【実施例1】
【0017】
図1乃至
図11は本発明の接続構造の一実施例を示す。
【0018】
本実施例の接続構造Mは、
図1、
図2に示すように、鋼管杭20(杭本体21)の上端部にある円筒状の杭頭21a内に予め溶接など
で固定したトルク伝達金具24を利用する。このトルク伝達金具24の上面中央部には、
図7(a)に示すように六角ナット25が固定される。なお、この六角ナット25の代わりに
図7(b)に示すようにネジ穴25aを設けたトルク伝達金具24aを利用するようにしてもよい。
【0019】
接続構造Mは、下端部分を六角ナット25に螺合することにより鋼管杭20(杭本体21)の中心軸に沿って延びて、上端部分(頭部30a)が杭頭21aから突出する、六角ボルトからなる接続軸30と、この接続軸30が挿入される芯ずれ調整用ルーズ穴31を設けた水平片部32と架台10の脚部11に取り付けられる垂直片部34とを有する、断面がL字状の調整金具(以下L字状調整金具と記す)35と、杭頭21aと水平片部32との間に配置され、中央部に接続軸30が貫通する貫通穴36を設けた中間金具37と、芯ずれ調整用ルーズ穴31を覆うようにしてL字状調整金具35上に配置され、接続軸30が挿入される芯ずれ調整用長穴
41を設けた押さえ部材
40と、を備えて構成される。L字状調整金具35の、架台10の脚部11に取り付けられる、垂直片部34には、脚部11の取り付け位置の調整が行える取り付け調整長穴33(
図3参照)が設けられる。
【0020】
接続軸30は、埋設された鋼管杭20の杭頭21a上に中間金具37を載せ、この中間金具37上にL字状調整金具35を重ね、さらにL字状調整金具35上に押さえ部材40を重ねてから、その下端部分をワッシャ38、芯ずれ調整用長穴41、芯ずれ調整用ルーズ孔31、貫通穴36を介して杭頭21a内部に挿入し、六角ナット25に螺合して仮締めされる。押さえ部材40を載せた状態でL字状調整金具35を鋼管杭20の芯ずれに合わせて中間金具37上で回転やスライドをして移動調整をした後に、接続軸30を、六角ナット25に締め付けることにより、接続軸30の上端部分である頭部30aがワッシャ38及び押さえ部材40を介してL字状調整金具35と中間金具37を鋼管杭20の杭頭21aに固定する。
【0021】
前記L字状調整金具35の水平片部
32に設けた芯ずれ調整用ルーズ孔31は、
図3及び
図4(a)に示すように、杭頭21aの内径よりも若干小さい内径を有する円形穴である。なお、
図4(b)に示すように一辺
の長さが杭頭21aの内径よりも若干短い正方形状の方形穴31aであってもよい。前記L字状調整金具35の垂直片部34に設けた取り付け調整長穴33は、
図3に示すように、垂直片部34の短辺方向に沿って設けられたものと、垂直片部34の長辺方向に沿って設けられたものとがある。芯ずれ調整用ルーズ孔31と取り付け調整長穴33は、鋼管杭20がその埋設予定位置から前後左右方向あるいは上下方向に芯ずれを起こして埋設されても、それに対処できるように設定されたものである。
【0022】
前記水平片部32と垂直片部34の間には、
図3に示すように、それらの長辺方向両端において略三角形状の支板39がそれぞれ設けられている。垂直片部34にはソーラーパネルSや架台10(
図15参照)の荷重の外にソーラーパネルSや架台10が受けた風圧などが作用することから、垂直片部34が水平片部32に対してぐらつかないように前記L字状調整金具35を補強している。
【0023】
前記中間金具37は、
図5(a)に示すように円盤状に形成され、鋼管杭20の外径よりも大きく且つ前記水平片部32の短辺方向の寸法よりも若干小さい直径を有し(
図1、
図2参照)、前記L字状調整金具35(前記水平片部32)を補強するものである。
【0024】
前記押さえ部材40は、前記芯ずれ調整用ルーズ穴31を覆い、前記接続軸30の頭部30aにより前記L字状調整金具35(前記水平片部32)を杭頭21a側に押さえて固定するもので、
図6(a)に示すように、杭頭21aの直径とほぼ等しい長さの短辺とそれより長い長辺とを有する方形板状である。前記芯ずれ調整用長穴41は前記押さえ部材40の中央部でその短辺方向に延びるように設けられる。前記芯ずれ調整用長穴41の幅は前記接続軸30の直径よりも若干大きい寸法に設定され、また長さは前記芯ずれ調整用ルーズ穴31の直径又は一辺の長さと同じ寸法に設定される。すなわち、前記芯ずれ調整用長穴41の幅と長さは、芯ずれを調整する際、接続軸30に対して前記押さえ部材40が前記L字状調整金具35(前記水平片部32)と共に前記中間金具37上でスムーズに回転やスライドが出来るように設定されている。
