(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
(磁石発電機)
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る回転電機である磁石発電機1を一方からみた平面図、
図2は、磁石発電機1を他方からみた平面図である。
図1、
図2に示すように、磁石発電機1は、例えば自動二輪車に用いられるアウターロータ型の発電機であって、エンジンのクランクシャフト2の先端に固定されたロータ3と、エンジンのケース(不図示)に固定されるステータ4とを備えている。
【0022】
ロータ3は、有底筒状に形成されたものであって、底壁(不図示)の径方向中央にロータボス5が突設されている。このロータボス5に、クランクシャフト2が取り付けられている。また、ロータ3の周壁7には、内周面側に複数の永久磁石8が周方向に磁極が交互となるように設けられている。
【0023】
ステータ4は、円環状のステータコア17を有している。ステータコア17は、磁性材料の板材を軸線方向に積層して形成したものであって、径方向中央にロータボス5が挿通可能なボス孔15が形成されている。また、ステータコア17には、ステータ4を不図示のエンジンのケースに締結固定するためのボルト孔20が4箇所周方向に略等間隔に形成されている。
ここで、ステータコア17の端面は、エンジンのケースとの接触面として設定される。ステータコア17の接触面とエンジンのケースとを接触させた状態で、ボルト孔20に不図示のボルトを挿通してエンジンのケースにステータ4を締結固定する。このように構成することで、エンジンのケースにステータ4を安定して固定することができると共に、ステータ4の放熱性を高めることができる。
【0024】
さらに、ステータコア17には、放射状に径方向外側に向かって延出する平面視T字形状のティース16が等間隔に18個設けられている。
尚、各ティース16は、周方向で隣り合うティース16の形状が異なり、且つ周方向で60度間隔に配置されているティース16同士の形状が同一形状になっている、所謂異形コアである。しかしながら、これに限られるものではなく、各ティース16が同一形状であってもよいし、また、ティース16の個数も18個に限られるものではない。
【0025】
ステータ4の外周には、隣接するティース16間に蟻溝状のスロット19が形成されている。このスロット19は、ティース16に電機子コイル18を巻装するためのコイル受け入れ口の役割を有する。スロット19は軸線方向に沿って延びており、周方向に沿って等間隔に18個形成されている。また、ステータコア17には、絶縁材であるインシュレータ24が装着されており、各ティース16には、インシュレータ24の上から電機子コイル18が多数回巻回されるようになっている。
【0026】
ここで、各ティース16は、それぞれU相、V相、W相が周方向にこの順で割り当てられている。このため、各ティース16に巻装されている電機子コイル18は、それぞれ対応する相に設定される。そして、U相、V相、W相の電機子コイル18は、それぞれの端末部がデルタ結線により結線されている。この結線構造について、以下に詳述する。
【0027】
図3は、電機子コイル18の結線構造の一例を示す結線図である。
同図に示すように、例えば、U相の電機子コイル18の巻き始め端18uaと、V相の電機子コイル18の巻き終わり端vbとが接続されて接続部21aを形成する。また、U相の電機子コイル18の巻き終わり端18ubと、W相の電機子コイル18の巻き始め端18waとが接続されて接続部21bを形成する。さらに、V相の電機子コイル18の巻き始め端vaと、W相の電機子コイル18の巻き終わり端wbとが接続されて接続部21cを形成する。
【0028】
図1、
図3に示すように、デルタ結線により結線された各相の電機子コイル18の3つの接続部21a,21b,21cは、ハーネス26を介して整流器22に接続され、さらに、整流器22が抵抗25a,25bを介してバッテリ23に接続されている。
ハーネス26は、3本のリード線26a,26b,26cにより構成されており、これらリード線26a,26b,26cが、各接続部21a,21b,21cと整流器22とを電気的に接続している。すなわち、例えば、リード線26aの端末部は、接続部21aと整流器22とに接続されている。また、リード線26bの端末部は、接続部21bと整流器22とに接続されている。さらに、リード線26cの端末部は、接続部21cと整流器22とに接続されている。
