(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
第一のシンチレータ用ガーネット型結晶は、以下の一般式(1)で表される。
Gd
3−x−yCe
xRE
yAl
5−zGa
zO
12 (1)
式(1)中、0.0001≦x≦0.15、0≦y≦0.1、2<z≦4.5である。REはY、Yb及びLuから選択される少なくとも1種であるが、Yが好ましい。
【0021】
また、第二のシンチレータ用ガーネット型単結晶は、以下の一般式(2)で表される。
Gd
3−a−bCe
aLu
bAl
5−cGa
cO
12 (2)
式(2)中、0.0001≦a≦0.15、0.1<b≦3、2<c≦4.5である。
【0022】
また、第三のシンチレータ用ガーネット型単結晶は、以下の一般式(3)で表される。
Gd
3−p−qCe
pRE’
qAl
5−rGa
rO
12 (3)
式(3)中、0.0001≦p≦0.15、0.1<q≦3、1<r≦4.5である。RE'は、Y又はYbであるが、Yが好ましい。
【0023】
上記式(1)〜(3)で表されるガーネット型結晶は、γ線で励起させることができ、これにより、蛍光発光させることが可能になる。その発光ピーク波長は、460nm以上700nm以下とすることができ、より好ましくは、480nm以上550nm以下とすることができる。
【0024】
一般式(1)〜(3)で表されるガーネット型結晶は、Ce組成量を好適にすることでで、Gd
3+のエネルギー準位からCe
3+のエネルギー準位へのエネルギー遷移が促進され、結果として蛍光寿命が短くなり、長寿命発光成分が減少するとともに、発光量が高くなる。
具体的には、上記式(1)で表されるガーネット型結晶において、Ceの濃度xは、0.0001≦x≦0.15であり、好ましくは、0.001≦x≦0.15であり、より好ましくは、0.003≦x≦0.15である。
上記式(2)で表されるシンチレータ用ガーネット型結晶において、Ceの濃度aは、0.0001≦a≦0.15であり、好ましくは、0.001≦a≦0.10であり、より好ましくは、0.015≦a≦0.09である。
上記式(3)で表されるシンチレータ用ガーネット型結晶において、Ceの濃度pは、0.0001≦p≦0.15であり、好ましくは、0.001≦p≦0.10であり、より好ましくは、0.015≦p≦0.09である。
【0025】
一般式(1)〜(3)で表されるガーネット型結晶は、Ga組成量を好適にすることで、Gd
3+のエネルギー準位からCe
3+のエネルギー準位へのエネルギー遷移が促進され、結果として蛍光寿命が短くなり、長寿命発光成分が減少するとともに、発光量が高くなる。
上記式(1)で表されるガーネット型結晶において、Gaの濃度zは、2<z≦4.5である。zの下限は、2.2以上であることが好ましく、zの上限は、4.0以下であることが好ましい。
上記式(2)で表されるシンチレータ用ガーネット型結晶において、Gaの濃度cは、2<c≦4.5であり、好ましくは、3<c≦4.5であり、より好ましくは、3<c≦4.0である。
上記式(3)で表されるシンチレータ用ガーネット型結晶において、Gaの濃度rは、1<r≦4.5であり、好ましくは、2<r≦4.5であり、より好ましくは、3<r≦4.5である。
【0026】
上記式(1)〜(3)で表されるガーネット型結晶のγ線励起による蛍光発光の発光量は、20000photon/MeV以上とすることができる。
また、一般式(1)で表されるガーネット型結晶は、式(1)中0.003≦x≦0.15、2.5≦z≦3.5を満たす単結晶にすれば、γ線励起による蛍光発光の発光量を40000photon/MeV以上にすることができる。下限は、特に限定されないが、50000photon/MeV以下であれば、実用的である。
また、上記式(2)で表されるガーネット型結晶の発光量は、式(2)中0.1<b≦2.5、2.5≦c≦3.5を満たす単結晶にすれば、γ線励起による蛍光発光の発光量を35000photon/MeV以上にすることができる。
また、上記式(3)で表されるガーネット型結晶の発光量は、0.5≦q≦3、2≦r≦4を満たす結晶にすれば、γ線励起による蛍光発光の発光量を25000photon/MeV以上にすることができ、式(3)中0.5≦q≦1.5、2.5≦r≦3.5を満たす結晶にすれば、γ線励起による蛍光発光の発光量を35000photon/MeV以上にすることができる。
【0027】
本発明のガーネット型結晶の発光量とは、φ3×2mmサイズの結晶を25℃で測定したものをいい、例えば、
図1のような測定装置を用いて測定することができる。この測定装置では、暗箱10内に、
137Csγ線源11と、測定サンプルであるシンチレータ12と、光電子増倍管14とが備えられている。シンチレータ12は、光電子増倍管14に、テフロンテープ13を用いて物理的に固着されるとともに、光学接着剤等により光学接着されている。そして、
