(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952674
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】保護素子及びバッテリパック
(51)【国際特許分類】
H01H 37/76 20060101AFI20160630BHJP
H01H 85/08 20060101ALI20160630BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20160630BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20160630BHJP
【FI】
H01H37/76 F
H01H37/76 P
H01H85/08
H01M2/10 E
H01M10/44 Z
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-171333(P2012-171333)
(22)【出願日】2012年8月1日
(65)【公開番号】特開2014-32769(P2014-32769A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100150898
【弁理士】
【氏名又は名称】祐成 篤哉
(72)【発明者】
【氏名】木村 武雄
(72)【発明者】
【氏名】後藤 一夫
(72)【発明者】
【氏名】米田 吉弘
【審査官】
関 信之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/084817(WO,A1)
【文献】
特開2001−126903(JP,A)
【文献】
特開2010−3665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
H01H 85/08
H01M 2/10
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
上記絶縁基板に積層され、外部の電源から電流の供給を受けるための2つの端子を有する発熱体と、
少なくとも上記発熱体を覆うように、上記絶縁基板に積層された絶縁部材と、
第1及び第2の電極と、
上記発熱体と重畳するように上記絶縁部材の上に積層され、上記第1及び第2の電極の間の電流経路と該発熱体の一方の発熱体端子とに電気的に接続されて、外部回路と電気的接続をする発熱体引出電極と、
上記発熱体引出電極上の一部に積層され、絶縁素材からなる保護層と、
上記発熱体引出電極から上記第1及び第2の電極にわたって接続され、加熱により、該第1の電極と該第2の電極との間の電流経路を溶断する可溶導体とを備え、
上記可溶導体は、上記発熱体引出電極と該発熱体引出電極の上記保護層が積層されない部分において接続され、該保護層は、上記一方の発熱体端子によって外部回路との接続を確保する位置に積層されることを特徴とする保護素子。
【請求項2】
上記発熱体引出電極は、上記可溶導体の長手方向とは異なる方向で、上記一方の発熱体端子の方向に延伸し、上記保護層は、該発熱体引出電極が延伸する方向に沿って形成されることを特徴とする請求項1記載の保護素子。
【請求項3】
上記保護層は、上記発熱体引出電極が延伸する方向に沿って形成され、該発熱体引出電極の上記可溶導体との電気的接続部分の周縁を取り囲むように配置されることを特徴とする請求項1記載の保護素子。
【請求項4】
上記発熱体引出電極は、Ag又はAgを主成分とする金属或いはCu又はCuを主成分とする金属であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の保護素子。
【請求項5】
上記可溶導体は、厚肉部と、上記発熱体に重畳して位置する部分が凹状に厚さを薄く扁平に成形された薄肉部とからなることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の保護素子。
【請求項6】
上記可溶導体は、上記厚肉部及び上記薄肉部における断面積がほぼ同一であることを特徴とする請求項5記載の保護素子。
【請求項7】
1つ以上のバッテリセルと、
上記バッテリセルに流れる電流を遮断するように接続された保護素子と、
上記バッテリセルそれぞれの電圧値を検出して上記保護素子を加熱する電流を制御する電流制御素子とを備え、
上記保護素子は、
絶縁基板と、
上記絶縁基板に積層され、外部の電源から電流の供給を受けるための2つの端子を有する発熱体と、
少なくとも上記発熱体を覆うように、上記絶縁基板に積層された絶縁部材と、
第1及び第2の電極と、
上記発熱体と重畳するように上記絶縁部材の上に積層され、上記第1及び第2の電極の間の電流経路と該発熱体の一方の発熱体端子とに電気的に接続されて、外部回路と電気的接続をする発熱体引出電極と、
上記発熱体引出電極上の一部に積層され、絶縁素材からなる保護層と、
上記発熱体引出電極から上記第1及び第2の電極にわたって接続され、加熱により、該第1の電極と該第2の電極との間の電流経路を溶断する可溶導体とを有し、
