応を惹起する。ある実施形態において、哺乳類宿主は、マウス、ウサギ、モルモット、サル、非ヒト霊長類、およびヒトからなる1群から選択される。ある実施形態において、哺乳類宿主はマウスである。他の実施形態において、哺乳類宿主はヒトである。
【0070】
ポリペプチドが、哺乳類宿主においてC.ディフィシル菌株に対して保護的免疫反応を惹起するかどうかは、チャレンジアッセイによって究明することができる。こうしたアッセイでは、哺乳類宿主はポリペプチドによるワクチン接種を受けてから、C.ディフィシルに暴露することで攻撃を受けるが、攻撃後にその哺乳動物が生存する期間を、ポリペプチドで免疫化されていない対照哺乳動物が生存する期間と比較する。ポリペプチドは、そのポリペプチドで免疫された哺乳動物が、C.ディフィシルによる攻撃後に、免疫化を受けなかった対照哺乳動物より、少なくとも10%、20%、30%、50%、70%、80%、90%、または100%長く生存すれば、保護的免疫反応を惹起している。ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、マウス、モルモット、サル、およびヒトからなる1群から選択される哺乳動物において、C.ディフィシル菌株に対して保護的免疫反応を惹起する。ある実施形態において、哺乳動物はマウスであり、他の実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0071】
トキシンAおよびBのC末端(繰り返し)ドメインの天然構造は、伸ばされたβソレノイド様構造からなる。この構造は、Ho et al (PNAS 102:18373-18378 (2005))で明らかなように、基本的にβシート構造からなり、少しのαヘリックス構造を伴う。存在する二次構造は、円偏光二色性によって明らかにすることができる。たとえば、遠紫外領域(190-250nm)におけるCDスペクトルの形状および大きさを測定し、その結果を既知の構造と比較する。これは、たとえば下記の実施例5に示すように、Jasco J-720分光偏光計にて1nmの分解能および帯域幅で、178から250nmまで0.01cmの光路を用いて、実施することができる。
【0072】
ある実施形態において、ポリペプチドは、25%、23%、20%、28%、15%、10%、または7%未満のαヘリックス二次構造を含有する。他の実施形態において、ポリペプチドは、20%、25%、28%、30%、33%、35%、38%、40%、または42%を超えるβシート構造を含有する。
【0073】
ポリヌクレオチド
本発明はさらに、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明の上で、「ポリヌクレオチド」という用語は総じて、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを指すが、これは、一本鎖および二本鎖領域/型を含めて、未修飾RNAもしくはDNAであっても、修飾RNAもしくはDNAであってもよい。
【0074】
本明細書で使用される「ペプチドをコードするポリヌクレオチド」という表現は、本発明のペプチドもしくはポリペプチドをコードする配列を包含するポリヌクレオチドを含む。この表現はまた、ペプチドもしくはポリペプチドをコードする一続きの領域または不連続の複数領域(たとえば、組み込まれたファージ、組み込まれた挿入配列、組み込まれたベクター配列、組み込まれたトランスポゾン配列で中断されたポリヌクレオチド、またはRNA編集もしくはゲノムDNA再構成による)を、追加の領域(これもコード配列および/または非コード配列を含有することができる)とともに包含するポリヌクレオチドを含む。
【0075】
当業者には当然のことながら、遺伝暗号の縮重の結果として、本明細書に記載のポリペプチドをコードする多数のヌクレオチド配列がある。これらのポリヌクレオチドの一部は、天然の(すなわち天然に存在する)遺伝子のヌクレオチド配列にたいして最小限の類似性を有する。とはいえ、コドン使用頻度の相違によってさまざまとなるポリヌクレオチドは、本発明によって具体的に想定され、たとえば、ヒトおよび/または霊長類および/または大腸菌(E. coli)のコドン選択に最適化されたポリヌクレオチドが考慮される。
【0076】
当技術分野で周知の化学的方法を用いて、望ましいポリペプチドをコードする配列を、全体でも、部分的にも、合成することができる(Caruthers, M. H. et al., Nucl. Acids Res. Symp. Ser. pp. 215-223 (1980), Horn et al., Nucl. Acids Res. Symp. Ser. pp. 225-232 (1980))。あるいはまた、タンパク質そのものを、ポリペプチドもしくはその一部分のアミノ酸配列を合成する化学的方法によって、作製することができる。たとえば、ペプチド合成は、さまざまな固相技術(Roberge et al., Science 269:202-204 (1995))を用いて行うことができ、たとえば、ASI 431 A ペプチドシンセサイザー(Perkin Elmer, Palo Alto, CA)を用いて自動合成を実現することができる。
【0077】
さらに、本発明のポリヌクレオチド配列は、さまざまな理由で、ペプチドをコードする配列を変更するために、当技術分野で広く知られている方法を用いて操作することが可能であって、それには、遺伝子産物のクローニング、プロセシング、および/または発現を改変する変更が含まれるが、それらに限定されない。たとえば、遺伝子断片および合成オリゴヌクレオチドのランダム断片化およびPCR再構築によるDNAシャフリングを用いて、ヌクレオチド配列を操作することができる。さらに、部位特異的変異誘発を用いて、新規制限部位の挿入、糖鎖付加パターンの変更、コドン選択の変更、スプライス変異体の作製、または変異導入などを行うことができる。
【0078】
ベクター
本発明の他の態様において、本発明は、プロモーターが誘導されるとポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチドが発現されるような、誘導可能なプロモーターに連結された本発明のポリヌクレオチドを含んでなるベクターに関する。
【0079】
本発明の他の態様は、好ましくは増殖培地への、十分量のIPTG(イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド)の添加によって誘導可能なプロモーターが活性化される、前記ベクターを含む。これは、必要に応じて、0.1から10mM、0.1から5mM、0.1から2.5mM、0.2から10mM、0.2から5mM、0.2から2.5mM、0.4から10mM、1から10mM、1から5mM、2.5から10mM、2.5から5mM、5から10mMまでの間の濃度である。あるいはまた、プロモーターは温度またはpHの変化によって誘導されてもよい。
【0080】
宿主細胞
本発明のポリペプチドの組換え生産のために、宿主細胞を遺伝子操作して、発現系もしくはその一部、または本発明のポリヌクレオチドを組み込むことができる。ポリヌクレオチドの宿主細胞への導入は、Davis, et al., BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, (1986) 、およびSambrook, et al., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)などの多くの標準実験マニュアルに記載の方法、たとえば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAEデキストランによるトランスフェクション、トランスベクション、マイクロインジェクション、陽イオン性脂質によるトランスフェクション、エレクトロポレーション、コンジュゲーション、トランスダクション、スクレイプローディング(scrape loading)、バリスティック(ballistic)導入、および感染によって実行することができる。
【0081】
