(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
【0011】
本実施形態の画像形成装置は、トナー粒子を含有する現像剤を用い、このトナー粒子を担持するトナー粒子担持体(例えば、現像ローラー)を備える。トナー粒子は、結着樹脂を含むトナーコアとトナーコアの表面を被覆するシェル層とを含む。トナー粒子担持体は、基体と前記基体の表面を被覆する表面層とを含む。表面層及びシェル層は、熱硬化性樹脂を含む樹脂から形成される。
【0012】
トナー粒子、現像剤、トナー粒子担持体、及び画像形成装置の詳細について、以下に説明する。
【0013】
(トナー粒子)
図1を参照して、トナー粒子の詳細について説明する。
図1はトナー粒子100を示す。トナー粒子100は、トナーコア110とシェル層120とを含む。トナーコア110は結着樹脂を含む。シェル層120はトナーコア110の表面を被覆するように形成され、熱硬化性樹脂を含む樹脂から構成される。なお、トナー粒子100において、トナーコア110はアニオン性を示し、シェル層120はカチオン性を示す。
【0014】
トナーコア110を構成する成分について、以下に説明する。トナーコア110を構成する必須の成分は、結着樹脂である。結着樹脂は、アニオン性を有し、その具体例は、官能基としてエステル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する樹脂である。結着樹脂は、分子中に水酸基、カルボキシル基、又はアミノ基のような官能基を持つことが好ましく、分子中に水酸基及び/又はカルボキシル基を持つ樹脂がより好ましい。なぜなら、このような官能基は、シェル層を構成する樹脂に含まれる熱硬化性樹脂のモノマーに由来する単位(例えば、メチロールメラミン)と反応して化学的に結合するからである。その結果、このような官能基を有する結着樹脂から製造されたトナー粒子100においては、シェル層120とトナーコア110とが強固に結合する。
【0015】
結着樹脂がカルボキシル基を有する樹脂である場合、この結着樹脂の酸価は、良好なアニオン性を発現するために、3mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることが好ましく、10mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0016】
結着樹脂が水酸基を有する樹脂である場合、この結着樹脂の水酸基価は、良好なアニオン性を発現するために、10mgKOH/g以上70mgKOH/g以下であることが好ましく、15mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0017】
結着樹脂の具体例としては、熱可塑性樹脂(スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ビニルエーテル樹脂、N−ビニル樹脂、又はスチレン−ブタジエン樹脂)が挙げられる。結着樹脂としては、トナーコア中の着色剤の分散性、トナー粒子の帯電性、及びトナー粒子の記録媒体に対する定着性の向上のためには、スチレンアクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂が好ましい。
【0018】
スチレンアクリル樹脂は、スチレン系単量体とアクリル系単量体との共重合体である。スチレン系単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、又はp−エチルスチレンが挙げられる。
【0019】
アクリル系単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸アルキルエステル((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)メタアクリル酸メチル、(メタ)メタアクリル酸エチル、(メタ)メタアクリル酸n−ブチル、及び(メタ)メタアクリル酸iso−ブチル);(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル((メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシプロピル)が挙げられる。
【0020】
スチレンアクリル樹脂を調製する際に、水酸基を有する単量体(例えば、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル)を用いることで、スチレンアクリル樹脂に水酸基を導入できる。水酸基を有する単量体の使用量を適宜調整することで、スチレンアクリル樹脂の水酸基価を調整できる。
【0021】
スチレンアクリル樹脂を調製する際に、(メタ)アクリル酸を単量体として用いることで、スチレンアクリル樹脂にカルボキシル基を導入できる。(メタ)アクリル酸の使用量を適宜調整することで、スチレンアクリル樹脂の酸価を調整できる。
【0022】
ポリエステル樹脂は、2価又は3価以上のアルコール成分と2価又は3価以上のカルボン酸成分とを縮重合又は共縮重合することで得られる。
【0023】
2価又は3価以上のアルコール成分の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールのようなジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、又はポリオキシプロピレン化ビスフェノールAのようなビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンのような3価以上のアルコール類が挙げられる。
【0024】
2価カルボン酸の具体例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸が挙げられる。また、2価カルボン酸の別の例としては、n−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸のようなアルキル(若しくはアルケニル)コハク酸が挙げられる。
【0025】
3価以上のカルボン酸の具体例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が挙げられる。上記2価又は3価以上のカルボン酸成分は、酸ハライド、酸無水物、又は低級アルキルエステルのようなエステル形成性誘導体として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1から6のアルキル基を意味する。
【0026】
ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価の調整は、ポリエステル樹脂を製造する際に、2価又は3価以上のアルコール成分の使用量と2価又は3価以上のカルボン酸成分の使用量とを、それぞれ適宜変更して行うことができる。また、ポリエステル樹脂の分子量を上げると、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は低下する傾向がある。
【0027】
結着樹脂がポリエステル樹脂である場合、ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、トナーコア110の強度及び定着性の向上のために、1200以上2000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(質量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比の値、質量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、上記と同様の理由から、9以上20以下であることが好ましい。
【0028】
結着樹脂がスチレンアクリル樹脂である場合、スチレンアクリル樹脂の数平均分子量Mnは、トナーコア110の強度及び定着性の向上のために、2000以上3000以下であることが好ましい。スチレンアクリル樹脂の分子量分布は、上記と同様の理由から、10以上20以下が好ましい。なお、結着樹脂の数平均分子量Mnと質量平均分子量Mwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
【0029】
結着樹脂のガラス転移点Tgは、トナー粒子100の定着性を向上させるために、シェル層120に含まれる熱硬化性樹脂の硬化開始温度以下であることが好ましい。結着樹脂のガラス転移点Tgが上記硬化開始温度以下であることで、高速定着時においても十分な定着性が得られる。特に、結着樹脂のガラス転移点Tgは20℃以上であることが好ましく、30℃以上55℃以下がより好ましく、30℃以上50℃以下がさらに好ましい。結着樹脂のガラス転移点Tgが20℃以上である場合、シェル層120の形成時のトナーコア110の凝集を抑制できる。なお、一般に、熱硬化性樹脂の硬化開始温度は55℃程度である。
【0030】
結着樹脂のガラス転移点Tgは、示差走査熱量計(DSC)を用い、結着樹脂の比熱の変化点から求めることができる。例えば、測定装置として示差走査熱量計(例えば、セイコーインスツルメンツ社製「DSC−6200」)を用い、結着樹脂の吸熱曲線を測定することで、結着樹脂のガラス転移点Tgが求められる。より具体的には、測定試料10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用する。そして測定温度が25℃以上200℃以下であり、かつ昇温速度が10℃/分でという条件で結着樹脂の吸熱曲線を得、この吸熱曲線に基づいて結着樹脂のガラス転移点Tgを求める方法が挙げられる。
【0031】
結着樹脂の軟化点Tmは100℃以下であることが好ましく、95℃以下であることがより好ましい。軟化点Tmが100℃以下であることで、高速定着時においても十分な定着性を達成できる。結着樹脂の軟化点Tmを調整するには、例えば、異なる軟化点Tmを有する複数の結着樹脂を組み合わせればよい。
【0032】
結着樹脂の軟化点Tmの測定には、高架式フローテスター(例えば、島津製作所社製「CFT−500D」)を用いることができる。具体的には、測定試料を高架式フローテスターにセットし、所定の条件(ダイス細孔経1mm、プランジャー荷重20kg/cm
2、昇温速度6℃/分)で、1cm
3の試料を溶融流出させてS字カーブ(つまり、温度(℃)/ストローク(mm)に関するS字カーブ)を得て、このS字カーブから結着樹脂の軟化点Tmを読み取る。
【0033】
図2を参照して、結着樹脂の軟化点Tmの読み取り方を説明する。
図2において、ストロークの最大値をS1とし、S1の温度より低温側のベースラインのストローク値をS2とする。S字カーブ中のストロークの値が、(S1+S2)/2となる温度を測定試料(結着樹脂)の軟化点Tmとする。
【0034】
引き続き
図1を参照して、トナー粒子100について説明する。トナーコア110は、トナー粒子100の色に合わせて、着色剤としての公知の顔料又は染料を含有できる。黒色着色剤としては、カーボンブラックが挙げられる。また、後述のイエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤のような着色剤を用いて黒色に調色された着色剤も、黒色着色剤として利用できる。
【0035】
トナー粒子100がカラートナー用のトナー粒子である場合、トナーコア110に配合される着色剤としては、例えば、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤が挙げられる。
【0036】
定着性を向上させ、オフセット及び像スミアリング(画像をこすったときの画像周囲の汚れ)を抑制する目的で、トナーコア110は離型剤を含有してもよい。離型剤の例としては、脂肪族炭化水素系ワックス(低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合体、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックス)、脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物(酸化ポリエチレンワックス、又は酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体)、植物系ワックス(キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックス)、動物系ワックス(みつろう、ラノリン、又は鯨ろう)、鉱物系ワックス(オゾケライト、セレシン、又はベトロラクタム)、脂肪酸エステルを主成分とするワックス類(モンタン酸エステルワックス又はカスターワックス)、又は脂肪酸エステルの一部若しくは全部を脱酸化したワックス(脱酸カルナバワックス)が挙げられる。
【0037】
離型剤の含有量は、トナー粒子100の定着性、耐オフセット性、及び耐像スミアリングの向上のために、結着樹脂100質量部に対して1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
【0038】
