特許第5952809号(P5952809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5952809非絶縁降圧スイッチングレギュレータおよびその制御回路、電子機器、ACアダプタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5952809
(24)【登録日】2016年6月17日
(45)【発行日】2016年7月13日
(54)【発明の名称】非絶縁降圧スイッチングレギュレータおよびその制御回路、電子機器、ACアダプタ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20160630BHJP
【FI】
   H02M3/155 C
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-514990(P2013-514990)
(86)(22)【出願日】2012年5月14日
(86)【国際出願番号】JP2012003125
(87)【国際公開番号】WO2012157242
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2015年5月1日
(31)【優先権主張番号】特願2011-108423(P2011-108423)
(32)【優先日】2011年5月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】林 宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 好則
(72)【発明者】
【氏名】名手 智
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−104285(JP,A)
【文献】 特開2008−199705(JP,A)
【文献】 特開2009−278756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子に入力電圧を受け、出力端子から降圧された出力電圧を出力するスイッチングレギュレータの制御回路であって、
前記スイッチングレギュレータは、
前記入力端子と前記出力端子の間に順に直列に設けられたスイッチングトランジスタ、検出抵抗およびインダクタと、
前記スイッチングトランジスタと前記検出抵抗の接続点と接地端子の間に設けられた整流ダイオードと、
前記出力端子と接地端子の間に設けられた出力キャパシタと、を含み、
前記制御回路は、
前記スイッチングトランジスタの制御端子と接続されるべきスイッチング端子と、
前記スイッチングトランジスタと前記検出抵抗の接続点と接続されるべき電流検出端子と、
前記検出抵抗と前記インダクタの接続点と接続されるべき接地端子と、
前記出力電圧に応じたフィードバック電圧が入力されるべきフィードバック端子と、
前記電流検出端子の検出電圧が、所定のしきい値電圧より高いときにアサートされる電流制限信号を生成する電流制限用コンパレータと、
所定の周期ごとにアサートされるセット信号を生成するオシレータと、
前記スイッチングトランジスタがオンした後、所定の遅延時間経過後にアサートされるマスク信号を生成するマスク信号生成部と、
前記フィードバック電圧に応じてアサートされるタイミングが調節されるリセット信号を生成するリセット信号生成部と、
前記スイッチングトランジスタがオンすべき期間に第1レベル、オフすべき期間に第2レベルとなるパルス信号を生成するパルス信号生成部であって、(a)前記電流制限信号がネゲートされる期間に前記セット信号がアサートされると、前記パルス信号を前記第1レベルに遷移させ、(b)前記リセット信号がアサートされると、または前記マスク信号がネゲートされる期間に前記電流制限信号がアサートされると、前記パルス信号を前記第2レベルに遷移させるパルス信号生成部と、
前記パルス信号に応じたスイッチング信号を、前記スイッチング端子を介して前記スイッチングトランジスタの前記制御端子に出力するドライバと、
を備えることを特徴とする制御回路。
【請求項2】
前記パルス信号生成部は、
前記電流制限信号を反転する第1インバータと、
前記セット信号と前記第1インバータの出力が入力される第1ANDゲートと、