適当な宿主の代表的な例としては、グラム陰性細菌細胞、たとえば、大腸菌(E. coli)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、アクチノバチルス属(Actinobacillus)、ボルデテラ属(Bordetella)、ブルセラ属(Brucella)、カンピロバクター属(Campylobacter)、シアノバクテリア(Cyanobacteria)、エンテロバクター属(Enterobacter)、エルウィニア属(Erwinia)、フランシセラ属(Franciscella)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、ヘモフィルス属(Hemophilus)、クレブシエラ属(Klebsiella)、レジオネラ属(Legionella)、モラクセラ属(Moraxella)、ナイセリア属(Neisseria)、パスツレラ属(Pasteurella)、プロテウス属(Proteus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、サルモネラ属(Salmonella)、セラチア属(Serratia)、赤痢菌属(Shigella)、トレポネーマ属(Treponema)、ビブリオ属(Vibrio)、エルシニア属(Yersinia)の細菌細胞がある。ある実施形態において、宿主細胞は大腸菌(Escherichia coli)細胞である。あるいはまた、グラム陽性細菌細胞を使用してもよい。本発明のポリペプチドを生産するために、種々さまざまな発現系を用いることができる。ある実施形態において、ベクターは細菌プラスミドから得られる。一般に、宿主において、ポリヌクレオチドの維持、増殖、もしくは発現、および/またはポリペプチドの発現を行うのに適した、あらゆる系またはベクターを、本件に関する発現のために使用することができる。たとえばSambrook et al., MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL, (上記)に記載のような、さまざまな、よく知られていて日常的な技術のいずれによっても、適当なDNA配列を発現系に挿入することができる。
【0082】
免疫原性組成物およびワクチン
さらに、本発明のポリペプチドおよび製薬上許容される添加剤を含有する免疫原性組成物が与えられる。
【0083】
ある実施形態において、免疫原性組成物はさらにアジュバントを含有する。本発明のプロセスで作製される細菌毒素またはコンジュゲートと混合するのに適したアジュバントの選択は、当業者の知見の範囲内である。適当なアジュバントには、アルミニウム塩、たとえば水酸化アルミニウムゲルもしくはリン酸アルミニウムもしくはミョウバンがあるが、他の金属塩、たとえばカルシウム、マグネシウム、鉄、もしくは亜鉛塩であってもよく、または、アシル化チロシンもしくはアシル化糖、陽イオン性もしくは陰イオン性誘導体化糖類、またはポリホスファゼンの不溶性懸濁液であってもよい。
【0084】
ある実施形態において、免疫原性組成物は、追加の抗原をさらに含有する。ある実施形態において、追加の抗原は、肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)、インフルエンザ菌(H.influenzae)、髄膜炎菌(N.meningitidis)、大腸菌(E.coli)、モラクセラ・カタラーリス(M.catarrhalis)、破傷風、ジフテリア、百日咳、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、腸球菌、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)からなる1群から選択される細菌に由来する抗原である。他の実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、C.ディフィシル由来の他の抗原、たとえばS層タンパク質(WO01/73030)を含有していてもよい。
【0085】
さらに、免疫原性組成物を含んでなるワクチンがあたえられるが、このワクチンはさらに、製薬上許容される添加剤を含有してもよい。
【0086】
本発明の免疫原性組成物を含有するワクチン製剤を用いて、当該ワクチンを全身経路または粘膜経路で投与することによって、C.ディフィシル感染を起こしやすい哺乳動物を保護し、またはC.ディフィシル感染症にかかった哺乳動物を治療することができる。これらの投与には、筋肉内、腹腔内、皮内、または皮下経路による注射;または口道/消化管、気道、尿生殖路への粘膜投与を含めることができる。本発明のワクチンは、単回投与として与えることができるが、その成分を、同時に併用投与しても、異なる時に併用投与してもよい(たとえば、肺炎球菌糖類コンジュゲートは、相互の免疫反応を調整するために、別々に、同時に、またはワクチンのなんらかの細菌タンパク質成分を投与した1-2週間後に、投与することができる)。単一の投与経路に加えて、2つの異なる投与経路を使用することもできる。たとえば、糖類または糖コンジュゲートは、筋肉内(IM)または皮内(ID)投与することができるが、細菌タンパク質は、鼻腔内(IN)または皮内(ID)投与することができる。さらに、本発明のワクチンは、プライミング(初回抗原刺激)用量についてはIM投与し、ブースター(追加免疫)用量についてはIN投与することができる。
【0087】
ワクチン中の毒素の含量は、典型的には1-250μg、好ましくは5-50μg、もっとも典型的には5-25μgの範囲内とする。初回接種後、被験体は、適切な間隔をおいて1回または数回の追加免疫接種を受けることができる。ワクチン製剤は、一般的にはVaccine Design (“The subunit and adjuvant approach” (eds Powell M.F. & Newman M.J.) (1995) Plenum Press New York)に記載されている。リポソーム内カプセル化はFullerton, US Patent 4,235,877に記載されている。
【0088】
本発明のある態様においてワクチンキットが与えられるが、これは、場合によっては凍結乾燥された状態にある、本発明の免疫原性組成物の入ったバイアルを含んでなり、本明細書に記載のアジュバントの入ったバイアルをさらに含んでいる。本発明のこの態様では、アジュバントは凍結乾燥された免疫原性組成物を再構成するために使用されると考えられる。
【0089】
本発明の他の態様は、免疫保護用量の、本発明の免疫原性組成物もしくはワクチンもしくはキットを宿主に投与することを含む、C.ディフィシル感染を予防もしくは治療するための方法である。ある実施形態において、免疫保護用量の、本発明の免疫原性組成物もしくはワクチンもしくはキットを宿主に投与することを含む、C.ディフィシル感染の最初の症状発現および/または再発の症状発現を予防または治療する方法が与えられる。
【0090】
本発明の他の態様は、C.ディフィシル疾患の治療もしくは予防に使用するための本発明の免疫原性組成物である。ある実施形態において、C.ディフィシル疾患の最初の症状発現および/または再発の症状発現の治療もしくは予防に使用するための、本発明の免疫原性組成物が与えられる。
【0091】
本発明のもう1つの態様は、C.ディフィシル疾患の治療用もしくは予防用の薬剤の製造における、本発明の免疫原性組成物もしくはワクチンもしくはキットの使用である。ある実施形態において、C.ディフィシル疾患の最初の症状発現および/または再発の症状発現の治療用もしくは予防用の薬剤の製造に使用するための、本発明の免疫原性組成物が与えられる。
【0092】
「約」もしくは「およそ」は、本発明の上で、与えられた数字の上下10%の範囲内と定義される。
【0093】
「含んでいる」、「含む」、および「含んでなる」という用語は、本明細書では、いかなる場合も、選択肢として、それぞれ「からなる」、「からなっている」、および「からなる」(consists of)という用語で置き換えられるものと本発明者らは意図している。「含んでなる」という用語は、「含む」(include)を意味する。したがって、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含んでいる」という用語、ならびに「含む」および「含んでなる」のような語形変化は、当然のことながら、言明された化合物もしくは組成物(たとえば核酸、ポリペプチド、抗原)もしくはステップ、または一群の化合物もしくはステップの包含を意味するが、他のいかなる化合物、組成物、ステップ、またはそれらの一群の除外を意味するものではない。略語"e.g."(たとえば)は、ラテン語の"exempli gratia"(たとえば)に由来し、本明細書では、限定されない例を示すために使用される。したがって、略語"e.g."は、"for example"(たとえば)という用語と同義である。
【0094】
本明細書において、本発明の「ワクチン組成物」に関する実施形態は、本発明の「免疫原性組成物」に関する実施形態に適用可能であるし、逆もまた同様である。
