(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のプライマー組成物は、天然ゴムにメチルメタアクリレート15〜65質量%をグラフト重合させたグラフト重合体(以下、「グラフト重合体」ともいう)と、カルボキシル基変性アクリロニトリルブタジエンラバー(以下、「変性NBR」ともいう)とを有するものである。
本発明のプライマー組成物で使用するグラフト重合体は、天然ゴムにメチルメタアクリレート15〜65質量%をグラフト重合させたものである。斯様な特定量のメチルメタクリレートをグラフト重合体に含有させることで、変性NBR含有のプライマー組成物を溶剤系ベース及び水分散型(エマルション系)ベースの何れに調製しても、良好に粘着テープのフィルム基材と粘着剤層との密着性を向上させることが出来る(比較例5〜6及び実施例1〜13など参照)。
さらに、本発明のプライマー組成物は、前記グラフト重合体100質量部と変性NBR25〜300質量部とをそれぞれ特定量含有するものである。
一般的にプライマー組成物を使用する粘着テープにおいて、プライマーは接着剤層と基材層との中間層にあり、被着体から粘着剤を剥がすため、「粘着剤<粘着剤とプライマーの接点<プライマー<プライマーと基材との接点<基材」の力関係が必要となってくる。
そして、斯様に前記グラフト重合体と変性NBRとをそれぞれ特定量含有させることで、本発明のプライマー組成物は、基材に対しても粘着剤に対しても親和性をもつようになることから、基材と粘着剤の両者間を強固に結びつけることが出来る。
よって、本発明のプライマー組成物は、プライマーの結合力が強くなり密着性が向上しているので、上述の力関係を満たす良好な粘着テープを得ることが可能である。
【0009】
本発明で使用する変性NBRは、プライマー組成物と粘着テープのフィルム基材と粘着剤層との密着性を向上させるために配合するものである。また、フィルム基材に含まれる可塑剤が、粘着剤層に移行することを防止するという効果も有する。
これは、変性NBRが、フィルム基材への親和性の大きいブタジエン成分と、粘着剤層への親和性の大きいアクリロニトリル成分を有し、かつ、フィルム基材及び粘着剤層との親和性のあるカルボキシル基を有するためである。
しかも、本発明のプライマー組成物は、グラフト重合体100質量部(固形分換算)に対して、変性NBR25〜300質量部配合することが本発明の目的を達成する上で重要である(例えば、実施例4及び実施例6など参照)。この数値範囲に技術的意義があることは、変性NBR20質量部では特に基材とプライマー組成物との密着性及び水浸漬後の密着性が不十分であり(比較例2参照)、また変性NBR350質量部では特にプライマー組成物の粘着剤との密着性及び水浸漬後の密着性が不十分である(比較例3参照)ことから明らかである。
【0010】
すなわち、プライマー組成物中の変性NBRの配合量(固形分換算)は、グラフト重合体100質量部(固形分換算)に対して、25〜300質量部がよく、より50〜200質量部、さらに100〜200質量部が好ましい。変性NBRの配合量があまりに少ないと、プライマー組成物とフィルム基材との密着性が弱くなる場合がある。また、変性NBRの配合量があまりに多いと、プライマー組成物自体が柔らかくなりすぎて、得られる粘着テープが層間剥離してしまう場合がある。前記変性NBRの特定の数値範囲にすることにより、粘着テープのフィルム基材と粘着剤層との密着性を向上させ、耐水性、耐熱性、耐乾性に優れる粘着テープを得ることが可能となる。
【0011】
前記カルボキシル変性アクリロニトリルブタジエンラバー中のカルボキシル基変性量は、特に限定されないが、0.3〜7質量%、より0.5〜7質量%の範囲に調整することによって、上述の効果、特にプライマー組成物とフィルム基材との密着性向上効果及びプライマー組成物自体の適度な硬さによる粘着テープの層間剥離の抑制効果が大きくなるため好ましい。これにより、粘着テープのフィルム基材と粘着剤層との密着性を向上させることが可能となる。