そのセット端子に、前記セット信号に応じた前記第1ANDゲートの出力信号が入力され、そのリセット端子に、前記リセット信号に応じた信号が入力されるSRフリップフロップと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
前記マスク信号と前記電流制限信号が入力される第2ANDゲートと、
前記リセット信号と前記第2ANDゲートの出力信号が入力されるORゲートと、
をさらに備え、
前記SRフリップフロップの前記リセット端子には、前記リセット信号に応じた前記ORゲートの出力信号が入力されることを特徴とする請求項2に記載の制御回路。
【請求項4】
前記パルス信号生成部は、
前記マスク信号と前記電流制限信号が入力される第2ANDゲートと、
前記リセット信号と前記第2ANDゲートの出力信号が入力されるORゲートと、
そのセット端子に、前記セット信号に応じた信号が入力され、そのリセット端子に、前記リセット信号に応じた前記ORゲートの出力信号が入力されるSRフリップフロップと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項5】
前記リセット信号生成部は、
前記検出電圧を前記フィードバック電圧と比較し、前記検出電圧が前記フィードバック電圧より高くなるとアサートされる前記リセット信号を生成するエラーコンパレータを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の制御回路。
【請求項6】
前記リセット信号生成部は、
前記セット信号と同期した三角波またはのこぎり波のスロープ信号を生成するスロープ生成部と、
前記検出電圧と前記スロープ信号を加算する加算器と、
をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の制御回路。
【請求項7】
前記マスク信号生成部は、前記パルス信号に応じた信号を、遅延させる遅延回路を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の制御回路。
【請求項8】
入力端子に入力電圧を受け、出力端子から降圧された出力電圧を出力するスイッチングレギュレータであって、
前記入力端子と前記出力端子の間に順に直列に設けられたスイッチングトランジスタ、検出抵抗およびインダクタと、
前記スイッチングトランジスタと前記検出抵抗の接続点と接地端子の間に設けられた整流ダイオードと、
前記出力端子と接地端子の間に設けられた出力キャパシタと、
前記スイッチングトランジスタを駆動する請求項1から7のいずれかに記載の制御回路と、
を備えることを特徴とするスイッチングレギュレータ。
【請求項9】
請求項8に記載のスイッチングレギュレータを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項8に記載のスイッチングレギュレータを備えることを特徴とするACアダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非絶縁降圧型スイッチングレギュレータ(DC/DCコンバータ)に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビや冷蔵庫をはじめとするさまざまな家電製品、あるいはラップトップ型コンピュータ、携帯電話端末やPDA(Personal Digital Assistants)をはじめとする電子機器には、直流電圧を負荷に応じた電圧レベルに降圧するスイッチングレギュレータが搭載される。
【0003】
図1は、本発明者らが検討した非絶縁降圧型スイッチングレギュレータの構成を示す回路図である。スイッチングレギュレータ2rは、入力端子P1の直流入力電圧VINを降圧し、出力端子P2に出力する。
【0004】
スイッチングレギュレータ2rは、NチャンネルMOSFETであるスイッチングトランジスタM1、整流ダイオードD1、インダクタL1、出力キャパシタC1、電流検出抵抗Rs、制御回路100r、フィードバック回路102、を備える。
【0005】
電流検出抵抗Rsの一端はスイッチングトランジスタM1と接続され、その他端は、整流ダイオードD1のカソードと接続される。インダクタL1の一端は整流ダイオードD1のカソードと接続され、その他端は出力キャパシタC1と接続される。
【0006】
