(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
<1.実施形態1>
<1.1.薬剤注入装置100の構成>
図1は、本発明の一例である実施形態1による薬剤注入装置100の外観図を示す。
図1に示すように、薬剤注入装置100は、装置本体の一例である本体ケース1と、本体ケース1の前端側に着脱自在に装着されるキャップ7とを備える。
【0011】
本体ケース1は、外側に、表示部2と、エア抜きボタン3と、完了ボタン4と、電源ボタン5と、薬剤注入ボタン6と、を有する。表示部2は、本体ケース1の前面側に配されている。エア抜きボタン3及び完了ボタン4は、表示部2の近傍に配されている。電源ボタン5は、本体ケース1の後端(キャップ7の反対側端部)に配されている。薬剤注入ボタン6は、本体ケース1の前面側であって表示部2の一側方に配されている。
【0012】
キャップ7は、本体ケース1の先端側に着脱自在に装着される。キャップ7は、その前面側に確認窓8、先端に開口部9を設けている。
図1に示すように、確認窓8は、キャップ7の内部が見えるように形成され、内部に装着されたシリンジホルダ10が見える。また、シリンジホルダ10は、後述するように、その前端側に針16を装着し(
図3参照)、その針16を保護する針キャップ18を有する。
【0013】
図2に示すように、薬剤注入装置100は更に、本体ケース1内に装着されるインナーケース11(可動部材の一例)と、インナーケース11の前端側に装着されるシリンジホルダ10(製剤収納部材の一例)と、検出センサ28(第1検出部の一例)と、検出センサ29(第2検出部の一例)と、モータ部40(
図11;駆動部の一例)とを備える。シリンジホルダ10は、インナーケース11に対して、
図2の矢印61の方向に挿入し、装着する。検出センサ28は、針16が装着されたシリンジホルダ10とインナーケース11との装着状態を検出する。モータ部40は、刺針・抜針駆動やピストン駆動を行う。
【0014】
以下、薬剤注入装置100の各部分について、詳細に説明する。
<1.1.1 シリンジホルダ10>
図3〜
図7は、シリンジホルダ10の構成及びその構成部材を示す。
図3は、シリンジホルダ10の全体及び針16を示す。
図4は、シリンジホルダ10の前端部分(
図3の点線の囲み部A)、特に針装着部17及びその周辺部分を拡大して示す。
図5は、針16を装着した状態のシリンジホルダ10を示し、このときの針装着を検出するための検出ロッド19(検出部材又は第1検出部材の一例)の状態を示す。
図6は、シリンジホルダ10を分解して示す。
図7は、シリンジホルダ10の後端部分(
図3の点線の囲み部B)、特にピストン挿入口15及びその周辺部分を拡大して示す。
【0015】
なお、
図3〜
図5においては、理解を助けるために針16に針キャップ18(
図1参照)を装着していないが、実際には安全のため、針16には針キャップ18が装着された状態で、針16の針装着部17への装着が行われる。
図3に示すように、シリンジホルダ10は、その前端側に針装着部17、後端側にはピストン14(
図12参照)の前端側が挿入されるピストン挿入口15を有する。シリンジホルダ10は内部に薬剤を収納した製剤シリンジ50が装着されている。なお、針装着部17は、製剤シリンジ50の一端に設けられる場合もある。
【0016】
図3及び
図4に示すように、シリンジホルダ10の針装着部17の近傍には、針の装着確認手段の一例である検出ロッド19(
図6参照)の前端側が露出して設けられている。
図3に示すように、検出ロッド19は、シリンジホルダ10内を後方側(ピストン挿入口15側)に延びている。検出ロッド19の後端側には、突起20がシリンジホルダ10の開口部21からシリンジホルダ10外に突出している。
【0017】
ここで、検出ロッド19について、更に詳細に説明を行う。
図6に示すごとく、シリンジホルダ10は、円筒形状のシリンジホルダカバー10aと、シリンジホルダカバー10aの内部に収納し且つ摺動可能に配置する検出ロッド19とを備える。検出ロッド19は、ロッド本体19aと、ロッド本体19aから延びる2本の分岐部19c、19cを有し、それら2本の分岐部19c、19cの先端部は、互いに対向するように屈曲している。
【0018】
一方、検出ロッド19のロッド本体19aは円筒状となっており、この円筒部分から後端部にかけて、略90度間隔で4本の延在部19bが設けられている。
このように、90度間隔で設けられた4本の延在部19bのうち、対向する1対に突起20が設けられ、他の対向する1対に針の装着を検出するための突起22が設けられている。突起22は、シリンジホルダカバー10aに検出ロッド19が装着されたとき、シリンジホルダカバー10aの開口部23(ここでは、対向する位置に1対設けられている)からシリンジホルダ10外に突出するように形成されている。同様に、突起20は、シリンジホルダカバー10aの開口部21(ここでは、対向する位置に1対設けられている)からシリンジホルダ10外に突出するように構成されている(
図5参照)。
【0019】
なお、シリンジホルダ10の後端部にはバネ(図示せず)が設けられ、このバネによって2対の延在部19bが前端側に付勢される。その結果、
図3や
図4に示すように、検出ロッド19の分岐部19c、19cの先端部が針装着部17の近傍に露出される。
図3及び
図4に示すように、針装着部17に針16が装着されると、針16により検出ロッド19の先端部が後方(矢印64の方向)に押される。その結果、
図5及び
図7に示すように、突起20は開口部21の後端まで移動する(矢印66の方向に移動する)。この突起20の後端側(ピストン挿入口15側)は、後端側ほど高さが低くなる傾斜面20aを有する。この突起20が検出ロッド19の後端側への移動に従って、後方(
図5において矢印66の方向)に移動する。傾斜面20aは、開口部21の後端に当接しながら、後方(
図7において矢印66の方向)に移動する。これにより、上述のごとく突起20は開口部21内の後端まで移動し、シリンジホルダ10内にほぼ沈み込むようになる。
