(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポートを備えた弁座部材と、上記ポートを開閉する弁体と、当該弁体を内部圧力で上記弁座部材側へ向けて附勢する背圧室と、上記背圧室に上記ポートの上流側の圧力を減圧して導くパイロット通路と、上記パイロット通路の途中に設けられて上記背圧室内の圧力を制御するパイロット弁とを備えた減衰弁において、上記パイロット弁は、筒状であって内外を連通するとともに上記ポートに通じる透孔を有する弁収容筒と当該弁収容筒の端部に設けられた環状のパイロット弁座とを有するパイロット弁座部材と、上記弁収容筒内に摺動自在に挿入される小径部と、大径部と、当該小径部と当該大径部との間に設けられて上記透孔に対向する凹部とを有するパイロット弁体とを備え、上記パイロット弁座に大径部の端部を離着座させて上記パイロット通路を開閉することを特徴とする減衰弁。
上記パイロット通路から分岐されるフェール通路と、当該フェール通路の途中に設けたフェール弁とを備え、上記パイロット弁は、上記パイロット弁体が上記パイロット弁座から最大限離間すると上記パイロット通路の上記フェール通路の接続点より下流側を遮断することを特徴とする請求項1または2に記載の減衰弁。
上記パイロット弁は、上記パイロット弁体を上記パイロット弁座から離間する方向へ附勢するパイロット弁体附勢部材と、上記パイロット弁体附勢部材に抗して上記パイロット弁体を上記パイロット弁座に着座させる方向に推力を作用させるソレノイドとを備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の減衰弁。
上記第一弁座および上記第二弁座は、環状であって、当該第一弁座の内径より上記第二弁座の内径を大径に設定したことを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の減衰弁。
上記背圧室は、上記弁体の反弁座部材側に当接する筒状のスプールと、外周に上記スプールが軸方向移動可能に装着されるスプール保持部材とによって区画され、上記スプール保持部材の外周に上記スプールの内周に摺接するリングを装着し、当該リングの内周側に上記背圧室内の圧力を作用させたことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の減衰弁。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図示した一実施の形態に基づいて、この発明を説明する。一実施の形態における減衰弁Vは、
図1に示すように、ポート1aを備えた弁座部材1と、ポート1aを開閉する弁体3と、当該弁体3の反弁座部材側に当接する筒状のスプール30と、外周にスプール30が軸方向移動可能に装着されるスプール保持部材としてのバルブハウジング20と、スプール30とバルブハウジング20とで区画されて内部圧力で弁体3を弁座部材側へ押圧するようスプール30を附勢する背圧室P、スプール保持部材としてのバルブハウジング20の外周にスプール30の内周に摺接するリング29とを備えて構成されている。
【0016】
この減衰弁Vは、緩衝器Dに適用されており、緩衝器Dは、主として伸縮時にポート1aを通過する流体に抵抗を与えることによって減衰力を発生するようになっている。
【0017】
この減衰弁Vが適用される緩衝器Dは、たとえば、
図2に示すように、シリンダ10と、シリンダ10内に摺動自在に挿入されるピストン11と、シリンダ10内に移動挿入されてピストン11に連結されるロッド12と、シリンダ10内に挿入したピストン11で区画したロッド側室13とピストン側室14と、シリンダ10の外周を覆ってシリンダ10との間に排出通路15を形成する中間筒16と、さらに、中間筒16の外周を覆って中間筒16との間にリザーバ17を形成する外筒18とを備えて構成されており、ロッド側室13、ピストン側室14およびリザーバ17内には流体として作動油が充填されるとともにリザーバ17には作動油の他に気体が充填されている。なお、流体は、作動油以外にも、減衰力を発揮可能な流体であれば使用可能である。
【0018】
そして、この緩衝器Dの場合、リザーバ17からピストン側室14へ向かう作動油の流れのみを許容する吸込通路19と、ピストン12に設けられてピストン側室14からロッド側室13へ向かう作動油の流れのみを許容するピストン通路20とを備え、排出通路15はロッド側室13とリザーバ17とを連通し、減衰弁Vは、主流路1を排出通路15に接続して当該排出通路15の途中に設けられている。
【0019】
したがって、この緩衝器Dは、圧縮作動する際には、ピストン11が
図2中下方へ移動してピストン側室14が圧縮され、ピストン側室14内の作動油がピストン通路20を介してロッド側室13へ移動する。この圧縮作動時には、ロッド12がシリンダ10内に侵入するためシリンダ10内でロッド侵入体積分の作動油が過剰となり、過剰分の作動油がシリンダ10から押し出されて排出通路15を介してリザーバ17へ排出される。緩衝器Dは、排出通路15を通過してリザーバ17へ移動する作動油の流れに減衰弁Vで抵抗を与えることによって、シリンダ10内の圧力を上昇させて圧側減衰力を発揮する。
【0020】
反対に、緩衝器Dが伸長作動する際には、ピストン11が
図2中上方へ移動してロッド側室13が圧縮され、ロッド側室14内の作動油が排出通路15を介してリザーバ17へ移動する。この圧縮作動時には、ピストン11が上方へ移動してピストン側室14の容積が拡大して、この拡大分に見合った作動油が吸込通路19を介してリザーバ17から供給される。そして、緩衝器Dは、排出通路15を通過してリザーバ17へ移動する作動油の流れに減衰弁Vで抵抗を与えることによってロッド側室13内の圧力を上昇させて伸側減衰力を発揮する。
【0021】
上述したところから理解できるように、緩衝器Dは、伸縮作動を呈すると、必ずシリンダ10内から排出通路15を介して作動油をリザーバ17へ排出し、作動油がピストン側室14、ロッド側室13、リザーバ17を順に一方通行で循環するユニフロー型の緩衝器に設定され、伸圧両側の減衰力を単一の減衰弁Vによって発生するようになっている。なお、ロッド12の断面積をピストン11の断面積の二分の一に設定しておくことで、同振幅であればシリンダ10内から排出される作動油量を伸圧両側で等しく設定できるため、減衰弁Vが流れに与える抵抗を同じにしておくことで伸側と圧側の減衰力を同じに設定することもできる。