トナーコア110は必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。帯電制御剤は、帯電レベル及び帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性及び安定性に優れたトナー粒子100を得る目的で使用される。帯電立ち上がり特性とは、所定の帯電レベルに短時間で帯電可能か否かの指標である。トナーコア110はアニオン性(負帯電性)であるので、負帯電性の帯電制御剤が使用される。
【0039】
トナーコア110は、必要に応じて磁性粉を含有してもよい。トナーコア110が磁性粉を含む場合、トナー粒子100を含む現像剤は、磁性1成分現像剤として使用される。好適な磁性粉としては、鉄(フェライト及びマグネタイト)、強磁性金属(コバルト及びニッケル)、鉄及び/又は強磁性金属を含む合金、鉄及び/又は強磁性金属を含む化合物、熱処理のような強磁性化処理を施された強磁性合金、又は二酸化クロムが挙げられる。
【0040】
磁性粉の粒子径は、0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。磁性粉の粒子径が0.1μm以上1.0μm以下である場合は、結着樹脂中に磁性粉を均一に分散させやすい。
【0041】
磁性粉の使用量は、トナー粒子100を磁性1成分現像剤として使用する場合、100質量部のトナー粒子100に対して35質量部以上60質量部以下であることが好ましく、40質量部以上60質量部以下であることがより好ましい。また、トナー粒子100をトナー粒子100と後述のキャリアとを用いた2成分現像剤として使用する場合、磁性粉の使用量は、トナー粒子100の全量を100質量部として20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。
【0042】
本実施形態において、トナーコア110がアニオン性であることの指標は、pHが4に調整された水性媒体中で測定されるトナーコア110のゼータ電位が負極性であることである。良好なアニオン性を有するために、トナーコア110のゼータ電位は−10mV以下の値を示すことが好ましい。また、トナーコア110がアニオン性であることの別の指標としては、トナーコア110と標準キャリアとの摩擦帯電量が−10μC/g以下の値を示すことが挙げられる。摩擦帯電量は、正負のうちの何れの極性に帯電されるか、及び帯電されやすさの指標となる。
【0043】
シェル層120の詳細について以下に説明する。まず、シェル層120を構成する樹脂について以下に述べる。シェル層120を構成する樹脂は、強度及び硬度を向上させ十分なカチオン性を発現させるために、熱硬化性樹脂を含む樹脂から構成される。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、熱硬化性樹脂は、例えば、メラミンのモノマーにホルムアルデヒドに由来するメチレン基(−CH
2−)が導入された単位を有する。
【0044】
熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、スルホアミド樹脂、尿素樹脂、グリオキザール樹脂、アニリン樹脂、又はポリイミド樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、及びグリオキザール樹脂からなるアミノ樹脂群より選択される1種以上の樹脂が好ましい。
【0045】
メラミン樹脂はメラミンとホルムアルデヒドとの重縮合物であり、メラミン樹脂の形成に使用されるモノマーはメラミンである。尿素樹脂は尿素とホルムアルデヒドとの重縮合物であり、尿素樹脂の形成に使用されるモノマーは尿素である。グリオキザール樹脂はグリオキザールと尿素との反応物又はホルムアルデヒドの重縮合物であり、グリオキザール樹脂の形成に使用されるモノマーはグリオキザールと尿素との反応物である。メラミン及び尿素は、周知の変性を受けていてもよい。
【0046】
シェル層120中の熱硬化性樹脂の含有量は、トナー粒子100のトナー粒子担持体400への静電的な付着、又はトナー粒子100の埋没を抑制し、シェル層120の強度を向上させるために、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0047】
シェル層120は、メラミン又は尿素等に由来する窒素原子を含むことが好ましい。窒素原子を含む材料は正帯電されやすく所望する帯電量にトナー粒子100を正帯電させやすい点から、シェル層120中の窒素原子の含有量は10質量%以上が好ましい。
【0048】
シェル層120には、熱可塑性樹脂が含有されていてもよい。シェル層120の形成に使用される熱可塑性樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル共重合体樹脂、シリコーン−(メタ)アクリルグラフト共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、又はエチレンビニルアルコール共重合体が挙げられる。なお、シェル層120を構成する樹脂に熱可塑性樹脂が含まれる場合、シェル層120を構成する樹脂に含まれる熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂との反応前にホルムアルデヒドによりメチロール化された誘導体を含有してもよい。
【0049】
シェル層120の厚さは20nm以下であることが好ましく、1nm以上20nm以下であることがより好ましく、1nm以上10nm以下であることがさらに好ましい。シェル層120の厚さが20nm以下である場合は、トナー粒子100を記録媒体へ定着させる際に、例えば、加熱及び加圧によりシェル層120が容易に破壊される。その結果、トナーコア110に含まれる結着樹脂の軟化又は溶融が速やかに進行し、低温域でトナー粒子100を記録媒体に定着できる。さらに、シェル層120の帯電量が高くなり過ぎないため画像形成が適正に行われる。一方、シェル層120の厚さが1nm以上である場合は、シェル層120の強度が十分に確保でき、例えば、輸送時の衝撃によってシェル層120が破壊されることを抑制できる。さらに、シェル層120の厚さが1nm以上である場合は、帯電量が低くなり過ぎないため、画像欠陥の発生を抑制できる。
【0050】
シェル層120の厚さは、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事社製「WinROOF」)を用い、トナー粒子100の断面の透過型電子顕微鏡(TEM)撮影像を解析することによって計測できる。具体的には、トナー粒子100の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、この2本の直線上のシェル層120と交差する4箇所の長さを測定する。そして、測定される4箇所の長さの平均値を測定対象の1個のトナー粒子100が備えるシェル層120の厚さとする。本明細書においては、シェル層120の厚さの測定を10個以上のトナー粒子100に対して行い、それぞれのシェル層120の厚さの平均値をシェル層120の厚さとする。
