(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
芳香族ビニル化合物(2)が、スチレン、α−メチルスチレン、α−ビニルナフタレンおよびβ−ビニルナフタレンからなる群から選択される1種または2種以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の分枝共役ジエン共重合体。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上述のとおり、本発明は、第一の態様としては、粘弾性tanδ温度依存性カーブの均一性を高めることができる分枝共役ジエン共重合体に関するものである。
【0022】
第二の態様は、典型的には
図1に示される如く、粘弾性tanδ温度依存性カーブの均一性を高めることができ、かつ、該高められた均一性を利用することにより、ウェットグリップ性能および燃費性能を向上させることのできる分枝共役ジエン共重合体に関するものである。
【0023】
第三の態様は、典型的には
図2に示される如く、粘弾性tanδ温度依存性カーブの均一性を高めることができ、かつ、該高められた均一性を利用することにより、特定の温度域(例えば、20〜100℃、より好ましくは30〜45℃の範囲内の特定の温度域)におけるグリップ性能を向上させることのできる分枝共役ジエン共重合体に関するものである。
【0024】
本発明に係わる分枝共役ジエン共重合体は、モノマー成分として、分枝共役ジエン化合物(1)と少なくとも45質量%を占める芳香族ビニル化合物(2)とを含むものを共重合させたものであるか、または、モノマー成分として共役ジエン化合物(3)をさらに含むものを共重合させたものである。
【0025】
(共重合体)
本発明に係わる分枝共役ジエン共重合体において、モノマーである分枝共役ジエン化合物(1)、芳香族ビニル化合物(2)、共役ジエン化合物(3)の共重合比について説明する。
【0026】
分枝共役ジエン化合物(1)の共重合比(l)は、1〜55質量%であれば特に限定はないが、下限値としては、2質量%以上が好ましく、2.5質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。1%未満では粘弾性tanδカーブの多峰性を改善するという効果が十分に得られない傾向がある。一方、上限値としては、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。20質量%も配合すれば、分枝共役ジエン化合物(1)を添加することの効果が十分得られる傾向にあるからである。
【0027】
芳香族ビニル化合物(2)の共重合比(n)は、45〜99質量%であれば特に限定はないが、下限値としては、好ましくは46質量%以上、より好ましくは47質量%以上、より好ましくは48質量%以上、より好ましくは49質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。45質量%未満では粘弾性tanδカーブの多峰性が問題となる程度ではない傾向にあり、その改善のため分枝共役ジエン化合物(1)を共重合させることによる効果が小さくなる傾向がある。一方、上限値は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%である。99質量%超では共重合体がゴム状とならず樹脂状になる傾向がある。また、70質量%超では、tanδ(60℃)が高くなり、十分な燃費性能が出ないことが懸念される。
【0028】
共役ジエン化合物(3)の共重合比(m)は、0〜54質量%であれば特に限定はないが、下限値としては、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。一方、上限値は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
【0029】
なお、上記共重合比については、本発明に係わる分枝共役ジエン共重合体が、上記化合物(1)および(2)のみからなるものである場合には、いずれかの化合物についての共重合比が上記から定まれば、他の一方の化合物の共重合比は、それに応じて自ずと定まる。また、本発明に係わる分枝共役ジエン共重合体が、上記化合物(1)〜(3)のみからなるものである場合には、いずれか二つの化合物についての共重合比が上記から定まれば、残りの一つ化合物の共重合比は、それに応じて自ずと定まる。
【0030】
<分枝共役ジエン化合物>
分枝共役ジエン化合物(1)において、炭素数6〜11の脂肪族炭化水素基としては、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基等のノルマル構造のもの、それらの異性体かつ/または不飽和体、並びに、それらの誘導体(例えば、ハロゲン化物、水酸基化物等)が挙げられる。好ましい例としては、4−メチル−3−ペンテニル基、4,8−ジメチル−ノナ−3,7−ジエニル基等、および、それらの誘導体が挙げられる。
【0031】
分枝共役ジエン化合物(1)の具体例としては、例えば、ミルセン、ファルネセンなどが挙げられる。
【0032】
ミルセンとしては、とりわけ、以下の構造を有するβ−ミルセン(7−メチル−3−メチレンオクタ−1,6−ジエン)が好ましい。
【0034】
一方、ファルネセンとしては、とりわけ、以下の構造を有する(E)−β−ファルネセン(7,11−ジメチル−3−メチレン−1,6,10−ドデカトリエン)が好ましい。
【0036】
分枝共役ジエン化合物(1)としては、1種または2種以上のものを使用することができる。
【0037】
<芳香族ビニル化合物>
