(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電気信号を取り出すためのリードピン、このリードピンが貫通される電気的絶縁部材、及びこの電気的絶縁部材が設けられ大気圧を導入する大気導入孔が形成されるベースを有する気密端子と、
前記ベースに設けられるとともに内部が前記大気導入孔に連通する筒状の本体、及びこの本体に設けられ前記リードピンと接続されて圧力によって電気信号を出力する検出部を有するセンサモジュールと、
内部に圧力導入孔が形成されるとともに前記圧力導入孔の一端側が外部装置と接続され他端側が前記気密端子と接合されたハウジングと、
前記ハウジングに装着され前記リードピンが挿通される窓部が形成されたカバー部材と、
前記気密端子、前記ハウジング及び前記カバー部材で囲まれた領域内に充填される絶縁用樹脂と、を備え、
前記カバー部材は、前記ベース又は前記ハウジングに一定幅で圧着し前記絶縁用樹脂の漏出を阻止する壁部と、前記窓部の互いに離れた位置から架け渡されたブリッジと、このブリッジに設けられた筒状当接部とを有し、
この筒状当接部は、前記ベースに一定幅で圧着し前記絶縁用樹脂の前記大気導入孔への流入を阻止することを特徴とする物理量測定センサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、接着剤やゲル材等の絶縁用樹脂は、接着面と完全に接着固定することで性能を発揮する。そのため、絶縁用樹脂は硬化しない状態では流出するので、絶縁用樹脂を所定の位置に所定の厚さをもって滞留させなければならない。
特許文献1の
図6及び
図7で示される従来例では、ハーメチックガラスとエレメントハウジングとの表面に接着剤やゲル材をコーティングあるいはポッティング処理しているが、滞留させるための工夫がないので、接着剤やゲル材が所定位置から流出する恐れがある。特に、圧力センサが小型化されると、接着剤等の絶縁用樹脂を塗布する面積が必然的に小さくなるので、所定の厚さの絶縁用樹脂を滞留させることは難しい。
接着剤やゲル材が所定位置から流出すると、外部回路との接続や組立において不具合が生じることになる。
【0006】
本発明の目的は、絶縁性樹脂を容易に滞留させて高耐電圧化させるための作業を容易に行える物理量測定センサ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の物理量測定センサは、電気信号を取り出すためのリードピン、このリードピンが貫通される電気的絶縁部材、及びこの電気的絶縁部材が設けられたベースを有する気密端子と、前記ベースに設けられる筒状の本体、及びこの本体に設けられ前記リードピンと接続されて圧力によって電気信号を出力する検出部を有するセンサモジュールと、内部に圧力導入孔が形成されるとともに前記圧力導入孔の一端側が外部装置と接続され他端側が前記気密端子と接合されたハウジングと、前記ハウジングに装着され前記リードピンが挿通される窓部が形成されたカバー部材と、前記気密端子、前記ハウジング及び前記カバー部材で囲まれた領域内に充填される絶縁用樹脂と、を備え、前記カバー部材は、前記ベース又は前記ハウジングに一定幅で圧着し前記絶縁用樹脂の漏出を阻止する壁部を有することを特徴とする。
【0008】
この構成の本発明では、気密端子、センサモジュール及びハウジングを組み立て、その後、カバー部材をハウジングに装着する。この状態で、カバー部材の窓部から気密端子、ハウジング及びカバー部材で囲まれた領域内に絶縁用樹脂を流し込む。流し込まれた絶縁用樹脂は、カバー部材の壁部がベース又はハウジングに一定幅で圧着しているため、壁部でせき止められて外部に漏出しない。そのため、壁部によって絶縁用樹脂が滞留することになるので、絶縁用樹脂が硬化するまで、所定の位置で所定の厚みを維持されることになる。絶縁用樹脂が硬化すると、絶縁距離が増され、高耐電圧化される。