なお、「カルボキシル基変性量」は、NMRなどにて算出することが可能である。より具体的には、K−N法から求めたAN分を絶対値とし、NMRより算出したMMA/Bd比を用いて算出することが可能である。
【0012】
カルボキシル変性したアクリロニトリルブタジエンラバーとしては、特に限定されないが、低ニトリルタイプ(ニトリル含有量24%以下)、中ニトリルタイプ(ニトリル含有量25〜30%)、中高ニトリルタイプ(ニトリル含有量31〜35%)、高ニトリルタイプ(ニトリル含有量36〜43%)、極高ニトリルタイプ(ニトリル含有量43%以上)等が挙げられる。このうち、中ニトリルタイプ、中高ニトリルタイプ、高ニトリルタイプ等が好ましく、さらに、ニトリル含有量27〜40%程度の中〜高ニトリルタイプのものが好ましい。これらは、単独で使用するかあるいは2種類以上を併用してもよい。
なお、「ニトリル含有量」は、NMR(K−N法)などにて算出することが可能である。
【0013】
本発明で使用するグラフト重合体は、粘着テープのフィルム基材と粘着剤層との密着力を向上させるために配合するものである。
一般的にグラフト重合体とは、ランダムブロック共重合体の一種であり、幹となる高分子鎖に、異種の枝高分子鎖が結合した枝分かれ構造をしているものをいう。
本発明に係るグラフト重合体は、その構造中に天然ゴム(ポリマー)単位とメチルメタアクリレート(モノマー・ポリマー)単位を有するものである。例えば、天然ゴムポリマー(幹)からメチルメタクリレートのポリマーが枝状(櫛状)に結合した状態;メチルメタクリレートのポリマー(幹)から天然ゴムポリマーが枝状に結合した状態;天然ゴムポリマーと天然ゴムポリマーとの間にメチルメタクリレートのポリマーが介在しているような状態等が挙げられる。なお、天然ゴムは断片化していてもよく、メチルメタクリレートはモノマーであってもよい。
天然ゴム単位(成分)は、粘着剤層との密着性が高く、メチルメタアクリレート単位(成分)はフィルム基材との密着性が高い。このため、プライマー組成物の一成分としてグラフト重合体を配合することにより、粘着テープのフィルム基材と粘着剤層との密着力を向上させることができる。
【0014】
グラフト重合体のメチルメタアクリレートの比率は、天然ゴムに、メチルメタアクリレート15〜65質量%含有させ、好ましくは15〜70質量%、より好ましくは30〜50質量%の範囲が好適である。このとき、天然ゴムの比率は、好ましくは85〜30質量%、より好ましくは70〜50質量%とするのが好適である。グラフト重合体中のメチルメタアクリレートの比率をあまりに少なくしないようにすることで、メチルメタアクリレートとフィルム基材との密着性が悪くなって、粘着テープの層間剥離が起こるのを抑制できる。また、メチルメタアクリレートの比率があまりに多くならないようにすることで、プライマー組成物自体が硬化してフィルム基材の変形に追従できなくなってしまい、粘着テープの層間剥離が起こるのを抑制できる。
【0015】
前記グラフト重合体は、天然ゴムにメチルメタアクリレートをグラフト重合させたグラフト重合体を適宜選択して採用でき、例えば、懸濁重合法、乳化重合法等の公知のグラフト重合法にて得ることができる。また、メチルメタアクリレート含有量が30〜50%の市販品を用いることができる。
【0016】
さらに、前記プライマー組成物を、グラフト重合体のムーニー粘度を以下のように調整することで、優れた溶剤系プライマー組成物とすることが可能である。
グラフト重合体のムーニー粘度は、特に限定されないが、例えば、グラフト重合体自体を、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練(素練り)することにより、グラフト重合体のムーニー粘度(MS
1+4)を低下させることが出来る。
このとき、グラフト重合体のムーニー粘度は、MS
1+4および100℃の条件で70〜160とするのが良く、更に好ましくは80〜150とするのが良い。
グラフト重合体のムーニー粘度をあまりに低下させすぎないようにすることで、得られるプライマー組成物自体が凝集破壊することによって、フィルム基材と粘着剤層との間で層間剥離が発生するのを抑制できる。ムーニー粘度があまりにも高いままにしないようにすることで、フィルム基材の変形に追従できなくなってしまい、粘着テープの層間剥離が起こるのを抑制できる。