芳香族ビニル化合物(2)において、炭素数6〜10の芳香属炭化水素基としては、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、トリル(tolyl)基、キシリル(xylyl)基、ナフチル基などが挙げられる。但し、トリル基におけるベンゼン環上のメチル基の置換位置はオルト−、メタ−もしくはパラ−のいずれの位置も含むものであり、キシリル基におけるメチル基の置換位置も、任意の置換位置のいずれをも含むものである。これらのうち、フェニル基、トリル(tolyl)基、ナフチル基が好ましい。また、炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、このうち、メチル基が好ましい。
【0038】
芳香族ビニル化合物(2)の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−ビニルナフタレン、β−ビニルナフタレンが好ましい。
【0039】
芳香族ビニル化合物(2)としては、1種または2種以上のものを使用することができる。
【0040】
<共役ジエン化合物>
共役ジエン化合物(3)において、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、このうちメチル基が好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、このうち、塩素原子が好ましい。
【0041】
共役ジエン化合物(3)としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が好ましく、このうち、1,3−ブタジエン、イソプレン等が好ましい。
【0042】
共役ジエン化合物(3)としては、1種または2種以上のものを使用することができる。
【0043】
<ガラス転移温度>
本発明に係わる分枝共役ジエン共重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは、−25℃以上である。−25℃未満では、十分なグリップ性能が得られない傾向がある。一方、Tgの上限値は、好ましくは、35℃以下である。35℃超ではゴム組成物が脆化し、加工性が悪化する傾向がある。
【0044】
本発明の第二の態様において、十分なウェットグリップ性能の観点からは、tanδ(0℃)を高くする必要があるが、この場合、Tgは、−25℃以上であることが好ましく、より好ましくは−20℃以上である。−25℃未満では、tanδ(0℃)が低下し、十分なウェットグリップ性能が得られない傾向がある。一方、Tgの上限値は、15℃以下であることが好ましく、より好ましくは10℃以下である。Tgが15℃超では、tanδ(60℃)が高くなり、十分な燃費性能が出ない傾向がある。したがって、Tgが−25〜15℃の分枝共役ジエン共重合体は、十分なウェットグリップ性能および低燃費性能を示すことから、例えば、一般車(例えば、乗用車(PC)、トラック・バス(TB)など)向けのタイヤ用ゴム成分として使用するのに適している。
【0045】
本発明の第三の態様において、20℃〜100℃、より好ましくは30〜45℃の範囲内の特定の温度域において十分なグリップ性能を発揮させるとの観点からは、Tgは−10℃以上であることが好ましく、より好ましくは−5℃以上である。−10℃未満では、十分なグリップ性能が得られない傾向がある。一方、Tgの上限値は、35℃以下であることが好ましく、より好ましくは25℃以下である。Tgが35℃超では、ゴム組成物が脆化し、加工性が悪化する傾向がある。したがって、かかる本発明の分枝共役ジエン共重合体は、十分な上記グリップ性能を示すことから、例えば、競技(例えば、レース)車両向けのタイヤ用ゴム成分として使用するのに適している。
【0046】
分枝共役ジエン共重合体のTgは、例えば、遷移金属触媒で調製されるハイシス−ブタジエンなどの共役ジエン化合物(3)を多く含有させればさせるほど低くなり、アニオン重合触媒で調製されるスチレンなどの芳香族ビニル化合物(2)多く含有させればさせるほど高くなる傾向がある。
【0047】
また、Tgは、分枝共役ジエン共重合体を製造する際の極性化合物の使用量によっても調節することができる。すなわち、極性化合物の使用量を多くすれば、ブタジエン構造のビニル量が増加しTgは向上する傾向があり、極性化合物の使用量を少なくすれば、ブタジエン構造のビニル量が低下しTgは低下する傾向がある。
【0048】
<粘弾性tanδの半値半幅>
本発明において、粘弾性tanδの半値半幅とは、ゴム組成物の粘弾性tanδ温度依存カーブのピーク形状に基づいて得られる値であって、具体的には、下記式により求められるものである。
半値半幅=(tanδピーク半値における高温側温度)−(tanδピークの温度)
ここで、粘弾性tanδ温度依存カーブとは、「ゴム組成物について、温度を変化させた際の、各温度におけるtanδの値をプロットすることにより得られる曲線」である。本発明において、該tanδは、スペクトロメーター(型式:VES−F1112、(株)上島製作所製)を用いて、動的歪振幅1%、周波数10Hzで測定する値である。
【0049】
本発明において、粘弾性tanδの半値半幅は40以下であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。半値半幅が40超の場合には、tanδピーク高さが低下し、十分なグリップ性能が得られない傾向がある。
【0050】
また、十分なウェットグリップ性能と燃費性能の観点からは、粘弾性tanδの半値半幅は40以下であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。半値半幅が40超の場合には、ウェットグリップ性能と燃費性能のバランスが低下し、タイヤとしての性能が十分に出ない傾向がある。
【0051】
