【実施例】
【0019】
(実施例1)
【0020】
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ説明する。各図において対応する部分には同一符号を付し、かかる部分の説明は省略する。
【0021】
図1は、車両における乗員保護の制御系の概略配置を説明する説明図である。同図に示すように、車両1の左右幅の中央に車両の前後方向にセンターラインが想定される。実施例では、車両前方の衝突緩和ゾーンのセンターラインの左側に衝突を検出する一つの加速度センサがサテライトセンサ2として配置されている。サテライトセンサ2は衝突による減速度を検出して電気信号を発生する。サテライトセンサ2の出力信号(検出信号)は信号線を介して制御部3に供給される。
【0022】
制御部3は、車両のほぼ中央部、特に車幅方向に対してほぼ中央部分に配置され、エアバッグ装置、シートベルト装置等の起動を制御する装置であり、マイクロコンピュータシステムなどによって構成される信号処理機能や論理判断機能を供える電子制御装置(ECU)である。制御装置3は、後述のように、主衝突センサ33を内蔵しており、この主衝突センサ検出器33の検出出力とサテライトセンサ2の検出出力とに基づき、それらの論理積をとって衝突の判別を行う。なお、更に、車両サイドや車両後方などに設けられた他の複数のサテライトセンサ(衝突センサ)の検出出力にも基づいて論理積をとるなどして衝突の判別を行うことができ、本発明はそのような構成との組合せを排除するものではないが、発明の要点はオフセット配置されたサテライトセンサ2の信号処理にあるので深く言及しない。
【0023】
制御部3は車両が衝突したと判別すると、起動信号をエアバック装置4に信号線を介して供給する。また、図示しないがシートベルト装置に起動信号を供給する。エアバック装置4はハンドル装置やダッシュパネル等に設けられており、起動信号を受信するとガス発生装置を動作させてエアバックを展開させる。それにより、運転者や同乗者などの乗員の保護が図られる。また、シートベルト装置は起動信号を受信するとガス発生装置や電動モータによるベルトの急速巻き上げを行って衝突による乗員移動を防止する。
【0024】
図2は、制御部3の構成を説明する説明図である。制御部3は、サテライトセンサ2の出力信号を受信してデジタル信号に変換する通信インタフェース31、信号処理や論判断機能を備えて制御アルゴリズムを実行する信号処理部32、加速度センサによって衝突の衝撃を検出する主衝突センサ33、信号処理回路32が発する起動指令信号を受信して点火信号を発生してエアバッグ装置4や図示しないシートベルト装置に供給する起動回路34等を備えている。通信インタフェース31はサテライトセンサ2の出力信号の受信に対応して信号処理部の内蔵タイマ(図示せず)に動作指令信号を送る。内蔵タイマは検出信号発生からの経時時間t
nを出力する。実施例では、車両速度の現在の走行速度を検出するために、車両に搭載された速度センサ(スピードメータ)5から速度信号が信号処理部32に供給される。
【0025】
信号処理部(CPU)32は、サテライトセンサ2、衝突センサ33、速度センサ5等の出力信号に基づいて衝突判断を行う。実施例においては、サテライトセンサ2の配置位置が車両センター位置から偏倚しているのでそれによる感度特性の変化による判別エラーの発生を回避するように信号処理部32で信号処理及び判断アルゴリズムが実行される。
【0026】
次に、信号処理部32におけるサテライトセンサ2の検出出力に基づく衝突判別について説明する。
【0027】
まず、オフセット衝突の場合のサテライトセンサ2の検出出力の例について説明する。
図3は、オフセット衝突の態様を説明する図であり、同図(A)はサテライトセンサ2が車両前方の幅方向におけるセンター位置に配置されている場合を示している。同図(B)はサテライトセンサ2が車両前方の幅方向におけるセンター位置から左側にずれて配置されている場合を示している。
【0028】
図4は、前方衝突を検出するサテライトセンサ(加速度計)2の出力信号(加速度信号)の波形を概略的に説明する説明図である。
