特許第5952609号(P5952609)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952609
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】非接触型データ受送信体
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/02 20060101AFI20160630BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20160630BHJP
   H01Q 1/44 20060101ALI20160630BHJP
   H01Q 9/16 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
   G06K19/02 070
   G06K19/077 156
   G06K19/077 160
   G06K19/077 212
   G06K19/077 216
   G06K19/077 296
   H01Q1/44
   H01Q9/16
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-73713(P2012-73713)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-206080(P2013-206080A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】トッパン・フォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 仁
【審査官】 甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−309401(JP,A)
【文献】 特開2011−186842(JP,A)
【文献】 特開2003−030612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00−19/18
H01Q 1/44
H01Q 9/16
H04B 5/02
H04B 1/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、該基材の一方の面に設けられ、互いに電気的に接続されたICチップおよび第一アンテナを有するインレットと、前記第一アンテナに対して未接着状態で対向して配設されたブースター用の第二アンテナと、を備え、
前記第二アンテナは導電性繊維からなり、
前記第一アンテナと前記第二アンテナが未接着状態で対向して配置され、静電結合によって電気的な接続を保つことができる位置に設けられ、
前記第一アンテナを構成する2つの放射素子の間に、非導電性繊維から構成される織布または不織布からなる絶縁部が設けられ、
前記基材が、前記第二アンテナに縫い付けられていることを特徴とする非接触型データ受送信体。
【請求項2】
前記第二アンテナは袋状に形成された織布または不織布の内面の少なくとも一部を構成し、前記インレットは前記袋状の織布または不織布の内部に収容されたことを特徴とする請求項1に記載の非接触型データ受送信体。
【請求項3】
前記基材は、ポリエチレンテレフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、ナイロン6、ナイロン6,6、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレートおよびポリイミドからなる群から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1または2に記載の非接触型データ受送信体。
【請求項4】
前記ICチップと前記第一アンテナを被覆する保護層が設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の非接触型データ受送信体。
【請求項5】
前記第二アンテナを構成する導電性繊維は、樹脂に導電性カーボンまたは白色系金属酸化物を練り込んで複合紡糸した繊維、または、繊維に金属からなる薄膜をコーティングした繊維からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の非接触型データ受送信体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency IDentification)用途の情報記録メディアのように、電磁波または電波を媒体として外部から情報を受信し、また、外部に情報を送信できるようにした非接触型データ受送信体に関し、特に、高温・高圧の環境における耐久性に優れるとともに柔軟性にも優れる非接触型データ受送信体に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触型データ受送信体の一例であるICタグは、基材と、その一方の面に設けられ互いに接続されたアンテナおよびICチップとから構成されるインレットを備えている。このようなICタグは、情報書込/読出装置からの電磁波または電波を受信すると共振作用によりアンテナに起電力が発生し、この起電力によりICタグ内のICチップが起動し、このICチップ内の情報を信号化し、この信号がICタグのアンテナから発信される。