【0020】
検出ロッド19は更に、
図7に示す矢印65の方向にスライドすると、突起22は、シリンジホルダ10から飛び出た状態で矢印65の方向にスライドする。このとき、突起22は、開口部23からわずかにシリンジホルダ10外に突出した状態となる。
このため、
図2に示すごとく、インナーケース11のシリンジホルダ装着口12から、シリンジホルダ10の後端側を挿入する際に、シリンジホルダ10の突起20及び検出ロッド19の突起22が、シリンジホルダ装着口12の開口縁に当接し、その挿入を阻害することは無い。
【0021】
なお、
図7に示すように、シリンジホルダ10の後端部外表面には、180度の間隔で対向配置した突起24を設けている。一方、
図2に示すように、インナーケース11内には、シリンジホルダ装着口12から後方に延在させた溝25(ここでは、インナーケース11内の対向する位置に設けられている)を設けている。このインナーケース11のシリンジホルダ装着口12から、シリンジホルダ10の後端側を挿入するとき、突起24は溝25内を後方に摺動しながら移動する。
【0022】
<1.1.2 インナーケース11>
図8に示すように、インナーケース11は、本体ケース1の内部に固定して設けられたメインフレーム60に対して矢印67方向に移動可能に設けられている。インナーケース11は、外側に露出し長手方向に延びる検出レバー27(第2検出部材の一例)を備える。検出レバー27は、検出レバー27の前端側(シリンジホルダ装着口側)の外表面に肉厚部に形成した補強板27a(
図9参照)と、を備える。
【0023】
<1.1.3 シリンジホルダ10とインナーケース11の装着>
次に、
図8、
図9に基づいて、インナーケース11内にシリンジホルダ10が装着された状態における検出レバー27と検出ロッド19の突起22との係合について説明する。
図8は、インナーケース11内にシリンジホルダ10が挿入された状態を示す。
図9は、検出レバー27の周辺部(
図8の点線の囲み部C)を拡大して示した図である。シリンジホルダ10は、インナーケース11に挿入後、時計方向(右回り:
図9における矢印68の方向)に回動される。この時計方向の回動に伴い、シリンジホルダ10の検出ロッド19の突起22は、開口部からインナーケース11外に突出し、この突出部分が上述のごとく矢印68の方向に回動させられる。これにより、検出レバー27が後方(
図9に示す矢印69の方向)に移動する。
【0024】
つまり、検出レバー27の前端側(シリンジホルダ装着口側)は、
図9に示すごとく、傾斜部27bが形成されている。この傾斜部27bを検出ロッド19の突起22が押すことにより、検出レバー27の後端部は後方(
図9の矢印69の方向)に移動することになる。
なお、検出レバー27の後端部はバネ(図示せず)で前方(矢印69とは反対の方向)側へ付勢されている。この付勢に抗して、検出レバー27は後方側に移動することにより、検出センサ28がこの後退を検出する。
【0025】
つまり、このシリンジホルダ10がインナーケース11に装着された状態は、シリンジホルダ10の針装着部17に針16が装着され、そして、シリンジホルダ10が、インナーケース11内に適切に装着された状態、すなわち、適切なスタンバイ状態が確保された状態でとなる。
また、
図9に示すように、検出レバー27の前端側(シリンジホルダ装着口側)の外表面には、補強板27aを設けている。
【0026】
補強板27aは、検出レバー27の前端側から後端側に延在させて形成しており、特に前端側がインナーケース11の外周方向に反らないようにしたものである。
つまり、検出ロッド19の突起22は、開口部23(
図7参照)からわずかしか突出していない。このため、このわずかな突出量でも検出レバー27に当接し、これを後方側に移動させるためには、検出レバー27の前端側がインナーケース11の外周方向に反らないようにすることが極めて重要となる。このように、前記補強板27aを設けることで、上記の作用が確保される。
【0027】
また、板状の検出レバー27の外表面側に、このような補強板27aを設けることにより、温度によって検出レバー27が伸びても、補強板27aの外表面側の方が伸びるため、検出レバー27の先端側は検出ロッド19の突起22方向に緩やかに湾曲することになる。これにより、検出ロッド19の突起22が当接することによって検出レバー27を後方側へ適切に移動させることができる。
【0028】
もちろん、温度が下がれば逆の現象が生じる懸念もある。しかし、本実施形態の薬剤注入装置100の使用する環境は、一般的な室温状態を基準としている。従って、使用時において、本体ケース1を手で持った状態では、その体温でわずかに温度上昇することが多く、温度の下降による検出レバー27の変形は実質的に発生しないものとする。
【0029】
以上のように、シリンジホルダ10とインナーケース11の装着は、
図3〜
図7に示すごとく、次のように行われる。まず、製剤シリンジ50をシリンジホルダ10内に、ピストン挿入口15側から挿入する。その後、針装着部17に針16を装着する。この時、針16は、
図4に示す矢印64の方向に移動し、検出ロッド19と係合することにより、検出レバー27を矢印64の方向に押す。この状態で、
図2に示すごとく、シリンジホルダ10を、インナーケース11のシリンジホルダ装着口12に対して矢印61の方向に挿入する。シリンジホルダ10は、インナーケース11に挿入後、時計方向(右回り:
図9における矢印68の方向)に回動される。この時計方向の回動に伴い、シリンジホルダ10の検出ロッド19の突起22は、開口部からインナーケース11外に突出し、この突出部分が
図9の矢印68の方向に回動させられる。これにより、インナーケース11の検出レバー27が後方(
図9に示す矢印69の方向)に移動する。
なお、上記シリンジホルダ10とインナーケース11の装着の際には、
図1に示すキャップ7は本体ケース1の前端側から取り外している。
【0030】
<1.1.4 モータ部40>