図4(A)は、サテライトセンサが車両前方のセンター位置に配置されている場合の信号出力例を示している。
【0029】
図3(A)に示すように、車両が低速で前方左側の障害物に衝突した場合、サテライトセンサ2は出力信号L
Lを発生する。同じ低速度で前方右側の障害物に衝突した場合、サテライトセンサ2は出力信号L
Rを発生する。車両が中速で前方左側の障害物に衝突した場合、サテライトセンサ2は出力信号M
Lを発生する。同じ中速度で前方右側の障害物に衝突した場合、サテライトセンサ2は出力信号M
Rを発生する。車両が高速で前方左側の障害物に衝突した場合、サテライトセンサ2は出力信号H
Lを発生する。同じ高速度で前方右側の障害物に衝突した場合、サテライトセンサ2は出力信号H
Rを発生する。ここで、特定の数値に限定されるものではないが、一例を挙げれば、低速とは0〜5km/h、中速とは5〜20km/h、高速とは20km/h以上とする。
【0030】
図3(A)及び
図4(A)から判るように、サテライトセンサ2が車両のセンターに配置されている場合には、サテライセンサ2は左又は右側の(同じズレ量の)オフセット衝突に対して同じ出力レベルの出力信号を発生する。したがって、例えば、
図4(A)中に示すように、閾値V
Tのレベルを設定することによって車両速度が低速(5km/h以下)の衝突の場合には、衝突と検出しないことによって保護装置(例えば、エアバッグ装置)を動作させないようにし、車両速度が中速以上の場合には乗員保護装置を動作させるようにすることができる。
【0031】
図3(B)及び
図4(B)は、サテライトセンサ2がセンター位置から左にずれて配置されている場合を示している。
図4(B)に示すように、車両が低速で前方左側の障害物に衝突した場合、サテライトセンサ2は出力信号L
Lを発生する。同じ低速度で前方右側の障害物に衝突した場合、サテライトセンサ2は出力信号L
Rを発生する。車両が中速で前方左側の障害物に衝突した場合、サテライトセンサ2は出力信号M
Lを発生する。同じ中速度で前方右側の障害物に衝突した場合、サテライトセンサ2は出力信号M
Rを発生する。車両が高速で前方左側の障害物に衝突した場合、サテライトセンサ2は出力信号H
Lを発生する。同じ高速度で前方右側の障害物に衝突した場合、サテライトセンサ2は出力信号H
Rを発生する。図示の出力信号の波形に示されるように、サテライトセンサ2が左側に片寄って配置されていると、車両前方左側の障害物との衝突に対して(距離的に近いので)サテライトセンサ2の信号出力のレベルが大きくなり、右側の障害物との衝突に対して(距離的に離れるので)サテライトセンサ2の信号出力のレベルが小さくなる。そうすると、
図4(A)に示したような閾値V
Tでは、車両速度が低速で衝突とは判別したくない場合に衝突を検出したり(低速左側衝突)、中速で衝突を検出しなかったり(中速右側衝突)、検出される加速度信号のレベルと車両速度とが対応しない不具合が発生する。したがって、1台のフロントサテライトセンサを車両前方のセンター位置からずらした位置に配置して使用することは通常はない。
【0032】
図5は、実施例における着目点を説明する説明図である。実施例では、1台のフロントサテライトセンサ2を左側にずらして配置してこの出力信号を衝突判別に使用する(右側にずらして配置した場合でも同様に適用できる。)。実施例では、車両の走行速度に対応してサテライトセンサ2の出力信号(加速度)に対する衝突判別の閾値設定を行っている。
図5に示すように、車両速度が低速の領域(0〜5km/h)においては、サテライトセンサ2の出力信号に対して閾値レベルをV
TLに設定する。車両の低速領域では、当該車両自身の運動エネルギーが大きくないため、比較的強い加速度(衝撃)でも乗員保護装置が作動しないようにする。しかし、外部から衝突されたような場合などを考慮すると、必要以上に高い閾値を設定することは好ましくない。そうした条件に基づき、低速の領域の閾値を設定する。それにより、低速における衝突で高価なエアバッグ装置4が起動することを回避する。車両速度が中速の領域(5〜20km/h)においては、サテライトセンサ2の出力信号に対して閾値レベルをV
