特許第5952424号(P5952424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5952424車両用エアバッグ用アラミド反物およびこれを含む車両用エアバッグ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952424
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】車両用エアバッグ用アラミド反物およびこれを含む車両用エアバッグ
(51)【国際特許分類】
   D03D 1/02 20060101AFI20160630BHJP
   D03D 15/00 20060101ALI20160630BHJP
   D06M 15/693 20060101ALI20160630BHJP
   B60R 21/235 20060101ALI20160630BHJP
   D06M 101/36 20060101ALN20160630BHJP
【FI】
   D03D1/02
   D03D15/00 A
   D06M15/693
   B60R21/235
   D06M101:36
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-548677(P2014-548677)
(86)(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公表番号】特表2015-508458(P2015-508458A)
(43)【公表日】2015年3月19日
(86)【国際出願番号】KR2012011287
(87)【国際公開番号】WO2013095054
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2014年6月19日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0139484
(32)【優先日】2011年12月21日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2011-0139483
(32)【優先日】2011年12月21日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0150375
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】314003797
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒ−ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョン−クン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ジョン−フン
(72)【発明者】
【氏名】クァク,ドン−ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ,サン−モク
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−168760(JP,A)
【文献】 特開平04−262937(JP,A)
【文献】 特開2011−074522(JP,A)
【文献】 特開平11−001876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R21/16−21/33
D03D1/00−27/18
D06M13/00−15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
纎度が300〜900デニールであるアラミド原糸を含むアラミド反物層と、前記アラミド反物層上のゴムコーティング層とを含み、
下記計算式1で定義される反物の経糸方向強伸度指数(TIwa)が2.8〜4.8であり、
前記ゴムコーティング層のコーティング量は20g/m〜100g/mである車両用エアバッグ用のアラミド反物。
[計算式1]
TIwa=Twa/(Swa×D)
(上記式中、
waは、国際標準化機構規格ISO 13934−1方法で測定したアラミド反物の経糸方向引張強度(N/5cm)であり、
waは、国際標準化機構規格ISO 13934−1方法で測定したアラミド反物の経糸方向引張伸度(%)であり、
Dは、アラミド原糸の纎度(de)である。)
【請求項2】
下記計算式2で定義される反物の緯糸方向強伸度指数(TIwe)が3.4〜5.4である請求項1に記載のアラミド反物。
[計算式2]
TIwe=Twe/(Swe×D)
(上記式中、
weは、国際標準化機構規格ISO 13934−1方法で測定したアラミド反物の緯糸方向引張強度(N/5cm)であり、
weは、国際標準化機構規格ISO 13934−1方法で測定したアラミド反物の緯糸方向引張伸度(%)であり、
Dは、アラミド原糸の纎度(de)である。)
【請求項3】
前記アラミド反物層は、下記計算式3で定義される耐熱定数(X)が6.5〜400である請求項1又は2に記載のアラミド反物。
[計算式3]
耐熱定数(X)=(T×t)/(600×D’)
(上記式中、
Tは、反物層に自由落下させるホットロッドの温度であって、350〜750℃の温度範囲を有し、
