(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に示す方法及び装置は、原動機を取り付けた台座の両端側にスプロケットを設け、このスプロケットに、任意の箇所にピンを装着したチェーンを介装し、このチェーンには、底側にルーズホール(開口部)を有する駆動体がチェーンに装着したピンをルーズホール内に装填した状態で装着することによりチェーンの回転によって駆動体を往復運動させるというものである。
【0007】
しかしながら、チェーンの回転に伴って移動する駆動体に必要な部材を連結する時に多少の付加が加わるとチェーンに装着したピンが折れたり、ルーズホールからピンが外れたりするなどの不都合があった。また、従来はチェーンの外側プレートと内側プレートに直接ピンを取り付けていたため折れないような太いピンを装着しようにもチェーンの外側プレート及び内側プレートの大きさに制約があり構造上の限界があった。さらには、駆動時におけるチェーンの撓みが駆動体の横ブレを生じさせスムーズな往復運動を阻害していた。
【0008】
一方、観光バス、観光電車などの観光車両や、観光船などの場合には降雪や降雨によって運行中の側面の窓ガラスに雪や雨が付着して視界を妨げると共に、雪や雨が降り止んだ後には側面の窓ガラスに付着した汚れによって視界が妨げられることがあり、観光を目的とする車両や船舶では問題であったが、側面の窓ガラス外面の汚れの拭き取り装置は全く提供されておらずそのような発想自体も皆無だった。
【0009】
そこで、本願発明が解決しようとする課題は、駆動体のルーズホールからピンが容易に外れたり折れたりすることがないような往復移動機構を提供することである。
【0010】
また、往復移動する移動体が横ブレを起こすことなくスムーズに往復移動することが可能な往復移動機構を提供することである。
【0011】
また、本願発明に係る往復移動機構を利用することにより、車両や船舶尚等の乗り物のフロントガラス、リアウインドウ、サイドウインドウの面積に対し100%に近い面積を拭き取ることが可能なワイパー装置を提供することである。
【0012】
また、本願発明に係る往復移動機構を利用することにより、観光バスや観光電車などの観光車両や観光船の側面の窓ガラスに付着した雪や雨や汚れを拭き取り可能なワイパー装置を提供することである。
【0013】
また、本願発明に係る往復移動機構を利用することにより、フラット式の信号機の表面を容易に拭き取ることが可能なワイパー装置を提供することである。
【0014】
また、本願発明に係る往復移動機構を利用することにより、メガソーラ発電所におけるソーラーパネルを洗浄する専用のワイパー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために請求項1に記載の本発明は、一方側が動力源によって回転可能とされた一対のスプロケット
と、前記スプロケットに架け渡されたチェーン又はベルト様の無端回転体
と、前記無端回転体の任意の箇所に取り付けられた主柱と、底面に前記主柱が挿入される挿入部が設けられた移動体であって、前記挿入部に挿入された状態で前記無端回転体の回転によって移動する前記主柱が前記挿入部の周縁部を係止することによって往復移動する移動体
とを備えた往復移動機構において、
前記無端回転体は、少なくとも主柱が移動する部分の上部が開口して形成された下部ケース内に収容され、前記移動体は、前記下部ケースの上に配置固定される上部ケースであって、底面側に前記下部ケースに形成された開口に対応する大きさの開口が形成されると共に、上面側に当該移動体の移動方向に沿って開口された開口溝から当該移動体に取り付けられた基盤を突出させた状態で移動可能とする上部ケース内に収容され、そして、当該移動体の側面に前記上部ケースの外側面に沿って案内されるブレ防止ガイドを設けたことを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の往復移動機構において、
前記無端回転体の内側には当該無端回転体の安定した回転をサポートするためのローラ分離壁が設けられ、前記ローラ分離壁は、前記無端回転体を内側から案内するローラを備えていることを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、請求項
2に記載の往復移動機構において、前記ローラ分離壁の一端側に前記一対のスプロケットのうちいずれか一方側のスプロケットが取り付けられ、当該ローラ分離壁に取り付けられた一方側のスプロケットと当該ローラ分離壁とは別に取り付けられた他方側のスプロケットとの間隔を調整することにより前記無端回転体の張力を調整する張力変更手段を備えていることを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決するために請求項4に記載の本発明は、請求項
1〜3のいずれか1項に記載の往復移動機構において、前記主柱は、外筒を前記無端回転体に固定された軸部材に回動自在に取り付けて形成することにより摩擦抵抗を軽減したベアリング構造とし、前記挿入部は、当該挿入部に挿入された前記主柱が前記無端回転体の回転に伴って当該挿入部内を移動することができる長さ幅を有して形成されたことを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決するために請求項5に記載の本発明は、請求項
1〜4のいずれか1項に記載の往復移動機構において、前記移動体は、直線状又は曲線状に移動するようにされたことを特徴とする。
【0020】
上記課題を解決するために請求項6に記載の本発明は、請求項
1〜5のいずれか1項に記載の往復移動機構において、前記主柱は、無端回転体の幅サイズよりも外側に突出した膨出部に立設されていることを特徴とする。
【0021】
上記課題を解決するために請求項7に記載の本発明は、請求項
1〜6のいずれか1項に記載の往復移動機構において、前記無端回転体はチェーンであり、前記チェーンの任意の箇所の一対の外側プレート又は一対の内側プレートには頂部を外側に突出させた膨出部を備えた一対の外側三角プレート又は内側三角プレートが取り付けられ、前記一対の外側三角プレート又は内側三角プレートの前記膨出部を連結するようにして前記主柱が立設されていることを特徴とする。
【0022】
上記課題を解決するために請求項8に記載の本発明は、請求項
1〜7のいずれか1項に記載の往復移動機構において、前記移動体は、前記上部ケースの内側壁面をスライドする側面スライド部材と、前記上部ケースの断面略L字状に形成された底面上をスライドする底面スライド部材とを備えていることを特徴とする。
【0023】
上記課題を解決するために請求項9に記載の本発明は、請求項8に記載の往復移動機構において、前記上部ケースの内側壁面には前記
側面スライド部材の移動方向に沿って当該
側面スライド部材
の移動を案内するスライド溝が設けられていることを特徴とする。
【0024】
上記課題を解決するために請求項10に記載の本発明は、請求項
8又は9に記載の往復移動機構において、前記側面スライド部材又は底面スライド部材の全て或いはそのうちの一又は二がローラ部材であることを特徴とする。
【0026】
上記課題を解決するために請求項
11に記載の本発明は、請求項
1〜10のいずれか1項に記載の往復移動機構において、前記ブレ防止ガイドは、上部ケースの上面上をスライドする上部スライド部材を備えていることを特徴とする。
【0027】
上記課題を解決するために請求項
12に記載の本発明は、請求項
11に記載の往復移動機構において、前記上部スライド部材の全て或いはそのうちの一又は二がローラ部材であることを特徴とする。
【0028】
上記課題を解決するために請求項
13に記載の本発明は、親機と、少なくとも1の子機によって構成される往復移動機構であって、前記親機は、請求項
1〜12のいずれか1項に記載の往復移動機構の前記上部ケース若しくは前記下部ケース、又は、それら両方の両端の外側面にそれぞれ連結部を設けると共に、前記基盤に前記移動体の移動方向に沿って伸びる伝達アームを一方又は両方に設けたものであり、前記子機は、請求項
