(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るコネクタについて、コネクタが適用可能な輸液セットとの関係に基づき詳細に説明する。なお、コネクタは、輸液セットへの適用に限定されないことは勿論である。
【0018】
コネクタ10は、既述したように、患者に輸液を行う輸液ラインにおいて、複数のチューブ12同士を接続する機能を有しており、例えば、
図1に示すような輸液セット14に適用される。この輸液セット14は、上流側が図示しない輸液バックに接続されるとともに、下流側が図示しない留置針に接続され、輸液バックから患者に輸液剤を投与する輸液ラインとして構築される。
【0019】
輸液セット14を流通する輸液剤としては、薬液、補正用電解質液、生理食塩水等、生体に投与し得るあらゆる流体が含まれる。また、輸液剤が薬液である場合は、例えば、鎮静薬、静脈麻酔薬、麻酔系鎮痛薬、局所麻酔薬、非脱分極性筋弛緩薬、昇圧薬、降圧薬、冠血管拡張薬、利尿薬、抗不整脈薬、気管支拡張薬、止血剤、ビタミン剤、抗生剤、脂肪乳剤等の種々の薬剤を選択することができる。
【0020】
輸液セット14のチューブ12には、例えば、輸液バックから供給される輸液剤の流量を視認可能な点滴筒16、輸液剤の流量を調整するクレンメ18、輸液ラインに存在する空気を排出(又は供給)するエアベントフィルター20、チューブ12を閉塞するクランプ22等が設けられる。なお、輸液セット14は、
図1に示す構成に限定されないことは勿論であり、上述した部材以外にも、輸液ラインに配設される種々の部材(例えば、輸液ポンプや逆流防止弁等)を適用することができる。
【0021】
輸液セット14のチューブ12は、可撓性を有する管体であり、輸液剤の流路を構成する。コネクタ10は、上記のような輸液セット14に適用される場合、例えば、クレンメ18とエアベントフィルター20の間に配置される。すなわち、コネクタ10は、点滴筒16から下流に延在する第1チューブ12aと、エアベントフィルター20の上流に延在する第2チューブ12bとの間を流通可能に接続する。また、コネクタ10は、第1チューブ12aと第2チューブ12bによって構成されるメインラインに対し、別ラインとして構成される第3チューブ12cが接続可能な3ポートコネクタとなっている。
【0022】
なお、コネクタ10は、上記の配設位置に限定されず、輸液セット14の所望箇所に配設することが可能である。また、輸液セット14(輸液ライン)には、コネクタ10が1つ配設されるだけでなく、複数配設されてもよい。
【0023】
以下、本実施形態に係るコネクタ10の具体的な構成について詳述していく。
図2に示すように、コネクタ10は、メインラインを構成する第1チューブ12aが接続される第1ポート24と、同じくメインラインを構成する第2チューブ12bが接続される第2ポート26と、別ラインを構成する第3チューブ12cが接続される第3ポート28とを有する。第1及び第2ポート24、26は、輸液剤の流路を内部に有するハウジング30(筐体)に設けられている。第3ポート28は、ハウジング30と別の部材からなるキャップ32(蓋体)、支持体34(
図4参照)及び弁体36によって構成され、各部材がハウジング30に組み付けられることで構築される。
【0024】
ハウジング30とキャップ32は、互いに接続されることで、輸液剤の流路38a(
図3A及び
図4参照)を内部に有するコネクタ10の本体38として構成される。支持体34及び弁体36は、この本体38内に収容され、弁体36の上面のみがキャップ32の開口部40から露出される。
【0025】
コネクタ10は、成形加工の容易性や低コスト化等を考慮して、ハウジング30、キャップ32及び支持体34が樹脂材料により成形されている。この樹脂材料としては、チューブ12よりも剛性を有するものを適用することが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
【0026】
図2、
図3A及び
図3Bに示すように、ハウジング30は、有底筒状のコネクタ基部42を中央部に有し、第1ポート24及び第2ポート26はこのコネクタ基部42の側周面に連結されている。第1ポート24は、略円筒状に形成され、コネクタ基部42からメインラインの上流に向かって直線状に延出している。この第1ポート24の内部には、輸液剤を流通可能な第1ポート流路44が軸方向に沿って延設されている。
【0027】