次に、
図11に示すモータ部40について説明する。
図11は、本体ケース1内部に搭載されているモータ部40を示す。モータ部40は、スライドモータ32(可動部材駆動部の一例)及びギアードモータ34(ピストン駆動部の一例)等の2つの主要なモータ等から構成されている。スライドモータ32は、刺針・抜針駆動手段の一例である。ギアードモータ34は、エア抜き動作及び薬剤の注入動作等を行うときに使用するピストン駆動手段の一例である。
【0031】
また、
図11において、ジョイント36は、インナーケース11内のピストン14(
図12参照)に連結する部材と係合し、ピストン14を保持する。これによりスライドモータ32の駆動に連動して、製剤シリンジ50を収納・装着した状態でインナーケース11とスライドケース37が移動し、刺針/抜針動作を行う。モータ部40は更に、ギアードモータ34の回転位置等を検出するエンコーダ35、及びジョイント36を覆うスライドケース37の突起部分にスライドスクリュー33を設けている。このスライドスクリュー33は、スライドモータ32と連結しており、スライドモータ32の回転に連動してスライドスクリュー33が、
図11において左右方向に移動する。これにより、ギアードモータ34及びジョイント36に連結されるインナーケース11を
図11における左右方向に移動させ、刺針動作又は抜針動作を行う。ギアードモータ34は、スライドモータ32の移動後(つまり、刺針/抜針動作後)、回転動作を行い、ピストン14に連結する部材を回転させることでピストン14を摺動させる。これにより、刺針動作の後の場合、製剤シリンジ50内の製剤が針16経由で人体に注入される。
【0032】
なお、ピストン14の移動量はエンコーダ35により監視している。ピストン14とジョイント36との間の連結部材は、例えば
図12に示すように、カップリング42及びカップリング爪42a等があり、これらの連結部材によりギアードモータ34の回転運動をピストン14の直線運動に変換し、エア抜き動作及び薬剤の注入動作を行う。
【0033】
上記のエア抜き動作をする際には、
図12〜
図14に示す検出センサ29(第2検出部の一例)により、後述するピストン14の原点位置確認が行われる。この検出のために、ピストン14の後端部には、ピストン突起14aが設けられている。このピストン突起14aによりポジションレバー30をバネ31に抗して、後方側(
図12において、左方向)に押す。この時に、ポジションレバー30の遮蔽板30aが検出センサ29の光を遮蔽するか否かによって、ピストン14の原点位置確認が行われる。
ここで、
図12に示すプッシュシャフト41は、カップリング42に圧入されており、その先端部分はピストン14と係合している。これによりギアードモータ34の回転運動を確実にピストン14に直線運動として伝達している。
【0034】
<1.1.5 検出センサ>
図10は、検出センサ28及びその周辺を示す要部拡大図である。検出センサ28は、本実施形態においては、光が遮蔽されたか否かで判別するフォトセンサを備えている。
図10において、検出センサ28は、上記のように、製剤シリンジ50と針16を装着したシリンジホルダ10をインナーケース11に装着したとき、インナーケース11に設けられた検出レバー27を利用して装着状態を検出する。詳しくは、シリンジホルダ10がインナーケース11に装着されると、検出レバー27が本体ケース1の後端側に移動し、この検出レバー27に設けられた遮蔽板27cが検出センサ28の光学素子を遮ることにより検出している。検出センサ28の光学素子は、発光素子28bと受光素子28c(
図13)から構成されており、この発光素子28bと受光素子28cの間に前記遮蔽板27cが入ることで光学的な検知を行っている。
【0035】
検出センサ29は、ピストン14が原点、つまり初期位置にあることを検出する。ここで、ピストン14の初期位置とは、インナーケース11に対するピストン14の製剤注入前の初期位置である。詳しくは、
図12〜
図14に示すように、検出センサ29の光学素子(発光素子29b,受光素子29c)と、これを遮蔽するポジションレバー遮蔽板30a(
図12、
図14参照)が設けられ、ピストン14が原点位置に移動してくることにより、このピストン14の後端部に設けたピストン突起14aが、原点側に移動しポジションレバー30と当接する。更にピストン14が原点側に移動するとバネ31が縮み、ポジションレバー30も原点位置に移動し、このポジションレバー30に設けられたポジションレバー遮蔽板30aが上記の光学素子(29b,29c)を遮蔽することで、ピストン14が原点に位置していることを検出する。
【0036】
図13は、上記の検出センサ28と、検出センサ29とを示す。検出センサ28と検出センサ29とは、インナーケース11の中心軸に対して90度の角度位置に配置されている。なお、この角度位置は、180度であってもよい。検出センサ28は、上述の通り、光学素子である発光素子28bと受光素子28cを有する。検出センサ29も同様に光学素子である発光素子29bと受光素子29cとを有する。つまり、検出センサ28、29は、光学的な検知を行っている。検出センサ28,29により光学的に検出された検出信号は、フレキシブルケーブル29aにより本体ケース(固定側)内のコネクタ43に送信され、内部の制御部103に入力される。検出センサ28、29は、インナーケース11の端部に設けられており、刺針/抜針動作時にはインナーケース11と一緒に移動する。フレキシブルケーブル29aを用いることにより、インナーケース11が自由に刺針・抜針動作できる。
【0037】
また、シリンジホルダ10に収納された製剤シリンジ50は、インナーケース11内にシリンジホルダ10と共に収納され、上記刺針/抜針動作においても、シリンジホルダ10や製剤シリンジ50と検出センサ28と検出センサ29との位置関係は変化しない。よって、検出精度を高めることができるとともに、シリンジホルダ10の装着状態を常時把握することができ、薬剤注入装置100の使用中における装着状態の異常を検知することにより安全性を向上させている。