1〜12のいずれか1項に記載の往復移動機構の前記上部ケース若しくは前記下部ケース、又は、それら両方の両端の外側面にそれぞれ連結部を設けると共に、前記下部ケース内に装着される部材を除いて形成されたものであり、前記親機の一方又はその両方の連結部に子機の連結部が連結されると共に、親機の基盤に設けられた前記伝達アームが前記子機の基盤に連結され、前記親機の移動体の移動に伴って子機の移動体が連動して移動するように形成されたことを特徴とする。
【0029】
上記課題を解決するために請求項
14に記載の本発明は、請求項
1〜13のいずれか1項に記載の往復移動機構を利用したワイパー装置であって、表面に雨水や汚れが付着する所定の拭き取り対象物の上端、下端又は側端のいずれかに沿って前記往復移動機構を配置し、前記基盤に前記拭き取り対象物の表面に接触しながら移動して雨水や汚れを拭き取るワイパー部を取り付けてなることを特徴とす
る。
【0030】
上記課題を解決するために請求項
15に記載の本発明は、請求項
14に記載のワイパー装置において、前記ワイパー部は、前記基盤に取り付けられたアーム部と、前記アーム部に取り付けられたワイパーラバーとを備え、前記アーム部には、弾性部材若しくはマグネット、又は、それら両方により前記拭き取り対象物側に付勢されると共に、前記ワイパーラバーが前記拭き取り対象物の表面から離れる方向に移動しないように前記アーム部の移動を規制する規制部材が設けられていることを特徴とする。
【0031】
上記課題を解決するために請求項
16に記載の本発明は、請求項
14又は15に記載のワイパー装置において、前記ワイパー部の先端に当該ワイパー部の移動を補助するためのローラが取り付けられていることを特徴とする。
【0032】
上記課題を解決するために請求項
17に記載の本発明は、請求項
14に記載のワイパー装置において、前記ワイパー部は、前記基盤に取り付けられたアーム部と、前記アーム部に支持されたケースカバーと、前記ケースカバーの下部に嵌め込まれる状態で取り付けられたワイパーケースと、拭き取り面に当接するワイパーラバーを保持したワイパーホルダであって、前記ワイパーラバーが拭き取り面に接触する方向に移動可能に形成されると共に付勢手段によって常に拭き取り面と接触するように付勢された状態で前記ワイパーケース内に配置されたワイパーホルダとを備えて構成されていることを特徴とする。
【0033】
上記課題を解決するために請求項
18に記載の本発明は、請求項
14〜17のいずれか1項に記載のワイパー装置において、前記ワイパー装置を使用しない場合に前記ワイパー部を収容する収容ポケットを備えていることを特徴とする。
【0034】
上記課題を解決するために請求項
19に記載の本発明は、請求項
14に記載のワイパー装置において、前記基盤に取り付けられるベースと、前記ベースの所定位置に立設された固定軸と、前記固定軸に回動自在に軸支され、基端側が屈曲したワイパーアームと、前記ワイパーアームの端部に立設されたピンと、前記ピンが介在する楕円溝を有する駆動アームと、前記駆動アームを往復移動させる移動機構とを備え、前記移動機構によって前記駆動アームを往復移動させることにより、前記ワイパーアームを略90°に横倒復帰させるようにしたことを特徴とする。
【0035】
上記課題を解決するために請求項
20に記載の本発明は、請求項
14に記載のワイパー装置において、前記基盤に取り付けられた第一のワイパーアームと、前記ワイパーアームの先端に設けられた伸縮部と、前記伸縮部に伸縮自在に取り付けられた第二のワイパーアームと、前記ワイパーアームの先端に取り付けられたローラを有するローラ機構と、拭き取り対象物の側面形状に即した形状に形成され、前記ローラ機構の前記ローラをガイドするガイドレールとを備え、前記基盤の移動に伴って前記ローラが前記ガイドレールに案内されることにより前記伸縮部において前記第一のワイパーアームに対して前記第二のワイパーアームが伸縮することを特徴とする。
【0036】
上記課題を解決するために請求項
21に記載の本発明は、請求項
14〜20のいずれか1項に記載のワイパー装置であって、前記拭き取り対象物が、自動車、バス、電車などの車両や船舶などの乗り物のフロントガラス、リアウインドウ、サイドウインドウ又はバックミラーであることを特徴とする。
【0037】
上記課題を解決するために請求項
22に記載の本発明は、請求項
14〜21のいずれか1項に記載のワイパー装置であって、前記拭き取り対象物が、フラット型の信号機であることを特徴とする。
【0038】
上記課題を解決するために請求項
23に記載の本発明は、請求項
1〜13のいずれか1項に記載の往復移動機構において、前記上部ケース内に前記移動体の移動方向に沿ってラックギアを配置すると共に、前記基盤を貫通するようにして取り付けられた回転軸の一端に前記ラックギアに噛み合うピニオンギアを設け、前記移動体の移動に伴って前記ピニオンギアが前記ラックギアと噛み合うことにより前記回転軸を回転可能としたことを特徴とする。
【0039】
上記課題を解決するために請求項
24に記載の本発明は、請求項
23に記載の往復移動機構を利用したワイパー装置であって、表面に雨水や汚れが付着する所定の拭き取り対象物の上端、下端又は側端のいずれかに沿って前記往復移動機構を配置し、前記回転軸に前記拭き取り対象物の表面に接触しながら雨水や汚れを拭き取る回転ブラシを取り付けてなることを特徴とする。
【0040】
上記課題を解決するために請求項
25に記載の本発明は、請求項
24に記載のワイパー装置において、前記回転ブラシの一方側又は両側に前記拭き取り対象物の表面に接触して表面に付着した雨水や汚れを掻き取るスクレーパを設けたことを特徴とする。
【0041】
上記課題を解決するために請求項
26に記載の本発明は、請求項
24又は25に記載のワイパー装置において、前記拭き取り対象物がソーラーパネルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0042】
本発明に係る往復移動機構及びそれを利用したワイパー装置によれば、主柱(特許文献1,2における「ピン」に相当)の摩擦抵抗を軽減したベアリング構造とし、挿入部(特許文献1,2における「ルーズホール」に相当)は、挿入部に挿入された主柱が無端回転体の回転に伴って挿入部内を移動することができる長さ幅を有して形成し、主柱は無端回転体の幅よりも外側に位置するようにして立設することとしたので主柱のスムーズな移動を実現すると共に無端回転体の幅サイズに限定されない大きさの主柱を設けることができるので移動体の挿入部から主柱が容易に外れたり折れたりすることがないという効果がある。
【0043】
また、本発明に係る往復移動機構及びそれを利用したワイパー装置によれば、各種のスライド部材、ローラ分離壁、ブレ防止ガイドを設けたことから往復移動する移動体がブレなくスムーズに往復移動することが可能となるという効果がある。
【0044】
また、本発明に係るワイパー装置によれば、ワイパー部材が拭き取り面の全面を往復運動することから100%に近い拭き取り面積を実現することができるという効果がある。
【0045】
また、本発明に係るワイパー装置によれば、観光バスや観光電車などの観光車両や観光船の側面の窓ガラスに付着した雪や雨や汚れを拭き取ることができるので雨や雪の日でも窓から鮮明な景色を楽しむことができるという効果がある。
【0046】
また、本発明に係るワイパー装置によれば、フラット式の信号機の表面を容易に拭き取ることができるので着雪によって信号が見えなくなることが防止され適正な交通を確保することができるという効果がある。
【0047】
また、本発明に係るワイパー装置によれば、メガソーラ発電所におけるソーラーパネルを常に綺麗な状態に保持することができるので発電効率を低下させることがないという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0049】
1.第一の実施形態
以下、本発明に係る往復移動機構及びそれを利用したワイパー装置について、好ましい一実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0050】
[往復移動機構の構成]
図1は本発明に係る往復移動機構の第一の実施形態を示す斜視図、
図2は
図1に示す往復移動機構から基盤及びブレ防止ガイドを除いた状態を示す平面図である。図示された往復移動機構1は、
