(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載された冷暖房用パネルと、この冷暖房用パネルに接続された熱媒体供給装置とを備え、前記冷暖房用パネルは、その背面が建物内部の壁部に対向するように配置されることを特徴とする冷暖房装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で示される従来例では、重量のある上部ヘッダが管部材の上端部に設置されていることから、熱放射パネルの設置とデザイン性とが制約される。
特に、特許文献1で示される従来例では、熱放射パネルの高さは床面から天井付近まであるので、上端部に配置される上部ヘッダが重いと、熱放射パネルの設置時だけでなく設置後もパネルがふらつかないようにするためにしっかりと固定しなければならない。
【0006】
本発明の目的は、放熱特性に優れ設置が容易な冷暖房用パネル及び冷暖房装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
図面を参照して説明すると、本発明の冷暖房用パネル1は、
上端部と下端部とが開口されるとともにそれぞれ上下に延びて配置され、かつ、内部に熱媒体が流通される偶数本の熱伝導性の第一管部材31と、これらの第一管部材31が
それぞれ収納され上端部と
下端部とが開口された熱伝導性の第二管部材32と、
前記第二管部材に収納された前記偶数本の第一管部材のうち隣り合う第一管部材同士を連通するとともに前記第一管部材の上端部に接続され
非熱伝導性材料から形成されたU字状上部連通管41と、を備え、前記第二管部材は、上下方向とは交差する方向
であって前記一方向と交差する方向に複数が並んで配置され、
前記偶数本の第一管部材の下端部と前記第二管部材の下端部とはそれぞれ開口され、前記複数の第二管部材のうち隣合う第二管部材の一方に収納された前記偶数本の第一管部材のうち前記一方向の一側に配置された第一管部材の下部と、前記隣合う第二管材のうち他方に収納された前記偶数本の第一管部材のうち前記一方向の一側に配置された第一管部材の下部とを非熱伝導性材料から形成されたU字状の下部連通管42で連通することを特徴とする。
【0008】
この構成の本発明では、偶数本の第一管部材のうち1つの第一管部材の内部に冷水や温水等の熱媒体が流通されると、熱媒体が上部連通管を通って当該1つの第一管部材と隣り合う第一管部材の内部に流通することになる。第一管部材及び第二管部材は熱伝導性であるため、熱媒体の熱は第一管部材から第二管部材に伝達され、この第二管部材から室内に放出される。
本発明では、隣り合う第一管部材の上端部同士が上部連通管を介して連通されるので、上下方向とは交差する方向(左右方向)に並ぶ第二管部材の上端部には1本の連続した上部ヘッダが不要となる。このように、第二管部材の上端には、重量のある大きな部材がないので、冷暖房用パネルを設置する際に、上部がその重さでふらつくことが少なく、設置作業が容易となる。設置後においても、冷暖房用パネルの設置姿勢が安定する。当該効果は、冷暖房用パネルの高さが高い場合に顕著である。また、冷えた上部ヘッダ表面の結露水が管部材の間で滴下するという問題がなくなる。
しかも、本発明では、熱媒体が流通される第一管部材の周囲が第二管部材で保護されることになるので、外部から物が当たることで第一管部材自体が破損等することが少なくなり、熱媒体の外部への漏出を防止できる。
さらに、第二管部材の内部に偶数本の第一管部材が収納されているので、1つの第一管部材の下端側から熱媒体が流入されると必ず他の第一管部材の下端側から流出することになる。そのため、第二管部材は奇数本であっても、第一管部材の下部に熱冷媒を供給し、この第一管部材とは異なる第一管部材の下部から熱冷媒を回収することができるので、冷暖房用パネルの設計の自由度が増すことになる。
その上、隣り合う第一管部材同士が下部連通管を介して連通されているので、両端に配置された第二管部材の下端部間を連結する1本の下部ヘッダが不要となる。そのため、第一管部材の下部同士を接続する連通管が必要最小限なものであるので、冷暖房用パネル自体が軽量化され、冷暖房用パネルの設置が容易となる。
【0009】
本発明では、前記偶数本の第一管部材は、それぞれ円筒状であり、前記第二管部材は、その内周部が前記第一管部材の外周部に複数箇所で接合される角筒状である構成が好ましい。
