(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
特徴的な空間群C121、並びに単位格子寸法a=82.6Å、b=63.9Å、c=77.5Å、α=90.0°、β=105.7°及びγ=90.0°の±5%を有するヒトグルタミニルシクラーゼを含む結晶であって、該ヒトグルタミニルシクラーゼが、配列番号:1のアミノ酸残基A35からL361からなり、該結晶が、配列番号:1の残基C139とC164の間にジスルフィド架橋を含む、前記結晶。
下記の配列番号:1の残基対:D159-S160、H228-P229、G301-V302及びS323-P324の1つ以上の間に1個以上のシス-ペプチド結合を含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の結晶。
加えて、前記阻害剤化合物を合成する工程、及び該化合物をヒトグルタミニルシクラーゼの結合ポケットと接触させ、該化合物がヒトグルタミニルシクラーゼを阻害する能力を決定する工程を含む、請求項6記載の方法。
前記阻害剤化合物を同定するためにコンピュータモデリング解析を実行する工程が、公知のヒトグルタミニルシクラーゼ阻害剤から該化合物をデザインすることを含む、請求項6又は7記載の方法。
特徴的な空間群P212121を有し、並びに単位格子寸法a=42.7Å、b=84.0Å、c=96.5Å、α=90.0°、β=90.0°及びγ=90.0°の±5%を有するマウスグルタミニルシクラーゼを含む結晶であって、該マウスグルタミニルシクラーゼが、配列番号:13のアミノ酸残基A36からL362からなり、該結晶が、配列番号:13の残基C140とC165の間にジスルフィド架橋を含む、前記結晶。
加えて、前記阻害剤化合物を合成する工程、及び該化合物をマウスグルタミニルシクラーゼの結合ポケットと接触させ、該化合物がマウスグルタミニルシクラーゼを阻害する能力を決定する工程を含む、請求項20記載の方法。
前記阻害剤化合物を同定するためにコンピュータモデリング解析を実行する工程が、公知のマウスグルタミニルシクラーゼ阻害剤から該化合物をデザインすることを含む、請求項20又は21記載の方法。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
グルタミニルシクラーゼ(QC, EC 2.3.2.5)は、アンモニアを遊離しながらの、N-末端グルタミン残基のピログルタミン酸(pGlu
*)への分子内環化を触媒する。QCは、1963年にMesserにより熱帯植物カリカ・パパイヤ(Carica papaya)のラテックスから最初に単離された(Messer, M.の文献、Nature, 4874, 1299 (1963))。24年後、対応する酵素活性が、動物の下垂体において発見された(Busby, W. H. J.らの文献、J Biol Chem, 262, 8532-8536 (1987);Fischer, W. H.及びSpiess, J.の文献、Proc Natl Acad Sci USA, 84, 3628-3632 (1987))。哺乳動物のQCに関して、QCによるGlnのpGluへの転換が、TRH及びGnRHの前駆体について示すことができた(Busby, W. H. J.らの文献、J Biol Chem, 262, 8532-8536 (1987);Fischer, W. H.及びSpiess, J.の文献、Proc Natl Acad Sci USA, 84, 3628-3632 (1987))。加えて最初のQC局在化実験は、ウシ下垂体における触媒のその推定生成物との同時局在を明らかにし、ペプチドホルモン合成において示唆された機能を更に改良した(Bockers, T. M.らの文献、J Neuroendocrinol, 7, 445-453 (1995))。対照的に、植物のQCの生理機能は、余り明確ではない。C.パパイヤ由来の酵素の場合、病原性微生物に対する植物防御における役割が示唆された(El Moussaoui, A.らの文献、Cell Mol Life Sci, 58, 556-570 (2001))。他の植物に由来する推定上のQCが、配列比較により最近同定された(Dahl, S. W.らの文献、Protein Expr Purif, 20, 27-36 (2000))。しかしこれらの酵素の生理機能は依然曖昧である。
【0003】
植物及び動物由来の公知のQCは、それらの基質のN-末端位置でのL-グルタミンに対する厳密な特異性を示し、且つそれらの反応速度論的挙動は、ミカエリス-メンテン式に従うことがわかった(Pohl, T.らの文献、Proc Natl Acad Sci USA, 88, 10059-10063 (1991);Consalvo, A. P.らの文献、Anal Biochem, 175, 131-138 (1988);Gololobov, M. Y.らの文献、Biol Chem Hoppe Seyler, 377, 395-398 (1996))。しかし、C.パパイヤ由来のQCの一次構造と哺乳動物由来の高度に保存されたQCの一次構造との比較は、いかなる配列相同性も明らかにしなかった(Dahl, S. W.らの文献、Protein Expr Purif, 20, 27-36 (2000))。植物QCが新たな酵素ファミリーに属するように見える(Dahl, S. W.らの文献、Protein Expr Purif, 20, 27-36 (2000))のに対し、哺乳動物QCは、細菌のアミノペプチダーゼと顕著な配列相同性を有することがわかり(Bateman, R. C.らの文献、Biochemistry, 40, 11246-11250 (2001))、このことは、植物及び動物に由来するQCの進化の起源が異なっているという結論に繋がっている。
【0004】
最近、組換えヒトQCに加え、脳抽出物由来のQC活性は、N-末端グルタミニルに加えグルタミン酸の両方の環化を触媒することが示された。シクラーゼが触媒したGlu
1-転換は、およそpH6.0で好ましいのに対し、pGlu-誘導体へのGln
1-転換は、至適pHおよそ8.0で生じるという知見は、最も特筆すべきである。pGlu-Aβ-関連ペプチドの形成は、組換えヒトQCの阻害及びブタ下垂体抽出物由来のQC-活性の阻害により抑制することができるので、酵素QCは、アルツハイマー病治療のための薬物開発の標的である。
【0005】
米国特許第7,572,614号(Wangら)及びHuangらの文献(PNAS, 102(37), 13117-13122 (2005))は両方共、可溶性グルタミニルシクラーゼの結晶構造の一例を説明している。Wangらの特許及びHuangらの文献に明らかにされた結晶構造は、グリコシル化の欠損を生じる大腸菌において発現されたタンパク質を使用し作製された。全ての哺乳動物のQCは、少なくとも1つのグリコシル化部位を含むことは周知であり(Pohl, T.らの文献、Proc Natl Acad Sci USA, 88, 10059-10063 (1991);Song, I.らの文献、J Mol Endocrinol, 13, 77-86 (1994))、これは真核生物宿主において発現されることにより、本発明に従い結晶化されたQCにおいてグリコシル化され、このことは本明細書に提示された結晶構造において観察することができる。加えて全ての哺乳動物のQCは、活性部位に近接した2個の保存されたシステイン残基を含み、これらはジスルフィド結合を形成する。Wangらの特許及びHuangらの文献の結晶構造においては、このジスルフィド結合は欠損している。細菌における哺乳動物分泌タンパク質の発現は、ジスルフィド形成の不在を頻繁に生じる(Hannig, G.及びMakrides, S. C.の文献、Trends Biotechnol, 16, 54-60 (1998))。このジスルフィド結合は、本明細書に提示されたヒト及びマウスの両方のQC結晶構造に明らかに存在する。とりわけ、本明細書に記載された実施例において提供された変異解析は、全体の構造に対するジスルフィド結合の重要な安定化機能を示唆している。更にWangらの特許及びHuangらの文献の構造において、活性部位に近接した残基のセグメント(L205-H206-W207)は、2つの異なる立体構造で現れる。その複数の配向のために、基質の結合様式は影響を受け、且つ信頼できる機構的結論は引き出すことができなかった(Huangらの文献、2005)。残基W207は、哺乳動物のQCにおいて保存されている(マウスQCにおいてはW208)。本明細書に提示されたヒト及びマウスのQC結晶構造において、隣接残基L205及びH206は保存されないが、その配向は同一である。従って、Wangらの特許及びHuangらの文献の結晶構造における前記残基の構造的配向は、非天然のもののように思われる。
【0006】
真核生物宿主におけるマウス及びヒトのQCの発現は、本発明に記載のように、天然の哺乳動物QCの結晶化及び構造精密化を可能にし、且つ重要なことに、ヒトQCとマウスQCの間で類似した阻害能を有する3種の異なる阻害性化合物(表1に阻害剤A、阻害剤B及び阻害剤Cとして列挙)によるマウスQCの構造分析により例示されるように、阻害剤の結合様式の一義的決定を可能にする。
【0007】
Wangら及びHuangらにより先行する刊行物において記載された構造とは対照的に、本発明は、翻訳後修飾のジスルフィド形成及びグリコシル化は、ヒト及びマウスのQCにおける残基L205-H206-W207の単独の構造的配置に繋がることを示している。これらの残基は、活性部位を指向した化合物の結合様式に対する直接作用を有する。先行する研究におけるW207の複数の配向は、活性部位を指向した化合物の結合様式の変動に繋がった。
【表1】
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【0008】
対照的に、化合物の一義的結合様式及びW207の配向が、3種の異なる阻害剤により認められ、阻害剤結合を伴わない構造においてさえも認められた。従って本発明に記載の方法は、QC阻害剤の構造-主導の薬物デザインの実質的進歩を提供する。
この結論は特に、2種の異なる哺乳動物に由来するQCの構造評価により強化される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ヒト及びマウスのグルタミニルシクラーゼの結晶に関し、ここでこれらの結晶は、各々、空間群C121及びP212121において、分解能約1.8Å及び約2.1Åについて、グルタミニルシクラーゼの三次元X線回折構造を決定することを可能にするのに十分な品質及びサイズである。本発明はまた、ヒト及びマウスのグルタミニルシクラーゼを調製し且つ結晶化する方法に関する。ヒト及びマウスのグルタミニルシクラーゼの結晶に加え、それらの結晶構造から誘導された情報を使用し、グルタミニルシクラーゼを分析及び改変することに加え、グルタミニルシクラーゼと相互作用する化合物を同定することができる。
【0019】
従って本発明の第一の態様に従い、特徴的な空間群C121、並びに単位格子寸法a=82.6Å、b=63.9Å、c=77.5Å、α=90.0°、β=105.7°及びγ=90.0°の±5%を有するヒトグルタミニルシクラーゼを含む結晶が提供される。
【0020】
本発明の第一の態様の一実施態様において、この結晶は、単位格子寸法a=82.6Å、b=63.9Å及びc=77.5Åを有する。
【0021】
本発明の第一の態様の一実施態様において、この結晶は、単位格子寸法α=90.0°、β=105.7°及びγ=90.0°を有する。
【0022】
本発明の第一の態様の一実施態様において、この結晶は、分解能2.08Å〜11.98Åについての、結晶の原子座標の決定に敵したX線を回折する。
【0023】
本発明の第二の態様に従い、特徴的な空間群P212121を有し、且つ単位格子寸法a=42.7Å、b=84.0Å、c=96.5Å、α=90.0°、β=90.0°及びγ=90.0°の±5%を有するマウスグルタミニルシクラーゼを含む結晶が提供される。
【0024】
本発明の第二の態様の一実施態様において、この結晶は、単位格子寸法a=42.7Å、b=83.0Å、c=95.7Å、α=90.0°、β=90.0°及びγ=90.0°を有する。本発明の第二の態様のこの実施態様は、下記構造を有する、阻害剤Aとして本明細書に言及されたグルタミニルシクラーゼ阻害剤と複合されたマウスグルタミニルシクラーゼの結晶構造に関する:
【化1】
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阻害剤Aは、インビトロにおいて、ヒト及びマウスの両方のQCを阻害し、且つ更に阻害剤Aは水に可溶性であり、結果的に結晶化に有用である。
【0025】