図2に示すように、概略として、所定の長さを有して形成された下部ケース10内に、無端回転体の一つであるチェーン11が所定の間隔を有して配置された一対のスプロケット12a,12bに巻回されると共に、下部ケース10の上に上部ケース20が配置されており、上部ケース20内にはチェーン11の回転に伴って往復移動する移動体4が配置されて形成されている。
【0051】
下部ケース10は、
図2に示すように、内部空間を有する細長い略直方体形状をした容器であり、その内部にはチェーン11と、このチェーン11の両側の内側を歯合しつつ回動させる一対のスプロケット12a,12bと、このスプロケット12a,12bの回転中心となる回転軸13a,13bと、チェーン11の内側に長手方向に沿って配設されてチェーン11の回転時における横揺れを防止するローラ分離壁14が内装されている。ローラ分離壁14は、
図2及び
図3に示すように、
ローラ分離壁14の右側にスプロケット12aが取り付けられており、反対側のスプロケット12aは下部ケース10に取り付けられている。そして、ローラ分離壁14を下部ケース10に取り付けるためのネジ穴14b,14bは長孔となっており、
ローラ分離壁14に取り付けられたスプロケット12aと下部ケース10に取り付けられたスプロケット12aとの間隔を調整できるようになっている。これにより、一対のスプロケット12a,12aとの間に架け渡されたチェーン11の張力を調整することが可能とされている。また、ローラ分離壁14には回転するチェーン11に接触してチェーン11の弛みによるブレを制御するローラ14a,14aが複数箇所に設けられている。ローラ14a,14aは、
図2における上下方向において交互に配置されている。尚、無端回転体はチェーン11に限定されるものではなく無端回転体であれば駆動ベルトのようなものであってもよい。
【0052】
また、
図4に示すように、チェーン11は上下一対の外側プレート11a,11a及び内側プレート11b,11bを組み合わせることによって構成されているが、任意の箇所の一対の外側プレート11a,11aは、略三角形状に形成されて、その頂部を外側に突出させた膨出部を備えた一対の外側三角プレート15a,15aが取り付けられている。そして、一対の外側三角プレート15a,15aの膨出部に主柱16が取り付けられている。このように、主柱16を一対の外側三角プレート15a,15aの膨出部に取り付ける構造とすることにより、チェーン11の幅サイズに制限されることなく太く頑丈な主柱16を取り付けることが可能となる。尚、一対の内側プレートを外側三角プレート15a,15aのように形成することも可能である。
【0053】
主柱16は、一対の外側三角プレート15a,15aの膨出部に固定された軸部材16bと、この軸部材16bに対して回転自在に外嵌されるようにして取り付けられた筒状の回転体16aを備えたベアリング構造とされ、回転体16aが軸部材16bに対して滑らかに回転するように形成されている。そして、この主柱16は移動体4の底面に形成された後述する開口部48内に遊嵌される。主柱16は下部ケース10の上面よりも高く上部ケース20内部に至る長さに立設されており、下部ケース10の上面は少なくとも主柱16が移動する範囲は開口して形成されている。このように、主柱16をベアリング構造とすることにより、開口部48内での主柱16の移動をスムーズに行わせることが可能となるので開口部48から主柱16が外れることが防止される。尚、下部ケース10内に配置された一方側のスプロケット12aの回転軸13aには駆動源であるモータ17の図示しない出力軸が直結または図示しない減速機を介して連結されている。
【0054】
上部ケース20は、下部ケース10と略同じ長さと幅サイズに形成されて下部ケース10の上に配置固定されており、上部ケース20の底面は主柱16が移動できる範囲が開口されている。そして、上部ケース20内には移動体が配置されており、主柱16は移動体4の底面に設けられた後述する開口部48に遊嵌された状態で配置される。一方、上部ケース20の上面には長手方向に沿って直線状の開口溝20aが設けられており、移動体4を構成する基盤41がこの開口溝20a内から突出するようにして配置される。これにより、モータ17の駆動によってチェーン11が回転するとそれに伴って主柱16が移動し、主柱16は移動体4の後述する開口部48を係止した状態で移動体4を連動して移動させ、移動体4を構成する基盤41がこの開口溝20a内を往復動することとなる。
【0055】
上部ケース20と下部ケース10はボルト21,21などの締着部材により一体とされて本体2が形成される。また、本体2の一方側の端部には略T字形状に突設された雄型連結部材18が取り付けられ、本体2の反対側の端側には雄型連結部材に対応する略C字形状の嵌合部を備えた雌型連結部材19が取り付けられている。これにより、
図1に示す往復移動機構1の複数をその長さ方向に任意の数だけ連結することが可能とされ、複数の往復移動機構1,1を例えばワイパー等に利用した場合、拭き取り面積を自由に調整したり、複数並んだ窓ガラスにそれぞれワイパー装置を取り付けることが可能となる。尚、雄型連結部材18及び雌型連結部材19は図示の構造に限定されるものではなく、確実かつ簡単に着脱自在に結合可能であれさえすれば、どのような構造であってもよい。
【0056】
図5は第一の実施形態における移動体の断面図、
図6は第一の実施形態における移動体の正面図である。
図7(a)〜(c)はそれぞれ第一の実施形態における移動体の開口部の異なる構成例を示す底面図である。
図5に示すように、移動体4は、側面視略逆T字形状に形成され、下部側には上部ケース20内を走行する走行部40と上部側には板状の基盤41が立設された状態に形成されている。上部ケース20の内側壁と向かい合う走行部40の側面には上部ケース20との接触摩擦を軽減してスムーズな移動を可能とするための
ローラによって形成された複数の側面スライド部材45,45が取り付けられている。また、上部ケース20の断面略L字状に形成された底面42,42上をスライドする複数の
ローラによって形成された底面スライド部材43,43が取り付けられている。
【0057】
さらに、側面スライド部材45,45が接触する上部ケース20の内側壁面には側面スライド部材45,45の走行をガイドする
ローラ溝44,44が形成されている。また、移動体4の基盤41の両側面には上部ケース20の外側面の形状に即して形成された横倒略L字形状のブレ防止ガイド46が取り付けられている。そして、ブレ防止ガイド46には上部ケース20の上面上をスライドする
ローラにより形成された上部スライド部材47,47が取り付けられている。これにより、移動体4はブレ防止ガイド46によって上部ケース20の上面に案内さるようにして横ブレを起こすことなくスムーズに走行移動することができる。尚、スライド部材は
ローラではなく、摩擦抵抗を低減させた橇のような摺動部材とすることもできる。また、ローラ分離壁14はチェーン11の回転内側に一部がチェーン11と接触するローラを備えて配置されており、チェーン11の回転に伴う移動体4の移動時の横ブレを防止して移動体4の安定した走行を促す。
【0058】
基盤41は平板状の部材であり、開口溝20aの上部に立設した状態で配置されており、例えばワイパー部材のような他の部材の取り付けを容易にするために複数の穴41a,41aが穿設されている。またこの穴41a,41aによって軽量化も図られている。また、基盤41には走行方向に沿って伸びる伝達アーム3,3がそれぞれ基盤41の両側に取り付けられている。伝達アーム3は後述する第二の実施形態における子機100の基盤41に直接又は子機100の基盤41に取り付けられた伝達アーム3と連結されるようになっている。尚、本実施形態の往復移動機構1を単独で使用する場合には伝達アーム3,3は必ずしも必要ではない。また、走行部40の底面には、
図7(a)〜(c)に示すように、両端が半円形状とされた長方形状、雲形状、楕円形状等に形成された主柱16の挿入部となる開口部48(48a〜48c)が設けられている。この各開口部48内に主柱16を遊嵌させることにより、チェーン11の往復動に伴って移動体4を
図1の左右方向へ移動させる。尚、基盤41は略楕円形状に穿設された開口部48の長軸の中心部に立設されている。
【0059】
[往復移動機構1の動作]
