(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
本発明に係る化粧建築板は、
図1に示すように、基材1の表面に下地層2、下地層2の表面の一部にインク層3、インク層3の表面にクリアー層4をこの順に積層して製造することができる。なお、
図1では下地層2は、基材1の表面に下塗り層8及びインク受理層5をこの順に積層して形成されている。以下では、下塗り層8及びインク受理層5の2層で下地層2を形成する場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
基材1としては、窯業系基材や金属系基材のように無機質のものや、樹脂系基材のように有機質のものを用いることができる。このうち窯業系基材は、例えば、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に無機充填剤及び繊維質材料等を配合し、この配合物を所定形状に成形した後に養生硬化させることによって作製することができる。ここで、水硬性膠着材としては、例えば、ポルトランドセメント、高炉セメント、高炉スラグ、ケイ酸カルシウム、石膏等を用いることができる。また無機充填剤としては、例えば、フライアッシュ、ミクロシリカ、珪砂等を用いることができる。また繊維質材料としては、例えば、パルプ、合成繊維等の無機繊維や、スチールファイバー等の金属繊維を用いることができる。そして成形は、押出成形、注型成形、抄造成形、プレス成形等の方法により行うことができ、このような成形の後、必要に応じてオートクレーブ養生、蒸気養生、常温養生を行って、瓦や外壁材等の外装材として使用される窯業系基材を作製することができる。他に基材1としては、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボード等の無機質板を用いることができる。
【0015】
そして、化粧建築板を製造するにあたっては、上記のような基材1の表面全体にまず、必要に応じて下塗り塗料(プライマー、シーラー)を塗装して下塗り層8を形成し、目止めを行う。下塗り塗料としては、例えば、アクリル系やラテックス系のものを用いることができる。下塗り塗料の塗装は、例えば、スプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーター等を用いて行うことができる。このように、基材1の表面に下塗り層8を形成すると、基材1の表面から内部への塗料の吸い込みのばらつきを均一に調整することができる。下塗り塗料の塗布量は1〜300g/m
2・dryであることが好ましい。
【0016】
次に、基材1の表面(下塗り層8を形成する場合には下塗り層8の表面)全体に必要に応じて受理層形成用塗料を塗装してインク受理層5を形成する。インク受理層5を形成すると、後でこの上に形成されるインク層3を定着させることができる。受理層形成用塗料としては、有機溶剤で希釈した塗料を用いることもできるが、水性塗料を用いることが好ましい。このように、水性塗料でインク受理層5を形成することによって、作業環境が良好となり、安全性が向上すると共に、環境負荷を低減することができるものである。具体的には水性塗料としては、例えば、アクリル系エマルションをベースにしたアクリル樹脂塗料や、アクリルシリコン系エマルションをベースにしたアクリルシリコン樹脂塗料を用いることができる。水性塗料には、体質顔料と吸湿性樹脂のうちの少なくとも一方を配合しておくことが好ましい。これにより、インク層3の定着性を向上させることができると共に、発色性を向上させることができるものである。ここで、体質顔料としては、例えば、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、多孔質シリカ、珪藻土等を用いることができ、吸湿性樹脂としては、例えば、酢酸ビニル、ウレタン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリビニルアルコール等のインキ吸収性ポリマー等を用いることができる。また、水性塗料には、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等の顔料を着色剤として配合することもできる。また、基材1の表面への受理層形成用塗料の塗布量は40〜200g/m