第1ポート24は、延出端に向かって緩やかに縮径する雄型のルアーテーパとして構成され、第1チューブ12aの管内(内腔)に挿入される。また、第1ポート24のコネクタ基部42近くの外周面には、周方向に沿って突起部46が形成されている。この突起部46を越えるまで第1チューブ12aを進入させることで、第1チューブ12aと第1ポート24が液密に接続される。
【0028】
一方、第2ポート26は、コネクタ基部42を挟んだ第1ポート24の反対側で第1ポート24と同形状に形成され、コネクタ基部42からメインラインの下流に向かって直線状に延出している。この第2ポート26の内部には、輸液剤を流通可能な第2ポート流路48が軸方向に沿って延設されている。すなわち、第1及び第2ポート24、26は、互いの軸心が一致し直線状に一列に並ぶように形成され、これにともない第1及び第2ポート流路44、48も直線状に連通している。コネクタ10は、この直線状に連なる第1及び第2ポート流路44、48をメインラインの流路(以下、メインライン流路50という)とし、メインライン流路50を流れる第1輸液剤をスムーズに流通可能としている。
【0029】
有底円筒状のコネクタ基部42は、その側周面において第1及び第2ポート24、26を連結支持する厚みを有する。コネクタ基部42の内部には、第1ポート流路44と第2ポート流路48の間を連通する内部流路52が形成されている。内部流路52は、メインライン流路50の一部を担い、メインライン流路50を直線状に結ぶように延設されている。また、内部流路52の軸方向中央部には、第1輸液剤の流通を上下方向(キャップ32の接続方向)に誘導する案内壁部54が形成されている。
【0030】
案内壁部54は、内部流路52の軸方向中央部から第1ポート24寄りに肉厚に形成された膨出部55を有する。膨出部55の第1ポート流路44側には、第1ポート流路44に直交するように対向する上流側壁面55aが設けられ、第2ポート流路48側には、上流側壁面55aに比べて緩やかに傾斜した下流側壁面55bが形成されている。また、上流側壁面55aには、幅方向中央部を切り欠いた切り欠き溝55cが形成されている。この案内壁部54は、第1ポート流路44から流入された第1輸液剤を、上流側壁面55a及び切り欠き溝55cによって上方(キャップ32側)に案内する。これにより、例えば、第3ポート28に第3チューブ12cが接続されていない状態(弁体36の閉塞状態)では、第3ポート28の空間部(貫通孔76)内に第1輸液剤を勢いよく導き、空間部内に滞留を生じさせずに、第1輸液剤を下流側に流動させることができる。
【0031】
一方、コネクタ基部42の上部側は、キャップ32及び支持体34を取り付けるための取付部56として構成されている。取付部56は、コネクタ基部42の上面を円形状に切り欠かれて形成されており、中心部分にて内部流路52を露出する円形状の露出口58と、平坦状に形成され露出口58の周囲を囲う配置部60と、配置部60の外側で第1及び第2ポート24、26の根本部上に形成された引掛壁62及び溝部64とを含む。配置部60には支持体34が配置され、引掛壁62にはキャップ32の係止爪66が係止されるように構成されている。
【0032】
露出口58の直径は、内部流路52の幅よりも大きく形成されており、内部流路52は、この露出口58の中央部を溝状に切り欠くように延在している。内部流路52を構成する一対の側壁52aに連なる側部には、露出口58の口縁側に向かって壁面が連設されており、この壁面は、弁体36の所定以上の弾性変形を規制するストッパ部90となっている。このストッパ部90については、後に詳述する。
【0033】
第3ポート28は、上述したようにキャップ32、支持体34及び弁体36により構成される接続端子であり、この取付部56に固定接続されることで、第1及び第2ポート24、26の軸方向に対し直交方向に設けられる。すなわち、コネクタ10は、メインライン流路50に対し第3ポート28の分岐角度が90°となるTポートコネクタとして構成される。この第3ポート28には、第3チューブ12cのオスコネクタ100(挿入体)が接続される。
【0034】
図2及び
図4に示すように、キャップ32は、弁体36を内部に収容し、第3チューブ12cのオスコネクタ100と接続可能な外形に形成されている。キャップ32は、コネクタ基部42に接続される下部側のフランジ部68と、フランジ部68から上方向に所定長さ延出する端子部70とを有する。
【0035】
フランジ部68は、コネクタ基部42の配置部60を覆う外径に形成されている。端子部70を挟んだフランジ部68の周縁の所定の対称位置には、径方向外側に突出する一対の係止爪66が連設されている。一対の係止爪66は、互いの間隔が一対の引掛壁62よりも若干短い鈎状に形成され、コネクタ基部42の溝部64に嵌め込まれることで、引掛壁62に引っ掛かるように構成されている。
