(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記バッテリカバーは、前記前進位置にあるときに、当該バッテリカバーの少なくとも一部が、前記バッテリ取付部に取り付けられた前記バッテリが当該バッテリ取付部から取り外されるときの前記バッテリの移動経路上に位置するようにされており、前記バッテリカバーが前記前進位置にある状態では当該バッテリを前記バッテリ取付部から取り外せないようにされた、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の穿孔機。
前記穿孔機本体部は前記バッテリを前記バッテリ取付部から上方に動かすことにより前記バッテリ取付部から取り外せるような構造とされており、前記バッテリカバーは、前記前進位置にあるときに、前記穿孔機本体部と前記バッテリとの間にできる隙間をその上方位置から覆うようにした、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の穿孔機。
前記バッテリ取付部は、前記バッテリを上下方向で案内する上下方向に延びるバッテリガイドを有しており、前記バッテリは、該バッテリガイドに沿って下降することにより前記バッテリ取付部に取り付けられ、上昇することにより前記バッテリ取付部から取り外されるようにされている、請求項5に記載の穿孔機。
前記穿孔機本体部に配置され、前記バッテリカバーが前記後退位置と前記前進位置との間で移動したことを検知するバッテリカバー位置検出手段をさらに備える、請求項1乃至8の何れか一項に記載の穿孔機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、バッテリを用いた穿孔機であって、埃や雨等からバッテリの接続端子を保護するようにした穿孔機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、
穿孔工具を回転駆動するためのモータを有する穿孔駆動部と、
前記モータに電力を供給するバッテリが取り付けられるバッテリ取付部を有し、前記穿孔工具を被加工物に対して近づけたり離したりするように前記穿孔駆動部を上下動可能に支持する穿孔機本体部と、
前記穿孔機本体部に取り付けられたバッテリカバーであって、前記バッテリ取付部に取り付けられた前記バッテリに対する後退位置と前進位置との間で移動可能とされ、前記前進位置においては、前記穿孔機本体部と前記バッテリとの間にできる隙間の少なくとも一部を覆うようにされたバッテリカバーと、を備える穿孔機を提供する。
【0007】
当該穿孔機においては、穿孔機本体部とバッテリとの間にできる隙間をバッテリカバーが覆うようになっているので、該隙間から埃や水が浸入してバッテリの端子間が短絡する危険性を低減することが可能となる。尚、本明細書及び特許請求の範囲の記載において「上下」とあるのは、本願発明に係る穿孔機の構成要件の位置的相対的関係を分かりやすくするために使用されるものであり、絶対空間における上下を意味するものではない。また、「バッテリに対する後退位置と前進位置との間で移動可能」とは、バッテリから離れた位置とバッテリに近づいた位置との間で移動可能であることを意味しており、当該穿孔機の前後方向での移動に限定するものではない。また後退位置と前進位置との間の移動経路は、直線的なものに限らずどのような経路であってもよい。
【0008】
好ましくは、前記バッテリカバーは、前記前進位置にあるときに、当該バッテリカバーの少なくとも一部が、前記バッテリ取付部に取り付けられた前記バッテリが当該バッテリ取付部から取り外されるときの前記バッテリの移動経路上に位置するようにされており、前記バッテリカバーが前記前進位置にある状態では当該バッテリを前記バッテリ取付部から取り外せないようにすることができる。
【0009】
バッテリカバーが前進位置にある状態ではバッテリを取り外すことができなくなっているので、バッテリが不用意に外れてしまうことを防止することが可能となる。
【0010】
具体的には、前記穿孔機本体部は前記バッテリを前記バッテリ取付部から上方に動かすことにより前記バッテリ取付部から取り外せるような構造とされており、前記バッテリカバーは、前記前進位置にあるときに、前記穿孔機本体部と前記バッテリとの間にできる隙間をその上方位置から覆うようにすることができる。
【0011】
より具体的には、前記バッテリ取付部は、前記バッテリを上下方向で案内する上下方向に延びるバッテリガイドを有しており、前記バッテリは、該バッテリガイドに沿って下降することにより前記バッテリ取付部に取り付けられ、上昇することにより前記バッテリ取付部から取り外されるようにすることができる。
【0012】