【0022】
つづいて、減衰弁Vは、本実施の形態では、中間筒16の開口部に設けたスリーブ16aに嵌合される弁座部材1と、弁座部材1に設けた組付軸1cの外周に浮動状態に装着されて第一弁座1bに離着座するサブ弁体2と、同じく弁座部材1に設けた組付軸1cの外周に装着される弁体3と、サブ弁体2と弁体3との間に形成した弁体間室Cと、ポート1aと弁体間室Cとを連通する制限通路2bとの他にも、弁座部材1の組付軸1cに連結されるスプール保持部材としての中空なバルブハウジング20と、バルブハウジング20内に収容される筒状のパイロット弁座部材21と、パイロット弁座部材21内に摺動自在に挿入されるパイロット弁体22と、パイロット弁体22に推力を与えるソレノイドSolとを備えており、弁座部材1とバルブハウジング20の内部に背圧室Pにポート1aの上流側の圧力を減圧して導くパイロット通路23が形成されている。
【0023】
弁座部材1は、
図1に示すように、スリーブ16a内に嵌合される大径の基部1dと、基部1dから
図1中右方へ突出する組付軸1cと、基部1dと組付軸1cとを軸方向に貫くように形成されてパイロット通路23の一部を形成する中空部1eと、中空部1eの途中に設けたオリフィス1fと、基部1dの
図1中左端から右端へ貫く複数のポート1aと、基部1dの
図1中右端に設けられてポート1aの出口の外周側に形成される環状の第一弁座1bとを備えて構成されている。
【0024】
ポート1aは、上記したように基部1dを貫いていて、ポート1aにおける基部1dの
図1中左端側の開口は、中間筒16で形成した排出通路15を介してロッド側室13内に連通され、ポート1aにおける基部1dの
図1中右端側の開口は、リザーバ17に連通されている。つまり、この緩衝器Dの場合、伸縮時にロッド側室13から排出通路15およびポート1aを介してリザーバ17へ作動油を排出するようになっていて、ポート1aの上流はロッド側室13となる。また、中空部1eの
図1中左端側の開口も、ポート1aと同様に、排出通路15を介してロッド側室13内に連通されている。
【0025】
なお、この弁座部材1の基部1dの
図1中左方側を小径にして形成した小径部1gをスリーブ16a内に嵌合しており、この小径部1gの外周には、シールリング24が装着されてスリーブ16aとの間がシールされ、基部1dの外周を介して排出通路15がリザーバ17へ通じてしまうことが無いようになっている。
【0026】
つづいて、弁座部材1の基部1dの
図1中右端には、第一弁座1bに離着座してポート1aを開閉するサブ弁体2が積層されている。このサブ弁体2は、環状であって、反弁座部材側に設けられて反弁座部材側に突出する環状の第二弁座2aと、この第二弁座2aの内周側から開口して弁座部材側面に通じる制限通路2bとを備えている。サブ弁体2が第一弁座1bに着座した状態では、ポート1aの出口端がサブ弁体2によって閉塞される。制限通路2bは、通過する作動油の流れに対して抵抗を与えるようになっており、詳しくは後述するが、ポート1aを通過した作動油が、制限通路2bを通過してサブ弁体2の背面側である反弁座部材側へ移動すると、サブ弁体2の正面側である弁座部材側と背面側とでは差圧が生じるようになっている。
【0027】
そして、このサブ弁体2は、弁座部材1の組付軸1cの外周に装着した環状のスペーサ25の外周に摺動自在に装着されている。スペーサ25は、その軸方向の厚みがサブ弁体2の内周の軸方向の厚みよりも厚く、サブ弁体2は、スペーサ25の外周を軸方向であす
図1中左右方向へ移動することができるようになっている。したがって、サブ弁体2は、弁座部材1に対して浮動状態に組付けられていて、弁座部材1に対して遠近することで第一弁座1bに離着座することができるようになっていて、第一弁座1bから離座するとポート1aを開放する。
【0028】
さらに、このサブ弁体2の背面側には、弁体3が積層されている。この弁体3は、環状の積層リーフバルブとされており、内周が組付軸1cに組付けられてスペーサ25と組付軸1cに螺子締結されるバルブハウジング20とで挟持されている。したがって、弁体3は、外周側の撓みが許容されてサブ弁体2の第二弁座2aに離着座することができるようになっている。
【0029】
また、弁体3の内周はスペーサ25に積層し、外周は第二弁座2aに着座するようになっているので、この弁体3とサブ弁体2との間には空間があり、この空間で弁体間室Cを形成している。この弁体間室Cは、制限通路2bを介してポート1aに連通されている。そして、弁体3が制限通路2bを介して弁体間室C内に作用する圧力で撓んで、第二弁座2aから離座すると、サブ弁体2との間に環状隙間が形成されて、ポート1aおよび制限通路2bを通過した作動油が弁体3とサブ弁体2の間を抜けてリザーバ17へ移動することができる。つまり、サブ弁体2が第一弁座1bに着座していても弁体3が撓むことで第二弁座2aから離座するとポート1aが開放されてリザーバ17に通じる。すなわち、弁体3は、ポート1aを開閉することができるようになっている。
【0030】
さらに、弁体3が撓むとともに、サブ弁体2がポート1aから受ける圧力で押し上げられると、サブ弁体2の全体がスペーサ25上をスライドして第一弁座1aから離座し、この場合には、ポート1aを通過した作動油は、サブ弁体2と第一弁座1aとの間に生じる環状隙間を介してリザーバ17へ排出される。なお、弁体3は、複数の環状板を積層した積層リーフバルブとして構成されているが、環状板の枚数は任意であり、また、第二弁座2aに着座する環状板の外周には切欠オリフィス3aが設けられている。オリフィスは、弁体3にではなくサブ弁体2の第二弁座2aに切欠などを形成して設けてもよいし、弁座部材1の第一弁座1bやサブ弁体2の第一弁座1bへの当接部位に設けるようにしてもよい。なお、制限通路2bは、サブ弁体2に設けられずとも、サブ弁体2の正面側と背面側を連通すればよいので他所に設けることも可能であるが、サブ弁体2に設けることで加工が容易となる。
【0031】