従って、本発明では、壁部を有するカバー部材をハウジングに装着するだけで、絶縁用樹脂の滞留を維持できるので、絶縁用樹脂の流出が確実に防止され高耐電圧化するための作業が容易となる。
【0009】
本発明の物理量測定センサは、電気信号を取り出すためのリードピン、このリードピンが貫通される電気的絶縁部材、及びこの電気的絶縁部材が設けられ大気圧を導入する大気導入孔が形成されるベースを有する気密端子と、前記ベースに設けられるとともに内部が前記大気導入孔に連通する筒状の本体、及びこの本体に設けられ前記リードピンと接続されて圧力によって電気信号を出力する検出部を有するセンサモジュールと、内部に圧力導入孔が形成されるとともに前記圧力導入孔の一端側が外部装置と接続され他端側が前記気密端子と接合されたハウジングと、前記ハウジングに装着され前記リードピンが挿通される窓部が形成されたカバー部材と、前記気密端子、前記ハウジング及び前記カバー部材で囲まれた領域内に充填される絶縁用樹脂と、を備え、前記カバー部材は、前記ベース又は前記ハウジングに一定幅で圧着し前記絶縁用樹脂の漏出を阻止する壁部と、前記窓部の互いに離れた位置から架け渡されたブリッジと、このブリッジに設けられた筒状当接部とを有し、この筒状当接部は、前記ベースに一定幅で圧着し前記絶縁用樹脂の前記大気導入孔への流入を阻止することを特徴とする。
この構成では、前述の発明の効果の他に、次の効果を奏することができる。つまり、カバー部材をハウジングに装着することで、カバー部材の筒状当接部がベースに一定幅で圧着する。この状態で、カバー部材の窓から気密端子、ハウジング及びカバー部材で囲まれた領域内に絶縁用樹脂を流し込んでも、カバー部材の筒状当接部がベースに一定幅で圧着しているため、絶縁用樹脂が筒状当接部でせき止められてベースに形成された大気導入孔へ流入することがない。そのため、筒状当接部によって絶縁用樹脂が滞留することになるので、絶縁用樹脂が硬化するまで、所定の位置で所定の厚みを維持されることになる。しかも、絶縁用樹脂が大気導入孔を通ってセンサモジュールに流れ込むことがないので、検出精度に影響を及ぼすことがない。
【0010】
本発明の物理量測定センサでは、前記ハウジングは、前記壁部が当接する平坦面とこの平坦面に交差した外周面とが形成された円筒部材を備え、この円筒部材の平坦面のうち前記圧力導入孔の前記他端側の開口端周縁に前記ベースの外周縁部と嵌合する突起部が形成され、前記カバー部材は、前記ハウジングの外周面と内周面が対向するカバー本体と、このカバー本体に一体形成され前記平坦面と対向し前記壁部が形成された平坦部とを備えた構成が好ましい。
この構成では、ハウジングの平坦面にベースの外周縁部と嵌合する突起部が形成されているので、ハウジングとベースとが位置決めされて確実に嵌合されることになり、物理量測定センサの組み立てを容易に行える。
しかも、カバー部材の壁部がハウジングの平坦面に圧着されるので、壁部によって、絶縁用樹脂が確実にせき止めされることになる。そのため、絶縁用樹脂の漏出防止を効果的に行うことができる。
【0011】
本発明の物理量測定センサでは、前記ハウジングの前記ベースから離れた位置にダイアフラムが設けられ、このダイアフラム、前記ハウジング及び前記ベースの間の空間に封入液が充填される構成でもよい。
この構成では、ハウジングの圧力導入孔から被測定流体が導入されると、被測定流体の圧力変化によってダイアフラムが変位する。ダイアフラムの変位は封入液を介してセンサモジュールの検出部で電気信号として出力され、この電気信号がリードピンを通じて外部に送られる。このような構成の液封入型の物理量測定センサにおいても、前述の効果を奏することができる。
【0012】