このようにバッテリが上方に動かすことにより取り外される構造となっているときには、穿孔機本体部とバッテリとの間の隙間が上下方向に延在することになり、該隙間への埃や水の浸入が特に発生しやすい。このような状況においても、バッテリカバーが該隙間を上方位置から覆うようになっているので、該隙間への埃等の侵入を効果的に防ぐことが可能となる。
【0013】
さらに具体的には、前記バッテリカバーが、前記穿孔機本体部に対して前記後退位置と前記前進位置との間で摺動可能に取り付けられているようにすることができる。
【0014】
好ましくは、前記バッテリカバーが係止部を有し、
前記穿孔機本体部が、前記バッテリカバーが前記後退位置にあるときに前記係止部と係合して前記バッテリカバーの前記摺動方向での移動を抑止する第1受部と、前記バッテリカバーが前記前進位置にあるときに前記係止部と係合して前記バッテリカバーの前記摺動方向での移動を抑止する第2受部とを有するようにすることができる。
【0015】
より好ましくは、前記バッテリカバーが、前記摺動方向に延びる弾性変形可能なアーム部を有し、前記係止部が前記アーム部の先端に設けられているようにすることができる。
【0016】
バッテリカバーの係止部が穿孔機本体部の第1及び第2受部に係合することにより、バッテリカバーを後退位置及び前進位置に係止しておくことができるので、バッテリカバーが不用意に移動してしまうことを防止することが可能となる。
【0017】
好ましくは、前記穿孔機本体部に配置され、前記バッテリカバーが前記後退位置と前記前進位置との間で移動したことを検知するバッテリカバー位置検出手段をさらに備えるようにすることができる。
【0018】
より好ましくは、前記バッテリカバー位置検出手段がリミットスイッチを有し、
前記バッテリカバーは、前記後退位置と前記前進位置との間で移動したときに、前記リミットスイッチのON/OFFを切り替えるようにすることができる。
【0019】
リミットスイッチによりバッテリカバーが前進位置から後退位置に移動したことを検知することができるので、バッテリカバーが前進位置にないときには、バッテリが正常位置に取り付けられていない又はバッテリが取り外されようとしていると判断することができ、そのような場合に操作者に対して警告をしたりモータを駆動できないようにしたりするなどの安全措置を取ることが可能となる。
【0020】
好ましくは、前記穿孔機本体部と前記バッテリカバーとの間に配置されたスプリングをさらに備え、該スプリングが前記バッテリカバーを前記後退位置から前記前進位置に向かう方向に付勢するようにすることができる。
【0021】
スプリングの付勢力によりバッテリカバーは前進位置に保持されるので、バッテリカバーが不用意に後退位置に向かって移動してしまうことを防止することが可能となる。
【0022】
以下、本発明に係る穿孔機の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態に係る穿孔機10は、
図1乃至
図5に示すように、穿孔工具(図示の例では環状カッター)44を回転駆動するためのモータ48を有する穿孔駆動部14と、モータ48に電力を供給するバッテリ16が取り付けられるバッテリ取付部28を有し前記穿孔工具44を被加工物に対して近づけたり離したりするように穿孔駆動部14を上下動可能に支持する穿孔機本体部12と、を備えたバッテリ式の可搬型の穿孔機10である。この穿孔機10は、穿孔機本体部12の底部位置に取り付けた電磁石式固定部18により、被加工物の所定の穿孔作業位置に固定された状態で、穿孔駆動部14の下端に取り付けられた穿孔工具44をモータ48により回転駆動し、穿孔機本体部12に取り付けられた送りハンドル66を回転させてラック64とピニオン65とからなるギア装置により穿孔駆動部14を穿孔機本体部12に対して下方に移動させることにより、穿孔工具44による被加工物への穿孔加工を行うものである。
【0025】
穿孔機本体部12は、
図3及び
図4に示すように、穿孔駆動部14を上下方向で移動可能に支持するフレーム20と、フレーム20に取り付けられるバッテリハウジング22とを有する。より具体的には、フレーム20は、穿孔駆動部14が取り付けられる前面壁部20−1及び電磁石式固定部18が取り付けられる下面壁部20−2によりL型をなしている。このL型をなすフレーム20に取り付けられたバッテリハウジング22は、その上部後方にバッテリ16を着脱可能に保持するように構成されている。フレーム20は、穿孔作業中に大きな負荷がかかる穿孔駆動部14と電磁石式固定部18とを支持するのに十分な強度を有する必要があり、本実施形態ではアルミニウム製としてその強度を確保している。一方、バッテリハウジング22は、主にバッテリ16を支持するためのものであるため、樹脂製として装置全体の軽量化を図っている。また、バッテリハウジング22を樹脂製とすることにより、バッテリ16の雌型接続端子16−5(