137Csγ線源11から、622keVのγ線をシンチレータ12に照射し、光電子増倍管14より出力される、パルス信号を前置増幅器15、波形整形増幅器16へと入力し、増幅・波形整形し、さらにマルチチャンネルアナライザ17へと入力し、パーソナルコンピュータ18を用いて
137Csγ線励起のエネルギースペクトルを取得する。得られたエネルギースペクトル中の光電吸収ピークの位置を既知のシンチレータであるCe:LYSO(発光量:33000photon/MeV)と比較し、光電子増倍管14の波長感度をそれぞれ考慮し、発光量を最終的に算出する。
この測定方法では、シンチレーションカウンティング法による発光量を測定しており、放射線に対する光電変換効率を求めることができる。そのため、シンチレータが持つ固有の発光量を測定することができる。
【0028】
上記式(1)〜(3)で表されるガーネット型結晶は、Gaを所定範囲で含有するため、γ線励起による蛍光発光の蛍光寿命(蛍光減衰時間)を100ナノ秒以下、好ましくは、80ナノ秒以下、より好ましくは、75ナノ秒以下にすることができる。また、上記式(1)〜(3)で表されるガーネット型結晶は、Gaを所定範囲で含有するため、長寿命成分も顕著に低減することができ、例えば、蛍光寿命が100ナノ秒を超える長寿命成分の強度を、蛍光成分全体の強度に対して20%以下にすることができる。
【0029】
上記式(1)〜(3)で表されるガーネット型結晶が、蛍光寿命を短くでき、かつ、長寿命成分を顕著に低減できる理由は、以下のように推察することができる。
一般的にガーネット型結晶は化学式C
3A
2D
3O
12で表される立方晶の結晶構造を有し、
図2のような模式図で示される。ここでCはドデカヘドラル(Dodechahedral)サイト、Aはオクタヘドラル(Octahedral)サイト、Dはテトラヘドラル(Tetrahedral)サイトで、各サイトがO
2−イオンで囲まれている。例えば、Gd、Al、Oから構成されるガドリニウムアルミニウムガーネットではGd
3Al
2Al
3O
12のように表記される。より一般的にはGd
3Al
5O
12と簡易的に表記され、Gdがドデカヘドラルサイトに、Alはオクタヘドラル及びテトラヘドラルサイトに配置することが知られている。ここで、例えばGd
3Al
5O
12におけるAlのサイトにGaを置換した場合には、Gaはオクタヘドラル及びテトラヘドラルサイトにランダムに置換されることが知られている。また、Y,Lu,Ybといった希土類元素をGdのサイトに置換した場合には、ドデカヘドラルサイトに置換されることが知られている。例えば、Gd
3Al
5O
12におけるAlのサイトにGaを置換した場合,結晶格子が変化し、格子定数はGd
3Al
5O
12で12.11Å、Gd
3Ga
5O
12で12.38Åといったように変化する。このように、AlのサイトへのGa置換により、結晶格子が変化すると、結晶場が変化し、エネルギーバンド構造も変化することになる。
上記一般式(1)〜(3)で表されるガーネット型結晶では、最適なGa置換量をとることで、エネルギーバンド構造が最適化され、Gd
3+のエネルギー準位からCe
3+のエネルギー準位へのエネルギー遷移現象が促進され、かつCe
3+の4fd5発光も促進される。したがって、蛍光寿命が短寿命化され、かつ長寿命成分が低減するものと考えられる。
【0030】
本発明において、γ線励起による蛍光発光の蛍光減衰時間は、例えば、上述の
図1で示す測定装置を用いて測定することができる。具体的には、
137Csγ線源11からγ線をシンチレータ12に照射し、デジタルオシロスコープ19を用いて、光電子増倍管14より出力されるパルス信号を取得し、蛍光減衰成分を解析することで、各蛍光減衰成分の蛍光減衰時間、及び、蛍光寿命成分全体の強度に対する各蛍光減衰成分の強度の割合を算出することができる。
【0031】
また、上記式(1)〜(3)で表されるガーネット型結晶は、高密度の結晶とすることができる。
具体的には、上記式(1)で表されるガーネット型結晶の密度は、6.5〜7.1g/cm
3の範囲とすることができる。
また、上記式(2)で表されるガーネット型結晶の密度は、6.7〜7.8g/cm
3の範囲にすることができる。
また、上記式(3)で表されるガーネット型結晶の密度は、5.3〜6.6g/cm
3の範囲にすることができる。
【0032】
つづいて、本発明のガーネット型結晶の製造方法について、以下に説明する。いずれの組成の結晶の製造方法においても、出発原料としては、一般的な酸化物原料が使用可能であるが、シンチレータ用結晶として使用する場合、99.99%以上(4N以上)の高純度原料を用いることが特に好ましく、これらの出発原料を、融液形成時に目的の組成となるように秤量、混合したものを用いる。さらにこれらの原料中には、特に目的とする組成以外の不純物が極力少ない(例えば、1ppm以下)ものが特に好ましい。特に発光波長付近に発光を有する元素(例えば、Tbなど)を極力含まない原料を用いることが好ましい。
【0033】
結晶の育成は、不活性ガス(例えば、Ar、N
2、He等)雰囲気下で行うことが好ましい。または、不活性ガス(例えば、Ar、N