本発明の第二の態様の別の実施態様において、この結晶は、単位格子寸法a=42.7Å、b=84.6Å、c=96.5Å、α=90.0°、β=90.0°及びγ=90.0°を有する。本発明の第二の態様のこの実施態様は、下記構造を有する、阻害剤Bとして本明細書に言及されたグルタミニルシクラーゼ阻害剤と複合されたマウスグルタミニルシクラーゼの結晶構造に関する:
【化2】
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【0026】
本発明の第二の態様の別の実施態様において、この結晶は、単位格子寸法a=42.7Å、b=84.6Å、c=97.2Å、α=90.0°、β=90.0°及びγ=90.0°を有する。本発明の第二の態様のこの実施態様は、下記構造を有する、阻害剤Cとして本明細書に言及されたグルタミニルシクラーゼ阻害剤と複合されたマウスグルタミニルシクラーゼの結晶構造に関する:
【化3】
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【0027】
本発明の第二の態様の一実施態様において、この結晶は、単位格子寸法α=90.0°、β=90.0°及びγ=90.0°を有する。
【0028】
本発明の第二の態様の一実施態様において、この結晶は、分解能1.9Å〜32.0Åについての、結晶の原子座標の決定に適したX線を回折する。
【0029】
本発明の第二の態様の一実施態様において、この結晶は、分解能1.8Å〜19.81Åについての、結晶の原子座標の決定に適したX線を回折する。本発明の第二の態様のこの実施態様は、阻害剤Aとして本明細書に言及されたグルタミニルシクラーゼ阻害剤と複合されたマウスグルタミニルシクラーゼの結晶構造の分解能に関する。
【0030】
本発明の第二の態様の別の実施態様において、この結晶は、分解能1.98Å〜32.0Åについての、結晶の原子座標の決定に適したX線を回折する。本発明の第二の態様のこの実施態様は、阻害剤Bとして本明細書に言及されたグルタミニルシクラーゼ阻害剤と複合されたマウスグルタミニルシクラーゼの結晶構造の分解能に関する。
【0031】
本発明の第二の態様の別の実施態様において、この結晶は、分解能1.9Å〜30.7Åについての、結晶の原子座標の決定に適したX線を回折する。本発明の第二の態様のこの実施態様は、阻害剤Cとして本明細書に言及されたグルタミニルシクラーゼ阻害剤と複合されたマウスグルタミニルシクラーゼの結晶構造の分解能に関する。
【0032】
本発明の範囲内の結晶は、アポ型結晶(apo crystal)及び共結晶の両方を含むことは理解されるであろう。アポ型結晶は一般に、実質的に純粋なグルタミニルシクラーゼを含む。共結晶は一般に、グルタミニルシクラーゼに結合されたグルタミニルシクラーゼ阻害剤などの結合リガンドを伴う、実質的に純粋なグルタミニルシクラーゼを含む。従って本発明の更なる態様に従い、グルタミニルシクラーゼ阻害剤などの結合リガンドに結合された本明細書に規定された結晶を含む共結晶が提供される。
【0033】
本発明の第一の態様の一実施態様において、ヒトのグルタミニルシクラーゼは、配列番号:1のアミノ酸残基A35からL361からなる。
【0034】
本発明の第二の態様の一実施態様において、マウスのグルタミニルシクラーゼは、配列番号:13のアミノ酸残基A36からL362からなる。
【0035】
グルタミニルシクラーゼを含む結晶は、天然の又は未変性のグルタミニルシクラーゼから入手可能なものに限定されないことは理解されるであろう。これらの結晶は、未変性のグルタミニルシクラーゼにおいて1個以上のアミノ酸の挿入、欠失、又は置換を有する変異体を含む。従って未変性のグルタミニルシクラーゼの変異体は、未変性のグルタミニルシクラーゼの少なくとも1個(最大10個など、例えば最大25個)のアミノ酸残基を、異なるアミノ酸残基により置き換えることにより、或いは未変性のタンパク質内で又は未変性のタンパク質のN-若しくはC-末端で、アミノ酸残基を付加若しくは欠失することにより得られ、且つそれから変異体が誘導された未変性のグルタミニルシクラーゼと実質的に同じ三次元構造を有する。
【0036】
実質的に同じ三次元構造を有するとは、それから変異体が誘導された未変性のグルタミニルシクラーゼの原子構造座標と重ね合わせた場合に、未変性のグルタミニルシクラーゼのα炭素原子の少なくとも約50%〜約100%がその重ね合わせに含まれる場合、約2Å未満又はこれと等しい根平均二乗変位(root mean square deviation)を有するアポ型結晶又は共結晶からの原子構造座標のセットを有することを意味する。
【0037】
場合によっては、タンパク質をコードしているcDNAに都合の良いクローニング部位を提供するため、タンパク質精製を支援するためなどを目的として、未変性のグルタミニルシクラーゼにアミノ酸残基を置換、欠失、及び/又は付加することは特に有利又は都合が良いことがある。未変性のグルタミニルシクラーゼの三次元構造を実質的に変更しないそのような置換、欠失、及び/又は付加は、当業者には自明であろう。
【0038】
本明細書において意図された変異体ポリペプチドは、グルタミニルシクラーゼ活性を発揮することを必要としないことは注意しなければならない。実際、グルタミニルシクラーゼの活性を妨害するが、グルタミニルシクラーゼの三次元構造は著しく変更しないアミノ酸の置換、付加、又は欠失も含まれる。そのようなポリペプチド結晶、又はそれから得られた原子構造座標を使用し、未変性のグルタミニルシクラーゼに結合し、且つ未変性のグルタミニルシクラーゼの活性に影響を及ぼし得る化合物を同定することができる。
【0039】
本発明の誘導体結晶は一般に、1個以上の金属原子と非共有的/共有的に会合している、グルタミニルシクラーゼ結晶を含む。このポリペプチドは、未変性の又は変異したグルタミニルシクラーゼに対応してよい。好適な金属原子のそのような一例は、亜鉛である。
【0040】
グルタミニルシクラーゼの共結晶は一般に、グルタミニルシクラーゼに結合した1種以上の化合物と会合しているグルタミニルシクラーゼを含む結晶を含む。この会合は、共有的又は非共有的であってよい。一実施態様において、グルタミニルシクラーゼに結合した化合物は、グルタミニルシクラーゼ阻害剤を含む。そのようなグルタミニルシクラーゼ阻害剤の例は、WO 2004/098625、WO 2004/098591、WO 2005/039548、WO 2005/075436、WO 2008/055945、WO 2008/055947、WO 2008/055950及びWO 2008/065141に記載されたものを含む。
【0041】
本明細書に記載の未変性の及び変異されたグルタミニルシクラーゼは、天然の給源から単離するか、又は分子生物学分野の業者に周知の方法により生成することができる。ヒト及びマウスのグルタミニルシクラーゼの調製に関する詳細な実験は、本明細書において、各々、実施例1及び2に説明されている。
【0042】
グルタミニルシクラーゼのアポ型、誘導体及び共結晶は、バッチ、液柱(liquid bridge)、透析、ハンギングドロップ蒸気拡散などの蒸気拡散のようなものを含む、タンパク質結晶学の技術分野において周知の技術により得ることができる(例えば、McPhersonの文献、1982, 「タンパク質結晶の調製及び分析(Preparation and Analysis of Protein Crystals)」、John Wiley社、NY;McPhersonの文献、Eur. J. Biochem. 189:1-23 (1990);Webberの文献、Adv. Protein Chem. 41:1-36 (1991);「核酸及びタンパク質の結晶化(Crystallization of Nuckeic Acids and Proteins)」、Ducruix及びGiege編集、Oxford University Press社;「タンパク質結晶化の技術、戦略、及びヒント(Protein Crystallization Techniques, Strategies, and Tips)」、Bergfors編集、International University Line社、1999年を参照されたい)。
【0043】
一実施態様において、グルタミニルシクラーゼ結晶、アポ型又は共結晶は、ハンギングドロップ蒸気拡散などの蒸気拡散により成長される。
【0044】
本発明の第三の態様に従い:
(a)25mMビス-トリスpH6.8/100mM NaCl緩衝液などの好適な緩衝液中、任意に公知のグルタミニルシクラーゼ阻害剤の存在下で、ヒトグルタミニルシクラーゼの溶液を提供する工程;
(b)該溶液を、30%(v/v)2-メチル2,4-ペンタンジオール及び11%(w/v)4000PEGを含有する結晶化溶液と、混合する工程;並びに
(c)ヒトグルタミニルシクラーゼの結晶を生成するのに十分な時間、ハンギングドロップ蒸気拡散を促進する条件下で、該混合物をインキュベーションする工程:
を含む、本明細書に記載のヒトグルタミニルシクラーゼの結晶を調製する方法が提供される。
【0045】
本発明の更なる態様に従い:
(a)25mMビス-トリスpH6.8/100mM NaCl緩衝液などの好適な緩衝液中、グルタミニルシクラーゼ阻害剤などの結合リガンドの存在下で、ヒトグルタミニルシクラーゼの溶液を提供する工程;
(b)該溶液を、30%(v/v)2-メチル2,4-ペンタンジオール及び11%(w/v)4000PEGを含有する結晶化溶液と、混合する工程;並びに
(c)グルタミニルシクラーゼ阻害剤などの結合リガンドに結合したヒトグルタミニルシクラーゼの共結晶を生成するのに十分な時間、ハンギングドロップ蒸気拡散を促進する条件下で、該混合物をインキュベーションする工程:
を含む、グルタミニルシクラーゼ阻害剤などの結合リガンドに結合されたヒトグルタミニルシクラーゼの共結晶を調製する方法が提供される。
【0046】
更なる態様に従い、本明細書に規定された結晶化法により入手可能なヒトグルタミニルシクラーゼを含む結晶又は共結晶が提供される。
【0047】
共結晶を生成するためのヒトグルタミニルシクラーゼの結晶化は、以下及び実施例1において説明されているように実行することができる。説明されたように、精製されたヒトグルタミニルシクラーゼは、25mMビス-トリスpH6.8/100mM NaCl緩衝液などの好適な緩衝液の存在下で、10mg/mLまで濃縮され、且つリガンドであるイミダゾールが、最終濃度0.1Mとなるよう添加される。等量のタンパク質溶液を、30%(v/v)2-メチル2,4-ペンタンジオール及び11%(w/v)4000PEGを含有する結晶化溶液と混合することにより、顕微鏡による板状結晶形態が、21℃でのハンギングドロップ蒸気拡散により成長する。結晶は典型的には、実験が開始された後10〜15日で出現し、且つこのプロトコールに従い得られたそのような結晶の例は
図11に示している。アポ型結晶を生成するためには、リガンドが前記プロトコールから省略されることは理解されるであろう。
【0048】
ヒトグルタミニルシクラーゼ結晶は、データを収集する前に凍結してよい。これらの結晶は、例えば、(a)結晶化セットアップ中に存在する20〜30%飽和グルコース、(b)15〜20%まで添加されるエタノール、(c)10〜20%まで添加されるエチレングリコール及び最大25%とされるPEG10,000、又は(d)15%まで添加されるグリセロールのいずれかで、凍結防止することができる。本発明の第三の態様の一実施態様において、これらの結晶は、15%(v/v)まで添加されるグリセロールの添加により、凍結防止される。これらの結晶は、クライオプロテクタント中に短時間浸漬されるか、又は1日のように長い期間クライオプロテクタント中に浸すかのいずれかであることができる。凍結は、結晶を液体窒素浴中に浸漬するか、又は結晶を-180℃の窒素ガス流中に配置することにより達成することができる。
【0049】
実施例1に説明しているように、イミダゾールとの複合体中のヒトグルタミニルシクラーゼの結晶構造を得た。イミダゾールに結合されたヒトグルタミニルシクラーゼの結晶の属性のまとめは、表3に列記し、且つイミダゾールに結合されたヒトグルタミニルシクラーゼの空間群C121に関する三次元構造座標は、
図1に示している。
【0050】
本明細書における「座標」の言及は、結晶形態のタンパク質又はタンパク質複合体の原子によるX線の単色ビームの回折について得られたパターンに関連した数学的方程式から誘導されるデカルト座標の言及を含む。回折データを使用し、結晶の反復単位の電子密度マップを計算する。次にこの電子密度マップを使用し、分子又は分子複合体の個々の原子の位置を確立する。
【0051】
空間群C121の座標を基にしたイミダゾールに結合したヒトグルタミニルシクラーゼのリボン線図及びオーバーレイ線図を、各々、