次に、上述した往復移動機構1の動作について説明する。図示しない電源から供給される電力によってモータ17を回転させるとモータ17の回転軸に取り付けられたスプロケット12aが回転し、それによってチェーン11が所定の方向へ回転を始める。チェーン11が回転するとそれに伴って主柱16も回転する。その際、主柱16は移動体4の開口部48に装入されているので主柱16は移動体4を係止した状態で移動することから上部ケース20の開口溝20aから立設された移動体4の基盤41は開口溝20aに沿って直線的に走行することになる。
【0060】
チェーン11が
図2における右回りに回転したとすると、
図2に示す位置にある主柱16が右から左へ移動して左側のスプロケット12a部分に至ると主柱16は半円を描きながらスプロケット12aの略半径分だけ位置が移動して移動方向が左から右方向(反対方向)となる。このとき主柱16は移動体4の開口部48の縁部に案内されながら開口部48内をスプロケット12aの略半径分だけ移動して元の位置から対角線上の位置へ至り、その部分の開口部48の縁部を係止する。これにより、移動体4の移動方向も左から右方向となるが、基盤41は開口溝20aの位置あることは変わらないので基盤41は開口溝20aに沿って今度は逆方向へ走行することとなる。そして、移動体4が反対側のスプロケット12bに至ると同様の動作によって基盤41の走行方向が右から左へ切り替わる。走行方向の切り替えは瞬時に行われる。
【0061】
[第一の実施形態の効果]
本実施形態の往復移動機構によれば、主柱16を一対の外側三角プレート15a,15aの膨出部に立設する構造としたのでチェーン11の幅サイズに制限されることなく太く頑丈な主柱16とすることができ、主柱16が折れたり開口部48から外れたりすることを防止することができるという効果がある。また、主柱16をベアリング構造としたので開口部48内での主柱16の移動がスムーズとなり、主柱16が開口部48内で引っ掛かったり外れたりすることが防止されるという効果がある。また、チェーン11の回転内側にローラ分離壁14を設けたのでチェーン11の回転時におけるブレを抑制することができるので基盤41を安定して走行させることができるという効果がある。
【0062】
2.第二の実施形態
[往復移動機構と組み合わされる子機の構成]
次に第二の実施形態について説明する。第二の実施形態は、第一の実施形態として示した往復移動機構1(以下「親機1」ともいう。)から下部ケース10内に装着される部材、すなわち、チェーン11、スプロケット12a,12b、回転軸13a,13b、主柱16、モータ17を除いて形成される往復移動機構100(以下「子機100」ともいう。)である。すなわち、第二の実施形態は、第一の実施形態1を親機1とし、これに組み合わされて使用される子機100としての往復移動機構100である。ここで、
図8は本発明に係る往復移動機構の第二の実施形態を示す斜視図、
図9(a)は
図8に示す移動体の底面図、(b)はその正面図、(c)はその側面図である。
【0063】
図8に示す子機100は、概略として、下部ケース10と上部ケース20を重ね合わせて形成される本体2と、上部ケース20に往復動可能に取り付けられた移動体4とを備えて構成されている。ここで、上述した第一の実施形態と同じ構成ついては同じ符号を付し説明を省略する。上部ケース20の上面には長手方向に沿って開口溝20aが設けられており、この開口溝20aに沿って移動体4に立設された基盤41が移動する。本体2の一方側の端部には雄型連結部材18が取り付けられ、反対側の端部には雌型連結部材19が取り付けられている。これにより第一の実施形態である親機1の一方側又は両側に子機100を連結することができる。尚、子機100にさらに別の子機100を連結することもでき、複数の子機100,100を同時に駆動することが可能となる。また、本体2は下部ケース10と上部ケース20を組み合わせて形成しているが、本体2の内部を上部ケース20の内部形状と同じ形状に形成すれば必ずしも下部ケース10と上部ケース20の組み合わせでなくてもよい。尚、下部ケース10と上部ケース20を組み合わせて利用すれば親機1と子機100で同一部材を利用できるメリットがある。
【0064】
子機100の移動体4には基盤41が取り付けられている。そして、子機100の基盤41には親機1の基盤41に取り付けられた伝達アーム3が直接又は子機100の基盤41に取り付けられた伝達アーム3と連結される。尚、子機100の移動体4は主柱16による駆動の必要が無いことから、
図9(a)に示すように、
図7(a)〜(c)に示すような親機1の移動体4に設けられているようない開口部48a〜48cは設けられていない。もちろん、親機1の移動体4をそのまま子機100の移動体4として利用することは可能である。
【0065】
図8に示す子機100は、その雄型連結部材18又は雌型連結部材19を親機1の雌型連結部材19又は雄型連結部材18に嵌合させることによって親機1の左右のいずれにも連結可能とされる。子機100を複数用いる場合には、親機1に連結した子機100の雌型連結部材19又は雄型連結部材18に別の子機100の雌型連結部材19又は雄型連結部材18を連結する。尚、連結前に予め親機1の移動体4の配置位置(例えば、雄型連結部材18の近傍)と各子機100の移動体4の配置位置(例えば、雄型連結部材18の近傍)とを合致させておく。この状態で親機1の伝達アーム3を直接子機100の基盤41に取り付けるか或いは子機100の基盤41に取り付けられた伝達アーム3と連結する。
【0066】
[子機100の動作]
親機1のモータ17に通電が行われると親機1のチェーン11が回動し、これに伴って親機1の移動体4が、例えば、
図1の右から左へ移動する。すると親機1の移動体4の基盤41に取り付けられた伝達アーム3も右から左へ移動する。親機1の伝達アーム3は子機100の移動体4の基盤41に連結されているため、親機1の移動体4の移動に伴って子機100の移動体4も
図8における右から左へ移動する。このように親機1の移動体4と子機100の移動体4とが一体となって右から左へ移動する。そして、親機の1の移動体4がスプロケット12aに至ると、上述したように親機1の移動体4の走行方向が左から右へと切り替わり、それに伴って子機100の移動体4の走行方向も左から右へと切り替わる。以上の動作が繰り返し実行されることにより子機100の基盤41は開口溝20aに沿って往復直線移動を繰り返すことになる。
【0067】
[第二の実施形態の効果]
本実施形態に係る往復移動機構によれば、親機とこれに連結される複数の子機との組み合わせができるため、往復移動機構の適用範囲を任意に拡張することができると共に、装置全体のコストダウン、軽量化及び小型化が可能になるという効果がある。
【0068】
3.第三の実施形態
[往復移動機構を利用したワイパー装置の構成]
次に、本発明に係る往復移動機構を利用したワイパー装置について説明する。本実施形態は上記した往復移動機構を利用したワイパー装置でありその構成について説明する。
図10は第三の実施形態として示した本発明に係る往復移動機構を利用したワイパー装置の斜視図である。このワイパー装置6は、
図1に示した往復移動機構1(親機1)の基盤41にネジ等の固定部材によってワイパー部材を取り付けたものである。
【0069】
すなわち、図示されたワイパー装置6は、概略として、基端側が往復移動機構1の基盤41に取り付けられたワイパーアーム(アーム部)60と、ワイパーアーム60の他端に取り付けられたワイパーブレード61と、ワイパーブレード61の内側に設けられて自動車等の車両のフロントガラス、リアウインドウやサイドウインドウ等の拭き取り対象となる対象物の拭き取り面に接触するワイパーラバー62と、ワイパーブレード61の先端に設けられた
ローラ63を備えて構成されている。尚、ワイパーブレード61とワイパーラバー62によってワイパー部が構成されている。また、ワイパーアーム60の基盤41への取り付けは取付部材69を介して行なわれる。そして、ワイパー装置6の往復移動機構1の本体2の長さを拭き取り方向における拭き取り面の全長と略同じ長さとし、ワイパーラバー62の長さを拭き取り方向に対して直角方向における拭き取り面の全長と略同じ長さとすることで拭き取り面の略100%を拭き取ることが可能となる。このように形成されたワイパー装置6を、例えば、自動車等の車両のフロントガラス、リアウインドウ、サイドウインドウ等拭き取り面の上部に適宜の手段によって固定する。これにより、降雨時または必要時にフロントガラス等の拭き取り面の全面を拭き取ることができる。また、基盤41の走行幅はスプロケット12a,12b間の長さを適宜に調整することで拭き取り対象となる範囲を調整することもできる。尚、適宜の箇所に車両のフロントガラス、リアウインドウ、サイドウインドウ等に向けてウィンドウォッシャー液を吐出するウォッシャーノズルを設置し、ウォッシャータンクに保持されたウィンドウォッシャー液を配管によってウォッシャーノズルに送るようにすることでガラス面に付着した汚れを除去するようにすることが好ましい。