【0003】
このようなICタグの一例としては、衣類に取り付けることを目的とするリネンタグと呼ばれるものが知られている。リネンタグは、例えば、洗濯時やクリーニング時などにおいて、高温・高圧の環境に曝される。したがって、リネンタグは、このような環境にも耐え得る構造であることが求められている。
リネンタグとしては、無線通信用のICチップと、送受信アンテナとを備え、送受信アンテナの少なくとも一部が、金属線を用いて構成される織布、不織布または金網からなるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−309401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、引用文献1のリネンタグでは、ICチップがダイポールアンテナとなる2枚の金網に、異方性導電性接着剤、導電性接着剤、はんだなどを介して接続されているため、洗濯時やクリーニング時などにおいて、高温・高圧の環境に曝されたり、外力が加えられたりすると、ICチップと金網の接続部が切断され、これらの電気的な接続ができなくなるため、通信不能となるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高温・高圧の環境に曝されたり、外力が加えられたりしても、通信性能が劣化しない非接触型データ受送信体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の非接触型データ受送信体は、基材、該基材の一方の面に設けられ、互いに電気的に接続されたICチップおよび第一アンテナを有するインレットと、前記第一アンテナに対して未接着状態で対向して配設されたブースター用の第二アンテナと、を備え、前記第二アンテナは導電性繊維からなり、前記第一アンテナと前記第二アンテナが未接着状態で対向して配置され、静電結合によって電気的な接続を保つことができる位置に設けられ、前記第一アンテナを構成する2つの放射素子の間に、非導電性繊維から構成される織布または不織布からなる絶縁部が設けられ、前記基材が、前記第二アンテナに縫い付けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の非接触型データ受送信体において、前記第二アンテナは袋状に形成された織布または不織布の内面の少なくとも一部を構成し、前記インレットは前記袋状の織布または不織布の内部に収容されたことが好ましい。
本発明の非接触型データ受送信体において、前記基材は、ポリエチレンテレフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、ナイロン6、ナイロン6,6、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレートおよびポリイミドからなる群から選択される少なくとも1種からなることが好ましい。
本発明の非接触型データ受送信体において、前記ICチップと前記第一アンテナを被覆する保護層が設けられたことが好ましい。
本発明の非接触型データ受送信体において、前記第二アンテナを構成する導電性繊維は、樹脂に導電性カーボンまたは白色系金属酸化物を練り込んで複合紡糸した繊維、または、繊維に金属からなる薄膜をコーティングした繊維からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第二アンテナが導電性繊維からなり、第一アンテナと第二アンテナが未接着状態で対向して配設されているので、洗濯時やクリーニング時などにおいて、非接触型データ受送信体が設けられた衣類などが、高温・高圧の環境に曝されたり、外力が加えられたりしても、第一アンテナと第二アンテナの接続部が切断されることにより、これらの電気的な接続ができなくなるという不具合が生じることがなく、第一アンテナと第二アンテナの電気的な接続を安定に保つことができる。したがって、非接触型データ受送信体の通信性能が劣化することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の非接触型データ受送信体の第一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
図2】本発明の非接触型データ受送信体の第二実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
図3】本発明の非接触型データ受送信体の第三実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C線に沿う断面図である。
図4】本発明の非接触型データ受送信体の第四実施形態を示す概略平面図であり、第二アンテナを示す概略図である。
図5】本発明の非接触型データ受送信体の第五実施形態を示す概略平面図であり、第二アンテナを示す概略図である。
図6】本発明の非接触型データ受送信体の第六実施形態を示す概略平面図であり、第二アンテナを示す概略図である。
図7】本発明の非接触型データ受送信体の第七実施形態を示す概略平面図であり、第二アンテナを示す概略図である。
