特許第5952404号(P5952404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952404
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】信号筒点火装置
(51)【国際特許分類】
   F42B 3/117 20060101AFI20160630BHJP
   F42B 4/26 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   F42B3/117
   F42B4/26
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-526688(P2014-526688)
(86)(22)【出願日】2012年7月27日
(86)【国際出願番号】JP2012069196
(87)【国際公開番号】WO2014016958
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】513244753
【氏名又は名称】カーリットホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩井 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】福田 光寿
(72)【発明者】
【氏名】飯田 穣
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5917142(US,A)
【文献】 英国特許出願公開第2166850(GB,A)
【文献】 特開2005−141707(JP,A)
【文献】 実開平06−054750(JP,U)
【文献】 特開2006−097929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C06C 9/00
F41B 15/00
F42B 3/117
F42B 3/26
F42B 4/26 − 4/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号筒を挿入可能な中空部を備えた保持部と、前記中空部の上部開口を被覆する天板および保持部周壁の三方の側面を被覆する側壁とを備えたスライド蓋からなり、前記保持部周壁の左右側面にはガイド溝が、また、前記スライド蓋の左右側壁には該ガイド溝に嵌合し該ガイド溝に沿って移動可能な凸条部がそれぞれ設けられ、前記スライド蓋は側壁が設けられていない開放部から前記保持部を横方向に取り外し可能に形成され、前記スライド蓋の引き抜き動作時に前記天板の裏側に具備された摺付薬が信号筒の発火薬に摺動するよう形成されていることを特徴とする信号筒点火装置。
【請求項2】
該ガイド溝と凸条部はともにスライド蓋の引き抜き方向へ斜め下方に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の信号筒点火装置。
【請求項3】
前記スライド蓋には引っ張り部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の信号筒点火装置。
【請求項4】
前記保持部の側面側の周壁には、上方へ突出する周壁上端が延設されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の信号筒点火装置。
【請求項5】
前記天板には、前記周壁上端を挿入可能なスリットが形成されていることを特徴とする請求項4に記載の信号筒点火装置。
【請求項6】
前記信号筒が、紙筒内に発炎筒用料薬が充填され、円筒頂部に発火薬が備えられている発炎筒であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の信号筒点火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発炎又は発煙剤を充填した信号筒の点火装置に関し、更に詳細には、一回の動作で確実な点火が可能な一挙動式の点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発炎又は発煙剤を充填した信号筒の点火装置として、一挙動式のものと二挙動式のものが知られている。これらのうち、二挙動式のものは、摺付薬等が設けられた蓋体を信号筒本体から取り外し、さらに、かかる摺付薬等を信号筒本体の発火薬に擦って着火させるという二つの動作が必要であった。それに対し、一挙動式のものは、着火動作をより簡略化し、蓋体を信号筒本体から取り外すと同時に、蓋体内部に設けた摺付薬と信号筒本体の発火薬が摩擦して着火するという一動作で着火が行えるというものであり、非常時・緊急時には、より簡易に着火が行える一挙動式の方が有利であった。