制御回路100rは、電流モードまたは電圧モードのパルス幅変調方式の制御回路であり、電流検出端子CS、スイッチング端子OUT、フィードバック端子FB、接地端子GNDを有する。制御回路100rスイッチング端子OUTは、スイッチングトランジスタM1のゲートと接続され、その接地端子GNDは、整流ダイオードD1のカソードと接続され、その電流検出端子CSは、電流検出抵抗Rsの一端と接続される。電流検出抵抗Rsには、スイッチングトランジスタM1のオン期間において、インダクタL1のコイル電流Iが流れ、コイル電流Iに比例した電圧降下(検出電圧Vs)が発生する。検出電圧Vsは、電流検出端子CSにフィードバックされる。
【0007】
フィードバック回路102は、スイッチングレギュレータ2rの出力電圧VOUTに応じたフィードバック電圧VFBを生成し、制御回路100rのフィードバック端子FBに入力する。フィードバック回路102は、たとえばフォトカプラを含み、出力電圧VOUTと目標値の誤差に応じたフィードバック電圧VFBを生成する誤差増幅器として機能する。
【0008】
制御回路100rは、検出電圧Vsに応じてコイル電流Iを一定レベルに保ちつつ、フィードバック電圧VFBに応じた出力電圧VOUTが目標値と一致するように、デューティ比が調節されるパルス信号SPWMを生成し、スイッチング端子OUTから出力する。
【0009】
具体的に制御回路100rは、所定の周期毎にスイッチングトランジスタM1をオンする。スイッチングトランジスタM1がオンすると、インダクタL1のコイル電流Iが時間とともに増大し、検出電圧Vsもそれに応じて増大する。
【0010】
制御回路100rは、検出電圧Vsがフィードバック電圧VFBに達すると、言い換えれば、コイル電流Iが、出力電圧VOUTに応じて調節される電流値に達すると、スイッチングトランジスタM1をオフする。以上の動作を繰り返すことにより制御回路100rは、スイッチングトランジスタM1をスイッチングする。
【0011】
図1のスイッチングレギュレータ2rにおいて、スイッチングトランジスタM1のオフ期間、スイッチングトランジスタM1のドレインソース間容量には電荷が蓄えられる。そして、スイッチングトランジスタM1がオンすると、そのドレインソース間容量に蓄えられた電荷が瞬時に放電され、スパイク電流が電流検出抵抗Rsに流れ、インダクタL1のコイル電流Iが過剰に見積もられる。その結果、スイッチングトランジスタM1がオンした直後に、コイル電流Iが十分に増大する前に、スイッチングトランジスタM1がオフしてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
スパイク電流によるコイル電流Iの誤検出を防止するために、スイッチングトランジスタM1がオンした直後、所定のマスク時間TMSKの間、検出電圧Vsをマスクする方法が考えられる。マスク時間TMSKを設けると、スイッチングトランジスタM1は、毎サイクル、少なくともマスク時間TMSKの間は、オフに切りかえられず、オン状態となる。つまりマスク時間TMSKが、スイッチングトランジスタM1の最小オン時間となる。
【0013】
マスク時間を設けたスイッチングレギュレータについて検討した結果、本発明者らは以下の課題を認識するに至った。
【0014】
スイッチングレギュレータ2rの出力端子P2が故障により地絡した状況を考える。図2は、図1のスイッチングレギュレータ2rにおいて、出力が地絡したときの波形図である。本明細書における波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化されている。
【0015】
出力端子P2が地絡しているにもかかわらず、スイッチングトランジスタM1は、毎サイクル、少なくともマスク時間TMSKオンする。インダクタンスLのコイル電流Iの時間変化率は、その両端間の電圧Vを用いて式(1)で与えられる。
dI/dt=V/L …(1)
スイッチングトランジスタM1がオンのとき、インダクタL1の一端には、入力電圧VINが印加され、その他端は、出力端子の地絡により0Vが印加される。したがって、オン時間TMSKごとに、コイル電流Iは、式(2)で与えられる電流量ΔION増大する。
ΔION=TMSK×VIN/L …(2)
【0016】
スイッチングトランジスタM1がオフのとき、インダクタL1の一端には、整流ダイオードD1によって、電圧−Vが印加され、その他端には0Vが印加される。したがってオフ時間ごとに、コイル電流Iは式(3)で与えられる電流量ΔIOFF減少する。
ΔIOFF=TOFF×V/L …(3)