【0038】
本実施形態では、シリンジホルダ10と針16の両方が装着された場合のみに検出センサ28が装着を検出することになる。よって、どちらか一方でも正しく装着されていないと検出センサ28は、装着を検出しないことになり、薬剤注入装置としては準備が完了しないと判断し、次の動作には移行せず、安全性が担保される。
【0039】
<1.2 薬剤注入装置100の動作>
本実施形態に係る薬剤注入装置100においては、まず、
図1の状態において、電源ボタン5を押し、次に開口部9から針キャップ18を取り外す。この状態で開口部9側を上方に向け、その後、エア抜きボタン3を押す。これにより、エア抜き動作を開始する。
【0040】
検出センサ28によるシリンジホルダ10及び針16の装着確認が終わると、スライドモータ32によりスライドスクリュー33(
図11参照)を介してスライドケース37及びインナーケース11全体を本体ケース1の前端側に移動させる。これにより針16の先端をキャップ7の開口部9よりも前方へ突出させ、針16を人体に刺針することになる。
その後、ギアードモータ34により、ピストン14を前方側に移動させれば、このピストン14の前端がシリンジホルダ10内に設けられている製剤シリンジ50の後端部の押し板(図示せず)を押す。これにより製剤シリンジ50内の薬剤の一部が針16の先端から流出し、製剤シリンジ50や針16内部のエア抜きが行われる。
【0041】
その後、完了ボタン4を押すと、前記スライドモータ32を所定の値になるように逆回転させ、
図1に示す初期状態に戻す。なお、完了ボタンを押さないで、自動で
図1の状態に戻すようにしてもよい。
上記のエア抜き動作が完了すると、次に、薬剤注入動作に移る。薬剤注入装置100のキャップ7を生体(人体の皮膚等)の注入位置に当接させ、この状態で、薬剤注入ボタン6を押せば、スライドモータ32によりスライドスクリュー33を介してインナーケース11全体が本体ケース1の前端側に移動する。これにより針16の先端がキャップ7の開口部9よりも前方へ突出し、生体に穿刺される。
【0042】
その後、ギアードモータ34により、ピストン14を前方側に移動させれば、このピストン14の前端がシリンジホルダ10内の製剤シリンジ50の後端部の押し板(図示せず)を押す。これにより製剤シリンジ50内の薬剤の一部が針16の先端から生体内に所定の注入量を注入されることになる。
【0043】
<1.3 薬剤注入装置100の制御回路>
図15は、本実施形態に係る薬剤注入装置100の制御回路及びその周辺構成を示したブロック図である。
図15において、制御部103は、充電池101に充電を行う充電回路102と接続されている。制御部103は更に、電源ボタン5、エア抜きボタン3、完了ボタン4、薬剤注入ボタン6、表示部2(報知部の一例)、音を出力するサウンダ106(報知部の一例)、振動機能を有するバイブレータ107(報知部の一例)、及びID管理用のバーコードリーダ104等の各種入出力部に接続され、更にモータドライブ回路111にも接続されている。モータドライブ回路111は、モータ電流を監視する電流検知部112、ピストン14の位置を検出する位置検出部113、及びモータの回転を監視するエンコーダ114からの信号を入力する。モータドライブ回路111は、ピストン14駆動用のギアードモータ34、及び刺針動作/抜針動作を行うスライドモータ32の駆動制御を行う。
【0044】
更に、制御部103は、針16及び/又はシリンジホルダ10のインナーケース11への装着状態を検出する検出センサ28と、ピストン14の原点を検出するための検出センサ29、及びキャップ7の装着を検出するキャップ検出センサ108に接続されている。制御部103は、検出センサ28からの信号に応じて、シリンジホルダ10及び/又は針16の装着状態を常時検出することが可能である。
【0045】
制御部103は、マイクロプロセッサを有し、メモリ105に格納したデータを参照したり演算したり、また製剤の注入量をメモリ105に記録する。
また、薬剤注入装置100は、本体ケース1の傾きを検出する加速度センサ109も設けている。この加速度センサ109は、3次元加速度センサであり、傾き情報を3次元的に検出する。
【0046】
<1.4 薬剤注入装置100による処理>
図16〜
図18は、本実施形態における動作を示すフロー図である。製剤シリンジ50を内蔵し針16を装着したシリンジホルダ10が本体ケース1のインナーケース11に装着された状態で、ユーザが薬剤注入装置100の電源ボタン5を押すことにより、起動する。
【0047】
<1.4.1 エア抜き動作>
ステップS101:電源ボタン5が押されると、シリンジホルダ10及び/又は針16の装着状態(以下及び図中においては、製剤/針の装着状態と呼ぶ場合もある)を検出センサ28により検出する。製剤/針の装着がOK(検出センサ28がON状態)の場合は、ステップS103へ移行するが、もし装着が不良(検出センサ28がOFF状態)であれば、ステップS102へ移行する。
【0048】
ステップS102:「製剤/針」の装着を促す旨の表示を本体ケース1の表示部2に表示し、シリンジホルダ10及び/又は針16の装着を待つ(ステップS101に戻る)。
ステップS103:キャップ7の装着状態をキャップ検出センサ108により検出する。キャップ検出センサ108がON状態(キャップが装着されている)であれば、ステップS105へ移行し、もしOFF状態(キャップ未装着)であれば、ステップS104へ移行する。
【0049】
ステップS104:「キャップ」の装着を促す旨の表示を表示部2に表示し、キャップの装着を待つ(ステップS103に戻る)。
ステップS105:上記の準備ができた状態で、「エア抜き動作」に移行する。本体ケース1の先端側(キャップ7が装着される側)を上に向けるように促す表示を表示部2に表示する。
【0050】