上記可溶導体は、上記発熱体引出電極と該発熱体引出電極の上記保護層が積層されない部分において接続され、該保護層は、上記一方の発熱体端子によって外部回路との接続を確保する位置に積層されることを特徴とするバッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流経路を溶断することにより、電流経路上に接続された回路を保護する保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
充電して繰り返し利用することのできる二次電池の多くは、バッテリパックに加工されてユーザに提供される。特に重量エネルギ密度の高いリチウムイオン二次電池においては、ユーザ及び電子機器の安全を確保するために、一般的に、過充電保護、過放電保護等のいくつもの保護回路をバッテリパックに内蔵し、所定の場合にバッテリパックの出力を遮断する機能を有している。
【0003】
多くのリチウムイオン二次電池を用いた電子装置においては、バッテリパックに内蔵されたFETスイッチを用いて出力のON/OFFを行うことにより、バッテリパックの過充電保護又は過放電保護動作を行う。しかしながら、何らかの原因でFETスイッチが短絡破壊した場合、雷サージ等が印加され、瞬間的な大電流が流れた場合、あるいはバッテリセルの寿命によって出力電圧が異常に低下したり、逆に過大異常電圧を出力した場合であってもバッテリパックや電子機器は、発火等の事故から保護されなければならない。そこで、このような想定し得るいかなる異常状態において、バッテリセルの出力を安全に遮断するために、外部からの信号によって電流経路を遮断する機能を有するヒューズ素子からなる保護素子が用いられる。
【0004】
このようなリチウムイオン二次電池等向けの保護回路の保護素子として、特許文献1に記載されているように、保護素子内部に発熱体を有し、この発熱体の発熱によって電流経路上の可溶導体を溶断する構造が一般的に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−3665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている保護素子においては、携帯電話やノートパソコンのような電流容量が比較的低い用途に用いるために、可溶導体(ヒューズ)は、最大でも15A程度の電流容量を有している。リチウムイオン二次電池の用途は、近年拡大しており、より大電流の用途、たとえば電動ドライバ等の電動工具や、ハイブリッドカー、電気自動車、電動アシスト自転車等の輸送機器に採用が検討され、一部採用が開始されている。これらの用途においては、特に起動時に、数10A〜100Aを超えるような大電流が流れる場合がある。このような電流容量に対応した保護素子の実現が望まれている。
【0007】
大電流に対応する保護素子を実現するにためには、可溶導体の断面積を増大させればよい。1.6mmφの線状に成型したSn/Ag/Cu系ハンダを用いると、50A程度の電流容量を得ることができる。しかしながら、保護素子は、過電流状態により溶断させる場合以外にも、電池セルの過電圧状態を検出して、保護素子の抵抗発熱体に電流を流して、その発熱によって可溶導体を切断する必要がある。このため、「太い」可溶導体では、発熱体からの熱伝導が低下し、可溶導体の切断をすることが困難になるとの問題がある。さらに、「太い」可溶導体を溶断させる場合に、溶融したハンダを確実に分断しないと、回路の遮断をすることができないという問題がある。
【0008】
そこで、過電流保護時の電流容量を確保しつつ、発熱体による発熱によって容易に溶断させることができ、確実に溶融ハンダを分断して回路遮断することを可能にする保護素子を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための手段として、本発明に係る保護素子は、絶縁基板と、絶縁基板に積層され、外部の電源から電流の供給を受けるための2つの端子を有する発熱体と、少なくとも発熱体を覆うように、絶縁基板に積層された絶縁部材と、第1及び第2の電極と、発熱体と重畳するように絶縁部材の上に積層され、第1及び第2の電極の間の電流経路と発熱体の一方の発熱体端子とに電気的に接続されて、外部回路と電気的接続をする発熱体引出電極と、発熱体引出電極上の一部に積層され、絶縁素材からなる保護層と、発熱体引出電極から第1及び第2の電極にわたって接続され、加熱により、第1の電極と第2の電極との間の電流経路を溶断する可溶導体とを備える。そして、可溶導体は、発熱体引出電極と発熱体引出電極の保護層が積層されない部分において接続され、保護層は、一方の発熱体端子によって外部回路との接続を確保する位置に積層される。
【0010】