図6)が触れても短絡することがないようにもなっている。なお、ここでいう「L型をなしている」とは、フレーム20の構造の中にL字状の部分が構成されていることを意味し、例えば、下面壁部20−2の一部が前面壁部20−1よりもさらに前方にまで延在していて全体としての形状がL字状ではない場合であっても、そのフレームの構造の中にL字状の部分が構成されているのであれば、そのようなフレームもこの「L型をなしている」フレームに含まれることを意味している。
【0026】
図4に示すように、フレーム20には、前面壁部20−1と下面壁部20−2との右側の縁の間に設けられた右側リブ20−3と左側の縁の間に設けられた左側リブ20−4とが設けられている。なお、本明細書において「右側」及び「左側」とは穿孔機10を前から見たときの方向を意味する。この左右のリブ20−3、20−4により穿孔駆動部14を支えるフレーム20の強度を向上させるようにしている。左右のリブ20−3、20−4の上端部分の間には、左右の側面20−10、20−11の間で延びるハンドル取付用穴20−8が形成されている。このハンドル取付用穴20−8の中には、作業者が穿孔駆動部14を上下動させるために回転操作する送りハンドル66が取り付けられるシャフト23−1と、送りハンドル66によるシャフトの回転を穿孔駆動部14の上下動に変換するためのピニオン65(
図3,
図15)を収納する円筒状のギア機構部23とが設けられている。
【0027】
バッテリハウジング22は、中央部分で分割された右側部分22−1と左側部分22−2とからなっている。この右側部分22−1と左側部分22−2は、フレーム20を左右両側から挟み込むようにしてフレーム20に取り付けられる。バッテリハウジング22がフレーム20に取り付けられると、バッテリハウジング22とフレーム20との間には内部空間24(
図3)が形成される。この内部空間24内の左右のリブ20−3、20−4の間にはさまれた位置には、駆動制御回路36が前面壁部20−1と並行な向きで前面壁部20−1の後面に取り付けられている(
図4)。この駆動制御回路36は、バッテリ16から穿孔駆動部14のモータ48や電磁石式固定部18内の電磁石18−1に供給される電力を制御する。
【0028】
バッテリハウジング22には、フレーム20の左右のリブ20−3、20−4のそれぞれに形成された円形の係合凹部20−9に係合する6つの突起が円形状に並んだ係合突起部22−9が形成されており、バッテリハウジング22とフレーム20との係合がより強固になるようにしている。バッテリハウジング22は、その右側面22−14(
図2)及び左側面22−15(
図1)にそれぞれ設けられたネジ挿通穴22−11を通してフレーム20の右側面20−10及び左側面20−11にそれぞれ設けられた4つのネジ穴21にネジ82(
図1)によってフレーム20に固定される。さらに、右側部分22−1に設けられた6つのネジ挿通穴22−12(
図4)を通された細長いネジ(図示せず)を左側部分22−2に設けられた6つのネジ穴22−13(
図4)にネジ係合することにより、右側部分22−1と左側部分22−2とを直接連結固定するようになっている。このようにバッテリハウジング22がフレーム20に対して多くの箇所で固定されるようになっているので、バッテリハウジング22に大きな力がかかった際にも応力集中が起こりにくくなり、バッテリハウジング22が破損する危険性が低くなる。
【0029】
バッテリハウジング22の上部には取っ手26が設けられている。この取っ手26は、
図4に示すように、バッテリハウジング22の右側部分22−1に形成された右側取っ手部26−1と左側部分22−2に形成された左側取っ手部26−2とからなり、右側部分22−1と左側部分22−2とがフレーム20に取り付けられたときに右側取っ手部26−1及び左側取っ手部26−2が一つの取っ手26(
図1)を形成するようになっている。右側取っ手部26−1と左側取っ手部26−2は、右側取っ手部26−1から左側取っ手部26−2にまで延在する細長いネジ27(
図2)により連結固定されるようになっている。このネジ27が補強材としても機能して取っ手26の強度を大きくしている。
【0030】