【0070】
[ワイパー装置6の動作]
上述した第一の実施形態の動作に示すように、
図10において図示しないモータに通電がなされると、基盤41は移動体4の移動によって本体2の開口溝20aに沿って往復移動する。この基盤41の移動に伴ってワイパーアーム60も往復移動することにより、ワイパーラバー62は
図10の左右方向へ往復移動する(その移動面積は角形や長方形になる)。その過程でフロントガラス等の拭き取り面に接触しているワイパーラバー62が拭き取り面に付着している水滴や汚れを擦り取ることで拭き取り面が綺麗になる。
【0071】
[第三の実施形態の効果]
本実施形態に係るワイパー装置によれば、第一の実施形態に示した各種のスライド部材、ローラ分離壁、ブレ防止ガイドを設けたことから往復移動する移動体4がブレなくスムーズに往復移動することが可能で、しかも従来の様な扇形では無く長方形などの四辺形に拭き取りが行えるという効果がある。そのため、本実施形態に係るワイパー装置によれば拭き取り面の100%に近い拭き取り面積を実現することができるという効果がある。
【0072】
また、本発明に係るワイパー装置を観光車両(観光バス、観光電車、遊覧船等)や観光船の側面の窓ガラスに設置した場合、窓ガラスに付着した雪、雨、汚れ等を拭き取ることができるので、クリアなガラス窓を通して車外及び船外の景色を楽しむことができるという効果がある。また、本発明に係るワイパー装置は車両等の乗り物だけでなくフラット式の信号機に取り付けることにより、冬場に雪の付着によって信号が見えなくなることによる交通のマヒ等を防止することができるという効果がある。
【0073】
4.第四の実施形態
[往復移動機構を利用したワイパー装置の他の構成]
次に、本発明に係る往復移動機構を利用したワイパー装置としての第四の実施形態について説明する。第四の実施形態に係るワイパー装置は、上記した第三の実施形態に係るワイパー装置6に第二の実施形態に係る往復移動機構100を利用したワイパー装置を組み合わせて複数のワイパー装置として構成したものである。
図11は第四の実施形態として示した本発明に係る往復移動機構を利用したワイパー装置の斜視図である。図示されたワイパー装置7は、概略として、親機1と子機100が雄型連結部材18及び雌型連結部材19を用いて連結された状態で観光バスや電車等の側面の窓ガラス200,200の上部に取り付けられている。尚、便宜上、一つの親機1と一つの子機100の組み合わせが示されているが、これに限定されるものではなく、親機1の両側に子機100,100をそれぞれ連結することも、子機100にさらに別の子機100を連結することも可能である。ここで、上述した各実施形態と同じ構成ついては同じ符号を付し説明を省略する。
【0074】
親機1と子機100の基盤41,41にはそれぞれ第三の実施形態で説明したワイパー装置6と略同一に構成されたワイパー部材が取り付けられている。子機100に対する駆動力の伝達は親機1の基盤41と子機100の基盤41同士を連結するようにして取り付けた伝達アーム3,3によって行われる。尚、親機1は一番端に配置することも複数の子機100,100の間に配置することも可能である。このように複数の子機100,100のワイパー部が同時に往復動して拭き取りを行う構成により、第三の実施形態よりも拭き取り面積を拡大することが可能なワイパー装置7を構成することができる。従って、窓ガラスが連続する観光バスや電車の窓ガラス(サイドウインドウ)に装着するのに適している。また、第三の実施形態のように、ウォッシャーノズルを設置することも好ましい。
【0075】
本実施形態では、ワイパーを使用しない場合にはワイパー部材を収納するためのワイパーポケット8が窓ガラス200,200の縦桟に沿って設けられている。尚、ワイパー装置7のそれぞれのワイパーブレード61及びワイパーラバー62の長さは、被清掃面である窓ガラス200の幅(
図11に示す縦方向の長さ)に相当するようにされている。
【0076】
[ワイパー装置7の動作]
ワイパー装置7は、その不使用時においては親機1及び子機100のワイパーブレード61,61はそれぞれワイパーポケット8,8内に格納されて観光バスや電車の車内の乗客等の視野内から退避されているため、乗客等に不快感を与えることがない。そして、降雨時や車両の窓ガラスの汚れが目立つときに乗客又は乗務員が車内に配置された図示しない電源スイッチをオンにすると、親機1のモータ17が駆動されてチェーン11が往復動を開始して移動体4が往復移動する。これに伴い子機100の移動体4も連動して往復移動する。これにより、各窓ガラスの全面が親機1のワイパーラバー62と子機100のワイパーラバー62によってそれぞれ拭き取られ、各窓ガラスの全面が拭き残しなく綺麗に清掃される。そして、図示しない電源スイッチをオフすれば親機1及び子機100のワイパーブレード61,61はそれぞれワイパーポケット8,8内に収納された状態で停止する。尚、これは例えば、ワイパーブレード61,61がそれぞれワイパーポケット8,8内に至ったことを図示しないセンサによってその位置を検知してモータ17を停止させるように構成することができる。
【0077】
[第四の実施形態の効果]
本実施形態に係るワイパー装置によれば、ワイパー装置とした親機とワイパー装置とした子機を連結して複数のワイパー装置を構成することとしたので、観光バスや電車などの観光車両や遊覧船の側面に複数連続して配置された窓ガラスや横長の大きな窓ガラス等に付着した雪や雨や汚れを全面的に拭き取ることが可能となり、観光が主な車両や船舶等において雨や雪の日でも窓から鮮明な景色を楽しむことができるという効果がある。
【0078】
5.第五及び第六の実施形態
[往復移動機構の他の実施形態の構成]
第五の実施形態に係る往復移動機構は親機の移動体に取り付けられた回転軸が移動体の往復移動に連動するようにして回転する機構を備えたものであり、第六の実施形態に係る往復移動機構は同様の機構を子機に適用したものである。
図12は本発明に係る往復移動機構の第五の実施形態(親機)を示す斜視図、
図13は本発明に係る往復移動機構の第六の実施形態(子機)を示す斜視図である。尚、上述した各実施形態と同じ構成ついては同じ符号を付し説明を省略する。この第五の実施形態に係る親機1の基盤41及び第六の実施形態に係る子機100の基盤41にはそれぞれ回転軸49,49が取り付けられており、移動体4,4の移動に伴って回転軸49,49が回転する機構が設けられている。すなわち、親機1の上部ケース20内に移動体4の移動方向に沿ってラックギア51を配置すると共に、基盤41を貫通するようにして回転可能に取り付けられた回転軸49の一端にラックギア51に噛み合うピニオンギア50を取り付けて形成され、移動体4の移動によってピニオンギア50がラックギア51と噛み合うことにより回転軸49を回転させるものである。尚、ラックギア51は、上部ケース20の側面に沿って形成されたギア溝20b内に配置されており、このラックギア51にピニオンギア50が噛み合うようにして配置されている。
【0079】
また、
図13に示す子機100は、
図12に示す親機1からモータ17やチェーン11等の駆動系を除いて構成したものであり、その他の構成は親機1と略同様である。尚、親機1の基盤41と子機100の基盤41とは共通の伝達アーム3によって連結されている。
【0080】
[親機1と子機100の動作]
次に、第五の実施形態に係る親機1と第六の実施形態に係る子機100の動作について説明する。
図12に示す親機1には
