(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るコネクタについて、コネクタが適用可能な輸液セットとの関係に基づき詳細に説明する。なお、コネクタは、輸液セットへの適用に限定されないことは勿論である。
【0019】
コネクタ10は、既述したように、患者に輸液を行う輸液ラインにおいて、複数のチューブ12同士を接続する機能を有しており、例えば、
図1に示すような輸液セット14に適用される。この輸液セット14は、上流側が図示しない輸液バックに接続されるとともに、下流側が図示しない留置針に接続され、輸液バックから患者に輸液剤を投与する輸液ラインとして構築される。
【0020】
輸液セット14を流通する輸液剤としては、薬液、補正用電解質液、生理食塩水等、生体に投与し得るあらゆる流体が含まれる。また、輸液剤が薬液である場合は、例えば、鎮静薬、静脈麻酔薬、麻酔系鎮痛薬、局所麻酔薬、非脱分極性筋弛緩薬、昇圧薬、降圧薬、冠血管拡張薬、利尿薬、抗不整脈薬、気管支拡張薬、止血剤、ビタミン剤、抗生剤、脂肪乳剤等の種々の薬剤を選択することができる。
【0021】
輸液セット14のチューブ12には、例えば、輸液バックから供給される輸液剤の流量を視認可能な点滴筒16、輸液剤の流量を調整するクレンメ18、輸液ラインに存在する空気を排出(又は供給)するエアベントフィルター20、チューブ12を閉塞するクランプ22等が設けられる。なお、輸液セット14は、
図1に示す構成に限定されないことは勿論であり、上述した部材以外にも、輸液ラインに配設される種々の部材(例えば、輸液ポンプや逆流防止弁等)を適用することができる。
【0022】
輸液セット14のチューブ12は、可撓性を有する管体であり、輸液剤の流路を構成する。コネクタ10は、上記のような輸液セット14に適用される場合、例えば、クレンメ18とエアベントフィルター20の間に配置される。すなわち、コネクタ10は、点滴筒16から下流に延在する第1チューブ12aと、エアベントフィルター20の上流に延在する第2チューブ12bとの間を流通可能に接続することでメインラインの流路を構成する。また、コネクタ10は、別ラインとして構成される第3チューブ12cが接続されることで、コネクタ10の内部においてメインラインと別ラインを連通させる。
【0023】
なお、コネクタ10は、上記の配設位置に限定されず、輸液セット14の所望箇所に配設することが可能である。また、輸液セット14(輸液ライン)には、コネクタ10が1つ配設されるだけでなく、複数配設されてもよい。
【0024】
以下、本実施形態に係るコネクタ10の具体的な構成について詳述していく。コネクタ10は、メインラインを構成する第1チューブ12aが接続される第1ポート24と、同じくメインラインを構成する第2チューブ12bが接続される第2ポート26と、別ラインを構成する第3チューブ12cが接続される第3ポート28とを有する。
図2に示すように、第1及び第2ポート24、26は、コネクタ10の主要部を構成するハウジング30(筐体)に設けられている。第3ポート28は、ハウジング30と別の部材からなるキャップ32(蓋体)、支持体34(
図3参照)及び弁体36によって構成され、各部材がハウジング30に組み付けられることで構築される。
【0025】
また、ハウジング30には、コック37が回転自在に挿入される。コック37は、ユーザによりハウジング30と相対的に回転操作され、第1〜第3ポート24、26、28の連通を切り換える機能を有する。すなわち、コネクタ10は、コック37の回転操作下に、第1〜第3チューブ12a〜12cを流れる輸液剤の流通状態を切換可能な三方活栓として構成されている。
【0026】
ハウジング30とキャップ32は、互いに接続されることで、輸液剤の流路38a(
図4参照)を内部に有するコネクタ10の本体38として構成される。支持体34及び弁体36は、この本体38内に収容され、弁体36の上面のみがキャップ32の開口部40から露出される。
【0027】
コネクタ10は、成形加工の容易性や低コスト化等を考慮して、ハウジング30、キャップ32、支持体34及びコック37が樹脂材料により成形されている。この樹脂材料としては、チューブ12よりも剛性を有するものを適用することが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