TMに設定する。車両の中速領域では、低速領域より当該車両は速く動いているため、前方衝突時の加速度は、小さな衝突であっても当然大きくなる。衝突時のフロンド部分の加速度が大きくても、中速領域での衝突時の乗員への障害を考慮すると、低速領域よりも更に強い加速度(衝撃)でも乗員保護装置が作動しないようにする(不作動検出にする)ことが望ましい。そこで、中速領域では、低速領域よりも閾値レベルを高く設定する。車両速度が高速の領域(20km/h以上)においては、サテライトセンサ2の出力信号に対して閾値レベルをV
THに設定して衝突を検出して乗員保護装置を動作させる。車両速度が高速領域では中低速領域よりも車両は速く動いている。そのため当該車両自身運動エネルギーも中速領域以下より高い。衝突時の乗員への傷害を考慮すると、車両速度が高速の場合には衝突から乗員の拘束までの時間をできるだけ短くし、衝撃吸収を開始できる時間を早くすることが望ましい。そこで、早い段階で乗員保護装置を動作させるために閾値レベルを低速領域よりも低く設定する。ちなみに、中速領域と拘束領域にまたがって引かれている「参考ライン」は、閾値レベルを車両速度に応じて設定しない場合の好ましくない例を示している。参考ラインは、中速領域の左側衝突を不作動とした閾値レベルを示す。この参考ラインを高速領域でも利用すると、高速領域の右側衝突の場合に、エアバッグ装置が作動して欲しい状況でも、エアバッグが不作動となってしまう。そこで、実施例では、低速領域、中速領域、高速領域でそれぞれ異なるレベルを設定し、例えば、V
TM>V
TL>V
THとしている(
図5参照)。
【0033】
図6は、制御部3の信号処理部(CPU)32が実行する閾値設定手順を説明するフローチャートである。CPUはサテライトセンサが出力信号を発生したとき(実質的な衝突時点)や車両走行中に周期的に本ルーチンを実行する。CPUは、車両の速度センサ(スピードメータ)から信号処理部に32に送信される速度信号を読取り、現在の車両速度を得る(ステップS110)。この車両速度に基づいてフロントサテライトセンサ2に対する閾値の設定を行う(ステップS130)。例えば、閾値は速度値を入力とし、閾値を出力とする関数V
T(V)として予め記憶しておくことができる。また、メモリに車両速度を引数(例えば、記憶領域のアドレス)として閾値を予め記憶しておくことができる。CPUは読み取った車速に対応する閾値を計算し、あるいはメモリのテーブルから読み出す(ステップS140)。選択した閾値をCPU内部の閾値を記憶する加速度用閾値レジスタに出力する(ステップS150)。この閾値は後述の加速度に基づく衝突の判別(推定)において使用される。なお、閾値計算(あるいは読み出し)ルーチンは、車両走行中にCPUが随時実行することができる。
【0034】
図7は、信号処理部32のCPUが車両センター位置からずれて配置された1つのサテライトセンサ2の出力信号から衝突を判別(推定)する手順を説明するフローチャートである。CPUは、サテライトセンサ2から出力信号(衝突の際には減速度信号)が供給されると、本ルーチンを実行する。まず、CPUは、レジスタに入力されているサテライトセンサ2からの出力信号(加速度データ)を読取り(ステップS2)、この出力信号レベルが本制御アルゴリズムを実行すべきレベルであるかどうかを判別する(ステップS4)。出力信号のレベルが本制御アルゴリズムを実行すべき閾値を超えない場合には(ステップS4;No)、本ルーチンを終了する。
出力信号のレベルが本制御アルゴリズムを実行すべき閾値を超える場合には(ステップS4;Yes)、速度センサ5の出力から車両の走行速度の読取りを行い(ステップS10)、車両速度をレジスタに記憶する(ステップS12)。CPUは車両速度をレジスタ値と比較して、車両速度が高速か、中速か、低速かを判別する(ステップS14,S30,S40)。
【0035】
CPUは、車両速度が高速であると判別したとき(ステップS14;Yes)、レジスタに入力されているサテライトセンサ2の出力信号の加速度データに必要によりフィルタ処理を行う(ステップS16)。CPUは加速度とレジスタに記憶されている高速に対応した閾値V
THとを比較する(ステップS20)。加速度(減速度)のレベルが閾値を超えない場合には(ステップS20;No)、非衝突と判断して終了する。