【0003】
例えば、かかる一挙動式の点火装置として、特許文献1には、キャップを取り除いたときに該キャップに一端が固定されたフレキシブル部材の擦り薬が信号筒の発火薬に接することによって着火させることができる一挙動点火機構が開示されている。
【0004】
しかしながら、このものは、キャップを外してから点火するまでの動作距離が長いため、点火の確実性が十分ではないものと想定される。そして、特許文献1の方法によれば、引き手を発炎方向に引くおそれがあるため、作業者の危険性が高くなることが予想される。さらに、その構成が複雑になる分、部品点数が多くなり、製造コストが嵩むとともに、不良・不具合が発生する確率が高くなるものと思われる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−97929
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、従来の一挙動式の点火装置のかかる欠点を克服し、簡便な動作で安全且つ確実に点火し、より少ない部品数で構成された信号筒点火装置の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、信号筒を挿入可能な中空部を備えた保持部と、前記中空部の上部開口を被覆する天板および保持部周壁の三方の側面を被覆する側壁とを備えたスライド蓋からなり、前記保持部周壁の左右側面にはガイド溝が、また、前記スライド蓋の左右側壁には該ガイド溝に嵌合し該ガイド溝に沿って移動可能な凸条部がそれぞれ設けられ、前記スライド蓋は側壁が設けられていない開放部から前記保持部を横方向に取り外し可能に形成され、前記スライド蓋の引き抜き動作時に前記天板の裏側に具備された摺付薬紙が信号筒の発火薬に摺動するよう形成されていることを特徴とする信号筒点火装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる信号筒点火装置は、スライド蓋を保持部から横方向に引き抜くことにより、天板の裏側に設けられた点火手段が信号筒の発火薬に摺動して確実に点火することができる。さらに本発明の信号筒点火装置を構成する部品が保持部とスライド蓋のみであるため、製造コストを抑えることができる。
【0009】
また、本発明の信号筒点火装置で、保持部周壁のガイド溝とスライド蓋の凸条部が傾斜して形成されているものは、スライド蓋がガイド溝の傾斜に沿って移動するため、引き抜き動作が進むにつれ、摺付薬はより発火薬に押し付けられて摺動し、点火の確実性が向上する。
【0010】
さらに、本発明の信号筒点火装置で、天板が可撓性を有しているものは、発火薬の高さのバラツキに対しても、安定して点火させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の信号筒点火装置の正面図
図2】本発明の信号筒点火装置の側面図
図3】本発明の信号筒点火装置の背面図
図4】本発明の信号筒点火装置の天面図
図5】本発明の信号筒点火装置の底面図
図6】本発明の信号筒点火装置の開状態における斜視図
図7】(a)、(b)、(c)本発明の信号筒点火装置の一連の開動作をあらわす一部切り欠き断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の信号筒点火装置の実施態様を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0013】
図1は本発明の信号筒点火装置の正面図、図2は同側面図、図3は同背面図、図4は同天面図、図5は同底面図である。図中、1は信号筒点火装置、2は保持部、3はスライド蓋、21は周壁、22は切り欠き、23は平坦部、24はガイド溝、31は天板、32は側壁、33は引き抜き部、34は接続部、35は凸条部、36は摺付薬紙、211は周壁上端、241は係止凹部、311はスリット、351は係止突起をそれぞれ示す。
【0014】
図1ないし図5に示すように、本発明の信号筒点火装置1は、基本的な態様として信号筒に装着可能な中空柱状の保持部2と、かかる保持部2に着脱可能なスライド蓋3により構成されている。スライド蓋3は、一方が開放して底面視で略コの字形状に形成された側壁を有し、かかる側壁の開放部側から保持部2を横方向にスライドして着脱することができるよう形成されている。以下、各部材について詳述する。
【0015】