入力電圧VIN=141V、V=0.6Vとすると、ΔION>ΔIOFFが成り立つため、サイクル毎にコイル電流Iが増大し、やがて回路の信頼性に影響を及ぼすことになる。
【0017】
出力端子の地絡状態のみでなく、スイッチングレギュレータ2rの起動直後に出力電圧VOUTが低い状態においても、同様の問題が生じうる。
【0018】
以上の課題を、本発明の分野における共通の一般知識の範囲として捉えてはならない。さらに言えば、上記考察自体が、本出願人がはじめて想到したものである。
【0019】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、出力電圧が低い状態における信頼性を改善したスイッチングレギュレータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のある態様は、降圧型スイッチングレギュレータの制御回路に関する。スイッチングレギュレータは、入力端子に入力電圧を受け、出力端子から降圧された出力電圧を出力する。スイッチングレギュレータは、入力端子と出力端子の間に順に直列に設けられたスイッチングトランジスタ、検出抵抗およびインダクタと、スイッチングトランジスタと検出抵抗の接続点と接地端子の間に設けられた整流ダイオードと、出力端子と接地端子の間に設けられた出力キャパシタと、を含む。制御回路は、スイッチングトランジスタの制御端子と接続されるべきスイッチング端子と、スイッチングトランジスタと検出抵抗の接続点と接続されるべき電流検出端子と、検出抵抗とインダクタの接続点と接続されるべき接地端子と、出力電圧に応じたフィードバック電圧が入力されるべきフィードバック端子と、電流検出端子の検出電圧が、所定のしきい値電圧より高いときにアサートされる電流制限信号を生成する電流制限用コンパレータと、所定の周期ごとにアサートされるセット信号を生成するオシレータと、スイッチングトランジスタがオンした後、所定の遅延時間経過後にアサートされるマスク信号を生成するマスク信号生成部と、フィードバック電圧に応じてアサートされるタイミングが調節されるリセット信号を生成するリセット信号生成部と、スイッチングトランジスタがオンすべき期間に第1レベル、オフすべき期間に第2レベルとなるパルス信号を生成するパルス信号生成部であって、(a)電流制限信号がネゲートされる期間にセット信号がアサートされると、パルス信号を第1レベルに遷移させ、(b)リセット信号がアサートされると、またはマスク信号がネゲートされる期間に電流制限信号がアサートされると、パルス信号を第2レベルに遷移させるパルス信号生成部と、パルス信号に応じたスイッチング信号を、スイッチング端子を介してスイッチングトランジスタの制御端子に出力するドライバと、を備える。
【0021】
この態様において電流検出抵抗には、スイッチングトランジスタのオン期間のみでなく、オフ期間にもコイル電流が流れるため、オン期間、オフ期間の両方にわたり、コイル電流をモニターできる。
スイッチングレギュレータの出力端子が地絡するなどして、出力電圧が低下すると、インダクタに流れるコイル電流が次第に増大し、電流制限用コンパレータにより過電流状態が検出される。電流制限用コンパレータが生成する電流制限信号は、オン期間、オフ期間を問わずに、継続的にアサートされ続ける。そして、この電流制限信号によってセット信号をマスクすることにより、スイッチングトランジスタが第1レベルに遷移しなくなるため、スイッチングトランジスタをオフに保つことができ、コイル電流が上昇し続けるのを防止できる。その結果、回路の信頼性を改善できる。
【0022】
本発明の別の態様は、入力端子に入力電圧を受け、出力端子から降圧された出力電圧を出力するスイッチングレギュレータに関する。このスイッチングレギュレータは、入力端子と出力端子の間に順に直列に設けられたスイッチングトランジスタ、検出抵抗およびインダクタと、スイッチングトランジスタと検出抵抗の接続点と接地端子の間に設けられた整流ダイオードと、出力端子と接地端子の間に設けられた出力キャパシタと、スイッチングトランジスタを駆動する上述の制御回路と、を備える。
【0023】
本発明のさらに別の態様は、電子機器である。この電子機器は、上述のスイッチングレギュレータを備える。
本発明のさらに別の態様は、ACアダプタである。このACアダプタは、上述のスイッチングレギュレータを備える。
【0024】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0025】
