(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発光モジュールでは、直線状に並べられた複数の半導体発光素子のうち、両端よりも内側に位置する半導体発光素子の発光面積が、両端に位置する半導体発光素子の発光面積よりも小さい。発光面積が小さい半導体発光素子は、電流密度が高くなるため、モジュールの中央部近傍での発光輝度が高くなる。
【0006】
しかしながら、特許文献1の発光モジュールのように、面積が異なる半導体発光素子を作製することは素子の製造コストを上昇させる。また、特性が異なる複数種の半導体発光素子を基板上に配置することは、製造工程の増加や煩雑化を招くおそれもある。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、中央部に配置された半導体発光素子の輝度が周辺部に配置された半導体発光素子の輝度よりも高い発光モジュールを簡易な構成で実現する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の発光モジュールは、車両用灯具に用いられる発光モジュールであって、直線状に配置された複数の半導体発光素子を備える。複数の半導体発光素子は、モジュールの両端側に配置され、互いに直列に接続されている複数の第1の半導体発光素子と、モジュールの中央部に配置され、第1の半導体発光素子よりも発光時の輝度を高めることが可能に構成されている1以上の第2の半導体発光素子と、を有する。第1の半導体発光素子と第2の半導体発光素子とは、並列に接続されている。
【0009】
この態様によると、第1の半導体発光素子と第2の半導体発光素子とに流れる電流を互いに異ならせることができる。そのため、中央部の輝度が高い発光モジュールを実現でき、例えば、車両用灯具に適用した場合に、中央部が明るい所望の配光パターンを実現できる。
【0010】
第1の半導体発光素子と直列に接続されている第1の抵抗器と、第2の半導体発光素子と直列に、かつ、第1の抵抗器と並列に接続されている第2の抵抗器と、を更に有してもよい。第2の抵抗器は、第1の抵抗器よりも電気抵抗が小さい。これにより、各素子に流れる電流や電圧を特段制御しなくても、簡易な構成で、第1の半導体発光素子と第2の半導体発光素子とに流れる電流を互いに異ならせることができる。
【0011】
複数の半導体発光素子が実装されているLEDパッケージを更に備えてもよい。第1の抵抗器および第2の抵抗器の少なくとも一方は、LEDパッケージの温度変化の影響を受ける場所に配置されており、第1の抵抗器および第2の抵抗器の少なくとも一方は、正の温度係数を有してもよい。これにより、半導体発光素子としての発光ダイオードの抵抗が温度変化により減少(増加)しても、LEDパッケージの温度変化の影響を受ける場所に配置されている抵抗器の抵抗は増加(減少)する。その結果、発光モジュール全体としての抵抗の変化は緩和される。そのため、発光モジュールを定電圧駆動した場合であっても、発光ダイオードに流れる電流の温度依存性を少なくできる。
【0012】
第1の半導体発光素子と第2の半導体発光素子とに流れる電流を独立して制御する制御部を更に備えていてもよい。これにより、第1の半導体発光素子と第2の半導体発光素子とに流れる電流を互いに異ならせることができる。そのため、中央部の輝度が高い発光モジュールを実現でき、例えば、車両用灯具に適用した場合に、中央部が明るい所望の配光パターンを実現できる。
【0013】
制御部は、ハイビーム用配光パターンを形成する場合には、ロービーム用配光パターンを形成する場合と比較して、第2の半導体発光素子に流す電流量を増加させる。これにより、発光モジュールの中央部に配置された、遠方視認性に影響の大きい第2の半導体発光素子に流す電流量のみを増加させることができ、発光モジュールの両端側に配置された、遠方視認性に影響の小さい第1の半導体発光素子に流す電流量は増加させずにすむ。これにより、ハイビーム用配光パターンを形成する際の消費電力の増大を抑制できる。
【0014】