【0036】
端子部70は、フランジ部68より小さい直径を有する筒状に形成され、その内部には軸方向(上下方向)に沿って孔部72が形成されている。この孔部72の上部側には、径方向内側に狭まった開口部40が形成され、開口部40の下側には、開口部40より大径に形成され、支持体34及び弁体36を収容可能な収容部74が設けられている。
【0037】
開口部40は、端子部70の上縁部から下側に突出するリング状の突起部70aに囲まれることで、所定の内径(弁体36が挿入可能な内径)を有するように構成される。この開口部40の内径は、コネクタ10の取扱性等が勘案され、例えば4mm程度に設定される。また、端子部70の外周面には、ルアーロック方式のオスコネクタを螺合するための螺旋状の突条70bが形成されている。
【0038】
ここで、輸液セット14の別ラインとして、コネクタ10に接続される第3チューブ12cのオスコネクタ100について、
図4を参照して説明する。このオスコネクタ100は、例えば、ISOにより規格化されたスリップルアー方式のオスコネクタが適用される。具体的には、オスコネクタ100は、コネクタ10(キャップ32)内部に挿入される挿入筒102を有する。
【0039】
挿入筒102は、軸方向に直線状に延在し、コネクタ10との接続時には、先端部(
図4中の下端部)が弁体36のスリット86を押し広げる構成となっている。この挿入筒102の内部には、第3チューブ12cから供給される第2輸液剤を流通可能な流通路104が形成されている。つまり、流通路104は、別ラインの流路(以下、別ライン流路110という)として構成されている。
【0040】
また、挿入筒102の外周面は、先端部に向かって縮径するテーパ面102aに形成されている。すなわち、挿入筒102は、コネクタ10内に所定量挿入した位置の胴体部の外径がキャップ32の開口部40の内径(例えば、4mm)に一致し、先端部の外径が胴体部よりも若干小径に形成されている。挿入筒102は、コネクタ10内への進出にともないテーパ面102aが開口部40に嵌合することで、第3ポート28(キャップ32、支持体34、弁体36)との接続がなされる。
【0041】
なお、第3ポート28に接続されるオスコネクタは、上記のスリップルアー方式のオスコネクタ100に限定されないことは勿論である。例えば、
図4において破線で示すように、挿入筒102の周囲を囲う接続筒106が設けられ、接続筒106の内周面に設けられた螺旋状の突起108がキャップ32の突条70bに螺合されるルアーロック方式のオスコネクタ100Aを適用してもよい。
【0042】
一方、第3ポート28の支持体34は、内部流路52から弁体36を所定間隔離間した位置に支持する機能を有する。すなわち、第3ポート28とオスコネクタ100の接続においては、オスコネクタ100(挿入筒102)を一定以上挿入する分の空間部が必要となる。支持体34は、その上部において弁体36を支持するとともに、上下に延在する貫通孔76により前記空間部を構築している。
【0043】
支持体34は、コネクタ基部42の配置部60に配置される鍔部78と、この鍔部78の上面から上方に突出した支持筒80とを有する。また、支持筒80の上部の外径は、胴体部分よりも小径に形成された保持部82に構成されており、この保持部82の外側に弁体36の固定部84が嵌められるようになっている。
【0044】
貫通孔76は、鍔部78及び支持筒80の内部を貫通形成されている。この貫通孔76は、支持体34が配置部60に配置された状態で露出口58に連通する。貫通孔76は、第3ポート28内の流路として構成され、別ライン流路110からメインライン流路50に第2輸液剤を流通させる。つまり、本体38内の流路38aは、第1及び第2ポート流路44、48、内部流路52、及びこの貫通孔76によって構成される。また、貫通孔76は、挿入筒102の挿入にともない、該挿入筒102と弾性変形した弁体36とが移動可能となっており、貫通孔76及び開口部40は弁体36の変位を許容可能な空間として構成されている。
【0045】
第3ポート28の弁体36は、他の部材と異なり弾性材料により成形されることで、オスコネクタ100の挿入にともない弾性変形可能な弾性力を有している。弁体36を構成する弾性材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリブタジエン系、ニトリル系、クロロプレン系等の合成ゴムやポリイソプレン等の天然ゴム、又はウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム等の熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマー、或いは他のエストラマー等が挙げられる。