本発明のある態様によれば、出力電圧が低い状態における信頼性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明者らが検討した非絶縁降圧型スイッチングレギュレータの構成を示す回路図である。
図2図1のスイッチングレギュレータにおいて、出力が地絡したときの波形図である。
図3】実施の形態に係る電子機器の構成を示す回路図である。
図4図3の制御回路の構成を示す回路図である。
図5図5(a)、(b)は、図3のスイッチングレギュレータの動作を示す波形図である。
図6】スイッチングレギュレータを備えるACアダプタを示す図である。
図7図7(a)、(b)は、スイッチングレギュレータを備える電子機器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0028】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0029】
図3は、実施の形態に係る電子機器1の構成を示す回路図である。
電子機器1は、たとえばテレビや冷蔵庫、エアコンなどの家電製品やコンピュータである。電子機器1は、スイッチングレギュレータ2、整流回路4、PFC(力率改善)回路6、負荷8を備える。
【0030】
整流回路4は、たとえばダイオード整流回路であり、商用交流電圧などの交流電圧を全波整流する。
【0031】
PFC回路6は、整流回路4からの全波整流された交流電圧VACを受け、出力電圧VDCを生成する昇圧型のDC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)である。PFC回路6は、交流電圧VACと入力電流IACの位相を一致させることにより力率を改善する。
【0032】
スイッチングレギュレータ2は、PFC回路6の出力電圧VINを入力端子P1に受け、これを降圧して出力電圧VOUTを生成し、出力端子P2に接続される負荷8に供給する。
【0033】
負荷8は、電子機器1全体を統合的に制御するマイコンや、特定の信号処理を行う信号処理回路を含む。信号処理回路としては、たとえば外部機器との通信を行うインタフェース回路や、画像処理回路、音声処理回路などが例示される。
【0034】
続いてスイッチングレギュレータ2の構成を説明する。スイッチングレギュレータ2は、制御回路100、フィードバック回路102、スイッチングトランジスタM1、整流ダイオードD1、電流検出抵抗Rs、インダクタL1、出力キャパシタC1を備える。
【0035】
スイッチングトランジスタM1、整流ダイオードD1、インダクタL1、出力キャパシタC1により構成される出力回路のトポロジーは、降圧型スイッチングレギュレータの一般的なものである。
【0036】
図3のスイッチングレギュレータ2は、電流検出抵抗Rsが、整流ダイオードD1のカソードと、インダクタL1の一端の間に設けられている点において図1と異なっている。すなわち入力端子P1と出力端子P2の間に、スイッチングトランジスタM1、電流検出抵抗Rs、インダクタL1が順に直列に設けられる。図1の電流検出抵抗Rsには、スイッチングトランジスタM1のオン期間のみコイル電流Iが流れるが、図3の電流検出抵抗Rsには、オン期間TONとオフ期間TOFFの両方においてコイル電流Iが流れることに留意すべきである。
【0037】
制御回路100は、スイッチング端子OUT、電流検出端子CS、接地端子GND、フィードバック端子FBを有する。
スイッチング端子OUTは、スイッチングトランジスタM1の制御端子(ゲート)と接続される。スイッチングトランジスタM1はNチャンネルMOSFETであり、それをオンするためには、ゲートソース間にMOSFETのしきい値電圧を超える駆動電圧を印加する必要がある。そこで制御回路100の接地端子GNDは、検出抵抗RsとインダクタL1の接続点N1と接続される。
【0038】
電流検出端子CSは、スイッチングトランジスタM1と検出抵抗Rsの接続点N2と接続される。電流検出端子CSと接地端子GNDの間には、コイル電流Iに比例する検出電圧Vs(=Rs×I)が発生する。
【0039】
制御回路100のフィードバック端子FBには、スイッチングレギュレータ2の出力電圧VOUTに応じたフィードバック電圧VFBが入力される。フィードバック電圧VFBは、フィードバック回路102によって生成される。
【0040】