図8】本発明の非接触型データ受送信体の第八実施形態を示す概略平面図であり、第二アンテナを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の非接触型データ受送信体の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0012】
(1)第一実施形態
図1は、本発明の非接触型データ受送信体の第一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
本実施形態の非接触型データ受送信体10は、基材11、基材11の一方の面11aに設けられ、互いに電気的に接続されたICチップ12および第一アンテナ13を有するインレット20と、第一アンテナ13に対して未接着状態で対向して配設されたブースター用の第二アンテナ30とから概略構成されている。
また、第二アンテナ30は、インレット20を構成する基材11の一方の面11a側に設けられている。
【0013】
第一アンテナ13は、各種導電体からなり、互いに対向し、間隔を隔てて配置され、その対向する側にそれぞれ給電点(ICチップ12と接続する部分)を有する一対の放射素子14,15からなるダイポールアンテナである。なお、放射素子14,15は、その外形を形成する線状の導電体からなり、内側の領域が中抜きされたループ状のアンテナである。
【0014】
第二アンテナ30は、導電性繊維から構成される織布または不織布からなり、互いに対向し、間隔を隔てて配置され、その対向する側において、第一アンテナ13(放射素子14,15)と対向する一対の面状の放射素子31,32からなるダイポールアンテナである。
第二アンテナ30は、非接触ICカードなどの非接触ICモジュールに利用できる極超短波帯〈UHF〉やマイクロ波帯の電波帯の周波数(300MHz〜30GHz)の1/2波長に相当する長さとなっている。すなわち、放射素子31,32の長手方向における長さは、1/4波長に相当する長さとなっている。
【0015】
第一アンテナ13と第二アンテナ30が、未接着状態で対向して配設されているとは、第一アンテナ13と第二アンテナ30が直接、接着(固着)されることなく、これら2つのアンテナが、静電結合によって電気的な接続を保つことができる位置に設けられている状態を言う。
【0016】
また、インレット20の第一アンテナ13は、情報書込/読出装置との通信を直接行うためのものではなく、静電結合による、第二アンテナ30との電気的な接続を行うためのものである。すなわち、情報書込/読出装置との通信を直接行うのは、第二アンテナ30である。
【0017】
また、第一アンテナ13の放射素子14と第二アンテナ30の放射素子31が対向し、かつ、第一アンテナ13の放射素子15と第二アンテナ30の放射素子32が対向するように配置されているが、第二アンテナ30(放射素子31,32)は、ICチップ12と接触しないように配設されている。
なお、このように、第二アンテナ30とICチップ12が接触しないようにするために、放射素子31と放射素子32の間には、非導電性繊維から構成される織布または不織布からなる絶縁部40が設けられていてもよい。
【0018】
このような第一アンテナ13と第二アンテナ30の位置関係を保つためには、インレット20を構成する基材11が、接着剤により、織布または不織布からなる第二アンテナ30に接着されていてもよく、あるいは、インレット20を構成する基材11が、第二アンテナ30に縫い付けられていてもよい。
【0019】
また、インレット20に耐熱性や耐水性を付与するために、少なくともインレット20を構成するICチップ12と第一アンテナ13を被覆する保護層(図示略)が設けられていてもよい。このような保護層を構成する材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリル系反応樹脂などが挙げられる。
【0020】
基材11としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂からなる基材;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂からなる基材;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレンなどのポリフッ化エチレン系樹脂からなる基材;ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド樹脂からなる基材;ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンなどのビニル重合体からなる基材;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂からなる基材;ポリスチレンからなる基材;ポリカーボネート(PC)からなる基材;ポリアリレートからなる基材;ポリイミドからなる基材;上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙などの紙からなる基材などが用いられる。
【0021】