【0028】
図2及び
図3に示すように、ハウジング30は、第1〜第3ポート24、26、28の接続基点をなす筒部42を中央に備え、この筒部42に対しコック37が挿入されるように構成される。第1及び第2ポート24、26は、この筒部42の側周面に連結されている。第1ポート24は、円筒状に形成され、筒部42からメインラインの上流に向かって直線状に延出している。この第1ポート24の内部には、輸液剤を流通可能な第1ポート流路44が軸方向に沿って延設されている。また、第1ポート24の延出端には、第1ポート24の径方向外側に突出し、第1チューブ12aのオスコネクタ(図示せず)が螺合可能な接続端部24aが形成されている。
【0029】
一方、第2ポート26は、筒部42を挟んだ第1ポート24の反対側でメインラインの下流に向かって直線状に延出している。この第2ポート26の内部には、輸液剤を流通可能な第2ポート流路48が軸方向に沿って延設されている。すなわち、第1及び第2ポート24、26は、互いの軸心が一致し直線状に一列に並ぶように形成されている。
【0030】
第2ポート26は、第1ポート24よりも細く、延出端に向かって緩やかに縮径する雄型のルアーテーパに形成されており、第2チューブ12bの管内(内腔)に挿入される。また、第2ポート24の筒部42近くの外周面には、周方向に沿って突起部46が形成されている。この突起部46を越えるまで第2チューブ12bを進入させることで、第2チューブ12bと第2ポート26が液密に接続される。
【0031】
ハウジング30の筒部42は、第1及び第2ポート24、26を連結支持し、且つコック37の軸部91を内部に収容可能な太さに形成されている。また、筒部42の外周面には、第1及び第2ポート24、26から周方向に90°ずれた位置で、径方向外側に所定長さ延出する第3ポート支持部43が設けられる。筒部42の胴体部分は、第1及び第2ポート24、26の軸線と、第3ポート支持部43の軸線とを含む面に対し直交方向に延在している。筒部42の内部には、延在方向に沿って挿入孔42aが貫通形成されており、コック37が筒部42の延在方向の一端部から挿入される。
【0032】
コック37は、ユーザが操作可能なハンドル90と、ハンドル90に連結される軸部91とを有する。ハンドル90は、軸部91に連なる中央部から第1〜第3延出部90a〜90cがT字状をなすように延出しており、これら第1〜第3延出部90a〜90cは、第1〜第3ポート24、26、28の流通状態を示すように構成されている。例えば、第1〜第3延出部90a〜90cが第1〜第3ポート24、26、28の延出方向と一致している場合(
図2の状態)は、第1〜第3ポート24、26、28がハウジング30内において互いに連通し、メインラインを流れる第1輸液剤と別ラインを流れる第2輸液剤が合流可能となる(以下、
図2の状態を全ポート連通状態ともいう)。また例えば、コック37を90°回転し、第1延出部90aが第3ポート28の延出方向に一致し、第3延出部90cが第2ポート26の延出方向に一致している場合は、第3ポート28と第2ポート26のみがハウジング30内において互いに連通し、第1ポート24から供給される第1輸液剤が遮断され、第3ポート28から供給される第2輸液剤が第2ポート26にそのまま排出される。
【0033】
コック37の軸部91は、筒部42の挿入孔42aに対し回転自在且つ液密に摺接される。この軸部91の外周面には、所定形状に形成された案内溝部92が設けられている。軸部91が挿入された筒部42内では、この案内溝部92の形状(経路)に基づき第1及び第2輸液剤が案内される。
【0034】
案内溝部92は、軸部91の軸方向略中央部で第1〜第3延出部90a〜90cに対応する位置に第1端部93、第2端部94、第3端部95を有し、一の端部からハンドル90と反対側の軸部91の延出端側に所定長延在した位置で屈曲し、その屈曲部から周方向に延在することで他の端部の屈曲部に連なるクランク状に形成されている。第1端部93と第3端部95、第2端部94と第3端部95は、互いに周方向に90°ずれた位置に刻設されており、各端部同士の間には軸部91の周壁91aが介在している。
【0035】