【0046】
弁体36は、オスコネクタ100の挿入及び離脱に基づき開閉するスリット86を中央部に備え、このスリット86の開閉により別ライン流路110を連通及び遮断する機能を有している。弁体36は、比較的厚い膜厚を有する円盤状に形成され、キャップ32及び支持体34に挟持される外側の固定部84と、固定部84に連設された内側の変形部88とを備える。変形部88は、開口部40内に挿入される上部膨出部88aを有しており、この上部膨出部88aの外径は、開口部40の内径に応じて、例えば4mm程度に設定されている。
【0047】
スリット86は、変形部88の上下に貫通形成され、開口部40に収容された状態(弾性変形していない状態)で閉塞状態となる。スリット86の長手方向の長さは、変形部88の大きさにもよるが、例えば2mm程度に設定されている。スリット86は、オスコネクタ100の押し込みに従って、変形部88が固定部84と相対的に変位(弾性変形)することで徐々に開口していく。
【0048】
変形部88の弾性変形は、第3ポート28に対し挿入筒102が所定量進入した位置において、ストッパ部90によって規制される(
図5も参照)。以下、このストッパ部90の構成について説明する。
【0049】
図3A、
図3B及び
図4に示すように、ストッパ部90は、露出口58内で内部流路52の側部に設けられている。内部流路52の幅Dは、挿入筒102の先端部の外径φよりも狭く形成されており、挿入筒102がコネクタ10内に進出すると、このD>φの関係性により内部流路52の側部に位置するストッパ部90が挿入筒102の進出を阻む。そして、ストッパ部90は、挿入筒102の挿入に基づき弾性変形した変形部88についてもそれ以上の弾性変形を規制する。
【0050】
このストッパ部90は、露出口58の口縁から内部流路52に向かって比較的緩やかに傾斜する第1テーパ部92と、第1テーパ部92及び内部流路52の側壁52aの間に連設され第1テーパ部92よりも急に傾斜する第2テーパ部94とを有する。第1及び第2テーパ部92、94は、弾性変形した変形部88を斜めに受け止めることができる。特に、第1テーパ部92は、弾性変形した変形部88の底面の形状に沿い易いように傾斜しており、変形部88の底面の広い範囲に面接触可能である。
【0051】
一方、第2テーパ部94は、変形部88の弾性変形に基づき開口したスリット86に対し浅い角度で傾斜しており、流通路104から流入される第2輸液剤を内部流路52に円滑に案内する。また、第2テーパ部94は、膨出部55(案内壁部54)に連なっていることで、内部流路52に流入した第1輸液剤を貫通孔76内に淀みなく導くことが可能である。すなわち、オスコネクタ100を第3ポート28に接続していない状態では、第1輸液剤が案内壁部54により上方向に案内された際に、第1及び第2テーパ部92、94の傾斜に沿うように第1輸液剤を案内することができ、貫通孔76内全体に第1輸液剤を流動させることができる。これにより、貫通孔76内における第1輸液剤の滞留が大幅に低減される。
【0052】
さらに、内部流路52の側壁52a、第1及び第2テーパ部92、94は、滑らかな曲面を有するように連なっている。そのため、挿入筒102により変形部88が押し込まれたとしても、変形部88を強引に押し潰すことが回避される。また、滑らかな曲面に形成されたストッパ部90は、変形部88に対する損傷を抑止することができる。
【0053】
本実施形態に係るコネクタ10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用及び効果について説明する。
【0054】
コネクタ10は、上述したように上流側の第1ポート24に第1チューブ12aが接続され、下流側の第2ポート26に第2チューブ12bが接続された状態で、メインライン流路50に沿って第1輸液剤が流通する。従って、コネクタ10の内部流路52及び貫通孔76には、メインライン流路50を流通する第1輸液剤が満たされた状態となり、このような状態のコネクタ10の第3ポート28に対し、第3チューブ12cのオスコネクタ100が差し込まれる。
【0055】
なお、オスコネクタ100の挿入前には、外部から埃や菌等の混入を防ぐため、第3ポート28をアルコール等により洗浄する。この際、弁体36(上部膨出部88a)の上面が平坦状に形成されていることで、弁体36の洗浄を容易に行うことができる。