本発明の物理量測定センサの製造方法は、大気圧を導入する大気導入孔が形成されたベースに、電気信号を取り出すためのリードピンを電気的絶縁部材を介して取り付けて気密端子を組み立て、内部が前記大気導入孔に連通する筒状の本体に前記リードピンと接続されて圧力によって電気信号を出力する検出部が設けられたセンサモジュールを前記ベースに取り付け、圧力導入孔が内部に形成され一端側が外部装置に接続可能なハウジングの他端側に前記気密端子を接合し、壁部を有し窓部が形成されたカバー部材を、前記窓部に前記リードピンが挿通するとともに前記壁部が前記ベース又は前記ハウジングに一定幅で圧着するように前記ハウジングに装着し、前記気密端子、前記ハウジング及び前記カバー部材で囲まれた領域内に絶縁用樹脂を充填することを特徴とする。
この構成の本発明では、前述の効果を達成することができる物理量測定センサの製造方法を提供することができる。
【0013】
本発明の物理量測定センサの製造方法では、前記カバー部材は、前記絶縁用樹脂が硬化した後に取り外す構成が好ましい。
この構成では、カバー部材を再利用することができるので、物理量測定センサの製造コストを低いものにできる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態の物理量測定センサは圧力センサである。
図1から
図4には本発明の第1実施形態が示されている。
図1から
図3において、第1実施形態の物理量測定センサの全体構成が示されている。
図1から
図3において、物理量測定センサは、センサ本体1にカバー部材2が装着された構造である。
センサ本体1は、ハウジング3、及び、このハウジング3に気密固定されたベース4を有する気密端子5と、ベース4に設けられたセンサモジュール6とを備えている。
【0016】
ハウジング3は、内部に圧力導入孔30が軸方向に沿って形成された円筒部材31と、この円筒部材31の圧力導入孔30の一端側に設けられた接続部32と、円筒部材31の圧力導入孔30の他端側に設けられた突起部33とを有する金属製の部材である。
圧力導入孔30は、接続部32に位置する部分に比べて円筒部材31に位置する部分の径が大きく形成されている。さらに、圧力導入孔30は円筒部材31の位置する部分において、ベース4の外周縁部に対向する段差30Aが形成されている。
【0017】
円筒部材31には、外周面31Aとこの外周面31Aと直交する平坦面31Bとがそれぞれ形成されている。
接続部32は、図示しない外部装置と接続される。外部装置は圧力導入孔30と連通する図示しない連通路を有する。
突起部33は、ベース4の外周縁部と嵌合するものであり、平坦面31Bの圧力導入孔30の他端側の開口端に沿って所定幅及び所定高さの寸法のリング状に形成されている。
【0018】
気密端子5は、ベース4と、このベース4に設けられたガラスからなる電気的絶縁部材50と、この電気的絶縁部材50に貫通して設けられ電気信号を取り出すためのリードピン51とを備えている。リードピン51は、ベース4に電気的絶縁部材50を介して気密固定されていることになる。
ベース4は、金属製の円板から形成されており、その中心部には大気圧を導入する大気導入孔4Aが形成されている。ベース4の圧力導入孔30の開口端に対向する面とは反対側の面には、平面矩形状の盛上部4Bが形成されている。盛上部4Bの頂部は平坦な形状とされている。
【0019】
ベース4の外周縁部は、圧力導入孔30の内周面と対向する外周面4Cと、この外周面4Cより大きな径のフランジ部4Dとが一体に形成されている。フランジ部4Dは、突起部33の先端で支持されており、外周面4Cからの突出した寸法は突起部33の先端面の幅寸法と等しい。
電気的絶縁部材50は、ベース4に貫通して設けられた取付孔4Eに設けられている。
リードピン51は、その一端部がハウジング3の圧力導入孔30の内部に露出しており、その他端部がセンサ外部に露出している。
【0020】
センサモジュール6は、ベース4の圧力導入孔30の開口端に対向する面の中心に設けられた筒状の本体61と、この本体61に設けられた検出部62とを有する。センサモジュール6は、ベース4に接着剤やガラス、低融点金属等の接合物質によって接着固定されている。ここで、ベース4、接合物質、センサモジュールの線膨張係数を互いに近似させ、あるいは、相互の係数差による影響を吸収低減させる手段が施されている。