【0051】
なお、シェル層120が薄過ぎる場合は、TEM画像上でのシェル層120とトナーコア110との界面が不明瞭であるため、シェル層120の厚さの測定が困難となる場合がある。このような場合は、TEM撮影とエネルギー分散X線分光分析(EDX)とを組み合わせてシェル層120とトナーコア110との界面を明確にし、シェル層120の厚さを測定できる。具体的には、TEM画像中で、EDXを用いてシェル層120の材料に特徴的な元素(例えば、窒素元素)のマッピングを行うことができる。
【0052】
シェル層120は帯電制御剤を含有してもよい。シェル層120はカチオン性(正帯電性)であるので、正帯電性の帯電制御剤を含有できる。
【0053】
トナー粒子100の体積平均粒子径は、定着性及び取扱性を向上させるために、4.0μm以上10.0μm以下であることが好ましい。また、トナー粒子100の数平均粒子径は、3.0μm以上9.0μm以下であることが好ましい。
【0054】
トナー粒子100は、トナーコア110の表面に複数のシェル層120が形成されているものであってもよい。この場合は、トナーコア110の最外に形成されたシェル層120がカチオン性であればよい。
【0055】
トナー粒子100は、流動性及び取扱性を向上させるために、外添剤を用いて外添処理されていてもよい。外添処理の方法は、特に限定されず、従来知られている方法が用いられる。外添剤としては、例えば、シリカ又は金属酸化物(アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウム)の粒子が挙げられる。
【0056】
(現像剤)
本実施形態の現像剤はトナー粒子100を含む。本実施形態の現像剤は1成分現像剤であってもよいし、2成分現像剤であってもよい。
【0057】
図3を参照して、本実施形態の現像剤がトナー粒子100を含む2成分現像剤である場合の詳細について以下に述べる。
図3は2成分現像剤200を示す。2成分現像剤200においては、トナー粒子100とキャリア300とが混合されている。
【0058】
キャリア300としては磁性キャリアが挙げられ、キャリア300の例としては、キャリア芯材310の表面が樹脂層320で被覆されたものが挙げられる。キャリア芯材310の具体例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、又はコバルトのような粒子、或いはこれらの材料とマンガン、亜鉛、又はアルミニウムのような金属との合金の粒子;鉄−ニッケル合金、又は鉄−コバルト合金のような粒子;酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、又はニオブ酸リチウムのようなセラミックスの粒子;リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、又はロッシェル塩のような高誘電率物質の粒子が挙げられる。キャリア芯材310としては、例えば、樹脂中に上記粒子を分散させた樹脂キャリアが用いられてもよい。
【0059】
キャリア芯材310の表面を被覆する樹脂層320に含まれる樹脂の例としては、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、オレフィン系重合体(ポリエチレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、又はポリプロピレン樹脂)、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、又はポリフッ化ビニリデン)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、又はアミノ樹脂が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0060】
キャリア300の粒子径は、20μm以上120μm以下が好ましく、25μm以上80μm以下がより好ましい。なお、キャリア300の粒子径は電子顕微鏡で測定できる。
【0061】
本実施形態の現像剤が2成分現像剤200である場合、2成分現像剤200中のトナー粒子100の含有量は、2成分現像剤200の質量に対して3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
【0062】
(トナー粒子担持体)
図4を参照し、本実施形態の画像形成装置について以下に説明する。
図4は、本実施形態の画像形成装置に備えるトナー粒子担持体400を示す。トナー粒子担持体400は、基体410と、基体410の表面を被覆する表面層420とを包含する。
【0063】
基体410の材料としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等の非磁性の金属又はそれらの合金が挙げられる。基材の形状は、例えば、円筒状又は円柱状ベルト状である。
【0064】
また、トナー粒子担持体400の内部には、トナー粒子担持体400の表面層420にトナー粒子100を磁気的に吸引及び保持するために、磁石が内設されているマグネットローラー等が配置されていてもよい。
【0065】
表面層420の詳細について以下に述べる。表面層420は熱硬化性樹脂を含む樹脂から構成される。熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、スルホアミド樹脂、尿素樹脂、グリオキザール樹脂、アニリン樹脂、又はポリイミド樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、及びグリオキザール樹脂からなるアミノ樹脂群より選択される1種以上の樹脂が好ましく、メラミン樹脂が最も好ましい。
【0066】
つまり、本実施形態の画像形成装置においては、トナー粒子担持体400の表面層420とトナー粒子100のシェル層120との何れもが、熱硬化性樹脂を含む樹脂から構成されている。これにより、表面層420に対するトナー粒子100の静電的な付着、又はトナー粒子100の表面層420への埋没を抑制できる。さらに、表面層420の強度及びシェル層120の強度を向上させ、トナー粒子担持体400とトナー粒子100との耐久性を向上させることができる。
【0067】
表面層420中の熱硬化性樹脂の含有量は、表面層420に対するトナー粒子100の静電的な付着、又はトナー粒子100の表面層420への埋没を抑制し、表面層420の強度を向上させるために、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0068】