【0056】
図4に示すように、オスコネクタ100の接続においては、挿入筒102の先端を弁体36上面に対向させて進出移動することで、挿入筒102を弁体36に当接する。そして、挿入筒102を下方(コネクタ10内部)側にさらに進出させることで、弁体36を下方に押し込む。この押し込みにより、変形部88は、キャップ32と相対的に下方に変位(弾性変形)し、スリット86を開口させる。
【0057】
挿入筒102を下方側に所定量挿入すると、
図5に示すように、変形部88の底面がストッパ部90に当接する。そのため、ストッパ部90は、変形部88の弾性変形を規制することになり、これと同時に変形部88を押し下げていた挿入筒102の進出を規制する。換言すれば、変形部88は、ストッパ部90と挿入筒102により挟持された状態となる。
【0058】
ここで、ストッパ部90は、挿入筒102のテーパ面102aがキャップ32の開口部40に嵌合した位置で、挿入筒102の進出を停止するように構成されている。従って、ストッパ部90により規定された挿入長まで挿入筒102を挿入すると、挿入筒102が開口部40に液密に密着され、コネクタ10に簡単に接続保持される。また、挿入筒102がコネクタ10内に必要以上に挿入されることが回避されるため、テーパ面102aにより開口部40を押し広げることを抑止することができる。
【0059】
ストッパ部90は、第1及び第2テーパ部92、94により、変形部88の底面を斜めに受け入れた状態となり、変形部88の広範囲にわたって面接触する。また、第3ポート28内の貫通孔76は、弾性変形した弁体36が挿入筒102の周囲を充満した状態となり、挿入筒102の先端部及びテーパ面102aは、この弁体36から強い摩擦力を受けるように面接触される。従って、挿入筒102は、第3ポート28に強固に保持される。また仮に、挿入筒102を第3ポート28に対し斜めに挿入したとしても、弁体36を介して挿入筒102の姿勢を容易に補正することができる。
【0060】
また、挿入筒102とストッパ部90との間に変形部88が挟み込まれた状態では、変形部88によって挿入筒102がそれ以上深く挿入されることが阻止され、挿入筒102がスリット86を貫通することが確実に防止される。すなわち、ストッパ部90は、変形部88の所定以上の弾性変形を規制することで、スリット86の所定以上の開口を防ぐことができる。従って、挿入筒102がスリット86内に挿入されて、スリット86を押し広げることが阻まれ、変形部88がスリット86から破れる不都合を大幅に低減することができる。さらに、ストッパ部90が滑らかな曲面(第1及び第2テーパ部92、94)を有することで、ストッパ部90による変形部88の破損も回避される。
【0061】
挿入筒102の挿入規制位置では、開口したスリット86を介して、流通路104(別ライン流路110)とメインライン流路50とが良好に連通する。なお、コネクタ10からオスコネクタ100を離脱する(後退させる)と、変形していた弁体36が積極的に弾性復元し、オスコネクタ100の離脱方向(上方)に変位する。この弾性復元によりキャップ32の開口部40に変形部88が入り込むとともに、スリット86の閉塞がなされる。この際、挿入筒102がスリット86を貫通していなかったことにより、スリット86の閉塞性の低下が阻止されるため、貫通孔76が迅速に遮断され、コネクタ10から輸液剤の漏れが抑制される。
【0062】
以上のように、本実施形態に係るコネクタ10によれば、弁体36が変位する進路上にストッパ部90を備えることで、オスコネクタ100をコネクタ10に接続する際に、オスコネクタ100により弁体36を変形しても、ストッパ部90において弁体36の所定以上の弾性変形を規制することができる。このように、弁体36の弾性変形が規制されると、オスコネクタ100のスリット86の貫通を効果的に防止することができる。その結果、コネクタ10は、オスコネクタ100によってスリット86が押し広げられて弁体36が破れることを大幅に低減することができ、複数回又は長期間にわたって良好に使用することが可能となる。
【0063】
この場合、ストッパ部90が挿入筒102の外径よりも幅狭な内部流路52の側部の壁面によって構成されることで、ストッパ部90を別に設けることなく、弁体36の弾性変形を簡単に規制することができ、製造コストを低減することができる。
【0064】
また、ストッパ部90が内部流路52を露出する露出口58に連なるように形成されることで、コネクタ10は、弁体36の弾性変形を露出口58付近において規制することができる。そのため、コネクタ10は、露出口58(内部流路52)付近まで挿入筒102を充分に進入させて接続することができ、挿入筒102との接続状態を良好に維持することができる。