本実施態様では、保持部2は角部を落とした略四角柱形状に形成され、その周壁21は、正面、背面、および左右側面と、それらの4つの周壁面の間の4つの角面から構成されている。また、内部には信号筒を挿入できる上下が開口した中空部25を有し、その内径は信号筒本体を圧入可能な寸法に形成されている。かかる構成により、下部開口から中空部25に信号筒の頭部を圧入嵌着することで信号筒本体を保持することができるとともに、上部開口からは信号筒の頭頂部を露出させることができる。
【0016】
スライド蓋3は、保持部2に装着した状態で中空部25の上部開口を被覆する天板31と、周壁21の三方の側面を被覆する側壁32により構成される。本実施態様では、側壁32は保持部2の周壁21の正面から左右側面にかけて被覆するように形成され、周壁21の背面側には側壁を設けずに開放している。かかる開放部37から保持部2の着脱が可能になっている。
【0017】
スライド蓋3の天板31には、左右の側壁32に沿ってスリット311が形成されており、保持部2への装着時には、かかるスリット311内に保持部2の側面側の周壁上端211が挿入される。また、正面側の側壁32の下部からは、引き抜き部33が垂設されている。引き抜き部33は、側壁32に対して接続部34で折り曲げ可能に連接され、指を挿入可能な穴部331を有するリング状に形成されている。なお、かかる引き抜き部33は、本実施態様のように側壁32の下部に垂設されるものに限定されるものではなく、例えば、正面側の側壁32から前方に突出形成された持ち手状(コーヒーカップなどの持ち手と同様)に形成しても良い。
【0018】
また、天板31の裏側には点火手段として摺付薬を塗布した摺付薬紙36が貼付されている(図示せず)。かかる摺付薬紙36は、スライド蓋3の取り外し時に信号筒4の頭頂部の発火薬41と摺動し、点火させることができる。よって、摺付薬紙36の貼付位置は、スライド蓋3の引き抜き動作中に確実に発火薬41と摺動する場所であればよいが、未使用時に誤って発火薬と接することがないよう、閉状態では発火薬41よりも後方にセットバックして設けることが好ましい。なお、摺付薬紙36と信号筒4の発火薬41との摺動をより確実にし、発火薬の高さのバラツキなどに対しても対応できるよう、天板31は可撓性を有する材料で形成することが好ましい。なお、本実施態様では、天板31の裏側に摺付薬を塗布した摺付薬紙36が貼付されているが、摺付薬をスライド蓋3に具備する方法はこれに限らず、例えば、天板31の裏側に摺付薬を直接塗布してもよい。
【0019】
図6は、本発明の信号筒点火装置1の分解斜視図である。図に示すように、保持部2の周壁21の左右側面には、ガイド溝24が凹設されている。かかるガイド溝24はスライド蓋3の引き抜き方向に向けて斜め下方に傾斜して形成されており、背面側の端部には、他のガイド溝24部分よりも一段深く窪んだ係止凹部241が形成されている。なお、ガイド溝24の傾斜角度に関しては、スライド蓋3の取り外し時に摺付薬紙36が発火薬41と確実に摺動すれば特に制限はないが、スライド蓋3の天板31に必要以上の負荷(上方向への押し上げ)をかけない範囲に設定することが好ましく、具体的には、水平から10〜20°の範囲の傾斜角度が好ましく、特に水平から15°の傾斜角度が最も好ましい。
【0020】
保持部2の周壁21は、正面側が他の周壁部分よりも高さが低く形成されており、その上端から中空部25の周縁にかけて、平坦部23が形成されている。そして、側面側の周壁21には、かかる平坦部23より更に上方へ突出する周壁上端211が板状に延設されている。そして、背面側の周壁21には、周壁上端211よりもおよそスライド蓋3の天板31の厚み分だけ凹状に切り欠いて低く形成された切り欠き部22が形成されている。また、平坦部23には摺付薬紙36と発火薬41の摺動を妨げない位置に信号筒4の圧入を制御するじゃま板等を設け、かかるじゃま板等に信号筒4の頭頂部を当接させることにより、頭頂部の高さを一定にすることができる。
【0021】
図6に示すように、スライド蓋3の左右の側壁32の内側には、その下端に、保持部2のガイド溝24に嵌合し、ガイド溝24に沿って移動可能な凸条部35が突設されている。凸条部35はスライド蓋3の引き抜き方向に向けて斜め下方に傾斜して形成されており、背面側の端部には、他の凸条部35部分よりも高く突出する係止突起351が形成されている。かかる係止突起351をガイド溝24の係止凹部241に係止することで、未使用時にスライド蓋3を保持部2に対して固定して装着することができる。なお、係止突起351と係止凹部241の互いに係合しあう面はともに引き抜き方向へ傾斜して形成されており、係止突起351に所定の引っ張り力を加えることにより、係止突起351はかかる傾斜面を利用してガイド溝24の中に移動し、これにより両者の係合状態は解除される。
【0022】