【0029】
(インシュレータ)
ステータコア17に装着されるインシュレータ24は、樹脂により形成されたものであって、軸方向一端側(
図1における紙面手前側)からステータ4に装着された第1インシュレータ31と、軸方向他端側(
図2における紙面手前側)からステータ4に装着された第2インシュレータ41とにより、軸方向において2分割に構成されている。つまり、インシュレータ24は、軸方向に分割された形の第1インシュレータ31、及び第2インシュレータ41によって、ステータ4を軸方向両側から挟持するように装着してなる。
【0030】
(第1インシュレータ)
図4は、第1インシュレータ31の斜視図である。
図1、
図4に示すように、第1インシュレータ31は、ステータコア17の外形状に対応するように略円環状に形成されたリング部32と、このリング部32の外周面から放射状に径方向外側に向かって延出する複数のティース被覆部33とが一体成形されたものである。
【0031】
リング部32は、中央に開口部を有する環状の部材であって、ステータコア17の外周面を覆う複数の下段リング部32aと、下段リング部32aの端縁から軸方向に立設し、各下段リング部32aを連結する上段リング部32bとが一体成形されている。
【0032】
上段リング部32bは、ステータコア17に形成されている各ボルト孔20を径方向外側から取り囲むように形成されてものであって、ステータ4の径方向外側(ティース16側)と径方向内側(ステータコア17側)との間を仕切っている。上段リング部32bによって、ティース16に巻回された電機子コイル18や各ティース16間に引き回される電機子コイル18がステータコア17上(上段リング部32bより径方向内側)に配索されることを防止できる。
【0033】
また、上段リング部32bには、内周面側に一対の台座部34a,34bが一体成形されている。台座部34a,34bは、上段リング部32bの形状に対応するように、円弧状に形成され、且つ上段リング部32bから径方向内側に突出するように形成されている。そして、リング部32の中心軸C1を通る任意の直線L1を中心にして線対称に配置されている。
台座部34a,34bは、ハーネス26を構成する3本のリード線26a,26b,26cうちの1本、例えばリード線26bと、電機子コイル18の接続部21bとを接続するためのものである。
【0034】
ここで、リード線26bと電機子コイル18の接続部21bとを接続するにあたって、一対の台座部34a,34bが設けられているのは、磁石発電機1の仕様に応じて電機子コイル18の端末部の引き出し方向が変わるからである。より具体的には、例えば、磁石発電機1の仕様に応じて一対の台座部34a,34bの何れか一方に、U相の電機子コイル18の巻き終わり端18ub、及びW相の電機子コイル18の巻き始め端18waを引き出すことができるようになっている。そして、引き出された位置の近傍に存在する台座部34a,34bを使用することにより、電機子コイル18やリード線26bの配線長さを短くすることができる。
【0035】
また、一対の台座部34a,34bには、円筒部36が磁石発電機1の軸方向他端側(
図3における下側)に向かって突出するように一体成形されている。円筒部36は、ハーネス26を構成する3本のリード線26a,26b,26cうちの2本、例えばリード線26a,26cを第2インシュレータ41側に向かって配索するためのものである。円筒部36の直径は、2本のリード線26a,26cを挿通可能な大きさに設定されている。ここで、ステータコア17には、円筒部36に対応する位置に、この円筒部36を挿通可能な挿通孔17aが軸方向に貫通するように形成されている。
【0036】
また、一対の台座部34a,34bには、円筒部36を避けた位置に、例えば、リード線26bと電機子コイル18の接続部21bとを接続するため第1端子35が埋設されている。さらに、1対の台座部34a,34bには、台座部34a,34bの円筒部36に対応する一辺を除いた外周縁に壁部37が、磁石発電機1の軸方向一端側(
図3における上側)に向かって立ち上がるように一体成形されている。壁部37は、第1端子35の周囲を、外部と隔てるための隔壁として機能している。
【0037】
図5は、第1端子35の斜視図である。