【0095】
他に説明のない限り、本明細書で使用されるあらゆる科学技術用語は、本明細書の属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。分子生物学の一般用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes V, published by Oxford University Press, 1994 (ISBN 0-19-854287-9); Kendrew et al. (編), The Encyclopedia of Molecular Biology, published by Blackwell Science Ltd., 1994 (ISBN 0-632-02182-9); およびRobert A. Meyers (編), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, published by VCH Publishers, Inc., 1995 (ISBN 1-56081-569-8)に見いだすことができる。
【0096】
単数の用語“a”、“an”、および“the” は、文脈上明白に別の指示がない限り、複数の指示対象を含む。同様に、"or"(または/もしくは)という単語は、文脈上明白に別の指示がない限り、"and"(および/ならびに)を包含するものとする。「複数」という用語は、2個以上を指す。さらに当然のことながら、核酸もしくはポリペプチドに関して与えられる、すべての塩基サイズもしくはアミノ酸サイズ、およびすべての分子量もしくは分子質量値は概数であり、説明のために与えられる。加えて、抗原などの物質の濃度もしくはレベルに関して与えられる数値限定は、概算であると考えられる。
【0097】
この特許明細書の中で引用された参考文献もしくは特許出願はすべて、参考としてその全体が本明細書に組み入れられる。
【0098】
本発明がよりよく理解されるように、以下の実施例を示す。これらの実施例は、説明だけを目的としており、いかなる形でも本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0100】
5つのC.ディフィシルToxA-ToxB融合物
ToxAおよびToxBのC末端繰り返しドメインの断片を含有する融合タンパク質をデザインした。これらの融合物は、ToxAのC末端繰り返しドメインの断片、およびToxBのC末端繰り返しドメインの断片、ならびにToxA断片のC末端とToxB断片のN末端との間のジャンクションを含有していた。2つのストラテジーが考案されたが、第1のストラテジーでは;融合物は、長いソレノイド構造が2つの断片間のジャンクションで維持されるようにデザインされた。第2のストラテジーでは、融合物の2つの断片は、独立した正しいフォールディングを可能にするようにリンカーで隔てられる。
【0101】
ToxAおよびToxBのC末端部分は、繰り返し配列:ショートリピート(SR)およびロングリピート(LR)で構成されている(PNAS 2005 vol 102 : 18373-18378)。
【0102】
ToxAのC末端ドメインの立体構造の一部が知られている(PNAS 2005 Greco et al., vol 102 : 18373-18378 ; Nature Structural & Molecular biology 2006 vol 13(5) : 460-461 ; PDB codes : 2F6E, 2G7C and 2QJ6)。
【0103】
ToxAおよびToxBのC末端部分の残基の間には2種類の重要な相互作用があると本発明者らは予想した。第1の相互作用は、LRとその前のSRに含まれる残基の間に生じ、ソレノイド様構造を維持するために重要である。第2のタイプの相互作用は、LRとその次のSRに含まれる残基の間に生じ、この相互作用は毒素の糖結合機能を仲介している。
【0104】
新たな「構造機能」リピートSR-LR-SRを定義した。このリピートの構造は、本発明者らがデザインした融合物ではそのまま損なわれずに維持された。
【0105】
図2は、ToxAおよびToxBのC末端ドメイン、ならびに定義された”SR-LR-SR"ボックスを示す。
【0106】
ToxAおよびToxBのショートリピート(SR)およびロングリピート(LR)の位置を表1に示す。
【0107】
ToxAおよびToxBのC末端ドメインに含まれる”SR-LR-SR"ボックスの一覧を表2に示す。
【表2】
【0108】
最終的に、2つのLRの間のSRの数は、長いソレノイド様構造を保持するように、デザインされた融合物において維持される。
【0109】
融合物のためのジャンクションデザインの前に、2つの作業仮説を設定した:第1の仮説、融合物が短いほど、融合物が安定して過剰発現される可能性が高い;第2の仮説、"SR-LR-SR"ボックスの概念にしたがって、開始位置は、上記で定義されたSR-LR-SRボックスの最初のSRの、正しいフォールディングを確実にするように選択されなければならない。したがって、融合物はSR-LR-SRボックスの前にあるSRのはじめから始まる。上記の2つの仮説によって、3つの開始位置を分析した:ToxAの残基2370、2234、および2121。
【0110】
開始位置2370は除外された。開始位置2234も除外されたのは、タンパク質の構造的安定性に重要な、相互作用に関わる残基の1つが保存されていないためである。そのため、デザインされた融合物のすべてが、ToxAの残基2121から始まることが決定された。
【0111】
すべての融合物はToxBの最後の残基で終わることになる。
【0112】
融合物全体を、2つの融合断片の間で長いソレノイド様構造に保つように、4つの融合物(F1-4)をデザインした。
【0113】
融合物1(F1)および2(F2)は同じ仮説によってデザインした。ToxAおよびToxBのすべてのSRタンパク質配列は、多重アラインメントソフトウェアで比較されていた(ClustalW - Thompson JD et al. (1994) Nucleic Acids Res., 22, 4673-4680)。類似性の高い配列は、ToxAの3番目のSR VIII、およびToxBの3番目のSR II、およびToxBの3番目のSR IIIであった。ToxBの上記2つのSRのうちどちらかを選択するために、ToxBのC末端部分について、部分的なToxA C末端ドメインの既知の立体構造(PDBコード:2QJ6)を用いて、構造的相同性モデリング(SwissModelインターフェースを使用 - Arnold K et al. (2006) Bioinformatics, 22, 195-201)を行った。ToxAの3番目のSR IIIを用いて、局所構造の最高の重ね合わせ(SwissPDBViewerを用いて実施 - Guex N et al. (1997), Electrophoresis 18, 2714-2723)が、ToxBの3番目のSR IIに対して得られた。そこで、2つのジャンクションをデザインした:第1のジャンクションは、ToxAの3番目のSR IIIとToxBの4番目のSR IIとの間にあり(F1)、第2のジャンクションは、ToxAの2番目のSR VIIIとToxBの3番目のSR IIとの間にある(F2)。これらのジャンクションは、それぞれ
図3および4に示される。
【0114】
融合物3(F3)をデザインするために、ToxAの部分的なC末端ドメインの既知の構造と、ToxBのC末端ドメインの予想される構造との間で、全体的な構造の重ね合わせを行った(SwissModelおよびSwissPDBViewerソフトウェアを使用)。ToxAのLR VIIとToxBのLR IIの間に、最高の重ね合わせが見られた。そこで、この類似したLRの中にジャンクションを作ることにした。連結は、まず第1にToxAとToxBの間で配列が保存されている領域内で、次に、前のSRと相互作用する残基を融合物のToxA部分の中に保持するように、そして最後に、後のSRと相互作用する残基をToxB部分の中に保持するように、実施された。このジャンクションを
図5に示す。
【0115】
融合物4(F4)をデザインするために、ToxBのC末端ドメインを4つの断片に分け、それらについてより正確な相同性モデリング(SwissModel)を行った。"SR-LR-SR"ボックスを完全な状態に保つように、分割を実現した(各ドメインはLRの後に続くSRの末端で終わる)。これらの断片の予想される構造とToxAの既知の立体構造との間で構造の重ね合わせを行い、最高の構造の重ね合わせが、ToxBの3番目のSR(SR I)およびToxAの最後のSR(3番目のSR VIII)について得られた。そこで、ToxAの2番目のSR VIIIとToxBの3番目のSR Iとの間で連結を行った。このデザインを