2・wetであることが好ましい。受理層形成用塗料の塗装は、例えば、スプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーター等を用いて行うことができる。乾燥後のインク受理層5の厚みは5〜30μmであることが好ましい。
【0017】
次に、下地層2であるインク受理層5の表面の一部にインク層3を形成する。インク層3は、例えばロール等を用いて形成することもできるが、インクジェット印刷により形成することが好ましい。これにより、ドット状のインク層3を所望のドットパターンで形成することができ、単純な模様や複雑な模様など所望の模様を施すことができる。その後、インク層3の表面にクリアー層4を形成する。クリアー層4も、例えばロール等を用いて形成することができるが、インクジェット印刷により形成することが好ましい。この場合、ドット状のクリアー層4を所望のドットパターンで形成することができるので、ドット状等に形成された各インク層3の箇所と同一箇所に容易にクリアー層4を重ねてピンポイントで形成することができるものである。以下では、インク層3及びクリアー層4をいずれもインクジェット印刷により形成する場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
ここで、インクジェット印刷するためのインクジェット装置としては、例えば、
図3に示すようなものを用いることができる。このインクジェット装置は、インク噴射ノズル9を設けたインク塗装ノズルヘッド10、インク塗装ノズルヘッド10のインク噴射ノズル9にインクを供給するインク供給タンク11、クリアー噴射ノズル12を設けたクリアー塗装ノズルヘッド13、クリアー塗装ノズルヘッド13のクリアー噴射ノズル12にクリアー塗料を供給するクリアー供給タンク14、塗装制御システム15を設けたインクジェット式塗装機16と、基材1を搬送する搬送コンベア17とを備えて形成されるものである。塗装制御システム15は、インク塗装ノズルヘッド10のインク噴射ノズル9からのインクの噴射及びクリアー塗装ノズルヘッド13のクリアー噴射ノズル12からのクリアー塗料の噴射を制御するものである。
【0019】
インク塗装ノズルヘッド10は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のインクを噴出する4種類のインク塗装ノズルヘッド10y、10c、10m、10kから形成してあり、フルカラー印刷による塗装を行うことができるようにしてある。インク供給タンク11も同様に4種類のものからなるものであり、イエローのインクを供給するインク供給タンク11yはインク塗装ノズルヘッド10yに、シアンのインクを供給するインク供給タンク11cはインク塗装ノズルヘッド10cに、マゼンタのインクを供給するインク供給タンク11mはインク塗装ノズルヘッド10mに、ブラックのインクを供給するインク供給タンク11kはインク塗装ノズルヘッド10kに、それぞれ接続してある。また、各インク塗装ノズルヘッド10y、10c、10m、10kは基材1の搬送方向に沿って配列してある。
【0020】
イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のインクとしては、例えば、水性インク又はUV硬化インク等を用いることができる。
【0021】
具体的には、イエローのインクとしては、例えば、黄色酸化鉄、Ti−Ni−Ba系イエロー、Ti−Sb−Ni系イエロー、Ti−Nb−Ni系イエロー、Ti−Sb−Cr系イエローから選ばれる顔料を含有するものを用いることができる。
【0022】
またシアンのインクとしては、例えば、Co−Al系ブルー、Co−Al−Cr系ブルーから選ばれる顔料を含有するものを用いることができる。
【0023】
またマゼンタのインクとしては、例えば、赤色酸化鉄、Fe−Zn系ブラウン、Fe−Zn−Cr系ブラウン、Fe−Ni−Al系ブラウンから選ばれる顔料を含有するものを用いることができる。
【0024】
またブラックのインクとしては、例えば、黒色酸化鉄、Cu−Cr系ブラック、Cu−Cr−Mn系ブラック、Cu−Fe−Mn系ブラック、Co−Fe−Cr系ブラック、カーボンブラックから選ばれる顔料を含有するものを用いることができる。