図12及び13に示している。特にこのタンパク質は、球状のα/β加水分解酵素フォールドを構成することがわかった。中心のβ-シートは、二番目を除いて、全て平行様式である6個のβ-ストランドで形成された。このβ-シートは、片側は2個のヘリックスにより、及び反対面は6個の更なるα-ヘリックスによるサンドイッチ様式で、α-ヘリックスにより取り囲まれていることが認められた。このタンパク質の構造は、酵素の活性部位を構築していると考えられるかなり多量のランダムコイルループにより完成された。
【0052】
本明細書における「活性部位」の言及は、別の分子実体との安定化相互作用へ参入することが可能である分子実体中の特異的領域(又は原子)の言及を含む。いくつかの実施態様において、この用語は、別の分子とのその特異的組合せに直接参加する高分子の反応性部分もいう。別の実施態様において、結合部位は、フォールディングされたポリペプチド内の1個以上のアミノ酸残基の三次元配置により構成又は規定され得る。「結合ポケット」の言及は、「活性部位」と類似の様式で解釈されるべきであり、且つこれらの用語は互換的に使用することができることは理解されるであろう。
【0053】
このヒトグルタミニルシクラーゼの活性部位は、3つのタンパク質残基E
202、D
159及びH
330により配位されている亜鉛イオンを収容することがわかった。従って本発明の第一の態様の一実施態様において、この結晶は、
図1の座標に従い、配列番号:1の残基E202、D159及びH330により提供される結合ポケットを含む。
【0054】
更にこのタンパク質は、残基C
139とC
164の間のジスルフィド架橋の存在を示している。従って本発明の第一の態様の一実施態様において、この結晶は、配列番号:1の残基C139とC164の間のジスルフィド架橋を含む。先に考察したように、そのようなジスルフィド架橋の存在は、QCによる結晶化の研究(Wangらの特許、Huangらの文献)時にはこれまで報告されていない。
【0055】
加えて4つのシス-ペプチド結合が、以下の残基対の間に存在する:D
159−S
160、H
228−P
229、G
301−V
302、及びS
323−P
324。従って本発明の第一の態様の一実施態様において、この結晶は、以下の残基対のいずれかの間に1つ以上のシスペプチド結合を含む:D
159−S
160、H
228−P
229、G
301−V
302、及びS
323−P
324。
【0056】
最後にこのポリペプチド鎖の2つのセグメントは、電子密度において視認できない。これらのギャップは、K
182とD
190の間、及びF
146とN
150の間の残基を含む。
【0057】
本発明の第四の態様に従い:
(a)15mMビス-トリスpH6.8/100mM NaCl緩衝液などの好適な緩衝液中、任意に公知のグルタミニルシクラーゼ阻害剤の存在下で、マウスグルタミニルシクラーゼの溶液を提供する工程;
(b)該溶液を、0.1M酢酸ナトリウムpH5.3、0.2M硫酸アンモニウム及び12%(w/v)2000MME-PEGを含有する結晶化溶液と、混合する工程;並びに
(c)マウスグルタミニルシクラーゼの結晶を生成するのに十分な時間、ハンギングドロップ蒸気拡散を促進する条件下で、該混合物をインキュベーションする工程:
を含む、本明細書に記載のマウスグルタミニルシクラーゼの結晶を調製する方法が提供される。
【0058】
本発明の更なる態様に従い:
(a)15mMビス-トリスpH6.8/100mM NaCl緩衝液などの好適な緩衝液中、公知のグルタミニルシクラーゼ阻害剤の存在下で、マウスグルタミニルシクラーゼの溶液を提供する工程;
(b)該溶液を、0.1M酢酸ナトリウムpH5.3、0.2M硫酸アンモニウム及び12%(w/v)2000MME-PEGを含む結晶化溶液と混合する工程;並びに
(c)グルタミニルシクラーゼ阻害剤などの結合リガンドに結合されたマウスグルタミニルシクラーゼの共結晶を生成するのに十分な時間、ハンギングドロップ蒸気拡散を促進する条件下で、該混合物をインキュベーションする工程:
を含む、グルタミニルシクラーゼ阻害剤などの結合リガンドに結合されたヒトグルタミニルシクラーゼの共結晶を調製する方法が提供される。
【0059】
更なる態様に従い、本明細書に規定されたような結晶化法により入手可能なマウスグルタミニルシクラーゼを含む、結晶又は共結晶が提供される。
【0060】
共結晶を生成するためのマウスグルタミニルシクラーゼの結晶化は、以下及び実施例2において説明されているように実行することができる。説明されたように、精製されたマウスグルタミニルシクラーゼは、15mMビス-トリスpH6.8/100mM NaCl緩衝液などの好適な緩衝液の存在下で、10mg/mLまで濃縮され、且つリガンドである阻害剤A、阻害剤B又は阻害剤Cが、最終濃度1mMとなるよう添加される。等量のタンパク質溶液を、0.1M酢酸ナトリウムpH5.3、0.2M硫酸アンモニウム及び12%(w/v)2000MME-PEGを含有する結晶化溶液と混合することにより、顕微鏡による棒状/針状結晶形態が、21℃での、ハンギングドロップ蒸気拡散により成長する。結晶は典型的には、実験が開始された後1週間以内に出現し、且つこのプロトコールに従い得られたそのような結晶の例は
図14に示している。アポ型結晶を生成するためには、リガンドが前記プロトコールから省略されることは理解されるであろう。
【0061】
マウスグルタミニルシクラーゼ結晶は、データを収集する前に凍結してよい。これらの結晶は、例えば、(a)結晶化セットアップ中に存在する20〜30%飽和グルコース、(b)15〜20%まで添加されるエタノール、(c)10〜20%まで添加されるエチレングリコール及び最大25%とされるPEG10,000、又は(d)20%まで添加されるグリセロールのいずれかで、凍結防止することができる。本発明の第四の態様の一実施態様において、これらの結晶は、20%(v/v)まで添加されるグリセロールの添加により、凍結防止される。これらの結晶は、クライオプロテクタント中に短時間浸漬されるか、又は1日のように長い期間クライオプロテクタント中に浸すかのいずれかであることができる。凍結は、結晶を液体窒素浴中に浸漬するか、又は結晶を-180℃の窒素ガス流中に配置することにより達成することができる。
【0062】
実施例2に説明したように、グルタミニルシクラーゼ阻害剤である阻害剤A、阻害剤B及び阻害剤Cとの複合体中のマウスグルタミニルシクラーゼの結晶構造を得た。グルタミニルシクラーゼ阻害剤である阻害剤A、阻害剤B及び阻害剤Cに結合されたマウスグルタミニルシクラーゼの結晶の属性のまとめは、表4に列記している。グルタミニルシクラーゼ阻害剤である阻害剤Aに結合されたマウスグルタミニルシクラーゼの空間群P212121に関する三次元構造座標は、
図2に示している。グルタミニルシクラーゼ阻害剤である阻害剤Bに結合されたマウスグルタミニルシクラーゼの空間群P212121に関する三次元構造座標は、
図3に示している。グルタミニルシクラーゼ阻害剤である阻害剤Cに結合されたマウスグルタミニルシクラーゼの空間群P212121に関する三次元構造座標は、
図4に示している。空間群P212121の座標を基にしたグルタミニルシクラーゼ阻害剤である阻害剤A、阻害剤B及び阻害剤Cに結合したマウスグルタミニルシクラーゼのリボン線図及びオーバーレイ線図は、
図15から
図19に示している。特にこのタンパク質は、球状のα/β加水分解酵素フォールドを構成することがわかった。中心のβ-シートは、二番目を除いて、全て平行様式である6個のβ-ストランドで形成された。このβ-シートは、片側は2個のヘリックスにより、及び反対面は6個の更なるα-ヘリックスによるサンドイッチ様式で、α-ヘリックスにより取り囲まれていることが認められた。このタンパク質の構造は、酵素の活性部位を構築していると考えられるかなり多量のランダムコイルループにより完成された。この活性部位は、3つのタンパク質残基D
160、E
203及びH
331により配位されている亜鉛イオン並びに阻害剤分子を収容している。従って本発明の第二の態様の一実施態様において、この結晶は、
図2から
図4の座標に従い、配列番号:13の残基D160、E203及びH331により提供される結合ポケットを含む。
【0063】
更にこのタンパク質は、残基C
140とC
165の間のジスルフィド架橋の存在を明らかにした。従って本発明の第二の態様の一実施態様において、この結晶は、配列番号:13の残基C140とC165の間のジスルフィド架橋を含む。先に考察したように、そのようなジスルフィド架橋の存在は、QCによる結晶化の研究(Wangらの特許、Huangらの文献)時にはこれまで報告されていない。
【0064】
本発明はまた、グルタミニルシクラーゼの構造座標を含む機械可読データによりコード化されたデータ記憶材料を有する機械可読データ記憶媒体にも関する。本発明は、適切な機械により読み取る場合に、グルタミニルシクラーゼの構造の三次元表現を表示することができる機械可読データによりコード化されたデータ記憶材料を有する機械可読データ記憶媒体にも関する。
【0065】
図1から
図4に示されたグルタミニルシクラーゼ座標データの全て又は一部は、それらの座標をグルタミニルシクラーゼの三次元構造へ翻訳するソフトウェアによりプログラムされたコンピュータと結びつけて使用する場合、様々な目的のために、特に創薬に関する目的のために使用することができる。三次元グラフィカル表現を作成するソフトウェアは、公知であり、且つ市販されている。座標データのそのままの使用は、これをコンピュータで読み取り可能なフォーマットで記憶することを必要としている。従って本発明に従い、グルタミニルシクラーゼ及び/又はそれらの一部及び/又はそれらの構造上類似した変種の三次元構造として表示されることが可能なデータは、機械可読記憶媒体に記憶されてよく、これはその構造のグラフィカルな三次元表現を表示することが可能である。
【0066】
本発明の別の実施態様は、当該データを使用するための指示によりプログラムされた機械により使用される場合、グルタミニルシクラーゼ又はそれらの変種を含むグラフィックな三次元表現を表示する、機械可読データでコード化されたデータ記憶材料を含む機械可読データ記憶媒体を提供する。
【0067】
任意に、本明細書に提供される機械可読データ記憶媒体と組合せたコンピュータシステムが提供される。一実施態様において、このコンピュータシステムは、機械可読データを処理するための指示を記憶するためのワーキングメモリー;機械可読データを三次元表現へと処理するための、ワーキングメモリー及び機械可読データ記憶媒体に連結された処理装置;並びに、三次元表現を受け取るための、処理装置に連結された出力のためのハードウェア:を備える。
【0068】
本発明の三次元結晶構造は、グルタミニルシクラーゼ結合部位を同定するため、未知の結晶化されたタンパク質の構造を解明するために分子置換モデルとして使用するため、所望の結合特性を有する変異体をデザインするため、そして最終的には、グルタミニルシクラーゼ及び他の構造上類似したタンパク質に結合及び阻害することが可能な実体をデザインし、特性評価し、同定するために、加えて当業者により認識される他の用途に使用されてよい。そのような実体は、化学実体又はタンパク質であってよい。本明細書において使用される用語「化学実体」とは、化合物質、少なくとも2つの化合物質の複合体、並びにそのような化合物の断片をいう。
【0069】
本明細書に提供されるグルタミニルシクラーゼの構造座標は、グルタミニルシクラーゼ及び他の構造上類似したタンパク質を阻害する薬物のスクリーニング及び同定に有用である。例えば、本データによりコード化された構造は、推定の基質又はリガンドと会合するその能力に関して、コンピュータにより評価することができる。グルタミニルシクラーゼと会合するそのような化合物は、グルタミニルシクラーゼ活性を阻害することができ、且つ可能性のある薬物候補である。加えて或いは代わりに、本データによりコード化された構造は、コンピュータスクリーン上にグラフィカルな三次元表現で表示されてよい。これは、その構造の目視による検証に加え、化合物との構造の会合の目視による検証を可能にする。
【0070】
従って本発明の第五の態様に従い:
(a)
図1に説明された構造座標を使用し、ヒトグルタミニルシクラーゼの三次元モデルを作成する工程;
(b)
図1の座標に従い配列番号:1の残基E202、D159及びH330により提供された結合ポケットを解析する工程;
(c)ヒトグルタミニルシクラーゼの結合ポケットに会合し得る阻害剤化合物を同定するためのコンピュータモデリング解析を実行する工程:
を含む、ヒトグルタミニルシクラーゼの阻害剤を同定する方法が提供される。
【0071】
更に、本発明の第六の態様に従い:
(a)
図2から
図4のいずれかに説明された構造座標を使用し、マウスグルタミニルシクラーゼの三次元モデルを作成する工程;
(b)
図2から
図4の座標に従い配列番号:13の残基D160、E203及びH331により提供された結合ポケットを解析する工程;