すなわち、前記グラフト重合体のムーニー粘度を前記特定の範囲に調整することで、さらに粘着テープのフィルム基材と粘着剤層との密着性を向上させ、さらに耐水性、耐熱性、耐乾性に優れる粘着テープを得ることが可能となる優れた溶剤系ベースのプライマー組成物を得ることができる。
【0017】
なお、ムーニー粘度はJIS K 6300に準じて測定すればよい。本発明では、3回試験を行い、その平均値を採用した。
【0018】
また、前記プライマー組成物を、グラフト重合体のムーニー粘度を調整するのではなく、グラフト重合体及び変性NBRに、さらに以下の界面活性剤を配合することで、優れたエマルション系プライマー組成物とすることが可能である。なお、界面活性剤を配合する前に、グラフト重合体及び/又は変性NBRを安定性向上のためエマルション状態にするのが、望ましい。
本発明で使用する界面活性剤は、粘着テープのフィルム基材および粘着剤層に対するプライマー組成物の濡れ性を向上させるために、グラフト重合体を含むプライマー組成物中に、さらに配合するものである。
すなわち、界面活性剤を含有させることで、フィルム基材とプライマー組成物、並びに、プライマー組成物と粘着剤層との密着性を上げることが可能となる優れたエマルション系ペースのプライマー組成物を得ることができる。
【0019】
前記界面活性剤は、その種類は特に限定するものではなく、通常の陰イオン型界面活性剤、陽イオン型界面活性剤、非イオン型界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、フッ素系界面活性剤、反応性界面活性剤など各種のものが使用できる。これら界面活性剤は、単独のみならず、複数のものを併用してもよい。
【0020】
これら界面活性剤の中でも、陰イオン型界面活性剤や非イオン型界面活性剤を用いると、粘着剤層と酸塩基反応を起こさないため、好ましい。
前記陰イオン型界面活性剤としては、脂肪酸型、アルキルベンゼン型、硫酸エステル型、高級アルコール型等があり、例えば、高級脂肪酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等がある。
【0021】
また、これら界面活性剤の中でも、非イオン型界面活性剤を用いると、粘着テープの製造時に、粘着剤層を高温で乾燥させる場合や、粘着テープの使用環境が高温である場合は、高温で分解しにくいため、好ましい。
前記非イオン型界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシルエチレン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等がある。
【0022】
前記界面活性剤を上述の如く配合させる際の添加量は、グラフト重合体100質量部(固形分換算)に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。
界面活性剤の添加量が0.1質量部以上にすることによって、該添加量が少ないことで濡れ性が向上せずに、プライマー組成物を粘着剤層に均一に塗布できなくなる場合があるのを低減することが可能である。一方、界面活性剤の添加量が10質量部以下にすることによって、該添加量を多くすることでプライマー組成物に可塑化効果を与えてしまい、得られる粘着テープを巻きほぐした際に、プライマー組成物が凝集破壊して粘着テープの層間剥離が生じる場合があるのを低減すること可能である。
【0023】
本発明のプライマー組成物には、さらに必要に応じて安定剤、軟化剤、老化防止剤、架橋剤及び改質剤等から選ばれる1種以上のものを添加することが出来る。なお、本発明の効果を阻害しない範囲で前記界面活性剤を適宜添加してもよい。
そして、前記プライマー組成物は、上述のものを配合し水及び/又は有機溶剤の溶媒にて混合溶解して、適宜固形分濃度及び溶液粘度を調整して得ることが可能である。
【0024】