tは、前記ホットロッドを自由落下させて、前記ホットロッドが反物層と接触した後から反物層を通過するまでにかかった時間(sec)を示し、
D’は、前記アラミド反物層の厚度(mm)を示す。)
【請求項4】
前記アラミド反物層は、経糸および緯糸の密度が25〜55th/inchになるようにアラミド原糸を含む請求項1〜3のいずれかに記載のアラミド反物。
【請求項5】
前記アラミド反物層は、下記計算式4で定義されるカバーファクターが1,500〜2,200である請求項1〜4のいずれかに記載のアラミド反物。
[計算式4]
【請求項6】
米国材料試験協会規格ASTM D 4032方法による剛軟度が1.5kgf以下である請求項1〜5のいずれかに記載のアラミド反物。
【請求項7】
前記アラミド反物層は、米国材料試験協会規格ASTM D 1777により測定した厚度が0.20mm〜0.50mmである請求項1〜6のいずれかに記載のアラミド反物。
【請求項8】
前記ゴムコーティング層は、シリコン系ゴムまたはポリウレタン系ゴムを含む請求項1〜7のいずれかに記載のアラミド反物。
【請求項9】
経糸纎度および緯糸纎度が互いに同一である請求項1〜8のいずれかに記載のアラミド反物。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載のアラミド反物を含む車両用エアバッグ。
【請求項11】
歩行者エアバッグまたはバンパーエアバッグの車両用外装エアバッグである請求項10に記載の車両用エアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラミド反物およびこれを含む車両用エアバッグに関し、より詳しくは、高い水準の衝撃力に耐えられると共に、優れた空気遮断性、形態安定性および収納性を示すことができるため、車両用外装エアバッグの素材として好適に適用可能なアラミド反物およびこれを含む車両用エアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にエアバッグ(Air bag)は、走行中である車両が一定以上の速度で正面または側面の衝突時、車両に加えられる衝突衝撃を衝撃感知センサで感知した後、火薬を爆発させてエアバッグ内部にガスを供給して膨張させることによって、運転者および乗客を保護する装置をいう。
【0003】
近年、車両安全に対する関心が高まりながら、各種の車両用エアバッグに対する研究および開発が活発に行われており、特に、最近は歩行者法規が強化しつつバンパービームなどの車両外装に備えられて事故時に歩行者の傷害値を低減させることができる車両用外装エアバッグが開発されている傾向にある。
【0004】
しかしながら、外装エアバッグは、車両の外部バンパーに装着されて、車両車体に加えられる外部衝撃に対してその衝撃力を緩衝させる役割を果たすため、一般的な内装エアバッグと比較してより高い衝撃力を吸収する必要がある。これによって、前記外装エアバッグはより高い衝撃力によく耐え、これを吸収および緩衝する必要があり、そのためには、より大きい衝撃力にも反物が溶けたり破裂することなく、その役割を正常に遂行することができる新たな素材の開発が要求されている。
【0005】
一方、以前のエアバッグ素材としては、ポリエステル、ナイロン6、またはナイロン66などの繊維からなる反物が使用されたことがあるが、これら反物は、外装エアバッグに加えられる高い水準の衝撃力、高温または高圧に耐え難いため、外装エアバッグ用素材としては適用が容易でない。
【0006】
また、外装エアバッグ用素材は、一般的な内装エアバッグ用素材と同様に、優れた空気遮断効果および形態安定性を示す必要があり、コンパクトに折り畳まれて優れた収納性を示さなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高い水準の衝撃力に耐えられると共に、優れた空気遮断性、形態安定性および収納性を示すことができるため、車両用外装エアバッグの素材として好適に適用可能なアラミド反物を提供することにある。
【0008】
また、本発明の目的は、前記アラミド反物を含む車両用エアバッグ、特に、車両用外装エアバッグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、纎度が300〜1,000デニールであるアラミド原糸を含むアラミド反物層と、前記アラミド反物層上のゴムコーティング層とを含み、
下記計算式1で定義される反物の経糸方向強伸度指数(TIwa)が2.8〜4.8であり、
前記ゴムコーティング層のコーティング量は20g/m〜100g/mであるアラミド反物を提供する。
【0010】
[計算式1]
TIwa=Twa/(Swa×D)
上記式中、Twaは、国際標準化機構規格ISO 13934−1方法で測定したアラミド反物の経糸方向引張強度(N/5cm)であり、Swaは、国際標準化機構規格ISO 13934−1方法で測定したアラミド反物の経糸方向引張伸度(%)であり、Dは、アラミド原糸の纎度(de)である。
【0011】
本発明はまた、前記アラミド反物を含む車両用エアバッグを提供する。
【0012】
以下、発明の具体的な実施形態に係るアラミド反物、およびこれを含む車両用エアバッグについてより詳しく説明する。ただし、これは発明に対する一つの例示として提示されるものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が限定されるのではなく、発明の権利範囲内で実施形態に対する多様な変形が可能であることは当業者に自明である。