(c)マウスグルタミニルシクラーゼの結合ポケットに会合し得る阻害剤化合物を同定するためのコンピュータモデリング解析を実行する工程:
を含む、マウスグルタミニルシクラーゼの阻害剤を同定する方法が提供される。
【0072】
また
図1から
図4に提供された構造座標の全て若しくは一部又はそれらの機能的同等物を用いることにより、グルタミニルシクラーゼ又はそれらの変種に会合する実体の可能性を評価する方法も、提供される。また
図1から
図4に提供された構造座標の全て若しくは一部又はそれらの機能的同等物に類似した構造座標を用いることにより、グルタミニルシクラーゼ又はそれらの変種に会合する実体の可能性を評価する方法も、提供される。
【0073】
本発明の第五又は第六の態様の一実施態様において、この方法は加えて、阻害剤化合物を合成し、且つこの化合物を、グルタミニルシクラーゼの結合ポケットと接触させ、その化合物のグルタミニルシクラーゼを阻害する能力を決定する工程を含む。
【0074】
本発明の第五又は第六の態様の一実施態様において、当該阻害剤化合物を同定するためにコンピュータモデリング解析を実行する工程は、化合物のライブラリーから当該化合物を同定することを含む。
【0075】
本発明の第五又は第六の態様の一実施態様において、当該阻害剤化合物を同定するためにコンピュータモデリング解析を実行する工程は、データベース中の該化合物を同定することを含む。
【0076】
本発明の第五又は第六の態様の一実施態様において、当該阻害剤化合物を同定するためにコンピュータモデリング解析を実行する工程は、公知のグルタミニルシクラーゼ阻害剤から当該化合物をデザインすることを含む。
【0077】
本明細書に提供された構造により、本発明は、グルタミニルシクラーゼの構造を基に、グルタミニルシクラーゼの可能性のある阻害剤を同定し、選択し又はデザインするために、分子デザイン技術を使用することを可能にする。そのような推定モデルは、グルタミニルシクラーゼに恐らく結合し得る多くの多様な化合物の調製及び試験に関連した高い経費を考慮し、価値がある。
【0078】
本発明に従い、可能性のあるグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、その実際の合成及び試験に先立ち、グルタミニルシクラーゼに結合するその能力について評価することができる。提唱された実体が、結合ポケットと不充分な相互作用又は会合を有すると推定される場合、その実体の調製及び試験は予め避けることができる。しかし、コンピュータモデリングが強力な相互作用を示す場合、この実体を入手し、且つその結合する能力について試験することができる。
【0079】
グルタミニルシクラーゼの可能性のある阻害剤は、化学実体又は断片が、グルタミニルシクラーゼと会合するそれらの能力についてスクリーニングされ且つ選択される一連の工程を使用し、コンピュータにより評価することができる。
【0080】
当業者は、グルタミニルシクラーゼと会合するそれらの能力について実体(化学物質又はタンパク質のいずれか)をスクリーニングするいくつかの方法の一つを使用することができる。このプロセスは、例えば、
図1から
図4のグルタミニルシクラーゼの構造座標又は機械可読記憶媒体から作成された類似の形状を規定する他の座標を基にした、コンピュータスクリーン上でのグルタミニルシクラーゼの目視による検証により始めることができる。選択された断片又は化学実体は次に、先に規定されたようなその結合ポケット内に、様々な配向で配置されるか、又はドッキングされる。ドッキングは、Quanta及びSybylなどのソフトウェアを用い、引き続きCHARMM及びAMBERなどの標準分子力学的力場によるエネルギー最小化及び分子動力学を用いて実現することができる。
【0081】
特定されたコンピュータプログラムは、実体を選択するプロセスを補助することもできる。これらは以下を含む:GRID(Goodfordの文献、「生物学的に重要な高分子のエネルギー的に好ましい結合位置を決定するためのコンピュータ手順(A Computational Procedure for Determining Energetically Favorable Binding Sites on Biologically Important Macromolecules)」、J. Med. Chem., 28, 849-857頁(1985))。GRIDは、オックスフォード大学(オックスフォード、英国)から入手可能である;MCSS(Mirankerらの文献、「結合部位の機能性マップ:多コピー同時検索法(Functionality Maps of Binding Sites: A Multiple Copy Simultaneous Search Method)」、Proteins: Structure, Function and Genetics, 11, 29-34頁(1991))。MCSSは、Molecular Simulations社(サンディエゴ、カリフォルニア州)から入手可能である;AUTODOCK(Goodsellらの文献、「シミュレートされたアニーリングによる基質のタンパク質への自動化されたドッキング(Automated Docking of Substrates to Proteins by Simulated Annealing)」、Proteins: Structure, Function, and Genetics, 8, 195-202頁(1990))。AUTODOCKは、Scripps Research Institute社(ラホヤ、カリフォルニア州)から入手可能である;及び、DOCK(Kuntzらの文献、「高分子-リガンド相互作用への幾何的アプローチ(A Geometric Approach to Macromolecule-Ligand Interactions)」、J. Mol. Biol., 161, 269-288頁(1982))。DOCKは、カリフォルニア大学(サンフランシスコ、カリフォルニア州)から入手可能である。
【0082】
一旦好適な実体が選択されたならば、これらは、デザイン又は集成することができる。集成は、グルタミニルシクラーゼの構造座標に関連してコンピュータスクリーン上に表示された三次元画像に対する互いの断片の関係の目視検査に先行されることができる。次にこれには、MOE、QUANTA又はSybyl(Tripos Associates社、セントルイス、Mo.)などのソフトウェアを使用する手作業によるモデル構築が続いてよい。
【0083】
個別の化学実体又は断片を接続することにおいて当業者を補助するのに有用なプログラムは、以下を含む:CAVEAT(Bartlettらの文献、「CAVEAT:生物学的活性分子の構造由来のデザインを促進するプログラム(CAVEAT: A Program to Facilitate the Structure-Derived Design of Biologically Active Molecules)」、Molecular Recoginition in Chemical and Biological Problems、Special Pub.、Royal Chem. Soc., 78, 182-196頁(1989);Lauri及びBartlettの文献、「CAVEAT:有機分子のデザインを促進するプログラム(CAVEAT: a Program to Facilitate the Design of Organic Molecules)」、J. Comput. Aided Mol. Des., 8, 51-66頁(1994))。CAVEATは、カリフォルニア大学(バークレー、カリフォルニア州)から入手可能である;3Dデータベースシステム、例えばISIS(MDL Information Systems社、サン・レアンドロ、カリフォルニア州)。この分野は、Martinの文献、「薬物設計における3Dデータベース検索(3D. Database Searching in Drug Design)」、J. Med. Chem., 35, 2145-2154頁(1992);HOOK(Eisenらの文献、「HOOK:高分子結合部位の化学的及び立体的必要要件を満たす新規分子構築を見つけるプログラム(HOOK: A Program for Finding Novel Molecular Architectures that Satisfy the Chemical and Steric Requirements of a Macromolecule Binding Site)」、Proteins: Struct., Funct., Genet., 19, 199-221頁(1994)において概説されている。HOOKは、Molecular Simulations社(サンディエゴ、カリフォルニア州)から入手可能である。
【0084】
先に説明したように一度に一つの断片又は実体の段階的様式でグルタミニルシクラーゼの阻害剤の構築を進める代わりに、阻害性化合物又は他のグルタミニルシクラーゼ結合性化合物を、空の結合部位を用いるか又は任意に既知の阻害剤のある部分を含むかのいずれかで、全体として又は「新規に」デザインすることができる。以下を含む多くの新規リガンドデザイン法が存在する:LUDI(Bohmの文献、「コンピュータプログラムLUDI:酵素阻害剤の新規デザインのための新たな方法(The Computer Program LUDI: A New Method for the De Novo Design of Enzyme Inhibitors)」、J. Comp. Aid. Molec. Design, 6, 61-78頁(1992))。LUDIは、Molecular Simulations社(サンディエゴ、カリフォルニア州)から入手可能である;LEGEND(Nishibataらの文献、Tetrahedron, 47, 8985頁(1991))。LEGENDは、Molecular Simulations社(サンディエゴ、カリフォルニア州)から入手可能である;LEAPFROG(Tripos Associates社、セントルイス、ミズーリ州から入手可能である);及び、SPROUT(Gilletらの文献、「SPROUT:構造作成のためのプログラム(SPROUT: A Program for Structure Generation)」、J. Comput. Aided Mol. Design, 7, 127-153頁(1993))。SPROUTはリード大学(英国)から入手可能である。
【0085】
他の分子モデリング技術もまた、本発明に従い利用することができる(例えば、Cohenらの文献、「分子モデリングソフトウェア及び医薬化学のための方法(Molecular Modeling Software and Methods for Medicinal Chemistry)」、J. Med. Chem., 33, 883-894頁(1990)を参照されたい;同じく、Navia及びMurckoの文献、「薬物デザインにおける構造情報の使用(The Use of Structural Information in Drug Design)」、Current Opinions in Structural Biology, 2, 202-210頁(1992);Balbesらの文献、「コンピュータ支援型薬物デザインにおける最新方法の展望(A Perspective of Modern Methods in Computer-Aided Drug Design)」、Reviews in Computational Chemistry, 第5巻、Lipkowitz及びBoyd編集、VCH社、ニューヨーク、337-380頁(1994)を参照されたい;同じく、Guidaの文献、「構造ベースの薬物デザインのためのソフトウェア(Software For Structure-Based Drug Design)」、Curr. Opin. Struct. Biology, 4, 777-781頁(1994)を参照されたい)。
【0086】
例えば前記方法により、一旦実体がデザインされるか又は選択された場合は、その実体がグルタミニルシクラーゼに結合し得る効率は、コンピュータ評価により試験され且つ最適化されることができる。例えば効果的グルタミニルシクラーゼ阻害剤は、好ましくはその結合した状態と遊離の状態の間のエネルギーの比較的小さい差異(すなわち、小さい結合の変形エネルギー)を明らかにしている。従って最も効率的なグルタミニルシクラーゼ阻害剤は、好ましくは約10kcal/moleを超えない、より好ましくは7kcal/moleを超えない結合の変形エネルギーを持つようデザインされなければならない。グルタミニルシクラーゼ阻害剤は、全体の結合エネルギーが類似している複数の高次構造の2つ以上で、このタンパク質と相互作用することができる。それらの場合、結合の変形エネルギーは、遊離の実体のエネルギーと阻害剤がこのタンパク質へ結合する時に認められる高次構造の平均エネルギーの間の差異であると考えられる。