2、He等)と酸素ガスとの混合ガスを使用してもよい。ただし、この混合ガスの雰囲気下で結晶の育成を行う場合、坩堝の酸化を防ぐ目的で、酸素の分圧は2%以下であることが好ましい。なお、結晶成長後のアニールなどの後工程においては、酸素ガス、不活性ガス(例えば、Ar、N
2、He等)、及び不活性ガス(例えば、Ar、N
2、He等)と酸素ガスとの混合ガスを用いることができる。混合ガスを用いる場合、酸素分圧は2%以下という制限は受けず、酸素分圧0%から100%までいずれの混合比のものを使用してもよい。
【0034】
本発明のガーネット型結晶の製造方法としては、マイクロ引き下げ法に加え、チョコラルスキー法(引き上げ法)、ブリッジマン法、帯溶融法(ゾーンメルト法)、縁部限定薄膜供給結晶成長(EFG法)及び熱間静水圧プレス燒結法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
また、使用できる坩堝及びアフターヒータの材料としては、白金、イリジウム、ロジウム、レニウム、またはこれらの合金が挙げられる。
【0036】
シンチレータ用結晶の製造においては、さらに高周波発振機、集光加熱器、及び抵抗加熱機を使用してもよい。
【0037】
以下に本発明のガーネット型結晶の製造方法のうち、シンチレータ用単結晶の製造方法について、マイクロ引き下げ法を用いた結晶製造法を一例として示すが、これに限定されるものではない。
【0038】
マイクロ引き下げ法については、高周波誘導加熱による雰囲気制御型マイクロ引き下げ装置を用いて行うことができる。マイクロ引き下げ装置は、坩堝と、坩堝底部に設けた細孔から流出する融液に接触させる種を保持する種保持具と、種保持具を下方に移動させる移動機構と、移動機構の移動速度制御装置と、坩堝を加熱する誘導加熱手段とを具備した単結晶製造装置である。このような単結晶製造装置によれば、坩堝直下に固液界面を形成し、下方向に種結晶を移動させることで、結晶を作製することができる。
【0039】
上記のマイクロ引き下げ法装置において、坩堝は、カーボン、白金、イリジウム、ロジウム、レニウム、またはこれらの合金製である。また、坩堝底部外周にカーボン、白金、イリジウム、ロジウム、レニウム、またはこれらの合金からなる発熱体であるアフターヒータが配置される。坩堝及びアフターヒータの誘導加熱手段の出力調整により、発熱量を調整することによって、坩堝底部に設けた細孔から引き出される融液の固液境界領域の温度及びその分布を制御することができる。
【0040】
上記の雰囲気制御型マイクロ引き下げ装置は、チャンバーの材質にはステンレス鋼(SUS)、窓材には石英を採用し、雰囲気制御を可能にするため、ロータリーポンプを具備し、ガス置換前において、真空度が0.13Pa(1×10
−3Torr)以下にすることを可能にした装置である。また、チャンバーへは付随するガスフローメータにより精密に調整された流量でAr、N
2、H
2、O
2ガス等を導入できるものである。
【0041】
この装置を用いて、上述の方法にて準備した原料を坩堝に入れ、炉内を排気して高真空にした後、ArガスもしくはArガスとO
2ガスとの混合ガスを炉内に導入することにより、炉内を不活性ガス雰囲気もしくは低酸素分圧雰囲気とし、高周波誘導加熱コイルに高周波電力を徐々に印加することにより坩堝を加熱して、坩堝内の原料を完全に融解する。
【0042】
続いて、種結晶を所定の速度で徐々に上昇させて、その先端を坩堝下端の細孔に接触させて充分になじませたら、融液温度を調整しつつ、引き下げ軸を下降させることで結晶を成長させる。
【0043】
種結晶としては、結晶成長対象物と同等ないしは、構造・組成ともに近いものを使用することが好ましいが、これに限定されない。また種結晶として方位の明確なものを使用することが好ましい。
【0044】
準備した材料が全て結晶化し、融液が無くなった時点で結晶成長は終了となる。一方、組成を均一に保つ目的及び長尺化の目的で、原料の連続チャージ用機器を取り入れてもよい。
【0045】
上記式(1)〜(3)で表されるガーネット型結晶においては、融点が低く、単結晶が量産しやすいという利点もある。具体的には、上記式(1)〜(3)で表されるガーネット型結晶の融点は、1700〜1900℃の範囲とすることができる。例えば、Lu
3Al
5O
12では融点は1980℃、Y
3Al
5O
12では融点は1930℃と高温であるが、本発明の結晶では融点が低いため、断熱材の損傷を低減することができ、また、結晶作製に坩堝を使用する際には坩堝の損傷も低減できる。加えて、構成元素である酸化ガリウムの蒸発も低減する効果を得ることもできる。さらに、式(1)においてzを3以上、式(2)においてcを3以上、式(3)において、rを3以上とすれば、より工業的な量産が可能になるため、好ましい。
【0046】
また、本発明のガーネット型結晶の製造方法の他の一例として、熱間静水圧プレス燒結装置を用いた透明セラミックスを作製する方法が挙げられる。この方法では、はじめに、各粉末原料をアルミナ坩堝に入れ、アルミナの蓋をした後、1500℃で2時間仮焼する。冷却後、純水で洗浄し乾燥したシンチレータ粉末は24時間ボールミル粉砕を行い、粒径1〜2μmのシンチレータ粉砕粉を得る。ついで、この粉砕紛に、純水を5重量%添加し、500kg/cm