たとえばフィードバック回路102は、ツェナーダイオードZD、抵抗R11、R12、フォトカプラPCを含む。ツェナーダイオードZD、抵抗R11、R12は出力端子と接地端子の間に順に設けられる。フォトカプラPCの入力側の発光ダイオードには、抵抗R11の電圧降下に応じた電流が流れる。フォトカプラPCの出力側のフォトトランジスタには、出力電圧VOUTに応じたフィードバック電圧VFBが発生する。フィードバック回路102は、出力電圧VOUTとその目標電圧との誤差に応じた誤差電圧を生成する誤差増幅器として機能する。なお、フィードバック回路102の構成は特に限定されず、演算増幅器を誤差増幅器として用いてもよい。この場合、誤差増幅器は制御回路100に内蔵してもよい。
【0041】
図4は、図3の制御回路100の構成を示す回路図である。
制御回路100は、電流制限用コンパレータ10、オシレータ12、マスク信号生成部14、リセット信号生成部20、パルス信号生成部30、ドライバ40を備え、ピーク電流モードでスイッチングトランジスタM1のスイッチングを制御する。
【0042】
電流制限用コンパレータ10は、検出端子CSの検出電圧Vsが、所定のしきい値電圧VTHより高いときにアサート(ハイレベル)される電流制限信号SLIMを生成する。電流制限信号SLIMは、コイル電流Iが所定のしきい値レベルを超える過電流状態においてアサートされる。
オシレータ12は、所定の周期ごとにアサート(ハイレベル)されるセット信号SSETを生成する。
【0043】
マスク信号生成部14は、スイッチングトランジスタM1がオンした後、所定の遅延時間(マスク時間)TMSK経過後にアサートされるマスク信号SMSKを生成する。
【0044】
リセット信号生成部20は、フィードバック電圧VFBに応じてアサート(ハイレベル)されるタイミングが調節されるリセット信号SRSTを生成する。
【0045】
ピーク電流モードのリセット信号生成部20は、スロープ生成部22、加算器24、エラーコンパレータ26を含む。スロープ生成部22は、オシレータ12が生成するセット信号SSETと同期した三角波もしくはのこぎり波のスロープ信号SSLOPEを生成する。加算器24は、検出電圧Vsとスロープ信号SSLOPEを加算する。スロープ生成部22および加算器24は位相補償のために設けられる。
エラーコンパレータ26は、加算器24によってスロープ信号SSLOPEが重畳された検出電圧Vs’を、フィードバック電圧VFBと比較する。そして、検出電圧Vsがフィードバック電圧VFBより高くなるとアサート(ハイレベル)されるリセット信号SRSTを生成する。リセット信号生成部20の構成は特に限定されず、別の構成としてもよい。
【0046】
パルス信号生成部30は、スイッチングトランジスタM1がオンすべき期間に第1レベル(ハイレベル)、オフすべき期間に第2レベル(ローレベル)となるパルス信号SPWMを生成する。パルス信号生成部30は、(機能a)電流制限信号SLIMがネゲート(ローレベル)される期間に、セット信号SSETがアサートされると、パルス信号SPWMを第1レベル(ハイレベル)に遷移させる。パルス信号生成部30は、(機能b)リセット信号SRSTがアサート(ハイレベル)されると、またはマスク信号SMSKがネゲート(ローレベル)される期間に電流制限信号SLIMがアサートされると、パルス信号SPWMを第2レベル(ローレベル)に遷移させる。
【0047】
たとえばパルス信号生成部30は、SRフリップフロップ32、第1ANDゲート34、第1インバータ36、ORゲート38、第2ANDゲート39を備える。
第1インバータ36は、電流制限信号SLIMを反転する。第1ANDゲート34には、セット信号SSETと第1インバータ36の出力信号が入力される。第1ANDゲート34の出力信号は、SRフリップフロップ32のセット端子(S)に入力される。
【0048】
SRフリップフロップ32のセット端子(S)には、セット信号SSETに応じた信号が、そのリセット端子(R)には、リセット信号SRSTに応じた信号が入力される。
【0049】
第1インバータ36の出力信号は、過電流状態においてローレベル、そうでないときにハイレベルとなる。つまり第1ANDゲート34は、過電流状態においてセット信号SSETをマスクする。SRフリップフロップ32の出力Qであるパルス信号SPWMは、マスクされたセット信号SSET’がアサートされる度に、アサート(ハイレベル)される。
【0050】