前記プライマー組成物を水及び/又は有機溶剤の溶媒で希釈した固形分濃度は、塗布性及び塗布量の関係上、1〜20質量%がよく、更に3〜10質量%が好ましい。
【0025】
前記プライマー組成物を水及び/又は有機溶剤の溶媒で希釈した溶液粘度は、塗布性及び塗布量の関係上、1〜500MPa・s(BM型粘度計 ルーターNO.1 6RPM)がよく、より10〜230MPa・sが好ましく、更に10〜100MPa・sが好ましい。
【0026】
前記溶液粘度は、プライマー組成物を希釈した溶液を温度23±2℃、湿度50±5%RH恒温恒温恒湿室にて24時間放置し状態調整した後、BM型粘度計を用いて、ルーターNO.1、回転数6rpmとし、回転開始後1分後の溶液粘度を採取、3回試験を行い、その平均値を採用する。
【0027】
前記プライマー組成物を有機溶剤で希釈する場合、その溶剤としては、トルエン、ヘキサン、ノルマルヘキサン、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどがある。これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0028】
本発明の粘着テープは、上述のプライマー組成物を、フィルム基材と、フィルム基材の少なくとも一方の面に積層された粘着剤層との間に介在させることで得ることができる。
【0029】
前記フィルム基材は、特に限定されないが、例えば、重合度700〜1300のポリ塩化ビニル100質量部に対して軟化剤30〜60質量部とCa−Zn系複合安定剤0.1〜5質量部を配合したものを使用するのが、上述のプライマー組成物を使用する際には望ましい。また、前記フィルム基材には、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲で、着色剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、滑剤、充填剤、その他の添加剤を配合することができる。
【0030】
前記フィルム基材を成形する手段は、特に限定されないが、各種材料を慣用の溶融混練等や各種混合装置(1軸又は2軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー等)を使用して各成分が均一に分散するように混合し、当該混合物をカレンダー成形機によりフィルムに成形し、所望のフィルム幅にスリットすることにより、得られる。カレンダー成形におけるロール配列方式は、例えば、L型、逆L型、Z型などの公知の方式を採用でき、又、ロール温度は通常150〜200℃、好ましくは160〜190℃の範囲に設定する。フィルム基材の厚みは特に制限されず40〜300μmがよく、更に60〜200μm好ましい。
【0031】
前記粘着剤層に用いる粘着剤は、一般的な粘着テープ用粘着剤であればよく、例えば、溶剤型粘着剤、エマルジョン型粘着剤が使用可能である。さらに、このなかに必要に応じて、粘着付与剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、架橋剤、軟化剤等を配合することができる。
【0032】
前記粘着剤のベースポリマーは、天然ゴムである。これ以外に再生ゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリイソプレン、NBR(低、中、中高、高、極高タイプ)、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、及びプライマー組成物中にも配合する公知のグラフト重合体(例えば、特許文献1〜2など)や上述のグラフト重合体などのグラフト重合体等から選ばれる1種又は2種以上のものを添加してもよい。
【0033】
また、粘着付与剤として、特に限定されないが、例えば、テルペン樹脂、ロジン樹脂、水添ロジン樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、脂肪族系及び脂環族系などの石油樹脂、テルペン−フェノール樹脂、キシレン系樹脂、その他の脂肪族炭化水素樹脂または芳香族炭化水素樹脂等から選ばれる1種又は2種以上のものを挙げることができる。