【0025】
水性インクでインク層3を形成することによって、作業環境が良好となり、安全性が向上すると共に、環境負荷を低減することができるものである。なお、上記のインクに限定されるものではないが、無機顔料を主成分とするインクは、有機顔料を主成分とするインクよりも耐候性(耐褪色性)の面で優位に立つ。
【0026】
クリアー塗装ノズルヘッド13は、クリアー塗料を噴出することができるようにしてある。クリアー塗料を供給するクリアー供給タンク14はクリアー塗装ノズルヘッド13に接続してある。また、クリアー塗装ノズルヘッド13は、基材1の搬送方向に沿って各インク塗装ノズルヘッド10よりも下流側に配置してある。
【0027】
クリアー層4を形成するクリアー塗料としては、インク層3とクリアー層4との親和性が下地層2(
図1ではインク受理層5)とクリアー層4との親和性よりも高くなるという条件を満たすものを用いる。親和性の高低は、例えば、次のようにして判定することができる。まずガラス板にインク層3及び下地層2を別々に形成した後、それぞれの表面にクリアー塗料を滴下し、インク層3及びクリアー塗料の接触角と、下地層2及びクリアー塗料の接触角とを測定する。その結果、例えば、インク層3及びクリアー塗料の接触角が小さく、下地層2及びクリアー塗料の接触角が大きい場合には、インク層3とクリアー層4との親和性が高く、下地層2とクリアー層4との親和性が低いと判定することができる。逆に、インク層3及びクリアー塗料の接触角が大きく、下地層2及びクリアー塗料の接触角が小さい場合には、インク層3とクリアー層4との親和性が低く、下地層2とクリアー層4との親和性が高いと判定することができる。
【0028】
上記の条件を満たす限り、クリアー塗料としては、例えば、水性クリアー、溶剤クリアー又はUV硬化クリアー等を用いることができる。このようなクリアー塗料には紫外線吸収剤が含有されていることが好ましい。これにより、太陽光等に含まれる紫外線をクリアー層4で吸収して、インク層3が紫外線で劣化することを抑制することができ、化粧建築板の耐候性を高めることができるものである。水性クリアーとしては、例えば、アクリル系エマルションをベースにしたアクリル樹脂塗料や、アクリルシリコン系エマルションをベースにしたアクリルシリコン樹脂塗料を用いることが好ましい。これにより、後述のオーバーコート層7を形成する場合には、このオーバーコート層7をクリアー層4に強く付着させることができる。また水性クリアーには、アクリルビーズ、マイカ等の骨材を配合しておくことが好ましい。これにより、意匠性を向上させることができる。特に水性クリアーでクリアー層4を形成することによって、作業環境が良好となり、安全性が向上すると共に、環境負荷を低減することができる。また水性クリアーには、透明性保持粉体が含有されていることが好ましい。透明性保持粉体としては、例えば、アクリル等の樹脂ビーズを用いることができる。このような透明性保持粉体によって、クリアー層4中の水はけが良くなり、塗膜の乾燥を短時間で行うことができるものである。しかも、上記粉体は透明性を保持しているので、塗膜の乾燥後においては、クリアー層4の透明性が確保され、このクリアー層4を透して、インク層3で表される模様を視認することができる。なお、水性クリアー全量に対して、透明性保持粉体の含有量は3〜20重量%であることが好ましい。また、水性クリアーの固形成分濃度は40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上(実質上の上限は60重量%)であることがより好ましい。これにより、速く乾燥させることができ、インクの滲みを防止することができる。しかし、水性クリアーの固形成分濃度が40重量%未満であると、乾燥に時間がかかり、インクが滲んでしまうおそれがある。また水性クリアーは、テキサノール等の疎水性成分を含有していることが好ましい。上記水性クリアー中の疎水性成分によって、インクの逆流、つまりインクがクリアー層4に向かって流れるのを防止することができ、これにより、鮮明な模様が得られ、意匠性を向上させることができる。なお、水性クリアー全量に対して、疎水性成分の含有量は0.5〜10重量%であることが好ましい。疎水性成分を含有する水性クリアーとしては、例えば、酢酸ブチルやキシレン等の有機溶剤(疎水性成分)を含有するアクリル系塗料やアクリルシリコン系塗料等を用いることができる。