車両の前照灯として用いられる車両用灯具であって、発光モジュールと、発光モジュールから出射された光を車両前方に照射するための光学部材と、発光モジュールおよび光学部材を収容する灯体と、を備えた。
【0015】
この態様によると、中央部が明るい所望の配光パターンを簡易な構成で実現できる。
【0016】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
中央部に配置された半導体発光素子の輝度が周辺部に配置された半導体発光素子の輝度よりも高い発光モジュールを簡易な構成で実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る車両用灯具100を示す正面図である。車両用灯具100は、例えば、車両の前方の予め定められた照射方向に光を照射するロービーム照射用の車両用前照灯である。車両用灯具100は、灯室を構成する透明カバー102とランプボディ104とで形成される灯室内に、3つの車両用灯具ユニット10を横一列に収容する。
【0021】
これらの車両用灯具ユニット10は、同一又は同様の構成を有し、車両用灯具100を車体に取り付けた場合に、光軸が車両前後方向に対して0.3〜0.6°程度下向きとなるように灯室内に収容されている。車両用灯具100は、これらの車両用灯具ユニット10が照射する光に基づき、車両の前方に光を照射して、所定の配光パターンを形成する。車両用灯具100は、それぞれ異なる配光特性を有する複数の車両用灯具ユニット10を備えてもよい。
【0022】
図2は、車両用灯具ユニット10の側断面図である。車両用灯具ユニット10は、発光モジュール16から出射された光を、光学部材である投影レンズ12により直接前方に照射する直射型の車両用灯具ユニットである。
図2に示すように、車両用灯具ユニット10は、支持部材18、遮光部材14、発光モジュール16、投影レンズ12を備える。
【0023】
支持部材18は、車両の前方を向く表面上に発光モジュール16の底面を支持して固定することにより、発光モジュール16を車両の前方に向けて発光させる板状体である。本実施の形態において、支持部材18は鉛直方向に立てて設けられている。支持部材18の上端および下端には、発光モジュール16の発生する熱を放熱するヒートシンク19が設けられている。ヒートシンク19により、発光モジュール16の発光効率が熱により低下するのを防ぐことができる。
【0024】
遮光部材14は、発光モジュール16を挟んで支持部材18の上面と対向して設けられた板状体であり、発光モジュール16が発生する光の一部を上縁部において遮ることにより、当該上縁部の正面方向への投影形状に基づき、投影レンズ12に入射する光の明暗境界を規定する。投影形状は、例えば、車両の左右方向に延伸する直線状である。また、遮光部材14の下端は、支持部材18の下端と接続されており、遮光部材14と支持部材18とは一体に形成されている。
【0025】
発光モジュール16は、支持部材18上に底面が固定された基板22と、基板22の上面上に直線状に並べられた複数の半導体発光素子20と、半導体発光素子20を封止する透光部材24とを含む。透光部材24は、透明樹脂などの半導体発光素子20が発生する光を透過する材料で形成される。発光モジュール16は、複数の半導体発光素子20の配列方向が車両の左右方向となるように配置される。また、発光モジュール16は、半導体発光素子20の鉛直方向の中央が、投影レンズ12の光軸Ax上に位置するように配置される。発光モジュール16の詳細については、後述する。
【0026】
投影レンズ12は、前方側表面および後方側表面が凸面の両凸レンズで構成されており、その焦点距離faは比較的大きい値に設定されている。投影レンズ12は、図示しない連結部材を介して支持部材18に固定されている。投影レンズ12は、発光モジュール16の複数の半導体発光素子20に対して共通に設けられた光学系であり、発光モジュール16に対して車両前方に設けられ、発光モジュール16の発生する光を透過することにより、光を車両前方の所定の照射方向に照射する。投影レンズ12は、光学的中心としての後側焦点Fが、複数の半導体発光素子列の中央線上に位置するように配置される。
【0027】