つづいて、弁体3の
図1中右方には、間座26、環状の板ばね27および間座28が順に積層されており、組付軸1cに組付けられる。そして、組付軸1cの先端である
図1中右端には、バルブハウジング20が螺着される。すると、組付軸1cに組み付けられたスペーサ25、弁体3、間座26、板ばね27および間座28が弁座部材1の基部1dとバルブハウジング20とで挟持されて固定される。なお、スペーサ25の外周に装着されるサブ弁体2は、スペーサ25の外周で固定される浮動状態とされており、軸方向に移動可能である。なお、板ばね27は、内周側が組付軸1cに固定されて外周が自由端となっている。
【0032】
バルブハウジング20は、
図1に示すように、筒状であって、
図1中左方の外径が小さい小径筒部20aと、
図1中右方の外径が大きな大径筒部20bと、大径筒部20bの外周に設けた環状溝20cと、環状溝20cから開口して大径筒部20bの内周へ通じる圧力導入用横孔20dと、大径筒部20bの
図1中左端から開口して圧力導入孔20dへ通じる圧力導入用縦孔20eとを備えており、小径筒部20aの内方に設けた螺子孔部20fに弁座部材1の組付軸1cが挿入されるとともに螺着されることによって、弁座部材1に連結される。また、大径筒部20bには、
図1中右端内周側に環状突部20gが設けられるほか、
図1中右端面から開口する複数の工具孔20hが設けてあって、この工具孔20hに工具を挿入して、バルブハウジング20を回転させて組付軸1cに容易に螺着することができる。
【0033】
また、バルブハウジング20の大径筒部20bの外周に設けた環状溝20cには、合成樹脂製のリング29が装着されており、このリング29の外周に筒状のスプール30が摺動自在に装着されている。スプール30は、筒状であって、下端に設けられて内方へ突出するフランジ30aと、このフランジ30aの下方に環状突起30bを備えている。つまり、スプール30は、バルブハウジング20に対して軸方向となる
図1中左右方向へ移動可能となっている。
【0034】
さらに、フランジ30aの
図1中右端には板ばね27の外周が当接しており、スプール30は、この板ばね27によって、
図1中左方である弁体3側へ向けて附勢されていて、環状突起30bが弁体3の反サブ弁体側面に当接している。
【0035】
そして、スプール30は、バルブハウジング20と協働して当該バルブハウジング20との間に背圧室Pを区画形成しており、この背圧室Pは、
図1中左端が板ばね27によって閉塞されていて、上記した圧力導入用縦孔20eおよび圧力導入用横孔20dを介してバルブハウジング20内に連通されている。バルブハウジング20内は、弁座部材1の中空部1eに通じており、オリフィス1fを介してポート1aの上流であるロッド側室13内に連通されている。よって、ロッド側室13から排出された作動油は、オリフィス1fを介して背圧室Pに導かれるようになっており、ポート1aの上流の圧力がオリフィス1fによって減圧されて背圧室Pに導入される。以上から、弁体3の背面には、スプール30を附勢する板ばね27による附勢力以外に、背圧室Pの内部圧力によって弁体3をサブ弁体2へ向けて押しつける附勢力が作用している。すなわち、緩衝器Dの伸縮作動する際に、サブ弁体2には、正面側からポート1aを介してロッド側室13内の圧力が作用するとともに、背面側からは弁体3を介して背圧室Pの内部圧力と板ばね27による附勢力が作用することになる。
【0036】
なお、スプール30のフランジ30aよりも
図1中右方の内径断面積に背圧室Pの圧力を乗じた力が弁体3をサブ弁体2へ押しつけるように作用し、第二弁座2aの内径断面積に弁体間室Cの圧力を乗じた力が弁体3をサブ弁体2から離間する方向へ作用し、スプール30のフランジ30aよりも
図1中右方の内径断面積と第二弁座2aの内径断面積の比が、背圧室P内の圧力に対する弁体3の開弁圧の比である増圧比を決定づけている。なお、板ばね27に孔を設けておき、背圧室P内の圧力を直接に弁体3に作用させてもよい。
【0037】
そして、ロッド側室13内の圧力によって、弁体間室C内の圧力が高まり弁体3の外周を
図1中右方へ撓ませようとする力が、背圧室Pの内部圧力と板ばね27による附勢力に打ち勝つと、弁体3が撓んで第二弁座2aから離座して弁体3とサブ弁体2との間に隙間が形成されてポート1aが開放される。この実施の形態では、第一弁座1bの内径より第二弁座2aの内径を大きくしていて、サブ弁体2がポート1a側の圧力を受ける受圧面積と、サブ弁体2が弁体間室C側の圧力を受ける受圧面積に差をもたせていて、制限通路2bによって生じる差圧がサブ弁体2を第一弁座1bから離座させる開弁圧に達しないと、サブ弁体2は第一弁座1bに着座したままとなる。他方、弁体3が撓んで開弁状態にあり、制限通路2bによって生じる差圧がサブ弁体2を第一弁座1bから離座させる開弁圧に達すると、サブ弁体2も第一弁座1bから離座してポート1aを開放するようになる。つまり、弁体間室Cの圧力に対するサブ弁体2の開弁圧の比であるサブ弁体2における増圧比より、弁体3における増圧比を小さく設定しており、サブ弁体2が開弁する際のロッド側室13内の圧力よりも弁体3が開弁する際のロッド側室13内の圧力の方が低くなるようになっている。すなわち、サブ弁体2の開弁圧よりも弁体3の開弁圧が低くなるように設定している。
【0038】
また、リング29が装着される環状溝20cに圧力導入用横孔20dが連通されているので、リング29は圧力導入用横孔20dから受ける圧力でスプール30に押しつけられるようになっており、ポート1aの上流の圧力が高くなるとリング29を押しつける力が大きくなるようになっている。リング29は、たとえば、フッ素樹脂、その他の合成樹脂の他、真鍮等のスプール30の摺動面の摩耗させにくい材料で形成されるとよい。さらに、リング29の環状溝20cへの装着を容易にするために、リング29にバイアスカット(割り)29aを入れておくとよい。また、リング29がバイアスカット29aを備えていることで、リング29が内周側からの圧力で拡径しやすくなり、スプール30の移動を抑制しやすくなる。
【0039】
つづいて、バルブハウジング20内であって螺子孔部20fよりも