図5に示すように、穿孔機本体部12のバッテリハウジング22には、その後方上部位置にバッテリ16を受け入れて取り付けるためのバッテリ収容空間(バッテリ取付部)28が形成されている。すなわち、バッテリハウジング22には、右側壁部28−3と、左側壁部28−4と、この左右の側壁部の間でフレーム20の前面壁部20−1の後側において該前面壁部20−1から離れて並行に延びる中間壁部28−1と、左右の壁部28−3、28−4の間で中間壁部28−1の下端縁から後方に延びる底面壁部28−2とが形成されていて、バッテリ収容空間28は、これら左右の壁部28−3、28−4、中間壁部28−1、及び、底面壁部28−2によって、その上部及び後部が開放された状態で画定されている。バッテリ収容空間28には、中間壁部28−1の僅か後方で左右両側の位置に上下方向に延びるバッテリガイド28−5が設けられており、バッテリガイド28−5と中間壁部28−1との間にガイド溝28−6を形成している。このガイド溝28−6にバッテリ16の前面16−1に上下方向に延びるように設けられたガイドレール16−2(
図6)が摺動係合することで、バッテリ16は上下方向で案内されるようになっている。中間壁部28−1はさらに、その下方位置に配置された雄型接続端子28−7と、その上方位置に配置されたバッテリ係止凹部28−8とを有する。これに対し、バッテリ16の前面16−1には、
図6に示すように、雌型接続端子16−5と、前後方向で変位可能とされ(図示しないバネ部材により前方に付勢されているバッテリ係止部16−4と、が設けられており、当該バッテリ16がバッテリガイド28−5に沿ってバッテリ収容空間28内に装填されたときに、雌型接続端子16−5が雄型接続端子28−7と係合してバッテリ16と駆動制御回路36とが電気的に接続され、同時に、バッテリ係止部16−4がバッテリ係止凹部28−8に嵌合して、バッテリ16がその位置から上下方向に動かないように保持される。バッテリ係止部16−4は、その下面が傾斜しており、バッテリ16がバッテリガイド28−5に沿って下方に摺動されるときに、この傾斜した下面が、バッテリ係止凹部28−8の上面壁部28−9によって押されて当該バッテリ係止部16−4が後退し、上面壁部28−9を下方に通過したときにバネ付勢力により前方に押し出され、バッテリ係止凹部28−8に嵌合されるようになっている。更に、本実施形態では、バッテリ係止部16−4は、バッテリ16内を上方に延びて、当該バッテリ16の上面前方に形成されている傾斜した(後述する)カバー係合面16−6の幅方向中央部分の開口16−6aから同カバー係合面16−6とほぼ面一にして露出されている傾斜面16−3部分まで延びており、バッテリ16をバッテリ収容空間28から取り外すときは、この傾斜面16−3を押して当該バッテリ係止部16−4を後方に変位させるようになっている。バッテリハウジング22の中間壁部28−1の上部には前後方向に延びて後ろ向きに開口する上段部22−16aと下段部22−16bとからなるバッテリカバー収容部22−16(
図3、4)が形成されており、このバッテリカバー収容部22−16にバッテリカバー30が収容されている。バッテリカバー30は、
図9Aのような形状を有しており(その詳細は後述する)、バッテリカバー収容部22−16内において、バッテリ16に対して後退した後退位置(
図5,
図7)とバッテリ16に対して前進した前進位置(
図8)との間で前後方向に摺動可能とされている。
【0031】
バッテリ16を穿孔機本体部12のバッテリ収容空間28に取り付ける際には、まずバッテリカバー30を穿孔機本体部12内に前方に押し込んで
図5に示す後退位置にまで移動させ、バッテリ収容空間28の上部を開放する。そして、バッテリ16をバッテリ収容空間28の開放された上部からバッテリ収容空間28内に下方に向かって挿入する。バッテリ16はバッテリガイド28−5により案内されながら下方に移動されてバッテリ収容空間28に収容される(
図7)。このとき穿孔機本体部12の雄型接続端子28−7とバッテリ16の雌型接続端子16−5とが接続されるとともに、バッテリ16に設けられたバッテリ係止部16−4が中間壁部28−1のバッテリ係止凹部28−8と係合してバッテリ16が移動しないように保持され、バッテリ16がバッテリ収容空間28に取り付けられる。次に、バッテリカバー30を穿孔機本体部12内からバッテリ16に向かって引き出して
図8に示す前進位置にまで移動させる。この前進位置においては、バッテリカバー30はバッテリハウジング22の中間壁部28−1とバッテリ16の前面16−1との間にできる上下方向に延びる隙間を上方から覆う位置にあるので、切粉や水などが該隙間に入ることが防止される。従って、それら切粉や水などが接続端子16−5、28−7にまで侵入して短絡が生じたりする危険性を低減する。なお、底面壁部28−2は前方から後方に向かって下方に僅かに傾斜しており、この傾斜によりバッテリ収容空間28に水が侵入した場合でもその水が自然に排出されるようになっている。また、バッテリ16の雌型接続端子16−5は、バッテリ16がバッテリ収容空間28に取り付けられた状態において下を向くようになっており、水や埃が中間壁部28−1との間の隙間から万一侵入してきたとしても雌型接続端子16−5にまでは到達しにくいようになっている。