ステップS106:加速度センサ109により本体ケース1の傾きを検出する。加速度センサ109により、地面と垂直方向に対して所定角度の範囲内に入れば、ステップS107へ移行する。ここで、エア抜き動作を行うには、本体ケース1の先端側が少しでも上方に向いていればよいのであるが、好ましくは、所定角度は、地面と垂直上方向に対して−45度〜+45度の範囲等が想定される。より好ましくは、−30度〜+30度の範囲である方が効果的である。
【0051】
ステップS107:本体ケース1の先端が上方に向けられた状態で、「エア抜きボタン」の押下を促す旨の表示を表示部2に表示して、ユーザによるエア抜きボタン3の押下を待つ。
ステップS108:「エア抜きボタン」の押下を検出すると、ステップS109へ移行する。
【0052】
ステップS109:シリンジホルダ10及び/又は針16の装着状態を検出センサ28により再度検出する。装着に問題が無ければ、ステップS112(
図17)へ移行する。装着不良であれば、ステップS110に移行する。
ステップS110:シリンジホルダ10及び/又は針16の装着を促す表示を表示部2に表示する。
【0053】
ステップS111:ユーザにより、シリンジホルダ10及び針16の装着が行われ、再度装着状態を検出する(ステップS109に戻る)。
ステップS112:
図16に示す処理により「エア抜き動作」の準備ができた後、
図17に示すように、スライドモータ32をモータドライブ回路111により駆動し、シリンジホルダ10及びインナーケース11を刺針位置へ移動させる。
【0054】
ステップS113:位置検出部113の信号をモータドライブ回路111経由で制御部103(
図15参照)に入力することにより、シリンジホルダ10及びインナーケース11が刺針位置まで移動したかどうかを検出する。
ステップS114:刺針位置までの移動が完了すれば、スライドモータ32を停止させる。
【0055】
ステップS115:検出センサ28により、再度シリンジホルダ10及び/又は針16の装着状態を検出する。装着がOKなら、ステップS117に移行する。装着が不良の場合は、ステップS116に移行する。
ステップS116:異常を示すエラー表示を表示部2に行い、動作を中止し、エラー処理にて強制終了する。
【0056】
ステップS117:ギアードモータ34をモータドライブ回路111により駆動して、ピストン14を所定の量、移動させて、ピストン14の前端がシリンジホルダ10内に設けられている製剤シリンジ50の後端部の押し板(図示せず)を押す。これにより、製剤シリンジ50内の薬剤の一部が針16の先端から流出し、エア抜き動作が行われる。
ステップS118:ピストン14の所定量の移動の完了を検出する。このとき、制御部103に接続されているエンコーダ114などにより、キアードモータ34の移動量を検出する。
【0057】
ステップS119:ギアードモータ34を停止する。これにより、エア抜き動作は終了する。
ステップS120:モータドライブ回路111によりスライドモータ32を駆動して、シリンジホルダ10及びインナーケース11を抜針位置まで移動させる。
ステップS121:抜針位置までの移動を検出する。位置検出部113の信号をモータドライブ回路111経由で制御部103(
図15参照)に入力することにより、シリンジホルダ10及びインナーケース11が抜針位置まで移動したか(戻ったか)どうかを検出する。
ステップS122:スライドモータ32を停止させる。このとき、薬剤注入の準備が完了する。
【0058】
<1.4.2 刺針動作>
ステップS123:「薬剤注入可能」を示し、薬剤注入装置のキャップ7装着側を皮膚に当てることと「注入ボタン6」の押下を促す旨の表示を表示部2に行う。
ステップS124:制御部103により「注入ボタン6」の押下を検出する。
ステップS125:薬剤注入ボタン6が押下されれば、再度、シリンジホルダ10及び/又は針16の装着を検出する。装着がOKの場合は、ステップS128(
図18)の穿刺動作へ移行する。もし装着が不良の場合は、ステップS126に移行する。
ステップS126:シリンジホルダ10及び/又は針16の装着を行うよう警告表示を行う。
【0059】
ステップS127:ユーザにより製剤/針の装着が行われるとステップS101に戻る。
ステップS128:
図18に示すように、モータドライブ回路111によりスライドモータ32を駆動させて、シリンジホルダ10及びインナーケース11を刺針位置に移動させる。
【0060】
ステップS129:位置検出部113の信号をモータドライブ回路111経由で制御部103(
図15参照)に入力することにより、シリンジホルダ10及びインナーケース11が刺針位置に到達したかどうかを検出する。
ステップS130:検出後、スライドモータ32を停止する。この時、キャップ7は皮膚に当接した状態であるので、円筒形状したキャップ7の内部にある針16が、先端から突出することになり、皮膚を穿刺する。
【0061】
<1.4.3 薬剤注入動作>
ステップS131:シリンジホルダ10及び/又は針16の装着状態を検出する。装着がOKであれば、ステップS133に移行する。装着が不良の場合は、ステップS132に移行する。
【0062】
ステップS132:エラー表示を表示部2に表示し、動作を中止後、エラー処理にて強制終了する。
ステップS133:ギアードモータ34を駆動してピストン14を移動させる。これにより、製剤シリンジ50内の薬剤の注入が開始される。
ステップS134:エンコーダ114により所定量の薬剤に対応した所定距離分、ピストン14が移動したかどうかを検出する。所定の距離分移動したことを検出すると、ステップS135へ移行する。
【0063】
ステップS135:ギアードモータ34を停止しピストン14の移動を停止する。この結果、所定量の薬剤が生体内に注入されたことになる。
ステップS136:シリンジホルダ10及び/又は針16の装着状態を検出する。装着がOKであれば、ステップS137に移行する。装着が不良の場合は、ステップS132に戻り、エラー表示を表示部2に表示し、エラー処理にて動作を中止する。
【0064】
ステップS137:スライドモータ32によりシリンジホルダ10及びインナーケース11を抜針位置まで移動させる。つまり、皮膚から針16を抜くことになる。