図13に示す一又は複数の子機100をそれぞれの雄型連結部材18及び雌型連結部材19を適宜結合させて一直線上に連結配置する。そして、親機1の伝達アーム3を子機100のそれぞれに連結する。この状態で、図示しない電源スイッチをオンにしてモータ17を駆動させると既に説明したように親機1の基盤41が往復運動を開始すると共に、子機100の基盤41も連動して往復運動を開始する。親機1の基盤41及び子機100の基盤41が往復運動することにより、親機1の回転軸49に取り付けられたピニオンギア50はラックギア51と噛み合いながら移動するので親機1の基盤41が往復移動するのに伴って回転軸49が正逆回転を繰り返す。同様に子機100の回転軸49に取り付けられたピニオンギア50はラックギア51と噛み合いながら移動するので子機100の基盤41が往復移動するのに伴って回転軸49が正逆回転を繰り返す。
【0081】
[第五の実施形態及び第六の実施形態の効果]
親機1の基盤41及び子機100の基盤41の往復移動に伴ってそれぞれ回転軸49,49を正逆回転させることができるので、回転軸49,49に種々の部材を取り付けることで回転軸49,49を回転させながら往復運動を行わせることができるという効果がある。例えば、回転軸49,49にブラシを取り付ければ回転ブラシとして利用することができる。
【0082】
6.第七の実施形態
[往復移動機構を利用したワイパー装置のその他の構成]
第七の実施形態に係るワイパー装置は、例えば大型自動車の車外に取り付けられるバックミラーや単車のバックミラーの清掃を対象にしたものであり、往復移動機構1を駆動源にしてバックミラーのほぼ全面を拭き取ることができる構成になっている。ここで、
図14は第七の実施形態として示した本発明に係る往復移動機構を利用したワイパー装置の側面断面図、
図15は
図14に示すワイパー装置の正面図である。図示されたワイパー装置9は、概略として、第三の実施形態に係るワイパー装置6の本体2の長さをバックミラー300の長辺の長さに相当する程度に小型化(縮小)したものである。例えば第三の実施形態と同様の構成を備えた往復移動機構1と、往復移動機構1の基盤41に一端が取り付けられたワイパーアーム(アーム部)60と、ワイパーアーム60の他端に取り付けられたワイパーブレード61と、ワイパーブレード61の内側に設けられてバックミラー300の表面に所定の部位が当接するワイパーラバー62と、基盤41の側面に取り付けられた規制部材としてのマグネット64と、このマグネット64に対向させてワイパーアーム60の支持部の近傍に取り付けられた規制部材としてのマグネット65を備えて構成されている。マグネット64とマグネット65とは互いに吸引し合う極性、つまりN極とS極の組み合わせを用いており、マグネット64,64の磁力による吸引力によってワイパーラバー62をバックミラー300の表面に密着させるようになっている。尚、マグネット64とマグネット65の組み合わせに代えてスプリング等の弾性部材を用いた構成も可能である。
【0083】
[ワイパー装置9の動作]
バックミラー300の表面に雨による水滴が付着し或いは汚れが目立ってきたとき、運転者等が往復移動機構1のモータ17の図示しない電源スイッチをオンにすると、往復移動機構1のチェーン11回転して移動体4が所定距離(
図15に示す距離L)を往復動する。その過程で基盤41に取り付けられたワイパーアーム60が往復移動してバックミラー300のほぼ全表面がワイパーラバー62によって拭き残しなく清掃される。このとき、マグネット64とマグネット65とが吸引し合うため、ワイパーラバー62が適度にバックミラー300の表面に押し付けられ、これによってバックミラー300の拭き取りを確実にすることができる。
【0084】
[第七の実施形態の効果]
本実施形態に係るワイパー装置によれば、全体の小型化が図れ、しかもマグネット64,65によってワイパーラバー62に付勢力を発揮させるため、確実にバックミラー300の表面の全面を100%近く拭き取ることができるという効果がある。
【0085】
7.第八の実施形態
[回転軸を備えた往復移動機構を利用したワイパー装置]
本実施形態に係るワイパー装置は、第五の実施形態に係る親機1(
図12に示した親機1)を利用したワイパー装置である。ここで、
図16は第八の実施形態として示した本発明に係る往復移動機構を利用したワイパー装置の平面図、
図17は
図16に示すワイパー装置の側面図である。このワイパー装置は、例えば、太陽光発電パネル(ソーラーパネルとも言う)の清掃に好適なものであり、メガソーラ発電所での利用に適している。図示されたワイパー装置30は、概略として、板状の支持体31a,31bと、支持体31a,31bの両端をそれぞれ連結するようにして取り付けられたラバータイプのスクレーパ32a,32bによって四角枠状に形成され、スクレーパ32a,32bの略中間部に平行に配設された回転軸49と、回転軸49に取り付けられて回転軸49の回転に伴って回転する回転ブラシ33を備えて構成されている。回転軸49は支持体31a,31bのそれぞれに回転可能に軸支されており、スクレーパ32a,32b及び回転ブラシ33は図示しない太陽光発電パネルの受光面に接触するようにして配置される。回転軸49の基端側は軸受35を介して親機1の基盤41に取り付けられている。すなわち、回転軸49は親機1の基盤41に設けられた軸受35に軸支することで回転軸49の回転力が回転ブラシ33に伝達される。
【0086】
太陽光発電パネルは通常多数枚の太陽電池セルによって太陽電池モジュールが構成されている。そのため、回転ブラシ33の長さを例えば太陽光発電パネルの電池セルの1枚分の長さに設定し、上述したワイパー装置30を構成する親機1の代わりに第六の実施形態の子機100を利用した図示しないワイパー装置を上述の実施形態のように形成してワイパー装置30と連結して設けることもできる。
【0087】
[ワイパー装置30の動作]
次に、ワイパー装置30の動作について説明する。親機1のモータ17に通電が行われると基盤41の往復移動に伴ってスクレーパ32a,32bが往復移動する。これにより、太陽光発電パネルの受光面がスクレーパ32a,32bによってよって清掃される。さらに、基盤41の往復移動に伴って回転軸49が回転する。これにより、回転ブラシ33が回転することで太陽光発電パネルの受光面が回転ブラシ33によっても清掃される。一方、親機1に子機100を連結した場合には、伝達アーム(図示せず)を介して子機(図示せず)のワイパー装置の移動体が親機1の移動体4の往復移動に連動して往復移動し、同様に形成された子機のスクレーパによって太陽光発電パネル(図示せず)の受光面が清掃される。さらに、子機の移動体の往復移動に伴って同様に回転軸が回転することにより子機の回転ブラシが回転して太陽光発電パネルの受光面が連動して清掃される。
【0088】
[第八の実施形態の効果]
本実施形態に係るワイパー装置によれば、清掃様式の異なるスクレーパ32a,32bと回転ブラシ33とを併用したことにより、太陽光発電パネルの受光面の汚れを確実に除去することができる。尚、本実施形態に係るワイパー装置は太陽光パネル以外にも利用できることはいうまでもない。
【0089】
8.第九の実施形態
[往復移動機構の第三の構成]
第一の実施形態に係る往復移動機構1の全体形状が直線形状であったのに対し、本実施形態に係る往復移動機構1は平面視における全体形状を湾曲させたものである。ここで、
図18は基盤及びブレ防止ガイドを除いた状態における本発明に係る往復移動機構の第九の実施形態の平面図、
図19は
図18の実施形態のローラ分離壁の平面図、
図20(a)は
図18に示す往復移動機構に取り付けられる移動体の正面図、(b)はその底面図、(c)はその側面図である。尚、上述した第一の実施形態と同じ構成ついては同じ符号を付し説明を省略する。
図18に示す往復移動機構1は、下部ケース10と上部ケース20を組み合わせた本体2と、本体2の上部に往復移動可能に取り付けられる移動体4(
図20参照)とを備えて構成されている。
【0090】
この往復移動機構1は、概略として、本体2の湾曲に併せてカーブさせて配置したチェーン11と、本体2の上面には長手方向に沿ってカーブした開口溝20aが設けられており、この開口溝20a内を基盤41が往復移動する。チェーン11はモータ17を駆動源として回転軸13a(対となる回転軸13bは不図示)に固定されたスプロケット12a(対となるスプロケット12bは不図示)によって回動する。また、チェーン11の横揺れを防止するためのローラ分離壁14がチェーン11の内側の長手方向にカーブさせて配設されている。ローラ分離壁14も湾曲して形成されており、長孔のネジ穴14b,14bもその湾曲に即して湾曲している。尚、本実施形態の往復移動機構1は全体が湾曲している以外は第一の実施形態とほぼ同様であり、また、チェーン11はベルト状の無端回転体であってもよい。