【0087】
グルタミニルシクラーゼへの結合の際にデザインされるか又は選択される実体は、更にコンピュータにより最適化されることができ、その結果その結合状態において、これは好ましいことに、標的酵素と及び取り囲んでいる水分子と反発する静電的相互作用を欠くであろう。そのような非相補的な静電的相互作用は、反発する電荷−電荷、双極子−双極子及び電荷−双極子の相互作用を含む。
【0088】
化合物変形エネルギー及び静電的相互作用を評価するために、特定のコンピュータソフトウェアが、当該技術分野において利用可能である。そのような用途のためにデザインされたプログラムの例は以下を含む:Gaussian 94、改訂版C(Frisch、Gaussian社、ピッツバーグ、ペンシルバニア州、1995);AMBER、4.1版(Kollman、カリフォルニア大学サンフランシスコ校、1995);QUANTA/CHARMM(Molecular Simulations社、サンディエゴ、カリフォルニア州、1995);Insight II/Discover(Molecular Simulations社、サンディエゴ、カリフォルニア州、1995);DelPhi(Molecular Simulations社、サンディエゴ、カリフォルニア州、1995);及び、AMSOL(Quantm Chemistry Program Exchange、インディアナ大学)。これらのプログラムは、例えば「IMPACT」グラフィックスにより、Indigo.sup.2などの、Silicon Graphics社のワークステーションを使用し実行することができる。他のハードウェアシステム及びソフトウェアパッケージは、当業者に公知であろう。
【0089】
本発明により提供される別のアプローチは、グルタミニルシクラーゼへ全体又は一部が結合することができる化学実体又は化合物に関する小型分子データベースのコンピュータによるスクリーニングである。このスクリーニングにおいて、そのような実体の結合部位へのフィッティングの質は、形状の相補性によるか又は推定された相互作用エネルギーのいずれかにより判断することができる(Mengらの文献、J. Comp. Chem., 13, 505-524 (1992))。
【0090】
本発明の更なる態様に従い、本明細書の前文において説明された様々な方法により、生成されるか又は同定されるグルタミニルシクラーゼと会合する化合物が提供される。
【0091】
図1から
図4に示した構造座標はまた、別の結晶化された分子又は分子複合体に関する構造情報を得ることを支援するために使用することができる。これは、分子置換を含む、数多くの周知の技術のいずれかにより実現することができる。
【0092】
また例えば、その構造が不明であるタンパク質の結晶のX線回折パターンを作成する工程;分子置換モデルとして
図1から
図4に示された構造座標の少なくとも一部を使用することにより、X線回折パターンから、その構造が不明であるタンパク質の三次元電子密度マップを作成する工程:を含む、その構造が不明であるタンパク質に関する構造情報を得るために、分子置換を利用する方法も提供される。
【0093】
分子置換を使用することにより、本発明により提供された(及び、
図1から
図4に示された)グルタミニルシクラーゼの構造座標の全て又は一部を使用し、最初からの(ab initio)構造決定を試みるよりもより迅速且つ効率的に、別の結晶化された分子又は分子複合体の構造を決定することができる。一つの特別な使用は、他の構造上類似したタンパク質の使用を含む。分子置換は、未知の構造に関する位相(phase)の正確な推定を提供する。位相は、直接決定することができない結晶構造を解明するために使用される数式の因数である。分子置換以外の方法により、位相に関する正確な値を得ることには、概算及び精密化の繰り返しサイクルに関与し、且つ結晶構造の解明を大きく妨害する時間のかかるプロセスである。しかし、少なくとも相同部分を含むタンパク質の結晶構造が解明される場合、既知の構造由来の位相は、未知の構造に関する位相の満足できる推定を提供する。
【0094】
従ってこの方法は、その構造が不明である分子又は分子複合体の結晶の観察されたX線回折パターンを説明するのに最良であるように、不明な分子又は分子複合体の結晶の単位格子内に、
図1から
図4に従いグルタミニルシクラーゼの関連する部分を配向し且つ配置することにより、その構造座標が分かっていない分子又は分子複合体の予備的モデルを作成することに関与する。次にこのモデルから、位相を計算し、且つ観察されたX線回折パターンの振幅と組合わせ、その座標が不明である構造の電子密度マップを作成することができる。次にこれに、いずれか周知のモデル構築技術及び構造精密化技術を施し、不明の結晶化された分子又は分子複合体の最終的な正確な構造を提供することができる(Lattmanの文献、「回転及び翻訳機能の使用(Use of the Rotation and Translation Functions)」、Meth. Enzymol., 115, 55-77頁(1985);Rossmann編集、「分子置換法(The Molecular Replacement Method)」、Int. Sci. Rev. Ser., 第13巻、Gordon & Breach社、ニューヨーク、(1972))。
【0095】
グルタミニルシクラーゼの任意の部分に十分に相同である任意の結晶化された分子又は分子複合体の任意の部分の構造は、この方法により解明することができる。
【0096】
一実施態様において、本発明の及びいずれか他のグルタミニルシクラーゼ様分子についての構造情報を得るために、分子置換法を利用する。
【0097】
本発明により提供されるグルタミニルシクラーゼの構造座標は、アミノ酸の置換、付加及び/又は欠失を有するグルタミニルシクラーゼ変種(天然のグルタミニルシクラーゼに対し、まとめて「グルタミニルシクラーゼ変異体」と称される)の構造を解明する際に有用である。これらのグルタミニルシクラーゼ変異体は任意に、阻害剤又は基質類似体などのリガンドとの共複合体で結晶化されてよい。その後一連のそのような複合体の結晶構造は、分子置換により解明され、且つグルタミニルシクラーゼのそれと比較されてよい。こうしてその酵素の様々な結合部位内の修飾の可能性のある部位を同定することができる。この情報は、例えば、グルタミニルシクラーゼとリガンドの間の増加した疎水性相互作用などの、最も効率的結合相互作用を決定するための、追加の道具を提供する。このリガンドは、タンパク質の天然のリガンドであるか、又はタンパク質の可能性のあるアゴニスト若しくはアンタゴニストであってよいことは注目される。
【0098】
本発明の更なる態様に従い:
(a)当該構造座標からの三次元構造情報を作成する手段を備えるコンピュータ上で、当該結合ポケット又はヒト若しくはマウスのグルタミニルシクラーゼの構造座標を提供する工程;並びに
(b)当該化学実体と、当該結合ポケット又はヒト若しくはマウスのグルタミニルシクラーゼの全て又は一部の当該三次元構造情報の間のフィッティング操作を実行することにより、当該化学実体をデザインし、選択し及び/又は最適化する工程:
を含む、
図1から
図4のいずれかひとつに従い、結合ポケット又はヒト若しくはマウスのグルタミニルシクラーゼの全て又は一部に結合する化学実体をデザインし、選択し及び/又は最適化する方法が提供される。
【0099】
本発明の更なる態様に従い:
(a)当該構造座標からの三次元構造情報を作成する手段を備えるコンピュータ上で、当該結合ポケット又はヒト若しくはマウスのグルタミニルシクラーゼの構造座標を提供する工程;
(b)該化学実体と、該結合ポケット又はヒト若しくはマウスのグルタミニルシクラーゼの全て又は一部の間のフィッティング操作を実行するために、コンピュータ手段を利用する工程;並びに
(c)該化学実体と、該結合ポケット又はヒト若しくはマウスのグルタミニルシクラーゼの全て又は一部の間の会合を定量化するために、当該フィッティング操作の結果を解析する工程:
を含む、
図1から
図4のいずれかひとつに従い、結合ポケット又はヒト若しくはマウスのグルタミニルシクラーゼの全て又は一部に会合する化学実体の能力を評価する方法が提供される。
【0100】
一実施態様において、本方法は、工程(b)の前に、結合ポケット又はヒト若しくはマウスのグルタミニルシクラーゼの全て又は一部の三次元グラフィカル表現を作成する工程を更に含む。
【0101】
本発明の更なる態様に従い:
(a)化学実体及び結合ポケット又はヒト若しくはマウスのグルタミニルシクラーゼの構造のグラフィカルな三次元表現を使用し、当該結合ポケット又はヒト若しくはマウスのグルタミニルシクラーゼの全て又は一部内に、第一の化学実体を配置する工程;
(b)コンピュータ手段を使用し、当該化学実体と、当該結合ポケット又はヒト若しくはマウスのグルタミニルシクラーゼの間のフィッティング操作を実行する工程;並びに
(c)当該化学実体と、該結合ポケット又はヒト若しくはマウスのグルタミニルシクラーゼの全て又は一部の間の会合を定量化するための当該フィッティング操作の結果を解析する工程:
を含む、
図1から
図4のいずれかひとつに従い、結合ポケット又はヒト若しくはマウスのグルタミニルシクラーゼの全て又は一部に会合する化学実体の能力を評価するためのコンピュータを使用する方法であって、ここで当該コンピュータは、当該結合ポケット又はヒト若しくはマウスのグルタミニルシクラーゼを規定する当該構造座標でコード化されたデータ記憶材料を含む機械可読データ記憶媒体、並びに該結合ポケット又はヒト若しくはマウスのグルタミニルシクラーゼの三次元グラフィック表現を作成する手段を備える方法が提供される。
【0102】
一実施態様において、本方法は更に:
(d)第二の化学実体で工程(a)から工程(c)を繰り返す工程;及び
(e)当該第一又は第二の化学実体の当該定量化された会合を基に、当該結合ポケット又はヒト若しくはマウスのグルタミニルシクラーゼの当該全て又は一部と会合する、当該第一又は第二の化学実体の少なくとも1つを選択する工程:
を含む。
【0103】
本発明の更なる態様に従い:
(a)化学実体をデザイン又は選択するために、結合ポケット又はヒト若しくはマウスのグルタミニルシクラーゼの三次元構造を使用する工程;
(b)化学実体と、ヒト又はマウスのグルタミニルシクラーゼを接触させる工程;
(c)ヒト又はマウスのグルタミニルシクラーゼの触媒活性をモニタリングする工程;並びに
(d)ヒト又はマウスのグルタミニルシクラーゼの触媒活性に対する化学実体の作用を基に、アゴニスト又はアンタゴニストとして化学実体を分類する工程:
を含む、
図1から
図4のいずれかひとつに従い、ヒト又はマウスのグルタミニルシクラーゼのアゴニスト又はアンタゴニストを同定する方法が提供される。
【0104】
本発明の更なる態様に従い:
(a)当該構造座標からの三次元構造情報を作成する手段を含むコンピュータ上で、当該結合ポケット又はヒト若しくはマウスのグルタミニルシクラーゼの構造座標を提供する工程;並びに
(b)第一の化学実体を結合ポケットの全て又は一部と会合させるために、フィッティング操作を実行するようコンピュータを使用する工程;
(c)少なくとも第二の化学実体を結合ポケットの全て又は一部と会合させるために、フィッティング操作を実行する工程;
(d)第一及び第二の化学実体と、結合ポケットの全て又は一部の間の会合を定量化する工程;
(e)任意に、別の第一及び第二の化学実体で工程(b)から工程(d)を繰り返し、当該第一及び第二の化学実体の全ての当該定量化された会合を基に、第一及び第二の化学実体を選択する工程;
(f)任意に、結合ポケット並びに当該第一及び第二の化学実体の三次元グラフィカル表現を使用し、コンピュータスクリーン上に、結合ポケットに関連して、第一及び第二の化学実体の互いの関係を目視により検査する工程;並びに
(g)モデル構築により当該結合ポケットの全て又は一部と会合する化合物又は複合体へ、第一及び第二の化学実体を集成する工程:
を含む、
図1から
図4のいずれかひとつに従い、結合ポケット又はヒト若しくはマウスのグルタミニルシクラーゼの全て又は一部に会合する化合物又は複合体をデザインする方法が提供される。
【0105】