第2ANDゲート39には、マスク信号SMSKと電流制限信号SLIMが入力される。上述のように、マスク信号SMSKは、スイッチングトランジスタM1がオンしてから所定のマスク時間TMSKの間はネゲート(ローレベル)され、オンしてからマスク時間TMSK経過後にアサート(ハイレベル)される。すなわち第2ANDゲート39は、スイッチングトランジスタM1がオンしてからマスク時間TMSKが経過するまでの間、電流制限信号SLIMをマスクする。
【0051】
ORゲート38には、リセット信号SRSTと第2ANDゲート39の出力信号SLIM’が入力される。ORゲート38の出力は、SRフリップフロップ32のリセット端子に入力される。
【0052】
この構成によって、パルス信号生成部30の機能(a)、(b)が実現できる。当業者であれば、この機能を実現しうるパルス信号生成部30には、さまざまな変形例が存在することが理解され、こうした変形例も本発明の範囲に含まれる。
【0053】
ドライバ40は、パルス信号SPWMに応じたスイッチング信号を、スイッチング端子OUTを介してスイッチングトランジスタM1のゲートに出力する。
【0054】
たとえばドライバ40は、デッドタイム生成部42、44と、第2インバータ46、第3インバータ48、トランジスタM2、M3を含む。デッドタイム生成部42、44はそれぞれ、入力されたパルス信号SPWMを所定のデッドタイムTd遅延させる。デッドタイムTdにより、トランジスタM2、M3が同時にオンするのを防止できる。
【0055】
第2インバータ46は、デッドタイム生成部42の出力を反転し、ハイサイドトランジスタM2のゲートに出力する。第3インバータ48は、デッドタイム生成部44の出力を反転し、ローサイドトランジスタM3のゲートに出力する。
【0056】
上述のマスク信号生成部14は、パルス信号生成部30が生成するパルス信号SPWMに応じた信号、具体的にはスイッチングトランジスタM1がオンするタイミングでアサート(ハイレベル)される信号を、マスク時間TMSK遅延させる遅延回路を含んでもよい。
【0057】
スイッチングトランジスタM1は、パルス信号SPWMがローレベルからハイレベルに遷移した後、デッドタイムTd経過後にオンする。したがって、デッドタイム生成部44の出力信号は、スイッチングトランジスタM1がオンするタイミングにおいて、ローレベルからハイレベルに遷移する。そこでマスク信号生成部14は、デッドタイム生成部44の出力信号を、所定のマスク時間TMSK遅延させてもよい。
【0058】
以上が制御回路100の構成である。続いてスイッチングレギュレータ2の動作を説明する。図5(a)、(b)は、図3のスイッチングレギュレータ2の動作を示す波形図である。
【0059】
図5(a)を参照し、正常時の動作を説明する。
セット信号SSETが所定の周期ごとにアサートされるごとに、パルス信号SPWMがハイレベルとなり、スイッチングトランジスタM1がオンする。スイッチングトランジスタM1がオンすると、コイル電流Iが上昇に転ずる。検出電圧Vsがフィードバック電圧VFBに達すると、リセット信号SRSTがアサートされ、パルス信号SPWMがローレベルとなり、スイッチングトランジスタM1がオフする。
【0060】
スイッチングトランジスタM1がオンした直後、スイッチングトランジスタM1のドレインソース間容量の放電に起因するスパイク電流ISPKが流れると、検出電圧Vsがしきい値電圧VTHを超え、電流制限信号SLIMがアサートされるが、スパイク電流ISPKはマスク時間TMSK内に発生するため、パルス信号生成部30によって、より具体的には第2ANDゲート39によってマスクできる。
【0061】
続いて図5(b)を参照し、地絡故障などによってスイッチングレギュレータ2の出力電圧VOUTが低下した状態の動作を説明する。
出力電圧VOUTが低下すると、コイル電流Iが増大し、それにともなって検出電圧Vsが増大する。時刻t1に検出電圧Vsがしきい値電圧VTHを超えると、電流制限信号SLIMがアサートされる。電流制限信号SLIMがアサートされると、パルス信号SPWMがローレベルとなり、スイッチングトランジスタM1がオフする。
【0062】
時刻t1以降、検出電圧Vsがしきい値電圧VTHより高い期間、電流制限信号SLIMはハイレベルを持続するため、セット信号SSETがマスクされ、スイッチングトランジスタM1はオフを維持する。
【0063】
時刻t2に検出電圧Vsがしきい値電圧VTHより低くなると、電流制限信号SLIMがネゲートされる。時刻t3に、次のセット信号SSETがアサートされると、スイッチングトランジスタM1が再びオンする。