ステップS138:位置検出部113の信号をモータドライブ回路111経由で制御部103(
図15参照)に入力することにより、シリンジホルダ10及びインナーケース11が抜針位置まで移動したことを検出する。
【0065】
ステップS139:抜針位置まで移動したことを検出すると、スライドモータ32を停止し、薬剤の注入動作を終了する。
以上のように、薬剤注入作業の各工程において、シリンジホルダ10及び/又は針16の装着状態を常時監視することにより、未装着、装着不良を早期に発見することができる。これにより、装置の異常状態を早期に発見できると共に、次の動作へ移るまでに中止することができ、その対処を迅速に行うことにより、ユーザが装置の異常状態や装着不良を早期に認識し、適切且つ安心して装置の使用をすることができる。
【0066】
<1.5実施形態1の特徴>
上記実施形態1に係る薬剤注入装置100は、本体ケース1に対し移動可能なインナーケース11と、インナーケース11に装着される針16を装着するシリンジホルダ10と、インナーケース11に装着され、針16の装着を検出するための検出ロッド19と、インナーケース11に設けられた検出センサ28とを備えることによって、シリンジホルダ10のインナーケース11への装着後は、針16、検出ロッド19、インナーケース11及び検出センサ28の位置関係は固定されるため、針/製剤の装着状態の検出の精度を高め、安全性を高めることができる。
【0067】
これにより、シリンジホルダ10及び針16の装着状態が常時監視でき、その装着状態が不十分で操作中にずれるような異常が発生しても、装置の動作の自動停止・警告表示等による対応ができる。
またインナーケース11の移動による経年劣化の影響によって、シリンジホルダ10及び針16の装着状態の検出の精度が悪くなることも防ぐことができる。
【0068】
<1.6 実施形態1の変形例>
次に、
図19〜
図20は、本実施形態の変形例に係る薬剤注入装置100の処理を示す。ここでは、上記
図17及び
図18に示すステップS112〜S139(エア抜き動作から薬剤注入動作終了まで)に対応する動作中のシリンジホルダ10及び/又は針16の装着状態を検出する検出センサ28の検出タイミングを変えている。
【0069】
図19、
図20においては、検出センサ28の検出確認をモータ部40の動作中にも行う。このため、モータ部40の動作中に不測の事態が発生してシリンジホルダ10及び/又は針16の装着状態が不良となっても、自動で検出し、稼動しているモータを緊急停止することができ、より安全性に寄与することができる。以下、
図19及び
図20を使って詳しく説明する。
【0070】
<1.6.1 エア抜き動作>
ステップS151:まず、シリンジホルダ10及び/又は針16をインナーケース11に装着後、キャップ7を装着して準備を行い、エア抜きボタン3が押された状態において、スライドモータ32を駆動し、シリンジホルダ10及びインナーケース11の刺針位置へ移動を開始する。
【0071】
ステップS152:シリンジホルダ10及び/又は針16の装着状態を検出する。このスライドモータ32の稼働中に、もし装着が不良であれば、ステップS155へ移行する。
ステップS153:シリンジホルダ10及び/又は針16等の装着に問題が無い場合は、位置検出部113の信号をモータドライブ回路111経由で制御部103に入力することにより、シリンジホルダ10及びインナーケース11が刺針位置に移動したかどうかを検出する。正しく刺針位置への移動が完了していればステップS154に移行する。
【0072】
ステップS154:刺針位置までの移動が完了すれば、スライドモータ32を停止する。
ステップS155:ステップS152において装着が不良であれば異常と判断し、スライドモータ32を停止する。
ステップS156:エラー表示を表示部2に行い、動作を中止し、エラー処理にて終了する。この時、サウンダ106により警告音を鳴らして通知したり、バイブレータ107を動作させて振動による通知をしたりしてもよい。
【0073】
ステップS157:ピストン14移動用のギアードモータ34をモータドライブ回路111により駆動して、ピストン14を移動させて、エア抜き動作を開始する。
ステップS158:ステップS157におけるギアードモータ34を駆動中においても、シリンジホルダ10及び/又は針16の装着状態を検出する。このギアードモータ34の駆動中に装着不良を検出すれば、ステップS164に移行する
ステップS159:上記の装着に問題ない場合、エンコーダ114により所定量のエア抜きに対応したピストン14の所定移動量の完了を検出する。制御部103に接続されているエンコーダ114などにより、キアードモータ34の移動量を検出することになる。
【0074】
ステップS160:ギアードモータ34を停止する。これにより、エア抜き動作は終了する。
ステップS161:シリンジホルダ10及びインナーケース11が抜針位置に移動させるべくスライドモータ32を駆動させる。
ステップS162:ステップS161におけるスライドモータ32の駆動中においても、シリンジホルダ10及び/又は針16の装着状態を検出する。装着不良を検出すれば、異常と判断しステップS155に戻り、スライドモータ32を停止し(ステップS155)、エラー表示(ステップS156)後、エラー処理にて動作を中止(強制終了)する。
【0075】
ステップS163:シリンジホルダ10及び/又は針16の装着に問題が無ければ、位置検出部113の信号をモータドライブ回路111経由で制御部103に入力することにより、シリンジホルダ10及びインナーケース11が抜針位置まで正しく移動したことを検出する。
ステップS164:ステップS158において、装着不良が検出されれば、異常と判断し、ギアードモータ34を停止し、エラー表示(ステップS156)後、動作を中止し、エラー処理にて強制終了する。
【0076】
ステップS165:シリンジホルダ10及びインナーケース11が抜針位置まで正しく移動したことを検出した場合は、スライドモータ32を停止する。