該半値半幅は、一般に、粘弾性tanδ温度依存カーブの均一性と相関があり、半値半幅が小さいほど、同カーブの均一性が高いことが知られている。ここで、「均一性」とは、同カーブがより単峰性(多峰性に対する概念)を示すことを意味し、このことは、同時に、より相対的にtanδピークが高くなることを意味する。したがって、該半値半幅を小さくなるよう制御することにより、粘弾性tanδ温度依存カーブの均一性を高めるとともに、tanδピークを高くすることができ、もって、所望の特性を有するタイヤ用ゴム組成物、例えば、ウェットグリップ性能および燃費性能を向上させたタイヤ用ゴム組成物や、グリップ性能、特に20℃〜100℃、より好ましくは30〜45℃の範囲内の特定の温度域のグリップ性能を向上させたタイヤ用ゴム組成物などを提供することができる。
【0052】
<tanδ>
tanδの値はグリップ性能等の指標である。
【0053】
本発明の第二の態様において、例えば、0℃におけるtanδ(tanδ(0℃))はウェットグリップ性能の指標であり、大きい方が制動性がよいとされる。該値は、0.4以上が好ましく、0.6以上がさらに好ましい。0.4未満では、十分なウェットグリップ性能が得られない傾向がある。一方、tanδ(0℃)の上限値について特に制限はない。また、60℃におけるtanδ(tanδ(60℃))は転がり抵抗の指標であり、小さいほど燃費性能がよいとされる。該値は、0.4以下が好ましく、0.35以下がさらに好ましい。0.4超では、十分な燃費性能が出ない傾向がある。
【0054】
本発明の第三の態様において、上記20℃〜100℃、より好ましくは30〜45℃の範囲内の特定の温度域のtanδの値は、大きい方が制動性がよい。その下限値としては0.5以上が好ましく、0.6以上がさらに好ましい。0.5未満では、十分なグリップ性能が得られない傾向がある。一方、該tanδの上限値について特に制限はない。
【0055】
本発明において、tanδピークの値について、特に制限はないが、その下限値は好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上である。0.4未満では各温度におけるグリップ性能が十分に出ない傾向がある。tanδピークの上限値としては特に制限はない。
【0056】
<分子量>
本発明の分枝共役ジエン共重合体の質量平均分子量(Mw)は、10万以上であれば特に制限はないが、好ましくは、例えば、50万以上である。Mwが10万未満では重合体がゴム弾性を持たない液状体となる傾向がある。なお、Mwの上限値としては、好ましくは300万以下である。Mwが300万超では、ゴム弾性を持たない固形物となる傾向がある。
【0057】
分枝共役ジエン共重合体において、数平均分子量(Mn)に対するMwの比、すなわち、Mw/Mnの好ましい範囲は、10.0以下、より好ましくは5.0以下である。Mw/Mnが10.0超では、重合体がゴム弾性を持たない軟化物となる傾向がある。一方、Mw/Mnの下限値については、特に制限はなく、1.0以上において特に差し障りはない。
【0058】
<ムーニー粘度>
本発明に係わる分枝共役ジエン共重合体のムーニー粘度ML
1+4(130℃)は、一般には、25以上であることが好ましく、より好ましくは30以上である。ムーニー粘度が25未満では、流動性を持つ傾向がある。一方、ムーニー粘度は160以下が好ましく、より好ましくは150以下、さらに好ましくは100以下、さらに好ましくは60以下である。ムーニー粘度が160超では加工する際に軟化剤や加工助剤が多く必要となる傾向がある。
【0059】
本発明に係わる分枝共役ジエン共重合体のムーニー粘度ML
1+4(130℃)は、該共重合体を構成する分枝共役ジエン化合物(1)を共役ジエン化合物(3)で置き換えた、同一分子量の共重合体との比較において、低いものであるという特徴を有する。したがって、かかる分枝共役ジエン共重合体は、ゴム組成物を製造する際の、加工性の改善に有用である。
【0060】
(製法)
本発明の分枝共役ジエン共重合体は、分枝共役ジエン化合物(1)と、芳香族ビニル化合物(2)と、所望により、共役ジエン化合物(3)とを、共重合させて得ることができる。
【0061】
かかる共重合は、共重合させる順序において特に限定はなく、例えば、すべてのモノマーを一度にランダム共重合させてもよいし、あるいは、あらかじめ特定のモノマー(例えば、分枝共役ジエン化合物(1)のみ、芳香族ビニル化合物(2)のみ、共役ジエン化合物(3)のみ、あるいは、これらから選ばれる任意の2種のモノマーのみなど)を共重合させた後に、残りのモノマーを加えて共重合させたり、特定のモノマー毎に予め共重合させたものをブロック共重合させてもよい。
【0062】
かかる共重合は、いずれも常法により実施することができ、例えば、アニオン重合反応、配位重合反応等により実施することができる。
【0063】
重合方法については特に制限はなく、溶液重合法、乳化重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれをも用いることができるが、このうち、溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、バッチ式および連続式のいずれであってもよい。
【0064】
<アニオン重合>
該アニオン重合は、アニオン重合開始剤の存在下、適当な溶媒中で実施することができる。アニオン重合開始剤としては、慣用のものをいずれも好適に使用することができ、そのようなアニオン重合開始剤としては、例えば、一般式RLix(但し、Rは1個またはそれ以上の炭素原子を含む脂肪族、芳香族または脂環式基であり、xは1〜20の整数である。)を有する有機リチウム化合物があげられる。適当な有機リチウム化合物としては、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、フェニルリチウムおよびナフチルリチウムが挙げられる。好ましい有機リチウム化合物はn−ブチルリチウムおよびsec−ブチルリチウムである。アニオン重合開始剤は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。アニオン重合を行う際の重合開始剤の使用量は特に限定はないが、例えば、重合に供する全モノマー100g当り、約0.05〜35mmol用いるのが好ましく、約0.05〜0.2mmol用いるのがより好ましい。