図1中右方には、筒状のパイロット弁座部材21が収容されている。このパイロット弁座部材21は、有底筒状の弁収容筒21aと、当該弁収容筒21aの
図1中右端である端部の外周から外方へ向けて突出するフランジ部21bと、弁収容筒21aの側方から開口して内部へ通じる透孔21cと、弁収容筒21aの
図1中右端に軸方向へ向けて突出する環状のパイロット弁座21dと、フランジ部21bの外周に設けられたフランジ部21bより肉厚環状のバルブ抑え部21eとを備えて構成されている。
【0040】
また、バルブハウジング20の環状突部20gの外周には、環状の積層リーフバルブでなるフェール弁体31が装着されており、このフェール弁体31は、バルブハウジング20の大径筒部20bの
図1中右端とパイロット弁座部材21のバルブ抑え部21eとで挟持されて内周が固定されて外周を撓ませることができるようになっている。
【0041】
パイロット弁座部材21の弁収容筒21a内には、パイロット弁体22が摺動自在に挿入されている。詳しくは、パイロット弁体22は、弁収容筒21a内に摺動自在に挿入されるパイロット弁座部材側である
図1中左端側の小径部22aと、反パイロット弁座部材側である
図1中右端側の大径部22bと、小径部22aと大径部22bとの間に設けた環状の凹部22cと、反パイロット弁座部材側端の外周に設けたフランジ状のばね受部22dと、パイロット弁体22の先端から後端へ貫通する連通路22e、連通路22eの途中に設けたオリフィス22fと、ばね受部22dの反パイロット弁座部材側端の外周に設けた環状突起22gとを備えて構成されている。
【0042】
そして、パイロット弁体22の凹部22cは、パイロット弁体22がパイロット弁座部材21に対して軸方向へ許容される範囲内で移動する際、常に、透孔21cに対向して、パイロット弁体22が透孔21cを閉塞することが無いようになっている。
【0043】
また、パイロット弁体22にあっては、上述のように、凹部22cを境にして反パイロット弁座部材側の外径が大径になっており、大径部22bの
図1中左端にパイロット弁座21dに対向する環状の着座部22hを備え、パイロット弁体22がパイロット弁座部材21に対して軸方向へ移動することで着座部22hがパイロット弁座21dに離着座するようになっている。つまり、パイロット弁体22とパイロット弁座部材21とでパイロット弁Piを構成しており、着座部22hがパイロット弁座21dに着座するとパイロット弁Piが閉弁するようになっている。
【0044】
そして、ばね受部22dの反パイロット弁座部材側端には、環状突起22gの内周に嵌合する孔空きディスク32が積層されており、連通路22eが孔空きディスク32の孔(符示せず)を介して当該孔空きディスク32の
図1中右端側である背面側へ連通されている。また、ばね受部22dとフランジ部21bとの間には、パイロット弁体22を反パイロット弁座部材21側へ附勢するコイルばね33が介装されている。パイロット弁体22は、コイルばね33によって常に反バルブディスク21側へ附勢されており、後述するソレノイドSolからのコイルばね33に対向する推力が作用しないと、パイロット弁Piは開弁状態になるようになっている。なお、この場合、コイルばね33を利用して、パイロット弁体22をパイロット弁座部材21から遠ざかる方向へ附勢するようにしているが、コイルばね33以外にも附勢力を発揮することができる弾性体を使用することができる。
【0045】
さらに、パイロット弁体22は、パイロット弁座部材21の弁収容筒21a内に挿入されると、弁収容筒21a内であって透孔21cより先端側に空間Kを形成する。この空間Kは、パイロット弁体22に設けた連通路22eおよびオリフィス22fを介してパイロット弁Pi外に連通されている。これにより、パイロット弁体22がパイロット弁座部材21に対して
図1中左右方向である軸方向に移動する際、上記空間Kがダッシュポットとして機能して、パイロット弁体22の急峻な変位を抑制するとともに、パイロット弁体22の振動的な動きを抑制することができる。
【0046】
また、パイロット弁体22の外周には、バルブハウジング20の
図1中右方に積層されるフェール弁座部材34が設けられている。このフェール弁座部材34は、環状であって、外周にバルブハウジング20の大径筒部20bの外周に嵌合するソケット部34aと、バルブハウジング側端に設けた環状窓34bと、環状窓34bの外周に設けたフェール弁座34cと、環状窓34bの内周側に設けた環状凹部34dと、内周から環状凹部34dにかけて形成されて環状窓34bに通じる複数の通路34eと、反バルブハウジング側端の内周に内方へ突出するように設けた環状のフランジ34fと、反バルブハウジング側端に設けた複数の切欠34gと、ソケット部34aを貫く貫通孔34hとを備えて構成されている。
【0047】
フェール弁座部材34の上記フランジ34f以外の内径は、パイロット弁体22の移動を妨げることがない径に設定されているが、パイロット弁体22がソレノイドSolからの推力を受けない状態でコイルばね33によって附勢されて
図1中右方へ附勢されるとパイロット弁体22の環状突起22gの外周がフランジ34eに当接して、それ以上、パイロット弁体22が
図1中右方である反バルブハウジング側へ移動することができないようになっていて、フェール弁座部材34の反バルブハウジング側の開口端をパイロット弁体22で閉塞することができるようになっている。
【0048】
また、フェール弁座部材34をバルブハウジング20に積層すると、パイロット弁座部材21のバルブ抑え部21eが環状凹部34d内に嵌合されてフェール弁体31とともに、フェール弁座部材34とバルブハウジング20によって挟み込まれて固定される。そして、パイロット弁座部材21の弁収容筒21aがバルブハウジング20内に収容され、バルブ抑え部21eの外周をフェール弁座部材34に設けた環状凹部34dに嵌合することで、パイロット弁座部材21がフェール弁座部材34に径方向に位置決めされる。
【0049】