同図に示すように、第1端子35は断面略コの字状に形成されており、電機子コイル18が接続されるコイル接続部35aと、ハーネス26を構成する3本のリード線26a,26b,26cのうちの1本が接続されるリード線接続部35bと、これらコイル接続部35aとリード線接続部35bとを連結する連結部35cとにより構成されている。
【0038】
コイル接続部35aの先端部は、例えば、U相の電機子コイル18の巻き終わり端18ub、及びW相の電機子コイル18の巻き始め端18waの2本を挟持可能なように、三つ又状に形成されている。一方、リード線接続部35bは、例えば、3本のリード線26a,26b,26cのうちのリード線26bが挟持可能なように、二又状に形成されている。
このように構成された第1端子35は、連結部35cが台座部34a,34bに埋設される一方、コイル接続部35aの先端、及びリード線接続部35bの先端が磁石発電機1の軸方向一端側(
図3における上側)に向かって突出するように設けられている。
【0039】
図4に戻り、下段リング部32aには、その端縁から軸方向に沿って切り欠かれた複数(例えば、18箇所)の切欠き部38が周方向に沿って等間隔に形成されている。そして、この切欠き部38の周縁を囲むようにティース被覆部33が形成されている。
ティース被覆部33は、ティース16と電機子コイル18とを絶縁するためのものであって、下段リング部32aの外周面、つまり切欠き部38の周縁から径方向外側に向かって延出する巻胴部61と、巻胴部61の先端から巻胴部61の延出方向に交差する方向に延出する周壁部62とを備えた平面視T字形状のものである。
【0040】
ティース被覆部33は、リング部32の周方向に沿って等間隔に18個形成されている。つまり、各ティース被覆部33は、上述したティース16と平面視で略同形状、且つ同数形成されており、各ティース16の軸方向一端側を被覆するものである。すなわち、ティース被覆部33の巻胴部61は、ティース16の軸方向一端側(
図1における紙面手前側)からティース16の側面にかけて覆うように形成されており、表面61aと側面61bとを有している。
一方、周壁部62は、巻胴部61の先端から周方向及び径方向に延出しており、ティース16の先端側を覆うように形成されている。なお、周壁部62の先端側は径方向外側に向けて開放されている。
【0041】
(第2インシュレータ)
図6は、第2インシュレータ41の斜視図である。
図2、
図6に示すように、第2インシュレータ41は、ステータコア17の外形状に対応するように略円環状に形成されたリング部42と、このリング部42の外周面から放射状に径方向外側に向かって延出する複数のティース被覆部33とが一体成形されたものである。
【0042】
ここで、リング部42は、中央に開口部を有する環状の部材であって、ステータコア17の外周面を覆う複数の下段リング部42aと、下段リング部42aの端縁から軸方向に立設し、各下段リング部42aを連結する上段リング部42bとが一体成形されている点は、前述の第1インシュレータ31と同様である。
尚、ティース被覆部33、及び下段リング部42aは、前述の第1インシュレータ31のティース被覆部33、及び下段リング部32aと同一形状であるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
上段リング部42bは、ステータコア17に形成されている各ボルト孔20を径方向外側から取り囲むように形成されており、内周面側に3つの台座部44a,44b,44cが一体成形されている。3つの台座部44a,44b,44cは、ハーネス26を構成する3本のリード線26a,26b,26cうちの2本、例えばリード線26a,26cと、電機子コイル18の接続部21a,21cとをそれぞれ接続するためのものであって、1つの大台座部44aと2つの小台座部44b,44cとにより構成されている。
【0044】
大台座部44aは、上段リング部42bの形状に対応するように、円弧状に形成され、且つ上段リング部42bから径方向内側に突出するように形成されている。また、大台座部44aには、長手方向略中央に円筒部46が磁石発電機1の軸方向一端側(
図6における下側)に向かって突出するように一体成形されている。
【0045】
円筒部46は、ハーネス26を構成する3本のリード線26a,26b,26cのうちの2本、例えばリード線26a,26cを第1インシュレータ31側から引き込むためのものである。円筒部46の軸方向の長さは、第1インシュレータ31の円筒部36の軸方向の長さとほぼ同一長さに設定されている。また、円筒部46の直径は、第1インシュレータ31の円筒部36の直径とほぼ同一径に設定されている。