【0036】
車両速度が低速であると判別したとき(ステップS14;No,S30;Yes)、レジスタに入力されているサテライトセンサ2の出力信号の加速度データに必要によりフィルタ処理を行う(ステップS32)。CPUは加速度とレジスタに記憶されている低速に対応した閾値V
TLとを比較する(ステップS36)。加速度(減速度)のレベルが閾値を超えない場合には(ステップS36;No)、非衝突と判断して終了する。
【0037】
車両速度が中速であると判別したとき(ステップS14;No,S30;No)、レジスタに入力されているサテライトセンサ2の出力信号の加速度データに必要によりフィルタ処理を行う(ステップS40)。CPUは加速度とレジスタに記憶されている低速に対応した閾値V
TMとを比較する(ステップS44)。加速度(減速度)のレベルが閾値を超えない場合には(ステップS44;No)、非衝突と判断して終了する。
【0038】
一方、車両速度が高速であるときにサテライトセンサ2の出力信号である加速度(減速度)が閾値V
THを超えたとき(ステップS20;Yes)、車両速度が中速であるときに加速度(減速度)が閾値V
TMを超えたとき(ステップS44;Yes)、車両速度が低速であるときに加速度(減速度)が閾値V
TLを超えたとき(ステップS36;Yes)、CPUはフラグレジスタの衝突フラグ(衝突信号)をオンに設定する(ステップS50)。衝突フラグがオンに設定されると起動回路34に起動指令信号が送信されて乗員保護装置4に点火信号が送出される。
【0039】
CPUはステップS10〜S50を所定周期(例えば、0.001秒)で繰り返し実行してサテライトセンサの出力信号(瞬時値)をモニタして衝突の有無を判別する。
【0040】
(実施例2)
【0041】
本発明の第2の実施例について説明する。第2の実施例では、フロントサテライトセンサの出力信号(加速度信号)を信号処理部32によって積分処理して速度信号を得る。この速度信号(積分値)に基づいて衝突判別を行う。発明者は車両センター位置から車両幅方向にずれて配置されたサテライトセンサ2の出力信号であっても、これを速度信号とし、衝突を判別する閾値のレベルを出力信号の立ち上がり時点からの経過時間及び車両速度に対応して設定する(あるいは経過時間に応じて変更する)ことによって衝突判別を行うことができることを見い出したものである。
【0042】
図8乃至
図10は、センター位置からずれて配置されたサテライトセンサ2の出力信号の積分値に対して工夫された閾値を使用することによって衝突検出を行うことができるようになることを説明する説明図である。
図10は
図8及び
図9のグラフを重ね合わせた図である。
【0043】
図8及び
図10において、曲線aは右側オフセット衝突の場合で車両が高速域(例えば、60km/h)で走行している場合(
図4(B)参照)の速度信号(サテライトセンサ2の出力信号の積分値)の例を示している。また、図中の曲線V
T(t)はサテライトセンサ2による信号検出の時間経過tと共に値が変化する閾値関数を示している。
図8の例の場合は乗員保護装置、例えば、車両が高速領域なのでエアバッグを早期に展開させることが望ましい展開モードである。
【0044】
また、
図9及び
図10において、図中の曲線bは左側オフセット衝突の場合で車両速度が中速域(例えば、10km/h)の場合の速度信号(サテライトセンサ2の出力信号の積分値)の例を示している。この場合は、乗員保護装置、例えば、エアバッグ装置4を展開させたくない非展開モードである。
【0045】
通常は、
図10に示すように、一方の閾値関数のみ(つまり車両の走行速度に応じて閾値を変えない)では時間軸上のt
2の位置以降でなければ、これらの速度信号a及び速度信号bのレベル差による識別は困難である。しかし、車両が高速で走行している場合は、エアバッグ展開やシートベルト巻き取りの判定のタイミングを早めて乗員保護装置を動作させて、乗員に対して十分な拘束力等が作用するようにすることが望ましい。このためには、時間軸上のt
1付近で衝突を判別することが必要である。
【0046】
そこで、実施例では車両の走行速度vの違いに対応して閾値関数V