【0065】
なお、本発明に係るコネクタ10は、上述した構成に限定されるものではなく、種々の構成を適用できることは勿論であり、以下にその変形例を幾つかあげて説明する。なお、以降の説明において、本実施形態に係るコネクタ10と同一の構成又は同様の機能を有する構成については、同一の符号を付し、その詳細な説明については省略する。
【0066】
〔第1変形例〕
図6に示す第1変形例に係るコネクタ10Aは、キャップ32内に収容される支持体34にストッパ部96を備えた構成となっている。すなわち、ストッパ部96は、貫通孔76の下端側の口部を狭めるように突出形成されており、その上面にて弁体36(変形部88)の所定以上の弾性変形を規制するように構成されている。このように、ストッパ部96がハウジング30以外の部材によって設けられていても、本実施形態に係るコネクタ10のストッパ部90と同様の効果を得ることができる。
【0067】
なお、ストッパ部96は、
図6中に示すように、弁体36との対向面側が平坦状に形成されていてもよく、本実施形態に係るストッパ部90と同様にテーパ部を有するように形成されていてもよい。要するに、ストッパ部90、96は、弁体36が変位する方向に設けられ、弁体36の所定以上の弾性変形を規制できればよく、その形状や配設箇所等については弁体36との関係性によって適宜設定されてよい。
【0068】
〔第2変形例〕
図7A及び
図7Bに示す第2変形例に係るコネクタ200は、第1〜第3ポート202〜206を有する本体208に対し、コック210が回転自在に挿入され、コック210の回転停止位置に基づき内部の輸液剤の流通状態を切り換え可能な三方活栓として構成されている。コック210が挿入される筒部212には、上方向に延出する第3ポート支持部214が設けられ、第3ポート支持部214の上面には、本実施形態に係るコネクタ10と同じ取付部56が形成され、第3ポート206が取り付けられる。第3ポート206は、本実施形態に係るコネクタ10と同様に、キャップ32、支持体(図示せず)、弁体36により構成される。また、第3ポート支持部214の内部には、輸液剤を上下に流通可能な案内流路216が形成されている。
【0069】
取付部56の露出口58は、案内流路216を構成する壁部216aよりも大径に形成されている。そして、露出口58の口縁と案内流路216の開口部218の間に、テーパ状に形成されたストッパ部220が形成されている。ストッパ部220は、案内流路216の壁部216aに連設されており、オスコネクタ(図示せず)により押し込まれた弁体36の所定以上の弾性変形を規制する機能を有している。従って、三方活栓として構成される第2変形例に係るコネクタ200でも、本実施形態に係るコネクタ10と同様の効果を得ることができる。
【0070】
〔第3変形例〕
図8A及び
図8Bに示す第3変形例に係るコネクタ300は、先端ポート302と、基端ポート304とを有するIポートコネクタとして構成されている。このコネクタ300は、例えば、CVカテーテル(中心静脈カテーテル)の接続端子に接続されるものであり、該接続端子の保護キャップとしての機能を有する。
【0071】
コネクタ300の先端ポート302は、ルアーロック方式のオスコネクタとして形成されている。一方、基端ポート304は、本実施形態に係る第3ポート28と同様にキャップ32、支持体(図示せず)、弁体36により構成されており、接続端子との接続がなされる。先端ポート302と基端ポート304との間には、円筒状の中間基部306が形成され、中間基部306の内部には、輸液剤を流通可能な流路308が貫通形成されている。また、中間基部306の上面には、本実施形態に係るコネクタ10と同じ取付部56が形成され、基端ポート304が取り付け可能となっている。
【0072】
取付部56の露出口58は、流路308を構成する壁部308aよりも大径に形成されている。そして、露出口58の口縁と流路308の開口部310の間に、テーパ状に形成されたストッパ部312が形成されている。ストッパ部312は、流路308の壁部308aに連設されており、接続端子により押し込まれた弁体36の所定以上の弾性変形を規制する機能を有している。従って、Iポートコネクタとして構成される第3変形例に係るコネクタ300でも、本実施形態に係るコネクタ10と同様の効果を得ることができる。
【0073】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。