【0029】
塗装制御システム15は、各種のCPU、ROM、RAM等から構成されるものであり、塗装データ作成部、塗装制御部、噴射ノズル制御部等を備えて形成してある。塗装データ作成部は、原画(所望の模様)をスキャン等して得られたドットパターンのデータを入力して保存するものである。また塗装制御部は、塗装を行う基材1に応じたドットパターンのデータを塗装データ作成部から取り出し、このドットパターンのデータに基づいて、噴射ノズル制御部に制御信号を出力するものである。また噴射ノズル制御部は、インク塗装ノズルヘッド10y、10c、10m、10kの各インク噴射ノズル9及びクリアー塗装ノズルヘッド13のクリアー噴射ノズル12に接続してあり、噴射ノズル制御部から入力される制御信号に基づいて各インク噴射ノズル9及びクリアー噴射ノズル12を制御するものである。各インク噴射ノズル9及びクリアー噴射ノズル12は、例えば、ピエゾ制御方式により噴射を行ったり噴射を停止したりするようになっている。そして、噴射ノズル制御部で各インク噴射ノズル9を制御することによって、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各インクの噴射と停止を個別に制御して、ドットパターンに対応したフルカラー印刷による塗装を行うことができるものである。さらに噴射ノズル制御部でクリアー噴射ノズル12を制御することによって、クリアー塗料の噴射と停止を制御して、ドットパターンに対応したクリアー塗料の塗装を行うことができるものである。
【0030】
搬送コンベア17は、インクジェット式塗装機16の下側に配置されるものであり、ベルトコンベアで形成することができる。
【0031】
そして、上記のインクジェット装置でインクジェット印刷するにあたっては、下地層2が形成された基材1を搬送コンベア17上に導入する。導入された基材1はそのまま搬送されてインクジェット式塗装機16のインク塗装ノズルヘッド10y、10c、10m、10kの下を順に通過する。このように、基材1を搬送コンベア17で搬送しながら、インク塗装ノズルヘッド10y、10c、10m、10kからインクを噴射させて塗着させることによって、下地層2であるインク受理層5の表面にドット状のインク層3を所望のドットパターンで形成することができるものである。
【0032】
引き続き、インク層3が形成された基材1はそのまま搬送されてインクジェット式塗装機16のクリアー塗装ノズルヘッド13の下を通過する。このように、基材1を搬送コンベア17で搬送しながら、クリアー塗装ノズルヘッド13からクリアー塗料を噴射させて塗着させることによって、各ドット状のインク層3の表面にドット状のクリアー層4を重ねて形成することができるものである。このとき、インク層3のドットパターンとクリアー層4のドットパターンとは同一であることが好ましいが、厳密に同一である必要はない。なぜなら、クリアー塗料は、インク層3との親和性が高く、下地層2(
図1ではインク受理層5)との親和性が低いことによって、塗布後のクリアー塗料が、下地層2の表面からインク層3の表面に自然に引き寄せられるからである。
【0033】
ところで、インク層3を水性インクで形成し、クリアー層4を水性クリアー又は溶剤クリアーで形成する場合には、滲みを抑制するために、水性インクを乾燥させてインク層3を形成した後に、このインク層3の表面にインクジェット印刷した水性クリアー又は溶剤クリアーを乾燥させてクリアー層4を形成する。この乾燥は、基材1を加温しながら搬送コンベア17で搬送したり、インク塗装ノズルヘッド10(
図3では10k)とクリアー塗装ノズルヘッド13との間及びクリアー塗装ノズルヘッド13の下流側にそれぞれジェット乾燥機(図示省略)を設置したりして行うことができる。
【0034】
また、インク層3を水性インクで形成し、クリアー層4をUV硬化クリアーで形成する場合には、水性インクを乾燥させてインク層3を形成した後に、このインク層3の表面にインクジェット印刷したUV硬化クリアーに紫外線を照射してUV硬化クリアーを硬化させてクリアー層4を形成する。この乾燥及びUV照射は、基材1を加温しながら搬送コンベア17で搬送し、クリアー塗装ノズルヘッド13の下流側に設置したUV照射器(図示省略)を用いて行うことができる。