ステップS166:次に、「注射の準備完了」、「先端を皮膚に当てること」及び「薬剤注入ボタンの押下を促す」表示を表示部2に行い、薬剤注入動作へ移る。
【0077】
<1.6.2 刺針動作>
ステップS167:制御部103によりユーザによる薬剤注入ボタン6の押下を検出する。
ステップS168:シリンジホルダ10及び/又は針16の装着を確認し、装着OKの場合、ステップS171に移行する。
ステップS169:装着不良の場合は、シリンジホルダ10及び/又は針16の装着を行うよう警告表示を行う。
ステップS170:ユーザにより製剤/針の装着が行われるとステップS101に戻る。
【0078】
ステップS171:スライドモータ32を駆動し刺針動作を開始する。
ステップS172:ステップS171におけるモータ動作中においても、シリンジホルダ10及び/又は針16の装着状態を検出センサ28により検出する。
ステップS173:位置検出部113の信号をモータドライブ回路111経由で制御部103に入力することにより、シリンジホルダ10及びインナーケース11が刺針位置に到達したかどうかを検出する。
【0079】
ステップS174:検出後、スライドモータ32を停止し、ステップS176に移行する。この時、キャップ7は皮膚に当接した状態であるので、円筒形状したキャップ7の内部にある針16が、先端から突出することになり、皮膚を穿刺する。
ステップS175:ステップS172において、モータ稼働中にシリンジホルダ10及び/又は針16の装着不良を検出すると異常と判断し、駆動しているスライドモータ32を停止させ、エラー表示を表示部2に表示し、動作を中止後、エラー処理にて強制終了する。
【0080】
<1.6.3 薬剤注入動作>
ステップS176:ギアードモータ34を駆動してピストン14を移動させる。これにより、製剤シリンジ50内の薬剤の注入が開始される。
ステップS177:ステップS176におけるモータ稼働中にシリンジホルダ10及び/又は針16の装着不良を検出すると、ステップS182に移行する。
ステップS178:エンコーダ114により所定量の薬剤に対応した所定距離分、ピストン14が移動したかどうかを検出する。所定の距離分移動したことを検出すると、ステップS179へ移行する。また、到達したことを検出しない場合(つまり、到達していない場合)は、ステップS176へ戻る。
【0081】
ステップS179:ギアードモータ34を停止しピストン14の移動を停止する。この結果、所定量の薬剤が生体内に注入されたことになる。
ステップS180:スライドモータ32を駆動して、シリンジホルダ10及びインナーケース11を抜針位置まで移動させる。つまり、皮膚から針16を抜くことになる。
ステップS181:ステップS180におけるスライドモータ32の駆動中においても、シリンジホルダ10及び/又は針16の装着状態を検出する。装着不良を検出すれば、ステップS183に移行する。
【0082】
ステップS182:ステップS177においてシリンジホルダ10及び/又は針16の装着不良を検出すると、異常と判断し、駆動しているモータ34を停止させ、エラー処理にて動作を中止(強制終了)する(ステップS175)。
ステップS183:ステップS181においてシリンジホルダ10及び/又は針16の装着不良を検出すると、駆動しているスライドモータ32を停止させ、エラー表示(ステップS175)後、エラー処理にて動作を中止(強制終了)する。
【0083】
ステップS184:位置検出部113の信号をモータドライブ回路111経由で制御部103に入力することにより、シリンジホルダ10及びインナーケース11が抜針位置まで移動したことを検出する。
ステップS185:スライドモータ32を停止し、薬剤の注入動作を終了する。これにより、皮膚からの針16を抜く抜針動作が完了する。
【0084】
以上のように、本変形例による薬剤注入装置100の処理によれば、モータ部40の動作中に不測の事態が発生してシリンジホルダ10及び/又は針16の装着状態が不良となっても、常時監視しているため、自動で検出し、稼動しているモータを緊急停止することができ、より安全性に寄与することができる。
【0085】
<2.実施形態2>
<2.1 薬剤注入装置200の構成>
図21〜
図25を参照しながら、本発明の実施形態2に係る薬剤注入装置200について説明する。本実施形態においては、インナーケースにRF−ID(無線タグの一例)を有する検出部を設けて、装置本体側との無線通信を可能にした点で、上記実施形態1と異なる。なお、実施形態1と同様の構成要素について同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0086】
図21に示すように、薬剤注入装置200は、装置本体の一例である本体ケース1内に装着され、検出部270(第1検出部の一例)を有するインナーケース211(可動部材の一例)と、インナーケース211の前端側に装着されるシリンジホルダ10(製剤収納部材の一例)と、モータ部(駆動部の一例;図示省略)とを備える。実施形態1と同様に、シリンジホルダ10は、インナーケース211に対して、
図21の矢印61の方向に挿入し、装着する。実施形態1と同様に、モータ部は、刺針・抜針駆動やピストン駆動を行う。
【0087】
図22に拡大して示すように、検出部270は、インナーケース211の中央部付近、検出ロッド19の突起22の近傍に配されている。検出部270は、シリンジホルダ10及び/又は針16の装着を検出する。
図23は、本実施形態2に係る薬剤注入装置200の制御回路220及びその周辺構成を示したブロック図である。同図に示すように、検出部270は、検出センサ228とRF−ID271とを有する。また、装置本体(固定側)には、RF−ID271の検出情報を読み取るRF−IDリーダ272(受信部の一例)が設けられている。制御回路のその他の構成は、実施形態1と同様である。
【0088】