【0032】
バッテリカバー30は、バッテリ16に対向する側に傾斜面30−7を有し、
図8の前進位置においては、この傾斜面30−7がバッテリ16の上面前方に形成されている傾斜したカバー係合面16−6(
図6、
図7)に当接するようになっている。バッテリハウジング22からのバッテリ16の取り外しは、バッテリ係止部16−4の傾斜面16−3を押して、バッテリ係止部16−4をバッテリ16内に収納した状態でバッテリ16を上方に向かってバッテリ収容空間28から引き出すことにより行われるが、バッテリカバー30がこの前進位置にある状態では、バッテリカバー30が干渉してバッテリ16を上方に引き出して取り外すことができないようになっている。すなわち、前進位置にあるバッテリカバー30の一部が、バッテリ16をバッテリ収容空間28から上方に引き出してバッテリ収容空間28から取り外すときの該バッテリ16の移動経路上に位置しているため、バッテリカバー30が前進位置にある状態ではバッテリ16をバッテリハウジング22からから取り外せなくなっている。バッテリ16を取り外すには、バッテリカバー30を穿孔機本体部12内に押し込んで
図7に示す後退位置に移動させた状態で、バッテリ16を上方に引き出すようにする必要がある。このようにバッテリカバー30がバッテリ16の移動を制限することで、バッテリ16が不用意に外されることを防止している。また、バッテリカバー30は前進位置においてバッテリ16の傾斜部16−3を覆って傾斜部16−3を押せないようにしており、これによってバッテリカバー30が前進位置にあるときにはバッテリ係止部16−4のバッテリ係止凹部28−8との係合を解除できないようになっている。
【0033】
本実施形態におけるこのようなバッテリカバー30は、
図9A、9Bに示すように、当該穿孔機10の前後方向で見て前方(図で見て左側)に位置する幅の狭い摺動部30−1と、この摺動部30−1の後方(図で見て右側)に連接し該摺動部30−1よりも幅広とされたカバー部30−2とからなるT字状のバッテリカバー本体部30−3を有する。バッテリカバー本体部30−3のカバー部30−2には、その両端部分に前方に向かって延びるアーム部30−4が形成されており、このアーム部30−4の先端には外向きに突出した凸状の係止部30−5が形成されている。摺動部30−1の下面には、後述するリミットスイッチ32と係合するスイッチ係合突起部30−6が形成されている。このバッテリカバー30は樹脂等の弾性材料により一体の部材として形成されていて、細長く伸びるアーム部30−4が弾性変形して、その先端部の係止部30−5が左右方向(図で見て上下方向)に変位するように構成されている。この左右方向に変位可能な係止部は、
図10に示すように、バッテリカバー30が後退位置にあるときには、バッテリハウジング22のバッテリカバー収容部22−16の側面に形成された凹状の第1受部22−17と係合してバッテリカバー30が不用意に移動することを抑止する。
図10の状態からバッテリカバー30を前進位置に向けてある程度以上の力で引き出すと、アーム部30−4が弾性変形して係止部が内側に変位し係止部30−5の第1受部22−17との係合が解除され、バッテリカバー30は前進位置に向けて移動できるようになる。バッテリカバー30が前進位置にまで移動すると、
図11に示すように、係止部30−5は、バッテリカバー収容部22−16の側面に形成された凹状の第2受部22−18と係合してバッテリカバー30が不用意に移動することを抑止する。
図11の状態からバッテリカバー30を後退位置に向けてある程度以上の力で押し込むと、アーム部30−4が弾性変形して係止部30−5が内側に変位し係止部30−5の第2受部22−18との係合が解除され、バッテリカバー30は後退位置に向けて移動できるようになる。このようにバッテリカバー30の係止部30−5とバッテリハウジング22の第1受部22−17又は第2受部22−18とが係合することにより、バッテリカバー30は後退位置又は前進位置に係止されて動きが抑止されるので、例えば穿孔加工時の振動等により、バッテリカバー30が不用意に移動してしまうことが防止される。なお、本実施形態に係るバッテリカバー30においては、バッテリカバー30の係止部30−5が凸状で、バッテリハウジング22の第1受部22−17及び第2受部22−18が凹状となっているが、バッテリカバー30の係止部30−5が凹状で、バッテリハウジング22の第1受部22−17及び第2受部22−18が凸状となるように構成してもよい。また、バッテリカバー30の係止部30−5を左右方向で変位しないように構成し、その代わりにバッテリハウジング22の第1受部22−17及び第2受部22−18を左右方向で変位可能に構成することによっても同様な機能を有するようにすることができる。しかしながら、弾性変形する部分は他の部分に比べて破損する可能性が高いので、仮に破損してしまった場合のことを考えると、交換が容易に行えるバッテリカバー30に弾性変形する部分を設けておいた方が、修理が容易となり望ましい。