すると、フェール弁体31は、フェール弁座部材34に設けたフェール弁座34cに着座して、環状窓34bを閉塞する。そして、フェール弁体31は、環状窓34b側からの圧力の作用によって撓むとフェール弁座34cから離座して環状窓34bを開放して通路34eを貫通孔34hを介してリザーバ17に連通する。このようにフェール弁体31とフェール弁座部材34とでフェール弁Fを構成しており、通路34eおよび貫通孔34hとでパイロット通路23から分岐されて当該パイロット通路23をリザーバ17に連通するフェール通路を形成している。通路34eは、フェール弁座部材34のバルブハウジング側に設けた溝によって形成されているので加工が非常に容易であるが、溝以外にも孔によって形成することも可能である。
【0050】
以上、整理すると、上記した減衰弁Vは、ロッド側室13とリザーバ17とをポート1aにて連通し、このポート1aをサブ弁体2および弁体3で開閉するようになっている。また、このポート1aを通るルートとは別に、弁座部材1の中空部1e、バルブハウジング20内、パイロット弁座部材21に設けた透孔21c、パイロット弁座部材21内、パイロット弁体22に設けた凹部22c、フェール弁座部材34内、切欠34gを介して、ロッド側室13とリザーバ17とが連通され、これらでパイロット通路23を形成している。このパイロット通路23は、バルブハウジング20に設けた圧力導入用横孔20dと圧力導入用縦孔20eを通じて背圧室Pに連通されており、ポート1aの上流の圧力がパイロット通路23の途中に設けたオリフィス1fによって減圧されて背圧室Pに導入される。さらに、パイロット通路23は、パイロット弁Piによって開閉され、パイロット弁Piの開度を調節することで、背圧室P内の圧力を制御することができ、パイロット弁Piの開度を調節するためにパイロット弁体22に推力を与えるソレノイドSolを備えている。また、パイロット弁体22がコイルばね33によって附勢されて、パイロット弁体22の環状突起22gの外周がフランジ34eに当接して切欠34gとフェール弁座部材34内との連通が断たれた状態において、つまり、パイロット弁体22がパイロット弁座21dから最大限離間してパイロット通路23のフェール通路の接続点より下流側が遮断された状態において、パイロット通路23内の圧力が高まりフェール弁体31の開弁圧に達すると、フェール弁体31がフェール弁座34cから離座してパイロット通路23を通路34e、環状窓34dおよび貫通孔34hを介してリザーバ17に連通することができるようになっている。
【0051】
ソレノイドSolは、外筒18の開口に設けたスリーブ18aの外周に螺着される有底筒状のケース35内に収容されており、巻線38が巻回されるとともにケース35の底部に固定される環状のソレノイドボビン39と、有底筒状であってソレノイドボビン39の内周に嵌合される第一固定鉄心40と、ソレノイドボビン39の内周に嵌合される筒状の第二固定鉄心41と、同じくソレノイドボビン39の内周に嵌合されるとともに第一固定鉄心40と第二固定鉄心41との間に空隙を形成するために介装される非磁性体のフィラーリング42と、第一固定鉄心40の内周側に配置される筒状の可動鉄心43と、可動鉄心43の内周に固定されるシャフト44とを備えて構成されている。
【0052】
ケース35は、筒部35aと筒部35aの開口端を加締めて固定される底部35bとを備えて構成されており、筒部35aの開口端を加締める際に、底部35bとともに筒部35aの内周にボビンホルダ36が固定される。ボビンホルダ36は、ソレノイドボビン39を保持しており、ソレノイドボビン39は、ケース35にボビンホルダ36を介して取り付けられている。
【0053】
そして、ケース35をスリーブ18aに螺着すると、ケース35とスリーブ18aとの間に第二固定鉄心41の外周に設けたフランジ41aが挟持され、第二固定鉄心41によって、フィラーリング42および第一固定鉄心40がケース35内で固定される。
【0054】
可動鉄心43は、筒状であって、内周には可動鉄心43の両端から
図1中左右に伸びるシャフト44が装着されている。このシャフト44は、第一固定鉄心40の底部に設けられた環状のブッシュ45と、第二固定鉄心41の内周に嵌合される環状のガイド46の内周に保持された環状のブッシュ47によって軸方向移動可能に保持されており、これらブッシュ45,47によってシャフト44の軸方向の移動が案内されている。
【0055】
また、第二固定鉄心41を上記のようにケース35に固定すると、第二固定鉄心41の内周に嵌合されたガイド46がフェール弁座部材34に当接し、このフェール弁座部材34、パイロット弁座部材21、バルブハウジング20および弁座部材1が緩衝器Dに固定される。ガイド46がフェール弁座部材34の
図1中右端に当接しても切欠34gによって、パイロット通路23が閉塞されることは無い。
【0056】
シャフト44の
図1中左端は、パイロット弁体22の
図1中右端に嵌合された孔空きディスク32に当接しており、パイロット弁体22を介してコイルばね33の附勢力がシャフト44にも作用し、コイルばね33は、パイロット弁体22を附勢するだけでなく、ソレノイドSolの一部品としてシャフト44を附勢する役割をも果たしている。
【0057】
なお、第二固定鉄心41は、スリーブ18aの内周に嵌合する筒状のスリーブ41bを備えており、これにより、ソレノイドSolを構成する各部材がスリーブ18aに対して径方向に位置決めされている。なお、フェール弁座部材34の外周には切欠(符示せず)が設けられており、スリーブ41bとフェール弁座部材34との間が閉塞されないようになっており、この切欠によってパイロット通路23の流路面積が充分に確保され、また、スリーブ41bがスプール30と干渉しないようにその軸方向長さの寸法が設定されている。
【0058】
なお、ガイド46には、軸方向に貫く孔46aが設けられており、ガイド46の
図1中左側と右側とで圧力差が生じないようになっており、また、可動鉄心43にも軸方向に貫く孔43aが設けられており、可動鉄心43の
図1中左側と右側とで圧力差が生じて可動鉄心43の円滑な移動を妨げることが無いよう配慮されている。
【0059】
上述したところから、このソレノイドSolにあっては、磁路が第一固定鉄心40、可動鉄心43および第二固定鉄心41を通過するように形成されており、巻線38が励磁されると、第一固定鉄心40寄りに配置される可動鉄心43が第二固定鉄心41側に吸引され、可動鉄心43には
図1中左側へ向かう推力が作用するようになっている。