図2に示すように、コック37が筒部42に挿入された状態では、ハウジング30内の流路(第1ポート流路44、第2ポート流路48、第3ポート支持部43の内部流路50)が軸部91に対向する。従って、第1〜第3延出部90a〜90cが第1〜第3ポート24、26、28の延出方向と一致している場合(全ポート連通状態)は、ハウジング30内の流路に案内溝部92の各端部が対向することになり、案内溝部92の各端部を介してハウジング30内の流路を互いに連通させることができる。一方、全ポート連通状態から、筒部42と相対的にコック37を45°回転すると、ハウジング30内の流路に周壁91aが対向することになり、ハウジング30内の流路が軸部91により遮断される。なお、ハウジング30及びコック37には、コック37を所定角度(例えば、45°)間隔で回転したときに、ユーザにクリック感を認識させる構造が設けられてもよい。
【0036】
コネクタ10の第3ポート28は、第3ポート支持部43により筒部42から所定間隔離れた位置で支持されている。この第3ポート支持部43の内部には、
図3及び
図4に示すように、筒部42と第3ポート28の間を連通する内部流路50(流通部)が形成されている。すなわち、内部流路50の下側の開口50bは、筒部42の挿入孔42aに連通し、挿入孔42aに挿入されたコック37の姿勢に基づき、案内溝部92に対する連通及び遮断が切り換えられる。また、内部流路50の上側の開口50aは、第3ポート28内に形成される空間部(貫通孔76)に連通している。
【0037】
第3ポート支持部43の上部には、径方向外側に拡径した円盤台状に形成され、キャップ32及び支持体34を取り付けるための取付部56が設けられている。取付部56は、上面中心部にて内部流路50の開口50aを露出する円形状の露出口58と、露出口58の周囲を囲う平坦状に形成された配置部60と、配置部60の外側で第1及び第2ポート24、26上に形成された引掛壁62及び溝部64とを含む。配置部60には支持体34が配置され、引掛壁62にはキャップ32の係止爪66が係止されるように構成されている。
【0038】
露出口58の直径は、内部流路50の開口50aの幅よりも大きく形成されている。内部流路50の開口50aと露出口58の口縁の間には、所定角度に傾斜したストッパ部59が形成されている。ストッパ部59は、第3ポート28にオスコネクタ100が挿入される際に、弁体36の所定以上の弾性変形を規制することで、オスコネクタ100が弁体36のスリット86を貫通することを防止する機能を有している(
図5Bも参照)。
【0039】
第3ポート28は、上述したようにキャップ32、支持体34及び弁体36により構成される接続端子であり、取付部56に固定接続されることで、第1及び第2ポート24、26の軸方向に対し直交方向に設けられる。第3ポート28には、第3チューブ12cのオスコネクタ100(挿入体)が接続される。
【0040】
図2及び
図4に示すように、キャップ32は、弁体36を内部に収容し、第3チューブ12cのオスコネクタ100と接続可能な外形に形成されている。キャップ32は、取付部56に接続される下部側のフランジ部68と、フランジ部68から上方向に所定長さ延出する端子部70とを有する。
【0041】
フランジ部68は、取付部56の配置部60を覆う外径に形成されている。端子部70を挟んだフランジ部68の周縁の所定の対称位置には、径方向外側に突出する一対の係止爪66が連設されている。一対の係止爪66は、互いの間隔が一対の引掛壁62よりも若干短い鈎状に形成され、筒部42の溝部64に嵌め込まれることで、引掛壁62に引っ掛かるように構成されている。
【0042】
端子部70は、フランジ部68より小さい直径を有する筒状に形成され、その内部には軸方向(上下方向)に沿って孔部72が形成されている。この孔部72の上部側には、径方向内側に狭まった開口部40が形成され、開口部40の下側には、開口部40より大径に形成され、支持体34及び弁体36を収容可能な収容部74が設けられている。
【0043】
開口部40は、端子部70の上縁部から下側に突出するリング状の突起部70aに囲まれることで、所定の内径(弁体36が挿入可能な内径)を有するように構成される。また、端子部70の外周面には、ルアーロック方式のオスコネクタを螺合するための螺旋状の突条70bが形成されている。
【0044】