T(t)の値を変化させる。すなわち、閾値関数V
T(t)をV
T(t,v)とすることで、判別の難しい二つの衝突モードを区別できるように対処している。
【0047】
例えば、
図8の例においては、車両が高速度(例えば、60km/h)で走行しており、衝突判別用に高速用(あるいは低速・高速用)の閾値関数V
T(t)が設定されている。この閾値関数V
T(t)の値は時間軸上の開始位置t
0からt
1付近の位置までは、閾値の速度はV
THに下げて設定されている。その結果、曲線bと閾値V
THとによって時間軸上のt
1近傍で高速のオフセット衝突を判別することが可能となっている。
【0048】
図9においては、車両が中速度(例えば、10km/h)で走行しており、衝突判別用に中速用の閾値関数V
T(t)が設定されている。この閾値V
Tパターンの時間軸上の開始位置からt
2付近の位置までは、閾値の速度値はV
THより大きいV
TMに設定されている。その結果、曲線aと閾値V
TMとは交差せず、衝突したとは判別しない。それにより、不必要な低速でのエアバッグ装置4やシートベルト装置のプリテンショナ等の作動を回避することができる。
【0049】
(参考例)
【0050】
図11乃至
図13は、2つのサテライトセンサが車両のセンターラインを中心として左右対称的に配置された場合の1つのサテライトセンサの出力信号の速度信号(積分信号)a,bの例を示している。この例では、
図5に示すように、乗員保護装置4を動作させるか否かの基準を車両速度の中速と高速の間に設定している。このため、車両速度中速の左側衝突の信号波形と車両速度高速の右側衝突の信号波形とを区別できるかが一つの判別要素となる。そこで、2つの場合の信号a,bを見分けることを検討する。
【0051】
図11の例においては、車両が高速度(例えば、60km/h)で走行しており、衝突判別用に高速用の閾値関数V
T(t)が設定されている。高速度では車両衝突の際には乗員保護装置を動作させる必要がある。この閾値関数V
T(t)の値は時間軸上の開始位置t
0から時間t
1付近の位置までは、閾値の速度はV
T1に下げて設定されている。その結果、曲線aと閾値V
T1とによって時間軸上のt
1近傍で高速のオフセット衝突を判別することが可能となっている。
【0052】
図12の場合は、車両が中速度(例えば、10km/h)で走行しており、衝突判別用に中速用の閾値関数V
T(t)が設定されている。この閾値V
Tパターンの時間軸上の開始位置t
0からt
1付近の位置までは、閾値の速度値はV
T1に設定されている。その結果、速度曲線bと閾値V
T(t)とは交差せず、衝突したとは判別しない。それにより、不必要な低速でのエアバッグ装置4やシートベルト装置のプリテンショナ等の作動を回避することができる。
【0053】
図13は、
図11及び
図12のグラフを重ね合わせた図である。この例の場合(2つのサテライトセンサが車両のセンターラインを中心として左右対称的に配置された場合の1つのサテライトセンサの出力信号の速度信号(積分信号)で衝突を判別する場合)、時間軸上の開始位置t
0〜位置t
1までの範囲で車両のオフセット衝突において乗員保護装置を動作させるかどうかを同じ閾値関数V
T(t)で判別することができる。
したがって、全ての車速に対して同一の閾値によって判別することが可能である。
【0054】
(実施例2)
図14及び
図15は、サテライトセンサ2の出力信号(加速度信号あるいは減速度信号)の積分値(速度信号)に基づいて衝突判別を行う場合の制御系の動作を説明する第2実施例のフローチャートである。第2の実施例では、時間経過と共に閾値V
T(t)を変化させることができる。また、車両速度に対応して閾値関数V
T(t)が選択される。
【0055】
図14は、制御部3の信号処理部(CPU)32が実行する閾値設定手順を説明するフローチャートであり、同図において
図6と対応する部分には同一部号を付している。
【0056】
CPUはサテライトセンサ2が出力信号を発生したとき(実質的な衝突時点)や車両走行中に周期的に本ルーチンを実行する。CPUは、車両の速度センサ(スピードメータ)から信号処理部に32に送信される速度信号を読取り、現在の車両速度を得る(ステップS110)。また、既述内蔵タイマの出力からサテライトセンサ2の出力信号の供給(信号の立ち上がり)時点t