【0060】
そして、この可動鉄心43に一体となって移動するシャフト44は、
図1に示すように、パイロット弁Piのパイロット弁体22に当接しており、ソレノイドSolの推力がパイロット弁体22に伝わるようになっているとともに、ソレノイドSolの励磁時には、吸引される可動鉄心43を介してパイロット弁体22に
図1中左側へ向かう方向の推力を与えることができ、非励磁時にはコイルばね33に押されてパイロット弁体22がパイロット弁座21dから離座してパイロット弁Piを最大限に開くとともにパイロット弁体22をフェール弁座部材34のフランジ34fに着座させてパイロット通路23を遮断し、フェール弁Fを有効とするようになっている。
【0061】
また、ソレノイドSolの巻線38への通電量を調節することで、パイロット弁体22へ与える推力を調節でき、パイロット弁Piの開弁圧を制御することができる。詳細には、ソレノイドSolへ電流供給を行いパイロット弁体22に推力を作用させると、パイロット弁Piのパイロット弁体22がソレノイドSolの推力とコイルばね33の附勢力に抗してパイロット弁座21dに押しつけられる。パイロット通路23の上流側の圧力がパイロット弁体22に作用して、この圧力がパイロット弁体22をパイロット弁座21dから離座させる力とコイルばね33の附勢力の合力がソレノイドSolの推力を上回るようになると、パイロット弁Piは開弁してパイロット通路23を開放する、つまり、パイロット通路23の上流側の圧力が開弁圧に達するとパイロット弁Piは開弁してパイロット通路23を開放することになる。このように、ソレノイドSolへ供給する電流量の大小でソレノイドSolの推力の調節することでパイロット弁Piの開弁圧を大小調節することができる。パイロット弁Piが開弁すると、パイロット通路23のパイロット弁Piより上流側の圧力は、パイロット弁Piの開弁圧に等しくなり、パイロット通路23のパイロット弁Piより上流側の圧力が導入される背圧室Pの圧力も当該開弁圧に制御される。
【0062】
つづいて、減衰弁Vの作動について説明する。緩衝器Dが伸縮してロッド側室13から作動油が減衰弁Vを経てリザーバ17へ排出されると、減衰弁Vが正常動作する場合には、ポート1aおよびパイロット通路23の上流の圧力が高まり、ソレノイドSolに電流を供給して、パイロット弁Piの開弁圧を調節するようにすると、パイロット通路23におけるオリフィス1fとパイロット弁Piとの間の圧力が背圧室Pに導かれる。
【0063】
背圧室Pの内部圧力は、パイロット弁Piの開弁圧に制御され、当該開弁圧をソレノイドSolで調節することにより弁体3の背面に作用する圧力を調節することができ、ひいては、弁体3がポート1aを開放する開弁圧をコントロールすることができる。
【0064】
より詳細には、ロッド側室13内の圧力によって、弁体間室C内の圧力が高まり弁体3の外周を
図1中右方へ撓ませようとする力が、背圧室Pの内部圧力と板ばね27による附勢力に打ち勝つと、弁体3が撓んで第二弁座2aから離座して弁体3とサブ弁体2との間に隙間が形成されてポート1aが開放されるので、背圧室P内の圧力を大小調節してやることで、弁体3を第二弁座2aから離座させることができる弁体間室Cの圧力を大小調節することができる。つまり、ソレノイドSolへ与える電流量によって弁体3の開弁圧を制御することができるのである。したがって、減衰弁Vの減衰特性(ピストン速度に対する減衰力の特性)は、
図3に示すように、弁体3が開弁するまでは、減衰弁Vの摺動隙間およびオリフィス3aを作動油が通過するので、若干の傾きを持った特性(
図3中線X部分)となるが、弁体3が第二弁座2aから離座してポート1aを開くと、
図3中線Yで示すように傾きが小さくなる、つまり、減衰係数が小さくなる特性となる。
【0065】
また、先に述べたように、弁体3における増圧比をサブ弁体2における増圧比よりも小さくしているので、弁体3の開弁圧はサブ弁体2の開弁圧よりも小さいので、制限通路2bによって生じる差圧がサブ弁体2を第一弁座1bから離座させる開弁圧に達しないと、サブ弁体2は第一弁座1bに着座したままとなる。他方、弁体3が撓んで開弁状態にあり、緩衝器Dのピストン速度が速くなり、制限通路2bによって生じる差圧がサブ弁体2を第一弁座1bから離座させる開弁圧に達すると、サブ弁体2も第一弁座1bから離座してポート1aを開放するようになる。すると、弁体3のみが開弁状態にあって、ポート1aが制限通路2bのみを介してリザーバ17に連通される場合に対し、サブ弁体2が第一弁座1bから離座すると、ポート1aが制限通路2bを介さず直接にリザーバ17に連通され流路面積が大きくなるため、減衰弁Vの減衰特性は、
図3中線Zに示すように、弁体3のみが開弁状態にある場合に比較して傾きが小さくなる、つまり、減衰係数がさらに小さくなる特性となる。
【0066】
そして、ソレノイドSolへの通電量を調節して、パイロット弁Piの開弁圧を大小させると、
図3中の破線で示す範囲で、線Yおよび線Zを上下に移動させるように減衰弁Vの減衰特性を変化させることできる。
【0067】
また、弁体3における増圧比をサブ弁体2における増圧比よりも小さくすることができ、そうすることで弁体3の開弁圧はサブ弁体2の開弁圧よりも小さくなり、二段階にポート1aをリリーフするので、この減衰弁Vにあっては、パイロット弁Piの開弁圧を最少にするフルソフト時における低速時の減衰力を従来の減衰弁に比較して小さくすることができるとともに、減衰力の可変範囲を大きくすることができる。
【0068】
したがって、本発明の減衰弁Vによれば、緩衝器Dのピストン速度が低速域にある際にソフトな減衰力を出力でき減衰力過多となることがなく、ピストン速度が高速域になった際に要望されるハードな減衰力の上限も高めることができ減衰力不足を招くこともない。そのため、この減衰弁Vを緩衝器Dに適用すれば、減衰力可変範囲を大きくとることができ、車両における乗り心地を向上させることができる。
【0069】