ここで、輸液セット14の別ラインとして、コネクタ10に接続される第3チューブ12cのオスコネクタ100について、
図4を参照して説明する。このオスコネクタ100は、例えば、ISOにより規格化されたスリップルアー方式のオスコネクタが適用される。具体的には、オスコネクタ100は、コネクタ10(キャップ32)内部に挿入される挿入筒102を有する。
【0045】
挿入筒102は、軸方向に直線状に延在し、コネクタ10との接続時には、先端部(
図4中の下端部)が弁体36のスリット86を押し広げる構成となっている。この挿入筒102の内部には、第3チューブ12cから供給される第2輸液剤を流通可能な流通路104が形成されている。つまり、流通路104は、別ラインの流路(以下、別ライン流路110という)として構成されている。
【0046】
また、挿入筒102の外周面は、先端部に向かって縮径するテーパ面102aに形成されている。すなわち、挿入筒102は、コネクタ10内に所定量挿入した位置の胴体部の外径がキャップ32の開口部40の内径に一致し、先端部の外径が胴体部よりも若干小径に形成されている。挿入筒102は、コネクタ10内への進出にともないテーパ面102aが開口部40に嵌合することで、第3ポート28(キャップ32、支持体34、弁体36)との接続がなされる。
【0047】
なお、第3ポート28に接続されるオスコネクタは、上記のスリップルアー方式のオスコネクタ100に限定されないことは勿論である。例えば、
図4において破線で示すように、挿入筒102の周囲を囲う接続筒106が設けられ、接続筒106の内周面に設けられた螺旋状の突起108がキャップ32の突条70bに螺合されるルアーロック方式のオスコネクタ100Aを適用してもよい。
【0048】
一方、第3ポート28の支持体34は、内部流路50から弁体36を所定間隔離間した位置に支持する機能を有する。すなわち、第3ポート28とオスコネクタ100の接続においては、オスコネクタ100(挿入筒102)を一定以上挿入する分の空間部が必要となる。支持体34は、その上部において弁体36を支持するとともに、上下に延在する貫通孔76により前記空間部を構築している。
【0049】
支持体34は、取付部56の配置部60に配置される鍔部78と、この鍔部78の上面から上方に突出した支持筒80とを有する。また、支持筒80上部の外径は、胴体部分よりも小径に形成された保持部82に構成されており、この保持部82の外側に弁体36の固定部84が嵌められるようになっている。
【0050】
貫通孔76は、鍔部78及び支持筒80の内部を貫通形成されている。この貫通孔76は、支持体34が配置部60に配置された状態で露出口58に連通する。すなわち、貫通孔76は、支持体34により周方向に囲われる側壁76aと、露出口58の周囲に形成されるストッパ部59(底壁)と、ストッパ部59に対向配置される弁体36とにより閉塞された空間部に形成される。
【0051】
この貫通孔76は、第3ポート28内の流路として構成され、内部流路50から第1輸液剤が流入及び流出される。つまり、本体38内の流路38aは、第1及び第2ポート流路44、48、案内溝部92、内部流路50、及びこの貫通孔76によって構成される。また、貫通孔76は、挿入筒102の挿入にともない、該挿入筒102と弾性変形した弁体36とが移動可能となっており、貫通孔76及び開口部40は弁体36の変位を許容可能な空間として構成されている。
【0052】
第3ポート28の弁体36は、他の部材と異なり弾性材料により成形されることで、オスコネクタ100の挿入にともない弾性変形可能な弾性力を有している。弁体36を構成する弾性材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリブタジエン系、ニトリル系、クロロプレン系等の合成ゴムやポリイソプレン等の天然ゴム、又はウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム等の熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマー、或いは他のエストラマー等が挙げられる。
【0053】