本体61は、その内部が大気導入孔4Aに連通している。
検出部62は、リードピン51とボンディングワイヤ5Aを介して接続されて圧力によって電気信号を出力するものであり、図示しない歪ゲージ等を有する。
なお、平面視において、1列が3本とされたリードピン51がセンサモジュール6を中心として2列配置されている(
図1参照)。
【0021】
カバー部材2の詳細な構成を
図4も参照して説明する。
図1から
図4において、カバー部材2は、センサ本体1の形状に沿った形状を有し、カバー本体21と、このカバー本体21の開口端から軸心に向けて一体形成されたリング状の平坦部22と、この平坦部22の内周縁から立ち上がって形成されたリング状の立上部23と、この立上部23の端部に設けられた頂部24と、平坦部22の立上部23とは反対側に一体形成された壁部25とを有する。カバー部材2は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、 PPS(ポリフェニレンサルファイド)、その他の絶縁性材料から射出成形等の適宜な製造方法により形成される。
カバー本体21は、円筒部材31の外周面31Aに内周面21Aが対向するものであり、内周面21Aの軸方向に沿った寸法は円筒部材31の外周面31Aの軸方向に沿った寸法より大きい。
【0022】
カバー本体21の平坦部22が形成された端部とは反対側の端部には、円筒部材31の角部と嵌合する突起状のスナップ部210が周方向に沿って形成されている。
カバー本体21には、円筒部材31の外周面31Aに予め表示された型番号、その他の物理量測定センサに関する情報(図示せず)を表示するための表示窓21Bが形成されている。
平坦部22は、円筒部材31の平坦面31Bと対向する対向面を有する肩部である。
立上部23は、その内周面が突起部33及びフランジ部4Dの外周面に対向する。
【0023】
頂部24には、リードピン51が挿通される窓部24Aが形成され、この窓部24Aの互いに離れた位置には長尺板状のブリッジ24Bが架け渡されている。
ブリッジ24Bの中央部24Cは円板状とされている。中央部24Cの中心にはベース4側に向けて筒状当接部24Dが一体に形成されている。筒状当接部24Dは、ベース4の盛上部4Bの頂部に一定幅t1で圧着するものである。
筒状当接部24Dの内周部と連続して中央部24Cには、孔部が形成されている。
筒状当接部24Dは、後述する絶縁用樹脂Rの大気導入孔4Aへの流入を阻止するものである。そのため、筒状当接部24Dが盛上部4Bに圧着されている状態では、筒状当接部24Dの内部空間を介して大気導入孔4Aが外部空間と連通することになる。
壁部25は、ハウジングの平坦面31Bに一定幅t2で圧着し後述する絶縁用樹脂Rの漏出を阻止するものであり、リング状に形成されている。
筒状当接部24Dの高さ寸法は、カバー部材2がセンサ本体1に装着した際に、ベース4と干渉する寸法に設定される。壁部25の高さ寸法は、ハウジングの平坦面31Bと干渉する寸法に設定される。
【0024】
気密端子5、ハウジング3及びカバー部材2で囲まれた領域内Sには絶縁用樹脂Rが充填されている。なお、
図1及び
図2では絶縁用樹脂Rの図示が省略されている。
この絶縁用樹脂Rの具体的な材料は、接着剤やゲル材を例示できるが、用途等により具体的に選択される。
絶縁用樹脂Rが硬化された状態では、絶縁用樹脂Rがない状態に比べて沿面距離や絶縁距離が大きくなる。
【0025】
次に、本発明の物理量測定センサの製造方法について説明する。
[センサ本体の製造]
まず、大気導入孔4Aが形成されたベース4に、リードピン51を電気的絶縁部材50を介して取り付けて気密端子5を組み立てる。