ICチップ12としては、特に限定されず、第一アンテナ13と第二アンテナ30を介して非接触状態にて情報の書き込みおよび読み出しが可能であり、非接触型ICタグや非接触型ICラベル、あるいは、非接触型ICカードなどのRFIDメディアに適用可能なものであればいかなるものでも用いられる。
【0022】
第一アンテナ13は、基材11の一方の面11aに、ポリマー型導電インクを用いて所定のパターンにスクリーン印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成されてなるものか、または、導電性箔をエッチングしてなるもの、金属メッキしてなるものである。
【0023】
ポリマー型導電インクとしては、例えば、銀粉末、金粉末、白金粉末、アルミニウム粉末、パラジウム粉末、ロジウム粉末、カーボン粉末(カーボンブラック、カーボンナノチューブなど)などの導電微粒子が樹脂組成物に配合されたものが挙げられる。
【0024】
樹脂組成物として熱硬化型樹脂を用いれば、ポリマー型導電インクは、200℃以下、例えば、100〜150℃程度で第一アンテナ13をなす塗膜を形成することができる熱硬化型となる。第一アンテナ13をなす塗膜の電気の流れる経路は、塗膜を構成する導電微粒子が互いに接触することにより形成され、この塗膜の抵抗値は10-5Ω・cmオーダーである。
また、本発明におけるポリマー型導電インクとしては、熱硬化型の他にも、光硬化型、浸透乾燥型、溶剤揮発型といった公知のものが用いられる。
【0025】
光硬化型のポリマー型導電インクは、光硬化性樹脂を樹脂組成物に含むものであり、硬化時間が短いので、製造効率を向上させることができる。光硬化型のポリマー型導電インクとしては、例えば、熱可塑性樹脂のみ、あるいは、熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特に、ポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、導電微粒子が60質量%以上配合され、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、溶剤揮発型あるいは架橋/熱可塑併用型(ただし、熱可塑型が50質量%以上である)のものや、熱可塑性樹脂のみ、あるいは、熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特に、ポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、架橋型あるいは架橋/熱可塑併用型のものなどが好適に用いられる。
【0026】
また、第一アンテナ13をなす導電性箔としては、銅箔、銀箔、金箔、白金箔、アルミニウム箔などが挙げられる。
さらに、第一アンテナ13をなす金属メッキとしては、銅メッキ、銀メッキ、金メッキ、白金メッキなどが挙げられる。
【0027】
第二アンテナ30を構成する導電性繊維としては、例えば、ポリエステル、ナイロンなどの樹脂に、導電性カーボンまたは白色系金属酸化物を練り込んで複合紡糸した繊維(A)、各種の繊維に、スパッタリング加工により、ステンレス、チタン、銅などの金属からなる薄膜をコーティングした繊維(B)などが挙げられる。
繊維(A)としては、導電性カーボンや白色系金属酸化物からなる導電層が繊維の表面全面に設けられているもの、導電性カーボンや白色系金属酸化物からなる導電層が繊維の内部(例えば、長手方向に沿う中心部)に隠蔽されているもの、導電性カーボンや白色系金属酸化物からなる導電層が繊維の表面の一部に露出しているものなどが挙げられる。
【0028】
絶縁部40を構成する非導電性繊維としては、特に限定されるものではなく、一般的な繊維が用いられる。
【0029】
非接触型データ受送信体10によれば、第二アンテナ30が導電性繊維からなり、第一アンテナ13と第二アンテナ30が未接着状態で対向して配設されているので、洗濯時やクリーニング時などにおいて、非接触型データ受送信体10が設けられた衣類などが、高温・高圧の環境に曝されたり、外力が加えられたりしても、第一アンテナ13と第二アンテナ30の接続部が切断されることにより、これらの電気的な接続ができなくなるという不具合が生じることがなく、第一アンテナ13と第二アンテナ30の電気的な接続を安定に保つことができる。したがって、非接触型データ受送信体10の通信性能が劣化することを防止できる。
また、第二アンテナ30が導電性繊維からなり、可撓性に優れるので、第二アンテナ30を衣類などに縫い付けて、非接触型データ受送信体10を衣類などに固定したとしても、外力が加えられることにより、第二アンテナ30が断線することがない。
【0030】
なお、本実施形態では、第一アンテナ13が一対の面状の放射素子からなるダイポールアンテナである場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、第一アンテナが、一対の枠状の放射素子からなるダイポールアンテナ、メアンダ状のダイポールアンテナ、ループアンテナなどであってもよい。
【0031】
(2)第二実施形態