0からの経過時間t
nを読み取る(ステップS120)。
【0057】
CPUは、車両速度に基づいて予めメモリに記憶されている複数の関数V
T(t)(
図8乃至
図10参照)の中から対応する閾値関数を選択する。あるいは閾値関数式(例えば、折れ線特性)を作成する(ステップS130)。閾値を出力とする関数V
T(t
n)として予め記憶しておくことができる。また、予めメモリに車両速度及び経過時間を引数(例えば、記憶領域のアドレス)として当該記憶領域に閾値を記憶しておくことができる。CPUは読み取った車速に対応する閾値を計算し、あるいはメモリのテーブルから読み出す(ステップS140)。
【0058】
CPUは選択した閾値をCPU内部の閾値を記憶する速度用閾値レジスタに出力する(ステップS150)。この閾値は以下の速度信号に基づく衝突の判別(推定)において使用される。なお、閾値計算(あるいは読み出し)ルーチンは、車両走行中にCPUが随時実行することができる。CPUはステップS110〜150を繰り返し、時間経過に対応した値の閾値V
T(t
n)を発生する。
【0059】
図15は、サテライトセンサの出力信号の積分値(速度信号)に基づいて衝突を判定する例を説明するフローチャートである。同図において、
図7と対応する部分には同一符号を付している。
【0060】
図15は、信号処理部32のCPUが車両センター位置からずれて配置された1つのサテライトセンサ2の出力信号から衝突を判別(推定)する手順を説明するフローチャートである。この実施例においては、サテライトセンサ2の出力信号の積分値(速度信号)に基づいて衝突判別を行っている。
【0061】
CPUは、サテライトセンサ2から出力信号(衝突の際には減速度信号)が供給されると、本ルーチンを実行する。まず、CPUは、レジスタに入力されているサテライトセンサ2からの出力信号(加速度データ)を読取り(ステップS2)、この出力信号レベルが本制御アルゴリズムを実行すべきレベルであるかどうかを判別する(ステップS4)。出力信号のレベルが本制御アルゴリズムを実行すべき閾値を超えない場合には(ステップS4;No)、本ルーチンを終了する。
出力信号のレベルが本制御アルゴリズムを実行すべき閾値を超える場合には(ステップS4;Yes)、速度センサ5の出力から車両の走行速度の読取りを行い(ステップS10)、車両速度をレジスタに記憶する(ステップS12)。CPUは車両速度をレジスタ値と比較して、車両速度が高速か、中速か、低速かを判別する(ステップS14,S30,S40)。
【0062】
CPUは車両速度が高速であると判別したとき(ステップS14;Yes)、レジスタに入力されているサテライトセンサ2の出力信号の加速度データ(加速度信号の瞬時値)に対して必要によりフィルタ処理などの信号処理を行う(ステップS16)。CPUは加速度信号に対して積分処理を行い、速度信号を出力する(ステップS18)。CPUは速度信号のレベルと閾値レジスタに記憶されている高速に対応した閾値V
TH(t
n)とを比較する(ステップS22)。速度信号のレベルが閾値を超えない場合には(ステップS22;No)、非衝突と判断して終了する。
【0063】
車両速度が低速であると判別したとき(ステップS14;No,S30;Yes)、レジスタに入力されているサテライトセンサ2の出力信号の加速度データに対して必要によりフィルタ処理などの信号処理を行う(ステップS32)。CPUは加速度信号に対して積分処理を行い、速度信号を出力する(ステップS34)。CPUは加速度とレジスタに記憶されている低速に対応した閾値V
TL(t
n)とを比較する(ステップS38)。速度信号のレベルが閾値を超えない場合には(ステップS38;No)、非衝突と判断して終了する。
【0064】
車両速度が中速であると判別したとき(ステップS14;No,S30;No)、レジスタに入力されているサテライトセンサ2の出力信号の加速度データに対して必要によりフィルタ処理などの信号処理を行う(ステップS40)。CPUは加速度信号に対して積分処理を行い、速度信号を出力する(ステップS42)。CPUは速度信号のレベルと閾値レジスタに記憶されている低速に対応した閾値V