【0065】
また、アニオン重合に用いる溶媒としては、アニオン重合開始剤を失活させたり、重合反応を停止させたりしないものであれば、いずれも好適に用いることができ、極性溶媒または非極性溶媒のいずれも使用することができる。極性溶媒としては、例えば、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒があげられ、非極性溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ペンタンなどの鎖式炭化水素、シクロヘキサンなどの環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などを挙げることができる。これら溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0066】
アニオン重合は、さらに極性化合物の存在下に実施するのが好ましい。極性化合物としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、エチルプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジフェニルエーテル、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)などが挙げられる。極性化合物は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。この極性化合物は、ブタジエン部のミクロ構造に関し、1,2−構造の含量を減少させるのに有用である。極性化合物の使用量は、極性化合物の種類および重合条件により異なるが、アニオン重合開始剤とのモル比(極性化合物/アニオン重合開始剤)として0.1以上であることが好ましい。アニオン重合開始剤とのモル比(極性化合物/アニオン重合開始剤)が0.1未満ではミクロ構造を制御することに対する極性物質の効果が十分でない傾向がある。
【0067】
アニオン重合の際の反応温度は、好適に反応が進行する限り特に限定はないが、通常−10℃〜100℃であることが好ましく、25℃〜70℃であることがより好ましい。また、反応時間は、仕込み量、反応温度、その他条件により異なるが、通常、例えば、3時間程度行えば十分である。
【0068】
上記アニオン重合は、この分野で通常使用する反応停止剤の添加により、停止させることができる。そのような反応停止剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールまたは酢酸などの活性プロトンを有する極性溶媒およびこれらの混液、またはそれらの極性溶媒とヘキサン、シクロヘキサンなどの無極性溶媒との混液が挙げられる。反応停止剤の添加量は、通常、アニオン重合開始剤に対し、同モル量もしくは2倍モル量程度で十分である。
【0069】
重合反応停止後、分枝共役ジエン共重合体は、重合溶液から常法により溶媒を除去することにより、または、重合溶液をその1倍量以上のアルコールに注ぎ、分枝共役ジエン共重合体を沈殿させることにより、容易に単離することができる。
【0070】
<配位重合>
配位重合は、上記アニオン重合におけるアニオン重合開始剤に代えて、配位重合開始剤を用いることにより、実施することができる。配位重合開始剤としては、慣用のものをいずれも好適に用いることができ、そのような配位重合開始剤としては、例えば、ランタノイド化合物、チタン化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物等の遷移金属含有化合物である触媒が挙げられる。また、所望により、さらにアルミニウム化合物、ホウ素化合物を助触媒として使用することができる。
【0071】
ランタノイド化合物は、原子番号57〜71の元素(ランタノイド)のいずれかを含むものであれば特に限定されないが、これらランタノイドのうち、とりわけネオジウムが好ましい。ランタノイド化合物としては、例えば、これら元素のカルボン酸塩、β−ジケトン錯体、アルコキサイド、リン酸塩または亜リン酸塩、ハロゲン化物などが挙げられる。これらの内、取り扱いの容易性から、カルボン酸塩、アルコキサイド、β−ジケトン錯体が好ましい。チタン化合物としては、例えば、シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換シクロペンタジエニル基または置換インデニル基を含み、かつハロゲン、アルコキシシリル基、アルキル基の中から選ばれる1〜3の置換基を有するチタン含有化合物などが挙げられるが、触媒性能の点から、アルコキシシリル基を1つ有する化合物が好ましい。コバルト化合物としては、例えば、コバルトのハロゲン化物、カルボン酸塩、β−ジケトン錯体、有機塩基錯体、有機ホスフィン錯体などが挙げられる。ニッケル化合物としては、例えば、ニッケルのハロゲン化物、カルボン酸塩、β−ジケトン錯体、有機塩基錯体などが挙げられる。配位重合開始剤として用いる触媒は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。配位重合を行う際の重合開始剤としての触媒の使用量は特に限定はないが、例えば、好ましい使用量としては、アニオン重合の場合の触媒の使用量と同様である。
【0072】