このように構成された車両用灯具ユニット10において、発光モジュール16からの出射光は、投影レンズ12によってわずかに光軸Ax寄りに収束させるようにして、前方へ反転照射する。その際、発光モジュール16からの出射光のうち光軸Axよりも下方へ向かう光については、これを遮光部材14により遮蔽するようになっており、これにより車両用灯具ユニット10から前方へ向けて上方光が照射されないようになっている。
【0028】
図3は、本実施の形態に係る発光モジュール16を示す図である。発光モジュール16は、車両左右方向に延びる直線状光源であり、基板22と、複数の半導体発光素子20a〜20dと、透光部材とを備えている。なお、
図3においては、透光部材の図示を省略している。
【0029】
複数の半導体発光素子20a〜20dは、上面視において左側から、第1の半導体発光素子20a、第2の半導体発光素子20b,20c、第1の半導体発光素子20dの順で、基板22上に略等間隔に直線状に並べて配置されている。つまり、複数の半導体発光素子20a〜20dは、発光モジュール16の両端側に配置された複数の第1の半導体発光素子20a,20dと、発光モジュール16の中央部に配置され、第1の半導体発光素子20a,20dよりも発光時の輝度を高めることが可能に構成されている複数の第2の半導体発光素子20b、20cと、を有する。なお、第2の半導体発光素子は、一つであってもよい。
【0030】
また、半導体発光素子20a〜20dは、白色発光する白色LEDである。半導体発光素子20a〜20dは、例えば、表面上に設けられた蛍光体(図示せず)に対して青色光を照射することにより、蛍光体に黄色光を発光させ、素子全体として白色光を発生する。半導体発光素子20a〜20dは、それぞれ、
図3に示した上面の略全領域が発光領域である。なお、半導体発光素子20a〜20dは、発光面積が略1mm角のLEDチップである。
【0031】
図4は、各半導体発光素子と電源との接続状態を模式的に示した回路図である。
図4に示すように、本実施の形態において、第1の半導体発光素子20a,20dおよび第2の半導体発光素子20b,20cは、基板22上に形成された配線パターン(図示せず)により、電気的に接続されている。
【0032】
具体的には、第1の半導体発光素子20aのアノードは、
図4に示す電源装置21の正極端子に接続され、第1の半導体発光素子20aのカソードは、第1の半導体発光素子20dのアノードに接続される。第1の半導体発光素子20dのカソードは、第1の抵抗器R1を介して電源装置21の負極端子に接続される。同様に、第2の半導体発光素子20bのアノードは、電源装置21の正極端子に接続され、第2の半導体発光素子20bのカソードは、第2の半導体発光素子20cのアノードに接続される。第2の半導体発光素子20cのカソードは、第2の抵抗器R2を介して電源装置21の負極端子に接続される。
【0033】
つまり、
図4に示すように、発光モジュール16の両端側に配置されている2つの第1の半導体発光素子20a,20dは、電源装置21に対して直列に接続されている。同様に、発光モジュール16の中央部に配置されている2つの第2の半導体発光素子20b,20cは、電源装置21に対して直列に接続されている。また、第1の半導体発光素子20a,20dと、第2の半導体発光素子20b,20cとは、並列に接続されている。
【0034】
したがって、第1の半導体発光素子20a,20dと、第2の半導体発光素子20b,20cとが並列に接続されていることで、第1の半導体発光素子20a,20dと、第2の半導体発光素子20b,20cとに流れる電流を、互いに異ならせることが可能となる。そのため、第2の半導体発光素子20b,20cに流す電流を高めれば、中央部の輝度が高い発光モジュール16を実現できる。また、このような発光モジュール16を備えた車両用灯具ユニット10は、中央部が明るい所望の配光パターンを簡易な構成で実現できる。
【0035】