以下、図7(a)ないし(d)により、スライド蓋3の一連の引き抜き動作について説明する。図7(a)は、本発明の信号筒点火装置1が信号筒4の頭部に装着された状態で、スライド蓋3は閉状態となっている。図に示すように、信号筒4の頭頂部には、発火薬41が突出するように形成されており、閉状態では、天板31により被覆された状態となっている。この状態では、スライド蓋3の摺付薬紙36は発火薬41と接していないため、未使用時(保管時)の不用意な点火を防ぐことができる。また、凸条部35の係止突起351は、ガイド溝24の係止凹部241に係止しており、スライド蓋3は保持部2にロックして固定された状態となっており、スライド蓋3の誤作動を防ぐことができる。
【0023】
図7(a)の状態で、使用者は信号筒3の本体部分を片手で保持しつつ、もう一方の手で引き抜き部33を接続部34で折り曲げ、引き抜き方向に引き起こす。そして、そのまま引き抜き部33を斜め下方に引っ張る。このとき、引き抜き部33を引く方向としてはガイド溝24の傾斜の延長方向であることが好ましい。
【0024】
係止突起351と係止凹部241の係止状態により、多少の引っ張り力ではスライド蓋3の引き抜き動作は開始しないが、ある一定の引っ張り力を超えたところで、両者の係合が解除され、引き抜き動作が開始する。引き抜き動作が開始すると、凸条部35がガイド溝24内を移動し、スライド蓋3はガイド溝24の傾斜に沿って引き抜かれるため、引き抜き動作が進むにつれて斜め下方へと移動する。そして、図7(b)のように、引き抜き動作が一定の程度まで進むと、摺付薬紙36と発火薬41と摺動が開始する。その後、スライド蓋3はガイド溝24の傾斜に沿って移動するため、引き抜き動作が進むにつれ、摺付薬紙36はより発火薬41に押し付けられて摺動し、点火の確実性が向上する。なお、係止突起351と係止凹部241の係止力は任意に設定することができるが、ある一定の係止力を超えたところでその係止がはずれるようにすることで、スライド蓋3はある一定の引っ張り力を加えないと動かない構造となるため、結果的に、未使用時の安全性が向上するとともに、引き抜き動作の方向、力量、速度などのバラツキを抑えることができる。
【0025】
図7(b)から引き抜き動作を続けると、スライド蓋3はガイド溝24の傾斜に沿って更に斜め下方へと移動し、摺付薬紙36が発火薬41に摺動する。このとき、天板31が可撓性を有していると、その可撓性とスリット311が相俟って上に撓むことができ、引き抜き動作時に、図7(c)のように天板31が発火薬41に押し付けられてより確実に摺動し、発火薬41の高さのバラツキを吸収し、安定して点火させることができる。
【0026】
図7(c)から更に引き抜き動作を続けると、図7(d)のようにスライド蓋3の凸条部35がガイド溝24の正面側の端部から完全に引き抜かれ、保持部2からの引き抜き作業が完了する。
【0027】
本発明の信号筒点火装置1を構成する保持部2およびスライド蓋3は、それぞれ、真空注型により一体的に形成されている。このように、一体成型することにより、部品数を低減することができ、製造コストを抑えることができる。また、それぞれの部材の好ましい材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレンテフレタート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、変性ポリフェニレンエーテル等が挙げられ、より好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレンの可撓性を有する汎用樹脂である。
【0028】
本発明の信号筒点火装置1は、自動車用等に用いられる一般的に発炎筒について使用可能であるが、好ましくは、紙筒内に料薬(粒状発炎剤、固体状発炎剤)が充填され、円筒頂部に発火薬が備えられている発炎筒を挙げることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 … … 信号筒点火装置
2 … … 保持部
3 … … スライド蓋
4 … … 信号筒
21 … … 周壁
22 … … 切り欠き部
23 … … 平坦部
24 … … ガイド溝
25 … … 中空部
31 … … 天板
32 … … 側壁
33 … … 引き抜き部
34 … … 接続部
35 … … 凸条部
36 … … 摺付薬紙
41 … … 発火薬
211 … … 周壁上端
241 … … 係止凹部
311 … … スリット
331 … … 穴部
351 … … 係止突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7