そして、本実施の形態の場合、パイロット弁Piが、筒状であって内外を連通する透孔21cを有する弁収容筒21aと、当該弁収容筒21aの端部に設けられた環状のパイロット弁座21dとを備えたパイロット弁座部材21と、弁収容筒21a内に摺動自在に挿入される小径部22aと、大径部22bと、小径部22aと大径部22bとの間に設けられて透孔21cに対向する凹部22cとを備えたパイロット弁体22とを備え、パイロット弁座21dにパイロット弁体21における大径部22bの端部を離着座させるようにしている。よって、このパイロット弁Piは、
図4に示すように、パイロット弁体22をパイロット弁座部材21から抜け出る方向へ圧力が作用する受圧面積Aを小さくすることができ、受圧面積Aを小さくしながら、開弁時の流路面積を大きくすることができる。
【0070】
ここで、特開2009−222136号公報に開示された従来の減衰弁のようにパイロット弁Piを単にポートをポペット弁で開閉する開閉弁とする場合、パイロット弁の開弁量に対して流路面積量が小さいため、パイロット弁の弁座からの離間量が大きくなりやすく、
図5中破線で示すように、パイロット弁が開弁した後の弁体が上記静的に釣り合う位置(
図5中一点鎖線)に安定するまで長時間を要するとともに、上記オーバーシュートが顕著に現れるために、発生減衰力が急峻に変化するとともに、減衰力が安定するまで時間がかかる。
【0071】
これに対して、本実施の形態のパイロット弁Piにあっては、パイロット弁体22をパイロット弁座21dから離間させる圧力を受ける受圧面積を小さくしつつ、パイロット弁体22のパイロット弁座21dからの離間量に対する流路面積を大きくすることができるので、
図5中実線で示すように、上記ソレノイドSol等のアクチュエータの大型化を招くことなくパイロット弁体22の静的つり合い位置への収束時間を短くすることができるから、減衰弁Vの大型化を招くことなく、かつ、急峻な減衰力変化を抑制でき、応答性よく安定した減衰力を発揮することができる。
【0072】
つづいて、背圧室P内の圧力は、バルブハウジング20の外周に設けた環状溝20cにも作用し、この圧力は、環状溝20cに装着されたリング29を拡径させるようにリング29を押圧する。そのため、ソレノイドSolへの電流供給量が多くなってパイロット弁Piの開弁圧が高くなればなるほど、スプール30とこのスプール30の内周に摺接するリング29と間で生じてスプール30のバルブハウジング20に対する軸方向の移動を抑制する摩擦力が大きくなるので、サブ弁体2および弁体3が開きにくくなるので、パイロット弁Piの開弁圧を高くしていくと、ハード側の減衰特性はソフト側の減衰特性に比較して減衰係数が高くなる。このようにリング29を設けてリング29の内周に背圧室P内の圧力を作用させることで、ハード時における減衰力可変範囲が広がり、より、緩衝器Dの制振対象に適した減衰力の発生が可能となる。この場合、リング29がバイアスカット29aを有するので、スプール30の移動がより一層抑制できるため背圧室Pを高圧にした際の減衰係数を高める効果が顕著となり減衰係数上昇度合いを高めることができる。なお、リング29を廃止する場合、
図6に示すように、減衰係数の変化が生じなくなるが、そのようにしてもよい。
【0073】
また、リング29は、背圧室P内の圧力で常にスプール30へ向けて押圧されているので、リング29がスプール30とスプール保持部材としてのバルブハウジング20との間をシールする機能も発揮するので、スプール30とバルブハウジング20との間のクリアランスの大きさによらず、背圧室P内の圧力を狙い通りに調節でき、減衰弁Vが発生する減衰力はバラつきなく安定する。
【0074】
なお、上記したところでは、弁座部材1にサブ弁体2を積層し、このサブ弁体2に弁体3を積層させて、ポート1aを二段階に開放するようにしているが、サブ弁体2を廃止して、弁座部材1の第一弁座1bに直接に弁体3を積層して、この弁体3の背面側にスプール30を当接させて、背圧室Pの圧力で弁体3を第一弁座1aに向けて附勢するような構成を採用することも当然可能であり、このようにする場合、ポート1aを開放するのは弁体3のみであるから、減衰弁Vは、緩衝器Dに
図7に示すような減衰特性を発揮させることになる。
【0075】
また、減衰弁Vにあっては、ソレノイドSolへの供給電流に応じた推力をパイロット弁Piに与えることで背圧室Pの内部圧力を制御してサブ弁体2および弁体3における開弁圧を調節するため、パイロット通路23を流れる流量に依存することなく背圧室Pの内部圧力を狙い通りに調節でき、緩衝器Dのピストン速度が低速域にある場合にもソレノイドSolへの供給電流に対する減衰力変化が線形に近く、制御性が向上する。また、ソレノイドSolへの供給電流に応じた推力をパイロット弁Piに与えることで弁体3を附勢する背圧室Pの内部圧力を制御するので、減衰力のばらつきも小さくすることができる。
【0076】
フェール時には、ソレノイドSolへ電流供給が断たれ、パイロット弁体22がコイルばね33によって押圧されて、フェール弁座部材34の反バルブハウジング側の開口端が閉じられるが、ロッド側室13内の圧力が開弁圧に達するとフェール弁Fが開弁してパイロット通路23をリザーバ17へ連通するので、フェール弁Fが作動油の流れに対して抵抗となって、緩衝器Dはパッシブな緩衝器として機能できる。フェール弁Fの開弁圧の設定によって、緩衝器Dのピストン速度に対するフェール時に減衰特性を予め任意に設定することができる。
【0077】
なお、本実施の形態の場合、背圧室Pの圧力をソレノイドSolで制御するようにして、サブ弁体2および弁体3の開弁圧を制御するようにしているが、パイロット弁体22を駆動にあたり、ソレノイドSolを利用しているが、ソレノイドSol以外のアクチュエータを利用することも可能であり、さらには、ソレノイドSol等のアクチュエータでパイロット弁Piの開弁圧を制御せず、パイロット弁Piがパッシブな圧力制御弁として背圧室Pの圧力制御を行わなくとも、パイロット弁体22のパイロット弁座21dからの離間量に対する流路面積量を大きくできるので、パイロット弁体22を附勢するコイルばね33のストローク長も短くできるから、減衰弁の大型化を抑制でき、パイロット弁体22の変位におけるオーバーシュート量と収束時間を小さくできるから、安定した減衰力を発揮することができると言う本願発明の効果は失われることはない。
【0078】