助触媒として用いるアルミニウム化合物としては、例えば、有機アルミノキサン類、ハロゲン化有機アルミニウム化合物、有機アルミニウム化合物、水素化有機アルミニウム化合物などが挙げられる。有機アルミノキサン類としては、例えば、アルキルアルミノキサン類(メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、プロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、オクチルアルミノキサン、へキシルアルミノキサンなど)が、ハロゲン化有機アルミニウム化合物としては、例えば、ハロゲン化アルキルアルミニウム化合物(ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド)が、有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルキルアルミニウム化合物(トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム)が、水素化有機アルミニウム化合物としては、例えば、水素化アルキルアルミニウム化合物(ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド)が挙げられる。また、ホウ素化合物としては、例えば、テトラフェニルボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート等のアニオン種を含む化合物が挙げられる。これら助触媒も、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
配位重合に関し、溶媒および極性化合物としては、アニオン重合で説明したものを同様に使用することができる。また、反応時間および反応温度もアニオン重合で説明したものと同様である。重合反応の停止および分枝共役ジエン共重合体の単離も、アニオン重合の場合と同様にして行うことができる。
【0074】
分枝共役ジエン共重合体の質量平均分子量(Mw)は、例えば、重合時に仕込む分枝共役ジエンおよびその他のモノマー量を調節することにより制御することができる。例えば、全モノマー/アニオン重合触媒比を大きくすればMwを大きくすることができ、逆に小さくすればMwを小さくすることができる。分枝共役ジエン共重合体の数平均分子量(Mn)についても同様である。
【0075】
分枝共役ジエン共重合体のTgは、例えば、重合時に仕込む芳香族ビニル化合物(2)の仕込量を調節することによりにより制御することができる。例えば、芳香族ビニル化合物(2)の仕込比を大きくすればTgを高くすることができ、反対に、芳香族ビニル化合物(2)の仕込比を小さくすればTgを小さくすることができる。
【0076】
分枝共役ジエン共重合体のムーニー粘度は、例えば、重合時に仕込む分枝共役ジエンモノマー(1)の量を調節することによりにより制御できる。例えば、分枝共役ジエン化合物(1)の仕込量を少なくすればムーニー粘度は大きくなり、反対に多くすればムーニー粘度は小さくなる。
【0077】
(ゴム組成物)
こうして得られる本発明の分枝共役ジエン共重合体は、ゴム工業の分野で通常使用される他の成分を適宜配合することによりタイヤ用ゴム組成物とすることができる。
【0078】
本発明のゴム組成物に配合すべき成分としては、例えば、分枝共役ジエン共重合体以外の他のゴム成分、充填剤、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0079】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ゴム成分における分枝共役ジエン共重合体の配合量は、約10質量%以上であり、好ましくは約20質量%以上である。分枝共役ジエン共重合体の配合量が10質量%未満では、分枝共役ジエン共重合体を配合することによる、ゴム組成物の粘弾性tanδカーブに及ぼす効果が小さくなる傾向がある。一方、分枝共役ジエン共重合体の配合量の上限値としては特に制限はない。
【0080】
本発明において、分枝共役ジエン共重合体と共に使用する他のゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系ゴムが挙げられる。これらのジエン系ゴムは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、分枝共役ジエン共重合体との併用の下グリップ性能および耐摩耗性がバランスよく得られるという理由からNR、BR、SBRを使用することが好ましく、NRを使用することがより好ましい。該NRとしては特に限定されず、タイヤ製造において一般的なものを用いることができ、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20などが挙げられる。
【0081】
充填剤としては、カーボンブラック、シリカなどこの分野で通常使用される充填剤を挙げることができる。
【0082】
カーボンブラックとしては、タイヤ製造において一般的に用いられるものを使用することができ、例えば、SAF、ISAF、HAF、FF、FEF、GPFなどが挙げられ、これらのカーボンブラックを単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、約80m
2/g以上であり、好ましくは、約110m
2/g以上である。N
2SAが80未満ではグリップ性能、耐磨耗性能ともに悪くなる傾向があり、110m
2/g未満では加工性改善のため分枝共役ジエン共重合体を使用することによる効果が小さくなる傾向にある。一方、カーボンブラックのN
2SAは約270m
2/g以下であり、好ましくは、約260m
2/g以下である。カーボンブラックのN
2SAが270より大きい場合には、カーボンブラックの分散が悪くなる傾向がある。カーボンブラックのN
2SAは、JIS K 6217のA法に準じて測定される。
【0083】
カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、約1質量部以上であり、約3質量部以上であることが好ましい。カーボンブラックの配合量が1質量部未満では耐磨耗性が低下する傾向がある。一方、カーボンブラックの配合量は、約200質量部以下であり、150質量部以下であることがより好ましい。カーボンブラックの配合量が200質量部を超えると加工性が悪化する傾向がある。