【0091】
チェーン11には、第一の実施形態と同様に上下一対の外側三角プレート15a,15aが取り付けられている。そして、この三角プレート15a,15bの膨出部にはベアリング構造の主柱16が回動自在に立設されており、この主柱16に移動体4の開口部48を係着させるようにしてある。
【0092】
次に移動体4の構成について説明する。移動体4の構成はほぼ第一の実施形態と同様であるが、
図20(b)に示すように、走行部40は本体2の湾曲に合わせて略台形状に形成されている。また、走行部40の底面には楕円形状の開口部48が設けられている。この開口部48内に主柱16が介在することにより、チェーン11の往復動に伴って移動体4が
図20の左右方向へ往復移動する。
【0093】
[往復移動機構1の動作]
次に、第八の実施形態に係る往復移動機構1の動作については、本体2が湾曲している以外は第一の実施形態と同様であるのでその説明は省略する。第八の実施形態に係る往復移動機構1は、上述した各種ワイパー装置として利用することができる。例えばビル等の建築物、車両のガラス窓等に固定または着脱可能な状態にして取り付けられる。車両の場合、フロントガラスの上下辺がカーブしていることが多いので、この往復移動機構1をフロントガラスの湾曲に即して配置することができる。さらに、移動体4には上記各実施形態で説明した伝達アーム3やその他の必要な部品を取り付けることができる。
【0094】
[第八の実施形態の効果]
本実施形態に係る往復移動機構によれば、基盤41がカーブを描いて往復移動可能としたので、曲面形状の窓ガラス等のように拭き取り方向にカーブを有していても拭き取りが可能になるという効果がある。
【0095】
9.第十の実施形態
[ワイパー装置の第三の構成]
次に、本発明の第十の実施形態に係るワイパー装置について説明する。本実施形態のワイパー装置はワイパーラバーがワイパーケースに対して移動可能としたものである。具体的にはケースカバーの下部に嵌め込まれる状態で取り付けられたワイパーケースと、拭き取り面に当接するワイパーラバーを保持したワイパーホルダであって、ワイパーラバーが拭き取り面に接触する方向に移動可能に形成されると共に付勢手段によって常に拭き取り面と接触するように付勢された状態でワイパーケース内に配置されたワイパーホルダを備えている。ここで、
図21は第十の実施形態として示した本発明に係る往復移動機構を利用したワイパー装置の側面図、
図22(a)は
図11に示すワイパー装置を平面状のフロントガラスに用いた場合の密着状態を示すA−A断面図、(b)は
図11に示すワイパー装置を曲面状のフロントガラスに用いた場合の密着状態を示すA−A断面図である。
【0096】
図示されたワイパー装置70は、
図21に示すように、概略として、2点接続式のワイパーアーム78と、ワイパーアーム78に取り付けられた保持部78aに保持される略コ字形の断面形状を有する樋形状のケースカバー71と、このケースカバー71の下部に嵌め込まれる状態で取り付けられたワイパーケース72と、ケースカバー71とワイパーケース72の間に介在されるマグネットベルト74と、ワイパーケース72内にワイパーホルダ73を介して取り付けられ、その端面が窓ガラス400に接触する断面略逆三角形状のワイパーラバー75を備えて構成されている。尚、図示されたワイパー装置70のワイパーラバー75等は直線状に形成されているが、拭き取り面がカーブしているような場合にはそのカーブに合わせた曲線形状に形成することも可能である。
【0097】
また、
図23(a)はマグネットベルトの構成を示す平面図、(b)はマグネットベルトとケースカバーの位置関係を示す斜視図、(c)はワイパーホルダ側に取り付けられたマグネットを示す斜視図である。マグネットベルト74は、
図23(a),(b)に示すように、概略として、帯状の磁気を帯びない素材、例えばプラスチックやアルミニウムによって細長い板状に形成された板状部材にマグネット76,76が所定間隔に接着剤等によって複数取り付けられて形成されている。このマグネットベルト74は、
図23(b)に示すように、ケースカバー71とワイパーケース72との間に介在される。そして、ワイパーケース72の上面にはマグネット76,76が収容される収容部76a,76aが設けられている。一方、ワイパーホルダ73の上面には
図23(c)に示すように複数のマグネット77,77がマグネット76,76に対向させて取り付けられている。マグネット77,77とマグネット76,76の極性は互いに反発し合うように設定されている。これにより、ワイパーホルダ73及びワイパーラバー75はマグネットベルト74と離れる方向に付勢される。尚、本実施形態におけるワイパーラバー75の交換は、
図23(b)に示すように、左右のいずれかの方向から差し込み/引き出すことで可能となるので極めて容易である。このように構成されたワイパー装置70のワイパーアーム78の他端側を上述した各実施形態における往復移動機構1(親機1)の基盤41又は親機1と連結された子機100の基盤41に取り付ける。
【0098】
[ワイパー装置の動作]
次に、
図21〜
図23に示したワイパー装置70の動作について説明する。ワイパー装置70は、例えば
図1に示した往復移動機構1を親機1として、第三の実施形態(
図10参照)や第四の実施形態(
図11参照)のワイパー部分として使用される。そして、拭き取り対象である窓ガラス400平坦な表面形状のであった場合には、
図22(a)に示すように、ワイパーラバー75の先端は全面が窓ガラス400の表面に接触する。この状態では、ワイパーアーム78が移動するどの過程においてもワイパーラバー75に高低差が生じない。そのため、マグネット77,77とマグネット76,76の間の反発力及び両者間の間隔に変化は生じない。
【0099】
一方、
図22(b)に示すように、表面がワイパーラバー75の移動方向に沿って湾曲した表面形状を有する窓ガラス420であった場合、ワイパーアーム78の移動に伴って窓ガラス420の湾曲にワイパーラバー75が追従するため、マグネット77,77とマグネット76,76の間の反発力により両者間の距離が次第に大きくなる。具体的には、
図22(a)から
図22(b)の状態に変化する。逆に、ワイパーラバー75の移動が
図22(b)の状態から図の左方向へ反転した場合、マグネット77,77とマグネット76,76の間の反発力に抗してワイパーホルダ73が押し上げられ、例えば
図22(a)の状態に復帰する。
【0100】
[第九の実施形態の効果]
本実施形態に係るワイパー装置によれば、ケースカバー71にマグネット76,76を配設し、ワイパーホルダ73にマグネット77,77を装着して両マグネット群の間に反発力を形成し、この反発力をワイパーラバー75に対する付勢力として利用したため、フロントガラス等が曲面を有していてもワイパーラバー75が常に接触する状態が得られ、拭きムラを生じないようにすることが可能になるという効果がある。尚、マグネット77,77及びマグネット76,76の代わりにバネなどの弾性部材である付勢部材を用いることも可能である。
【0101】
10.第十一の実施形態
[ワイパー装置の第四の構成]
次に、本発明の第十一の実施形態に係るワイパー装置について説明する。本実施形態は使用時と不使用とでワイパーアームを90°折り曲げて格納可能とする格納機構を備えたものである。ここで、
図24(a)は第十一の実施形態として示した本発明に係る往復移動機構を利用したワイパー装置の使用時におけるワイパーアームの格納機構の平面図、(b)は格納時におけるワイパーアーム格納機構の平面図である。ここで、上述した各実施形態と同じ構成ついては同じ符号を付し説明を省略する。
【0102】
本実地形態におけるワイパー装置は、上述した各ワイパー装置と同様の構成を備えており、ワイパーアームの基端側にワイパーアーム格納機構が設けられたものである。ワイパーアーム格納機構は、概略として、角形のベース81と、このベース81の所定位置に立設された固定軸82と、この