さらに、本実施の形態に係る発光モジュール16は、第1の半導体発光素子20a,20dと直列に接続されている第1の抵抗器R1と、第2の半導体発光素子20b,20cと直列に、かつ、第1の抵抗器R1と並列に接続されている第2の抵抗器R2と、を更に有している。また、第2の抵抗器R2は、第1の抵抗器R1よりも電気抵抗が小さい。これにより、各半導体発光素子に流れる電流や電圧を特段制御しなくても、簡易な構成で、第1の半導体発光素子20a,20dに流れる電流よりも、第2の半導体発光素子20b,20cに流れる電流を多くできる。したがって、発光モジュールの内側に配置されている第2の半導体発光素子20b,20cは、両端側に配置されている第1の半導体発光素子20a,20dよりも発光輝度が高くなる。
【0036】
また、各半導体発光素子へ流す電流を個別に制御するための電流制御回路が必要なくなる。また、同じ大きさや性能の半導体発光素子を複数並べた発光モジュールであっても、簡便に素子毎の輝度を異ならせることができるため、複数の種類の半導体発光素子を用いる必要がなく、発光モジュールのコストが低減される。また、複数の種類の半導体発光素子を基板に搭載する場合と比較して、単一の種類の半導体発光素子を基板に搭載する方が、工程の簡略化や量産性の向上によって製造コストを低減できる。
【0037】
また、本実施の形態に係る発光モジュール16は、上述したように、
図2に示す車両用灯具ユニット10に組み付けられた際に、4つの半導体発光素子列の中央線C上に投影レンズ12の後側焦点Fが位置するように配置される。
【0038】
図5は、車両用灯具100の配光パターンの一例を示す。
図5に示す配光パターン400は、車両用灯具100の前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される左ロービーム配光パターンである。配光パターン400は、車両用灯具100の有する3つの車両用灯具ユニット10の合成配光パターンとして形成される。配光パターン400は、その上端に上下方向の明暗境界を定める水平カットラインCL1および斜めカットラインCL2を有している。
【0039】
水平カットラインCL1は、車両用灯具100の正面(水平軸H−垂直軸Vの交点)に対してやや下方(0.5〜0.6°程度下向き)に設定されている。斜めカットラインCL2は、垂直軸VとCL1の交点から左上方に約15°程度傾斜している。配光パターン400のうちの水平カットラインCL1は、遮光部材14の上縁部の水平エッジによって形成される。一方、斜めカットラインCL2は、遮光部材14の上縁部の傾斜エッジによって形成される。配光パターンにおける水平軸Hと垂直軸Vとの交点近傍の領域は、ホットゾーン402と呼ばれ、安全上の観点から配光パターン400の他の領域に比べて、より明るく照らされることが好ましい。
【0040】
ここで、配光パターンの水平カットラインCL1および斜めカットラインCL2の形成精度について検討する。本実施の形態では、第1の半導体発光素子20a,20dと、第2の半導体発光素子20b,20cとを並列に接続し、かつ、第2の半導体発光素子20b,20cと直列に接続される第2の抵抗器R2の電気抵抗を、第1の半導体発光素子20a,20dと直列に接続される第1の抵抗器R1の電気抵抗よりも小さく設定したことにより、発光モジュールの内側に配置されている第2の半導体発光素子20b,20cは、発光モジュールの両端側に配置されている第1の半導体発光素子20a,20dよりも発光輝度が高くなる。
【0041】
この発光モジュール16を用いて、光学系の光学的中心としての投影レンズ12の後側焦点Fが、半導体発光素子列の中央線C上に位置するように車両用灯具ユニット10を構成した場合、後側焦点Fに近い内側の第2の半導体発光素子20b,20cの輝度が高くなることにより、後側焦点Fを通る光量が増加する。通常、車両用灯具ユニットの光学系は、光学的中心を通った光が最も高い精度で配光パターンを形成するように構成されているので、後側焦点Fを通る光量が増加することにより、配光パターンの水平カットラインCL1および斜めカットラインCL2を明確に形成することができる。
【0042】
また、投影レンズ12の後側焦点Fを通る光量が増加することにより、ホットゾーン402を明るく照らすことができる。さらに、配光パターンを形成するための光の利用効率が比較的高い内側に配置された第2の半導体発光素子20b,20cのみ輝度が高くなるため、消費電力の損失を低減できる。