また、老化防止剤としては、例えば、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、ベンズイミダゾール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、リン系老化防止剤等から選ばれる1種又は2種以上のものを挙げることができる。
また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート系、エポキシ系、アミン系等から選ばれる1種又は2種以上のものが挙げられる。
【0034】
前記粘着剤における各成分の配合割合は、特に限定されないが、例えば、天然ゴム100質量部、グラフト重合体10〜50質量部(好適には20〜40質量部)、粘着付与剤85〜135質量部(好適には100〜120質量部)などが挙げられ、適宜老化防止剤、紫外線吸収剤を配合すればよい。
前記粘着剤の固形分濃度は15〜55%程度であればよく、また、粘着剤の粘度は、1〜50000MPa・s(BM型粘度計 ルーターNO.4 6RPM)がよく、さらに5000〜40000MPa・sがよい。
【0035】
前記プライマー組成物を用いた粘着テープの製造工程について説明する。
前記プライマー組成物を水及び/又は有機溶剤の溶媒で希釈して分散させた後、軟質ポリ塩化ビニルを主剤とするフィルム基材の片面にグラビアコーター、スプレーコーター、キスロール、バーコーター、ナイフコーター等を用いて塗布し乾燥させる。なお、このとき、乾燥後のプライマーの厚みは、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択できるが、好ましくは1〜50μm、より好ましくは5〜30μmとなるように塗布するのが好適である。
その後、乾燥させたプライマー組成物上に、粘着剤を塗布・乾燥させて粘着剤層を形成させて、粘着テープとすることができる。
粘着剤を塗布する手段は、特に限定されるものではなく、慣用のコーター、例えば、ロールコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなどを用いて行うことができる。乾燥後の粘着剤層の厚みは、粘着性や取扱性を損なわない範囲で適宜選択できるが、粘着剤層の厚みは、例えば、5〜50μm、好ましくは10〜30μmである。これより薄いと粘着力及び巻戻力が低下することがある。一方これより厚くなると、塗工性能が悪くなることがある。
完成した粘着テープを巻き取る場合には、必要に応じ基材の背面に剥離剤を積層したり、粘着剤に剥離シートを積層してもよい。また、粘着テープとして粘着剤を基材の両面に塗工する場合には、プライマー組成物と粘着剤の塗工工程をその背面にも行えばよい。
【0036】
斯様にして本発明の粘着テープを得ることができる。本発明の粘着テープは、上述のプライマー組成物を用いているので、粘着テープのフィルム基材と粘着剤層との密着性が向上しており、しかも耐水性、耐熱性、耐寒性にも優れたものである。このため、本発明の粘着テープは、電気・電子分野、自動車分野などの電線結束として利用することが期待できる。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0038】
後述する実施例1〜13及び比較例1〜6の各プライマー組成物を使用した粘着テープの評価結果を表1及び2に示す。
【0039】
表1及び表2の「基材とプライマー組成物との密着性」は、プライマーを積層させた長さ100mm、横50mmのフィルム基材上に、磨耗材としてベンコットM−1(素材:キュプラ)を置き、その上に荷重500gの重りを乗せて1往復させてプライマーと磨耗材を擦り合わせた後、フィルム基材に塗布したプライマーの脱落状態を目視で確認したものである。
試験環境は、温度23℃±2℃、湿度50±5%RHに設定された評価試験室内、温度−5℃±2℃に設定された低温室および温度50℃±2℃、湿度80±5%RHに設定された環境試験機に24HR状態調整後で試験を行った。n=3以上の測定値の平均値を示し、3回以上試験を繰り返してもプライマーが脱落しなかったものを合格とした。