2の圧力で一軸プレス成形し、その後、加圧力3ton/cm
2で冷間静水圧プレスを行って、理論密度に対し64%程度の成形体を得る。その後、得られた成形体をこう鉢に入れ、フタをして、1750℃、3時間の一次燒結を行い、理論密度に対し、98.5%以上の燒結体を得る。
【0047】
ここで、水素、窒素またはアルゴン雰囲気中で燒結する場合、こう鉢として、アルミナこう鉢を用いることが好ましいが、真空中で燒結する場合には、窒化ホウ素を用いることが好ましい。こうすることで、所望のガーネット型結晶を効率的に得ることができる。
【0048】
また、1350℃以上の昇温速度は、50℃/時とすることが好ましい。こうすることで、密度の高い均一な燒結体を得ることができる。
【0049】
そして、最後に、1550℃、3時間、1000atmの条件で熱間静水圧プレス燒結を行う。これにより、理論密度と同じ密度を有する燒結体を得ることができる。
【0050】
本発明におけるガーネット型結晶は、シンチレータ用結晶であり、受光器と組み合わせることで、放射線検出器としての使用が可能となる。さらに、これらの放射線検出器を放射線検出器として備えたことを特徴とする放射線検査装置としても使用可能である。放射線検査装置としては、例えば、PET、単一光子放射断層撮影(SPECT)、及びCTが例示される。
【0051】
本発明のガーネット型結晶は、放射線により励起されると、460nm以上700nm以下の蛍光ピーク波長で発光することができる。したがって、シリコン半導体から構成されるPDやSi−PMの感度の高い波長と一致させることができる。また、このときの発光量が高いため、高い位置分解能かつ高いS/Nを持つ放射線検出器が実現することができる。
【0052】
また、本発明のガーネット型結晶は、蛍光寿命(蛍光減衰時間)が100ナノ秒以下の蛍光成分を発光し、蛍光寿命が100ナノ秒を超える長寿命成分の強度を、蛍光成分全体の強度に対して20%以下にすることができる。したがって、本発明のガーネット型結晶を備えた放射線検出器は、蛍光測定のためのサンプリング時間が短くて済み、高時間分解能、すなわちサンプリング間隔を低減することができる。
【0053】
また、本発明のガーネット型結晶では、662keVでのエネルギー分解能を10%以下とすることができる。したがって、本発明のガーネット型結晶を備えた放射線検出器では、高精度な放射線検出が可能となる。
【0054】
また、本発明のガーネット型結晶は高密度であるため、感度の高い検出器を構成でき、装置の小型化も可能である。
【0055】
さらに、式(1)で表されるガーネット型結晶においては、式(1)において、0≦y≦0.1の範囲をとり、式(3)においては、Luを含まないため、Luの自然放射能を少なくすることができる。したがって、式(1)、(3)で表されるガーネット結晶を用いることで、バックグラウンドが低減でき、より精度の高い放射線検出器が得られるという利点もある。
【0056】
このように、本発明のガーネット型結晶は、高発光量、高いエネルギー分解能、高密度かつ短寿命の発光を有するため、本発明のガーネット型結晶を備える放射線検出器では、高速応答の放射線検出が可能となる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の具体例について、図面を参照して詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるわけではない。なお、以下の実施例では、Ce濃度は、特定の結晶中における濃度か、融液(仕込み)における濃度かのいずれかの記載となっているが、各実施例において、結晶中の濃度1に対して仕込み時の濃度1〜10程度となるような関係があった。
【0059】
(実施例A1)
マイクロ引下げ法により、Gd
2.997Ce
0.003Ga
2.2Al
2.8O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0060】
(実施例A2)
マイクロ引下げ法により、Gd
2.997Ce
0.003Ga
3Al
2O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0061】
(実施例A3)
マイクロ引下げ法により、Gd
2.97Ce
0.03Ga
3Al
2O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0062】
(実施例A4)
マイクロ引下げ法により、Gd
2.85Ce
0.15Ga
3Al
2O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0063】
(実施例A5)
熱間静水圧プレス燒結法により、Gd
2.97Ce
0.03Ga
3Al
2O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0064】