固定軸82に回動自在に軸支され、基端側が“へ”の字形状に屈曲したワイパーアーム83と、このワイパーアーム83の短辺の端部に立設されたピン84と、このピン84が介在する楕円溝85を有した略J字形状の駆動アーム86と、その長手方向に通電に伴って該駆動アーム86を移動させる電磁石87とを備えて構成されている。そして、ベース81を上述した各実施形態における往復移動機構1の基盤41又は往復移動機構100の基盤41に取り付けると共に、ワイパーアーム83に図示しないワイパーブレードを取り付ける。
【0103】
[ワイパー装置の動作]
次に、上述したワイパーアーム格納機構の動作について説明する。
図25(a)はワイパーアームの格納状態と使用状態との移行の軌跡を示す説明図、(b)は使用時におけるワイパーアームの軌跡を示す説明図である。通常、ワイパー装置を使用ない場合には、ワイパーアーム83はワイパーアーム83の往復移動方向に対して略90°横倒し状態となった格納状態となっている。そして、降雪時や降雨時等にあってワイパー装置を使用する必要が生じると、車両の運転者等によって図示しない電源スイッチがオンにされる。すると電磁石87に通電されることで電磁石87に磁気力が生じ、その内部を貫通している駆動アーム86が
図24(b)に示す右方向へ引き寄せられる。駆動アーム86が右方向へ引き寄せられると、これに伴ってピン84も
図24(b)に示す右方向へ移動する。その結果、
図24(a)に示すように、ワイパーアーム83が固定軸82を軸にして反時計方向へ90°回転する。これにより、ワイパーアーム83は、
図25(a)に示すような起立状態となる。
【0104】
ワイパーアーム83が使用開始位置に位置した段階で図示しない制御回路によって上述したワイパー装置を構成する親機1を駆動し、親機1の基盤41に取り付けられたベース81を往復移動させることで、ワイパーアーム83に取り付けられたワイパーラバー(図示せず)を窓ガラス400に接触させながら
図25(b)に示すように窓ガラス400の左右方向へ往復移動させる。これにより窓ガラス400の清掃が連続的に行われる。
【0105】
一方、ワイパーアーム83を格納したい場合には、図示しない電源スイッチをオフにして電磁石87への通電を停止する。すると、駆動アーム86が図示しないスプリング等の付勢力によって
図24(b)に示す状態となり、起立動作とは逆の動作によってワイパーアーム83が90°回転して最終的に格納状態となる。尚、ベース81が取り付けられた基盤41が予め定めた所定位置に至ったときに格納動作が行われるように基盤41の位置を検知するセンサを設けておくとよい。
【0106】
[第十一の実施形態の効果]
本実施形態に係る往復移動機構によれば、電磁石87を駆動源にしてワイパーアーム83を退避位置に格納可能としたので、ワイパーの不使用時にはフロントガラス等の視野内からワイパーを隠すことができるという効果がある。従って、必要時にのみワイパーを視野内に露出することができることで、美観を向上させることができる。
【0107】
11.第十二の実施形態
[ワイパー装置の第五の構成]
次に、本発明の第十二の実施形態に係るワイパー装置について説明する。本実施形態は自動車のフロントガラス、サイドウインドウやリアウインドウのように矩形状でなく高さ幅の変化する形状の拭き取り面に対してワイパーの長さを適宜に変化させてその全面を拭き取り可能としたものである。すなわち、例えば自動車のサイドウインドウのような拭き取り面の縁に沿ってガイドレールを設置し、これに沿って移動する
ローラ機構をワイパーの先端に設け、ワイパーが円滑に移動できるようにしたものである。特に、縁部が屈曲した自動車のサイドウインドウに用いるのに適している。ここで、
図26(a)は第十二の実施形態として示した本発明に係る往復移動機構を利用したワイパー装置の主要部の平面図、(b)はそのワイパー部の詳細を示す断面図、
図27(a)は
図26に示すワイパー装置のワイパーアームがサイドウインドウの一方の側にあるときを示す説明図、(b)はワイパーアームがサイドウインドウの他方の側にあるときを示す説明図である。
【0108】
第十二の実施形態に係るワイパー装置90は、概略として、ワイパーアーム78の先端部に設けられた伸縮部91と、この伸縮部91に伸縮自在に取り付けられたワイパーアーム92と、このワイパーアーム92の先端に取り付けられた
ローラ機構93と、この
ローラ機構93内のローラ95,95をガイドするガイドレール94とを備えて構成されている。ここで、ワイパーアーム78の基端側は上述した往復移動機構1の基盤41に取り付けられると共に、長さ方向に沿ってワイパーラバー97が取り付けられている。尚、往復移動機構1はサイドウインドウ430の下部側に配置されている。また、ワイパーアーム92も長さ方向に沿ってワイパーラバー97が取り付けられており、ワイパーアーム92はワイパーアーム78の先端に取り付けられた伸縮部91に挿入された状態で連結されている。具体的には
図26(b)に示すように、ワイパーアーム78の側面に形成された凸状部とワイパーアーム92の側面に形成された凹状部が入れ子式とされたスライド部96によって長手方向にスライド可能に連結されている。この構成により、ワイパーアーム92はローラ95,95がガイドレール94に案内されてワイパーアーム78に対して
図26(a)の上下方向にスライドする。
【0109】
ローラ機構93は、
図26(a)に示すように、一対のローラ95,95が略「く」の字形状に折り曲げられたローラ保持具98に軸支されており、このローラ保持具98がピン98aによってワイパーアーム92の先端に取り付けられた構成となっている。
【0110】
[ワイパー装置90の動作]
次に、
図26に示したワイパー装置90の動作について説明する。
図27(a)に示すように、サイドウインドウ430は高さ方向(
図27では上下方向)の寸法が左右で異なっており、その上縁に沿ってガイドレール94が設けられている。このサイドウインドウ430に対し、ワイパー装置90は縦方向に立設するようにして取り付けられている。そして、サイドウインドウ430の上縁部にそって配置された湾曲したガイドレール94には
ローラ機構93が設けられている。
【0111】
図27(a)に示すように、ワイパーアーム78,92が一番左側にあるときの位置を初期位置とすると、ワイパーアーム92は最も伸びた状態になっている。この状態でワイパーアーム78,92が
図27(a)の右方向へ移動するとガイドレール94は右下がりの形状となっているのでこの移動過程でワイパーアーム92は徐々に下方側へ向かって押し下げられる。そして、ワイパーアーム78,92がサイドウインドウの430の他端に到達すると(
図27(b)に示す状態)、ワイパーアーム92は最も縮んだ状態となる。そして、ワイパーアーム78,92が反対方向へ移動を開始すると、ワイパーアーム92は次第に伸びながら初期位置へ至る。このように、ワイパーアーム78,92が
図27(a)と
図27(b)に示す状態を交互に繰り返すことによりサイドウインドウ430の外表面が清掃される。
【0112】
[第十一の実施形態の効果]
本実施形態に係る往復移動機構によれば、ワイパーアーム92とワイパーアーム78をスライド伸縮可能としたため、自動車のサイドウインドウ430のように窓ガラスが矩形状でなく高さ位置が湾曲したような場合であってもその全面を略100%近く拭き残し無く清掃することができるという効果がある。
【0113】
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。
【0114】
以上のように、好ましい各実施形態について説明したが、本発明に係る往復移動機構及びそれを利用したワイパー装置は、車両等の窓ガラスのほか、地上建物、水族館などの人がそれを通して外部を見通す拭き取り対象物の全般に採用可能である。
【解決手段】往復移動機構1は、モータ17を駆動源にして回動するチェーンによって往復動する移動対3を備え、これに立設する基盤にワイパー等が取り付けられる。チェーンには柱状の主柱が立設され、この主柱が移動体4の底面の開口部に挿入される。チェーンの回動によって主柱が往復動することにより基盤も往復動し、基盤に取り付けられたワイパー等が窓ガラス等の被清掃面を清掃する。主柱は、その外筒をチェーンに固定された軸部材に回動自在に取り付けられたベアリング構造となっている。