【0040】
表1及び表2の「プライマー組成物と粘着剤との密着性」は、得られた粘着テープの糊面同士を着け剥がして、プライマー組成物から粘着剤が脱落するまでの回数をみたものである。温度23℃±2℃、湿度50±5%RHに設定された評価試験室内、温度−5℃±2℃に設定された低温室および温度50℃±2℃、湿度80±5%RHに設定された環境試験機に24HR状態調整後で試験を行った。n=3以上の測定値の平均値を示し、3回以上試験を繰り返しても粘着剤が脱落しなかったものを合格とした。
【0041】
表1及び表2の「水浸漬後の密着性」は、プライマーを積層させた基材フィルム及びこれに粘着剤を積層させて得られた粘着テープを、23℃の純水に24HR浸漬させた後、プライマー組成物および粘着面面に付着した水を拭き取り、30秒後に上述の「基材とプライマー組成物との密着性」並びに「プライマー組成物と粘着剤との密着性」の試験を行ったものである。n=3以上の測定値の平均値を示し、それぞれ3回以上試験を繰り返してもプライマーまたは粘着剤が脱落しなかったものを合格とした。
【0042】
表1及び表2の「テープ展開性」とは、粘着テープをJIS B 7721に規定する引張試験機で引張速度50m/minで巻きほぐした際の、フィルム基材背面へ粘着剤残り状態を確認したものである。試験を行う粘着テープをn=3以上のテープ状態を確認し、フィルム基材とプライマー組成物及びプライマー組成物と粘着剤が剥離しなかったものを合格とした。
なお、表2において、材料破壊とはフィルム基材とプライマー組成物、または、プライマー組成物と粘着剤が剥がれた場合を示し、凝集破壊とは粘着剤層自体が、プライマー組成物を積層したフィルム基材と、巻付けられたフィルム基材の背面にそれぞれ分離して残存してしまったことを示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
(実施例1)
(a)フィルム基材は、重合度1000のポリ塩化ビニル100質量部に対して軟化剤45質量部、Ca−Zn系複合安定剤1.5質量部と、着色剤、紫外線吸収剤、滑剤、充填剤を、バンバリーミキサーを使用して各成分が均一に分散するように混合し、当該混合物をL型カレンダー成形機により厚み150μmのフィルム状に成形して得たものである。
(b)プライマー組成物は、グラフト重合体として、「GREEN HPSP社製 MEGAPOLY50(ムーニー粘度150、メチルメタアクリレート含有量49質量%)」100質量部と、変性NBRとして、「日本ゼオン社製Nipol1072J(カルボキシル変性量7.0質量%)」100質量部をトルエンで混合溶解し、固形分濃度4%、溶液粘度40MPa・sに調整して得た。得られたプライマー組成物を、フィルム基材の一方の面にグラビアコーターを使用して乾燥後の厚みが0.7μmになるように塗布し、乾燥させて積層させた。
(c)粘着剤は、天然ゴム100質量部(ムーニー粘度45)と、天然ゴム70質量%にメチルメタアクリレート30質量%をグラフト共重合されたグラフト重合物20質量部「GREEN HPSP社製 MEGAPOLY30(ムーニー粘度80、メチルメタアクリレート含有量30質量%)」と、粘着付与剤100質量部「ヤスハラケミカル社製YSレジンPX−1000」と、老化防止剤2質量部「川口化学工業製アンテージW−500」をトルエンで混合溶解し、固形分濃度35%、粘度30000MPa・sに調整した。得られた粘着剤を、プライマー組成物の上にロールコーターを使用して乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、乾燥させて粘着テープとした。
なお、以下に説明する他の実施例及び比較例は、特段の説明をしない限り、本実施例と同様のものである。
【0046】
(実施例2)
実施例2は、実施例1で使用したプライマー組成物のトルエンの量を調整して、プライマー組成物の固形分濃度6%、溶液粘度230MPa・sとしたプライマー組成物を使用したものである。
【0047】
(実施例3)