【0084】
シリカとしては、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水ケイ酸)、湿式法により調製されたシリカ(含水ケイ酸)などが挙げられる。なかでも、表面のシラノール基が多く、シランカップリング剤との反応点が多いという理由から、湿式法により調製されたシリカが好ましい。シリカのN
2SAは、約50m
2/g以上であり、好ましくは、約80m
2/g以上である。N
2SAが50未満では補強効果が小さく耐摩耗性が低下する傾向がある。一方、シリカのN
2SAは約300m
2/g以下であり、好ましくは、約250m
2/g以下である。N
2SAが300m
2/gより大きい場合には、分散が低下し加工性が低下する傾向がある。シリカのN
2SAは、ASTMD3037−93に準じて、BET法により測定される。
【0085】
シリカの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、約1質量部以上であり、約10質量部以上であることが好ましい。シリカの配合量が1質量部未満では耐磨耗性が十分でない傾向がある。一方、シリカの配合量は、約150質量部以下であり、100質量部以下であることがより好ましい。シリカの配合量が150質量部を超えるとシリカの分散性が悪化し加工性が悪化する傾向がある。
【0086】
前記ゴム組成物は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、従来公知のシランカップリング剤を用いることができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系;3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系;γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシドキシ系;3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系;3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシランなどのクロロ系;などが挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、加工性が良好である点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを含有することが好ましい。
【0087】
シランカップリング剤を含有する場合、その配合量は、シリカ100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましい。シランカップリング剤の含有量が1質量部未満では、分散性の改善等の効果が十分に得られない傾向がある。また、シランカップリング剤の含有量は、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。シランカップリング剤の含有量が20質量部を超える場合は、充分なカップリング効果が得られず、補強性が低下する傾向がある。
【0088】
本発明のゴム組成物は、前記の成分以外にも、従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、他の補強用充填剤、老化防止剤、オイル、ワックス、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤等を適宜配合することができる。
【0089】
こうして得られる本発明のゴム組成物は、タイヤの各種部材として使用することができるが、例えば、ウェットグリップ性能および低燃費性能をともに高いレベルにまで向上させることができるもの、あるいは、特定の温度域におけるグリップ性能を向上させることができるものであるため、特に、タイヤトレッドとして、好適に使用することができる。
【0090】
(空気入りタイヤ)
本発明のゴム組成物は、タイヤの製造に使用され、通常の方法により、タイヤとすることができる。すなわち、必要に応じて前記成分を適宜配合した混合物を混練りし、未加硫の段階でタイヤの各部材の形状に合わせて押出し加工し、タイヤ成形機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得ることができ、これに空気を入れ、空気入りタイヤとすることができる。
【0091】
本明細書において、MwおよびMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定され、標準ポリスチレンより換算される。
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)により測定される。
ムーニー粘度は、JIS K 6300に準じて測定される。
単に、例えば「1〜99質量%」というときは両端の値を含むものとして解釈する。
【実施例】
【0092】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、実施例にのみ限定されるものではない。
【0093】
以下に、実施例および比較例のジエン系共重合体の合成、並びに、ゴム組成物の製造に用いた各種薬品をまとめて示す。各種薬品は必要に応じて常法に従い精製を行った。
【0094】
<共重合体の合成に用いた各種薬品>
シクロヘキサン:関東化学(株)製のシクロヘキサン
イソプロパノール:関東化学(株)製のイソプロパノール
分枝共役ジエン化合物:和光純薬工業(株)のβ−ミルセン
芳香族ビニル化合物:和光純薬工業(株)のスチレン
共役ジエン化合物:高千穂化学工業(株)製の1,3−ブタジエン
極性化合物:和光純薬工業(株)製のテトラヒドロフラン(THF)
【0095】
<ゴム組成物の製造に用いた各種薬品>
共重合体:本明細書の記載に従い合成したもの