そして、ステータコア17に第1インシュレータ31、及び第2インシュレータ41をそれぞれ所定の向きで装着した状態にあっては、第1インシュレータ31の円筒部36と、第2インシュレータ41の円筒部46とが軸方向で重なり合うようになっている。
【0046】
さらに、大台座部44aの長手方向両側には、それぞれ例えば、リード線26aと電機子コイル18の接続部21aとを接続すると共に、リード線26cと電機子コイル18の接続部21cとを接続するための2つの第2端子51の各々一部が突出されている。これら2つの第2端子51についての詳細は後述する。
【0047】
大台座部44aの外周縁には、壁部47が円筒部46に対応する位置を避けるように、且つ2つの第2端子51の突出した部位を取り囲むように一体成形されている。また、壁部47は、磁石発電機1の軸方向他端側(
図6における上側)に向かって立ち上がるように一体成形されている。壁部47は、2つの第2端子51の突出した部位の周囲を、外部と隔てるための隔壁として機能している。
【0048】
一方、2つの小台座部44b,44cは、それぞれ大台座部44aから周方向に所定間隔をあけて、且つリング部42の中心軸C2を通る任意の直線L2を中心にして線対称に配置されている。各小台座部44b,44cは、上段リング部42bから径方向内側に突出するように形成されており、その周方向の長さは、大台座部44aの周方向の長さよりも短く設定されている。
【0049】
各小台座部44b,44cにも、それぞれ第2端子51の一部が突出されている。また、各小台座部44b,44cの外周縁には、第2端子51の突出した部位の周囲を取り囲むように、壁部48が磁石発電機1の軸方向他端側(
図6における上側)に向かって立ち上がるように一体成形されている。壁部48も、第2端子51の突出した部位の周囲を、外部と隔てるための隔壁として機能している。
【0050】
図7は、第2端子51の斜視図である。
同図に示すように、第2端子51は、大台座部44a、及び小台座部44bから突出する一対の接続部51a,51aと、これら一対の接続部51a,51aを連結する帯状の連結部51bとにより構成されている。
接続部51aの先端部は、電機子コイル18の端末やハーネス26を構成するリード線26a,26b,26cを挟持可能なように、三つ又状に形成されている。そして、各接続部51aは、磁石発電機1の軸方向他端側(
図6における上側)に向かって突出するように設けられている。
【0051】
一方、連結部51bは、上段リング部42bの形状に対応するように湾曲形成されており、上段リング部42bに埋設されている。すなわち、
図6において、第2インシュレータ41の中心から左側に露出している2つの接続部51a,51aが、それぞれ連結部51bにより連結され、一体化されている。一方、第2インシュレータ41の中心から右側に露出している2つの接続部51a,51aが、それぞれ連結部51bにより連結され、一体化されている。
【0052】
ここで、大台座部44aから突出している2つの接続部51aのうち、一方には3本のリード線26a,26b,26cのうちのリード線26aが接続されており、他方にはリード線26cが接続されている。
そして、リード線26aが接続されている側の小台座部44bから突出している接続部51aには、例えば、U相の電機子コイル18の巻き始め端18ua、及びV相の電機子コイル18の巻き終わり端18vbが接続されている。
【0053】
一方、リード線26cが接続されている側の小台座部44cから突出している接続部51aには、例えば、V相の電機子コイル18の巻き始め端18va、及びW相の電機子コイル18の巻き終わり端18wbが接続されている。
これにより、各相の電機子コイル18、及び3本のリード線26a,26b,26cは、
図3に示すような結線構造になる。
【0054】
(インシュレータの装着作業と電機子コイル、及びハーネスの結線作業)
次に、インシュレータ24(31,41)のステータ4への装着作業と、各相の電機子コイル18の結線作業について説明する。
まず、ステータ4の両端側から、それぞれこのステータ4を挟持するように第1インシュレータ31、及び第2インシュレータ41を装着する。このとき、第1インシュレータ31は、U相の電機子コイル18の巻き終わり端18ub、又はW相の電機子コイル18の巻き始め端18waの引き出し位置の近傍に、一対の台座部34a,34bの何れか一方が位置するように装着される。