先に言及された複合体は全て、周知のX線回折技術を使用し研究することができ、且つX-PLOR(Brungerらの文献、「X-PLOR、バージョン3.1、X線結晶学及びNMRのためのシステム(X-PLOR, Version 3.1, A system for X-ray crystallography and NMR)、エール大学(1992))、CNS(Brungerらの文献、「結晶学及びNMRシステム(CNS)、高分子構造決定のための新規ソフトウェアパッケージ(Crystallography & NMR System (CNS), A new software suite for macromolecular structure determination)」、Acta Cryst. D54:905-921(1998))、TNT(Tronrudらの文献、「高分子構造のための効率的汎用最小二乗精密化プログラム(An efficient general-Purpose least-squares refinement program for macromolecular structures)」、Acta Cryst. A43, 489-501(1987))、Buster(Bricogneの文献、「構造決定に関するベイズ統計学的視点:基本概念及び例(The Bayesian Statistical Viewpoint on Structure Determination: Basic Concepts and Examples)」、Methods in Enzymology, 276A, 361-423、Carter及びSweet編集、(1997))、並びにRefmac(Murshudovらの文献、「最尤法による高分子構造の精密化(Refinement of macromolecular structures by the maximum-likelihood method)」、Acta Cryst D53 :240-255(1997))などのコンピュータソフトウェアを用い、R値約0.22以下までの、分解能1.5〜3.5ÅのX線データに対し精密化されてよい(例えば、Blundell及びJohnsonの文献、前掲;Meth. Enzymol.、第114及び115巻、Wyckoffら編集、Academic Press社(1985)を参照されたい)。従ってこの情報を使用し、既知のグルタミニルシクラーゼ阻害剤を最適化し、且つより重要なことには、新規グルタミニルシクラーゼ阻害剤をデザインすることができる。
【0106】
本明細書に記載の構造座標はまた、タンパク質骨格におけるアミノ酸の高次構造を規定する、二面角φ及びψを誘導するために使用することができる。当業者に理解されるように、φ角度は、α-炭素と窒素の間の結合の周りの回転をいい、且つψ角度は、カルボニル炭素とα-炭素の間の結合の周りの回転をいう。添え字「n」は、その高次構造が説明されているアミノ酸を指定している(一般参照については、Blundell及びJohnsonの文献、「タンパク質結晶学(Protein Crystallography)」、Academic Press社、ロンドン、1976年を参照されたい)。
【実施例】
【0107】
本発明は、下記の非限定的実施例により更に例証される:
(1-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-3-(3,4-ジメトキシフェニル)チオ尿素(阻害剤A)の調製)
3,4-ジメトキシフェニルイソチオシアネート4.0mmol及び3-(1H-イミダゾール-1-イル)アルキル-1-アミン4.0mmolを、無水エタノール10mL中に溶解した。還流下で2時間攪拌した後、溶媒を蒸発させ、得られた固形物をエタノールから再結晶した。
収量:0.66g(51.3%);融点:160.0〜161.0℃。
【化4】
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【0108】
(2-シアノ(3,4,5-トリメトキシフェニル)-3-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-グアニジン(阻害剤B)の調製)
(中間体1:4-メチル-1-トリチル-1H-イミダゾール(D1))
4-メチル-1H-イミダゾール(36.53mmol, 1当量)を、ジメチルホルムアミド120mLに溶解し、トリエチルアミン(73.06mmol, 2当量)及びクロロトリフェニルメタン(40.1mmol, 1.1当量)を添加した。この混合物を3.5時間攪拌した。沈殿物を濾過し、氷冷したジメチルホルムアミド(2×50mL)及び水(2×50mL)により洗浄した。溶媒を除去した後、残留する生成物をP
4O
10上で乾燥した。
収量:10.65g(98.2%)。この生成物は更に精製することなく使用した。
【0109】
(中間体2:1-トリチル-3-[3-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)プロピル]-1,4-ジメチル-1H-イミダゾール-3-イウムブロミド(D2))
4-メチル-1-トリチル-1H-イミダゾール(すなわち、32.85mmol, 1当量、これはD1において説明されたように調製することができる)を、アセトニトリル(10mL)中に懸濁し、2-(3-ブロモプロピル)イソインドリン-1,3-ジオン(32.85mmol, 1当量)を添加した。この混合物を還流下で一晩維持した。有機溶媒を除去した。精製は、シリカゲル及びCHCl
3/MeOH-勾配を用いるフラッシュクロマトグラフィーにより行った。
収量:10.65g(63.44%)。
【0110】
(中間体3:2-(3-(5-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)イソインドリン-1,3-ジオン(D3))
1-トリチル-3-[3-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)プロピル]-1,4-ジメチル-1H-イミダゾール-3-イウムブロミド(すなわち、7.86mmol、これはD2において説明されたように調製することができる)を、メタノール(20mL)及びトリフルオロ酢酸(4mL)を含有する攪拌溶液中に溶解した。この混合物を還流下で一晩維持した。その後減圧により溶媒を除去し、残留する油状物を、シリカゲル及びCHCl
3/MeOH-勾配を用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。
収量:2.05g(97.0%)。
【0111】
(中間体4:3-(5-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)プロパン-1-アミン(D4))
2-(3-(5-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)イソインドリン-1,3-ジオン(すなわち、8.92mmol, 1当量、これはD3において説明されたように調製することができる)及びヒドジン(hydzine)一水和物(17.84mmol, 2当量)を、無水EtOH(50mL)中に溶解した。この混合物を還流下で一晩維持し、次に混合物を容積25mLまで濃縮した。次に塩酸(濃、55mL)を添加し、この混合物を50℃まで加熱し、この温度で30分間維持した。その後形成された沈殿物を濾過した。濾液を0℃まで冷却し、固形NaOHを、最終pH値が10〜12に達するまで添加した。この水溶液を、CHCl
3(3×50mL)により抽出した。一緒にした有機層を、Na
2SO
4上で乾燥し、濾過し、溶媒を除去した。この生成物を、シリカゲル及びCHCl
3/MeOH-勾配を用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。
収量:0.74g(60%)、粘稠な油状物。
全工程の収量:36.3%
【化5】
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【0112】
(中間体5:2-(3-(4/5-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)イソインドリン-1,3-ジオン(D5))
4-メチル-1H-イミダゾール(36.53mmol, 1当量)及び水素化ナトリウム(鉱油中60%、36.53mmol, 1.0 当量)を、ジメチルホルムアミド80mL中に溶解した。水素ガスの形成が静まるまで、この混合物を室温で2時間攪拌した。2-(3-ブロモプロピル)イソインドリン-1,3-ジオン(34.70mmol, 0.95当量)を添加し、この混合物を90℃で一晩攪拌した。溶媒を除去し、残留する残渣を、シリカゲル及びCHCl
3/MeOH-勾配を用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。
収量:2-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)イソインドリン-1,3-ジオン及び2-(3-(5-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)イソインドリン-1,3-ジオンの混合物6.1g(62.0%)。
【0113】
(中間体6:2-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)イソインドリン-1,3-ジオン(D6))
2-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)イソインドリン-1,3-ジオン及び2-(3-(5-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)イソインドリン-1,3-ジオン(22.65mmol, 1当量、これらはD5において説明されたように調製することができる)並びにトリチルクロリド(13.6mmol, 0.6当量)からなる混合物を、ジクロロメタン40mL中に溶解し、温度を0℃で10分間及び室温で1.5時間維持した。溶媒を除去し、残留する固形物を、シリカゲル及びCHCl
3/MeOH-勾配を用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。
収量:0.92g(15.1%)。
【0114】
(中間体7:3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)プロパン-1-アミン(D7))
2-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)イソインドリン-1,3-ジオン(3.42mmol, 1当量、これはD6において説明されたように調製することができる)及びヒドラジン一水和物(6.84mmol, 2当量)を、エタノール20mL中に溶解し、この混合物を還流下で12時間攪拌した。この混合物を、還流下で一晩維持し、その後混合物を容積25mLまで濃縮した。次に塩酸(濃、55mL)を添加し、混合物を50℃まで加熱し、この温度で30分間維持した。その後形成された沈殿物を濾過した。濾液を0℃まで冷却し、固形NaOHを、最終pH値が10〜12に達するまで添加した。この水溶液を、CHCl
3(3×50mL)により抽出した。一緒にした有機層を、Na
2SO
4上で乾燥し、濾過し、溶媒を除去した。この生成物を、シリカゲル及び水性アンモニア(2%v/v)を含有するCHCl
3/MeOH-勾配を用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。
収量:0.31g(65.1%)。
【化6】
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【0115】
(阻害剤B:2-シアノ(3,4,5-トリメトキシフェニル)-3-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-グアニジン)
阻害剤Bを、5-イソチオシアナト-1,2,3-トリメトキシベンゼン(0.162g, 0.72mmol)及び3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)プロパン-1-アミン(0.10g, 0.72mmol、これはD7において説明されたように調製することができる)から合成した。
収量:0.110g(41.0%)。
【化7】
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【0116】
(2-シアノ(メシチル)-3-(3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)グアニジン(阻害剤C)の調製)
阻害剤Cは、2-イソチオシアナト-1,3,5-トリメチルベンゼン(0.106g, 0.60mmol)及び3-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)プロパン-1-アミン(0.084g, 0.60mmol、これはD7において説明されたように調製することができる)から合成した。
収量:0.088g(45.2%)。
【化8】