実施例3は、実施例1で使用したプライマー組成物の成分である変性NBR「日本ゼオン社製Nipol1072J(カルボキシル変性量7.0質量%)」を、「日本ゼオン社製NipolDN631(カルボキシル変性量0.5質量%)」に変更し、トルエンで混合溶解して、プライマー組成物の固形分濃度4%、溶液粘度65MPa・sとしたプライマー組成物を使用したものである。
【0048】
(実施例4)
実施例4は、実施例1で使用したプライマー組成物の成分である変性NBRの配合量「100質量部」を、「25質量部」に変更し、トルエンで混合溶解して、プライマー組成物の固形分濃度4%、溶液粘度100MPa・sとしたプライマー組成物を使用したものである。
【0049】
(実施例5)
実施例5は、実施例1で使用したプライマー組成物の成分である変性NBRの配合量「100質量部」を、「200質量部」に変更し、トルエンで混合溶解して、プライマー組成物の固形分濃度4%、溶液粘度40MPa・sとしたプライマー組成物を使用したものである。
【0050】
(実施例6)
実施例6は、実施例1で使用したプライマー組成物の成分である変性NBRの配合量「100質量部」を、「300質量部」に変更し、トルエンで混合溶解して、プライマー組成物の固形分濃度4%、溶液粘度25MPa・sとしたプライマー組成物を使用したものである。
【0051】
(実施例7)
実施例7は、実施例1で使用したプライマー組成物の成分である変性NBRを、実施例1で使用した変性NBR〔日本ゼオン社製Nipol1072J(カルボキシル変性量7.0質量%)〕50質量部と、実施例3で使用した変性NBR〔日本ゼオン社製DN631(カルボキシル変性量0.5質量%)〕「50質量部」との混合物に変更し、トルエンで混合溶解して、プライマー組成物の固形分濃度4%、溶液粘度65MPa・sとしたプライマー組成物を使用したものである。
【0052】
(実施例8)
実施例8は、実施例1で使用したプライマー組成物の成分であるグラフト重合体「GREEN HPSP社製 MEGAPOLY50(ムーニー粘度150、メチルメタアクリレート含有量49質量%)」を、「GREEN HPSP社製 MEGAPOLY30(ムーニー粘度80、メチルメタアクリレート含有量30質量%)」に変更し、トルエンで混合溶解して、プライマー組成物の固形分濃度4%、溶液粘度35MPa・sとしたプライマー組成物を使用したものである。
【0053】
(実施例9)
実施例9は、実施例1で使用したプライマー組成物の成分であるグラフト重合体〔GREEN HPSP社製 MEGAPOLY50(ムーニー粘度150、メチルメタアクリレート含有量49質量%)〕のムーニー粘度を、素練りにより「80」に調整し、トルエンで混合溶解して、プライマー組成物の固形分濃度4%、溶液粘度40MPa・sとしたプライマー組成物を使用したものである。
【0054】
(実施例10)
実施例10は、実施例1で使用したプライマー組成物のグラフト重合体「GREEN HPSP社製 MEGAPOLY50(ムーニー粘度150、メチルメタアクリレート含有量49質量%)」100質量部及び変性NBR「日本ゼオン社製Nipol1072J(カルボキシル変性量7.0質量%)」100質量部を、グラフト重合体「レヂテックス社製MG−40(メチルメタアクリレート含有量40質量%)」100質量部と、変性NBR「日本ゼオン社製Nipol1571(カルボキシル変性量3.0質量%)」100質量部とに変更し、これらグラフト重合体及び変性NBRに、さらに界面活性剤として、「花王社製ペレックスSS―H(アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム)」1質量部を配合し、この配合物を水で混合・希釈して、プライマー組成物の固形分濃度10%、溶液粘度10MPa・sとしたプライマー組成物を使用したものである。
【0055】
(実施例11)