さらに、センサモジュール6をベース4に接着剤等の接合物質によって接着固定する。センサモジュール6の検出部62とリードピン51とをボンディングワイヤ5Aで電気的に接続する。そして、ハウジング3に気密端子5を接合する。
【0026】
[カバー部材の装着]
射出成形法等の適宜な方法で予め製造したカバー部材2をハウジング3に装着する。
そのため、窓部24Aにリードピン51を挿通した状態で、カバー部材2をハウジング3に押し込む。すると、壁部25がハウジング3の平坦面31Bに当接されるとともに筒状当接部24Dがベース4の盛上部4Bに当接される。
さらに、カバー部材2をハウジング3に押し込み続けると、ブリッジ24Bが弾性変形して壁部25がハウジング3へ圧着するとともに筒状当接部24Dがベース4に圧着することになる。
そして、スナップ部210をハウジング3の角部に係合させてカバー部材2がハウジング3から外れないようにする。
【0027】
[絶縁用樹脂の充填及び硬化]
カバー部材2の窓部24Aから気密端子5、ハウジング3及びカバー部材2で囲まれた領域内Sに絶縁用樹脂Rを充填する。絶縁用樹脂Rを充填する高さは、カバー部材2の頂部24から溢れない範囲で適宜設定されるが、例えば、ベース4の盛上部4Bの高さを超えるものであってもよい。
【0028】
充填された絶縁用樹脂Rは、ベース4のフランジ部4D及びハウジング3の突起部33の外周面とカバー部材2の立上部23の内周面との間からハウジング3の平坦面31Bとカバー部材2の平坦部22との間の空間に向かうが、カバー部材2の平坦部22に設けられた壁部25に堰き止められることになる。さらに、絶縁用樹脂Rはベース4の盛上部4Bの高さを超えても、カバー部材2の筒状当接部24Dによって絶縁用樹脂Rが大気導入孔4Aに流れ込むことがない。
充填した絶縁用樹脂Rは時間経過とともに硬化する。絶縁用樹脂Rが硬化すると、絶縁距離が増され、高耐電圧化される。
なお、本実施形態では、硬化を促進するために、必要に応じて、絶縁用樹脂Rに紫外線を照射してもよい。
【0029】
[カバー部材の取り外し]
センサ本体1にカバー部材2が装着されたまま製品として用いるものでもよいが、製品として使用する際に、カバー部材2をセンサ本体1から外すものでもよい。カバー部材2を外すには適宜工具を使用する。
なお、カバー部材2を容易に取り外すために、カバー部材2の材料を絶縁用樹脂が接着しないものを選択したり、カバー部材2の内周面に図示しない離型剤を塗布してもよい。
【0030】
従って、第1実施形態では次の作用効果を奏することができる。
(1)リードピン51を電気的絶縁部材50を介してベース4に取り付けて組み立てられる気密端子5と、ベース4に設けられるとともにリードピン51と接続されるセンサモジュール6と、内部に圧力導入孔30が形成され気密端子5と接合されたハウジング3と、ハウジング3に装着され窓部24Aが形成されたカバー部材2と、気密端子5、ハウジング3及びカバー部材2で囲まれた領域内Sに充填される絶縁用樹脂Rと、を備え、カバー部材2は、ハウジング3に一定幅t2で圧着し絶縁用樹脂Rの漏出を阻止する壁部25を有する構成とした。そのため、ハウジング3に装着されたカバー部材2の窓部24Aから領域内Sに流し込まれた絶縁用樹脂Rは、壁部25でせき止められてセンサの外部に漏出せず、壁部25によって絶縁用樹脂Rが滞留することになる。従って、絶縁用樹脂Rが硬化するまで、所定の位置で所定の厚みを維持されることになる。
従って、壁部25を有するカバー部材2をハウジング3に装着するだけで、絶縁用樹脂Rの滞留を維持できるので、絶縁用樹脂Rの流出が確実に防止され高耐電圧化するための作業が容易となる。特に、第1実施形態では、カバー部材2が特徴ある構造を有しているので、気密端子5、センサモジュール6及びハウジング3を有するセンサ本体1の構造を従来に比べて変更しなくてもよいから、既存のセンサ本体1に容易に適用することができる。
【0031】