弁体36は、オスコネクタ100の挿入及び離脱に基づき開閉するスリット86を中央部に備え、このスリット86の開閉により別ライン流路110を連通及び遮断する機能を有している。弁体36は、比較的厚い膜厚を有する円盤状に形成され、キャップ32及び支持体34に挟持される外側の固定部84と、固定部84に連設された内側の変形部88とを備える。変形部88の上部には、開口部40内に挿入される上部膨出部88aが形成されている。
【0054】
スリット86は、変形部88の上下に貫通形成され、上部膨出部88aが開口部40に収容された状態(弾性変形していない状態)で閉塞状態となる。このスリット86は、オスコネクタ100の押し込みに従って、変形部88が固定部84と相対的に変位(弾性変形)することで徐々に開口していく。
【0055】
第3ポート28は、オスコネクタ100が挿入されていない状態では、変形部88下側の貫通孔76が空洞状となり、プライミング前の空気や内部流路50を流通する第1輸液剤等が貫通孔76に滞留し易くなる。そのため、コネクタ10は、筒部42から内部流路50を介して貫通孔76内に第1輸液剤を案内することで、停滞流体を排出するように構成されている。以下、停滞流体を排出する構成について具体的に説明していく。
【0056】
図2及び
図5Aに示すように、内部流路50は、平面視で、筒部42の延在方向に沿う方向に若干長く形成されており、短手方向中央部には内部流路50を2つの流路(流入路52、流出路54)に隔てる隔壁51が形成されている。この隔壁51に対応するように、コック37の案内溝部92の第3端部95には、軸部91の軸方向に沿って溝を分断する案内壁95aが形成されている(
図3参照)。この案内壁95aは、第1端部93から案内溝部92を通って流通する第1輸液剤を第3ポート支持部43の流入路52に導く機能を有する。これにより、第1輸液剤は、流入路52を通って貫通孔76に流入され、その後、貫通孔76から隔壁51を隔てた流出路54に排出される。
【0057】
流入路52(流入部)及び流出路54(流出部)は、平面視(
図5A参照)で、隔壁51を対称軸線とする左右対称形状の長孔に形成されている。流入路52の上部側の開口52a、及び流出路54の上部側の開口54aは、傾斜するストッパ部59の下部側に連なっている。
【0058】
ここで、コネクタ10内の流路について理解を容易にするため、
図2、
図4及び
図5Bに基づき全ポート連通状態における輸液剤の流れを説明する。第1輸液剤は、第1チューブ12aから第1ポート流路44に流入され、第1ポート流路44を通って筒部42側に流動する。そして、筒部42内において、第1輸液剤は、第1端部93から案内溝部92に流入され、案内溝部92のクランク状に沿って第3端部95に流動する(なお、
図4に示す案内溝部92は概略的に図示したものである)。第3端部95において、第1輸液剤は、案内壁95aにより上方(第3ポート28側)に案内され、これにより第3ポート支持部43の流入路52を通って貫通孔76に流入される。
【0059】
第3ポート28にオスコネクタ100が接続されていない場合、第1輸液剤は、貫通孔76内を流動した後、流出路54に流出される。そして、第1輸液剤は、流出路54を通って第3端部95に流入され、案内溝部92のクランク状に沿って第2端部94に流動する。さらに、第1輸液剤は、第2端部94から第2ポート流路48に流入し、最後に第2ポート流路48から第2チューブ12bに排出される。
【0060】
一方、第3ポート28にオスコネクタ100が接続されている場合は、
図5Bに示すように、貫通孔76内に挿入された挿入筒102によりスリット86が開口する。また、挿入筒102は、ストッパ部59により弁体36の弾性変形が規制されることで、弁体36を内部流路50の開口50a付近まで押し込んだ状態で、その挿入が停止される。このため、スリット86は、内部流路50の開口50a付近に配置されることになり、第1輸液剤が流入路52を移動してくると流入路52から流通路104に円滑に流れ込み、この流通路104を介して供給される第2輸液剤と容易に混合することになる。また、第1及び第2輸液剤は、混合状態で流通路104から流出路54に円滑に排出される。
【0061】
ところで、内部流路50の開口50aは、貫通孔76の下側の断面に比べて狭く形成されており、貫通孔76を構成する側壁76aと、内部流路50の開口52aとの間には、貫通孔76の底壁として構成されるストッパ部59が介在している。このように開口52aが側壁76aと離間した位置で底壁に連設されていると、貫通孔76の側壁76a側に停滞流体が滞り易くなる(