本発明に係るバッテリパックは、1つ以上のバッテリセルと、バッテリセルに流れる電流を遮断するように接続された保護素子と、バッテリセルそれぞれの電圧値を検出して保護素子を加熱する電流を制御する電流制御素子とを備える。そして、保護素子は、絶縁基板と、絶縁基板に積層され、外部の電源から電流の供給を受けるための2つの端子を有する発熱体と、少なくとも発熱体を覆うように、絶縁基板に積層された絶縁部材と、第1及び第2の電極と、発熱体と重畳するように絶縁部材の上に積層され、第1及び第2の電極の間の電流経路と発熱体の一方の発熱体端子とに電気的に接続されて、外部回路と電気的接続をする発熱体引出電極と、発熱体引出電極上の一部に積層され、絶縁素材からなる保護層と、発熱体引出電極から第1及び第2の電極にわたって接続され、加熱により、第1の電極と第2の電極との間の電流経路を溶断する可溶導体とを有し、可溶導体は、発熱体引出電極と発熱体引出電極の保護層が積層されない部分において接続され、保護層は、一方の発熱体端子によって外部回路との接続を確保する位置に積層されるバッテリパック。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、発熱体引出電極上の一部に保護層を形成し、保護層が存在しない箇所で可溶導体の薄肉部を接続して、薄肉部が接続された箇所においてハンダ溶食現象を発生させることができ、溶融ハンダを安定して分断し、回路を遮断することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(A)は、本発明が適用された保護素子の平面図である。(B)は、(A)図のAA’線における断面図である。(C)は、可溶導体が溶断した状態における平面図である。
【
図2】(A)〜(C)は、本発明が適用された保護素子を製造するプロセスを説明するための平面図である。
【
図3】(A)〜(B)は、本発明が適用された保護素子の保護層の形状のバリエーションを示す平面図である。
【
図4】本発明が適用された保護素子の応用例を示すブロック図である。
【
図5】本発明が適用された保護素子の回路構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることはもちろんである。
【0014】
[保護素子の構成]
図1(A)及び
図1(B)に示すように、保護素子10は、絶縁基板11と、絶縁基板11に積層され、絶縁部材15に覆われた発熱体14と、絶縁基板11の両端に形成された電極12(A1),12(A2)と、絶縁部材15上に発熱体14と重畳するように積層された発熱体引出電極16と、発熱体引出電極16の周縁部を取り囲むように形成された保護層6と、両端が電極12(A1),12(A2)に接続され、中央部が、保護層6の開口6aにおいて発熱体引出電極16に接続された可溶導体13とを備える。発熱体14の両端には、発熱体に電流を流して発熱させるために電源を接続する発熱体電極18(P1),18(P2)が接続される。
【0015】
可溶導体13は、好ましくは1.6mmφの丸線状の厚肉部13aと、発熱体14に対向する部分が、発熱体14に重畳する位置において、厚さがほぼ均一になるように厚肉部13aよりも薄く扁平に成型された薄肉部13bとからなる。薄肉部13bの厚さは、厚肉部13aの厚さ(太さ)のたとえば1/2である。なお、厚肉部13a及び薄肉部13bの断面積はほぼ同一であることが好ましい。可溶導体13の薄肉部13bは、発熱体引出電極16と電気的に接続される。
【0016】
可溶導体13を、発熱体14に重畳する位置を薄肉化した薄肉部13bとすることによって、薄肉部13bにおける厚さ方向の熱伝導が向上し、発熱源との接触面積も増大するので、発熱体14の発熱によって、可溶導体13の溶断が容易になる。なお、厚肉部13a及び薄肉部13bの断面積を同一とした場合には、電流容量は変わらず、可溶導体13の通電方向の断面積及び可溶導体13の材質(比抵抗)に応じた電流を流すことができる。
【0017】
発熱体引出電極16は、通常、CuやAg(Agペースト等)によってパターン形成されるが、これらの金属(又はこれらを主成分とする合金)は、可溶導体13を構成するハンダが溶融すると溶融ハンダ中に溶解するハンダ溶食現象が知られている。15A程度までの電流容量を有する従来の保護素子においては、発熱体引出電極に用いる金属の量に比べて可溶導体(ハンダ)の量が少ないため、ハンダ溶食現象について考慮する必要がなかった。ここで、保護素子の大電流容量化に伴い、「太い」ハンダを可溶導体13として用いる場合には、保護素子10の動作時においてハンダ溶食を生じてしまい、保護素子の動作中に発熱体引出電極16が消失して、発熱体14への電力供給が停止して溶断動作が停止してしまうという問題がある。
【0018】
また、可溶導体13の溶断動作において、発熱体引出電極16上に溶融したハンダが滞留すると、大電流に対応してハンダの量が多いために、溶融ハンダの確実な分断が問題となる。そこで、ハンダ溶食現象を積極的に利用して、溶融ハンダの分断をより確実にすることを考える。
【0019】
発熱体引出電極16と可溶導体13の薄肉部13bとの接続部において、ハンダ溶食現象が生じると、発熱体引出電極16を構成する金属が消失して、発熱体引出電極16の下地である絶縁部材15が露出するようになり、溶融したハンダがとどまりにくくなって、他の経路へと流出させることができる。ここで、薄肉部13bに接続している発熱体引出電極16がすべてハンダ溶食現象によって消失してしまうと、発熱体14への電力供給ができなくなってしまい、薄肉部13bの溶融状態を維持できなくなる。そこで、発熱体14への通電経路を残すように、発熱体引出電極16上に保護層6を形成して、発熱体14への電力供給を維持しながら、発熱体引出電極16を消失させて溶融ハンダの分断を促進させる。