【0013】
さらに、本明細書全体で特別な言及がない限り、「含む」または「含有する」とは、ある構成要素(または構成成分)を特別な制限なしに含むことをいい、他の構成要素(または構成成分)の付加を除くものと解釈されてはならない。
【0014】
発明の一実施形態に係る反物は、基本的にアラミド原糸を含む反物層を含み、このような原糸が一定範囲の纎度を有し、前記反物層上に最適化したコーティング量のゴムコーティング層が形成されたものである。また、このような一実施形態に係るアラミド反物は、前記計算式1で定義される特定物性、例えば、特定範囲の経糸方向強伸度指数(TIwa)を充足するものである。
【0015】
このような一実施形態の反物は、基本的にアラミド原糸を含む反物層を含む。このようなアラミド原糸は、芳香族ポリアミド系繊維の一種で、以前から優れた耐熱性および機械的特性を有すると知られている。一実施形態の反物は、このようなアラミド原糸および反物層を含むことによって、優れた耐熱性および機械的物性を示すことができ、より高い衝撃力、高温および高圧にもよく耐えられる。
【0016】
以前に一般的なエアバッグ反物として用いられていたナイロン系反物の場合、外装エアバッグに要求される高い水準の機械的物性を充足することが困難であった。例えば、このようなナイロン系反物を適用する場合、高いカバーファクターを有するように製造する場合にも、反物の引張強度が充分でなく、外装エアバッグに加えられる高い水準の衝撃力に耐え難かった。これに比べて、上述したアラミド反物層を適用する場合、より高い水準の衝撃力に耐え、優れた機械的物性を示すことができる。
【0017】
また、前記一実施形態のアラミド反物は、アラミド原糸の纎度および密度を一定範囲に調節して反物層の適切なカバーファクター範囲を達成し、ゴム成分のコーティング量など諸般物性を制御して、一実施形態の反物が特定範囲の経糸方向強伸度指数(TIwa)などを充足するように提供されたものである。このような経糸方向強伸度指数(TIwa)などを充足する一実施形態のアラミド反物は、外装エアバッグに加えられる程度の高い水準の衝撃力にも耐えられ、これを吸収および緩衝できるだけでなく、適切な程度の柔軟性を示して優れた収納性を有することが確認された。特に、アラミド反物層に適用されるゴムコーティング層のコーティング量を最適化して、反物の優れた機械的物性および空気遮断効果を確保すると同時に、歩行者に対する衝撃吸収性能を最大化することができる。
【0018】
したがって、一実施形態のアラミド反物は、車両用エアバッグ、特に、車両用外装用エアバッグの反物として非常に好ましく用いられ得る。
【0019】
このような一実施形態のアラミド反物は、纎度が約300〜1,000デニール、あるいは約400〜900デニールであるアラミド原糸を含むアラミド反物層と、前記アラミド反物層上のゴムコーティング層とを含み、下記計算式1で定義される反物の経糸方向強伸度指数(TIwa)が約2.8〜4.8、あるいは約3.0〜4.7であり、前記ゴムコーティング層のコーティング量は約20g/m〜100g/m、あるいは約25g/m〜80g/mであるものになり得る。
【0020】
[計算式1]
TIwa=Twa/(Swa×D)
上記式中、Twaは、国際標準化機構規格ISO 13934−1方法で測定したアラミド反物の経糸方向引張強度(N/5cm)であり、Swaは、国際標準化機構規格ISO 13934−1方法で測定したアラミド反物の経糸方向引張伸度(%)であり、Dは、アラミド原糸の纎度(de)である。
【0021】
また、このような一実施形態のアラミド反物は、下記計算式2で定義される反物の緯糸方向強伸度指数(TIwe)が約3.4〜5.4、あるいは約3.7〜5.2になり得る。
【0022】
[計算式2]
TIwe=Twe/(Swe×D)
上記式中、Tweは、国際標準化機構規格ISO 13934−1方法で測定したアラミド反物の緯糸方向引張強度(N)であり、Sweは、国際標準化機構規格ISO 13934−1方法で測定したアラミド反物の緯糸方向引張伸度(%)であり、Dは、アラミド原糸の纎度(de)である。
【0023】
後述する実施例でも裏付けられるように、一実施形態のアラミド反物は、アラミド原糸を使用する一方、原糸の纎度および密度とカバーファクターおよびコーティング量など原糸および反物の物性の調節により引張強度および引張伸度が最適化することによって、高温−高圧ガスのエネルギーを効果的に吸収し、高い水準の衝撃力に耐えられる。特に、前記反物は、低繊度高強力のアラミド原糸を含むことができ、前記アラミド原糸は、纎度が約300〜1,000デニールになり得る。また、前記アラミド反物は、計算式1で定義される反物の経糸方向強伸度指数(TIwa)が約2.8〜4.8、あるいは約3.0〜4.7になり得、これは上述した原糸および反物の各物性調節を通じて反物の経糸方向引張強度(Twa)および引張伸度(Swa)などを最適化して達成され得る。このような経糸方向強伸度指数(TIwa)を充足するアラミド反物は、既存のナイロン、PET反物に比べて向上した強靭性およびエネルギー吸収性能を示すと同時に、エアバッグ反物としての優れたフォルディング性、柔軟性、および収納性を発現することができる。
【0024】