この構成では、第一管部材と第二管部材とを一体とした押し出し成形が可能となり、第一管部材を組み込んだ状態で第二管部材を容易に製造できる。しかも、第一管部材の外周が第二管部材の内周に複数箇所で接合するので、第一管部材の熱を第二管部材に効率的に伝達することができる。
【0010】
本発明では、前記上部連通管を覆うプラスチック製のキャップ部材5が前記第二管部材の上端部に接続されている構成が好ましい。
この構成では、第二管部材に収納された第一管部材と上部連通管をキャップ部材で保護することができる。さらに、キャップ部材がプラスチック製であるため、第二管部材の上部での結露を防止することができる。
【0011】
本発明では
、前記第二管部材の下部及び前記下部連通管の正面を覆うプラスチック製の前面カバー61を備えた構成が好ましい。
この構成では、前面カバーがあることで、連結管やパイプ類を隠すことができる。しかも、前面カバーがプラスチック製であるため、前面カバーに結露が生じにくいものとなるので、前面カバーに生じた結露で床面を濡らすことを防止できる。
【0012】
本発明の冷暖房装置は、前述の構成の冷暖房用パネル1と、この冷暖房用パネルに接続された熱媒体供給装置2とを備え、前記冷暖房用パネルは、その背面が建物内部の壁部Wに対向するように配置される構成が好ましい。
この構成の本発明では、前述の構成の冷暖房用パネルを備えて冷暖房装置が構成されているので、冷暖房用パネルの設置が容易な冷暖房装置を提供することができる。
【0013】
本発明では、前記第二管部材の前記壁部と対向する背面にはプラスチック製の結露防止板33が設けられている構成が好ましい。
この構成の本発明では、第二管部材の背面からの熱の伝達を少なくすることができる。その結果、室内側に効率良く熱を伝えることになるだけでなく、第二管部材の背面での結露を防止し、第二管部材から生じる熱が直接、壁部へ伝わりにくいものとなり、壁部での結露も少なくすることができる。
【0014】
本発明では、前記熱媒体供給装置は、前記複数の第二管部材のうち一方の端の第二管部材に収納された第一管部材に熱媒体を供給する流体供給管21と、前記複数の第二管部材のうち他方の端の第二管部材に収納された第一管部材から熱媒体を回収する流体回収管22とを備え、前記流体供給管と前記流体回収管とは、それぞれ前記冷暖房用パネルが設置される床部Fに形成された孔F1に挿通される構成が好ましい。
この構成では、流体供給管と流体回収管とが床部の孔に挿通されているので、第一管部材の下端部に流体供給管の端部と流体回収管の端部とをそれぞれ接続することで、第一管部材及び第二管部材の長さを長いものにできる。つまり、特許文献1の従来例では、熱放射パネルに熱媒体を供給あるいは回収する配管が壁部を貫通して設けられ、これらの配管を含んで熱放射パネルの下部が下部ヘッダで覆われる。これでは、下部ヘッダの上下寸法が大きくなるので、放熱する面積が小さいものとなる。これに対して、本願発明では、特許文献1のような構成の下部ヘッダを省略することができるため、第一管部材及び第二管部材の長さを長くすることが可能となり、冷暖房用パネルから放射される熱量を大きなものにできる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び
図2には本実施形態の全体構成が示されている。
図1は本実施形態にかかる冷暖房装置の正面を示し、
図2は暖冷房装置の側面を示す。
図1及び
図2において、本実施形態の冷暖房装置は、建物の壁部Wの正面に配置される冷暖房用パネル1と、この冷暖房用パネル1に接続された熱媒体供給装置2とを備えている。
冷暖房用パネル1は、パネル本体3と、このパネル本体3を壁部Wに設置する設置部4とを備える。
パネル本体3は、所定の大きさ、例えば、床面から天井付近までの高さ寸法が2200mm、上下と直交する方向(左右方向)の寸法(幅寸法)が700mmである。
パネル本体3の正面と壁部Wの壁面との間は、所定寸法、例えば80mmを有する。
【0017】
熱媒体供給装置2は、図示しない熱源から熱媒体を発生させる装置本体20を有する。この装置本体20には、熱媒体を冷暖房用パネル1に供給する流体供給管21と、冷暖房用パネル1を循環した熱媒体を回収する流体回収管22とがそれぞれ接続されている。