(実施例A6)
マイクロ引下げ法により、Gd
2.97Ce
0.03Ga
4Al
1O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。融点はLu
3Al
5O
12やY
3Al
5O
12よりも低く、1890℃以下であった。
【0065】
(実施例A7)
マイクロ引下げ法により、Gd
2.87Y
0.1Ce
0.03Ga
3Al
2O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0066】
(比較例A1)
マイクロ引下げ法により、Gd
2.97Ce
0.03Al
5O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0067】
(比較例A2)
マイクロ引下げ法により、Gd
2.994Ce
0.006Al
4Ga
1O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0068】
(比較例A3)
マイクロ引下げ法により、Gd
2.97Ce
0.03Ga
5O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0069】
比較例A1〜3、実施例A1〜7で得られた結晶をφ3×2mmサイズに加工・研磨した後、各々のシンチレータ特性を評価した。また、実施例及び比較例で得られた結晶をフォトルミネセンス法により励起・発光スペクトルを測定した。具体的には、分光蛍光光度計を用いて、
図3、4で示すようなプロファイルを取得した。
図3は、実施例
A3において得られた励起・発光スペクトルを示す。
図4は、比較例
A1において得られた励起・発光スペクトルを示す。
図3、4において、横軸は発光波長(nm)、縦軸は励起波長(nm)を表す。
また、
137Csからのγ線を照射し蛍光減衰時間、及び、発光量を測定した。発光量測定に関しては、得られたエネルギースペクトル中の光電吸収ピークの位置を既知のシンチレータであるCe:LYSO(発光量:33000photon/MeV)と比較し、光電子増倍管の波長感度をそれぞれ考慮し、発光量を算出した。測定温度は25℃とした。
【0070】
実施例A1〜7、比較例A1〜3で得られた結晶に関する諸特性を表1、2にまとめる。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
実施例A3で得られた結晶では、
図3で示すように、Gd
3+の4f4f発光由来の発光ピークは極めて微弱であった。一方、比較例A1の結晶は、
図4において示すように、発光波長530nm付近にCe
3+の4f5d発光由来の発光ピークが確認され、発光波長312nm付近にGd
3+の4f4f発光由来の発光ピークが確認された。
【0074】
また、表1の実施例A2〜4で示すように、Ce濃度が増加するに従い、蛍光寿命は短くなった。実施例A2において確認された385nsの長寿命成分は、Ce濃度が増加すると減少した。当該長寿命成分はGd
3+のエネルギー準位からCe
3+のエネルギー準位へのエネルギー遷移の結果生じるものと考えられ、Ce濃度が増加すると、エネルギー遷移の確率が増加し、長寿命成分が減少すると考えられる。同時に発光量も向上し実施例A3の結晶で最大となった。この測定結果からもGd
3+のエネルギー準位からCe
3+のエネルギー準位へのエネルギー遷移現象の存在が確認できる。
【0075】
また、実施例A3、比較例A1、2の結晶については、フォトルミネセンスにて観測された蛍光減衰曲線から、発光波長530nm付近のCe
3+の4f5d発光及び発光波長312nm付近のGd
3+の4f4f発光についてそれぞれ蛍光寿命(蛍光減衰時間)を測定した。結果を表3に示す。
【0076】
【表3】
【0077】
表3で示すように、発光波長530nm付近のCe
3+の4f5d発光を励起波長450nmで直接励起した場合には、44〜55nsの蛍光寿命を示し、Gaの増加とともに、蛍光寿命が短くなった。また、Ce
3+の4f5d発光をGd
3+の4f4f発光の励起波長である励起波長250nmで励起した場合には、Ga濃度の増加とともに、蛍光寿命が短くなり、加えて、比較例A1、2において300ns程度の長寿命成分が確認されたが、実施例A3では長寿命成分は確認されなかった。さらに、発光波長312nmのGd
3+の4f4f発光を250nmで励起した場合には、また、数μs〜235μsの蛍光寿命が得られ、Ga濃度の増加とともに、蛍光寿命が短くなった。以上の測定結果からもGd
3+のエネルギー準位からCe
3+のエネルギー準位へのエネルギー遷移現象の存在が確認できる。
【0078】
さらに、実施例A3で得られた結晶について
137Csからのγ線を照射しPMTを用いてエネルギースペクトルを測定した。結果を、
図5に示す。エネルギー分解能は3.6%であった。
【0079】
図6は、実施例A3で得られた結晶を光学接着剤を用いて光電子増倍管に接着し、
252Cf中性子線を照射して得られたエネルギースペクトルである。Gd