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のダイヤブラックA(N110、チッ素吸着比表面積(N
2SA):130m
2/g)
オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−260
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華2種
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0096】
(実施例1および2、ならびに、比較例1)
実施例1
(1)(共重合体1の合成)
乾燥し窒素置換した3Lの耐圧ステンレス容器に、シクロヘキサン 1500ml、ミルセン 10g、スチレン 50g、ブタジエン 40gとともにTHF 3mlを加え、更にn−ブチルリチウム(n−BuLi)0.4mmolを加えた後、40℃で3時間重合反応を行った。3時間後、1Mイソプロパノール/ヘキサン溶液を0.44ml滴下し、反応を終了させた。得られた重合溶液を送風乾燥して溶媒を除去したのち内圧0.1kPa以下/温度50℃の減圧条件にて恒量に達するまで乾燥して、共重合体1を100g(乾燥質量)得た。重合転化率(「乾燥質量/仕込量」の百分率)はほぼ100%であった。
(2)(未加硫ゴム組成物1の製造)
表2記載の配合に従い、上記で得た共重合体1と、上記ゴム組成物製造用の各種薬品(不溶性硫黄および加硫促進剤を除く)を、バンバリーミキサーにて、150℃で5分間混練りし、混練り物を得た。得られた混練物に、硫黄ならびに加硫促進剤を添加して、オープンロールを用いて、170℃で12分間混練りし、未加硫ゴム組成物1を得た。
(3)(加硫ゴム組成物1の製造)
上記(2)で得た未加硫ゴム組成物1を、170℃で20分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物1を得た。
【0097】
実施例2
(1)(共重合体2の合成)
ミルセンを20g、ブタジエンを30gとした以外は、実施例1(1)と同様に処理して、共重合体2を100g得た。重合転化率はほぼ100%であった。
(2)(未加硫ゴム組成物2の製造)
共重合体1に代えて共重合体2を使用した以外は、実施例1(2)と同様に処理して、未加硫ゴム組成物2を得た。
(3)(加硫ゴム組成物2の製造)
上記(2)で得た未加硫ゴム組成物を、実施例1(3)と同様に処理して、加硫ゴム組成物2を得た。
【0098】
比較例1
(1)(共重合体3の合成)
ミルセン 10g、スチレン 50gおよびブタジエン 40gに代えて、スチレン 50gおよびブタジエン 50gとした以外は、実施例1(1)と同様に処理して、共重合体3を100g得た。重合転化率はほぼ100%であった。
(2)(未加硫ゴム組成物3の製造)
共重合体1に代えて共重合体3を使用した以外は、実施例1(2)と同様に処理して、未加硫ゴム組成物3を得た。
(3)(加硫ゴム組成物3の製造)
上記(2)で得た未加硫ゴム組成物を、実施例1(3)と同様に処理して、加硫ゴム組成物3を得た。
【0099】
上記で得た共重合体1〜3について、下記の試験を行った。結果を表1に示す。
【0100】
(ミクロ構造(ビニル量(モル%)、スチレン量(質量%))の測定)
ミクロ構造は、ブルカー・バイオスピン(株)製のADVANCE II シリーズの装置により測定した。
【0101】
(質量平均分子量Mw、数平均分子量Mnの測定)
Mw、Mnは、東ソー(株)製GPC−8000シリーズの装置、検知器として示差屈折計を用い、標準ポリスチレンにより校正した。
【0102】
(ガラス転移温度(Tg)の測定)
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(製)のDSC Q200シリーズの装置)で、昇温速度10℃/分にて開始温度−150℃から最終温度150℃までを測定し、Tgを算出した。
【0103】
【表1】
【0104】
上記で得た加硫ゴム組成物1〜3を用いて、または、未加硫ゴム組成物1〜3がドレッド部となるようにして作製した試験タイヤ1〜3(サイズ:195/65R15、加硫条件:170℃、20分)を用いて、下記の試験を行った。結果を表2に示す。
【0105】
(粘弾性tanδの半値半幅)
加硫ゴム組成物1〜3について、スペクトロメーター(型式:VES−F1112、(株)上島製作所製)を用いて、動的歪振幅1%、周波数10Hzで、温度変化に対するtanδの値の変化を測定した。結果を
図1に示す。
図1より、各実施例および比較例の粘弾性tanδの半値半幅を求めた。
【0106】
(転がり抵抗性)
試験タイヤ1〜3を、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を、転がり抵抗試験機を用いて測定し、比較例1を100とした時の指数で表示した。指数は小さい方が良好である。
【0107】
(ウェットグリップ性能)
試験タイヤ1〜3を装着した車(リム:15×6JJ、内圧:230kPa)を、湿潤アスファルト路面にて初速度100km/hで走行させ、制動距離を求めた。結果は、下式で示される指数で表した。数字が大きいほどウェットスキッド性能(ウェットグリップ性能)が良好である。
指数は次の式で求めた。
ウェットスキッド性能=(比較例1の制動距離)÷
(各実施例又は各比較例の制動距離)
【0108】
(タイヤバランス)
上記ウェットグリップ性能の評価に使用した車で、ドライバーのタイヤバランスに対する評価を、下記基準に基づき指数で表した。数字が大きいほどタイヤバランスが良好である。すなわち、タイヤバランスは、以下の10項目に対し、各評価点の最大値が20、比較例1の評価点が10となるようにして評価した。したがって、評価点の合計の最大値は200であり、比較例1の評価点の合計は100となる。
(1)N付近手応え
(2)操舵時手応え
(3)旋回グリップ