図2は、本発明の非接触型データ受送信体の第二実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。図2において、図1に示した非接触型データ受送信体10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の非接触型データ受送信体50は、基材11、基材11の一方の面11aに設けられ、互いに電気的に接続されたICチップ12および第一アンテナ13を有するインレット20と、基材11の一方の面11a側に設けられ、第一アンテナ13と未接着状態で対向して配設されたブースター用の第二アンテナ30と、基材11の他方の面11b側に設けられ、インレット20および第二アンテナ30と重なるように配設された、織布または不織布からなる繊維部材51とから概略構成されている。
【0032】
また、第二アンテナ30と繊維部材51は、例えば、外縁同士が縫い合わされるなどして袋状の部材(以下、「袋状部材」と言う。)52を形成している。これにより、第二アンテナ30は、袋状部材52の内面52aの一部を構成している。
さらに、インレット20は、袋状部材52の内部に収容されている。
【0033】
本実施形態において、上述の第一実施形態と同様に、第一アンテナ13と第二アンテナ30の位置関係を保つためには、インレット20を構成する基材11が、接着剤により、織布または不織布からなる第二アンテナ30に接着されていてもよく、インレット20を構成する基材11が、第二アンテナ30に縫い付けられていてもよく、あるいは、第二アンテナ30と繊維部材51を縫い合わせて、袋状部材52の内部において、インレット20を所定の位置に収容するための袋状の収容部53を形成してもよい。
【0034】
繊維部材51としては、第二アンテナ30を構成する導電性繊維と同様のもの、絶縁部40を構成する非導電性繊維と同様のものなどが用いられる。
例えば、繊維部材51として導電性繊維を用いれば、繊維部材51も第二アンテナ30と同様にアンテナとして機能させることができる。これにより、基材11の一方の面11a側および他方の面11b側にブースター用のアンテナが設けられるので、第一実施形態のように、基材11の一方の面11a側のみにブースター用のアンテナが設けられた場合よりも通信距離を長くすることができる。
【0035】
非接触型データ受送信体50によれば、第二アンテナ30と繊維部材51が袋状部材52を形成し、袋状部材52の内部にインレット20が収容されているので、第一アンテナ13と第二アンテナ30の位置関係をより安定に保つことができ、結果として、第一アンテナ13と第二アンテナ30の電気的な接続をより安定に保つことができる。
【0036】
(3)第三実施形態
図3は、本発明の非接触型データ受送信体の第三実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C線に沿う断面図である。図3において、図1に示した非接触型データ受送信体10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の非接触型データ受送信体60は、基材11、基材11の一方の面11aに設けられ、互いに電気的に接続されたICチップ12および第一アンテナ13を有するインレット20と、基材11の一方の面11a側に設けられ、第一アンテナ13と未接着状態で対向して配設されたブースター用の第二アンテナ30と、基材11の他方の面11b側に設けられ、第一アンテナ13と未接着状態で対向して配設されたブースター用の第二アンテナ70と、インレット20、第二アンテナ30および第二アンテナ70を収容する織布または不織布からなる袋状部材80とから概略構成されている。
【0037】
また、袋状部材80は、例えば、布状の繊維部材が2つ折りにされて、その重なり合う部分の外縁同士が縫い合わされるなどして袋状に形成されたものである。
【0038】
第二アンテナ70は、第二アンテナ30と同様の導電性繊維から構成される織布または不織布からなり、互いに対向し、間隔を隔てて配置され、その対向する側において、第一アンテナ13(放射素子14,15)と対向する一対の面状の放射素子71,72からなるダイポールアンテナである。
第二アンテナ70は、非接触ICカードなどの非接触ICモジュールに利用できる極超短波帯〈UHF〉やマイクロ波帯の電波帯の周波数(300MHz〜30GHz)の1/2波長に相当する長さとなっている。すなわち、放射素子71,72の長手方向における長さは、1/4波長に相当する長さとなっている。
【0039】
第二アンテナ30および第二アンテナ70は、接着剤により、袋状部材80の内面80aに接着されていてもよく、あるいは、袋状部材80の内面80aに縫い付けられていてもよい。これにより、第二アンテナ30および第二アンテナ70は、袋状部材80の内面80aの一部を構成している。
さらに、インレット20は、袋状部材80の内部に収容されている。
【0040】
第一アンテナ13と第二アンテナ70が、未接着状態で対向して配設されているとは、第一アンテナ13と第二アンテナ70が直接、接着(固着)されることなく、これら2つのアンテナが、静電結合によって電気的な接続を保つことができる位置に設けられている状態を言う。
【0041】