【0055】
ここで、ステータ4の各ティース16は、周方向で隣り合うティース16の形状が異なり、且つ周方向で60度間隔に配置されているティース16同士の形状が同一形状になっている、所謂異形コアである。第1インシュレータ31、及び第2インシュレータ41のティース被覆部33も、ステータ4のティース16に対応するように形成されているので、各インシュレータ31,41は、周方向に60度ずつずらしながら装着することが可能である。
すなわち、周方向に60度間隔で、U相の電機子コイル18の巻き終わり端18ub、又はW相の電機子コイル18の巻き始め端18waの引き出し位置が最も近くなる位置に、一対の台座部34a,34bの何れか一方が位置するように第1インシュレータ31を装着する。
【0056】
一方、第2インシュレータ41は、この第2インシュレータ41の円筒部46と、第1インシュレータ31の一対の台座部34a,34bのうち、使用される台座部34a,34bの円筒部36とが軸方向で重なるようにステータ4に装着される。
ここで、各ティース16は、それぞれU相、V相、W相が周方向にこの順で割り当てられているので、U相の電機子コイル18の巻き終わり端18ub、又はW相の電機子コイル18の巻き始め端18waの引き出し位置が決定することにより、その他の巻き始め端18ua,18va、及び巻き終わり端18vb,18wbの位置も決定される。このようなことを考慮し、第2インシュレータ41における大台座部44aと小台座部44bとの周方向の間隔が設定される。
【0057】
第1インシュレータ31、及び第2インシュレータ41の装着が完了した後、これらのティース被覆部33の上から、それぞれ電機子コイル18を巻回する。そして、U相の電機子コイル18の巻き終わり端18ub、及びW相の電機子コイル18の巻き始め端18waを第1インシュレータ31側に引き出す。一方、その他の巻き始め端18ua,18va、及び巻き終わり端18vb,18wbを、第1インシュレータ31とは反対側の第2インシュレータ41側に引き出す。
【0058】
続いて、引き出されたU相の電機子コイル18の巻き終わり端18ub、及びW相の電機子コイル18の巻き始め端18waを、それぞれ第1端子35のコイル接続部35aの先端部に挟み込む。そして、コイル接続部35aの先端部をカシメて仮固定した後、コイル接続部35aと、巻き終わり端18ub、及び巻き始め端18waとをハンダにより接続する。これにより、コイル接続部35aと、巻き終わり端18ub、及び巻き始め端18waとの接続が完了する。
【0059】
続いて、U相の電機子コイル18の巻き始め端18ua、及びV相の電機子コイル18の巻き終わり端18vbを、これらの引き出し位置近傍に存在する第2端子における接続部51aの先端部に挟み込む。そして、接続部51aの先端部をカシメて仮固定した後、接続部51aと、巻き始め端18ua、及び巻き終わり端18vbとをハンダにより接続する。
【0060】
同様に、V相の電機子コイル18の巻き始め端18va、及びW相の電機子コイル18の巻き終わり端18wbの巻き終わり端を、これらの引き出し位置近傍に存在する第2端子における接続部51aの先端部に挟み込む。そして、接続部51aの先端部をカシメて仮固定した後、接続部51aと、巻き始め端18va、及び巻き終わり端18wbとをハンダにより接続する。これにより、電機子コイル18の結線作業が完了する。
【0061】
続いて、電機子コイル18の結線作業が完了した磁石発電機1を不図示のエンジンのケースに締結固定する。そして、ハーネス26を磁石発電機1に対応する位置まで引き込み、3本のリード線26a,26b,26cを所定の位置に配索する。
すなわち、リード線26bを第1インシュレータ31における第1端子35のリード線接続部35bの先端部に挟み込む。そして、リード線接続部35bの先端部をカシメて仮固定した後、リード線接続部35bと、リード線26bとをハンダにより接続する。
【0062】
一方、リード線26a,26cを第1インシュレータ31側から、この第1インシュレータ31の円筒部36に挿入し、第2インシュレータ41の円筒部46から引き出す。そして、それぞれリード線26a,26cを、第2インシュレータ41の大台座部44aに突出している第2端子51の接続部51aの先端部に挟み込む。そして、各接続部51aの先端部をカシメて仮固定した後、各接続部51aと、リード線26a,26cとをハンダにより接続する。これにより、磁石発電機1へのハーネス26の結線作業が完了する。