【0043】
なお、本実施の形態では、4個の半導体発光素子を配置する例について説明したが、3個以上の半導体発光素子を直線状に配置した発光モジュールであってもよい。また、各半導体発光素子の内部抵抗を考慮して、第1の抵抗器と第2の抵抗器のいずれかを省略することも可能である。
【0044】
電源装置21は、車両用灯具ユニット10の内部に設けられていてもよいし、外部に設けられていてもよい。また、各半導体発光素子への電流の制御は、車両側にあるバッテリーと直結された場合のような定電圧制御に限られず、点灯回路を介した制御であってもよい。
【0045】
本実施の形態では、発光モジュール16を、ロービーム用配光パターンのみを形成する車両用前照灯に適用した例ついて説明したが、ハイビーム用配光パターンのみを形成する車両用前照灯や、ロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンとを切り替え可能に構成された車両用前照灯に適用することももちろん可能である。
【0046】
(第2の実施の形態)
図6は、第2の実施の形態に係る発光モジュールの模式図である。
図6では、主として回路構成を示してある。なお、第1の実施の形態と同様の構成、作用、効果の説明については、適宜省略する。
【0047】
図6に示す発光モジュール116は、4つの半導体発光素子20a〜20dがそれぞれ並列接続されている。また、第1の半導体発光素子20aは、第1の抵抗器R1と直列に接続され、第2の半導体発光素子20bは、第2の抵抗器R2と直列に接続され、第2の半導体発光素子20cは、第3の抵抗器R3と直列に接続され、第1の半導体発光素子20dは、第4の抵抗器R4と直列に接続されている。ここで、第2の抵抗器R2および第3の抵抗器R3は、第1の抵抗器R1および第4の抵抗器R4よりも電気抵抗が小さい。
【0048】
これにより、各半導体発光素子20a〜20dに流れる電流や電圧を特段制御しなくても、簡易な構成で第1の半導体発光素子20a,20dに流れる電流よりも、第2の半導体発光素子20b,20cに流れる電流を多くできる。したがって、発光モジュール116の内側に配置されている第2の半導体発光素子20b,20cは、両端側に配置されている第1の半導体発光素子20a,20dよりも発光輝度が高くなる。
【0049】
(第3の実施の形態)
図7は、第3の実施の形態に係る発光モジュールの模式図である。
図7では、主として回路構成を示してある。なお、上述の各実施の形態と同様の構成、作用、効果の説明については、適宜省略する。
【0050】
発光モジュール16は、車両左右方向に延びる直線状光源であり、複数の半導体発光素子120a〜120cと、制御部122とを備えている。以下では、複数の半導体発光素子120a〜120cは、第1の実施の形態に係る各半導体発光素子20a〜20dと同等の構成として説明する。
【0051】
複数の半導体発光素子120a〜120cは、
図7の左側から、第1の半導体発光素子120a、第2の半導体発光素子120b、第1の半導体発光素子120cの順で、基板(不図示)上に略等間隔に直線状に並べて配置されている。つまり、複数の半導体発光素子120a〜120cは、発光モジュール216の両端側に配置された複数の第1の半導体発光素子120a,120cと、発光モジュール216の中央部に配置され、第1の半導体発光素子120a,120cよりも発光時の輝度を高めることが可能に構成されている第2の半導体発光素子120bと、を有する。なお、第2の半導体発光素子は、複数であってもよい。第1の半導体発光素子120a,120cと、第2の半導体発光素子120bとは、それぞれ独立の通電経路に設けられている。
【0052】
制御部122は、第1の半導体発光素子120a,120cと第2の半導体発光素子120bとに流れる電流を独立して制御する。これにより、第1の半導体発光素子120a,120cと第2の半導体発光素子120bとに流れる電流を互いに異ならせることができる。そのため、中央部の輝度が高い発光モジュールを実現でき、例えば、車両用灯具に適用した場合に、中央部が明るい所望の配光パターンを実現できる。