【0035】
また、インク層3をUV硬化インクで形成し、クリアー層4を水性クリアー又は溶剤クリアーで形成する場合には、UV硬化インクに紫外線を照射してUV硬化インクを硬化させてインク層3を形成した後に、このインク層3の表面にインクジェット印刷した水性クリアー又は溶剤クリアーを乾燥させてクリアー層4を形成する。このUV照射及び乾燥は、基材1を加温しながら搬送コンベア17で搬送し、インク塗装ノズルヘッド10(
図3では10k)とクリアー塗装ノズルヘッド13との間に設置したUV照射器(図示省略)を用いて行うことができる。
【0036】
また、インク層3をUV硬化インクで形成し、クリアー層4をUV硬化クリアーで形成する場合には、UV硬化インクに紫外線を照射してUV硬化インクを硬化させてインク層3を形成した後に、このインク層3の表面にインクジェット印刷したUV硬化クリアーに紫外線を照射してUV硬化クリアーを硬化させてクリアー層4を形成する。このUV照射は、インク塗装ノズルヘッド10(
図3では10k)とクリアー塗装ノズルヘッド13との間及びクリアー塗装ノズルヘッド13の下流側に設置したUV照射器(図示省略)を用いて行うことができる。また、先にUV硬化インクに紫外線を照射するのではなく、紫外線をUV硬化インク及びUV硬化クリアーに同時に照射してインク層3及びクリアー層4を一度に形成してもよい。このUV照射は、クリアー塗装ノズルヘッド13の下流側に設置したUV照射器(図示省略)を用いて行うことができる。
【0037】
上記のように、
図1に示す化粧建築板にあっては、インク層3とクリアー層4との親和性が下地層2(インク受理層5)とクリアー層4との親和性よりも高い。すなわち、塗布後のクリアー塗料は、下地層2の表面よりもインク層3の表面に集まりやすいので、インク層3の表面に均一な厚みのクリアー層4を形成することができ、クラックの発生及び耐候性(耐褪色性)の低下を抑制することができるものである。
【0038】
図2は本発明に係る化粧建築板の他の一例を示すものであり、この化粧建築板は、下地層2(インク受理層5)及びクリアー層4の表面を被覆するようにオーバーコート層形成用塗料を塗装することによってオーバーコート層7を積層して形成されている。オーバーコート層7は、例えばSiO
2骨格で構成された塗膜で、場合によっては、光触媒、艶消し剤が配合された塗膜からなるものである。オーバーコート層7とクリアー層4との親和性は、オーバーコート層7と下地層2(インク受理層5)との親和性と同程度であることが好ましい。これにより、オーバーコート層7がクリアー層4又は下地層2のいずれかの表面に偏って形成されることを抑制することができるものである。
【0039】
オーバーコート層形成用塗料(無機質塗料層)としては、例えば、特許第3242442号公報に記載のコーティング用組成物(無機質塗料)を用いることができる。このコーティング用組成物は、以下の(A)(B)(C)成分を必須成分とする。
【0040】
(A)一般式(I)
R
1nSiX
4−n…(I)
(式中、R
1は同一または異種の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、ハロゲン置換炭化水素基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基およびγ−メルカプトプロピル基からなる群より選ばれる、炭素数1〜8の1価炭化水素基を示し、nは0〜3の整数、Xはアルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基、エノキシ基、アミノ基、アミノキシ基およびアミド基からなる群より選ばれる加水分解性基を示す。)で表わされる加水分解性オルガノシランを有機溶媒または水に分散されたコロイダルシリカ中で、X1モルに対し水0.001〜0.5モルを使用する条件下で部分加水分解してなる、オルガノシランのシリカ分散オリゴマー溶液。
【0041】
(B)平均組成式(II)
R
2aSi(OH)
bO
(4−a−b)/2…(II)
(式中、R