【0063】
このような構成のもと、エンジンが始動すると、クランクシャフト2の先端に固定されたロータ3が回転し、これにより生じる磁束の変化によって各相の電機子コイル18に誘導起電力が生じる。そして、各相の電機子コイル18に発生する電流が整流器22を介してバッテリ23に蓄電される。
【0064】
尚、磁石発電機1をエンジンスタータ用として用いることも可能である。このように用いる場合、バッテリ23の電力を整流器22を介してか駆動の電機子コイル18に供給する。すると、各ティース16に磁界が発生し、この磁界とロータ3に設けられている永久磁石8との間に磁気的な吸引力や反発力が生じる。これにより、ロータ3が回転し、クランクシャフト2が駆動することによってエンジンが始動する。
【0065】
(効果)
したがって、上述の実施形態によれば、第1インシュレータ31に第1端子35が設けられ、第2インシュレータ41に第2端子51が設けられているので、各端子35,51に所定の相の電機子コイル18を接続するだけで、電機子コイル18の結線作業が完了する。このため、電機子コイル18の結線精度を安定させることができると共に、生産性を向上させることができる。
【0066】
また、第1インシュレータ31と第2インシュレータとのそれぞれ別々に第1端子35と第2端子51を設けることにより、ステータ4の同一端面上に3相の電機子コイル18の全てが配索されないようになっている。つまり、例えば、U相の電機子コイル18の巻き終わり端18ub、及びW相の電機子コイル18の巻き始め端18waと、その他の巻き始め端18ua,18va、及び巻き終わり端18vb,18wbとの引き出し方向がステータ4の軸方向で互いに反対になっている。このため、第1インシュレータ31、及び第2インシュレータ41上で電機子コイル18が嵩張ることがなく、磁石発電機1の大型化を抑制してレイアウト性を高めることができる。
【0067】
さらに、第1インシュレータ31の上段リング部42bに沿って一体成形されている台座部34a,34bに第1端子35が配置されていると共に、第2インシュレータ41の上段リング部42bに沿って一体成形されている台座部44、つまり、大台座部44a、及び小台座部44bに第2端子51が配置されている。このため、各相の電機子コイル18の巻き始め端18ua,18va,18wa、及び巻き終わり端18ub,vb,wbの引き出し位置の近傍に、それぞれ対応する端子35,51を位置させることができ、各相の電機子コイル18のステータ4上での嵩張りを確実に低減できる。よって、磁石発電機1のレイアウト性をさらに高めることができる。
【0068】
そして、第1インシュレータ31に第1端子35が埋設されていると共に、第2インシュレータ41に第2端子51が埋設されているので、ステータコア17上に不図示のエンジンのケースとの接触面積を十分確保することができ、磁石発電機1の取り付け安定性を向上できると共に、ステータ4の放熱性を高めることができる。
さらに、第1インシュレータ31の上段リング部32bに第1端子35を配置すると共に、第2インシュレータ41の上段リング部42bに第2端子51を配置しても、ステータコア17上に配索されるコイルが嵩張らないので、磁石発電機1をエンジンのケースに締結固定するためのボルト孔20をステータコア17上に形成することが容易になる。このため、磁石発電機1の設置スペースの省スペース化を図ることが可能になる。
【0069】
また、第1インシュレータ31の上段リング部32bには、一対の台座部34a,34bがリング部32の中心軸C1を通る任意の直線L1を中心にして線対称に配置されている。このため、3相の電機子コイル18のうち、2相の電機子コイル18の端末部、例えば、U相の電機子コイル18の巻き終わり端18ub、又はW相の電機子コイル18の巻き始め端18waの引き出し位置の近傍に、一対の台座部34a,34bの何れか一方を配置すればよい。換言すれば、一対の台座部34a,34bの何れか一方に向かって2相の電機子コイル18の端末部を引き出せばよい。
したがって、インシュレータ24の配置自由度が高まり、インシュレータ24の汎用性を高めることができる。また、電機子コイル18の端末部を無駄に引き回す必要がなくなり、電機子コイル18のステータ4上での嵩張りを低減することができると共に、電機子コイル18の線材コストを低減することができる。
【0070】