【0025】
図8は本実施例の接続構造Mの変形例を示している。
図8中、
図1、
図2に示す部分と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0026】
本変形例では、鋼管杭20の杭頭21a内部に
図7(b)に示すトルク伝達金具24aを固定し、このトルク伝達金具24aの上面中央部に設けたネジ穴25aに接続軸30の下端部分を螺合することにより、接続軸30を鋼管杭20(杭本体21)の中心軸に沿って起立させて、上端部分(頭部)を杭頭21aから突出させている。それ以外は、
図1、
図2に示す接続構造と同じである。
【0027】
次に上述した本実施例の接続構造Mの施工手順について説明する。
【0028】
鋼管杭20を埋設予定位置に埋設した後、杭頭21a上に鋼管杭20の中心軸位置に貫通穴36が位置するようにして中間金具37を載せる。次いで、この中間金具37上にL字状調整金具35の水平片部32を載せて貫通穴36上に芯ずれ調整用ルーズ孔31を位置させ、さらに芯ずれ調整用ルーズ孔31を覆うようにして水平片部32上に押さえ部材40を載せて貫通穴36及び芯ずれ調整用ルーズ孔31上に芯ずれ調整用長穴41を位置させる。
【0029】
次いで、接続軸30を、押さえ部材40上からワッシャ38、芯ずれ調整用長穴41、芯ずれ調整用ルーズ孔31及び貫通穴36に通して鋼管杭20の杭頭21a内部に差し込み、接続軸30の下端部分をトルク伝達金具24に設けた六角ナット25に螺合して仮締めし、接続軸30を鋼管杭20の中心軸に沿って起立させて接続軸30の頭部30aを杭頭21aから突出させる。
【0030】
この後、接続軸30を締め付けるが、鋼管杭20が芯ずれを起こして埋設された場合には、接続軸30を締め付ける前に、接続軸30を芯ずれ調整用長穴41、芯ずれ調整用ルーズ孔31、貫通穴36に挿入した状態で、芯ずれ量、芯ずれ方向に合わせて押さえ部材40を載せた状態でL字状調整金具35の水平片部32を中間金具37上で回転させ、移動(スライド)させて、L字状調整金具35の垂直片部34を架台10の脚部11に押し当てる。
【0031】
例えば、
図12(a)に示すように、鋼管杭20が一方向(図面の右方向)に芯ずれを起こして埋設された場合、押さえ部材40を載せた状態でL字状調整金具35の水平片部32を中間金具37上で他方向(図面の左方向)に芯ずれ量に相当する距離、移動調整してL字状調整金具35の垂直片部34を架台10の脚部11に押し当てる。
【0032】
また、
図12(b)に示すように、鋼管杭20が他方向(図面の左方向)に芯ずれを起こして埋設された場合、押さえ部材40を載せた状態でL字状調整金具35の水平片部32を中間金具37上で一方向(図面の右方向)に芯ずれ量に相当する距離、移動調整してL字状調整金具35の垂直片部34を架台10の脚部11に押し当てる。
【0033】
また、
図13(a)に示すように、鋼管杭20が斜め方向に芯ずれを起こして埋設された場合、押さえ部材40を載せた状態でL字状調整金具35の水平片部32を中間金具37上で接続軸30を支点として矢印A方向に回転させ且つ矢印B方向に芯ずれ量に相当する距離、移動調整してL字状調整金具35の垂直片部34を架台10の脚部11に押し当てる。
【0034】
このようにして鋼管杭20の水平方向における芯ずれに合わせ、押さえ部材40を載せた状態でL字状調整金具35の水平片部32を中間金具37上で回転させ、移動(スライド)させてL字状調整金具35の垂直片部34を架台10の脚部11に押し当てた後に、接続軸30を締め付けると、接続軸30の頭部30aがワッシャ38及び押さえ部材40を介してL字状調整金具35と中間金具37を鋼管杭20の杭頭21aに固定する。
【0035】
しかる後、架台10の脚部11を、L字状調整金具35の垂直片部34に設けた取り付け調整長穴33の部分に、ボルト・ナットからなる締結部材50によって固定する。この際、
図13(b)に示すように、鋼管杭20の杭頭の高さ(地面からの高さ)が予め設定した高さからずれて埋設された場合でも締結部材50により脚部11を垂直片部34の取り付け調整長穴33の部分に固定することができる。
【0036】
これにより、鋼管杭20が芯ずれなどを起こして埋設された場合であっても架台10の脚部11を何ら支障なく鋼管杭20の杭頭21aに接続することが出来る。一旦地中に埋設された鋼管杭20は、螺旋翼22(
図9参照)などによって荷重や引き抜き力が作用しても地中に沈下し、地中から引き抜かれることはない。そのため、太陽電池モジュール又太陽電池アレイS(