図6に示す。
【0116】
最後の融合物(F5)は、融合物の2つの断片の、独立した正しいフォールディングを可能にするようにデザインされた。ToxAタンパク質の最後の残基とToxBの4番目のSR IIの先頭との間にリンカーを加えた(常に"SR-LR-SR"ボックスの重要性を考慮した)。外来残基(グリシン)を1つだけリンカーとして加え、既存の2つのグリシンの間に位置づけた。したがって、リンカーは、(ToxAについては)既知の、そして(ToxBについては)予想されるβストランドで周りを囲んだ3つのグリシン残基からなるともいえる。この最後のデザインを
図7に示す。
【実施例2】
【0117】
融合タンパク質のクローニング発現および精製
発現プラスミドおよび組換え菌株
ToxAおよびToxBの部分的C末端ドメインの融合タンパク質(配列番号3、4、5、6、および7)およびHisタグをコードする遺伝子を、標準的な手順により、pFT24b(+)発現ベクター(Novagen)内に、NdeI/XhoI制限酵素部位を用いてクローニングした。CaCl
2処理細胞による標準的な方法にしたがって、大腸菌(E. coli)BLR (DE3)株を組換え発現ベクターで形質転換することによって、最終的な構築物が作製された(Hanahan D. << Plasmid transformation by Simanis. >> In Glover, D. M. (Ed), DNA cloning. IRL Press London. (1985): p. 109-135.)。
【0118】
宿主菌株:
BLR (DE3)。BLRはBL21のrecA派生株である。(DE3)の名称を有する菌株は、IPTG誘導性T7 RNAポリメラーゼを含有するλプロファージに対して溶原性である。λDE3溶原菌は、pETベクターからのタンパク質発現のためにデザインされている。この菌株はまた、lonおよびompTプロテアーゼを欠失している。
【0119】
遺伝子型:大腸菌(E.coli)BLR::DE3 株、F
- ompT hsdS
B(r
B- m
B-) gal dcm (DE3) Δ(srl-recA)306::Tn10 (Tet
R) 。
【0120】
組換えタンパク質の発現:
大腸菌(E.coli)形質転換体を寒天プレートから掻き取り、それを用いて200 mlのLBT培養液 ± 1% (w/v)グルコース + カナマイシン(50μg/ml)に接種して、0.1 - 0.2の間のO.D. 600 nmを得た。培養物を37℃にて250 RPMで一晩インキュベートした。
【0121】
この一夜培養物を、カナマイシン(50μg/ml)含有LBT培地500 mlで1:20に希釈し、37℃にて250 rpmの撹拌速度で、O.D.620が0.5/0.6に達するまで増殖させた。
【0122】
およそ0.6のO.D. 600 nmで、培養物を冷却してから、1 mMイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG; EMD Chemicals Inc., カタログ番号: 5815)の添加によって組換えタンパク質の発現を誘導し、23℃にて250 rpmで一晩インキュベートした。
【0123】
一晩(約16時間)インキュベートした後、誘導後のO.D. 600 nmを調べてから、培養物を14000 rpmで15分間遠心分離し、ペレットを-20℃で別々に凍結した。
【0124】
精製:
細菌のペレットを、500 mM NaClおよびプロテアーゼインヒビター混合物(コンプリート(Complete)、Roche)を含有する20 mMビシン(bicine)バッファー(pH 8.0)中に再懸濁した。20000 PSIでフレンチプレスシステムを用いて細菌を溶解させた。可溶性(上清)および不溶性(ペレット)成分を、たとえば20 000gで30分間4℃にて、遠心することによって分離した。
【0125】
6-Hisタグのついたタンパク質は、IMACによって非変性条件下で精製された。可溶性成分を、細菌の再懸濁に使用したのと同じバッファーであらかじめ平衡化したGEカラム(たとえば15 ml)(Ni負荷)にロードした。カラムにロードした後、カラムを同バッファーで洗浄した。溶出は、500 mM NaClおよび異なる濃度のイミダゾール(5-600 mM)を含有する20 mMビシンバッファー(pH 8.0)を用いて行った。ゲル分析の後、より純粋な画分を選抜して濃縮し、さらなる精製ステップのためにSECクロマトグラフィーにロードした。
【0126】
SDS-PAGEによる純度に基づいて、融合タンパク質を含有する画分を選択し、ビシンバッファー(20mMビシン;150 mM NaCl;5mM EDTAあり、またはなし;pH8.0)に対して透析した。タンパク質濃度は、バイオラッド(BioRad)のDCプロテインアッセイを用いて測定した。そこで、タンパク質をプールし、0.22μmで無菌濾過して、-80℃で保存した。
【0127】
あるいはまた、IMAC精製に先だって、ロードおよび洗浄に2 mMビシンバッファー(pH 8.0)を用いたDEAE精製ステップを行い、1M NaClを添加した以外は同じバッファーによって勾配を用いて溶出した。
【実施例3】
【0128】
個別のC.ディフィシルToxAおよびToxB断片のクローニング発現および精製
発現プラスミドおよび組換え菌株
ToxAおよびToxBのタンパク質断片(配列番号8および配列番号9)およびHisタグをコードする遺伝子を、標準的な手順により、pFT24b(+)発現ベクター(Novagen)内に、NdeI/XhoI制限酵素部位を用いてクローニングした。CaCl
2処理細胞による標準的な方法にしたがって、大腸菌(E. coli)BLR (DE3)株を組換え発現ベクターで形質転換することによって、最終的な構築物が作製された(Hanahan D. << Plasmid transformation by Simanis. >> In Glover, D. M. (Ed), DNA cloning. IRL Press London. (1985): p. 109-135.)。
【0129】
宿主菌株:
BLR (DE3)。BLRはBL21のrecA派生株である。(DE3)の名称を有する菌株は、IPTG誘導性T7 RNAポリメラーゼを含有するλプロファージに対して溶原性である。λDE3溶原菌は、pETベクターからのタンパク質発現のためにデザインされている。この菌株はまた、lonおよびompTプロテアーゼを欠失している。
【0130】
遺伝子型:大腸菌(E.coli)BLR::DE3 株、F
- ompT hsdS
B(r
B- m
B-) gal dcm (DE3) Δ(srl-recA)306::Tn10 (Tet
R) 。
【0131】
組換えタンパク質の発現:
大腸菌(E.coli)形質転換体を寒天プレートから掻き取り、それを用いて200 mlのLBT培養液 ± 1% (w/v)グルコース + カナマイシン(50μg/ml)に接種して、0.1 - 0.2の間のO.D. 600 nmを得た。培養物を37℃にて250 RPMで一晩インキュベートした。
【0132】
この一夜培養物を、カナマイシン(50μg/ml)含有LBT培地500 mlで1:20に希釈し、37℃にて250 rpmの撹拌速度で、O.D.620が0.5/0.6に達するまで増殖させた。
【0133】
およそ0.6のO.D. 600 nmで、培養物を冷却してから、1 mMイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG; EMD Chemicals Inc., カタログ番号: 5815)の添加によって組換えタンパク質の発現を誘導し、23℃にて250 rpmで一晩インキュベートした。
【0134】
一晩(約16時間)インキュベートした後、誘導後の600 nmでのO.D.を調べてから、培養物を14 000 rpmで15分間遠心分離し、ペレットを-20℃で別々に凍結した。
【0135】
精製:
500 mM NaClを含有し、プロテアーゼインヒビター混合物(コンプリート(Complete)、EDTAなし、Rocheカタログ11873580001)およびベンゾナーゼ(Rocheカタログ 1.01695.0001)を添加した、20 mMビシンバッファー(pH 8.0)中に、細菌ペレットを再懸濁した。フレンチプレスシステム2 X 20000 PSIによって細菌を溶解させた。可溶性(上清)および不溶性(ペレット)成分を、34 000gもしくは48 000gで25-30分間4℃にて遠心することによって分離した。上清を集めて、0.22μmフィルターで濾過した。
【0136】
6-Hisタグのついたタンパク質は、IMACによって非変性条件下で精製された。可溶性成分を、細菌の再懸濁に使用したのと同じバッファーであらかじめ平衡化したGEカラム(たとえば15 ml)(Ni負荷)にロードした。ロードした後、カラムを同バッファーで洗浄した。
【0137】
ToxA用:
溶出は、500 mM NaClおよび異なる濃度のイミダゾール(5-100 mM)を含有する20 mMビシンバッファー(pH 8.0)を用いて行った。ゲル分析の後、より純粋な画分を選抜して濃縮し、さらなる精製ステップのために、イミダゾールなしの同バッファーで、SECクロマトグラフィー(SUPERDEX(商標名)75)にロードした。
【0138】
ToxB用:
500 mM NaClおよび0.5%デオキシコール酸を含有する20 mMビシンバッファー(pH 8.0)、または150 mM NaClを含有する同バッファーで、2回目の洗浄を行った。溶出は、500 mM NaClおよび異なる濃度のイミダゾール(10-500 mM)を含有する20 mMビシンバッファー(pH 8.0)を用いて行った。ゲル分析の後、より純粋な画分を選抜して5 mM EDTAを添加し、さらなる精製ステップのために、5 mM EDTAを含有する同バッファーで、SECクロマトグラフィー(SUPERDEX(商標名)200)にロードした。
【0139】
SDS-PAGEによる純度に基づいて、ToxAまたはToxB断片を含有する画分を選択し、ビシンバッファー(20mMビシン、150 mM NaCl、pH8.0)に対して透析し、タンパク質濃度を、バイオラッド(BioRad)のRCDCプロテインアッセイを用いて測定した。そこで、タンパク質をプールし、0.22μmで無菌濾過して、-80℃で保存した。
【実施例4】
【0140】
5つのC.ディフィシルToxA-ToxB融合物の分子量評価
分析超遠心を用いて、遠心力に応じて分子が移動する速度を測定することによって、タンパク質サンプルにおいて異なる種類の溶液中で均一性およびサイズ分布を決定する。これは、沈降速度実験によって得られる異なる種類の沈降係数の算出に基づくが、それは分子の形状および質量によって決まる。
【0141】
1. AN-60Tiローターを15℃に平衡化しておいた後、タンパク質サンプルをBeckman-Coulter PROTEOMELAB(商標名)XL-1分析用超遠心機で、42 000 prmで高速回転させる。
a. F1融合タンパク質、500gμ/ml、20mMビシン、150mM NaCl、pH8.0
b. F2融合タンパク質、500gμ/ml、20mMビシン、150mM NaCl、pH8.0
c. F3融合タンパク質、500gμ/ml、20mMビシン、150mM NaCl、pH8.0
d. F4融合タンパク質、500gμ/ml、20mMビシン、150mM NaCl、pH8.0
e. F5融合タンパク質、500gμ/ml、20mMビシン、150mM NaCl、pH8.0
2. データ収集のため、280nmで5分ごとに160スキャンを記録した。
3. C(S)分布を求めるためにSEDFITプログラムを用いてデータ解析を行った。タンパク質の偏比容の決定は、タンパク質のアミノ酸配列からSEDNTERPソフトウェアを用いて行った。SEDNTERPを用いて、バッファーの粘度および密度も求めた。
4. 異なる種類の分子量は、C(S)分布プロット(濃度-沈降係数)が、混合物のサイズ分布を特徴付けるC(M)分布(濃度 - 分子量)よりすぐれた生データの表現であることを考慮して、C(S)分布プロットから求めた。
【0142】
図8は、沈降速度分析超遠心によって求めた、ToxA-ToxB融合物の分布を表す。
【0143】
5つすべてのToxA-ToxB融合タンパク質のC(S)分布から検知された主要分子種の分子量は、単量体型に相当する。5つの融合物にもっとも適合する摩擦比はいずれも2から2.2の間である。これは、タンパク質が引き伸ばされた形で溶液中に存在することを示すと考えられ、それはタンパク質の構造と一貫するだろう。
【実施例5】
【0144】
円偏光二色性および蛍光分光法によるC.ディフィシルToxA-ToxB融合物の二次構造および三次構造の評価
円偏光二色性を用いて、構造的非対称に起因する、左回り偏光と右回り偏光の吸収の差を測定することによって、タンパク質の二次構造の構成を確定する。遠紫外領域(190-250 nm)のCDスペクトルの形および強さは、タンパク質がβシート、αヘリックス、またはランダムコイル構造を示すかどうかで異なる。所定のタンパク質サンプル中のそれぞれの二次構造タイプの相対存在量は、基準スペクトルと比較することによって計算することができる。
【0145】
タンパク質サンプルの三次構造は、芳香族アミノ酸の不動性を評価することによって判定することができる。近紫外領域(250-50nm)でのCDシグナルの観察は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン残基の極性化に起因する可能性があり、タンパク質が明確に定義された構造にフォールドされていることのすぐれた指標である。
【0146】
以下のプロトコールを用いた:
1. Jasco J-720分光偏光計で、1 nmの分解能および帯域幅によって、178から250 nmまで0.01 cmの光路を用いて遠紫外スペクトルを測定する。細胞の温度は、Peltier恒温RTE-111セルブロックによって23℃に維持する。測定の間、10L/分の窒素気流を維持する。
2. Jasco J-720分光偏光計で、1 nmの分解能および帯域幅によって、250から300 nmまで0.01 cmの光路を用いて近紫外スペクトルを測定する。細胞の温度は、Peltier恒温RTE-111セルブロックによって23℃に維持する。測定の間、6L/分の窒素気流を維持する。
【0147】
5つのToxA-ToxB融合タンパク質のすべての遠紫外スペクトルの測定結果(
図9)は、αヘリックス構造の含量が少なく、βシート構造の含量が多いことを示唆する。また、すべてのタンパク質は230 nmで最大を示したが、これは可溶性球状タンパク質にとっては異例である。このことは、特に、文献で十分に特徴付けられており、αヘリックスがなくてβシートおよび芳香族アミノ酸の含量が高いことで知られているタンパク質の小グループと関連付けられる(Zsila, Analytical Biochemistry,391( 2009) 154-156)。それらの詳細事項は、ToxA-ToxB融合タンパク質に期待される構造と合致する。230 nmに明確なシグナルを有する特徴的なCDスペクトルを示す13個のタンパク質の結晶構造を比較した(Protein Data Bank)。それらのタンパク質の平均的な二次構造含量は、42%βシート±9%、および7%αヘリックス±6%である。これは、ToxA-ToxB融合タンパク質のスペクトルの特徴が高βシートおよび低αヘリックス含有タンパク質に特徴的であることを強く示唆する。
【0148】
5つの融合タンパク質すべての近紫外スペクトルの測定結果(
図10)は、芳香族アミノ酸の少なくとも一部が動かなくなっていることを示し、これはコンパクトで特異的な三次構造を強く示唆するものである。さらに、変性させる濃度の尿素でタンパク質を処理すると、近紫外シグナルが消失したが、これは、こうした特徴的なスペクトルがタンパク質フォールディングに起因することを追加的に示すものである。
【実施例6】
【0149】
ToxAまたはToxB断片およびToxA-ToxB融合物によるマウスの免疫化
Balb/Cマウスは実施例2および3に記載の構築物で免疫化した。
【0150】
マウス免疫化
各群15匹の雌Balb/Cマウスを、AS03Bをアジュバントとして、3μgまたは10μgのToxAおよびToxBの別々の断片(実施例2を参照されたい)により、ならびにToxA-ToxB融合タンパク質(実施例3を参照されたい)により、0日目、14日目、および28日目に、IM免疫化した。対照群の10匹のマウスは、AS03Bのみの接種を受けた。
【0151】
42日目に採取した個々の血清で、抗ToxAおよび抗ToxB ELISA力価を測定した(Post III)。
【0152】
プールしたPost III血清で、赤血球凝集抑制力価を測定した。