TM(t
n)とを比較する(ステップS46)。速度信号のレベルが閾値を超えない場合には(ステップS46;No)、非衝突と判断して終了する。
【0065】
一方、車両速度が高速であるときにサテライトセンサ2の出力信号の積分値である速度信号のレベルが閾値V
THを超えたとき(ステップS22;Yes)、車両速度が中速であるときに速度信号のレベルが閾値V
TMを超えたとき(ステップS46;Yes)、車両速度が低速であるときに速度信号のレベルが閾値V
TLを超えたとき(ステップS38;Yes)、CPUはフラグレジスタの衝突フラグ(衝突信号)をオンに設定する(ステップS50)。衝突フラグがオンに設定されると起動回路34に起動指令信号が送信されて乗員保護装置4に点火信号が送出される。
【0066】
CPUはステップS10〜S50を所定周期(例えば、0.001秒)で繰り返し実行してサテライトセンサ2の出力信号(瞬時値)をモニタして衝突の有無を判別する。
【0067】
(実施例3)
【0068】
図16は、本発明の第3の実施例を示している。同図において、
図7及び
図15と対応する部分には同一符号を付している。
【0069】
図16は、信号処理部32のCPUが車両センター位置からずれて配置された1つのサテライトセンサ2の出力信号から衝突を判別(推定)する手順を説明するフローチャートである。この実施例においては、サテライトセンサ2の出力信号及びその積分値(速度信号)の2つに基づいて衝突判別を行っている。
【0070】
CPUは、サテライトセンサ2から出力信号(衝突の際には減速度信号)が供給されると、本ルーチンを実行する。まず、CPUは、レジスタに入力されているサテライトセンサ2からの出力信号(加速度データ)を読取り(ステップS2)、この出力信号レベルが本制御アルゴリズムを実行すべきレベルであるかどうかを判別する(ステップS4)。出力信号のレベルが本制御アルゴリズムを実行すべき閾値を超えない場合には(ステップS4;No)、本ルーチンを終了する。
出力信号のレベルが本制御アルゴリズムを実行すべき閾値を超える場合には(ステップS4;Yes)、速度センサ5の出力から車両の走行速度の読取りを行い(ステップS10)、車両速度をレジスタに記憶する(ステップS12)。CPUは車両速度をレジスタ値と比較して、車両速度が高速か、中速か、低速かを判別する(ステップS14,S30,S40)。
【0071】
車両速度が高速であると判別したとき(ステップS14;Yes)、レジスタに入力されているサテライトセンサ2の出力信号の加速度データに対して必要によりフィルタ処理などの信号処理を行う(ステップS16)。CPUは加速度信号に対して積分処理を行い、速度信号を出力する(ステップS18)。
【0072】
CPUは加速度と加速度用閾値レジスタに記憶されている高速に対応した閾値V
THとを比較する(ステップS20)。加速度(減速度)のレベルが加速度用閾値レジスタに記憶されている閾値を超えない場合には(ステップS20;No)、非衝突と判断して終了する。
【0073】
加速度(減速度)のレベルが閾値を超えた場合には(ステップS20;Yes)、更に、CPUは速度信号のレベルと速度用閾値レジスタに記憶されている高速に対応した閾値V
TH(t
n)とを比較する(ステップS22)。速度信号のレベルが閾値を超えない場合には(ステップS22;No)、非衝突と判断して終了する。
【0074】
車両速度が低速であると判別したとき(ステップS14;No,S30;Yes)、レジスタに入力されているサテライトセンサ2の出力信号の加速度データに対して必要によりフィルタ処理などの信号処理を行う(ステップS32)。CPUは加速度信号に対して積分処理を行い、速度信号を出力する(ステップS34)。
【0075】
CPUは加速度と加速度用閾値レジスタに記憶されている低速に対応した閾値V
TLとを比較する(ステップS36)。車両速度が低速であるときに加速度(減速度)が閾値V
TLを超えないとき(ステップS36;No)、非衝突と判断して終了する。