(4)レーンチェンジグリップ
(5)収まり
(6)ヨーの追従遅れ
(7)ヨーの線形感
(8)ヨーゲイン
(9)自己直進性
(10)路面外乱
【0109】
(加工性)
前記未加硫ゴム組成物から所定のサイズの試験片を作成し、JIS K 6300「未加硫ゴムの試験方法」に準じて、ムーニー粘度試験機を用いて、1分間の予熱によって熱せられた130℃の温度条件にて、大ローターを回転させ、10分間経過した時点でのムーニー粘度ML
1+10(130℃)を測定した。なお、ムーニー粘度が小さいほど、加工性に優れることを示している。
【0110】
【表2】
【0111】
(実施例3〜7、および、比較例2)
実施例3
(1)(共重合体4の合成)
乾燥し窒素置換した3Lの耐圧ステンレス容器に、シクロヘキサン 1500ml、ミルセン 10g、スチレン 50g、ブタジエン 40gとともにTHF 30mlを加え、更にn−ブチルリチウム(n−BuLi)0.4mmolを加えた後、40℃で3時間重合反応を行った。3時間後、1Mイソプロパノール/ヘキサン溶液を0.44ml滴下し、反応を終了させた。得られた重合溶液を送風乾燥して溶媒を除去したのち内圧0.1kPa以下/温度50℃の減圧条件にて恒量に達するまで乾燥して、共重合体4を100g(乾燥質量)得た。重合転化率(「乾燥質量/仕込量」の百分率)はほぼ100%であった。
(2)(未加硫ゴム組成物4の製造)
表4記載の配合に従い、上記で得た共重合体4と、上記ゴム組成物製造用の各種薬品(不溶性硫黄および加硫促進剤を除く)を、バンバリーミキサーにて、150℃で5分間混練りし、混練り物を得た。得られた混練物に、硫黄ならびに加硫促進剤を添加して、オープンロールを用いて、170℃で12分間混練りし、未加硫ゴム組成物4を得た。
(3)(加硫ゴム組成物4の製造)
上記(2)で得た未加硫ゴム組成物を、170℃で20分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物4を得た。
【0112】
実施例4
(1)(共重合体5の合成)
ミルセンを20g、ブタジエンを30gとした以外は、実施例3(1)と同様に処理して、共重合体5を100g得た。重合転化率はほぼ100%であった。
(2)(未加硫ゴム組成物5の製造)
共重合体4に代えて共重合体5を使用した以外は、実施例3(2)と同様に処理して、未加硫ゴム組成物5を得た。
(3)(加硫ゴム組成物5の製造)
上記(2)で得た未加硫ゴム組成物を、実施例3(3)と同様に処理して、加硫ゴム組成物5を得た。
【0113】
実施例5
(1)(共重合体6の合成)
ミルセンを30g、ブタジエンを20gとした以外は、実施例3(1)と同様に処理して、共重合体6を100g得た。重合転化率はほぼ100%であった。
(2)(未加硫ゴム組成物6の製造)
共重合体4に代えて共重合体6を使用した以外は、実施例3(2)と同様に処理して、未加硫ゴム組成物6を得た。
(3)(加硫ゴム組成物6の製造)
上記(2)で得た未加硫ゴム組成物を、実施例3(3)と同様に処理して、加硫ゴム組成物6を得た。
【0114】
実施例6
(1)(共重合体7の合成)
ミルセンを10g、スチレンを60g、ブタジエンを30gとした以外は、実施例3(1)と同様に処理して、共重合体7を100g得た。重合転化率はほぼ100%であった。
(2)(未加硫ゴム組成物7の製造)
共重合体4に代えて共重合体7を使用した以外は、実施例3(2)と同様に処理して、未加硫ゴム組成物7を得た。
(3)(加硫ゴム組成物7の製造)
上記(2)で得た未加硫ゴム組成物を、実施例3(3)と同様に処理して、加硫ゴム組成物7を得た。
【0115】
実施例7
(1)(共重合体8の合成)
ミルセンを20g、スチレンを60g、ブタジエンを20gとした以外は、実施例3(1)と同様に処理して、共重合体8を100g得た。重合転化率はほぼ100%であった。
(2)(未加硫ゴム組成物8の製造)
共重合体4に代えて共重合体8を使用した以外は、実施例3(2)と同様に処理して、未加硫ゴム組成物8を得た。
(3)(加硫ゴム組成物8の製造)
上記(2)で得た未加硫ゴム組成物を、実施例3(3)と同様に処理して、加硫ゴム組成物8を得た。
【0116】
比較例2
(1)(共重合体9の合成)
ミルセン 10g、スチレン 50gおよびブタジエン 40gに代えて、スチレン 50gおよびブタジエン 50gとした以外は、実施例3(1)と同様に処理して、共重合体9を100g得た。重合転化率はほぼ100%であった。
(2)(未加硫ゴム組成物9の製造)
共重合体4に代えて共重合体9を使用した以外は、実施例3(2)と同様に処理して、未加硫ゴム組成物9を得た。
(3)(加硫ゴム組成物9の製造)
上記(2)で得た未加硫ゴム組成物を、実施例3(3)と同様に処理して、加硫ゴム組成物9を得た。
【0117】
上記で得た共重合体4〜9について、前記と同じ試験を行った。結果を表3に示す。
【0118】
【表3】
【0119】
上記で得た未加硫ゴム組成物4〜9または加硫ゴム組成物4〜9を用いて、下記の試験を行った。結果を表4に示す。なお、加工性に関する試験は前記と同じ方法により実施した。
【0120】
(粘弾性tanδの半値半幅)
加硫ゴム組成物4〜9について、スペクトロメーター(型式:VES−F1112、(株)上島製作所製)を用いて、動的歪振幅1%、周波数10Hzで、温度変化に対するtanδの値の変化を測定した。結果を
図2に示す。
図2より、各実施例および比較例の粘弾性tanδの半値半幅を求めた。
【0121】
(グリップ性能)
前記のゴム組成物からなるトレッドを有するタイヤ(サイズ:195/65R15、加硫条件:170℃、20分、リム:15×6JJ、内圧:230kPa)を作製し、アスファルト路面のテストコースにて実車走行を行なった。その際の操舵時のコントロール安定性をテストドライバーが評価し、比較例2を1として5段階で評価した。数値が大きいほどグリップ性能が大きく、優れていることを示す。
【0122】
【表4】