そして、前記アラミド反物は、経糸方向の引張強度(Twa)および引張伸度(Swa)だけでなく、前述したように緯糸方向の引張強度(Twe)および引張伸度(Swe)などを最適化して反物の優れた機械的物性を維持しながら、形態安定性、収納性、空気遮断効果を向上させることができる。このような反物の緯糸方向引張強度(Twe)および引張伸度(Swe)と原糸の纎度などの最適化によって、前記計算式2で定義される反物の緯糸方向強伸度指数(TIwe)が約3.4〜5.4、あるいは約3.7〜5.2になり得る。
【0025】
このように、一実施形態のアラミド反物は、エアバッグの作動時、瞬間的に発生する衝撃エネルギーを効果的に吸収するために反物を構成する原糸の纎度と共に反物の引張強度および引張伸度を同時に最適範囲に調節することによって最終織物の機械的物性およびフォルディング性などを共に高めることができる。エアバッグ内部の火薬爆発で発生する高い圧力と高温のインフレータガスに耐えるのに十分な強度および耐熱性などを確保して、効果的な展開が行われ、優れたフォルディング性を有するためには、引張強度および引張伸度を共に最適化する必要がある。この時、反物の引張強度および引張伸度は前述したような反物の強伸度指数範囲を充足させるように調節する必要がある。
【0026】
より具体的には、前記計算式1中、Twaで表現される反物の引張強度、つまり、アラミド反物の経糸方向引張強度は、約4000N/5cm以上、例えば、約4000N/5cm〜9000N/5cm、あるいは約4100N/5cm〜8800N/5cmになり得る。また前記計算式1中、Swaで表現される反物の引張伸度、つまり、アラミド反物の経糸方向引張伸度は、約2.0%以上、例えば、約2.0%〜8.0%、あるいは約2.5%以上または2.5%〜5.0%になり得る。このように反物の経糸方向引張強度(Twa)を約4000N/5cm以上に維持すると共に、反物の経糸方向引張伸度(Swa)を約2.0%以上に維持することによって、エアバッグの展開時、十分なエネルギー吸収性能を確保することができる。前記反物の引張強度および引張伸度を最小値以上に維持できない場合、車両の外部に装着されて十分な衝撃吸収性能を発揮することができないこともある。
【0027】
また、前記反物の経糸方向強伸度指数(TIwa)は、約2.8以上になる場合、エアバッグの展開時、車両および乗客に対する衝撃吸収性能を満足させる側面で適切であり、約4.8以下になる場合、エアバッグクッションアセンブリーの収納性の側面で適切である。前記反物の経糸方向強伸度指数(TIwa)が約2.8未満である場合には、反物の強度自体が低いため、エアバッグの展開時、反物が簡単に破れる現象が発生して使い難くなることもある。反面、前記反物の経糸方向強伸度指数(TIwa)が約4.8を超える場合には、反物の剛軟度が過度に増加してエアバッグクッションのフォルディング性を低下させてエアバッグ用途としては適用し難くなることもある。同様な理由で、前記反物の緯糸方向強伸度指数(TIwe)は、約3.4〜5.4になり得る。
【0028】
一方、上述した一実施形態のアラミド反物は、高温および高圧に耐える優れた耐熱性などの側面で、コーティングされていない状態のアラミド反物層は、下記計算式3で定義される耐熱定数(X)が約6.5〜400、例えば、約13.0〜350、あるいは約80〜200になり得る。
【0029】
[計算式3]
耐熱定数(X)=(T×t)/(600×D’)
上記式中、Tは、反物層に自由落下させるホットロッドの温度であって、350〜750℃の温度範囲を有し、tは、前記ホットロッドを自由落下させて、前記ホットロッドが反物層と接触した後から反物層を通過するまでにかかった時間(sec)を示し、D’は、前記アラミド反物層の厚度(mm)を示す。
【0030】
本発明者らの実験結果、所定の範囲に最適化した耐熱定数を有する特定のアラミド反物層を含むことによって、一実施形態のアラミド反物は、高温−高圧ガスのエネルギーを効果的に吸収し、耐えられるエアバッグ用反物として適用可能なことが確認された。特に、前記アラミド反物においてゴム成分でコーティング処理する前の反物層の耐熱定数(X)が約6.5以上、あるいは約13.0以上を示すことによって、高温−高圧ガスのエネルギーを効果的に吸収し、耐えられるため、エアバッグ用反物として非常に効果的に用いられ得ることが確認された。
【0031】
この時、耐熱定数とは、前記計算式3で示したように、アラミド反物層の厚度を基準に高温のホットロッド(Hot Rod)が反物層を通過するまでの滞留時間を意味するものであって、高温条件下でエアバッグ用反物層の耐熱性指数を意味する。前記耐熱定数は、エアバッグ用反物材質により変化する任意値であり、実際にエアバッグが展開する場合、インフレータで噴出する瞬間的な高温−高圧のガスに対してエアバッグ用反物層および反物がどれだけ耐えられるかをシミュレーション(simulation)して見ることができる耐熱定数であって、アラミド原糸の融融熱容量(ΔH)が高いほど前記反物層の耐熱定数は高い値を有するようになる。特に、前記アラミド反物層の耐熱定数が小さくなると、エアバッグの展開時、インフレータで発生する高温−高圧ガスに対して十分に耐えられる反物の耐熱性が劣るため、エアバッグ用としての適用時、破裂したり熱融着などが発生するようになる。したがって、一実施形態の反物において前記アラミド反物層の耐熱定数が、例えば、約6.5未満になると、外装エアバッグクッションが展開して満開する前に溶けるおそれがあるため、エアバッグ用、特に外装エアバッグ用としての適用が難しくなり得る。
【0032】