【0153】
抗ToxAおよび抗ToxB ELISA反応:プロトコール
ToxAおよびToxB断片のサンプルを、リン酸緩衝食塩水(PBS)中1μg/mlで、高結合マイクロタイタープレート(Nunc MAXISORP(商標名))上に4℃にて一晩コーティングした。そのプレートを、振盪しながら、室温にて30分間、PBS-BSA 1%でブロックした。マウス抗血清を、PBS-BSA 0.2%-TWEEN(商標名) 0.05%で、1/500にあらかじめ希釈した後、さらに2倍希釈をマイクロプレート内で行って、振盪しながら室温にて30分間インキュベートした。洗浄後、結合したマウス抗体を、PBS-BSA 0.2%-tween 0.05%で1:5000希釈した、Jackson ImmunoLaboratories Inc.製のペルオキシダーゼ結合AffiniPureヤギ抗マウスIgG (H+L) (ref: 115-035-003)を用いて検出した。検出抗体を、振盪しながら室温(RT)にて30分間インキュベートした。1Mクエン酸バッファーpH 4.5、10 mlにつき4 mg O-フェニレンジアミン(OPD) + 5μl H
2O
2を用いて、室温にて暗黒下で15分間発色させた。50μl HClで反応を止め、光学濃度(OD)を490 nmで読み取って620 nmと対比した。
【0154】
血清中の抗ToxAおよび抗ToxB抗体のレベルは、平均力価で表される。それぞれの処理群の15サンプルについて(対照群については10サンプル)、幾何平均抗体力価GMTを計算した。
【0155】
赤血球凝集抑制アッセイ:プロトコール
96ウェルU底マイクロプレート内でリン酸緩衝食塩水(PBS)により、プールしたマウス抗血清(25μl)の2倍段階希釈を行った。
【0156】
そこで、25μlの未変性トキシンA(0.2μg/ウェル)を加え、プレートを室温で30分間インキュベートした。
【0157】
インキュベーション後、2%に希釈された精製ウサギ赤血球50μlを各ウェルに添加した。プレートを37℃にて2時間インキュベートした。
【0158】
プレートを目で見て分析したが、血球凝集はウェル内に拡散する赤色細胞として現れ、血球凝集抑制はウェル内で沈降した赤い点として観察される。
【0159】
抑制力価は、赤血球凝集を抑制する血清の最大希釈度の逆数として定義された。
【0160】
細胞毒性アッセイ
IMR90線維芽細胞を、EMEM + 10% ウシ胎仔血清 + 1% グルタミン + 1% 抗生物質(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシン)中で、37℃にて5% CO
2で培養し、96ウェル組織培養プレートに5 x 10
4細胞/ウェルの密度でシードした。
【0161】
24時間後、細胞培地をウェルから除去した。
【0162】
プールしたマウス血清(50μl)の2倍段階希釈を、細胞培地で行った。
【0163】
そこで、50μlの未変性トキシンB(0.5 ng/ml)を加え、プレートを37℃にて5% CO
2により24時間インキュベートした。
【0164】
24時間後に細胞を観察し、円形の細胞の割合を測定した。
【0165】
抑制力価は、細胞円形化を50%抑制する血清の最大希釈度の逆数として定義された。
【0166】
結果:
ToxA抗体を使用したELISAの結果を
図11に示す。抗ToxA抗体は、ToxAのみによる免疫化後に誘導されたが、5つの融合物のそれぞれによっても誘導された。
【0167】
これらの抗体の機能的性質を、赤血球凝集アッセイで調べた。ToxBについては赤血球凝集は見られないので、このアッセイは、ToxAの評価にのみ適している。
【0168】
赤血球凝集抑制力価を
図12に示す。赤血球凝集抑制は、抗ToxA断片血清、またはそれぞれのToxA-ToxB融合物に対する血清について認められた。
【0169】
ToxB抗体を使用したELISAも行った;この結果を
図13に示す。抗ToxB抗体はToxB抗体のみによる免疫化後に誘導されたが、F2、F3、およびF4融合物によっても誘導された。
【0170】
細胞毒性抑制力価を
図14に示す。ToxB断片またはToxA-ToxB融合物で免疫化されたマウスから得られた血清を用いて得られた抑制力価は、対照血清を用いて得られた力価より大きかった。
【実施例7】
【0171】
さらに4つの融合タンパク質のデザイン、クローニング、発現、および精製
実施例1に記載のデザイン原則によって、さらに4つの融合タンパク質をデザインし、これらは、F54 Gly (配列番号21)、F54 New (配列番号23)、F5 ToxB (配列番号25)、およびF52 New (配列番号27)と名付けられた。
【0172】
これらの融合タンパク質は、実施例2に記載の手順にしたがって発現された。
【実施例8】
【0173】
配列番号21、配列番号23、配列番号25、および配列番号27に記載のC.ディフィシルToxA-ToxB融合物の分子量評価
配列番号21、配列番号23、配列番号25、および配列番号27に記載の融合物の分子量を、実施例4に記載のように測定した。
【0174】
図15は、沈降速度分析超遠心で測定された、これら4つの追加の融合タンパク質の分布を表す。
【0175】
配列番号21、配列番号23、配列番号25、および配列番号27に記載の4つすべてのタンパク質融合物の、C(S)分布から決定された主要な分子種の分子量は、それらの単量体型に相当するものであって、すべてのタンパク質はF1からF5までの融合物と類似した沈降特性を示す。
【実施例9】
【0176】
配列番号21、配列番号23、配列番号25、および配列番号27に記載のC.ディフィシルToxA-ToxB融合物の二次構造および三次構造の評価
配列番号21、配列番号23、配列番号25、および配列番号27に記載の融合物の二次構造および三次構造を、実施例5に記載の方法にしたがって評価した。これらの融合タンパク質に関する遠紫外CDは
図16で見られ、これらの融合物の近紫外スペクトルは
図17に見いだすことができる。
【0177】
配列番号21、配列番号23、配列番号25、および配列番号27に記載のタンパク質の近紫外、および遠紫外CDスペクトルの分析は、4つすべてが、F1からF5までの融合物と同じく高率のβシート構造を有することを示す。それに加えて、近紫外スペクトルの観測は、F1からF5までの融合物と比較して三次構造で芳香族アミノ酸の位置に有意な相違のないことを示す。
【実施例10】
【0178】
ToxA-ToxB融合物によるマウスの免疫化
Balb/Cマウスを、4つの融合タンパク質構築物F54 Gly (配列番号21)、F54 New (配列番号23)、F5 ToxB (配列番号25)、およびF52 New (配列番号27)で、実施例6に記載のように免疫化した。
【0179】
ToxAもしくはToxB断片のサンプルが、高結合マイクロタイタープレート上に、リン酸緩衝食塩水中2μg/mlでコーティングされる以外は、実施例6に記載の抗ToxAおよび抗ToxB ELISA反応:プロトコールを用いて、ELISAを行った。実施例6に記載のように、赤血球凝集抑制アッセイを行った。実施例6に記載のように、ToxB細胞毒性アッセイを行った。さらにToxA細胞毒性アッセイを以下のように実施した。
【0180】
ToxA細胞毒性アッセイ
HT29細胞を、DMEM + 10% ウシ胎仔血清 + 1% グルタミン + 1% 抗生物質(ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシン)中で、37℃にて5% CO
2で培養し、96ウェル組織培養プレートに5 x 10
4細胞/ウェルの密度でシードした。
【0181】
24時間後、細胞培地をウェルから除去した。
【0182】
プールしたマウス血清(50μl)の2倍段階希釈を、細胞培地で行った。
【0183】
そこで、50μlの未変性トキシンB(0.15 ng/ml)を加え、プレートを37℃にて5% CO
2で48時間インキュベートした。
【0184】
48時間後に細胞を観察し、円形の細胞の割合を測定した。
【0185】
抗ToxA ELISA、抗ToxB ELISA、赤血球凝集抑制および細胞毒性アッセイの結果は、それぞれ
図18、19、20、21、および22に記載する
。
[1] 第1の断片および第2の断片を含んでなるポリペプチドであって、
(i) 第1の断片はトキシンAの繰り返しドメイン断片であり;
(ii) 第2の断片はトキシンBの繰り返しドメイン断片であり;
(iii) 第1の断片は第1の近位末端を有し;
(iv) 第2の断片は第2の近位末端を有し;かつ