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【0117】
(実施例1:ヒトグルタミニルシクラーゼの単離、特性評価及び結晶化)
((A)ヒトグルタミニルシクラーゼの単離)
(クローニング手順)
hQC cDNAを、酵母発現ベクターpPICZαB(Invitrogen社、独国)へ、PstI及びNotI制限部位で、下記プライマーを用いて挿入した:
【化9】
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【0118】
ジスルフィド結合-欠損変異体C139A/C164Aを、標準PCR技法に従い、下記プライマー対を使用する、二工程PCR-媒介した部位特異的変異誘発:
【化10】
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それに続く、DpnI(クイック-チェンジII部位特異的変異誘発キット、Stratagene社、米国)を使用する、親DNAの消化により、入手した。
【0119】
(ピキア・パストリス(Pichia pastoris)の形質転換及び小規模発現)
プラスミドDNAを、大腸菌(Escherichia coli)DH5α株において増幅し、かつ製造業者(Qiagen社、独国)の推奨に従い精製した。DNA 20〜30μgを、PmeIにより線状化し、沈殿させ、且つ脱イオン水中に溶解した。DNA 1〜5μgを、製造業者(Bio-Rad社、独国)の指示に従う電気穿孔法による、コンピテント酵母細胞(P.パストリスX33株[AOX1, AOX2])の形質転換に使用した。酵母を増殖し、形質転換し、且つ製造業者(Invitrogen社、独国)の指示に従い分析した。簡単に述べると、選択を、ゼオシン150μg/mlを含有するYPDSプレート上で実行した。発現時に酵母クローンを試験するために、組換え体を、BMGY 2mLが入った10mLのコニカルチューブ内で24時間増殖した。その後この細胞を遠心分離し、0.5%メタノールを含有するBMMY 2mL中に再浮遊させた。この濃度を、24時間毎にメタノールを添加することにより維持した。72時間後、上清中のQC活性を測定した。C139A/C164A変異体の発現は、プライマー
【化11】
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を適用し、酵母ゲノムに挿入されたhQC遺伝子の配列解析により確認した。従ってゲノムDNAは、標準の分子生物学技術に従い調製し、引き続き標的遺伝子をプライマー(P1;配列番号:2)及び(P2;配列番号:3)を使用するPCRにより増幅した。最高のQC活性を示すクローンを、発酵及び更なる実験のために選択した。
【0120】
(大規模発現及び精製)
hQC及びC139A/C164A変異体の発酵は、本質的に別所記載のように(Schilling, S.、Hoffmann, T.、Rosche, F.、Manhart, S.、Wasternack, C.、及びDemuth, H. U.の文献、[2002] Biochemistry、41, 10849-10857)、5Lの反応器(Biostad B; Braun Biotech社、独国)において実行した。簡単に述べると、発酵は、pH5.5で、微量の塩を補充した、基本塩培地において開始した。バイオマスを、バッチ内で及び唯一の炭素源としてグリセロールを含む流加バッチ相において約28時間蓄積した。標的タンパク質の発現を、Invitrogen社により推奨された三工程プロファイル(「ピキア発酵法ガイドライン(Pichia fermentation process guidelines)」)に従うメタノールの供給により誘導した。この発酵プロセスは、68時間後に停止した。その後細胞を、6000×g及び4℃で20分間の遠心分離により、培地から分離した。
【0121】
ヒスチジンを、最終濃度1mMで添加し、その上清に、Ni
2+イオンで飽和され、且つ50mMリン酸緩衝液pH6.8、300mM塩化ナトリウムで平衡化された膨張床吸収カラム(Streamline Chelating Sepharoseが入ったStreamlineカラム25[2.5×22cm−沈降した]、GE Healthcare社、スウェーデン)上に、流量12mL/分で、上向き流れ方向で適用した。結合した酵素を、50mMリン酸緩衝液pH6.8、300mM塩化ナトリウムの1.5Lで洗浄した。酵素を、100mMヒスチジンを含有する50mMリン酸緩衝液pH6.8、300mM塩化ナトリウムを使用し、下向き流れ方向で、流量8mL/分で溶出した。QC-含有画分をプールし、硫酸アンモニウムを、最終濃度700mMまで添加した。100000×g(4℃)で1時間遠心分離し、得られた溶液を、ブチルセファロースファストフローカラム(1.6×13cm、GE Healthcare社、スウェーデン)に、流量2mL/分で適用した。結合した酵素を、3カラム容積の50mMリン酸緩衝液pH6.8、700mM硫酸アンモニウムを適用することで洗浄し、且つ5mMリン酸緩衝液pH6.8により逆の流れ方向で溶出した。QC-活性を含む画分をプールし、100倍過剰量(v/v)の30mMビス-トリスpH6.8に対し、4℃で一晩透析した。この溶液を、100000×g(4℃)で1時間遠心分離し、Uno Q6カラム(12×53mm、Bio-Rad社、独国)上に、流量4mL/分で適用した。結合した酵素を、3カラム容積の30mMビス-トリスpH6.8を適用することで洗浄した。酵素は、100mM塩化ナトリウムを含有する30mMビス-トリスpH6.8で溶出した。QC-含有画分をプールし、且つ純度をSDS-PAGEにより分析した。精製された酵素は、50%グリセロールを添加した後-20℃で、又はグリセロールを含まずに-80℃で貯蔵した。
【0122】
((B)ヒトグルタミニルシクラーゼの特性評価)
(SDS-PAGE適用によるジスルフィド結合の検出)
hQC WT(野生型)及びC139A/C164A変異体のジスルフィド結合を検出するために、SDS-PAGEを適用した。その結果、酵素は、エンドグリコシダーゼH
f(1000単位/0.2mg QCを室温で1時間;NEB社、独国)を使用し、脱グリコシル化し、且つローディング緩衝液と混合した:
【表2】
[この文献は図面を表示できません]
【0123】
試料を、5分間煮沸し、15%トリス-グリシンSDSゲル(6cm×8cm)に、1レーンにつきタンパク質5μgで、200Vで2時間流動した。タンパク質は、クマーシー染色により可視化した(
図5)。
【0124】
還元条件(影付き灰色レーン、ジスルフィド結合は破壊されている)と非還元条件(白色レーン、ジスルフィド架橋)の間で、hQC WTに関して、移動度はシフトしているが;還元剤の拡散のために、レーン3及び6のバンドパターンは、混合型であり;C139A/C164A変異体に関して、両方の条件間に、移動度の差異は認められない。この変異体に関して、SDS-PAGEにおける移動度に影響を及ぼす還元事象/ジスルフィド結合の破壊は生じなかった。
【0125】
(高次構造の安定性−CDスペクトル)
hQC及びC139A/C164A変異体を、10mMリン酸緩衝液pH6.8で平衡とした、セファデックスG-25ファスト脱塩カラム(1.0×10cm;GE Healthcare社、スウェーデン)を使用する、サイズ排除クロマトグラフィーにより脱塩した。タンパク質濃度は、40μM(WT)及び37μM(C139A/C164A)に調節した。
【0126】
CDスペクトルを、光路長0.1cmの石英キュベット及び外部サーモスタット(Julabo F25、Julabo社、独国)を使用し、Jasco J-715スペクトル偏光計(Jasco社、独国)において獲得した。波長スキャン(全般的設定:感度100mdeg、データピッチ1nm、走査モード:連続、走査速度:50nm/分、反応時間:1秒、1nmのバンド)に関して、190nm〜260nm(遠UV/アミド領域)の10回の走査の平均を計算し、且つ緩衝液スペクトルを減算することにより、補正した(
図6)。20℃での二次構造要素の割合を、Yangの方法(Yang, J. T.、Wu, C. S.、及びMartinez, H. M.の文献、Methods Enzymol, 130, 208-269[1986])を基にした、Jasco二次構造推定プログラムを用いて計算した。
【0127】
両方の酵素は、波長208nm及び222nmでの最小により特徴付けられる高度なα-ヘリックス含量(content)を持つタンパク質に関して典型的なCDスペクトルを示している。三次構造は、WTについて:α-ヘリックス54%、β-シート25.8%、ランダム18.5%;C139A/C164Aについて:α-ヘリックス55.6%、β-シート25.8%、ランダム20.2%と計算された。これらの値は非常に類似しており、ジスルフィド結合の喪失は、三次構造の変化を誘発しないという結論に繋がる。
【0128】
高次構造の安定性を研究するために、速度30℃/時及び遅延(delay)60秒で、温度を20℃から80℃まで上昇した。波長走査を、10K毎に行ったのに対し、波長227nmでの楕円率は、2K毎で測定した(
図7)。この波長で、スペクトルの大きい変化が認められた。S字形の適合は、WT酵素の半分がアンフォールドされる温度49℃で明らかになった。C139A/C164A変種に関して、この値は46℃まで低下した。高次構造を安定化する作用は、hQCのジスルフィド結合に起因し得る。
【0129】
広範なメッシュ状の記録(wide-meshed recording)のために、この差異は、波長走査において検出することができない(
図8)。リフォールディングは、冷却時には生じない。
【0130】
(高次構造安定性−蛍光発光スペクトル)
蛍光発光スペクトルを、ルミネセンス分光計LS 50B(Perkin-Elmer社、米国)を使用し、22℃で320nmから400nmの波長範囲(トリプトファン残基により引き起こされた主要発光)で記録した。励起波長は295nm(トリプトファン残基の励起のみ)で、走査速度100nm/分であり、スリット幅は励起について3nm及び発光について6nmを使用した。高次構造の安定性を研究するために、hQC WT及びC139A/C164A変異体を、多様な濃度の塩酸グアニジン(GdmCl)を含有する50mMリン酸緩衝液pH6.8で、各々、濃度0.24μM(WT)及び0.31μM(C139A/C164A変異体)まで希釈した。スペクトルを獲得し、対応する緩衝液のスペクトルを減算した(
図9)。
【0131】
通常、変性時に、タンパク質の最大発光は、より短い波長から、水溶液中のトリプトファンの最大蛍光に対応する約350nmへと、トリプトファン-媒介性シフトを示す(Schmid, F. X.の文献、[1989] 「タンパク質構造:実践法(Protein Structure: A Practical Approach)」、[Creighton, T. E編集]、251-285頁、IRL Press社、オックスフォード)。未変性の酵素(hQC WT及びC139A/C164A変異体)は、344nmで最大の蛍光発光を示し、これは、アンフォールディング時に波長354nmへとシフトし、このことはフォールディングされた状態と比べ、トリプトファン残基のより親水性の環境を示している。
【0132】
両方の酵素の高次構造は、GdmCl濃度2Mまで安定している。濃度2.5Mで、蛍光発光の低下により示されるアンフォールディングが検出される。hQC WTと比べると、アンフォールディングはC139A/C164A変異体において増加している。hQC WTについて、4M GdmClで依然フォールディングされた画分は存在するが、C139A/C164A変異体は完全にアンフォールディングされる。
【0133】
発光波長337nmで、相対蛍光の大きい変化を認めることができる。タンパク質の半分がアンフォールディングされるGdmCl濃度は、hQC WTについて3.2M及びC139A/C164A変異体について2.9Mと決定することができる(
図10)。このことは、ジスルフィド結合の高次構造安定化作用を確認している。
【0134】
((C)ヒトグルタミニルシクラーゼの結晶化)
結晶化を、ハンギングドロップ蒸気拡散法を適用することにより実行した。結晶化条件に関する最初のスクリーニングを、いくつかの市販の基本的スクリーニングキットにより、13℃(タンパク質濃度5mg/ml、0.5mM阻害剤A)及び21℃(タンパク質濃度7.5mg/ml、0.5mM阻害剤A)で実行した。温度21℃及びタンパク質濃度7.5mg/mlで、Jena Bioscience社によるJBScreen Classic 7キット(JBS、独国)の緩衝液C5[30%(w/v)2-メチル-2,4-ペンタンジオール;10%(w/v)PEG 4000;100mMイミダゾール-HCl、pH8]において、最も有望な結晶が成長した。更なる最適化のために、PEG 4000の濃度を変動させ、濃度11%(w/v)のPEG 4000が理想的であることを明らかにした。X線構造解析により、分解能2.1Åが達成された。