また、一実施形態のアラミド反物は、前記アラミド反物層表面にゴム成分がコーティングまたはラミネートされて形成されたゴムコーティング層をさらに含む。このようにゴム成分でコーティング処理されたアラミド反物は、ホットロッドの温度(T)が750℃である時、耐熱定数(X)が約200以上、例えば、約200〜350になり得る。
【0033】
この時、前記ゴム成分としては、例えば、シリコン系ゴムまたはポリウレタン系ゴムを含むことができ、より具体的な例として、粉末(powder)型シリコン、液状(liquid)型シリコン、ポリウレタン、およびエマルジョン型シリコン樹脂からなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。前記ゴムコーティング層の反物層に対する単位面積当たりのコーティング量は、約20g/m〜100g/m、あるいは約25g/m〜80g/mになり得る。
【0034】
また、このようなゴムコーティング層は、ゴム成分をただ1回コーティングして形成されることもできるが、このようなゴム成分の2回以上のコーティングにより上述したコーティング量で形成されることもできる。つまり、実際にエアバッグが作動する時、反物が収納された状態で展開することを考慮して、まず1次コーティングを進行した後、反物どうしの摩擦性を改善するために反物表面を滑らかにする2次コーティングを進行して最終的にゴムコーティング層を形成することもできる。この時、前記2次コーティングは、約10g/m以下のコーティング量で進行することができる。
【0035】
一方、発明の好ましい一例において、上述した耐熱定数は、図1に示したような装置(hot rod tester)を利用して測定することができる。前記測定装置においてホットロッド(hot rod tester)を約350〜750℃に加熱した後に前記反物(層)の上側方向から落ちるようにホットロッドを配置する。このように加熱されたホットロッドを前記アラミド反物(層)の上端から反物(層)側に自由落下させた後に、前記ホットロッドがアラミド反物(層)と接触した後からホットロッドが前記反物(層)を完全に通過するまでの時間を測定し、この測定値をアラミド反物(層)の厚度を基準にして前記計算式3により測定すれば、前記アラミド反物(層)の耐熱定数を求めることができる。特に、発明の具体的な一実施例において、前記ホットロッドは、前記アラミド反物(層)から距離(d)が約60〜85mm程度離隔するように前記反物の上側方向に配置することができる。前記ホットロッドは、熱伝導率が約40〜70W/m・Kである金属またはセラミック材質であり、且つ重量が約40〜60gであるものを使用することができる。
【0036】
発明の一実施形態に係るアラミド反物は、米国材料試験協会規格ASTM D 737方法による静的空気透過度が、非コーティング状態の反物層を基準にΔPが125paである時、約5.0cfm以下、あるいは約0.3〜5.0cfm、あるいは約4.0cfm以下、あるいは約0.3〜4.0cfm、あるいは約3.0cfm以下、あるいは約0.3〜3.0cfmになり、ΔPが500paである時、約14cfm以下、あるいは約7〜14cfm、あるいは約10cfm以下、あるいは約5〜10cfmになり得る。この時、静的空気透過度とは、エアバッグ用反物(層)に一定の圧力を付与した時、反物(層)に透過する空気量を意味するものであって、原糸の単糸纎度(denier per Filament)が小さく、反物(層)の密度が高いほど低い値を有することができる。ひいては、前記アラミド反物の空気透過度は、反物層にゴムコーティング層を含むことによって、さらに低めることができ、ほぼ0cfmに近い値の空気透過度を確保することもできる。したがって、このようにゴムコーティング層を形成した場合に、一実施形態の反物は、米国材料試験協会規格ASTM D 737方法による静的空気透過度がΔPが125paである時、約0.1cfm以下、あるいは約0〜0.1cfm、あるいは約0.05cfm以下、あるいは約0〜0.05cfmになり、ΔPが500paである時、約0.3cfm以下、あるいは約0〜0.3cfm、あるいは約0.1cfm以下、あるいは約0〜0.1cfmになり得る。
【0037】
ここで、一実施形態に係るアラミド反物は、反物層およびコーティング反物に対して、各々前記静的空気透過度範囲の上限値を超えたり、または動的空気透過度範囲の上限値を超える場合に、エアバッグ用反物の気密性を維持する側面で好ましくなくなり得る。
【0038】
また、前記アラミド反物層に対する厚度は、米国材料試験協会規格ASTM D 1777により測定でき、優れた機械的物性および空気遮断効果と共に車両への装着時に優れた収納性およびフォルディング性を確保する側面で、約0.20〜0.50mm、あるいは約0.22〜0.45mmになり得る。前記アラミド反物層の厚度は、エアバッグクッションのフォルディング以降に車両への装着時に、形態維持性能が低下し得る側面では、約0.20mmになり、エアバッグクッションのフォルディング性の側面で、0.50mm以下になり得る。
【0039】
そして、一実施形態のアラミド反物は、米国材料試験協会規格ASTM D 4032方法による剛軟度が約1.5kgf以下、あるいは約0.7〜1.5kgf、あるいは約1.45kgf以下、あるいは約0.75kgf〜1.45kgf、あるいは約1.4kgf以下、あるいは約0.8kgf〜1.4kgfになり得る。前記反物の剛軟度が約1.5kgfを超える場合、反物の折り畳み性が低過ぎてエアバッグクッションのフォルディング性が顕著に低下し得る。ただし、前記反物の剛軟度が低過ぎる場合には、エアバッグの膨張展開時に十分な保護支持機能を果たすことができないこともあり、車両への装着時にも形態維持性能が劣って収納性が低下し得るため、前記反物の剛軟度は約0.7kgf以上になり得る。