【0020】
具体的には、
図1(A)に示すように、発熱体引出電極16の一部が露出するように開口された保護層6を、発熱体引出電極16上に形成する。発熱体引出電極16は、可溶導体13の長手方向とは異なる方向、たとえば可溶導体13の長手方向と直角の方向に延伸され、延伸された一方の側が可溶導体13の薄肉部13bに接続され、延伸された他方の側が絶縁部材15に形成された発熱体14のための電極18a(P1)に接続される。保護層6は、可溶導体13の薄肉部13bと発熱体引出電極16との接続する部分において、開口されており、発熱体引出電極16の周囲を取り囲むように形成される。
【0021】
発熱体14に電力が供給されて発熱すると、可溶導体13の薄肉部13bは溶融を開始する。薄肉部13bを構成するハンダが高温で溶融するとともに、保護層6の開口6aを介して薄肉部13bに接続されている発熱体引出電極16を構成する金属は、ハンダ溶食を起こして、溶融したハンダ中に溶け出す。その結果、絶縁部材15上の可溶導体13が配置されていた箇所には、発熱体引出電極16が消失し、絶縁部材15が露出するようになる。そうすると、
図1(C)に示すように、可溶導体13の溶融したハンダは、ぬれ性の低い絶縁部材15及び保護層6上にとどまることができず、溶融ハンダの分断が促進される。
【0022】
保護層6は、
図2(A)〜(C)に示すようにして形成することができる。
図2(A)に示すように、周知の印刷技術等を用いて、絶縁部材15上に発熱体引出電極16をパターニングする。この際、同時に発熱体14のための電極18a(P1),18a(P2)を形成してもよい。
図2(B)に示すように、発熱体引出電極16の周辺部に環状に積層されるように保護層6を形成する。
図2(C)に示すように、保護層6が形成された絶縁部材15(発熱体14が内部に積層された積層基板)が絶縁基板11上にハンダ接合される。その後、保護層6の開口6aで、可溶導体13の薄肉部13bが接続されるように可溶導体が載置される。保護層6は、たとえばガラス、ポリイミド等の耐熱性のある周知の絶縁材料を用いることができる。
【0023】
2つの電極12(A1),12(A2)は、可溶導体13を、保護素子10の内部で接続し、この2つの電極12(A1),12(A2)を介して、外部回路に接続する。2つの電極12(A1),12(A2)は、絶縁基板11上に形成してもよく、あるいは絶縁基板11と一体となったエポキシ樹脂等からなる絶縁素材に形成するようにしてもよい。
【0024】
発熱体引出電極16の一端は、発熱体電極18(P1)及び発熱体14の一端に接続される。また、発熱体14の他端は、他方の発熱体電極18(P2)に接続される。
【0025】
絶縁基板11は、たとえば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって形成される。その他、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよいが、ヒューズ溶断時の温度に留意する必要がある。
【0026】
発熱体14は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材であって、たとえばW、Mo、Ru等からなる。これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板11上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成する。
【0027】
発熱体14を覆うように絶縁部材15が配置され、この絶縁部材15を介して発熱体14に対向するように発熱体引出電極16が配置される。この絶縁部材15は、発熱体14が内部に一体的に積層された積層基板であってもよいのはもちろんである。
【0028】
可溶導体13は、過電流状態によって、及び発熱体14の発熱によって溶融し、溶断する導電性の材料であればよく、たとえば、SnAgCu系のPbフリーハンダのほか、BiPbSn合金、BiPb合金、BiSn合金、SnPb合金、PbIn合金、ZnAl合金、InSn合金、PbAgSn合金等を用いることができる。
【0029】
また、可溶導体13は、Ag若しくはCu又はAg若しくはCuを主成分とする金属からなる高融点金属と、Snを主成分とするPbフリーハンダ等の低融点金属との積層体であってもよい。
【0030】
なお、可溶導体13を絶縁基板11に対して支持して、可溶導体13の機械的強度を向上させるために、絶縁基板11上に形成された電極2上に支持部材3を形成して、支持部材3に可溶導体13を接続するようにしてもよい。
【0031】
[変形例]