【0034】
図12に示す別の実施形態に係るバッテリカバー130は、係止部130−5を有するアーム部130−4が連結部130−6に連結されて全体としてコ字状のバッテリカバー係止部材130−7とされて、摺動部130−1とカバー部130−2とからなるバッテリカバー本体部130−3とは別体とされている点において、上述の
図9A、9Bに示すバッテリカバー30と異なる。バッテリカバー係止部材130−7はバネ材などの細い部材を屈曲させて形成されている。このバッテリカバー係止部材130−7は、バッテリカバー本体部130−3の下面に形成されている開口からバッテリカバー本体部130−3内に取り付けられるようになっており、バッテリカバー本体部130−3に取り付けられた状態でアーム部130−4の先端の係止部130−5がバッテリカバー本体部130−3の摺動部130−1から側方に突出するようになっている。この突出した係止部130−5がバッテリハウジング22の第1受部22−17及び第2受部22−18と係合することにより、
図9A、9Bのバッテリカバー30と同様に当該バッテリカバー130の位置を後退位置と前進位置とに係止しておくことができるようになる。当該バッテリカバー130においては、弾性変形するアーム部130−4を構成するバッテリカバー係止部材130−7がバッテリカバー本体部130−3とは別体となっているので、比較的に破損が置きやすいアーム部だけを耐久性の高い金属材料等で構成することができ、樹脂で一体に形成されたものに比べてアーム部130−4の耐久性を高くして破損する可能性を低減させることが可能となる。なお、当該バッテリカバー130における係止部130−5の位置は
図9A、9Bのバッテリカバー30の係止部30−5の位置よりも左右方向で内側に寄っているため、対応するバッテリハウジング22のバッテリカバー収容部22−16の側壁は
図10及び
図11に示すものよりも内側に寄った位置となる。
【0035】
図13に示すさらに別の実施形態にかかるバッテリカバー230は、バッテリカバー本体部230−3の後面から前方に向かって延在して途中で終端するスプリング保持孔230−8を備えている。当該バッテリカバー230は、
図14に示すように、スプリング保持孔230−8にスプリング84が設定され、このスプリング84がスプリング保持孔230−8の終端面230−9とバッテリハウジング22のバッテリカバー収容部22−16の前面壁22−19との間で圧縮された状態で、バッテリカバー収容部22−16内に取り付けられるようになっている。圧縮されたスプリング84は、バッテリカバー230を後退位置から前進位置に向かう方向に付勢する。当該バッテリカバー230は、スプリング84の付勢力により前進位置に保持されるので、上述の他の実施形態に係るバッテリカバー30、130のような係止部30−5、130−5を有するアーム部30−4、130−4を備えていない。しかしながら、当該バッテリカバー230においても、他の実施形態に係るバッテリカバー30、130のような係止部30−5、130−5を有するアーム部30−4、130−4を備えるようにして、バッテリカバー230が後退位置と前進位置に保持されるようにすることもできる。
【0036】
図3から分かるように、フレーム20とバッテリハウジング22との間に形成される内部空間24の上方に位置する上方内部空間24−1にはリミットスイッチ32が設けられている。このリミットスイッチ32は、バッテリカバー30のバッテリハウジング22内に位置する部分に下方に突出するように設けられたスイッチ係合突起部30−6と係合して、バッテリカバー30が後退位置と前進位置との間で移動したときにスイッチ係合突起部30−6によってON/OFFが切り替えられるように配置されている。具体的には、バッテリカバー30がバッテリ16側に突出して前進位置にあるときにはスイッチ係合突起部30−6がリミットスイッチ32を押してONにし、前進位置から後退してバッテリハウジング22内に退避した後退位置に向かって移動したときにはリミットスイッチ32がOFFに切り替わるようになっている。このリミットスイッチ32は下方内部空間24−2に配置された駆動制御回路36に接続されていてバッテリカバー30が後退位置と前進位置との間で移動したことを検知するバッテリカバー位置検出手段として機能する。このような構成により、バッテリ16が正しく装着されているか、また、バッテリ16が外せる状態になっていないか等を監視することが可能となり、例えば、リミットスイッチ32がOFFになっていてバッテリカバー30が前進位置にない状態ではモータ48を駆動できなくしたり、モータ48の駆動中にリミットスイッチ32がOFFになった場合にはモータ48を減速又は停止させたりするような安全措置をとることができる。なお、バッテリカバー30のスイッチ係合突起部30−6は、バッテリハウジング22の左側部分22−2におけるバッテリカバー収容部22−16の下段部22−16bを構成する場所に設けられた開口部22−16c(