(2)カバー部材2の窓部24Aの互いに離れた位置からブリッジ24Bを架け渡し、このブリッジ24Bに筒状当接部24Dを設け、この筒状当接部24Dを、ベース4に一定幅t1で圧着し絶縁用樹脂Rの大気導入孔4Aへの流入を阻止する構成とした。そのため、カバー部材2をハウジング3に装着することで、筒状当接部24Dがベース4に一定幅t1で圧着するので、領域内Sに流し込んだ絶縁用樹脂Rは、筒状当接部24Dでせき止められてベース4に形成された大気導入孔4Aへ流入することがない。
従って、筒状当接部24Dによって、絶縁用樹脂Rが滞留することになるので、絶縁用樹脂Rが硬化するまで、所定の位置で所定の厚みを維持できる。しかも、絶縁用樹脂Rが大気導入孔4Aを通ってセンサモジュール6の内部に流れ込むことがなく、検出精度に影響を及ぼすことがない。
【0032】
(3)ブリッジ24Bを長尺板状としたので、カバー部材2をハウジング3に装着する際に、弾性変形しやすくなる。そのため、筒状当接部24Dや壁部25をベース4やハウジング3に圧着しやすくなり、絶縁用樹脂Rの漏出を効果的に防止できる。特に、カバー部材2の頂部24がベース4に対して平行となっていない場合でも、ブリッジ24Bが弾性変形することで、筒状当接部24Dや壁部25のベース4やハウジング3への圧着を確実に行うことができる。
【0033】
(4)ハウジング3の外周面31Aと直交する平坦面31Bに、ベース4の外周縁部と嵌合する突起部33が形成されているので、ハウジング3とベース4とが位置決めされて確実に嵌合されることになり、物理量測定センサの組み立てを容易に行える。
【0034】
(5)カバー部材2の壁部25がハウジング3の平坦面31Bに圧着されるので、壁部25によって絶縁用樹脂Rが確実にせき止めされることになり、絶縁用樹脂Rの漏出防止を効果的に行うことができる。
【0035】
(6)カバー本体21の端部には、ハウジング3の円筒部材31の角部と嵌合する突起状のスナップ部210が形成されているから、カバー部材2のハウジング3への装着を確実に行うことができる。
【0036】
(7)カバー本体21に表示窓21Bが形成されているから、この表示窓21Bを通じて円筒部材31の外周面31Aに予め表示された物理量測定センサの型番号等の情報を表示することができる。
【0037】
(8)物理量測定センサを製造するにあたり、カバー部材2を、絶縁用樹脂Rが硬化した後に取り外すものとすれば、カバー部材2を再利用することができるので、物理量測定センサの製造コストを低いものにできる。
【0038】
次に、本発明の第2実施形態を
図5から
図7に基づいて説明する。
第2実施形態は第1実施形態と比べてダイアフラムを用いた液封入型の圧力センサである点で相違するものであり、他の構成は第1実施形態と同じである。特に、カバー部材2は第1実施形態で説明したカバー部材2と同じ構造である。なお、
図5及び
図6では絶縁用樹脂Rの図示が省略されている。
ここで、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同一の構成は同一符号を付して説明を省略する。
図5から
図7において、第2実施形態では、ハウジング3は、気密端子5が取り付けられた第一ブロック3Aと圧力導入孔30が形成された第二ブロック3Bとの2つの部材に分割されている。第一ブロック3Aと第二ブロック3Bとは外周縁部で互いに接合されている。
【0039】
第一ブロック3Aの端面にはベース4から離れた位置にダイアフラム7の外周縁部が接合されている。このダイアフラム7は、ステンレス、その他の金属から形成され、第二ブロック3Bの圧力導入孔30から導入される被測定流体の圧力の変化を受けて変位する構造である。
ベース4には、センサモジュール6、リードピン51及びボンディングワイヤ5Aの周囲を囲うようにスペーサ8が配置されている。
スペーサ8、ベース4及びダイアフラム7で囲われた空間には封入液Lが充填されている。この封入液Lは、ダイアフラム7の変位をセンサモジュール6の検出部62に伝達するものであり、例えば、オイルを例示できる。