該第1の断片および第2の断片は互いに隣接しており、該ポリペプチドは、トキシンAまたはトキシンBまたはその両方を中和する抗体を惹起する、
前記ポリペプチド。
[2] ポリペプチドが哺乳類宿主においてC.ディフィシル菌株に対して保護的免疫反応を惹起する、1に記載のポリペプチド。
[3] 第1の断片および/または第2の断片が、25%、20%、18%、または15%未満のαヘリックス構造を含有する、1または2に記載のポリペプチド。
[4] 第1の断片および/または第2の断片が、25%、30%、35%、38%、または40%を越えるβシート構造を含有する、1〜3のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[5] 第1の近位末端がショートリピートの範囲内にある、1〜4のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[6] 第2の近位末端がショートリピートの範囲内にある、1〜5のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[7] 第1の近位末端が、ショートリピート-ロングリピート-ショートリピート部分を破壊しない、1〜6のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[8] 第2の近位末端が、ショートリピート-ロングリピート-ショートリピート部分を破壊しない、1〜7のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[9] 第1の近位末端、および第2の近位末端が、ショートリピート-ロングリピート-ショートリピート部分を破壊しない、1〜8のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[10] 第1の近位末端が、トキシンAのアミノ酸1878-1940、2146-2208、2012-2074、2258-2322、2394-2456、2507-2569、もしくは2598-2660の範囲内に含まれない、1〜9のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[11] 第2の近位末端が、トキシンBのアミノ酸1881-1942、2012-2074、2144-2208、もしくは2278-2339の範囲内に含まれない、1〜10のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[12] 第1の断片が、少なくとも100、250、400、または450個のアミノ酸を含んでなる、1〜11のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[13] 第2の断片が、少なくとも100、200、300、または400個のアミノ酸を含んでなる、1〜12のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[14] 第1の近位末端が、トキシンAのリピート部分VIII(アミノ酸2645-2710)の範囲内にある、1〜13のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[15] 第1の近位末端が、トキシンAのアミノ酸2700-2710、または2680-2690の範囲内にある、1〜14のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[16] 第2の近位末端が、トキシンBのリピート部分I(アミノ酸1834-1926)の範囲内にある、1〜15のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[17] 第2の近位末端が、アミノ酸1860-1878、1854-1876の範囲内にある、1〜16のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[18] 第2の近位末端が、トキシンBのリピート部分II(アミノ酸1927-2057)の範囲内にある、1〜15のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[19] 第2の近位末端が、トキシンBのアミノ酸1960-1970、1988-1998、または1867-1877の範囲内にある、1〜15、または18のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[20] 第1の断片が、完全なトキシンA繰り返しドメイン(アミノ酸1832−2710)からなる、1〜13、および16〜19のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[21] 第2の断片が、完全なトキシンB繰り返しドメイン(アミノ酸1833-2366)からなる、1〜15、および20のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[22] 第1の近位末端が、トキシンAのリピート部分VIII(アミノ酸2645-2710)の範囲内にあり、第2の近位末端が、トキシンBのリピート部分I(アミノ酸1834-1926)の範囲内にある、14、15、16、または17のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[23] 第1の近位末端が、トキシンAのリピート部分VIII(アミノ酸2645-2710)の範囲内にあり、第2の近位末端が、トキシンBのリピート部分II(アミノ酸1927-2057)の範囲内にある、14、15、18、または19のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[24] 第1の近位末端が、トキシンAのリピート部分VIIIのショートリピート3(アミノ酸2687-2710)の範囲内にあり、第2の近位末端が、トキシンBのリピート部分IIのショートリピート4(アミノ酸1988-2007)の範囲内にある、14、15、18、または19のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[25] 第1の近位末端が、トキシンAのリピート部分VIIIのショートリピート2(アミノ酸2665-2686)の範囲内にあり、第2の近位末端が、トキシンBのリピート部分IIのショートリピート3(アミノ酸1968-1987)の範囲内にある、14、15、18、または19のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[26] 第1の近位末端が、トキシンAのリピート部分VIIIのショートリピート2(アミノ酸2665-2686)の範囲内にあり、第2の近位末端が、トキシンBのリピート部分Iのショートリピート3(1877-1896)の範囲内にある、14、15、16、または17のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[27] 第1の近位末端が、トキシンAのリピート部分VIIIのショートリピート3(アミノ酸2645-2686)の範囲内にあり、第2の近位末端が、トキシンBのリピート部分Iのショートリピート1(アミノ酸1834-1854)の範囲内にある、1〜13、14、15、16、17、および22のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[28] 第1の近位末端が、トキシンAのリピート部分VIIIのショートリピート3(アミノ酸2687-2710)の範囲内にあり、第2の近位末端が、トキシンBのリピート部分IIのショートリピート4(アミノ酸1988-2007)の範囲内にある、14、15、18、または19のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[29] 第1の近位末端がトキシンAのアミノ酸2700-2710の範囲内にあり、第2の近位末端がトキシンBのアミノ酸1960-1970の範囲内にある、23に記載のポリペプチド。
[30] 第1の近位末端がトキシンAのアミノ酸2680-2690の範囲内にあり、第2の近位末端がトキシンBのアミノ酸1960-1970の範囲内にある、23に記載のポリペプチド。
[31] 第1の近位末端がトキシンAのアミノ酸2700-2710の範囲内にあり、第2の近位末端がトキシンBのアミノ酸1988-1998の範囲内にある、23に記載のポリペプチド。