本実施形態において、第一アンテナ13と第二アンテナ30の位置関係、および、第一アンテナ13と第二アンテナ70の位置関係を保つためには、インレット20を構成する基材11が、接着剤により、織布または不織布からなる第二アンテナ30および/または第二アンテナ70に接着されていてもよく、インレット20を構成する基材11が、第二アンテナ30および/または第二アンテナ70に縫い付けられていてもよく、あるいは、第二アンテナ30と第二アンテナ70を縫い合わせて、袋状部材80の内部において、インレット20を所定の位置に収容するための袋状の収容部81を形成してもよい。
【0042】
非接触型データ受送信体60によれば、基材11の一方の面11a側に第二アンテナ30が設けられ、基材11の他方の面11b側に第二アンテナ70が設けられているので、第一実施形態のように、基材11の一方の面11a側のみに第二アンテナ30が設けられた場合よりも通信距離を長くすることができる。また、袋状部材80の内部にインレット20が収容されているので、第一アンテナ13と、第二アンテナ30および第二アンテナ70との位置関係をより安定に保つことができ、結果として、第一アンテナ13と、第二アンテナ30および第二アンテナ70との電気的な接続をより安定に保つことができる。
【0043】
(4)第四実施形態
図4は、本発明の非接触型データ受送信体の第四実施形態を示す概略平面図であり、第二アンテナを示す概略図である。
第二アンテナ90は、例えば、絶縁性の繊維状部材101の一方の面101aに設けられ、互いに対向し、間隔を隔てて配置され、その対向する側において、第一アンテナと対向する一対の放射素子91,92からなるダイポールアンテナである。また、放射素子91は、繊維状部材101の長手方向に沿って並列に形成された複数の線状の導電体91aから構成されている。同様に、放射素子92は、繊維状部材101の長手方向に沿って並列に形成された複数の線状の導電体92aから構成されている。
また、第二アンテナ90は、第二アンテナ30と同様の導電性繊維から構成される織布または不織布から構成されている。
【0044】
(5)第五実施形態
図5は、本発明の非接触型データ受送信体の第五実施形態を示す概略平面図であり、第二アンテナを示す概略図である。
第二アンテナ110は、例えば、絶縁性の繊維状部材121の一方の面121aに設けられ、互いに対向し、間隔を隔てて配置され、その対向する側において、第一アンテナと対向する一対の放射素子111,112からなるダイポールアンテナである。また、放射素子111,112は、第一アンテナと対向する部分を基端とし、繊維状部材121の長手方向に沿って、繊維状部材121の端部方向に蛇行しているメアンダ状のアンテナである。
また、第二アンテナ110は、第二アンテナ30と同様の導電性繊維から構成される織布または不織布から構成されている。
【0045】
(6)第六実施形態
図6は、本発明の非接触型データ受送信体の第六実施形態を示す概略平面図であり、第二アンテナを示す概略図である。
第二アンテナ130は、例えば、絶縁性の繊維状部材141の一方の面141aに設けられ、互いに対向し、間隔を隔てて配置され、その対向する側において、第一アンテナと対向する一対の放射素子131,132からなるダイポールアンテナである。また、放射素子131,132は、その外形を形成する線状の導電体からなり、内側の領域が中抜きされたループ状のアンテナである。
また、第二アンテナ130は、第二アンテナ30と同様の導電性繊維から構成される織布または不織布から構成されている。
【0046】
(7)第七実施形態
図7は、本発明の非接触型データ受送信体の第七実施形態を示す概略平面図であり、第二アンテナを示す概略図である。
第二アンテナ150は、例えば、絶縁性の繊維状部材161の一方の面161aに設けられ、互いに対向し、間隔を隔てて配置され、その対向する側において、第一アンテナと対向する一対の放射素子151,152からなるダイポールアンテナである。また、放射素子151,152は、繊維状部材161の長手方向に沿って形成された長方形状の導電体から構成されている。
また、第二アンテナ150は、第二アンテナ30と同様の導電性繊維から構成される織布または不織布から構成されている。
【0047】
(8)第八実施形態
図8は、本発明の非接触型データ受送信体の第八実施形態を示す概略平面図であり、第二アンテナを示す概略図である。
第二アンテナ170は、例えば、絶縁性の繊維状部材181の一方の面181aに設けられ、互いに対向し、間隔を隔てて配置され、その対向する側において、第一アンテナと対向する一対の放射素子171,172からなるダイポールアンテナである。
また、第二アンテナ170は、第二アンテナ30と同様の導電性繊維から構成される織布または不織布から構成されている。
【符号の説明】
【0048】
10,50,60・・・非接触型データ受送信体、11・・・基材、12・・・ICチップ、13・・・第一アンテナ、14,15・・・放射素子、20・・・インレット、30,90,110,130,150,170・・・第二アンテナ、31,32,91,92,111,112,131,132,151,152,171,172・・・放射素子、40・・・絶縁部、51・・・繊維部材、52・・・袋状部材、53・・・収容部、70・・・第二アンテナ、71,72・・・放射素子、80・・・袋状部材、81・・・収容部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8