【0064】
これにより、コイル電流Iが再び上昇し、時刻t4に検出電圧Vsはしきい値電圧VTHを超える。時刻t3からマスク時間TMSKの間は、電流制限信号SLIMがマスクされ、時刻t3からマスク時間TMSK経過後の時刻t5に、電流制限信号SLIM’(不図示)がアサートされ、スイッチングトランジスタM1がオフする。
【0065】
以上が制御回路100の動作である。制御回路100によれば、スパイク電流ISPKによる誤動作を防止しつつ、スイッチングレギュレータ2の出力短絡、あるいは起動直後において、コイル電流Iが上昇し続けるのを防止できる。その結果、回路の信頼性を高めることができる。
【0066】
続いて、スイッチングレギュレータ2の用途を説明する。
【0067】
スイッチングレギュレータ2は、ACアダプタや電子機器の電源ブロックに好適に利用される。
【0068】
図6は、スイッチングレギュレータ2を備えるACアダプタ800を示す図である。ACアダプタ800は、プラグ802、筐体804、コネクタ806を備える。プラグ802は、図示しないコンセントから商用交流電圧VACを受ける。スイッチングレギュレータ2は、筐体804内に実装される。スイッチングレギュレータ2の前段には、交流電圧を直流電圧に変換する整流回路が設けられる。スイッチングレギュレータ2は、整流回路からの直流電圧を受ける。スイッチングレギュレータ2により生成された直流出力電圧VOUTは、コネクタ806から電子機器810に供給される。電子機器810は、ノートPC、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話、携帯オーディオプレイヤなどが例示される。
【0069】
図7(a)、(b)は、スイッチングレギュレータ2を備える電子機器900を示す図である。図7(a)、(b)の電子機器900はディスプレイ装置であるが、電子機器900の種類は特に限定されず、オーディオ機器、冷蔵庫、洗濯機、掃除機など、電源装置を内蔵する機器であればよい。
プラグ902、図示しないコンセントから商用交流電圧VACを受ける。スイッチングレギュレータ2の前段には、交流電圧を直流電圧に変換する整流回路が設けられる。スイッチングレギュレータ2は、整流回路からの直流電圧を受ける。スイッチングレギュレータ2は、筐体904内に実装される。スイッチングレギュレータ2により生成された直流出力電圧VOUTは、同じ筐体904内に搭載される、マイコン、DSP(Digital Signal Processor)、電源回路、照明機器、アナログ回路、デジタル回路などの負荷に供給される。
【0070】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0071】
各信号のアサート、ネゲートを、ハイレベル、ローレベルのいずれに割り当てるかは、設計事項であり、当業者によれば、適宜入れ替えることができ、それに応じて、図2図3に示される回路構成を適宜修正しうることは言うまでもない。
【0072】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0073】
100…制御回路、2…スイッチングレギュレータ、4…整流回路、6…PFC回路、8…負荷、L1…インダクタ、C2…入力キャパシタ、C1…出力キャパシタ、Rs…電流検出抵抗、D1…整流ダイオード、102…フィードバック回路、M1…スイッチングトランジスタ、OUT…スイッチング端子、FB…フィードバック端子、CS…電流検出端子、GND…接地端子、10…電流制限用コンパレータ、12…オシレータ、14…マスク信号生成部、20…リセット信号生成部、22…スロープ生成部、24…加算器、26…エラーコンパレータ、30…パルス信号生成部、32…SRフリップフロップ、34…第1ANDゲート、36…第1インバータ、38…ORゲート、39…第2ANDゲート、40…ドライバ、42,44…デッドタイム生成部、46…第2インバータ、48…第3インバータ、P1…入力端子、P2…出力端子。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、非絶縁降圧型スイッチングレギュレータ(DC/DCコンバータ)に関する。
図1
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