2.97Ce
0.03Ga
3Al
2O
12中に含まれるGdと中性子との(n,γ)反応により放出される中性子線がGd
2.97Ce
0.03Ga
3Al
2O
12に吸収されることで生じる中性子ピークを確認した。
【0080】
このように、式(1)で表されるセリウム付活ガーネット型結晶は、最適なGa濃度、Ce濃度をとることで、高い発光量と高いエネルギー分解能を持ち、さらに蛍光減衰時間を短くかつ長寿命成分も低減できることが分かった。また、460〜550nm付近に発光ピーク波長を有することから、シリコン半導体から構成されるPDやSi−PM等の460〜700nmに感度の高い波長を有する受光器との組み合わせに適している。さらに蛍光寿命は、30〜95ナノ秒程度であり、シンチレータ材料として非常に優れていることが分かる。
【0081】
なお、実施例A1〜4、6、7、比較例A2、3で得られた結晶は、いずれも透明な単結晶であり、実施例
A5の結晶は、透明セラミックスであり、比較例
A1の結晶は、不透明な多結晶であった。
【0082】
(実施例B1)
マイクロ引下げ法により、Gd
0.97Lu
2Ce
0.03Ga
3.1Al
1.9O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0083】
(実施例B2)
マイクロ引下げ法により、Lu
2.97Ce
0.03Ga
3.1Al
1.9O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0084】
(実施例B3)
マイクロ引下げ法により、Gd
0.97Lu
2Ce
0.03Ga
2.2Al
2.8O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0085】
(実施例B4)
熱間静水圧プレス燒結法により、Gd
0.97Lu
2Ce
0.03Ga
3.1Al
1.9O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0086】
(実施例B5)
熱間静水圧プレス燒結法により、Lu
2.97Ce
0.03Ga
3.1Al
1.9O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0087】
(比較例B1)
マイクロ引下げ法により、Lu
2.97Ce
0.03Al
5O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0088】
(比較例B2)
マイクロ引下げ法により、Lu
2.97Ce
0.03Ga
5O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0089】
(比較例B3)
マイクロ引下げ法により、Gd
0.97Lu
2Ce
0.03Al
5O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
(比較例B4)
マイクロ引下げ法により、Gd
0.97Lu
2Ce
0.03Al
4Ga
1O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
(比較例B5)
マイクロ引下げ法により、Gd
0.97Lu
2Ce
0.03Ga
5O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0090】
実施例B1〜5、比較例B1〜5で得られた単結晶をφ3×2mmサイズに加工・研磨した後、各々のシンチレータ特性を評価した。また、実施例及び比較例で得られた結晶をフォトルミネセンス法により励起・発光スペクトルを測定した。具体的には、分光蛍光光度計を用いて、
図7、8で示すようなプロファイルを取得した。
図7は、実施例B1において得られた励起・発光スペクトルを示す。
図8は、比較例B3において得られた励起・発光スペクトルを示す。
図7、8において、横軸は発光波長(nm)、縦軸は励起波長(nm)を表す。
【0091】
また、
137Csからのγ線を照射し蛍光減衰時間、及び、発光量を測定した。発光量測定に関しては、得られたエネルギースペクトル中の光電吸収ピークの位置を既知のシンチレータであるCe:LYSO(発光量:33000photon/MeV)と比較し、光電子増倍管の波長感度をそれぞれ考慮し、発光量を算出した。測定温度は25℃とした。
【0092】
実施例B1〜5、比較例B1〜5で得られた結晶に関する諸特性を表4、5にまとめる。
【0093】
【表4】
【0094】
【表5】
【0095】
実施例B1で得られた結晶では、
図7で示すように、Gd
3+の4f4f発光由来の発光ピークは極めて微弱であった。一方、比較例B3の結晶は、
図8において示すように、発光波長530nm付近にCe
3+の4f5d発光由来の発光ピークが確認され、発光波長312nm付近にGd
3+の4f4f発光由来の発光ピークが確認された。
【0096】
また、実施例B1、比較例B3、4の結晶については、フォトルミネセンスにて観測された蛍光減衰曲線から、発光波長530nm付近のCe