シリンジホルダ10のインナーケース211に対する装着は、シリンジホルダ10の突起22を利用して、検出する。つまり、突起22が矢印68方向に移動すると、検出部270の検出センサ228により検出される。ここで、検出センサ228の構成は、実施形態1と同様に、光学素子であるLEDなどの発光素子とフォトダイオードなどの受光素子とから構成される。検出センサ228は、突起22が発光素子と受光素子と間の光を遮断することにより、光学的な検知を行う。検出センサ228で検出された信号は、RF−ID271内のメモリに記憶され、装置本体(固定側)に設けられたRF−IDリーダ272(
図23)により、読み取られる。
【0089】
<2.2 薬剤注入装置200による処理>
図24及び
図25は、本実施形態における動作であって、エア抜き動作を示すフロー図である。なお、エア抜き動作後の処理(
図17のステップS112以降の処理)については、上記実施形態1と同様である。本実施形態2においては、製剤シリンジ50を内蔵し、針16を装着したシリンジホルダ10が本体ケース1のインナーケース211に装着された状態で、ユーザが薬剤注入装置100の電源ボタン5を押すことにより、起動する。
【0090】
<2.2.1 エア抜き動作>
ステップS201:電源ボタン5が押されると、まず針検出処理(詳細は
図25)を行い、制御部103は、針16(及び製剤シリンジ50)が装着されたかどうかを検出する。つまり、実施形態1のステップS101(
図16参照)の代わりに、本実施形態においては、
図25に示す針検出処理を行う。
【0091】
ステップS202:ステップS201において、制御部103は、RF−ID271からの検出信号に基づいて、シリンジホルダ10及び/又は針16の装着を検出する。装着がOKの場合は、ステップS204へ移行するが、もし装着が不良であれば、ステップS203へ移行する。
ステップS203:「製剤/針」の装着を促す旨の表示を本体ケース1の表示部2に表示し、シリンジホルダ10及び/又は針16の装着を待つ(ステップS201に戻る)。
【0092】
ステップS204:キャップ7の装着状態をキャップ検出センサ108により検出する。キャップ検出センサ108がON状態(キャップが装着されている)であれば、ステップS206へ移行し、もしOFF状態(キャップ未装着)であれば、ステップS205へ移行する。
ステップS205:「キャップ」の装着を促す旨の表示を表示部2に表示し、キャップの装着を待つ(ステップS204に戻る)。
【0093】
ステップS206:上記の準備ができた状態で、「エア抜き動作」に移行する。本体ケース1の先端側(シリンジホルダ10が装着される側)を上に向けるように促す表示を表示部2に表示する。
ステップS207:加速度センサ109により本体ケース1の傾きを検出する。加速度センサ109により、地面と垂直方向に対して所定角度の範囲内に入れば、ステップS208へ移行する。ここで、エア抜き動作を行うには、本体ケース1の先端側が少しでも上方に向いていればよいのであるが、好ましくは、所定角度は、地面と垂直上方向に対して−45度〜+45度の範囲等が想定される。より好ましくは、−30度〜+30度の範囲である方が効果的である。
【0094】
ステップS208:本体ケース1の先端が上方に向けられた状態で、「エア抜きボタン」の押下を促す旨の表示を表示部2に表示して、ユーザによるエア抜きボタン3の押下を待つ。
ステップS209:「エア抜きボタン」の押下を検出すると、ステップS210へ移行する。
【0095】
ステップS210:針検出処理(詳細は
図25)を行い、シリンジホルダ10及び/又は針16の装着を検出する。
ステップS211:ステップS210において、制御部103は、RF−ID271からの検出信号に基づいて、シリンジホルダ10及び/又は針16の装着が検出されたかどうかを判定する。装着がOKの場合は、
図17のステップS112へ移行するが、もし装着が不良であれば、ステップS212へ移行する。
【0096】
ステップS212:シリンジホルダ10及び/又は針16の装着を促す表示を表示部2に表示する。
ステップS213:ユーザにより、シリンジホルダ10及び/又は針16の装着が行われ、再度装着状態を検出する(ステップS210に戻る)。
【0097】
<2.2.2 針検出処理>
次に、
図24のステップS201及びS210における針検出処理について説明する。ここで、針検出処理とは、シリンジホルダ10及び/又は針16の装着状態を検出することである。
ステップS2011:検出センサ28により検出ロッド19の突起22の状態(位置)を検出する。検出ロッド19の突起22が発光素子の光を遮断していたら、「ON状態」、遮断していない場合は、「OFF状態」とする。
ステップS2012:検出センサ28のON/OFFに基づく検出情報をRF−ID271のメモリに記録する。
【0098】
ステップS2013:制御部103は、装置本体(固定)側のRF−IDリーダ272により、RF−ID271の検出情報を受信し、
図25のステップS202に移行し、検出センサ28がON状態であるかどうかを判定する。
【0099】
<2.3.実施形態2の特徴>
本実施形態係る薬剤注入装置200においては、上記実施形態1の特徴に加え、以下の特徴を有する。
【0100】
本実施形態2においては、検出部270がRF−ID271を備えるため、実施形態1のように、インナーケース11に細長い検出レバー27を設ける等、複雑な中継部品を必要とせず、検出部270の位置をインナーケース211の後端部ではなく中央部に配することができる。よって、シリンジホルダ10がインナーケース211に装着された時に、その装着を、シリンジホルダ10の検出ロッド19の突起22のみの移動によって検出することが可能である。
【0101】
また、RF−ID271はほぼ平面上に形成されるため、部品や取付場所の制約も大幅に緩和され、設計上もコスト的にも有効である。
更に、RF−ID271は無線であり、RF−IDリーダ272は装置本体の任意の場所に取り付けることができるため、商品設計上、制約が少なく、余分な部材も不要になるため、コストダウンや装置の小型化に寄与できる。