2は同一または異種の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、ハロゲン置換炭化水素基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基およびγ−メルカプトプロピル基からなる群より選ばれる、炭素数1〜8の1価炭化水素基を示し、aおよびbはそれぞれ0.2≦a≦2、0.0001≦b≦3、a+b<4の関係を満たす数である。)で表わされ、成分中のR
2にフェニル基を全R
2基に対して1〜30モル%含有するポリオルガノシロキサン。
【0042】
(C)(A)成分と(B)成分との縮合反応を促進する触媒。
【0043】
そして、このコーティング用組成物は、(A)成分においてシリカを固形分として5〜95重量%含有し、加水分解性オルガノシランの少なくとも50モル%がn=1のオルガノシランで、(A)成分1〜99重量部に対して(B)成分99〜1重量部が配合されている。
【0044】
上記のようなオーバーコート層7を形成するにあたっては、クリアー層4まで形成した基材1をあらかじめ40℃以上に加温しておき、この状態でスプレーガンを用いてオーバーコート層形成用塗料を塗装することによって行うことができる。このとき、乾燥条件は、100〜200℃、1〜5分間であることが好ましい。十分に焼付け乾燥を行わないと、温度湿度条件によっては、オーバーコート層7の耐久性能が発揮されないおそれがある。また、オーバーコート層7を形成するにあたっては、オーバーコート層形成用塗料を塗布量4〜40g/m
2・dryで塗装することが好ましい。
【0045】
図2に示す化粧建築板にあっては、下地層2(インク受理層5)及びクリアー層4の表面にオーバーコート層7が形成されているので、
図1に示す化粧建築板に比べて、耐久性をさらに高めることができるものである。また、オーバーコート層7に光触媒が含有されている場合には、化粧建築板の表面に付着した有機物などの汚れは、光触媒作用によって分解されると共に、オーバーコート層7が超親水性を発現することにより、分解した汚れを雨水等によって容易に除去することができるので、化粧建築板の防汚性を高めることができるものである。そして、
図1及び
図2に示す化粧建築板はいずれも、下地層2であるインク受理層5によってインク層3を定着させて鮮明な模様を得ることができるので、このようなフルカラー印刷による鮮明な模様を長期間維持することができるものである。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0047】
(実施例1)
基材1として窯業系セメント板を用い、この表面全体にスプレーガンを用いて受理層形成用塗料を塗装して、下地層2となる厚み30μmのインク受理層5を形成した。
【0048】
受理層形成用塗料としては、アクリル系エマルションをベースにしたアクリル樹脂塗料を用いた。なお、この塗料の樹脂成分は、主成分樹脂であるアクリルエマルション樹脂70重量部と、吸湿性樹脂である吸湿性アクリル樹脂30重量部とで構成されている。
【0049】
次に、下地層2であるインク受理層5の表面にインクジェット印刷して、ドット状のインク層3及びクリアー層4を所望のドットパターンで形成することによって、化粧建築板を製造した(
図1参照)。なお、インク層3及びクリアー塗料の接触角と、下地層2及びクリアー塗料の接触角とを測定することによって、インク層3とクリアー層4との親和性が下地層2とクリアー層4との親和性よりも高いことを確認した。
【0050】
インク層3を形成するためのイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のインクとしては、水性インクを用いた。この水性インクとしては、分散体を50重量%、ジエチレングリコールを10重量%、グリセリンを20重量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを10重量%、水を10重量%含有するものを用いた。上記の分散体としては、顔料と水溶性樹脂(アクリル酸共重合体)と水とを、顔料/水溶性樹脂/水=10/4/86(重量比)となるように混合したものを用いた。顔料としては、Co−Al−Cr系ブルー、Fe−Zn−Cr系ブラウン、Ti−Ni−Ba系イエロー、黒色酸化鉄を用い、各色の顔料ごとに水性インクを調製した。
【0051】
またクリアー塗料としては、水性反応硬化形アクリルシリコン樹脂系塗料(菊水化学工業(株)製「ビュートップシリコン」)を用いた。