表面層420を構成する樹脂に含まれる熱硬化性樹脂と、シェル層120を構成する樹脂に含まれる熱硬化性樹脂とが、同一の熱硬化性樹脂であることが好ましい。これにより、表面層420とシェル層120との仕事関数の差を減少させることができ、表面層420に対するトナー粒子100の静電的な付着又は埋没を効果的に抑制できる。その結果、耐久性に優れ、かつ安定してトナー粒子100を帯電し得る画像形成装置とすることができる。この画像形成装置は、高品質な画像を形成することができる。なお、表面層420の仕事関数とシェル層120の仕事関数との差は0.5eV以下であることが好ましく、0.2eV以下であることがより好ましく、0eVであることが最も好ましい。
【0069】
表面層420の仕事関数及びシェル層120の仕事関数は、何れも3.0eV以上であることが好ましい。表面層420の仕事関数及びシェル層120の仕事関数が3.0eV以上である場合は、トナー粒子担持体400の表面の帯電性が良好となり、トナー粒子100の表面層420への静電的な付着又は埋没、並びにトナー粒子100の帯電量が過剰に高くなることを抑制できる。
【0070】
なお、表面層420及びシェル層120の仕事関数を求めるためには、例えば、高電子分光装置(理研計器社製「AC−1」)を用いることができる。
【0071】
仕事関数を制御するために、表面層420及びシェル層120は、仕事関数制御剤を含有してもよい。仕事関数制御剤としては、仕事関数を適切な範囲に制御できるものであれば特に限定されないが、例えば、有機化合物が挙げられる。また、表面層420及びシェル層120における仕事関数制御剤の含有量は、含有される仕事関数制御剤の種類に依存するものであり、所望の仕事関数を達成するために適宜に調整することができる。
【0072】
また、仕事関数を制御するために、表面層420及びシェル層120の厚さをそれぞれ適切な範囲に制御することもできる。表面層420の厚さは、5nm以上100nm以下であることが好ましく、5nm以上20nm以下であることがより好ましい。表面層420の厚さが5nm以上である場合は、トナー粒子担持体400の耐久性を向上させることができる。表面層420の厚さが100nm以下である場合は、表面層420を均一なものとすることができる。また、シェル層120の厚さは、5nm以上100nm以下であることが好ましく、50nm以上100nm以下であることがより好ましい。シェル層120の厚さが5nm以上である場合は、トナー粒子100の耐久性を向上させることができる。シェル層120の厚さが100nm以下である場合は、シェル層120を均一なものとすることができる。また、シェル層120が容易に破壊されるため、トナー粒子100は定着性に優れる。
【0073】
トナー粒子担持体400の帯電性を調整するために、表面層420中に帯電制御剤をさらに含有させてもよい。
【0074】
基体410の表面に表面層420を形成する方法としては、例えば、表面層420に用いられる材料を溶剤中に分散混合して分散液を得、この分散液を基体410の表面に塗工し、次いで、乾燥固化又は硬化する方法が挙げられる。上記材料の溶剤への分散混合には、例えば、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、又はパールミルのような公知の分散装置を用いることができる。分散装置としては、例えば、スターミル(アシザワファインテック社製)、キャビトロン(ユーロテック社製)、又はフィルミックス(特殊機化社製)が挙げられる。
【0075】
また、基体410へ塗工液を塗工する方法としては、例えば、ディッピング法、スプレー法、又はロールコート法が挙げられる。
【0076】
(画像形成装置)
本実施形態の画像形成装置について、以下に説明する。本実施形態の画像形成装置は、トナー粒子担持体400を備え、トナー粒子100を用いる。本実施形態の画像形成装置には、例えば、タッチダウン現像方式が採用される。タッチダウン現像方式においては、2成分現像剤を使用して画像形成を実行する。一般的に、タッチダウン現像方式が採用された画像形成装置においては、トナー粒子担持体400の表面に残留するトナー粒子100(画像形成後のトナー粒子)を、一旦、トナー粒子担持体400から引き剥がす必要がある。なぜなら、トナー粒子100がトナー粒子担持体400の表面に残留すると、新たに現像に供されるトナー粒子100の帯電量が過剰に高くなるためトナーの現像性が低下してしまい、その結果、形成した画像の画像濃度が所望する値よりも低くなってしまうことがあるからである。
【0077】
ここで、熱硬化性樹脂は正帯電性が高い。そのため、熱硬化性樹脂を含む樹脂から構成されるシェル層120を含むトナー粒子100を使用し、タッチダウン現像方式を採用した画像形成装置においては、トナー粒子担持体400の表面でのトナー粒子100の帯電量が過剰に高くなることが顕著となる。ここで、トナー粒子100の帯電量が過剰に高くなることを抑制するためには、トナー粒子担持体400の表面を、シェル層120と同極性に帯電する物質で形成することが効果的である。しかしながら、シェル層120に包含される熱硬化性樹脂は硬度が高いので、トナー粒子担持体400の表面層420が熱硬化性樹脂以外の硬度の低い樹脂で形成される場合は、シェル層120が表面層420を破壊してしまう。また、シェル層120と表面層420とを、熱硬化性樹脂以外の同一の樹脂で形成する場合は、シェル層120と表面層420とがなじみやすくなり、融和しやすくなる。そのため、トナー粒子100がトナー粒子担持体400に付着してしまい、現像安定性を維持することが困難である。それに対し、本実施形態の画像形成装置においてはシェル層120と表面層420とを同一の熱硬化性樹脂を含む樹脂で形成する。これにより、トナー粒子100の帯電量が過剰に高くなることを抑制し、トナー粒子担持体400の表面へのトナー粒子100の埋没又は付着を抑制できる。さらに、トナー粒子担持体400及びトナー粒子100の耐久性を向上させることができる。
【0078】
なお、2成分現像方式又は1成分現像方式を用いた画像形成においては、2成分現像剤200又はトナー粒子100(1成分現像剤)を規制ブレードなどで押圧する際に、トナー粒子担持体400の表面はトナー粒子100からストレスを受ける。これに対してタッチダウン現像方式は、電界作用によりトナー粒子担持体400の表面にトナー粒子100を保持させるため、トナー粒子担持体400がトナー粒子100から受けるストレスが小さい。さらに、トナー粒子100のシェル層120と、トナー粒子担持体400の表面層420の何れにも硬度の高い熱硬化性樹脂を用いることで、トナー粒子からのストレスによるシェル層120と表面層420との融和を抑制できる。さらに、シェル層120及び表面層420の何れにも、仕事関数の値が互いに近く高硬度である熱硬化性樹脂を使用することで、トナー粒子100の帯電量が過剰に高くなること、並びにトナー粒子担持体400の表面へのトナー粒子100の埋没及び静電的な付着を抑制できる。