さらに、第2インシュレータの上段リング部42bには、2つの小台座部44b,44cがリング部42の中心軸C2を通る任意の直線L2を中心にして線対称に配置されている。このため、3相の電機子コイル18のうち、2相の電機子コイル18の端末部を2つの小台座部44b,44cの何れにも配索させることができる。すなわち、各相のティース16に設定されているU相、V相、W相の順番に関わらず、それぞれ2つの小台座部44b,44cに近い箇所から引き出された電機子コイル18の端末部を、そのまま近くの小台座部44b,44cの接続部51aに接続させることができる。
【0071】
より具体的には、上述の実施形態では、小台座部44bから突出している接続部51aに、例えば、U相の電機子コイル18の巻き始め端18ua、及びV相の電機子コイル18の巻き終わり端18vbを接続した場合について説明したが、小台座部44cから突出している接続部51aに、U相の電機子コイル18の巻き始め端18ua、及びV相の電機子コイル18の巻き終わり端18vbを接続することも可能である。このように、電機子コイル18の引き出し位置を選択することが可能になるので、インシュレータ24の汎用性を高めることができる。
【0072】
尚、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、回転電機の一例としてアウターロータ型の磁石発電機1について説明したが、これに限られるものではなく、例えばインナーロータ型の磁石発電機や、3相のスタータジェネレータ等に本発明のインシュレータ24を適用することも可能である。
【0073】
また、上述の実施形態では、第1インシュレータ31の一対の台座部34a,34bの何れか一方の第1端子35に電機子コイル18の巻き始め端18wa、及び巻き終わり端18ubと、リード線26bとを接続し、第2インシュレータ41の2つの接続部51aのうちの一方に、電機子コイル18の巻き始め端18ua、及び巻き終わり端18vbと、リード線26aとを接続し、他方に、電機子コイル18の巻き始め端18va、及び巻き終わり端18wbと、リード線26cとを接続した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、各相の電機子コイル18がデルタ結線されていればよく、また、各リード線26a,26b,26cは、それぞれ任意の接続部21a,21b,21cと整流器22との間に接続されていればよい。
【0074】
さらに、上述の実施形態では、第1インシュレータ31のリング部32、及び第2インシュレータ41のリング部42がそれぞれステータコア17の外形状に対応するように、略円環状に形成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ステータコア17の外形状に対応するように形成されていればよい。より具体的には、リング部32,42は環状に形成されていればよく、例えば、多角形状であってもよい。
【0075】
そして、上述の実施形態では、
図3に示すように、3相の電機子コイル18により、1つのデルタ結線構造を形成している場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、3相の電機子コイル18により、複数のデルタ結線構造を形成してもよい。この場合、各インシュレータ31,41に設けられる端子35,51の個数もデルタ結線構造の個数に応じて増加させてよい。
例えば、3相の電機子コイル18により、2つのデルタ結線構造を形成する場合、第2インシュレータ41に4つの第2端子51を設ける。さらに、第1インシュレータ31に設けられている2つの第1端子35,35を両方使用する。
【0076】
また、上述の実施形態では、第2インシュレータ41に同一形状の2つの第2端子51を設けた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、電機子コイル18の3つの接続部21a,21b,21cのうち、2つの接続部が形成可能で、且つこれら接続部が所定のリード線26a,26b,26cに接続可能であればよい。このため、第2インシュレータ41に形状の異なる2つの端子を設けてもよい。
さらに、第1インシュレータ31に設けられている第1端子35も
図5に示す形状に限られるものではなく、3つの接続部21a,21b,21cのうち、1つの接続部が形成可能で、且つ所定のリード線26a,26b,26cが接続可能な形状であればよい。