【0076】
加速度(減速度)が閾値V
TLを超えたとき(ステップS36;Yes)、更に、CPUは速度と速度用閾値レジスタに記憶されている低速に対応した閾値V
TL(t
n)とを比較する(ステップS38)。速度信号のレベルが閾値を超えない場合には(ステップS38;No)、非衝突と判断して終了する。
【0077】
車両速度が中速であると判別したとき(ステップS14;No,S30;No)、レジスタに入力されているサテライトセンサ2の出力信号の加速度データに対して必要によりフィルタ処理などの信号処理を行う(ステップS40)。CPUは加速度信号に対して積分処理を行い、速度信号を出力する(ステップS42)。CPUは加速度と加速度用閾値レジスタに記憶されている中速に対応した閾値V
TMとを比較する(ステップS44)。加速度(減速度)のレベルが閾値を超えない場合には(ステップS44;No)、非衝突と判断して終了する。
【0078】
CPUは速度信号のレベルと閾値レジスタに記憶されている中速に対応した閾値V
TM(t
n)とを比較する(ステップS46)。速度信号のレベルが閾値を超えない場合には(ステップS46;No)、非衝突と判断して終了する。
【0079】
一方、車両速度が高速であるときにサテライトセンサ2の出力信号(加速度信号)、及びその積分値である速度信号のレベルが閾値V
THを超えたとき(ステップS22;Yes)、車両速度が中速であるときに速度信号のレベルが閾値V
TMを超えたとき(ステップS46;Yes)、車両速度が低速であるときに速度信号のレベルが閾値V
TLを超えたとき(ステップS38;Yes)、CPUはフラグレジスタの衝突フラグ(衝突信号)をオンに設定する(ステップS50)。衝突フラグがオンに設定されると起動回路34に起動指令信号が送信されて乗員保護装置4に点火信号が送出される。
【0080】
CPUはステップS10〜S50を所定周期(例えば、0.001秒)で繰り返し実行してサテライトセンサ2の出力信号(瞬時値)をモニタして衝突の有無を判別する。
【0081】
なお、ステップS20において衝突と判別された場合に、加速度による衝突検出フラグをオンに設定し、次回以降、ステップS20の判断を飛ばしてステップS22を実行するようにしても良い。それにより、加速度による衝突検出フラグがオンであり、速度による衝突検出フラグがオンであるとき(ステップS22)に衝突検出を判別する構成としても良い。ステップS36、S44においても同様である。加速度信号に基づく衝突検出と速度信号に基づく衝突検出とに時間差がある場合に衝突検出をより確実にすることができる。
【0082】
また、加速度信号に基づく衝突検出(ステップS20)と速度信号に基づく衝突検出(ステップS22)の順番が逆であっても良い。
【0083】
(実施例4)
【0084】
第4の実施例においては、
図7に示す加速度信号に基づく衝突判別と、
図15に示す速度信号に基づく衝突判別とをマルチプロセッサによって同時に実行する。各判別において各プロセスにおける衝突フラグ(加速度信号、速度信号)が全てオン設定されたとき(AND条件)に車両の衝突と判別するものである。
【0085】
以上説明したように、本発明の実施例によれば、車両前方にセンター位置からずれて配置された一つのサテライトセンサの出力信号に基づいて左右のオフセット衝突を検出することができるので具合が良い。
【0086】
なお、信号処理装置32は(例えば、同一回路基板上に)主衝突センサ33を別途備えており、主衝突センサ33の出力信号に基づく衝突検出も同時に行っている。信号処理装置32は誤動作や誤検出防止のために、サテライトセンサ2の出力信号を対象とする衝突判別に基づく衝突フラグと、主衝突センサ33の出力信号を対象とする衝突判別に基づく衝突フラグとが共にオンになったとき(AND条件を満たしたとき)に起動回路34を動作させるようにすることができる。また、フロンサテライトセンサ2を含む複数のサテライトセンサの出力に基づいて衝突を判別することができる。
【0087】
また、本発明の実施例はフロントサテライトセンサに適用した例であるが、他のサテライトセンサや、電子制御装置内のメインセンサにも適用することが可能である。