装置本体20は、図示しないヒートポンプや制御装置等の従来技術と同様の装置を備えるものであり、床下等の適宜な場所に設置される。本実施形態では、冷暖房用パネル1に供給される熱媒体は、冷水や温水等の流体であり、冷水のみ冷暖房用パネル1に供給される場合や、温水のみ冷暖房用パネル1に供給される場合や、冷水と温水とが切り替えられて冷暖房用パネル1に供給される場合がある。
【0018】
パネル本体3は、内部に熱媒体が流通される2本の第一管部材31と、2本の第一管部材31がそれぞれ収納された複数本の第二管部材32と、当該2本の第一管部材31同士を連通する上部連通管41と、隣り合う第二管部材32にそれぞれ収納され互いに隣り合う第一管部材31同士を連通する下部連通管42と、第二管部材32の上端部に接続されたキャップ部材5と、第二管部材32の下部に設けられたプラスチック製の下部連結体6と、を備える。
第一管部材31は、パネル本体3の正面に対して奥行き方向(
図1中紙面貫通方向;
図2中紙面左右方向)に並んで配置されている。これらの第一管部材31は、その上端部と下端部とがそれぞれ開口されている。
【0019】
第二管部材32は、パネル本体3の正面に対して上下と直交する方向(
図1中左右方向:
図2中紙面貫通方向)に並んで配置されており、その上端部と下端部とがそれぞれ開口されている。これらの第二管部材32の上端縁と下端縁との高さは、それぞれ同じ位置にある。第二管部材32は複数であれば、その数は限定されるものではない。
第二管部材32の背面には、壁部Wと対向してプラスチック製の結露防止板33が設けられている。この結露防止板33の上下方向に延びた長さは、第二管部材32の上下方向に延びた長さと同じであり(
図2参照)、左右方向の寸法は、第二管部材32の背面の幅方向と同じである(
図3参照)。結露防止板33は、所定の厚み寸法、例えば、2mmを有する。
【0020】
設置部4は、壁部Wの
図1中左右方向に沿って並んで固定される複数個の係合部4Aと、これらの係合部4Aに係合され左右方向に延びて配置された連結バー4Bと、この連結バー4Bと各第二管部材32の背面とを接合する接合ロッド4Cとを有する。
これらの接合ロッド4Cは、その基端部が第二管部材32の上端部近傍にそれぞれ接合され、その先端部が連結バー4Bの外周部と接合されている。
係合部4Aの上部は、連結バー4Bの外周部の円弧状下面を受けるように湾曲して形成されている。
【0021】
図3から
図5にはパネル本体3の上部の構造が示されている。
図3は、パネル本体3の上部の分解斜視を示し、
図4は、パネル本体3の上部の縦断面を示し、
図5はパネル本体3の水平断面を示す。
図3から
図5において、第一管部材31は円筒状に形成され、第二管部材32は角筒状に形成されている。
2本の第一管部材31の外周部は、それぞれ第二管部材32の内周部に3箇所で接合され、かつ、互いに対向する1箇所で接合される。これらの第一管部材31と第二管部材32とはアルミニウム等の熱伝達性材料から押し出しで一体に形成される。
【0022】
上部連通管41は、プラスチック等の非熱伝導性材料から形成されたU字状管であり、その2つの開口端が2本の第一管部材31の上端開口端にそれぞれ樹脂パッキン等を介して接合される。そのため、第二管部材32に収納された2本の第一管部材31のうち一方の第一管部材31を流通する熱媒体は、上部連通管41を経由して他方の第一管部材31を通る(
図4の矢印P参照)。
キャップ部材5は、上部連通管41を覆うに十分な高さと第二管部材32の水平面上の輪郭形状と同じ平面形状を有するプラスチック製の箱状体である。キャップ部材5は、下方に向けて開口されており、その下方開口端が適宜な手段で第二管部材32の上端開口部と接合されている。
【0023】
図3に示される通り、壁部Wには、第二管部材32の背面に対向する部分に調湿壁材7が設けられている。この調湿壁材7は、調湿性のある無機多孔質材を添加した火山性ガラス質複合板(厚さ:6mm)によって形成されている。
調湿壁材7は、適宜な大きさを有するものであり、例えば、パネル本体3の全体の背面形状とほぼ同じ形状であってもよい。
【0024】
図6は、パネル本体3の下部を示す斜視図であり、
図7は、下部連結体6の分解斜視図である。
図6及び