[32] 第1の近位末端がアミノ酸2680-2690の範囲内にあり、第2の近位末端がアミノ酸1860-1878の範囲内にある、23に記載のポリペプチド。
[33] ポリペプチドがさらにリンカーを含んでなる、1〜32のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[34] リンカーが1-19個のアミノ酸を含んでなる、33に記載のポリペプチド。
[35] リンカーがグリシンリンカーである、33または34に記載のポリペプチド。
[36] リンカーが、第1の断片の近位末端と、第2の断片の近位末端の間にある、33〜35のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[37] ポリペプチドが、より大きい融合タンパク質の一部である、1〜36のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[38] ポリペプチドが、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号21、配列番号23、配列番号25、または配列番号27の免疫原性断片を含んでなる、1〜37のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[39] ポリペプチドが、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号21、配列番号23、配列番号25、または配列番号27のうち、少なくとも500、600、700、750、800、850、または900アミノ酸の免疫原性断片を含んでなる、1〜38のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[40] ポリペプチドが、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号21、配列番号23、配列番号25、または配列番号27の変異体を含んでなる、1〜39のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[41] ポリペプチドが、トキシンAからの450、475、500、525、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、または850個を越えるアミノ酸を含んでなる、1〜40のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[42] ポリペプチドが、トキシンAからの850、825、800、775、750、725、700、675、650、625、または600個未満のアミノ酸を含んでなる、1〜41のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[43] ポリペプチドが、トキシンBからの350、375、400、425、450、475、500、または525個を越えるアミノ酸を含んでなる、1〜42のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[44] ポリペプチドが、トキシンBからの525、500、475、または450個未満のアミノ酸を含んでなる、1〜43のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[45] (i) 配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、または配列番号34、または配列番号35;
(ii) 配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、または配列番号34、または配列番号35に対して少なくとも90%、95%、98%、99%、または100%相同性を有する変異体;または
(iii) 配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、または配列番号34、または配列番号35のうち少なくとも250、280、300、350、380、400、430、450、480、500、530、550、580、または600アミノ酸からなる断片
を含んでなるポリペプチド。
[46] ポリペプチドが、トキシンAから450、475、500、525、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、または850個を越えるアミノ酸を含んでなる、45に記載のポリペプチド。
[47] ポリペプチドが、トキシンAから850、825、800、775、750、725、700、675、650、625、または600個未満のアミノ酸を含んでなる、45または46に記載のポリペプチド。
[48] ポリペプチドが、トキシンBから350、375、400、425、450、475、500、もしくは525個を越えるアミノ酸を含んでなる、45〜47のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[49] ポリペプチドが、トキシンBから525、500、475、または450個未満のアミノ酸を含んでなる、45〜48のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[50] ポリペプチドが、トキシンAまたはトキシンBまたはその両方を中和する抗体を惹起する、45〜49のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[51] ポリペプチドが、哺乳類宿主においてC.ディフィシル菌株に対して保護的免疫反応を惹起する、45〜50のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[52] ポリペプチドが、25%、20%、18%、または15%未満のαヘリックス構造を含有する、45〜51のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[53] ポリペプチドが、25%、30%、35%、38%、または40%を超えるβシート構造を含有する、45〜52のいずれか1つに記載のポリペプチド。
[54] 1〜53のいずれか1つに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
[55] 誘導可能なプロモーターに連結された、54に記載のポリヌクレオチドを含んでなる、ベクター。
[56] 誘導可能なプロモーターが、十分量のIPTGの添加によって活性化される、47に記載のベクター。
[57] 55もしくは56に記載のベクター、または54に記載のポリヌクレオチドを含有する、宿主細胞。
[58] 宿主細胞がグラム陰性細菌である、57に記載の宿主細胞。
[59] 宿主細胞が大腸菌(E.coli)である、57に記載の宿主細胞。
[60] 1〜45のいずれか1つに記載のポリペプチド、および製薬上許容される添加剤を含んでなる、免疫原性組成物。
[61] さらにアジュバントを含んでなる、60に記載の免疫原性組成物。
[62] さらに追加の抗原を含んでなる、60または61に記載の免疫原性組成物。
[63] 追加の抗原が、肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)、インフルエンザ菌(H.influenzae)、髄膜炎菌(N.meningitidis)、大腸菌(E.coli)、モラクセラ・カタラーリス(M.catarrhalis)、破傷風、ジフテリア、百日咳、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、腸球菌、および黄色ブドウ球菌(S.aureus)からなる1群から選択される細菌に由来する抗原である、62に記載の免疫原性組成物。
[64] 60〜63のいずれか1つに記載の免疫原性組成物を含んでなる、ワクチン。
[65] C.ディフィシル疾患の治療または予防における、60〜63のいずれか1つに記載の免疫原性組成物、または64に記載のワクチンの使用。
[66] C.ディフィシル疾患の治療または予防に使用するための、60〜63のいずれか1つに記載の免疫原性組成物、または64に記載のワクチン。
[67] C.ディフィシル疾患の予防用または治療用の薬剤の調製における、60〜63のいずれか1つに記載の免疫原性組成物、または64に記載のワクチンの使用。
[68] 60〜63に記載の免疫原性組成物、または64に記載のワクチンを患者に投与することを含む、C.ディフィシル疾患を予防または治療する方法。