図17)を通して下方に延在してリミットスイッチ32と係合するようになっている。また、スイッチ係合突起部30−6は、バッテリカバー30が前進位置にあるときに開口部22−16cの後端面22−16dに当接して、バッテリカバー30の移動範囲を制限するとともにバッテリカバー30がバッテリカバー収容部22−16から外れないようにもしている。このような構造は他の実施形態に係るバッテリカバー130,230においても同様に設けられている。
【0037】
バッテリハウジング22とフレーム20との間に形成される内部空間24内の上部に位置する上方内部空間24−1には、上述のリミットスイッチ32に加えて、LED表示回路34も配置されている。このLED表示回路34は駆動制御回路36に接続されていて、駆動制御回路36からの信号に基づいて当該穿孔機10の状態をバッテリハウジング22の上部のLED表示部33(
図1)に表示するようになっている。LED表示回路34は緑、黄、赤のLEDを有し、これらLEDの点滅状態により、作業者にバッテリ16の残量やモータ48への負荷の程度を知らせる。また、モータ48の駆動中にバッテリカバー30が前進位置から後退してリミットスイッチ32がOFFになったときなどのように、異常が発生したと判断された場合には作業者に警告を行うようにもなっている。なお、緑、黄、赤の別個のLEDの代わりに、1つの素子としてパッケージングされて異なる色を発光できる1つのLEDを使用するようにしてもよい。
【0038】
LED表示回路34及びリミットスイッチ32と駆動制御回路36との間は、それぞれ、収縮チューブ等で覆われた配線35により電気的に接続されている。バッテリハウジング22には、駆動制御回路36とLED表示回路34及びリミットスイッチ32との間の位置に仕切り板38が設けられており、駆動制御回路36が配置される下方内部空間24−2をLED表示回路34及びリミットスイッチ32が配置される上方内部空間24−1から分離している。具体的には、
図4に示すように、バッテリハウジング22の右側部分22−1に設けられた右側仕切り板38−1と左側部分22−2に設けられた左側仕切り板38−2とがその間にL字状の開口部を形成するように対向し、該開口部にL字状のシール部材39が密封係合するように取り付けられた構造となっている。シール部材39の中央部には配線挿通穴39−1が形成されており、この配線挿通穴39−1にLED表示回路34及びリミットスイッチ32に接続された配線35が通されて密封されるようになっている。仕切り板38は後方から前方に向かって下方に傾斜するように設けられている。また上方内部空間24−1に位置するフレーム20の前面壁部20−1の部分には排水口80が形成されている。上方内部空間24−1は、バッテリハウジング22の外部に突出するバッテリカバー30を摺動可能に受け入れているバッテリカバー収容部22−16と連通しているので、外部に対して密封されていない。したがって、外部から雨等の水が浸入する虞がある。しかし、上述のような傾斜した仕切り板38と排水口80とを有する構造により、上方内部空間24−1に水が浸入した場合でも、その水を排水口80から外部に排出して駆動制御回路36が位置する下方内部空間24−2には水を浸入させないようになっている。これにより、駆動制御回路36が水に濡れて故障することを防止できる。また、フレーム20の下面壁部20−2の上面は前方から後方に向かって下方に傾斜するようになっており、万一、下方内部空間24−2に水が侵入した場合でも、下面壁部20−2の後端に設けられた排水溝20−13から外部に水が排出されるようになっている。
【0039】
図3に示すように、フレーム20の前面壁部20−1の前面には穿孔駆動部14が取り付けられている。この穿孔駆動部14の下部には、ドリルや環状カッターなどの穿孔工具44がアーバ40に装着されて保持されている。アーバ40は、穿孔駆動部14の内部の減速機45を介して穿孔駆動部14のモータカバー46内に設けられたモータ48に連結されている。このモータ48を駆動することで穿孔工具44が回転駆動される。