図7において、下部連結体6は、複数本の第二管部材32の下部、下部連通管42、流体供給管21及び流体回収管22の配管類の正面を覆う前面カバー61と、これらの配管類の背面を覆う背面カバー62と、これらの前面カバー61及び背面カバー62の両側面にそれぞれ設けられ配管類の側面を覆う側面カバー63と、を備える。これらの前面カバー61、背面カバー62及び側面カバー63は板状であり、上下に開口された箱状体60として組み立てられている。
箱状体60の上部には、複数の第二管部材32を仕切る板状の仕切カバー64が設けられている。なお、本実施形態では、前面カバー61及び側面カバー63から下部連結体6を構成し、背面カバー62及び仕切カバー64を省略するものであってもよい。
【0025】
前面カバー61は、下部において内側に折り曲げられた段差部61Aを有する。
前面カバー61の上下方向の寸法は、例えば、150mm以下であり、左右方向の寸法は、両端に配置された第二管部材32の寸法と同じかやや大きい。
側面カバー63は、上下方向及び左右方向の寸法L1(例えば150mm)の正方形の1つの角部に寸法L2(例えば20mm)の正方形状の切欠63Aが形成された板部材である。切欠63Aに段差部61Aが係合される。この切欠63Aは、パネル本体3の正面を斜め上から下端に向けて見た際(
図6の矢印Q参照)、奥行き感を出させるために形成される。
仕切カバー64は、複数の第二管部材32の下端部を係合する平面矩形状の係合孔64Aが形成されている。なお、仕切カバー64は、
図7に示される通り、複数の係合孔64Aが等間隔に形成された板状部としてもよく、
図6で示される通り、隣り合う係合孔64Aの間の両側にそれぞれ切欠64Bを設けるものでもよい。
【0026】
パネル本体3の下部の構造を
図8から
図10に基づいて説明する。
図8は、パネル本体3の下部を示す分解斜視図であり、
図9は、パネル本体3の下部と流体供給管21及び流体回収管22との接続構造を示す斜視図であり、
図10は、パネル本体3の下部を示す一部を省略した側面図である。なお、
図8及び
図10では、結露防止板33の図示が省略されている。
図8において、1つの第二管部材32に収納された2本の第一管部材31のうちの一方は、右隣に配置された第二管部材32に収納された第一管部材31と下部連通管42を介して連通されている。
当該2本の第一管部材31のうち他方は、左隣に配置された第二管部材32に収納された第一管部材31と下部連通管42を介して連通されている。
下部連通管42は、プラスチック等の被熱伝達性材料から形成されたU字状管であり、その両開口端がそれぞれ第一管部材31の下端開口と樹脂パッキン等の適宜な手段で接合されている。
【0027】
図9において、流体供給管21は、第一管部材31に一端が接続された第一パイプ211と、第一パイプ211の他端に一端が接続された第二パイプ212と、第二パイプ212と
図10で図示しない装置本体20と接続する第三パイプ213とを有する。
第一パイプ211は、
図9において最も左端に配置された第二管部材32の第一管部材31に連結されている。
第一パイプ211は、第一管部材31の下端に接続された鉛直部211Aと、この鉛直部211Aに対して直角に折れ曲がった水平部211Bとを有する。
第二パイプ212には開閉バルブ23が設けられている。この開閉バルブ23を開閉操作することで、装置本体20から熱冷媒のパネル本体3への供給が許容あるいは阻止される。
第三パイプ213の一端部は、第二パイプ212の一端部と連結部214を介して接続されている。第三パイプ213は、建物の床部Fに形成された孔F1に挿通される。
図10に示される通り、第一パイプ211の鉛直部211Aの上下方向の長さは、下部連通管42の上下方向の長さより長い。
【0028】
図9に戻り、流体回収管22は、第一管部材31に一端が接続された第一パイプ221と、第一パイプ221の他端に一端が接続された第二パイプ222と、第二パイプ222と
図10で図示しない装置本体20と接続する第三パイプ223とを有する。
第一パイプ221は、最も右端に配置された第二管部材32の1本の第一管部材31に連結されている。
第一パイプ221は、第一管部材31の下端に接続された鉛直部221Aと、この鉛直部221Aに対して直角に折れ曲がった水平部221Bとを有する。
第一パイプ221の鉛直部221Aの上下方向の長さは、下部連通管42の上下方向の長さより長い。