【0053】
また、第3の実施の形態に係る発光モジュール216を、ハイビーム用配光パターンとロービーム用配光パターンの両方を一種類の光源で実現するように構成されている車両用灯具ユニットに、その光源として搭載できる。
【0054】
制御部122は、ロービーム用配光パターンを形成する場合には、第1の半導体発光素子120a,120cと第2の半導体発光素子120bとに流す電流量が略同一となるようにし、各半導体発光素子120a〜120cの輝度をほぼ同等にする。また、制御部122は、ハイビーム用配光パターンを形成する場合には、ロービーム用配光パターンを形成するときと比較して、第2の半導体発光素子120bに流す電流量を増加させることができるように構成されている。これにより、発光モジュール216の中央部に配置された、遠方視認性に影響の大きい第2の半導体発光素子120bに流す電流量のみを増加させることができ、発光モジュール216の両端側に配置された、遠方視認性に影響の小さい第1の半導体発光素子120a,120cに流す電流量は増加させずにすむ。その結果、車両用前照灯において、ハイビーム用配光パターンを形成する際の消費電力の増大を抑制できる。
【0055】
本実施の形態では、半導体発光素子の個数を3個として説明したが、個数は4個以上であってもよい。
図8(a)は、半導体発光素子の総数が4個の発光モジュールにおける第1の半導体発光素子と第2の半導体発光素子との配置を示した模式図、
図8(b)は、半導体発光素子の総数が5個の発光モジュールにおける第1の半導体発光素子と第2の半導体発光素子との配置を示した模式図である。
【0056】
図8(a)に示す発光モジュール218は、両端側にある2個の第1の半導体発光素子130a,130dと、中央部近傍にある2個の第2の半導体発光素子130b,130cとを有する。また、
図8(b)に示す発光モジュール220は、両端側にある2個の第1の半導体発光素子140a,140eと、中央部近傍にある3個の第2の半導体発光素子130b〜130dとを有する。
【0057】
本実施の形態に係る発光モジュール216,218,220のいずれにおいても、発光モジュールの発光面の中心を通り、かつ、発光面の長手方向に対して垂直な中心線に対し、1以上の第2の半導体発光素子が線対称となるように配置されている。また、各半導体発光素子は、発光面の中心に対して対称となるような形状である。本実施の形態では、半各導体発光素子の発光面の形状は、正方形又は長方形である。これにより、発光モジュールによる配光の左右対称性が実現し、視認性が向上する。
【0058】
また、発光モジュールの発光面積のうち、電流を増加させることで他より輝度を高める第2の半導体発光素子の発光面積が占める割合は、全発光面の面積に対し、30%〜60%程度であるとよい。これにより全ての半導体発光素子の電流を増加させる場合に比べ、消費電力の増加分は、40%〜70%程度に抑えることができる。
【0059】
(第4の実施の形態)
一般的に、LEDは、負の温度係数を抵抗成分に持つ。
図9は、一般的なLEDを定電流で駆動した場合における、雰囲気温度と電圧との関係を示した図である。
図9に示すように、雰囲気温度の上昇とともにLEDの駆動電圧が低下することがわかる。
図10は、一般的なLEDの電圧−電流特性の温度依存性を示す図である。
図10に示すように、雰囲気温度がT0、T1、T2のように上昇するにつれて、電圧の変化に対する電流の変化が大きくなることがわかる。このような特性から、一般的なLEDを定電流駆動するためには、制御回路のような安定器が別途必要である。
【0060】
換言すれば、定電圧駆動した場合の電流の温度依存性が少なければ、このような制御回路を簡素化又は省略できることになる。そこで、本発明者は、一般的に負の温度係数を抵抗成分に有するLEDに対して正の温度係数を有する抵抗器を直列に接続することで、温度の変化に対して明るさの変動の少ない発光モジュールを簡易な構成で実現できることに想到した。
【0061】