また、パイロット弁Piがパッシブな圧力制御弁として背圧室Pの圧力制御を行わなくとも、弁体3における増圧比をサブ弁体2における増圧比よりも小さくすることができるから、減衰特性が二段階に変化するようにでき、ピストン速度が低速域にある際にソフトな減衰力を出力でき減衰力過多となることがなく、ピストン速度が高速域になった際ハードな減衰力を出力させることができ、減衰力不足を解消することができる。
【0079】
さらに、サブ弁体2は、弁座部材1に対し浮動状態で積層されているので、ポート1aを大きく開放することができ、サブ弁体2の開弁時における減衰係数を小さくすることができるようになって、ソレノイドSolによる減衰力制御が非常に容易となる。
【0080】
また、弁体3は、環状であって内周が弁座部材1に固定されて、外周が第二弁座2aに離着座するリーフバルブであるので、サブ弁体2を附勢してサブ弁体2がポート1aを開放した後で、第一弁座1bへ着座する位置への復帰を助けるため、緩衝器Dの伸縮方向の切り替わり時などで、ポート1aの閉じ遅れを生じさせないので、減衰力発生応答性が向上するとともに、別途、サブ弁体2の復帰を助けるばねの設置を要しない。弁体3は、リーフバルブ以外にも本実施の形態のサブ弁体2のように、ディスク状として弁座部材1に対して浮動状態に装着されるようにすることもできる。
【0081】
第一弁座1bを環状として第一弁座1bの内径より第二弁座2aの内径を大径に設定したので、弁体3が開弁してもサブ弁体2が開弁しない状態を確実に作り出すことができ、減衰弁Vの減衰特性を確実に2段階にリリーフする特性とすることができるとともに、第一弁座1bおよび第二弁座2aはともに環状なのでサブ弁体2の増圧比を容易に設計することができる。なお、第一弁座1bおよび第二弁座2aは、環状とされることで増圧比の設計を容易にできるが、環状に限定されるものではなく、任意の形状とされてもよい。
【0082】
さらに、附勢手段は、弁体3の反主弁座側に設けた背圧室Pを備え、当該背圧室P内の圧力で弁体3を附勢するので、背圧室Pを形成する部材の寸法管理で弁体3の開弁圧が製品毎にばらつくことがなく、安定した附勢力を弁体3に与えることができるとともに、大きな附勢力を弁体3に与えることができる。
【0083】
また、背圧室Pに、ポート1aの上流側の圧力を減圧して導くパイロット通路23を備えているので、ポート1aの上流側の圧力を利用してサブ弁体2と弁体3の開弁圧を設定することができ、背圧室P内の圧力を制御するパイロット弁Piを備えているので、サブ弁体2と弁体3の開弁圧を調節して減衰力を可変にすることができる。なお、この実施の形態の場合、パイロット通路23にオリフィス1fを設けてポート1aの圧力を減圧して背圧室Pへ導入しているが、オリフィス以外にもチョーク等の他の弁で減圧するようにしてもよい。
【0084】
次に、他の実施の形態の減衰弁V2について説明する。上記した減衰弁Vにあっては、サブ弁体2が環状であってスペーサ25の外周に摺動自在に装着されて、弁座部材1に対して浮動状態で取り付けているのみであったが、
図8に示すように、サブ弁体2を、弁座部材側へ附勢するサブ弁体附勢手段50を設けてもよい。具体的には、サブ弁体附勢手段50は、皿ばねとされていて、スペーサ25と弁体3との間に介装されてサブ弁体2を弁座部材1に設けた第一弁座1bへ着座させる方向へ附勢している。他の実施の形態における減衰弁V2を構成する部材は、上記した減衰弁Vの部材と同じ部材であり説明が重複するので、図面中に同じ符号を付して、その詳しい説明を省略することとする。このように、サブ弁体2がサブ弁体附勢手段50によって附勢されているので、サブ弁体2がポート1aを開放した後で、サブ弁体2が第一弁座1bへ着座する位置へ復帰することを助けることができ、さらに、副弁体3とサブ弁体2とが離間する状態にあってもサブ弁体附勢手段50は上記復帰動作を助けるから、緩衝器Dの伸縮方向の切り替わり時などで、ポート1aの閉じ遅れを確実に阻止することができ、減衰力発生応答性がさらに向上する。なお、サブ弁体附勢手段50は、サブ弁体2を第一弁座1bへ着座させる位置に復帰させることができるよう附勢力を発揮できればよいので、皿ばね以外のばね、ゴム等といった弾性体とされてもよい。
【0085】
さらに、
図9に示した別の実施の形態の減衰弁V3のように、サブ弁体附勢手段を弁体51に組み込むことも可能である。この場合の弁体51は、環状であって第一弁座1bに離着座するとともに第二弁座52aを備えた外輪部52と、同じく環状であってサブ弁体附勢手段として機能する内輪部53とを備えている。別の実施の形態における減衰弁V3を構成する部材は、上記した減衰弁Vの部材と同じ部材であり説明が重複するので、図面中に同時符号を付して、その詳しい説明を省略することとする。
【0086】
戻って、この場合のサブ弁体51は、内周側に薄板で形成される内輪部53を介して弁座部材1の組付軸1cの外周に装着されていて、内輪部53は内周側が組付軸1cに固定的に支持されると外周側が自由に撓むことができるようになっているから、組付軸1cにスペーサ25の代わりに間座54,55を装着し、間座54,55で内輪部53の内周を保持するようにしている。また、内輪部53には、オリフィスとして機能する制限通路53aが設けられており、弁体間室Cをポート1aに連通している。
【0087】
外輪部52は、環状であり、反弁座部材側の外周に反弁座部材側へ突出する環状の第二弁座52aを備え、反弁座部材側の内周には内輪部53の外周が嵌合する環状凹部52bを備えていて、内輪部53によって外輪部52が径方向に位置決めされてずれを生じることがないようになっている。
【0088】
このように、サブ弁体51自体にサブ弁体附勢手段として機能する内輪部53を組み込むようにしても、サブ弁体51自体が内輪部53によって附勢されているので、外輪部52がポート1aを開放した後で、外輪部52が第一弁座1bへ着座する位置へ復帰することを助けることができ、さらに、副弁体3と外輪部52とが離間する状態にあっても内輪部53は上記復帰動作を助けるから、緩衝器Dの伸縮方向の切り替わり時などで、ポート1aの閉じ遅れを確実に阻止することができ、減衰力発生応答性がさらに向上する。
【0089】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。