図6C及び
図6Dも参照)。しかしながら、本実施形態に係るコネクタ10は、切り欠き溝96(切り欠き部)を備えることにより停滞流体のスムーズな排出を実現している。
【0062】
図4及び
図5Aに示すように、切り欠き溝96は、流入路52及び流出路54の各々に、すなわち内部流路50に一対で連設されている。一対の切り欠き溝96、96は、流入路52及び流出路54を構成し隔壁51と対向する壁部52b、54bに形成され、流入路52及び流出路54の長手方向中央部にそれぞれ設けられている。
【0063】
切り欠き溝96は、平面視で、隔壁51と対向する深部側が円弧状を呈しており、側面断面視で、流入路52及び流出路54の挿入孔42a近傍位置からストッパ部59まで傾斜して延設されている。換言すれば、切り欠き溝96は、貫通孔76に向かって漸深するテーパ形状に形成されている。そして、貫通孔76の境界部分では、切り欠き溝96の最深部96a(円弧状の頂部)が側壁76aに連なっている。
【0064】
このため、切り欠き溝96は、流入路52及び流出路54を流れる輸液剤を貫通孔76の側壁76aに導くことができる。この切り欠き溝96の断面積は、流入路52及び流出路54の断面積よりも充分に狭いため、切り欠き溝96に流入した輸液剤の流速を速めつつ側壁76aに案内することが可能である。従って、流入路52の切り欠き溝96を流れる第1輸液剤は、切り欠き溝96から貫通孔76に流入されると、側壁76a側を沿うように貫通孔76を流動する。この結果、第1輸液剤は、貫通孔76の側壁76aを周方向に回り込むとともに(
図5A参照)、側壁76aを軸方向に沿って進み(
図4参照)、弁体36の底面に沿って反対側の側壁76aに回り込む。これにより、貫通孔76において停滞流体が滞り易い内面付近を容易に流動させることができる。
【0065】
また、切り欠き溝96が流入路52及び流出路54の壁部52b、54bに連なる傾斜角度α1は、ストッパ部59が壁部52b、54bに連なる傾斜角度α2よりも
大きくなっている。従って、流入路52に流入された第1輸液剤を早い段階で切り欠き溝96に入り込ませて、貫通孔76の側壁76aまでスムーズに流動させることができる。
【0066】
本実施形態に係るコネクタ10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用及び効果について説明する。なお、コネクタ10は、第3チューブ12cを接続しない場合に、より大きな効果を得られるものであるため、以下の説明では、第1及び第2チューブ12a、12bのみを接続した場合について詳述する。
【0067】
先ず、
図6C及び
図6Dに基づき、切り欠き溝96が設けられていない、すなわち、内部流路50と側壁76aの間に段差部分が形成されている従来のコネクタ200について簡単に説明する。なお、以下の説明において、本実施形態に係るコネクタと同一の構成又は同一の機能を有する構成については、同一の符号を付しその詳細な説明については省略する。
【0068】
図6Cに示すように、コネクタ200の第3ポート28が上向きとなっている場合は、流入路52から貫通孔76に第1輸液剤が流入されると、その流入方向に沿うように弁体36側に流動し、さらに弁体36の下側を通って流出路54側に回りこむ。このため、貫通孔76の側壁76a付近に第1輸液剤の流動力が伝わりにくく、側壁76a付近には停滞流体が発生しやすい。なお、
図6C及び
図6Dでは、停滞流体が生じやすい箇所を網状のハッチングで示すものとする。
【0069】
また、
図6Dに示すように、コネクタ200の第3ポート28が横向きとなっている場合は、内部流路50と側壁76aとの間に段差部分が形成されているため、貫通孔76の下側の側壁76a付近には重力に従って停滞流体が一層溜まり易くなるという不都合が生じる。さらに、第1輸液剤は積極的に重力方向に流動するよう作用するため、空気等の第1輸液剤より軽い流体は、貫通孔76の上側の側壁76a付近に一層溜まり易くなる。
【0070】
これに対し、本実施形態に係るコネクタ10は、流入路52及び流出路54から貫通孔76にかけて切り欠かれた切り欠き溝96を有する。そのため、