図1等に示すように、モータカバー46の側面50には複数の通気孔52が設けられており、該通気孔52から内部に流入する空気によりモータ48を冷却するようになっている。通気孔52を上面54ではなく側面50に設けているのは、水や切粉、粉塵等のゴミができるだけモータカバー46の内部に入らないようにするためである。穿孔駆動部14の左側面には、切削油の注入口となるプラグ56が設けられており、該プラグ56にホース付のワンタッチ式ソケットを取り付けることで、穿孔加工中の穿孔工具44に切削油を供給するようになっている。
【0040】
フレーム20の前面壁部20−1の前面には、
図15に示すように、その左右両側に上下方向に延びるアリ溝62が形成されている。一方、穿孔駆動部14には、
図16に示すように、その左右両側縁が、アリ溝62の形状に対応する形状とされたスライダ63が設けられている。このスライダ63にはラック64(
図16)が設けられ、フレーム20にはラック64に係合するピニオン65(
図15)が設けられており、フレーム20の右側面20−10(
図2)に突出しているシャフト23−1の端部に取り外し可能に取り付けられた送りハンドル66を手動で回転させることでピニオン65を回転させて穿孔駆動部14をフレーム20に対して上下動させるようになっている。なお、この送りハンドル66はフレーム20の左側面20−11から突出するシャフト23−1の端部に取り付けることもでき、状況に応じて左右どちらにでも取り付けられるようになっている。
【0041】
穿孔駆動部14のモータ48から延びる配線68は、アリ溝62とスライダ63に形成された配線挿通路69(
図15、16)を通って、
図3に示すように穿孔機本体部12の内部空間24内に至り駆動制御回路36に接続されていて、外部にはほとんど露出しないようになっている。配線68を外部に露出しないようにすることで、配線68が引っ掛かるなどして過大な力がかかり配線68が断線してしまうことを防止している。
【0042】
穿孔機本体部12の下方に取り付けられた電磁石式固定部18は内部の電磁石18−1に電力を供給することにより磁界を発生し、鉄などの磁性体に磁気吸着して、当該穿孔機10を固定保持するようになっている。電磁石式固定部18とフレーム20との間には位置調整機構58が設けられており、この位置調整機構58に着脱可能に取り付けられた位置調整ハンドル60を回すことにより電磁石式固定部18に対する穿孔機本体部12の位置を前後左右に位置調整して、被加工物の穿孔位置を微調整できるようになっている。なお、この位置調整ハンドル60は位置調整機構58の右側面に取り付けることもできる。
【0043】
図1に示すように、バッテリハウジング22の左側面22−15には、電磁石式固定部18を起動するための電磁石スイッチ70が設けられている。電磁石スイッチ70の周囲には壁72が設けられており、電磁石スイッチ70が不用意に操作されにくくなっている。電磁石スイッチ70は後方側(
図1で見て左側)の部分を押すとOFFとなるようになっているが、壁72はその後方側の部分が高くなっており、電磁石スイッチ70が誤って特にONからOFFに切り替わりにくくなっている。また、
図2に示すように、バッテリハウジング22の右側面22−14には、モータ48を起動するためのモータスイッチ74が設けられている。このモータスイッチ74の周囲にも壁76が設けられており、モータスイッチ74が不用意に操作されにくくなっている。電磁石スイッチ70とモータスイッチ74とをバッテリハウジング22の左右の異なる側の側面22−14、22−15に配置することにより、スイッチを配置する場所の確保が容易になり、また内部空間24内での配線の干渉も小さくなるので、バッテリハウジング22を小さく設計することが可能となる。また、電磁石スイッチ70とモータスイッチ74とを誤って操作することも防止できる。
【0044】
なお、本実施形態においては、バッテリカバー30は穿孔機10の前後方向で直線的に摺動することでバッテリ16に対する後退位置と前進位置との間で移動するように設けられているが、例えば枢動するようにするなど、他の態様で後退位置と前進位置との間で移動可能に設けるようにしてもよい。また、バッテリカバー30が前進位置にあるときには、該バッテリカバー30がバッテリ16に当接するようになっているが、バッテリ16に当接せずに該バッテリ16に近接する位置となるようにしてもよい。さらには、バッテリカバー30がバッテリ16を外れないように押さえる機能を有する必要はなく、バッテリ16をバッテリ収容空間28から上方に移動させたときにバッテリカバー30がバッテリ16に押されて後退位置に移動するように構成されていてもよい。また本実施形態においてはバッテリカバー位置検出手段としてリミットスイッチ23を採用しているが、光学式のスイッチなどの他の形態のセンサーを利用してバッテリカバー位置検出手段を実現してもよい。