【0052】
なお、水性インクを乾燥させてインク層3を形成した後に、このインク層3の表面にインクジェット印刷したクリアー塗料を乾燥させて、厚み20μmのクリアー層4を形成した。この乾燥は、130℃、2分間の条件で焼き付けることによって行った。
【0053】
(実施例2)
クリアー塗料に紫外線吸収剤としてヒンダードアミン系光安定剤が3重量%含有されている以外は、実施例1と同様にして化粧建築板を製造した。
【0054】
(実施例3)
下地層2(インク受理層5)及びクリアー層4の表面を被覆するオーバーコート層7(無機質塗料層及び光触媒塗料層)を積層した以外は、実施例2と同様にして化粧建築板を製造した(
図2参照)。
【0055】
無機質塗料層を形成するための塗料としては、(A)オルガノシランのシリカ分散オリゴマー溶液を70重量部、(B)ポリオルガノシロキサンを30重量部、(C)N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランを1重量部混合して得られたものを用いた。
【0056】
ここで、上記の(A)成分は、次のようにして調製した。すなわち、攪拌機、加温ジャケット、コンデンサー及び温度計を取付けたフラスコ中にメタノール分散コロイダルシリカゾルMA−ST(粒子径10〜20mμ、固形分30重量%、日産化学工業(株)製)100重量部、メチルトリメトキシシラン68重量部、水10.8重量部を投入して攪拌しながら65℃の温度で約5時間かけて部分加水分解反応を行い冷却して(A)成分を得た。
【0057】
また、上記の(B)成分は、次のようにして調製した。すなわち、攪拌機、加温ジャケット、コンデンサー、滴下ロート及び温度計を取付けたフラスコにメチルトリイソプロポキシシラン(0.95モル)とフェニルトリクロロシラン(0.05モル)とトルエン150重量部との混合液を計り取り、水150重量部を上記の混合液に20分間かけて滴下してメチルトリイソプロポキシシランを加水分解した。滴下してから40分後に攪拌を止め、二層に分離した少量の塩酸を含んだ下層の水・イソプロピルアルコールの混合液を分液し、次に残ったトルエンの樹脂溶液の塩酸を水洗で除去し、さらにトルエンを減圧除去した後、イソプロピルアルコールで希釈して(B)成分として平均分子量約2000のシラノール基含有オルガノポリシロキサンのイソプロピルアルコール40%溶液を得た。
【0058】
光触媒塗料層を形成するための塗料としては、パナソニック(株)製「フレッセラPS1000」を用いた。
【0059】
(比較例1)
クリアー塗料として、受理層形成用塗料の主成分樹脂であるアクリルエマルション樹脂を用いるようにした以外は、実施例1と同様にして化粧建築板を製造した。なお、インク層3及びクリアー塗料の接触角と、下地層2及びクリアー塗料の接触角とを測定することによって、インク層3とクリアー層4との親和性が下地層2とクリアー層4との親和性よりも低いことを確認した。
【0060】
(耐褪色性)
耐褪色性の試験は、次のようにして行った。すなわち、各化粧建築板を1週間養生し、次に各化粧建築板の表面にサンシャインウェザオメーター(SWOM)により紫外線を500時間及び1000時間照射した後、各化粧建築板の表面を目視により観察して耐褪色性を評価した。
各化粧建築板の耐褪色性は、以下の基準に基づいて判定した。
【0061】
「◎」:色褪せが全く生じなかったもの。
【0062】
「○」:色褪せがほとんど生じなかったもの。
【0063】
「△」:気にならない程度であるが、色褪せがわずかに生じたもの。
【0064】
「×」:色褪せが生じたもの。
【0065】
なお、色褪せとは、顔料そのものの色褪せではなく、クリアー層4に微細クラックが発生したことによる色褪せを意味する。
【0066】
【表1】
表1から明らかなように、インク層3とクリアー層4との親和性が下地層2とクリアー層4との親和性よりも高い実施例1〜3の方が、比較例1に比べて、耐褪色性に優れていることが確認された。
【0067】
また、クリアー層に紫外線吸収剤が含有されている実施例2の方が、実施例1に比べて、より耐褪色性に優れていることが確認された。
【0068】
また、オーバーコート層が積層されている実施例3の方が、実施例1、2に比べて、より耐褪色性に優れており、光触媒作用による防汚性も向上した。