図6Aに示すように、コネクタ10の第3ポート28が上向きとなっている場合は、切り欠き溝96を流れる第1輸液剤が貫通孔76の側壁76aに向かって流入される。よって、切り欠き溝96から貫通孔76に流入した第1輸液剤は、側壁76a及び弁体36の底面に沿うように回り込むことになり、側壁76a付近に生じ易い停滞流体を大幅に抑制することができる。
【0071】
そして、貫通孔76を回り込んだ第1輸液剤は、切り欠き溝96が連設された流出路54に容易に入り込む。すなわち、流出路54側の切り欠き溝96も側壁76aに連なるように形成されているので、側壁76aを回り込んだ第1輸液剤が流出路54側の切り欠き溝96から円滑に流出される。そのため、貫通孔76に第1輸液剤が留まることが抑止され、停滞流体の発生をより一層低減することができる。
【0072】
また、
図6Bに示すように、コネクタ10の第3ポート28が横向きとなっている場合でも、切り欠き溝96を流れる第1輸液剤は、貫通孔76の側壁76a付近を回り込むように導かれる。従って、コネクタ10の第3ポート28を横向きにしたとしても、停滞流体を充分に抑制することができる。
【0073】
以上のように、本実施形態に係るコネクタ10によれば、内部流路50から貫通孔76の側壁76aに連なるように切り欠かれた切り欠き溝96を備えることで、切り欠き溝96に沿って輸液剤を貫通孔76の側壁76a付近に案内することが可能となり、側壁76a付近に生じ易い停滞流体を低減することができる。また、コネクタ10の第3ポート28を横向きにして使用した場合でも、停滞流体が溜まり易い貫通孔76の下部側及び上部側に対し、切り欠き溝96を通して流体を流動させることができ、停滞流体の発生が低減される。従って、コネクタ10は、使用時の第3ポート28の向きにかかわらず、停滞流体の発生を大幅に抑制することができる。これにより、輸液の安全性を高め、所望の流体を良好に供給することが可能となる。
【0074】
また、切り欠き溝96が、流入路52の開口52a及び流出路54の開口54aの長手方向中央部を含むように連設されることで、例えば、第1輸液剤が貫通孔76に流出される際には、開口52aから最も離れた位置にある貫通孔76の側壁76aに第1輸液剤を導くことができる。よって、停滞流体の発生を一層抑止することができる。
【0075】
なお、本実施形態に係るコネクタ10の切り欠き部は、上述した構成に限定されるものではなく、種々の構成を適用できることは勿論である。例えば、切り欠き部は溝状に形成されず、内部流路50と貫通孔76を連通する孔に形成されてもよい。
【0076】
また、切り欠き溝96が設けられるコネクタは、三方活栓に限定されるものではないことは勿論である。例えば、
図7に示す第1変形例に係るコネクタ10Aのように、第1ポート24と第2ポート26が連通する内部流路50Aの上部位置に第3ポート28が連設された3ポートコネクタ(Tポートコネクタ)に切り欠き溝96を設けてもよい。
【0077】
また、
図8Aに示す第2変形例に係るコネクタ10Bは、流入路52に連設される切り欠き溝97が流入路52の長手方向の中央部から一端側にかけて設けられている。この切り欠き溝97は、第1輸液剤が流出路54の延在方向に沿って長手方向の中央部から一端側に寄るように傾いて形成されており、貫通孔76に流出された第1輸液剤が貫通孔76の側壁76aの周方向に沿って回るように構成されている。これにより、貫通孔76に流入された第1輸液剤は、より大きな流動(流体の乱れ)を生じさせることができ、停滞流体の発生を抑制することができる。なお、この場合、流出路54に連設される切り欠き溝97も、流出路54の長手方向の中央部から他端側にかけて形成されていることで、切り欠き溝97を介して第1輸液剤を良好に排出することができる。
【0078】
さらに、
図8Bに示す第3変形例に係るコネクタ10Cは、流入路52及び流出路54に複数(
図8B中では各3つ)の切り欠き溝98が連設された構成となっている。このように、流入路52及び流出路54に複数の切り欠き溝98が形成されていても、貫通孔76の側壁76a付近に対し第1輸液剤を流動させ、停滞流体の発生を抑制することができる。
【0079】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。