第二パイプ222には開閉バルブ24が設けられている。この開閉バルブ24を開閉操作することで、パネル本体3から装置本体20への熱媒体の回収が許容あるいは阻止される。
第三パイプ223の一端部は第二パイプ222の一端部と連結部224を介して接続されている。第三パイプ223は、建物の床部Fに形成された孔F1に挿通される。
【0029】
本実施形態では、第二パイプ212,222、第一パイプ211,221及び冷暖房用パネル1までが工場で予め組み立てられており、現場では、第二パイプ212,222を第三パイプ213,223に接続し、この第三パイプ213,223を装置本体20に接続して冷暖房装置が施工される。
【0030】
このような構成の冷暖房装置では、装置本体20から流体供給管21に熱媒体が送られると、
図9において、最も左側に配置された第二管部材32に収納された第一管部材31に熱媒体が送られる。すると、熱媒体は第一管部材31の下部から流入して上部に送られ、上部連通管41を通って当該第一管部材31とともに第二管部材32に収納された第一管部材31に送られる。この第一管部材31に送られる熱媒体は、左端から2番目に位置する第二管部材32に収納された第一管部材31に下部連通管42を通って送られる。このように、第一管部材31、上部連通管41、第一管部材31及び下部連通管42を流通した熱媒体は、最も右側に配置された第二管部材32の第一管部材31を通った後、流体回収管22から装置本体20に送られる。
熱媒体で放射される熱は第一管部材31から第二管部材32を経て室内に放出される。
【0031】
従って、本実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
(1)それぞれ上端部が開口される2本の熱伝導性の第一管部材31を上端部が開口された熱伝導性の第二管部材32に収納し、2本の第一管部材31同士を連通する上部連通管41を第一管部材31の上端部に接続し、2本の第一管部材31が収納された第二管部材32を左右方向に並んで配置して冷暖房用パネル1を構成した。そのため、隣り合う第一管部材31を連通するために、隣り合う第一管部材31の上端部と上部連通管41とをそれぞれ接続することで、第二管部材32の上端部には、連続した上部ヘッダが不要となる。従って、上部ヘッダからの結露水の滴下がなくなるだけでなく、冷暖房用パネル1を設置する際に、上部がその重さでふらつくことが少なく、設置作業が容易となり、設置した後でも、冷暖房用パネル1の設置姿勢が安定する。さらに、熱媒体が流通される第一管部材31の周囲が第二管部材32で保護されることになるので、熱媒体の外部への漏出を防止できる。そして、第二管部材32の内部に2本の第一管部材31が収納されているので、1つの第一管部材31の下端側から熱媒体が流入されると必ず他の第一管部材31の下端側から流出することになるため、第二管部材32が奇数本であっても冷暖房用パネル1を構成することができる。
【0032】
(2)2本の第一管部材31は、それぞれ円筒状であり、第二管部材32は、その内周部が第一管部材31の外周部に接合される角筒状であるから、第一管部材31と第二管部材32とを一体とした押し出し成形が可能となり、パネル本体3を容易に製造できる。しかも、第一管部材31の外周が第二管部材32の内周に3箇所で接合し、かつ、第一管部材31同士が互いに接合するので、第一管部材31の熱を第二管部材32に効率的に伝達することができるだけでなく、第一管部材31と第二管部材32との間のデッドスペースが少なくなり、第二管部材32をコンパクトなものにできる。
【0033】
(3)上部連通管41を覆うプラスチック製のキャップ部材5が第二管部材32の上端部に接続されているので、第二管部材32に収納された第一管部材31と上部連通管41をキャップ部材5で保護することができる。キャップ部材5がプラスチック製であるため、第二管部材32の上部での結露を防止することができる。
【0034】
(4)2本の第一管部材31の下端部と第二管部材32の下端部とはそれぞれ開口され、2本の第一管部材31のうち隣り合う第一管部材31同士を下部連通管42で連通したので、両端に位置する第二管部材32の下端部同士を連結する1本の下部ヘッダが不要となる。そのため、冷暖房用パネル自体が軽量化され、冷暖房用パネル1の設置が容易となる。
【0035】