【0040】
また前記アラミド反物において、気密性のためには、高圧の空気などによる引張力に耐えて伸張が最小限になる必要があり、これと同時にエアバッグの作動時、十分な機械的物性を確保するためには、高温高圧のガス排出でエネルギー吸収性能が最大限になるのが非常に重要である。そのため、前記反物は、下記計算式により反物層のカバーファクターが約1,500〜2,200、あるいは約1,550〜2,150に最適化するように製織することによって、エアバッグの展開時、気密性およびエネルギー吸収性能をより良好にすることができる。
【0041】
[計算式4]

【0042】
ここで、前記反物層のカバーファクターが約1,500未満である時は、反物層の集束力が弱くて反物の引張強度が低下し、エアバッグクッションが十分な衝撃吸収性能を発揮できず、空気膨張時に空気が外部に簡単に排出する問題が発生することがある。また、前記反物層のカバーファクターが約2,200を超える時は、エアバッグの装着時、エアバッグクッションの収納性およびフォルディング性が顕著に劣ることがある。
【0043】
また、前記アラミド反物層および反物に使用される経糸繊度および緯糸繊度、つまり、経糸方向および緯糸方向に使用されるアラミド原糸の纎度は、それぞれ約300〜1,000デニール、あるいは約400〜900デニールになり得る。この時、経糸および緯糸の纎度が互いに異なり得るが、より均一な物性のために互いに同一になることが適切である。前記アラミド反物において経糸繊度および緯糸纎度は、反物の強伸度指数を最適化して優れた機械的物性と共に優れた剛軟度特性を確保する側面で、前述したような範囲に選ばれ得る。前記デニールは、原糸または繊維の太さを示す単位であって、糸が9,000mが1gである場合、1デニールとする。
【0044】
そして、一実施形態のアラミド反物は、アラミド原糸を含んで優れた機械的物性および耐熱性を確保することができ、このようなアラミド原糸は、アミド基を除いた全ての主鎖にフェニル環が連結されている分子構造を有することができる。また、アラミドは、フェニル環の連結状態によりメタ型(m−)とパラ型(p−)があるが、一実施形態のアラミド反物がより優れた物性を発現するためには、パラ型をより適切に使用することができる。このようなパラ型(p−)アラミド原糸の場合、フェニル環が互いに板状に積層されているため、結晶化度が非常に高く、耐熱性に優れ、低い収縮率と共に高強力、高弾性率の優れた機械的物性などにより一実施形態の反物およびこれに含まれる原糸素材としてより好ましい。
【0045】
この時、前記アラミド反物に含まれている反物層の経糸密度および緯糸密度、つまり、経糸方向および緯糸方向の製織密度は、それぞれ約25〜55th/inch、あるいは約25〜47th/inch、あるいは約26〜45th/inchになり得る。前記アラミド反物層の経糸密度および緯糸密度は、エアバッグ用反物の優れた機械的物性確保の側面では、それぞれ約25th/inch以上になり、反物のフォルディング性を向上させ、引裂強度などを低める側面で、それぞれ約55th/inch以下になり得る。
【0046】
上述したアラミド反物は、アラミド原糸の原糸纎度、密度および反物層のカバーファクターを上述した範囲に調節しながら製織してアラミド反物層を得た後、精練、熱固定およびゴム成分のコーティング工程を通じて製造され得る。この時、上述したアラミド原糸の原糸纎度、密度および反物層のカバーファクターと共に、ゴム成分のコーティング量を最適化することによって、上述した優れた物性を有する一実施形態のアラミド反物が製造および提供され得る。
【0047】
具体的な一例によれば、一実施形態のアラミド反物は、アラミド原糸を緯糸および経糸で用いてビーミング(beaming)、製織、精練、熱固定工程およびゴム成分のコーティング工程などを経て製造され得る。前記反物は、通常の製織機を用いて製造することができ、ある特定の織機に限定されない。ただし、平織形態の反物は、レピア織機(Rapier Loom)やエアージェット織機(Air Jet Loom)またはウォータージェット織機(Water Jet Loom)などを用いて製造することができる。
【0048】
付加して、前記ポリウレタン系ゴムまたはシリコン系ゴムなどのコーティング工程は、反物を用いてエアバッグを形成するための後工程である縫製作業の作業性も最適化することができる。つまり、ゴム成分の種類やコーティング量などのコーティング工程条件を最適化しない場合、縫製作業中の原糸フィラメントの割れが発生して作業性が大きく劣ることがある。しかし、前記コーティング工程条件を最適化することによって、縫製作業性がより優秀になり、その結果、空気遮断性、耐熱性および耐摩擦性などの物性が最適化しながら、縫製作業性にも優れたアラミド反物が提供され得る。
【0049】
一方、上述したゴムコーティング層が形成された一実施形態の反物は、通常の裁断および縫製過程を経て一定の形態のエアバッグクッションで製造され得る。この時、前記エアバッグクッションは、特別な形態に限定されず、一般的な形態で製造され、例えば、平織タイプの製織形態が好ましい。
【0050】