具体的には、第1の実施の形態に係る発光モジュールにおいて、第1の抵抗器R1および第2の抵抗器R2として、以下の構成の材料を用いることが好ましい。
【0062】
図11は、第4の実施の形態に係る発光モジュールの概略構成を示す上面図である。発光モジュール222は、LEDである第1の半導体発光素子150a,150dとLEDである第2の半導体発光素子150b,150cとが実装されているLEDパッケージ224と、第1の抵抗器R1および第2の抵抗器R2(以下、適宜「抵抗器R1,R2」と称する。)とを備える。LEDパッケージ224は、セラミックなどで形成された熱伝導性絶縁基板230と、熱伝導性絶縁基板230に形成されている配線パターン232とを有する。
【0063】
第1の抵抗器R1は、第1の半導体発光素子150a,150dと直列に接続されている。第2の抵抗器R2は、第2の半導体発光素子150b,150cと直列に接続されている。なお、第2の抵抗器R2は、第1の抵抗器R1よりも電気抵抗が小さい。また、抵抗器R1,R2は、LEDパッケージ224の配線パターン232上にフリップチップ実装されている。そのため、抵抗器R1,R2は、LEDパッケージ224の温度変化の影響を受ける場所に配置されていることになる。本実施の形態に係る抵抗器R1,R2は、正の温度係数を有する。
【0064】
図12は、本実施の形態に係る発光モジュールを定電流で駆動した場合における、雰囲気温度と電圧との関係を例示した図である。本実施の形態に係る発光モジュールは、温度変化によりLEDである各半導体発光素子150a〜150dの抵抗が減少(増加)しても、LEDの温度変化の影響を受ける場所に配置されている抵抗器R1,R2の抵抗は増加(減少)する。したがって、使用するLEDに応じて、抵抗器の材質や構成を適切に設計することで、発光モジュール全体としての抵抗の変化は緩和される。
【0065】
そのため、
図12に示すように、本実施の形態に係る発光モジュールは、LEDのみの発光モジュールと比較して、電圧の温度依存性が少ない。換言すれば、本実施の形態に係る発光モジュールを定電圧駆動した場合であっても、発光ダイオードに流れる電流の温度依存性を少なくできる。つまり、温度の変化に対して明るさの変動の少ない発光モジュールを、簡易な制御回路を使用し、あるいは、制御回路などを使用せずに実現できる。
【0066】
また、通常は、制御回路の寿命はLEDチップの寿命よりも短いため、発光モジュール全体の寿命は制御回路の寿命に依存してしまう。しかしながら、制御回路を使用せずに発光モジュールを構成できれば、LEDチップ本来の寿命まで発光モジュールや発光モジュールを備えた灯具の寿命を延ばすことができる。
【0067】
表1は、正の温度係数を有する金属材料の体積抵抗率と温度係数の数値を例示したものである。
図13は、表1に示した金属材料の体積抵抗率と温度係数との関係を示した図である。なお、体積抵抗率は0℃の数値を示し、温度係数は、0℃〜100℃(ΔT=100℃)の間の数値である。
【0069】
本実施の形態の抵抗器R1,R2の少なくとも一方は、0℃における体積抵抗率が2×10
−8[Ω・m]以上であるとよい。より好ましくは、0℃における体積抵抗率が3×10
−8[Ω・m]以上であるとよい。
【0070】
また、本実施の形態に係る抵抗器R1,R2の少なくとも一方は、0℃〜100℃の間で正の温度係数を有していればよい。より好ましくは、抵抗器R1,R2の少なくとも一方は、0℃〜100℃の間の温度係数が0.05[10
−3/℃]以上であるとよい。
【0071】
回路を構成する抵抗器は、場合によって正の温度係数を有するものもあるが、その値は非常に小さい。そして、大きな値の正の温度係数を有する抵抗器を回路に用いることは避けられている。しかしながら、一般的に回路への使用が避けられるほど大きな値の正の温度係数を有する抵抗器と、一般的に負の温度係数を抵抗成分に有するLEDと組み合わせることで、温度変化によるLEDパッケージ224全体の抵抗の変化をより緩和できる。
【0072】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。