【0079】
図5を参照し、本実施形態の画像形成装置の全体構成について説明する。
図5は本実施形態の画像形成装置1の全体構成を示す概略図である。画像形成装置1は上記のトナー粒子担持体400を備えており、さらに、回転可能である感光体2a〜2dを備える。感光体2a〜2dの感光層を形成する感光材料としては、アモルファスシリコン感光体又は有機感光体(OPC感光体)が用いられる。そして、感光体2a〜2dの周囲には、現像器3a〜3d、光学露光器4a〜4d、帯電器5a〜5d、及び除電器6a〜6dが配置される。現像器3a〜3d、光学露光器4a〜4d、帯電器5a〜5d、及び除電器6a〜6dは、それぞれ、ブラック(B)、イエロー(Y)、シアン(C)及びマゼンタ(M)の各色に対応する。現像器3a〜3dは、上記のトナー粒子担持体400と、上記のトナー粒子100、キャリア300、及び磁気ローラーを収容する容器とを備える。なお、トナー粒子担持体400の周辺部は、
図6を参照して後述する。トナー粒子100は、それぞれ、各色に対応する着色剤を含有する。露光ユニット7は、パーソナルコンピューター等から画像入力部(図示せず)に入力された画像データに基づいて、光学露光器4a〜4dから感光体2a〜2dの表面にレーザービームを照射する。
【0080】
そして、本実施形態の画像形成装置1においては、中間転写ベルト8がテンションローラー9、駆動ローラー10及び従動ローラー11に張架されている。感光体2a〜2dは、中間転写ベルト8に接触するように、中間転写ベルト8の搬送方向(矢符方向)に沿って上流側から隣り合うように中間転写ベルト8に対向して配列されている。1次転写ローラー12a〜12dは、中間転写ベルト8を挟んで感光体2a〜2dと対向して中間転写ベルト8に接触するように配置されている。また、2次転写ローラー13は、中間転写ベルト8を挟んで駆動ローラー10と対向して中間転写ベルト8に接触するように配置されている。また、クリーニングローラー14は、中間転写ベルト8を挟んで従動ローラー11と対向して中間転写ベルト8に接触するように配置されている。
【0081】
画像が形成される際には、感光体2a〜2dは反時計周りに回転し、帯電器5a〜5dが感光体2a〜2dの表面を一様に帯電する。次いで、光学露光器4a〜4dが画像データに基づいて感光体2a〜2dの表面に光を照射し、感光体2a〜2dの表面に静電潜像が形成される。次いで、現像器3a〜3dにおいて、トナー粒子担持体400に印加された現像バイアス電圧により、感光体2a〜2dの表面に形成された静電潜像に各色のトナー粒子が飛翔して付着し、トナー像を形成する。
【0082】
感光体2a〜2dの表面に形成された各色のトナー像は、1次転写バイアス電位(トナー粒子の帯電極性と逆極性)を印加した1次転写ローラー12a〜12dにより、矢符方向に搬送されている中間転写ベルト8に順次1次転写されて色重ねされる。これにより、中間転写ベルト8上にフルカラーのトナー像が形成される。
【0083】
用紙搬送部15は、給紙カセット16に積載された記録媒体としての用紙Pを1枚ずつ繰り出す。搬送ローラー15a及び15b、並びにレジストローラー15c及び15dが、中間転写ベルト8と2次転写ローラー13との間に用紙Pを搬送する。そして、2次転写バイアス電位(トナー粒子の帯電極性と逆極性)を印加した2次転写ローラー13を用いて、用紙Pに中間転写ベルト8上に形成されたフルカラーのトナー像を2次転写する。
【0084】
フルカラーのトナー像が転写された用紙Pは、定着器17に搬送される。そして、定着ローラーを用いた加熱及び加圧により、トナー像が用紙Pの表面に定着し、フルカラー画像が形成される。定着時の定着荷重は、例えば20N/cm
2以上100N/cm
2以下とすることができる。また、定着時間は、例えば20msec以上70msec以下とすることができる。フルカラー画像が形成された用紙Pは、その後、排出ローラー18a及び18bによって画像形成装置1の本体の外に排出される。
【0085】
感光体2a〜2dから中間転写ベルト8に1次転写されず、感光体2a〜2dに残留するトナー粒子は、クリーニング装置によって除去される。さらに、除電器6a〜6dが、感光体2a〜2dの表面に残った電荷を除電する。また、中間転写ベルト8から用紙Pに2次転写されず、中間転写ベルト8に残留するトナー粒子は、クリーニングバイアス電位(トナーの帯電極性と逆の極性)が印加されたクリーニングローラー14により除去され、次の画像形成に備える。
【0086】
次いで、
図6を参照し、本実施形態の画像形成装置1におけるトナー粒子担持体400の周辺部を以下に詳しく説明する。
【0087】
画像形成装置1はトナー粒子担持体400を備え、トナー粒子100を用いる。トナー粒子担持体400は、基体410と、この基体410の表面を被覆する表面層420とを含む。トナー粒子担持体400の周辺には、磁気ローラー23が配置される。トナー粒子100とキャリア300とが磁気ブラシ19を形成し、磁気ブラシ19を用いてトナー粒子100がトナー粒子担持体400に供給される。そしてトナー粒子担持体400の表面には、トナー粒子層20としてトナー粒子100が担持される。
【0088】
ここで、トナー粒子担持体400は回転可能な円筒状に形成され、内部に固定磁石が配設されていてもよい。その磁石によってキャリア300による磁気ブラシ19を発生させる。そして、磁気ブラシ19の層厚みが規制ブレード22により規制されている。トナー粒子担持体400と磁気ローラー23との間に、トナー粒子担持体400に接続された電源のバイアスとともに、磁気ローラー23に接続された電源のバイアスが作用する。これにより、トナー粒子担持体400の表面へトナー粒子100が飛翔しトナー粒子層20が形成される。そして、トナー粒子層20から感光体21にトナー粒子100を飛翔させることにより、感光体21の表面の静電潜像を現像する。
【0089】
画像形成装置1を用いた画像形成方法においては、コア−シェル構造を有するトナー粒子100を用いた場合であっても、トナー粒子担持体400へのトナー粒子100の付着又は埋没、並びにトナー粒子100の帯電量が過剰に高くなることを抑制することができる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例の範囲に何ら限定されるものではない。