3+の4f5d発光および発光波長312nm付近のGd
3+の4f4f発光についてそれぞれ蛍光寿命(蛍光減衰時間)を測定した。結果を表6に示す。
【0097】
【表6】
【0098】
表6で示すように、530nm付近のCe
3+の4f5d発光を励起波長450nmで直接励起した場合には、44〜55nsの蛍光寿命を示し、Gaの増加とともに、蛍光寿命が短くなった。また、Ce
3+の4f5d発光をGd
3+の4f4f発光の励起波長である励起波長250nmで励起した場合には、Ga濃度の増加とともに、蛍光寿命が短くなり、加えて、比較例B3、4において300ns程度の長寿命成分が確認されたが、実施例B1では長寿命成分は確認されなかった。さらに、発光波長312nmのGd
3+の4f4f発光を250nmで励起した場合には、また、数μs〜121μsの蛍光寿命が得られ、Ga濃度の増加とともに、蛍光寿命が短くなった。以上の測定結果からもGd
3+のエネルギー準位からCe
3+のエネルギー準位へのエネルギー遷移現象の存在が確認できる。
【0099】
このように、式(2)で表されるセリウム付活ガーネット型結晶は、最適なGa濃度、Ce濃度をとることで、高い発光量を持ち、さらに蛍光減衰時間を短くかつ長寿命成分も低減できることが分かった。また、発光量450〜550nm付近に発光ピーク波長を有することから、シリコン半導体から構成されるPDやSi−PM等の400〜700nmに感度の高い波長を有する受光器との組み合わせに適している。さらに蛍光寿命は、30〜95ナノ秒程度であり、シンチレータ材料として非常に優れていることが分かる。
【0100】
なお、実施例B1〜3、比較例B1〜5で得られた結晶は、いずれも透明な単結晶であり、実施例B4、5の結晶は、透明セラミックスであった。
【0101】
(実施例C1)
マイクロ引下げ法により、Gd
1.97Y
1Ce
0.03Ga
3.1Al
1.9O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0102】
(実施例C2)
マイクロ引下げ法により、Gd
1.997Y
1Ce
0.003Ga
3.1Al
1.9O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0103】
(実施例C3)
マイクロ引下げ法により、Gd
1.85Y
1Ce
0.15Ga
3.1Al
1.9O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0104】
(実施例C4)
マイクロ引下げ法により、Gd
1.97Y
1Ce
0.03Ga
4Al
1O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0105】
(実施例C5)
マイクロ引下げ法により、Gd
1Y
1.97Ce
0.03Ga
3.1Al
3O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0106】
(実施例C6)
マイクロ引下げ法により、Gd
1Y
1.97Ce
0.03Ga
4Al
1O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0107】
(実施例C7)
マイクロ引下げ法により、Y
2.97Ce
0.03Ga
3.1Al
1.9O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0108】
(実施例C8)
マイクロ引下げ法により、Gd
1.997Y
1Ce
0.03Ga
2.2Al
2.8O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0109】
(実施例C9)
熱間静水圧プレス燒結法により、Gd
1.97Y
1Ce
0.03Ga
3.1Al
1.9O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0110】
(実施例C10)
熱間静水圧プレス燒結法により、Y
2.97Ce
0.03Ga
3.1Al
1.9O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0111】
(比較例C1)
マイクロ引下げ法により、Y
2.97Ce
0.03Al
5O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0112】
(比較例C2)
マイクロ引下げ法により、Y
2.97Ce
0.03Ga
5O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0113】
(比較例C3)
マイクロ引下げ法により、Gd
1.97Y
1Ce
0.03Al
5O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0114】
(比較例C4)
マイクロ引下げ法により、Gd
1.97Y
1Ce
0.03Al
4Ga