発明のさらに他の実施形態により、上述したアラミド反物を含む車両用エアバッグが提供される。また、前記のエアバッグを含むエアバッグシステムが提供され、前記エアバッグシステムは当業者によく知られた通常の装置を備えることができる。前記車両用エアバッグは、例えば、歩行者エアバッグ(Pedestrian Airbag)またはバンパーエアバッグ(Bumper Airbag)の車両用外装エアバッグになり得る。
【0051】
このうち、歩行者エアバッグは、車両フードで展開してフロントガラスにぶつかる歩行者に加えられる衝撃を緩衝させる役割を果たすものであり、バンパーエアバッグは、車両ライトの下で展開して装着されて歩行者や構造物に加えられる衝撃または車両自体に加えられる衝撃を緩衝させる役割を果たすものである。
【0052】
特に、上述したアラミド反物は、高い機械的物性と優れた柔軟性を同時に確保することによって、車両バンパーに装着されるバンパーエアバッグなどに効果的に用いられ得る。このようなバンパーエアバッグの一例は、図2に示したとおりである。図2に示されるように、バンパーエアバッグ装置201は、車両200のフロントバンパー(front bumper)202に収縮状態で収納されるエアバッグ203と、このエアバッグ203に接続するインフレータ(inflator)204とを含み、このエアバッグ装置201が作動すればインフレータ204が高温高圧のガスを発生させることによって、高温高圧のガスが供給されるエアバッグ203がフロントバンパー202の前方へ展開する。これによって、フロントバンパー202に衝突する車両からの衝撃や歩行者の衝撃を緩和することができる。また、前述したような一例において、本発明のアラミド反物を含むエアバッグ装置がフロントバンパーに収納される形態を挙げたが、必要に応じて車両の側面、後方バンパーなどに装着する形態で使用することもできる。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、アラミド原糸を用いて特定の強伸度指数範囲で反物を製織することによって、優れた機械的物性と共に柔軟性およびフォルディング性などに優れたエアバッグ用反物およびこれを含む車両用エアバッグが提供される。
【0054】
このようなアラミド反物は、優れた機械的物性、形態安定性、空気遮断効果を得ることができるだけでなく、優れたフォルディング性および柔軟性を確保することができるため、自動車への装着時に収納性を顕著に改善すると同時に、車両および乗客に加えられる衝撃を最小化して搭乗者を安全に保護することができる。
【0055】
特に、本発明によるアラミド反物は、非常に高い水準の衝撃力を吸収および緩衝することができるため、車両の外部に装着されて乗客と車両に対する衝撃を最小化する外装エアバッグなどに非常に適宜に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】本発明の一実施例による耐熱定数の測定装置を示す写真である。
図2】車両外部に装着される車両用外装エアバッグ(バンパーエアバッグ)が装着された車両の構造を概略的に示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲は下記実施例に限定されない。
【0058】
実施例1〜9
下記表1に示したような工程条件で、アラミド原糸を用いてエアバッグ用反物を製造した。
【0059】
まず、アラミド原糸を用いてレピア織機によりエアバッグ用反物生地を製織した。前記反物生地に精練および熱処理工程を連続2回進行してエアバッグ用反物を製造した。このように製造された非コーティング(Non−Coating)反物を直ちに液状シリコンゴム(LSR)樹脂に基づくシリコンコーティング薬剤を用いて、ナイフコーティング(knife over ro1l coating)方法でコーティングしたシリコンコーティング(Coating)反物をエアバッグクッション用織物材反物として用いた。
【0060】
また、前記織物製反物にレーザー裁断機を用いて裁断し、下記表1に示したような縫製条件で前記反物を縫製接合してエアバッグクッションを製造した。
【0061】
この時、エアバッグ用反物の原糸種類および製織形態、コーティング成分およびコーティング量、縫製糸種類および縫製法などは下記表1に示したとおりである。ここで、反物のカバーファクター(Cover Factor、CF)は、下記計算式4により計算した値である。残りの条件は、エアバッグクッション製造のための通常の条件に従った。
【0062】
[計算式4]

【0063】
[表1]
前記実施例1〜9により製造されたエアバッグクッションに対して、次の方法で多様な物性を測定し、測定された物性は下記表2にまとめた。
【0064】
(a)引張強度および引張伸度
前記アラミド反物の試片を裁断して、国際標準化機構規格ISO 13934−1方法による引張強度測定装置の下部クランプに固定させ、上部クランプを上へ移動させながらエアバッグ反物試片が破断する時の引張強度および引張伸度を反物の経糸方向(Twa、Swa)および緯糸方向(Twe、Swe)のそれぞれで測定した。
【0065】
一方、このように測定した反物の経糸方向引張強度(Twa)および引張伸度(Swa)と原糸の纎度(D)を用いて、下記計算式1に示したような反物の経糸方向強伸度指数(TIwa)を算測した。
【0066】
[計算式1]
TIwa=Twa/(Swa×D)