【0135】
(結晶成長)
結晶は、Easyxtal 24-ウェルプレート(Qiagen社)において、ハンギングドロップ蒸気拡散技術を室温(21℃)で用いて成長させた。母液緩衝液は、0.1MイミダゾールpH8、30%(v/v)2-メチル2,4-ペンタンジオール及び11%(w/v)4000PEGからなった。組換えヒトグルタミニルシクラーゼは、25mMビス-トリスpH6.8/100mM NaCl緩衝液の存在下で、濃度最大10mg/mlのタンパク質溶液であった。母液緩衝液1μl及びタンパク質溶液1μlの混合液を用意した。結晶は、実験後通常10〜15日後に出現を開始し、且つこれらは顕微鏡で板状形状を示した(
図11)。
【0136】
(極低温溶液)
X線測定の前に、結晶は、母液緩衝溶液を15%(v/v)グリセロールにより飽和した新たな極低温-緩衝溶液に速やかに浸した。直ちに結晶を、ナイロンループ付きピンを用い、極低温-緩衝溶液から収集し、これらをゴニオメーター上に搭載し、窒素流れ下で-180℃で瞬時に凍結した。
【0137】
(データ収集)
単結晶からのデータ収集は、Cu Kα放射線(λ=1.5418Å)により、回転対陰極発生源(RA Micro 007;理学/MSC社、東京、日本)及びVarimax(商標)Optics(理学社)及びAFC-11ゴニオメーターを備えるCCD検出装置(CCD Saturn 944+、理学社)を用い、行った。
【0138】
最後に、結晶を取り外し、且つベルリンのシンクロトロン(Bessy)のビームラインBL14.1での追加の測定のために、液体窒素中で貯蔵した。
【0139】
(データ処理)
データ処理は、結晶学パッケージソフトCCP4に含まれるプログラムを用いて実行した。画像の反射強度は、指数付けし、且つプログラムMosflmを用いて積分した。その後積分した強度を、プログラムScalaを用い、スケール変更及びマージ(merge)した。更に初期位相を、Phaserを用い、且つ検索モデルとしてPDBid 2AFOによる結晶構造を採用し、分子置換アプローチにより入手した。その結果、初期電子密度を入手した。引き続き喪失した断片の手作業による構築及び最大尤度精密化サイクルを、CCP4パッケージソフト由来のソフトに加え、プログラムCOOT及びREFMAC5を用いて行った。
【0140】
(結果)
表3に、ヒトグルタミニルシクラーゼの結晶によりベルリンのシンクロトロンBessyにおいて得られたデータセットの統計、並びにデータ処理及びモデル構築に関するそれらの対応する統計をまとめている。使用したプログラムは、データ処理についてはMOSFLM及びSCALA、分子置換についてはPHASER、精密化についてはREFMAC5、及びモデル構築についてはCootであった(これらは全てCCP4パッケージソフトに含まれている)。括弧の間の数値は、外側シェル(outer shell)の分解限界に属する。
【0141】
【表3】
[この文献は図面を表示できません]
全般的三次元構造。得られた実験的電子密度から構築されたモデルは、ヒトグルタミニルシクラーゼ残基のA
35からL
361まで、亜鉛イオン及びイミダゾール分子を含む。このタンパク質は、球状のα/β加水分解酵素フォールドを示している(
図12)。中心のβ-シートは、二番目を除いて、全て平行様式である6個のβ-ストランドで形成されている。このβ-シートは、片側は2個のヘリックスにより、及び反対面は6個の更なるα-ヘリックスによるサンドイッチ様式で、α-ヘリックスにより取り囲まれている。このタンパク質の構造は、酵素の活性部位を構築しているかなり多量のランダムコイルループにより完成される。この活性部位は、3つのタンパク質残基E
202、D
159、及びH
330により配位されている亜鉛イオン並びにイミダゾール分子を収容している(
図13)。更にこのタンパク質は、残基C
139とC
164の間にジスルフィド架橋の存在を示している。加えて4つのシス-ペプチド結合が、下記の残基対の間に存在する:D
159-S
160、H
228-P
229、G
301-V
302、及びS
323-P
324。最後に、このポリペプチド鎖の2つのセグメントが、この電子密度においては認められない。このギャップは、K
182とD
190の間、及びF
146とN
150の間の残基を含む。
【0142】
(実施例2:マウスグルタミニルシクラーゼの単離、精製及び結晶化)
((A)マウスグルタミニルシクラーゼの単離及び精製)
(クローニング手順)
mQCのオープンリーディングフレームの単離のためのプライマーを、推定mQCをコードしている、PubMedヌクレオチドエントリーAK017598を用いてデザインした。これらのプライマー配列は、下記である:
【化12】
[この文献は図面を表示できません]
総RNAを、マウスのインスリノーマ株化細胞β-TC3細胞から、RNeasyミニキット(Qiagen社、独国)を用いて単離し、且つSuperScriptII(Invitrogen社、独国)により逆転写した。引き続き、mQC cDNAを、Herculase Enhanced DNA-ポリメラーゼ(Stratagene社、米国)を含む50μl反応液中に生成された産物を1:12.5希釈し、増幅し、PCR Script CAMクローニングベクター(Stratagene社、米国)に挿入し、且つ配列決定により検証した。成熟mQCをコードしているcDNA断片は、下記プライマーを用いて増幅した:
【化13】
[この文献は図面を表示できません]
消化された断片を、ベクターpPICZαBにライゲーションし、大腸菌において増殖し、且つセンス鎖及びアンチセンス鎖の配列決定により検証した。最後に、この発現プラスミドを、PmeIを用いて線状化し、沈殿させ、且つ-20℃で貯蔵した。
【0143】
(P.パストリスの形質転換及び小規模発現)
製造業者(BioRad社、独国)の指示に従う電気穿孔法により、プラスミドDNAの1〜2μgを、コンピテントP.パストリス細胞の形質転換に使用した。選択は、100μg/mlゼオシンを含有するプレート上で行った。組換え酵母クローンをmQC発現について試験するために、組換え体を、BMGY 2mLが入った10mLのコニカルチューブにおいて24時間増殖した。引き続き、酵母を遠心分離し、且つ0.5%メタノールを含有するBMMY 2mL中に再浮遊させた。この濃度を、24時間毎にメタノールを添加することにより約72時間維持した。引き続き、上清中のQC活性を測定した。最高の活性を示すクローンを、更なる実験及び発酵のために選択した。
【0144】
(マウスQC(mQC)の大規模発現及び精製)
mQCの大規模発現を、5Lの反応器(Biostad B;B. Braun Biotech社、独国)において実行した。発酵は、pH5.5で、微量の塩を補充した、基本塩培地において実行した。最初に、バイオマスを、唯一の炭素源としてグリセロールを含むバッチ相において約28時間蓄積した。およそ65時間の全発酵時間で、mQCの発現を、Invitrogen社により推奨された三工程プロファイルに従うメタノールの供給により開始した。
【0145】
引き続き、細胞及び濁りを、2つの連続遠心分離工程である6000×gで20分間及び38000×gで3.5時間により除去した。精製のために、発酵ブロスを、伝導度約4mS/cmとなるまで冷水で希釈し、且つ0.05Mリン酸緩衝液pH6.4で平衡とした、Streamline SP XLカラム(2.5×100cm)上に、逆の流れ方向(12mL/分)で適用した。2カラム容積の平衡緩衝液での逆の流れ方向の洗浄工程の後、タンパク質を、前向き方向で1.5M NaClを含有する0.15Mトリス-HCl緩衝液pH7.6を用い、流量8mL/分で溶出した。QC含有画分をプールし、硫酸アンモニウムを最終濃度1Mまで添加した。得られた溶液を、75000×gで20分間遠心分離し、1M硫酸アンモニウムを含有する0.05Mリン酸緩衝液pH6.8で平衡とした、ブチルセファロースFFカラム(1.6×13cm)上に、流量4mL/分で適用した。結合したmQCを、5カラム容積の1M硫酸アンモニウムを含有する0.05Mリン酸緩衝液pH6.8で洗浄し、0.05Mリン酸緩衝液pH6.8で逆の流れ方向で溶出した。mQCを含有する画分をプールし、且つ伝導度が10mS/cmを下回るまで、水で希釈し、且つ0.05Mリン酸緩衝液pH6で平衡としたUno Sカラム(BioRad社、独国)上に適用した。0.09M NaClを含有する平衡緩衝液を使用する洗浄工程の後、1.5M NaClを含有する同じ緩衝液を用いて、mQCを溶出した。QC活性を示す画分をプールし、0.1M NaClを含有する0.015Mビストリス、pH6.8で平衡とした、HiPrep脱塩カラム(2.6×10cm)に適用した。精製後、mQCを10mg/mlまで濃縮し、-80℃で貯蔵した。
【0146】
((B)マウスグルタミニルシクラーゼの結晶化)
(結晶成長)
結晶は、Easyxtal 24-ウェルプレート(Qiagen社)において、ハンギングドロップ蒸気拡散技術を室温(21℃)で用いて成長させた。母液緩衝液は、0.1M酢酸ナトリウムpH5.3、0.2M硫酸アンモニウム及び12%(w/v)2000MME-PEGからなった。組換えマウスグルタミニルシクラーゼ(mQC)のタンパク質溶液は、15mMビス-トリスpH6.8/100mM NaCl緩衝液の存在下で、10mg/mlまで濃縮した。母液緩衝液1μl及びタンパク質溶液1μlの混合液を用意した。結晶は、実験後通常1週間経過後に出現を開始し、且つこれらは顕微鏡で棒状/針状形状を示した(
図14)。
【0147】
(極低温溶液)
X線測定の前に、結晶は、母液緩衝溶液を20%(v/v)グリセロールにより飽和した新たな極低温-緩衝溶液に速やかに浸した。直ちに結晶を、ナイロンループ付きピンを用い、極低温-緩衝溶液から収集し、これらをゴニオメーター上に搭載し、窒素流れ下で-180℃で瞬時に凍結した。
【0148】
(データ収集)
単結晶からのデータ収集は、Cu Kα放射線(λ=1.5418Å)により、回転対陰極発生源(RA Micro 007;理学/MSC社、東京、日本)及びVarimax(商標)Optics(理学社)及びAFC-11ゴニオメーターを備えるCCD検出装置(CCD Saturn 944+、理学社)を用い、行った。
【0149】
最後に、結晶を取り外し、且つ波長放射線(λ=0.91841Å)によるベルリンのシンクロトロン(Bessy)ビームラインBessy-MX BL14.1での追加の測定のために、液体窒素中で貯蔵した。
【0150】
(データ処理)
データ処理は、実施例1に記載のように行った。
【0151】
(結果)
全般的三次元構造。三つの異なるタンパク質−阻害剤複合体が得られた。得られた実験的電子密度から構築されたモデルは、マウスグルタミニルシクラーゼ残基のA
36からL
362まで、亜鉛イオン及び阻害剤分子を含む。このタンパク質は、球状のα/β加水分解酵素フォールドを示している(
図15)。中心のβ-シートは、二番目を除いて、全て平行様式である6個のβ-ストランドで形成されている。このβ-シートは、片側は2個のヘリックスにより、及び反対面は6個の更なるα-ヘリックスによるサンドイッチ様式で、α-ヘリックスにより取り囲まれている。このタンパク質の構造は、酵素の活性部位を構築しているかなり多量のランダムコイルループにより完成される(
図16、18及び19)。この活性部位は、3つのタンパク質残基D
160、E
203、及びH
331により配位されている亜鉛イオン並びに阻害剤分子を収容している。各々、
図16、18及び19の、3つの異なる化合物である阻害剤A、阻害剤C及び阻害剤Bが、異なる結晶化セッティングにおいて結晶化された。これら3種の異なる分子は、同じ局在化及び全般的相互作用のパターンを示した。更にこれらのタンパク質は、残基C
140とC
165の間にジスルフィド架橋の存在を示している(
図17)。
【0152】
表4は、マウスグルタミニルシクラーゼの結晶で得られたデータセットの統計、並びにデータ処理及びモデル構築に関するそれらの対応する統計をまとめている。使用したプログラムは、データ処理についてはMOSFLM及びSCALA、分子置換についてはPHASER、精密化についてはREFMAC5、及びモデル構築についてはCootであった。全てのプログラムは、CCP4パッケージソフトに含まれている。括弧の間の数値は、外側シェルの分解限界に属する。表において、ヘッダーは、各データセットの統計のそれらの各々のまとめに関して共結晶化された阻害剤を示している。
【表4】
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