図15参照)に風圧などが作用しても架台10(脚部11)が地面から浮き上がるおそれがなく、また太陽電池モジュール又太陽電池アレイSや架台10などの自重で脚
部11が地面に沈下するおそれがない。
【0037】
本実施例の接続構造Mによれば、埋設された鋼管杭20の芯ずれ量や芯ずれ方向に合わせて押さえ部材40を載せた状態でL字状調整金具35を中間金具37上で回転させ、スライドさせて移動調整するが、芯ずれ調整用ルーズ穴31は杭頭21aの内径よりも若干小さい内径を有し、芯ずれ調整用長穴41も杭頭21aの内径よりも若干短い長さを有しているので、様々な芯ずれ量や芯ずれ方向の芯ずれに対応することが可能である。また、この芯ずれ調整操作は、L字状調整金具35の水平片部32上に芯ずれ調整用ルーズ穴31を覆うように押さえ部材40を載せ、接続軸30を芯ずれ調整用長穴41、芯ずれ調整用ルーズ孔31、貫通穴36に挿入した状態、すなわち接続軸30で仮止めした状態で行うことから、押さえ部材40とL字状調整金具35が中間金具37上から外れるなどのおそれはなく、スムーズに行うことが出来る。また、鋼管杭20を埋設する際に使用するトルク伝達金具24、24aを利用して接続軸30を鋼管杭20に接続し、これにより接続軸30で押さえ部材40、L字状調整金具35、中間金具37を杭頭21aに固定するようにしてあるので、接続構造Mの簡略化を図ることが可能となる。
【0038】
また、本実施例の接続構造Mによれば、従来技術の如く、芯ずれを調整するために狭い杭頭空間内での部材の移動調整作業が不要であり、この結果、架台10と鋼管杭20の杭頭との接続作業(施工)時間の短縮を図り、施工コストを低減することが可能となる。特に、太陽電池モジュールを複数並列に接続した太陽電池アレイSの架台10の場合にあっては、風圧等に耐えられるように打ち込む鋼管杭20の本数が多く、鋼管杭20と架台10の脚部11との接続作業量は膨大で、施工時間が長時間化し、施工コストが高くなる問題が生じるが、これを解消することが可能となる。
【0039】
図14(a)、(b)は
図1に示す接続構造Mにおいて、鋼管杭20が経年変化などにより沈下した場合に対処するための実施例を示している。
図14(a)中、
図1、
図2に示す部分と同一構成部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0040】
本実施例では、L字状調整金具35と中間金具37との間に、鋼管杭20の沈下量に合わせて高さ調整部材としてのシム60を介在させるようにしている。なお、経年変化による鋼管杭20の沈下に限定されず、例えば鋼管杭20の埋設時、深く埋設し過ぎた場合にも、同様にL字状調整金具35と中間金具37との間にシム60を介在させて、予め設定した架台10の高さになるように高さ調整をする場合にも適用できることは勿論である。シム60を介在させる以外については
図1、
図2に示す接続構造と同じである。
【0041】
シム60は、例えば
図14(b)に示すように、ほぼ方形板状で、その一辺で開口するU字状の取り付け溝61を設ける。鋼管杭20の沈下量に合わせてシム60を介在させる場合には、接続軸30を緩めるかあるいは長いものに取り替え、架台10を若干浮き上がらせた状態を維持して、L字状調整金具35と中間金具37との間に、シム60をその一辺側から挿入して、取り付け溝61内に接続軸30を挿入させる。シム60の挿入が完了したら、架台10を降ろし、接続軸30を締め付ける。これにより架台10の高さを維持することが出来る。なお、シム60を薄板から構成し、シム60を複数枚重ねて架台10の高さを微調整するようにしてもよい。経年変化により鋼管杭20の沈下がさらに進行したときには、シム60を追加すればよい。
【0042】
なお、経年変化によって鋼管杭20が地盤中に沈下した場合など、例えば
図2に示すように一対の脚部11が逆ハの字状に構成されているときには、一対の脚部11を互いに接近するように回転調整(傾斜していた脚部11を起こすように回転調整)して対処することは可能である。しかし、このようにするには脚部11の防錆処理を定期的に行うか、あるいは錆びにくい材料から脚部11を構成する必要があり、コストが嵩むおそれがある。これに対し、
図14(a)、(b)に示す本実施例の接続構造Mでは、シム60をL字状調整金具35と中間金具37との間に介在させる極めて簡単な構成なので、コストが嵩むおそれはない。
【0043】
本発明の接続構造は、上記実施例で示した太陽電池モジュール又は太陽電池アレイの架台10と鋼管杭20との接続に限定されるものではなく、例えば風力発電装置や送電用鉄塔などの上部構造物と杭との接続などにも適用される。