【0091】
[実施例1]
(トナーコアの調製)
まず、以下のようにしてポリエステル樹脂を得た。すなわち、テレフタル酸1245g、イソフタル酸1245g、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物1248g、及びエチレングリコール744gを5Lの4つ口フラスコに仕込んだ。次いで、フラスコ内を窒素雰囲気とし、撹拌しながらフラスコ内部の温度を250℃まで上昇させ、常圧かつ250℃で4時間反応を行った。その後、三酸化アンチモン0.875g、トリフェニルホスフェート0.548g、及びテトラブチルチタネート0.102gをフラスコ内に添加した。その後、フラスコ内を0.3mmHgに減圧して、フラスコ内部の温度を280℃まで上昇させ、280℃で6時間反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。その後、架橋剤としてのトリメリット酸30.0gをフラスコ内に添加し、フラスコ内部の圧力を常圧に戻し、フラスコ内部の温度を270℃まで降下させ、常圧かつ270℃で1時間反応を行った。反応終了後、フラスコの内容物を取り出し、冷却してポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂の物性は、数平均分子量Mnが2,400、質量平均分子量Mwが6,500、質量平均分子量Mw/数平均分子量Mnが2.7、水酸基価が20mgKOH/g、酸価が40mgKOH/g、軟化点Tmが90℃、ガラス転移点Tgが49℃、及びSP値が11.2であった。
【0092】
100質量部のポリエステル樹脂、5質量部の着色剤(C.I.ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニン))、及び5質量部の離型剤(エステルワックス、日油社製「WEP−3」)を混合機(ヘンシェルミキサー)で混合した。得られた混合物を2軸押出機(池貝社製「PCM−30」)で溶融混練した。得られた混練物を機械式粉砕機(フロイント・ターボ社製「ターボミル」)で粉砕し、次いで分級機(日鉄鉱業社製「エルボージェット」)で分級し、体積平均粒子径が6.0μm、数平均粒子径が5.0μm、円形度が0.93のトナーコアを得た。円形度としては、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社製「FPIA(登録商標) 3000」)を用い、各々の粒子に関して3000個の粒子の円形度を測定し、その平均値を採用した。
【0093】
トナーコアについて、標準キャリア(N−01(日本画像学会から提供される負帯電極性トナー用標準キャリア))との摩擦帯電量は−20μC/gであり、pH4の分散液中のゼータ電位は−15mVであった。つまり、トナーコアは明らかなアニオン性を示していた。また、トナーコアの軟化点Tmは91℃、及びガラス転移点Tgは51℃であった。
【0094】
(シェル層の形成)
以下のようにして、トナーコアの表面にシェル層を形成した。すなわち、温度計及び撹拌羽根を備える容量1Lの3つ口フラスコに、イオン交換水300mLを入れた後、ウォーターバスを用いてフラスコ内部の温度を30℃に保持した。次いで、フラスコ内に希塩酸を加えて、フラスコ内の水性媒体のpHを4に調整した。その後、フラスコ内に、シェル層の原料としてのメチロールメラミン水溶液(昭和電工社製「ミルベン607」、固形分濃度80質量%)2mLと、仕事関数制御剤とを添加した。次いで、フラスコの内容物を撹拌してシェル層の原料を水性媒体に溶解させ、シェル層の原料の水溶液(I)を得た。
【0095】
水溶液(I)に300gのトナーコアを添加し、フラスコの内容物を200rpmで1時間撹拌した。次いで、フラスコ内にイオン交換水300mLを追加した。その後、フラスコの内容物を100rpmで撹拌しながら、1℃/分の昇温速度でフラスコ内部の温度を70℃まで上げた。昇温後、70℃かつ100rpmの条件でフラスコの内容物を2時間撹拌し続けた。その後、水酸化ナトリウムを加えて、フラスコの内容物のpHを7に調整した。次いで、フラスコの内容物を常温まで冷却し、トナーコアの表面にシェル層が形成されたトナー粒子(トナー母粒子)を含む分散液を得た。
【0096】
以下のようにしてトナー粒子の洗浄を実行した。すなわち、ブフナーロートを用いて、トナー粒子を含む分散液からトナー粒子のウエットケーキをろ取した。トナー粒子のウエットケーキを再度イオン交換水に分散させてトナー粒子を洗浄した。そして、トナー粒子のイオン交換水による同様の洗浄を5回繰り返した。なお、トナー粒子を含む分散液のろ液、及び洗浄に供した洗浄水を排水として回収した。ろ過後のトナー粒子の導電率は4μS/cmであった。
【0097】
次いで、回収したトナー粒子を40℃の雰囲気中に48時間放置して乾燥させ、トナー粒子を得た。このトナー粒子のシェル層の仕事関数は、3.34eVであった。
【0098】
(2成分現像剤の調製)
シリコーン樹脂(信越化学社製「KR−271」)20質量部をトルエン200質量部に溶解させて、塗布液を作製した。流動層塗布装置を用いて、キャリア芯材(パウダーテック社製「EF−35」)1000質量部に対して、上記の塗布液を噴霧塗布した。その後、200℃で60分間熱処理して、キャリアを得た。そして、上記のトナー粒子10質量部とキャリア100質量部とをボールミルで30分混合し、2成分現像剤を作製した。
【0099】
(トナー粒子担持体の製造)
まず、シェル層の原料の水溶液(I)と同様の水溶液を得た。この水溶液を、基体としてのアルミニウム製の円筒管(外径:20mmφ)表面に噴霧した。噴霧時の環境は、温度25℃、湿度50%RHであった。次いで、75℃で60分間加熱してメラミン樹脂を硬化させて表面層を形成し、トナー粒子担持体を得た。この表面層の仕事関数は、3.34eVであった。得られたトナー粒子担持体を、
図5に示すような画像形成装置に配置した。さらに、上記の画像形成装置にトナー粒子を供給し、実施例1の画像形成装置を得た。この画像形成装置を後述の評価(現像安定性及び画像濃度)に付した。
【0100】
[実施例2]
仕事関数制御剤の添加量を変更し、トナー粒子担持体の表面層の仕事関数を3.52eVとした以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例2の画像形成装置を得た。この画像形成装置を後述の評価に付した。
【0101】
[実施例3]
仕事関数制御剤の添加量を変更し、トナー粒子担持体の表面層の仕事関数を3.66eVとし、トナー粒子のシェル層の仕事関数を3.16eVとした以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例3の画像形成装置を得た。この画像形成装置を後述の評価に付した。