上記式中、Twaは、国際標準化機構規格ISO 13934−1方法で測定したアラミド反物の経糸方向引張強度(N/5cm)であり、Swaは、国際標準化機構規格ISO 13934−1方法で測定したアラミド反物の経糸方向引張伸度(%)であり、Dは、アラミド原糸の纎度(de)である。
【0067】
また、前記のように測定した反物の緯糸方向引張強度(Twe)および引張伸度(Swe)と原糸の纎度(D)を用いて、下記計算式2に示したような反物の緯糸方向強伸度指数(TIwe)を算測した。
【0068】
[計算式2]
TIwe=Twe/(Swe×D)
上記式中、Tweは、国際標準化機構規格ISO 13934−1方法で測定したアラミド反物の緯糸方向引張強度(N/5cm)であり、Sweは、国際標準化機構規格ISO 13934−1方法で測定したアラミド反物の緯糸方向引張伸度(%)であり、Dは、アラミド原糸の纎度(de)である。
【0069】
(b)耐熱定数
ゴム成分がコーティング処理される前の非コーティングされたアラミド反物層を用いて、それぞれの試片で横50mm×縦50mmを裁断した後、図1に示したようなホットロッドテスター(hot rod tester)装置に試片を装着した。また前記テスター装置でホットロッド(スチール材質、直径10mm、長さ82mm、重量50g、熱伝導率55W/m・K)を昇温速度20℃/minで加熱してそれぞれ450℃および600℃の温度(T)に加熱した後、前記試片から距離(d)が76mm程度離隔するように試片の上側方向に配置し、前記位置でホットロッドを試片側へ自由落下させた。このように自由落下させたホットロッドが試片を接触した後から試片が完全に通過するまでの時間(t、sec)を測定し、下記計算式3 により耐熱定数値を計算した。ただし、1分が経過してもホットロッドが試片を通過しない場合、1分を基準に測定された値を記入した。
[計算式3]
耐熱定数(X)=(T×t)/(600×D’)
(上記式中、Tは、反物層に自由落下させるホットロッドの温度であって、350〜750℃の温度範囲を有し、tは、前記ホットロッドを自由落下させて、前記ホットロッドが反物層と接触した後から反物層を通過するまでにかかった時間(sec)を示し、D’は、前記アラミド反物層の厚度(mm)を示す。)
【0070】
(c)厚度
ゴム成分がコーティング処理される前の非コーティングされたアラミド反物層を用いて、それぞれの厚度(D)を米国材料試験協会規格ASTM D 1777により測定した。
(d)剛軟度
米国材料試験協会規格ASTM D 4032による剛軟度測定装置を用いて、サーキュラーベンド(Circular Bend)法で反物の剛軟度を測定した。また、剛軟度測定法でカンチレバー法を適用してもよく、反物に曲げを与えるために一定角度の経糸を与えた試験台であるカンチレバー測定機器を用いて反物曲げ長さ測定を通じて剛軟度を測定することができる。
【0071】
(e)空気透過度
米国材料試験協会規格ASTM D 737によりエアバッグ用反物を20℃、65%RH下で1日以上放置した後、125Paの圧力の空気が38cmの円形断面を通過する量を測定した。
【0072】
[表2]
比較例1〜7
下記表3に記載された条件を除いては、実施例1〜9と同様な方法により比較例1〜7のエアバッグ用反物およびこれを用いたエアバッグクッションを製造した。
[表3]
前記比較例1〜7により製造されたエアバッグクッションに対して、前述したような方法で多様な物性を測定し、測定された物性は下記表4にまとめた。
[表4]
前記表に示されているように、アラミド系原糸を用いて強伸度指数を最適範囲に製造した実施例1〜9の反物は、剛軟度が1.0〜1.41kgfであって、バンパータイプなどでもコンパクトに折り畳まれる程度に優れたフォルディング性を示すことが確認された。また、実施例1〜9の反物に含まれているアラミド反物層は、耐熱定数が227〜312であり、優れた機械的物性を示すことによって、車両の外部で高い水準の衝撃力を吸収してその性能の発現に全く問題がないことが確認された。
【0073】
反面、前記表4に示されているように、既存のようにナイロン原糸を用いた比較例1および2のエアバッグ用反物は、このような特性を充足していないことが確認された。特に、比較例1および2のエアバッグ用反物は、耐熱定数がそれぞれ0.8および1.0で顕著に劣り、インフレータガス(gas)に十分に耐えずに部分的に溶けて損傷する問題点があるため、車両の外部での性能の発現には限界があることが分かる。また、比較例3および4のエアバッグ用反物は、アラミド系原糸を用いたにもかかわらず、過度に低い強伸度指数によって、機械的物性を確保できず、エアバッグの展開時に破裂するなどのインフレータの問題点があるため、性能の発現には限界があることが分かる。これとは反対に、比較例5および6のエアバッグ用反物は、過度に高い強伸度指数を有することによって、反物の剛軟度値がそれぞれ1.75kgfおよび1.80kgfでよくないため、クッションフォルディング時、車両の最小化した範囲に規定されたサイズの空間に収納されない問題点が現れた。また、比較例7のエアバッグ用反物は、過度に低い強伸度指数により機械的物性を確保できず、エアバッグの展開時に破裂するなどのインフレータ問題点と共に、低い空気透過度によるエアバッグクッションの膨張性能低下および車両収納時にクッションフォルディング性が顕著に劣る問題がある。
【符号の説明】
【0074】
200…車両
201…バンパーエアバッグ装置
202…フロントバンパー
203…エアバッグ
204…インフレータ
図1
図2