1O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0115】
(比較例C5)
マイクロ引下げ法により、Gd
1.97Y
1Ce
0.03Ga
5O
12の組成で表されるガーネット型結晶を作製した。
【0116】
実施例C1〜10、比較例C1〜5で得られた単結晶をφ3×2mmサイズに加工・研磨した後、各々のシンチレータ特性を評価した。また、実施例及び比較例で得られた結晶をフォトルミネセンス法により励起・発光スペクトルを測定した。具体的には、分光蛍光光度計を用いて、
図9、10で示すようなプロファイルを取得した。
図9は、実施例C1で得られた結晶の励起・発光スペクトルを示す。
図10は、比較例C3でされた結晶の励起・発光スペクトルを示す。
図9、10において、横軸は発光波長(nm)、縦軸は励起波長(nm)を表す。また、
137Csからのγ線を照射し蛍光減衰時間、及び、発光量を測定した。発光量測定に関しては、得られたエネルギースペクトル中の光電吸収ピークの位置を既知のシンチレータであるCe:LYSO(発光量:33000photon/MeV)と比較し、光電子増倍管の波長感度をそれぞれ考慮し、発光量を算出した。測定温度は25℃とした。
【0117】
実施例C1〜10、比較例C1〜5で得られた結晶に関する諸特性を表7、8にまとめる。
【0118】
【表7】
【0119】
【表8】
【0120】
実施例C1で得られた結晶では、
図9で示すように、Gd
3+の4f4f発光由来の発光ピークは極めて微弱であった。一方、比較例C3の結晶は、
図10において示すように、発光波長530nm付近にCe
3+の4f5d発光由来の発光ピークが確認され、発光波長312nm付近にGd
3+の4f4f発光由来の発光ピークが確認された。
【0121】
また、表7の実施例C1〜3で示すように、Ce濃度が増加するに従い、蛍光寿命は短くなった。また、実施例C2において確認された240nsの長寿命成分は、Ce濃度が増加すると減少した。当該長寿命成分はGd
3+のエネルギー準位からCe
3+のエネルギー準位へのエネルギー遷移の結果生じるものと考えられ、Ce濃度が増加すると、エネルギー遷移の確率が増加し、長寿命成分が減少すると考えられる。同時に発光量も向上し実施例C3の結晶で最大となった。この測定結果からもGd
3+のエネルギー準位からCe
3+のエネルギー準位へのエネルギー遷移現象の存在が確認できる。
【0122】
また、実施例C1、比較例C3、4の結晶については、フォトルミネセンスにて観測された蛍光減衰曲線から、発光波長530nm付近のCe
3+の4f5d発光および発光波長312nm付近のGd
3+の4f4f発光についてそれぞれ蛍光寿命(蛍光減衰時間)を測定した。結果を表9に示す。
【0123】
【表9】
【0124】
表9で示すように、530nm付近のCe
3+の4f5d発光を励起波長450nmで直接励起した場合には、48〜86nsの蛍光寿命を示し、Gaの増加とともに、蛍光寿命が短くなった。また、Ce
3+の4f5d発光をGd
3+の4f4f発光の励起波長である励起波長250nmで励起した場合には、Ga濃度の増加とともに、蛍光寿命が短くなり、加えて、比較例C3、4において〜224ns程度の長寿命成分が確認されたが、実施例C3では長寿命成分は確認されなかった。さらに、発光波長312nmのGd
3+の4f4f発光を250nmで励起した場合には、また、数μs〜166μsの蛍光寿命が得られ、Ga濃度の増加とともに、蛍光寿命が短くなった。以上の測定結果からもGd
3+のエネルギー準位からCe
3+のエネルギー準位へのエネルギー遷移現象の存在が確認できる。
【0125】
さらに、実施例C3で得られた結晶について
137Csからのγ線を照射しAPDを用いてエネルギースペクトルを測定した。結果を、
図11に示す。エネルギー分解能は3.6%であった。
【0126】
図12は実施例C1で得られた結晶を、光学接着剤を用いて光電子増倍管に接着し,
252Cf中性子線を照射して得られたエネルギースペクトルである。Gd
1.97Y
1Ce
0.03Ga
3.1Al
1.9O
12中に含まれるGdと中性子との(n,γ)反応により放出されるγ線がGd
1.97Y
1Ce
0.03Ga
3.1Al
1.9O
12に吸収されることで生じるフォトピークを確認した。
【0127】
このように、式(3)で表されるセリウム付活ガーネット型結晶は、最適なGa濃度、Ce濃度をとることで、高い発光量を持ち、さらに蛍光減衰時間を短くかつ長寿命成分も低減できることが分かった。また、発光量450〜550nm付近に発光ピーク波長を有することから、シリコン半導体から構成されるPDやSi−PM等の400〜700nmに感度の高い波長を有する受光器との組み合わせに適している。さらに蛍光寿命は、50〜86ナノ秒程度であり、シンチレータ材料として非常に優れていることが分かる。
【0128】
なお、実施例C1〜8、比較例C1〜5で得られた結晶は、いずれも透明な単結晶であり、実施例C9、10の結晶は、透明セラミックスであった。