発熱体引出電極16が延伸した側の電極18a(P1)までの経路によって外部回路との接続を確保するように、保護層6を形成することができる。上述の実施の形態においては、発熱体引出電極16の周囲を取り囲むように保護層6を形成したが、発熱体引出電極16と可溶導体13の薄肉部13bとの交差をする箇所において発熱体引出電極16の金属部分を覆うように保護層6を形成してもよい。
【0032】
そこで、
図3(A)に示すように、発熱体引出電極16の両側の縁部を覆うように保護層6を形成してもよい。また、
図3(B)に示すように、発熱体引出電極16の片側の縁部を覆うように保護層6を形成してもよい。いずれの場合も、可溶導体13と発熱体引出電極16との交差する位置において、ハンダ溶食を防止する目的で保護層6を形成する。
[保護素子の使用方法]
【0033】
図4に示すように、上述した保護素子10は、リチウムイオン二次電池のバッテリパック内の回路に用いられる。
【0034】
たとえば、保護素子10は、合計4個のリチウムイオン二次電池のバッテリセル21〜24からなるバッテリスタック25を有するバッテリパック20に組み込まれて使用される。
【0035】
バッテリパック20は、バッテリスタック25と、バッテリスタック25の充放電を制御する充放電制御回路30と、バッテリスタック25と充放電制御回路30とを保護する本発明が適用された保護素子10と、各バッテリセル21〜24の電圧を検出する検出回路26と、検出回路26の検出結果に応じて保護素子10の動作を制御する電流制御素子27とを備える。
【0036】
バッテリスタック25は、過充電及び過放電状態を保護するための制御を要するバッテリセル21〜24が直列接続されたものであり、バッテリパック20の正極端子20a、負極端子20bを介して、着脱可能に充電装置35に接続され、充電装置35からの充電電圧が印加される。充電装置35により充電されたバッテリパック20を正極端子20a、負極端子20bをバッテリで動作する電子機器に接続することによって、この電子機器を動作させることができる。
【0037】
充放電制御回路30は、バッテリスタック25から充電装置35に流れる電流経路に直列接続された2つの電流制御素子31、32と、これらの電流制御素子31、32の動作を制御する制御部33とを備える。電流制御素子31、32は、たとえば電界効果トランジスタ(以下、FETと呼ぶ。)により構成され、制御部33によりゲート電圧を制御することによって、バッテリスタック25の電流経路の導通と遮断とを制御する。制御部33は、充電装置35から電力供給を受けて動作し、検出回路26による検出結果に応じて、バッテリスタック25が過放電又は過充電であるとき、電流経路を遮断するように、電流制御素子31、32の動作を制御する。
【0038】
保護素子10は、たとえば、バッテリスタック25と充放電制御回路30との間の充放電電流経路上に接続され、その動作が電流制御素子27によって制御される。
【0039】
検出回路26は、各バッテリセル21〜24と接続され、各バッテリセル21〜24の電圧値を検出して、各電圧値を充放電制御回路30の制御部33に供給する。また、検出回路26は、いずれか1つのバッテリセル21〜24が過充電電圧又は過放電電圧になったときに電流制御素子27を制御する制御信号を出力する。
【0040】
電流制御素子27は、検出回路26から出力される検出信号によって、バッテリセル21〜24の電圧値が所定の過放電又は過充電状態を超える電圧になったとき、保護素子10を動作させて、バッテリスタック25の充放電電流経路を電流制御素子31、32のスイッチ動作によらず遮断するように制御する。
【0041】
以上のような構成からなるバッテリパック20において、保護素子10の構成について具体的に説明する。
【0042】
まず、本発明が適用された保護素子10は、たとえば
図5に示すような回路構成を有する。すなわち、保護素子10は、発熱体引出電極16を介して直列接続された可溶導体13と、可溶導体13の接続点を介して通電して発熱させることによって可溶導体13を溶融する発熱体14とからなる回路構成である。また、保護素子10では、たとえば、可溶導体13が充放電電流経路上に直列接続され、発熱体14が電流制御素子27と接続される。保護素子10の2個の電極12,12のうち、一方は、A1に接続され、他方は、A2に接続される。また、発熱体引出電極16とこれに接続された発熱体電極18は、P1に接続され、他方の発熱体電極18は、P2に接続される。
【0043】
このような回路構成からなる保護素子10は、低背化を実現しつつ、発熱体14の発熱により、電流経路上の可溶導体13を確実に溶断することができる。
【符号の説明】
【0044】
2 電極、3 支持部材、6 保護層、6a 開口、10 保護素子、11 絶縁基板、12(A1),12(A2) 電極、13 可溶導体、13a 厚肉部、13b 薄肉部、14 発熱体、15 絶縁部材、16 発熱体引出電極、18(P1),18(P2) 発熱体電極、18a(P1),18a(P2) 電極、20 バッテリパック、20a 正極端子、20b 負極端子、21〜24 バッテリセル、25 バッテリスタック、26 検出回路、27、31,32 電流制御素子、30 充放電制御回路、33 制御部、35 充電装置