【0102】
[実施例4]
仕事関数制御剤の添加量を変更し、トナー粒子担持体の表面層の仕事関数を3.74eVとし、トナー粒子のシェル層の仕事関数を3.14eVとした以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例4の画像形成装置を得た。この画像形成装置を後述の評価に付した。
【0103】
[実施例5]
仕事関数制御剤の添加量を変更し、トナー粒子のシェル層の仕事関数を3.52eVとした以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例5の画像形成装置を得た。この画像形成装置を後述の評価に付した。
【0104】
[実施例6]
シェル層の原料及び表面層の原料としてのメチロールメラミン水溶液(昭和電工社製「ミルベン607」、固形分濃度80質量%)に代えて、フェノール樹脂水溶液(DIC社製、「商品名:PE−602」、固形分濃度40質量%)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例6の画像形成装置を得た。表面層及びシェル層の仕事関数は、何れも0.19eVであった。この画像形成装置を後述の評価に付した。
【0105】
[比較例1]
実施例1におけるトナー粒子を、シェル層が形成されていないもの(つまり、トナーコア)に代えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例1の画像形成装置を得た。トナーコアの仕事関数は、4.04eVであった。この画像形成装置を後述の評価に付した。
【0106】
[比較例2]
表面層の原料としてのメチロールメラミン水溶液(昭和電工社製「ミルベン607」、固形分濃度80質量%)に代えて、ウレタン樹脂水溶液(DIC社製、「商品名:M−5350」、固形分濃度50質量%)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例2の画像形成装置を得た。表面層の仕事関数は5.13eVであった。この画像形成装置を後述の評価に付した。
【0107】
[比較例3]
比較例2におけるトナー粒子を、シェル層が形成されていないもの(つまり、トナーコア)に代えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例3の画像形成装置を得た。トナーコアの仕事関数は、4.04eVであった。この画像形成装置を後述の評価に付した。
【0108】
[比較例4]
実施例6におけるトナー粒子を、シェル層が形成されていないもの(つまり、トナーコア)に代えた以外は、実施例6と同様の操作を行って、比較例4の画像形成装置を得た。トナーコアの仕事関数は、4.04eVであった。この画像形成装置を後述の評価に付した。
【0109】
[比較例5]
シェル層の原料としてのメチロールメラミン水溶液(昭和電工社製「ミルベン607」、固形分濃度80質量%)に代えて、フェノール樹脂水溶液(DIC社製、「商品名:PE−602」、固形分濃度40質量%)を用いた以外は、比較例2と同様の操作を行って、比較例5の画像形成装置を得た。シェル層の仕事関数は0.24eVであった。この画像形成装置を後述の評価に付した。
【0110】
実施例及び比較例にて得られた画像形成装置の測定方法及び評価方法は、以下の通りである。
【0111】
(1)仕事関数
光電子分光装置 (理研計器社製「AC−1」)を用い、シェル層の厚さ及び表面層の厚さを10nmとして、トナー粒子のシェル層の仕事関数と、トナー粒子担持体の表面層の仕事関数とを測定した。測定条件は、以下の通りであった。
光源:重水素ランプ
エネルギー走査範囲:3.40eV以上6.20eV以下
分光器:グレーティングモノクロメーター
【0112】
(2)トナー粒子担持体の表面の帯電量(現像安定性)
上記の実施例及び比較例にて得られた2成分現像剤及び画像形成装置を用い、5%の印字率の画像を用紙100枚に印字した。印字後のトナー粒子担持体上に残留するトナー粒子の帯電量を測定した。なお、帯電量の測定は、Q/Mメーター(TREK社製、「210HS-2A」)を用いて、トナー粒子担持体の表面に形成されたトナー粒子層を吸引して行った。
【0113】
(3)画像濃度(ID)
トナー粒子担持体の表面へのトナー粒子の静電的な付着を、画像濃度(ID)を測定することで評価した。上記の実施例及び比較例にて得られた2成分現像剤及び画像形成装置を用い、5%の印字率で画像を用紙100枚に印字した。その後、ベタ画像を含むサンプル画像を出力し、1マクベス反射濃度計(グレタグマクベス社製「SPM−50」)を用い、ベタ部のIDを測定した。画像濃度1.30以上を合格とした。なお、トナー粒子担持体の表面へのトナー粒子の静電的な付着が進行すれば、潜像担持体への現像性能が低下するため、IDの値は低下する。
【0114】
表1に、実施例及び比較例の評価結果をまとめて示す。
【表1】
なお、表1中「−」は、トナー粒子においてシェル層が形成されていないことを示す。
【0115】
実施例1〜6においては、基体と基体の表面を被覆する表面層とを含むトナー粒子担持体を備えた画像形成装置を用い、さらにコア−シェル構造を有するトナー粒子を含む現像剤を用いて画像を形成した。そして、表面層及びシェル層は、いずれも熱硬化性樹脂を含む樹脂から構成されていた。これにより、表1から明らかなように、実施例1〜6においては、何れも現像安定性に優れるという評価結果が得られた。さらに、トナー粒子担持体へのトナー粒子の付着が抑制されており、形成した画像の画像濃度も良好であった。
【0116】
比較例1及び比較例4においては、シェル層が形成されていないトナーコアを含有するトナー粒子を含む2成分現像剤を用いて画像形成を行った。そのため、現像安定性に劣り、さらにトナー粒子担持体へのトナー粒子の付着に起因して形成した画像の画像濃度は所望する値を下回り不良となった。
【0117】
比較例2及び5においては、トナー粒子担持体の表面層が熱硬化性樹脂ではなくウレタン樹脂で形成されていた。そのため、現像安定性に劣り、さらにトナー粒子担持体へのトナー粒子の付着に起因して形成した画像の画像濃度は所望する値を下回り不良となった。
【0118】
比較例3においては、トナー粒子担持体の表面層が、熱硬化性樹脂ではなくウレタン樹脂で形成されており、さらにシェル層が形成されていないトナーコアを含有するトナー粒子を含む2成分現像剤を用いて画像形成を行った。そのため現像安定性に劣り、さらにトナー粒子担持体へのトナー粒子の付着に起因して形成した画像の画像濃度は所望する値を下回り不良となった。