(5)上部連結管41及び下部連結管42は、それぞれプラスチック等の非熱伝導性材料(プラスチック)から形成されているので、キャップ部材5や前面カバー61の結露を防止することができる。
【0036】
(6)最も左端の第二管部材32に収納された第一管部材31に熱媒体を供給する流体供給管21を接続し、最も右端の第二管部材32に収納された第一管部材31に熱媒体を回収する流体回収管22を接続し、流体供給管21と流体回収管22とを冷暖房用パネル1が設置される床部Fの孔F1に挿通した。そのため、第一管部材31及び第二管部材32の長さを長くすることが可能となり、冷暖房用パネル1から放射される熱量を大きなものにできる。
【0037】
(7)複数本の第二管部材32の下部正面を前面カバー61で覆ったので、第二管部材32の下部正面を隠すことができる。しかも、前面カバー61は、設置する第二管部材32の本数に応じて長さを自由に設定することができるので、パネル本体3の製造が容易となる。その上、前面カバー61がプラスチック製であるため、前面カバー61の正面には結露が生じにくくなり、前面カバー61から結露が滴下して床部を濡らすことが少ない。
【0038】
(8)前面カバー61と、第二管部材32の下部背面を覆う背面カバー62と、前面カバー61及び背面カバー62の両側面にそれぞれ設けられた側面カバー63とを備えて箱状体60を構成し、箱状体60の上部に第二管部材32を仕切る板状の仕切カバー64を設けたから、複数の第二管部材32を所定間隔に維持することができる。
【0039】
(9)箱状体60で第二管部材32の下部、下部連通管42、流体供給管21及び流体回収管22を囲ったので、配管類を外部から見られることを防止できる。
【0040】
(10)第二管部材32の壁部Wと対向する背面にはプラスチック製の結露防止板33が設けられているから、結露防止板33での結露を減少させ、さらに、壁部Wでの結露も減少させることができる。
【0041】
(11)壁部Wに、第二管部材32の背面、つまり、結露防止板33と対向するように調湿壁材7が設けられているので、壁部Wの湿度が調整されることで、壁部W自体の結露を減少させることができる。
【0042】
(12)前面カバー61に段差部61Aを設け、この前面カバー61の両側に設けられた側面カバー63に切欠63Aを設けたから、斜め上から矢印Qに沿ってパネル本体3の下端を見た際に、奥行き感が生じるので、外観が良好となる。
【0043】
(13) 流体供給管21及び流体回収管22の第一パイプ211,221の鉛直部211A,221Aの上下方向の長さは、下部連通管42の上下方向の長さより長いので、流体供給管21及び流体回収管22と下部連通管42とを接続する際に、管同士が干渉することを防止できる。
【0044】
(14)流体供給管21及び流体回収管22を現場で施工する際、従来は、床からの立ち上がり部の狭い領域で、管同士を接続する必要があったが、本実施形態では、これらの流体供給管21及び流体回収管22を水平に取り付けることで、施工性が高まる。
【0045】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
例えば、前記実施形態では、第二管部材32に収納される第一管部材31の数を2本としたが、本発明では、偶数本であれば、その数は限定されることがなく、例えば、4本、6本等であってもよい。さらに、第二管部材32の配列方向も上下と直交する左右方向に限定されるものではなく、上下方向と交差する方向であれば、必ずしも直交するものに限定されない。
【0046】
また、第一管部材31を円筒状とし、第二管部材32を角筒状としたが、本発明では、第一管部材を他の形状、例えば、角筒状や楕円筒状とし、第二管部材を円筒状や楕円筒状としてもよい。
さらに、第一管部材31の外周と第二管部材32の内周との接合箇所は3箇所に限定されるものではなく、1箇所あるいは2箇所であってもよく、第一管部材31同士は互いに離隔される構成でもよい。
また、第一管部材31と第二管部材32とを押し出しで一体に形成したが、本発明では、第一管部材31と第二管部材32とを別々に押し出しで形成し、その後、接合する構成としてもよい。
さらに、本発明では、上部連通管41を覆うプラスチック製のキャップ部材5を省略するものでもよく、仮に、設ける場合であっても、プラスチック製に限定されるものではない。
また、本発明では、前面カバー61や結露防止板33を省略するものでもよい。