【0040】
スペーサ8は、線膨張係数の小さな材料から形成されており、温度による膨張収縮変化の大きなオイルの量を低減し、ダイアフラム7の剛性を低減して温度による特性変化を低減する目的で用いられる。スペーサ8は、図で示される通り、ブロック状部材から構成されるものでもよいが、複数枚の板材を重ねて構成されるものでもよい。
スペーサ8の外周部とダイアフラム7に対向する部分とには、封入液Lを封入液充填空間に導入するための封入液導入路8Aがスペーサ8の内部に形成されている。この封入液導入路8Aと連通する封入液導入孔4Fがベース4に形成されている。封入液導入孔4Fのスペーサ8とは反対側の開口端には球状の封止部材9が設けられている。この封止部材9は、封入液導入孔4F及び封入液導入路8Aを通じてスペーサ8、ベース4及びダイアフラム7で囲われた空間に封入液Lが充填された後に、ベース4に接合される。
以上の構成の第2実施形態の物理量測定センサの製造方法は、第1実施形態と同様である。
【0041】
従って、第2実施形態では、第1実施形態と同一の作用効果を奏することができる他、次の作用効果を奏することができる。
(9)ハウジング3のベース4から離れた位置にダイアフラム7を設け、このダイアフラム7、ハウジング3及びベース4の間の空間に封入液Lが充填されるので、圧力導入孔30で導入される被測定流体の圧力変位をダイアフラム7の変位に変化し、このダイアフラム7の変位を封入液Lを介してセンサモジュール6の検出部62に伝達する。そのため、センサモジュール6の検出部62に被測定流体を直接接触させなくてもよいので、被測定流体の種類が限定されない。
【0042】
次に、本発明の第3実施形態を
図8及び
図9に基づいて説明する。
第3実施形態は第1実施形態と比べて、ベース4に大気導入孔4Aが形成されていない点で相違するものであり、他の構成は第1実施形態と同じである。
ここで、第3実施形態の説明において、第1実施形態と同一の構成は同一符号を付して説明を省略する。
図8において、第3実施形態では、ベース4は大気導入孔4Aがないので、円板状とされている。センサモジュール6は、絶対圧やシールドゲージを用いてもよい。なお、
図8には絶対圧を用いたセンサが図示されている。
【0043】
図8及び
図9において、カバー部材2は、第1実施形態と同様に、カバー本体21、平坦部22、立上部23、頂部24及び壁部25を有するが、頂部24の構造が第1実施形態と相違する。つまり、頂部24には、外周が円形の窓部24Aが形成されており、第1実施形態とは異なり、ブリッジ24Bや、このブリッジ24Bに設けられる中央部24C及び突出部24Eが省略されている。
従って、第3実施形態では、第1実施形態の(1)(4)〜(8)と同様の効果を奏することができる。
【0044】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
例えば、前記実施形態では、カバー部材2の窓部24Aの互いに離れた位置からブリッジ24Bを架け渡し、このブリッジ24Bに筒状当接部24Dを設け、この筒状当接部24Dを、ベース4の盛上部4Bに一定幅t1で圧着し絶縁用樹脂Rの大気導入孔4Aへの流入を阻止する構成としたが、本発明では、ベース4の盛上部4Bの高さを高くすることで、筒状当接部24Dを省略することができる。
さらに、本発明では、カバー部材2のカバー本体21にスナップ部210を形成することを要せず、さらに、カバー本体21に表示窓21Bを形成することを要しない。
【0045】
また、本発明では、壁部25の取り付け位置はカバー部材2の平坦部22に限定されるものではなく、例えば、頂部24に設けるものであってもよい。壁部25を頂部24に設けることで、壁部25がベース4に圧着することになる。
さらに、本発明の物理量測定センサは圧力センサに限定されるものではなく、差圧センサや温度センサにも適用することができる。