実施例11は、実施例10で使用したプライマー組成物中の界面活性剤「花王社製ペレックスSS―H(アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム)」1質量部を、「花王社製のアルキルスルホコハク酸ナトリウム」1質量部に変更し、水で混合・希釈して、プライマー組成物の固形分濃度10%、溶液粘度10MPa・sとしたプライマー組成物を使用したものである。
【0056】
(実施例12)
実施例12は、実施例10で使用したプライマー組成物の成分である界面活性剤の配合量「1質量部」を、「5質量部」に変更し、水で混合・希釈して、プライマー組成物の固形分濃度10%、溶液粘度15MPa・sとしたプライマー組成物を使用したものである。
【0057】
(実施例13)
実施例13は、実施例10で使用したプライマー組成物の成分である界面活性剤の配合量「1質量部」を、「10質量部」に変更し、水で混合・希釈して、プライマー組成物の固形分濃度10%、溶液粘度20MPa・sとしたプライマー組成物を使用したものである。
【0058】
〔実施例1〜13の結果〕
表1に示すように、全ての特性値が良好と評価され、目的とするプライマー組成物および粘着テープが得られた。
【0059】
(比較例1)
比較例1は、プライマー組成物中に変性NBRを添加せずに、各化合物をトルエンで混合溶解して、プライマー組成物の固形分濃度4%、溶液粘度550MPa・sとしたものである。比較例1では、「基材とプライマー組成物との密着性」、「プライマー組成物と粘着剤の密着性」、「水浸漬時の密着性」および「テープ展開性」で良好な評価が得られなかった。
【0060】
(比較例2)
比較例2は、実施例1で使用したプライマー組成物の成分である変性NBRを、「日本ゼオン社製NBRNipol1072(カルボキシル変性量0.0質量%)」に変更し、トルエンで混合溶解してプライマー組成物の固形分濃度4%、溶液粘度90MPa・sとしたプライマー組成物を使用したものである。
比較例2では、「プライマー組成物と粘着剤の密着性」、「水浸漬時の密着性」および「テープ展開性」で良好な評価が得られなかった。
【0061】
(比較例3)
比較例3は、実施例1で使用したプライマー組成物の成分である変性NBRの配合量「25質量部」を、「20部質量部」に変更し、トルエンで混合溶解してプライマー組成物の固形分濃度4%、溶液粘度150MPa・sとしたプライマー組成物を使用したものである。比較例3では、「基材とプライマー組成物との密着性」、「水浸漬時の密着性」および「テープ展開性」で良好な評価が得られなかった。
【0062】
(比較例4)
比較例4は、実施例1で使用したプライマー組成物の成分である変性NBRの配合量「25質量部」を、「350質量部」に変更し、トルエンで混合溶解してプライマー組成物の固形分濃度4%、溶液粘度20MPa・sとしたプライマー組成物を使用したものである。
比較例4では、「プライマー組成物と粘着剤の密着性」、「水浸漬時の密着性」および「テープ展開性」で良好な評価が得られなかった。
【0063】
(比較例5)
比較例5は、実施例10で使用したプライマー組成物の成分であるグラフト重合体「GREEN HPSP社製 MEGAPOLY50(ムーニー粘度150、メチルメタアクリレート含有量49質量%)」を、「レヂテックス社製MG−67(メチルメタアクリレート含有量67質量%)」100質量部に変更し、水で混合・希釈して、プライマー組成物の固形分濃度10%、溶液粘度20MPa・sとしたプライマー組成物を使用したものである。
比較例5では、「プライマー組成物と粘着剤の密着性」、「水浸漬時の密着性」および「テープ展開性」で良好な評価が得られなかった。
【0064】
(比較例6)
比較例6は、実施例10で使用したプライマー組成物中のグラフト重合体「GREEN HPSP社製 MEGAPOLY50(ムーニー粘度150、メチルメタアクリレート含有量49質量%)」を、「レヂテックス社製MG−10(メチルメタアクリレート含有量10質量%)」100質量部に変更し、水で混合・希釈して、プライマー組成物の固形分濃度10%、溶液粘度20MPa・sとしたプライマー組成物を使用したものである。
比較例6では、「基材とプライマー組成物との密着性」、「水浸漬時の密着性」および「テープ展開性」で良好な評価が得られなかった。